(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つ以上のゲートランナーにおける少なくとも1つのゲートランナーは、前記半導体素子上に設けられたゲート導電部および上面電極から電気的に分離され、前記半導体素子の状態を検出するために用いられるセンサ用の配線を有する
請求項1または2に記載の半導体装置。
前記ゲートトレンチ部は、前記1つ以上のゲートランナーにおける1つのゲートランナーを始点として、前記直交する方向と平行に、かつ、互いに逆向きに同じ長さだけ延伸する、第1延伸部と第2延伸部とを有する
請求項4に記載の半導体装置。
前記半導体素子の上面と平行な平面において前記第1端部に対向する第2端部から前記第1端部に向かう方向において、前記接合部は、徐々に幅が小さくなる狭窄部を有し、
前記立上り部は、前記接合部の前記第1端部において前記狭窄部に接続し、
前記立上り部の幅は、前記第1端部における前記狭窄部の幅と同じである
請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記半導体素子の上面と平行な面内において、前記接合部の前記第1端部とは逆側の第2端部と、前記第2端部と重ならない前記ゲートランナーとの最短距離が1mm以上である
請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体素子および金属配線板は、樹脂により封止される。金属配線板の温度が変動すると、金属配線板の立上り部は上下方向に伸縮しようとする。立上り部の上側は封止樹脂により押さえられるので、立上り部は半導体素子の上面電極を押圧する。このため、立上り部近傍の上面電極の領域は、他の上面電極の領域よりもひずみが大きくなる。
【0004】
半導体素子の上面電極の上面は、ニッケル等でめっきされる。めっき膜は、ポリイミド等の絶縁膜で被覆されたゲートランナーにより複数の領域に分割される。このため、めっき膜とゲートランナーとの境界部分は、アルミニウム等の上面電極、めっき膜、ゲートランナーの3つの部材が集まる三重点となる。
【0005】
ゲートランナーの絶縁膜の収縮等により、めっき膜とゲートランナーとの境界に隙間が生じると、当該隙間にはんだが侵入してしまう。この状態で、三重点近傍のひずみが大きくなると、アルミニウム等の上面電極にクラックが発生する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、半導体素子と、上面電極と、めっき層と、1つ以上のゲートランナーと、金属配線板とを備えてよい。上面電極は、半導体素子の上面に設けられてよい。めっき層は、上面電極の上面に設けられてよい。1つ以上のゲートランナーは、めっき層を貫通し、且つ、半導体素子の上面において予め定められた方向に延伸して設けられてよい。金属配線板は、めっき層の上方に配置されてよい。金属配線板は、上面電極と電気的に接続されてよい。金属配線板は、接合部と、立上り部とを有してよい。接合部は、半導体素子の上面と平行であってよい。
立上り部は、接合部の第1端部に接続してよい。立上り部は、半導体素子の上面と離れる方向に延伸してよい。半導体素子の上面と平行な面内において、立上り部とゲートランナーとは重ならなくてよい。
【0007】
1つ以上のゲートランナーにおける全てのゲートランナーは、予め定められた方向に延伸してよい。
【0008】
1つ以上のゲートランナーにおける少なくとも1つのゲートランナーは、センサ用の配線を有してよい。センサ用の配線は、半導体素子上に設けられたゲート導電部および上面電極から電気的に分離されてよい。センサ用の配線は、半導体素子の状態を検出するために用いられてよい。
【0009】
半導体素子は、1つ以上のゲートランナーに電気的に接続するゲートトレンチ部を有してよい。ゲートトレンチ部は、半導体素子の上面と平行な面内において、1つ以上のゲートランナーが延伸する予め定められた方向に直交する方向に延伸してよい。
【0010】
ゲートトレンチ部は、第1延伸部と第2延伸部とを有してよい。第1延伸部と第2延伸部とは、1つ以上のゲートランナーにおける1つのゲートランナーを始点として、1つ以上のゲートランナーが延伸する予め定められた方向に直交する方向と平行に、かつ、互いに逆向きに同じ長さだけ延伸してよい。
【0011】
半導体装置は、上面電極の上面と平行な面内において、めっき層の外側に設けられたガードリングを更に備えてよい。半導体素子の上面と平行な面内において、ガードリングと接合部の側端部との最短距離は1mm以上であってよい。
【0012】
半導体装置は、はんだ部を更に備えてよい。はんだ部は、金属配線板とめっき層との間に設けられてよい。はんだ部は、ガードリングと接しなくてよい。
【0013】
接合部は、狭窄部を有してよい。狭窄部は、半導体素子の上面と平行な平面において第1端部に対向する第2端部から第1端部に向かう方向において、徐々に幅が小さくなってよい。立上り部は、接合部の第1端部において狭窄部に接続してよい。立上り部の幅は、第1端部における狭窄部の幅と同じであってよい。
【0014】
立上り部と接合部との境界部分には、曲率半径が1mm以上の曲部が設けられてよい。
【0015】
半導体素子の上面と平行な面内において、接合部の第1端部とは逆側の第2端部と、第2端部と重ならないゲートランナーとの最短距離が1mm以上であってよい。
【0016】
めっき層は、半導体素子の上面と平行な面内において、ゲートランナーによって複数の区画に分割されてよい。立上り部は、めっき層の区画のうち、最大面積の区画の上方に設けられてよい。
【0017】
立上り部は、半導体素子の上面と平行な面内において、半導体素子の長手方向に沿って配置されてよい。
【0018】
半導体装置は、ゲートパッドを更に備えてよい。ゲートパッドは、半導体素子の上面に配置されてよい。ゲートパッドは、接合部の第1端部とは逆側の第2端部の外側に設けられてよい。
【0019】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1は、第1実施形態に係る半導体装置100の上面を示す図である。
図2は、
図1におけるA‐A'断面を示す図である。本明細書においては、後述する半導体素子30の厚み方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。素子、基板、層、膜またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向に限定されない。本例では、上下方向をZ軸方向、Z軸方向と垂直な面内において直交する2つの方向をX軸方向およびY軸方向と称する。
【0023】
本例の半導体装置100は、冷却部10、ケース12、はんだ部14、金属板26、絶縁基板16、回路部18、回路部20、はんだ部24、はんだ部25、半導体素子30、金属配線板60、および、はんだ部80を備える。半導体素子30は、シリコン基板等の半導体基板に形成された半導体チップである。半導体素子30は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、パワーMOSFET、フリーホイールダイオード(FWD)等を含んでよい。半導体素子30は、また、IGBTおよびFWDを一つのチップに設けたRC−IGBT(Reverse−Conducting IGBT)を含んでよい。半導体素子30の上面には、エミッタ電極、ソース電極およびアノード電極等の上面電極が設けられている。
【0024】
冷却部10は、半導体素子30等が発する熱を、外部に放出する。冷却部10は、アルミニウム等の熱伝導率が高い材料で形成される。冷却部10は、放熱面積を増大させるべく複数のフィンを有してもよい。
【0025】
冷却部10の上面には、積層基板が設けられる。本例の積層基板は、金属板26、絶縁基板16、回路部18および回路部20で構成されるDCB(Direct Copper Bonding)基板である。
【0026】
絶縁基板16は、セラミック等の絶縁材料で形成される。金属板26は、絶縁基板16の下面に設けられる。回路部18および回路部20は、絶縁基板16の上面に設けられる。はんだ部14は、金属板26と冷却部10とを熱的および機械的に固定する。はんだ部14は、Sn−Sb系またはSn−Sb−Ag系の高強度はんだであることが好ましい。
【0027】
回路部18および回路部20は、半導体素子30と電気的に接続され、半導体素子30との間で電力および電気信号等を受け渡す。回路部18および回路部20は、絶縁基板16の上面に設けられた金属配線、パッド等を含んでよく、信号処理回路等を含んでもよい。
【0028】
半導体素子30は、回路部18の上面に設けられる。半導体素子30は、はんだ部24により回路部18に固定される。はんだ部24は、半導体素子30および回路部18を、電気的および機械的に接続する。例えばはんだ部24は、回路部18に含まれるパッド等と、半導体素子30の端子とを接続する。はんだ部24は、例えばSn−Cu系またはSn−Sb系のはんだである。また、半導体素子30は、金属配線板60を介して回路部20と電気的に接続される。金属配線板60の一方の端部は半導体素子30の上面に接続され、金属配線板60のもう一方の端部は回路部20の上面に接続される。
【0029】
一例として金属配線板60は、銅、銅合金、アルミニウム、または、アルミニウム合金等で形成される。金属配線板60の厚みは、一例として0.5mm以上、1mm以下である。金属配線板60は、半導体素子30の上面に接続される接合部62と、回路部20の上面に接続される接合部66と、2つの接合部62および接合部66を接続する接続部64とを有する。接合部62は、半導体素子30の上面と平行に配置されてよい。接合部62は、相対的に接続部64に近い第1端部71と、相対的に接続部64から遠い第2端部73とを有する。接合部66は、回路部20の上面と平行に配置されてよい。
【0030】
接合部62は、はんだ部80により半導体素子30に固定される。接合部66は、はんだ部25により回路部20に固定される。はんだ部80およびはんだ部25は、例えばSn−Cu系またはSn−Sb系のはんだである。
【0031】
接合部62と接続部64との間には、立上り部63が設けられる。また、接合部66と接続部64との間には、立上り部65が設けられる。立上り部63は、接合部62の第1端部71に接続し、半導体素子30の上面と離れる方向に延伸する。立上り部65は、接合部66の接続部64に近い端部に接続し、回路部20の上面と離れる方向に延伸する。本例の立上り部63および立上り部65は、半導体素子30の上面および回路部20の上面と垂直な方向(すなわちZ軸方向)に延伸している。
【0032】
ケース12は、冷却部10の上面において、積層基板、半導体素子30、金属配線板60、および、各はんだ部を囲んで設けられる。本例のケース12は枠形状を有する。ケース12は、金属等の導電材料で形成されてよく、樹脂等の絶縁材料で形成されてもよい。ケース12の内部は、封止樹脂22で封止される。つまり、積層基板、半導体素子30、金属配線板60、および、各はんだ部は、全体が封止樹脂22で覆われている。
【0033】
図3は、半導体素子30の上面の一例を示す図である。
図4は、
図3におけるB‐B'断面を示す図である。
図3においては、金属配線板60の接合部62および立上り部63が設けられる位置を破線で示している。
図4に示す様に、半導体素子30の上面には、第1絶縁膜52、上面電極82、めっき層38、1つ以上のゲートランナー32およびガードリング34が設けられる。なお、
図4においてはゲートランナー32の説明を省略する。
【0034】
上面電極82は、半導体素子30の基板上面における予め定められた領域に設けられる。半導体素子30の上面には、上面電極82とは分離した領域に、1以上のパッド36が設けられてもよい。上面電極82は、例えばエミッタ電極、ソース電極またはアノード電極である。パッド36は、例えばゲート電極、温度検出用電極、および、電流検出用電極等である。
【0035】
めっき層38は、上面電極82の上面に設けられる。めっき層38は、例えばNi、Ni/AuまたはSn等を含む。めっき層38は、上面電極82の上面全体に設けられてよい。ゲートランナー32は、めっき層38をZ軸方向において貫通する。つまり、ゲートランナー32の下端は上面電極82に接触し、上端はめっき層38から露出する。
【0036】
ゲートランナー32は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成された導電部と、導電部を被覆するポリイミド等の絶縁部とを有する。当該絶縁部は、当該導電部を、めっき層38、上面電極82およびはんだ部80から絶縁する。ゲートランナー32は、半導体素子30の上面において予め定められた方向に延伸して設けられる。例えばゲートランナー32は、XY面において直線状に設けられる。ゲートランナー32の導電部は、パッド36と、半導体素子30内に設けられたトランジスタ等の制御電極とに電気的に接続される。
【0037】
図3の例では、1つのゲートランナー32が設けられる。ゲートランナー32は、Y軸方向におけるめっき層38の両端間にわたって設けられる。これによりめっき層38は2個の区画に分割される。なお、本例のゲートランナー32は、長手方向の中央にセンス領域33を有する。センス領域33は、ゲートランナー32の幅よりも広い幅を有してよい。なお、本例においてゲートランナー32の幅とは、ゲートランナー32の長手方向に直交する方向の長さを意味する。センス領域33には、後述するセンサ用の配線が電気的に接続されたアノード半導体領域およびカソード半導体領域の接合部が設けられてよい。なお、他の例においては、半導体素子30はセンス領域33を含まなくてもよい。この場合、
図3に示す例よりも少ない数のパッド36を設けてよい。
【0038】
ガードリング34は、上面電極82の上面において、めっき層38の外側に設けられる。外側とは、半導体素子30の上面端部により近い側を指す。本例のガードリング34は、上面電極82の上面において、めっき層38の全体を囲むように設けられている。ガードリング34は、上面電極82の縁に沿って設けられてよい。
【0039】
金属配線板60は、めっき層38の上方に配置されており、はんだ部80およびめっき層38を介して上面電極82と電気的に接続される。金属配線板60の接合部62および立上り部63は、上面電極82およびめっき層38が設けられた領域内に配置される。つまり、接合部62および立上り部63は、ガードリング34よりも内側に配置される。
【0040】
金属配線板60の立上り部63は、半導体素子30の上面において、予め定められた方向に伸びる直線形状を有する。
図3の例における立上り部63は、Y軸方向に伸びており、ゲートランナー32と平行に配置される。
【0041】
上述したように、金属配線板60は封止樹脂22により封止される。このため、温度変動に伴い立上り部63が上下方向に伸縮しようとすると、立上り部63の上側が封止樹脂22により押さえられる。従って、立上り部63は、はんだ部80、めっき層38、上面電極82を押圧し、または、引っ張る。
【0042】
一方で、上面電極82の上面には、ゲートランナー32の絶縁部と、めっき層38と、上面電極82とが集まる三重点(triple junction)が存在する。当該三重点には、ゲートランナー32の絶縁部の熱収縮等により隙間が生じやすく、はんだが入り込みやすい。かかる三重点に対して、立上り部63の押圧等により大きなひずみが生じると、アルミニウム等で形成された上面電極82にクラックが入る場合がある。
【0043】
このため、大きなひずみが生じやすい立上り部63の直下には、当該三重点が存在しないことが好ましい。本例では、半導体素子30の上面と平行な面内において、ゲートランナー32と立上り部63との最短距離である第1距離L1が、1mm以上である。本例では、Y軸方向に沿った複数のゲートランナー32のうち、立上り部63に最も近いゲートランナー32と、立上り部63との最短距離が、1mm以上である。
【0044】
第1距離L1を1mm以上とすることで、温度変動が生じても三重点におけるひずみを小さくすることができる。このため、上面電極82におけるクラック発生を抑制して、半導体装置100を高寿命化できる。第1距離L1は、1.2mm以上であってよく、1.5mm以上であってもよい。本例において、第1距離L1における立上り部63およびゲートランナー32の基準位置は、X軸方向におけるそれぞれの中央位置である。
【0045】
また、本例の立上り部63は、半導体素子30の上面と平行な面内において、ゲートランナー32とは重ならない。本例では、立上り部63とゲートランナー32とは、半導体装置100の高さ方向(本例では、Z方向)において全く重ならない。それゆえ、本例では、立上り部63とゲートランナー32とが少なくとも一部重なる場合および完全に重なる場合と比較して、上面電極82にクラックが生じるのを抑制することができる。これにより、半導体装置100を高寿命化できる。
【0046】
また、ガードリング34とめっき層38との境界においても、三重点が存在する。このため、半導体素子30の上面と平行な面内において、立上り部63と、ガードリング34との距離も大きくすることが好ましい。立上り部63とガードリング34との距離は、はんだ部80がガードリング34に接しない程度であることが好ましい。これにより、三重点における隙間にはんだが入り込むことを抑制して、半導体装置100を高寿命化できる。本例では、立上り部63と、ガードリング34との最短距離である第2距離L2が1mm以上である。本例において、第2距離L2における立上り部63およびゲートランナー32の基準位置は、X軸方向において互いに対向する端部位置である。
【0047】
同様に、はんだ部80が三重点に入り込むことを抑制するべく、半導体素子30の上面と平行な面内において、第1端部71と第2端部73との間に位置する接合部62の第1側端部72および第2側端部74と、ガードリング34との距離も大きくすることが好ましい。本例では、ガードリング34と接合部62の第1側端部72との最短距離Ls、および、ガードリング34と接合部62の第2側端部74との最短距離Lsが、それぞれ1mm以上である。これにより、Y軸方向においても、ガードリング34とめっき層38との境界にはんだ部80が入り込むことを防ぐことができる。
【0048】
本例の立上り部63は、ガードリング34と、ゲートランナー32との間に配置される。この場合、立上り部63とゲートランナー32との第1距離L1を、立上り部63とガードリング34との第2距離L2より大きくしてよい。ゲートランナー32上にははんだ部80が設けられるので、ゲートランナー32とめっき層38との間にはんだが入り込みやすい。第1距離L1を第2距離L2より大きくすることで、立上り部63とゲートランナー32とをより離間させることができる。これにより、ゲートランナー32における三重点でのひずみをより小さくして、半導体装置100をより高寿命化できる。第1距離L1は、第2距離L2の1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。
【0049】
なお、X軸方向におけるゲートランナー32とガードリング34との距離をXmmとして、第1距離L1の上限をX−1mmとしてもよい。つまり、第1距離L1は、ガードリング34にはんだ部80が到達しないだけの第2距離L2を確保した状態で、最大化してよい。
【0050】
めっき層38は、ゲートランナー32により、複数の区画に分割されている。本例では、半導体素子30の上面と平行な平面において、めっき層38‐1およびめっき層38‐2の区画に分割されている。めっき層38‐1の区画は、半導体素子30の上面と平行な面内における面積が、他のいずれの区画よりも大きい。また、めっき層38‐1の区画は、半導体素子30の上面において立上り部63が延伸している方向に直交する方向(本例ではX軸方向)における長さが、他の区画よりも長い。
【0051】
本例の立上り部63は、めっき層38の区画のうち、最大面積のめっき層38‐1の区画の上方に設けられる。また、接合部62は、めっき層38の全ての区画に跨って設けられる。これにより、立上り部63と、ゲートランナー32とを重ならせない条件で、金属配線板60を容易に配置することができる。
【0052】
なお、パッド36は、接合部62の第1端部71とは逆側の第2端部73の外側に設けられることが好ましい。これにより、パッド36に接続されるワイヤー等が、金属配線板60と干渉することを抑制できる。また、本例の半導体素子30の上面は、長方形である。立上り部63は、半導体素子30の上面と平行な面内において、半導体素子30の上面の長手方向(Y軸方向)に沿って配置される。これにより、立上り部63により応力が印加される範囲を広げて、局所的に大きな応力が印加されることを抑制できる。
【0053】
また、金属配線板60の立上り部63と接合部62との境界部分には、曲部67が設けられることが好ましい。曲部67は意図的に曲面状に形成されており、例えば曲率半径が1mm以上である。曲部67の曲率半径は、1.5mm以上であってよく、2.0mm以上であってもよい。
【0054】
また、立上り部63と接続部64との境界部分にも、曲部68が設けられていてもよい。曲部68は、意図的に形成されていない曲面であってよい。曲部67の曲率半径は、曲部68の曲率より大きくてよい。
【0055】
立上り部63と接合部62との境界部分に曲部67を設けることで、接合部62とめっき層38との間に設けたはんだ部80をリフロー等で加熱する場合に、はんだ部80が曲部67に沿って上方に上がっていきやすくなる。このため、はんだ部80が横方向に広がり、ガードリング34に到達することを抑制できる。
【0056】
このように、曲部67を設けることで、立上り部63とガードリング34との距離を小さくしても、ガードリング34にはんだ部80が到達しにくくなる。従って、半導体素子30を小型化できる。または、ゲートランナー32と立上り部63との距離を容易に確保できる。
【0057】
また、半導体素子30の上面と平行な面内において、接合部62の第1端部71とは逆側の第2端部73と、当該第2端部73と重ならないゲートランナー32との最短距離である第3距離L3も、1mm以上であってよい。接合部62の端部は、接合部62の中央部分と比べて、ひずみが大きくなる場合がある。このため、第3距離L3も、1mm以上とすることが好ましい。ただし、立上り部63近傍と比べると、接合部62の第2端部73におけるひずみは小さいので、第3距離L3は、第1距離L1よりも小さくてよい。
【0058】
また、半導体素子30の上面と平行な面内において、接合部62の第2端部73と、ガードリング34との最短距離である第4距離L4も、1mm以上であってよい。これにより、第2端部73近傍においても、はんだ部80がガードリング34まで到達することを抑制できる。なお、第1距離L1は、第2距離L2、第3距離L3、第4距離L4のいずれよりも大きくてよい。
【0059】
図5は、
図3におけるC‐C'断面を示す図である。
図5においては、ゲートランナー32の構成を主に説明する。C‐C'断面はゲートランナー32を通る、XZ平面に平行な断面である。本例のゲートランナー32は、第1層から第3層までの積層構造を有する。
【0060】
第1層は、ゲート導電部51と、第1配線56およびプラグ57と、第1絶縁膜52とを有する。ゲート導電部51および第1配線56は、半導体素子30上に設けられ、ゲートランナー32内においてY軸方向と平行に延伸して設けられてよい。本例において、ゲート導電部51および第1配線56は、ゲートランナー32のY軸方向の一端から他端まで延伸する。ゲート導電部51は、ゲート用のパッド36に電気的に接続してよい。ゲート導電部51は、半導体素子30の内部に設けられるゲートトレンチに対して、制御端子から1つのパッド36へ入力されるゲート電位を伝達してよい。これに対して、第1配線56は、半導体素子30のエミッタ電極に電気的に接続するダミートレンチ部へエミッタ電位を伝達してよい。
【0061】
ゲート導電部51および第1配線56はポリシリコンで形成されてよい。本例のゲート導電部51および第1配線56はポリシリコン層をエッチングすることにより同時に形成するので、両者は同じZ方向高さを有する配線である。第1配線56は、Y軸方向において断続的に設けられたプラグ57を介して、エミッタ電位を有する第2層の第2配線58に電気的に接続してよい。プラグ57は、例えばタングステンで形成されたプラグである。
【0062】
第1絶縁膜52は、ゲート導電部51と、第1配線56およびプラグ57とを電気的に分離する。第1絶縁膜52は、HTO膜(High Temperature Oxide film)と、BPSG膜(Boro‐Phospho Silicate Glass film)との積層膜であってよい。また、第1絶縁膜52は、ゲート導電部51を第2層のセンサ用の配線55等から電気的に分離する。ただし、第1配線56およびプラグ57は、第1絶縁膜52を貫通して第2層に設けられた第2配線58に電気的に接続する。
【0063】
第2層は、センサ用の配線55、第2配線58および第2絶縁膜53を有する。センサ用の配線55および第2配線58は、ゲート導電部51および第1配線56と平行にY軸方向に延伸してよい。本例において、第2配線58は、ゲートランナー32のY軸方向の一端から他端まで延伸する。なお、第2配線58は、上面電極82と電気的に接続し、上面電極82と同電位である。
【0064】
これに対して、センサ用の配線55は、ゲートランナー32の延伸方向の中間点からゲートランナー32のY軸方向の一端まで延伸する。つまり、センサ用の配線55の長さは、ゲートランナー32の全長の半分であってよい。ゲートランナー32の延伸方向の中間点は、半導体素子30のXY面における略中心位置であってよい。本例においては、ゲートランナー32を立上り部63から離間させているので、センサ用の配線55および第2配線58の断線も防止することができる。
【0065】
センサ用の配線55は、半導体素子30の状態を検出するために用いられてよい。本例のセンサ用の配線55は、半導体素子30のXY面における略中心位置において、半導体素子30の温度を測定するために用いられる。本例のセンサ用の配線55は、ダイオード温度センサのアノード半導体領域に接続するセンサ用の配線55‐Aと、ダイオード温度センサのカソード半導体領域に接続するセンサ用の配線55‐Kとを有する。
【0066】
第2絶縁膜53は、センサ用の配線55‐Aおよび55‐K、第2配線58、ならびに、上面電極82を互いに電気的に分離する。第2絶縁膜53は、例えばポリイミド膜である。第3層は、めっき層38および第3絶縁膜54を有する。第2絶縁膜53と同様に、第3絶縁膜54もポリイミド膜であってよい。
【0067】
図6は、ゲートトレンチ部40を示す図である。
図6においては、図面の見易さを考慮して、金属配線板60の記載を省略する。ゲートトレンチ部40は、半導体素子30内に設けられる。ゲートトレンチ部40は、
図5におけるゲートランナー32のゲート導電部51に電気的に接続する。ゲートトレンチ部40は、半導体素子30の上面と平行な面内において、ゲートランナー32が延伸する予め定められた方向に直交する方向に延伸してよい。上面が長方形の半導体素子30において、ゲートトレンチ部40を半導体素子30の短辺に平行に、ゲートランナー32を長辺に平行に配置することにより、半導体素子30の長辺方向の反りを抑制することができる。ゲートトレンチ部40はそれぞれ、X−Y面内において、延伸する方向の長さと、延伸する方向に直交する方向の幅を有する。各ゲートトレンチ部40においてこれらの長さおよび幅は等しくてもよいし、異なってもよい。また、ゲートトレンチ部40の間の間隔は図示するように等間隔でもよいし、また等間隔でなくてもよい。
【0068】
さらに半導体素子30がRC−IGBTである場合、各々ストライプ形状を有し、かつ、当該ストライプ形状の長手方向に直交する方向において交互に配置されたIGBT領域およびFWD領域を、半導体素子30は含んでよい。IGBT領域は、一つ以上のゲートトレンチ部40を含むように配置されてよい。また、FWD領域は、一つ以上のダミートレンチ部を含むように配置されてよい。ダミートレンチ部は、ゲートトレンチ部40と同様にトレンチ内に絶縁膜および導電部を有してよい。ダミートレンチ部の導電部にはゲート電位ではなくエミッタ電位が供給されてよい。IGBT領域およびFWD領域はそれぞれ延伸する方向に直交する方向の幅を有する。これらの幅は等しくてもよいし、異なってもよい。IGBT領域に設けられるゲートトレンチ部40の数とFWD領域に設けられるダミートレンチ部の数とは、同じであってよく、異なってもよい。IGBT領域に配置されるゲートトレンチ部40の幅および間隔とFWD領域に配置されるダミートレンチ部の幅および間隔とは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0069】
本例のゲートトレンチ部40は、二つの等しい長さの平行線と、当該平行線の各端部に設けられた2つの半円とを有する。本例のゲートトレンチ部40は、第1延伸部42と第2延伸部44とを有する。本例において、二つの平行線のうちの一つの線は、第1延伸部42および第2延伸部44からなる。第1延伸部42および第2延伸部44は、ゲートランナー32を始点としてX軸方向と平行な方向と平行に延伸し、かつ、互いに逆向きに同じ長さだけ延伸する。第1延伸部42および第2延伸部44の長さを同じにすることで、第1延伸部42および第2延伸部44での抵抗値が略同じにすることができる。それゆえ、ゲート導電部51から枝分れする電流量を略均等にすることができる。
【0070】
第1延伸部42と第2延伸部44との境界は、半導体素子30の上面と平行な面内においてゲートランナー32とゲートトレンチ部40とが交わる領域に位置してよい。当該領域において、ゲートランナー32のゲート導電部51とゲートトレンチ部40内のゲート電極とが電気的に接続してよい。ただし、第1延伸部42および第2延伸部44は、ゲートトレンチ部40の形状を説明するための便宜的な部位に過ぎない。第1延伸部42および第2延伸部44は、互いに連続して設けられてよい。
【0071】
また、本例のゲートトレンチ部40は、2つの半円に対応するゲート接続部46‐1および46‐2を有する。本例の第1延伸部42‐1および第1延伸部42‐2は、ゲートランナー32と反対側の端部であってパッド36に近接する位置において、ゲート接続部46‐1に接続する。また、本例の第2延伸部44‐1および第2延伸部44‐2は、ゲートランナー32と反対側の端部であってガードリング34に近接する位置において、ゲート接続部46‐2に接続する。このように、第2延伸部44‐1および44‐2ならびにゲート接続部46‐2は、半導体素子30の上面と平行な面内においてゲートランナー32を対称軸として、第1延伸部42‐1および42‐2ならびにゲート接続部46‐1と対称に設けられる。
【0072】
図7は、半導体素子30の上面と平行な面内において、金属配線板60により生じるひずみが大きい領域61を示す模式図である。領域61は、立上り部63に沿った領域と、接合部62の端部のうち立上り部63の近傍の領域とを含む。立上り部63の近傍では、温度変動により立上り部63から受ける応力が大きくなり、ひずみが大きくなる。上述したように、ゲートランナー32およびガードリング34は、領域61から離して配置されることが好ましい。
【0073】
図8は、三重点90を説明する第1比較例である。第1比較例においては、ガードリング34近傍の三重点90を示す。ガードリング34のポリイミド等が収縮すると、ガードリング34とめっき層38との間に隙間が生じてしまう。
【0074】
このとき、ガードリング34と金属配線板60との距離が近すぎると、金属配線板60とめっき層38との間のはんだ部80が三重点90まで到達して、ガードリング34とめっき層38との間の隙間に入り込んでしまう。この状態で、金属配線板60の立上り部63が上下方向に伸縮すると、はんだ部80を介して上面電極82の上面に応力が印加され、上面電極82において塑性ひずみが生じる。当該塑性ひずみの上下方向の振幅が大きくなりすぎると、半導体装置の寿命が低下してしまう。これに対して
図1から
図7において説明した半導体装置100によれば、三重点90と、立上り部63とを離して配置しているので、半導体装置100を高寿命化できる。
【0075】
図9は、三重点90を説明する第2比較例である。第2比較例においては、ゲートランナー32近傍の三重点90を示す。ゲートランナー32のポリイミド等が収縮すると、ゲートランナー32とめっき層38との間に隙間が生じてしまう。
【0076】
このとき、ゲートランナー32と立上り部63との距離が近すぎると、はんだ部80を介して上面電極82の上面に応力が印加され、上面電極82において塑性ひずみが生じる。これにより、
図8の比較例と同様に半導体装置の寿命が低下してしまう。これに対して
図1から
図7において説明した半導体装置100によれば、三重点90と、立上り部63とを離して配置しているので、半導体装置100を高寿命化できる。
【0077】
図10は、第2実施形態における半導体素子30の上面の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、予め定められた方向に延伸する複数のゲートランナー32を有する。本例において全てのゲートランナー32は、X軸方向と平行な方向に延伸する。これにより、めっき層38は4つの領域に分割される。本例のめっき層38は、半導体素子30の上面において、立上り部63が設けられるめっき層38‐1と、2番目に立上り部63に近いめっき層38‐2と、2番目にパッド36に近いめっき層38‐3と、最もパッド36に近いめっき層38‐4とを有する。金属配線板60の接合部62は、当該複数のゲートランナー32上に設けられる。かかる点が、第1実施形態と異なる。
【0078】
本例においては、3つのゲートランナー32が設けられる。なお、3つのゲートランナー32は例示であり、2つまたは4つ以上のゲートランナー32が設けられてもよい。本例では、X軸方向と平行な方向において中央に位置するゲートランナー32‐2の延伸方向の中央にセンス領域33が設けられる。
【0079】
なお、本例においても第1実施形態と同様の構成を適用してよい。例示すると、本例においても、立上り部63は、最大面積のめっき層38‐1の区画の上方に設けられてよい。より具体的には、めっき層38‐1のX軸方向における幅は、他のめっき層38の区画における幅よりも大きい。これにより、立上り部63と、ゲートランナー32およびガードリング34とのX軸方向における距離を容易に確保することができる。また、ゲートトレンチ部40の各延伸部42は、第1実施形態の
図6と同様に、X軸方向と平行な方向に延伸してよい。ゲートトレンチ部40の各延伸部42は、めっき層38‐1、38‐2、38‐3および38‐4の下方において同じ長さを有してよい。
【0080】
図11は、第3実施形態における半導体素子30の上面の一例を示す図である。本例の接合部62の形状は、第1および第2実施形態の接合部62の形状と異なる。接合部62は、X軸方向における第1端部71と第2端部73との間の予め定められた位置から第1端部71までの範囲に狭窄部76を有してよい。狭窄部76は、接合部62の第1端部71において立上り部63に接続してよい。第1端部71における狭窄部76の幅は、立上り部63の幅と同じであってよい。なお、本例において狭窄部76および立上り部63の幅とは、接合部62の第1側端部72から第2側端部74に向かう方向に平行な方向の長さを意味する。また、第1側端部72から第2側端部74に向かう方向がゲートランナー32の長手方向と平行な本例では、狭窄部76および立上り部63の幅は、当該長手方向における各々の長さでもある。
【0081】
第1端部71と第2端部73との間の予め定められた位置は、半導体素子30の上面と平行な平面において、X軸方向における第1端部71と第2端部73との間の任意の位置としてもよい。ただし、接合部62における狭窄部76の割合が大きくなると接合部62とはんだ部80との接触面積が減るので、狭窄部76の面積に上限を設けることが望ましい。本例においては、X軸方向における第1端部71と第2端部73との中間位置から第1端部71までの範囲に狭窄部76を設ける。
【0082】
狭窄部76は、半導体素子30の上面と平行な平面において第2端部73から第1端部71に向かう方向において、徐々に幅が小さくなってよい。本例では、狭窄部76の第1側端部77と第2側端部78との距離は、第2端部73から第1端部71へ進むにつれて小さくなる。本例において、狭窄部76の第1側端部77と第2側端部78とは、内側に凸の曲線形状を有するが、直線形状を有してもよく、外側に凸の曲線形状を有してもよい。本例の金属配線板60は狭窄部76を有するので、狭窄部76を有しない接合部62の第2側端部74とガードリング34との距離よりも、狭窄部76の第2側端部78とガードリング34との距離を大きくすることができる。これにより、三重点90と立上り部63とを可能な限り離間させることができる。なお、本例の接合部62を、第2実施形態に適用してもよいのは勿論である。
【0083】
図12は、第4実施形態における金属配線板60の上面を示す図である。本例の金属配線板60は、複数の半導体素子30に接続される。例えば金属配線板60は、半導体素子30の上面と平行な面内において直線状に設けられた立上り部63と、立上り部63から突出した複数の接合部62を有する。このような例においても、それぞれの立上り部63において、ゲートランナー32およびガードリング34との距離を確保することが好ましい。なお、第1および第2実施形態における半導体素子30と接合部62および立上り部63との関係が本例に適用されてよい。また、第3実施形態の接合部62と本例とを組み合わせてもよい。
【0084】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0085】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。