【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータにおけるEMC対策としては次のような方法がある。
(1)スイッチング素子がオン/オフする時のスイッチング速度を遅くしてノイズの発生を少なくする。例えば、スイッチング素子としてIGBTを用いると、ゲート抵抗を大きくするとスイッチング速度が遅くなる。スイッチング速度を遅くすると電圧や電流の変化率dV/dtやdI/dtが小さくなりノイズが少なくなる。
しかし、スイッチング速度を遅くするとスイッチング時の損失が大きくなり効率の低下や冷却の考慮が必要になる。スイッチング損失は周波数に比例するため、高い周波数でのインバータでは、スイッチング損失が顕著になる。
【0005】
(2)
図2で示すように、スイッチング素子Tと並列にCRDスナバーを接続し、スイッチング素子Tのオフ時の電流をコンデンサにバイパスすることでdV/dtを小さくする。
図2において、Dはダイオード、Cはコンデンサで、スイッチング素子Tをオフにすると、スイッチング素子Tに流れていた電流IdはダイオードDからコンデンサCに流れる。電流IdをコンデンサCに充電しながら電圧が上昇することでdV/dtが小さくなる。抵抗Rは、スイッチング素子TがオンしたときコンデンサCからスイッチング素子Tに流れる電流を制限するための抵抗である。この方法では、スイッチング素子Tのオフ時にはスナバー抵抗Rによる損失は無いが、スイッチング素子Tがオンしたとき抵抗Rを通って放電するため抵抗Rの損失が大きい。抵抗Rによる損失は、0.5×C×Ed^2×fで決まり、(1)項と同様に、周波数に比例するため高い周波数のインバータではスイッチング損失が顕著になる。
【0006】
(3)
図3で示すように、スイッチング素子Tに並列にCRスナバーを接続し、スイッチング素子Tのオフ時の電流IdをコンデンサCにバイパスすることでdV/dtを小さくことができる。このスナバー回路を適用した例が
図4である。
この方法は、振動条件が出来ないように抵抗値をある程度大きく(R≧2√L/C)する必要が有る。電流が小さい時にはdV/dtに効果が有るが、電流が大きいと抵抗がId(オフ電流)×R(抵抗値)の電圧を背負うためdV/dtを小さくする効果が少なくなる。また、スイッチング素子Tのオフ時とオン時の両方共コンデンサの電流が抵抗を通るため抵抗の損失が、前記(2)項の2倍になる。反対に抵抗値を小さくする(R<2√L/C)と振動出てくるので一般には使用しない。ここで、Lは
図4で示す直流回路の配線のインダクタンスで、出来るだけ値が小さくなるように配線している。
【0007】
(4)前記(3)項では、振動を防止するため抵抗値を(R≧2√L/C)とすると記したが、敢えて抵抗値を小さく(R<2√L/C)して振動が出ることを承知の上でdV/dtと損失を小さくする方法も考えられる。この方法を採用する理由は、振動電流の周波数はコンデンサCにより低くなるので、振動により回路部品の価格が有る程度高くなってもEMCの対策費と比べて安ければ有利になることによる。この方法によると、回路構成は
図4と同じであるが抵抗値のみ異なる。しかし、敢えて抵抗値を小さくする方法では、振動の他に次のような問題が有る。
【0008】
インバータ1アームでのスイッチング素子のオン/オフは、プラス側とマイナス側で反対の動作をする。即ち、スイッチング素子Tvオンの時にはスイッチング素子Tyはオフとなる。ところが、実際に使用されるIGBT等のスイッチング時間は、オンが速くオフが遅いので同時にオンオフ信号を与えると、TvとTyが同時にオンすることになり上下PN間が短絡して大電流がIGBTに流れてIGBTを壊すことになる。これを防ぐためオフに比べてオンするタイミングを遅くした信号を与える。この時間をデットタイムと呼ぶ。デットタイムはスイッチのオフとオンの時間差以上とするが、大き過ぎると上下スイッチ共にオフ期間が増えて最大出力電圧(トランスTFの一次電圧)が小さくなる。IGBTの場合、一般には1μs程度となる。
【0009】
図4〜
図6を用いてオフ時の動作を説明する。
図4でスイッチング素子TvとTxがオンして電流IdがTv→TF→Txに流れているとき、
図5のA点でTvがオフすると電流Idは殆ど変化が無いのでIdの電流はコンデンサCvに1/2×Idで充電(
図5の一点鎖線)し、コンデンサCyから1/2×Idで放電(
図5の二点鎖線)して流れる。その結果、スイッチング素子Tvの電圧は点線のように上昇し、スイッチング素子Tyの電圧は実線のように下降する。この時の時刻AB間が充放電時間tで、充放電時間t=2CEd/Idで表される。時刻AC間がデットタイムtdetである。tdet>tで有ればコンデンサはデットタイム以内で充放電を完了する。
【0010】
次に電流Idが小さい時を
図6に示す。
図6では電流が小さいのでデットタイムが終了する時刻C点になってもコンデンサの充放電が終わっていないため、C点でスイッチング素子TyがオンするとTy間電圧がゼロになるので、コンデンサCyは図のように急に放電しCvも急に充電される。この結果、TvとTyのdV/dtが大きくなる。また、大きな電流でスイッチやコンデンサが壊れることがある。コンデンサCvへの充電及びCyからの放電時間は同じで、上記したt=2CEd/Idで表される。ここで、EdはDCリンクの直流電圧である。
【0011】
例として具体的な値で説明する。Ed=300V、Id=100A、C=0.1uFの時t=0.6μsとなるので、デットタイムが1μsとするとその時間以内にコンデンサの充放電は完了するが、Id=10Aの時はt=6μsとなりコンデンサが充放電を完了しない内にTyがオンする。これにより、コンデンサCyに電荷が残っているためTyで短絡されて放電する。一方、コンデンサCvには電荷が溜まっていないので、DCリンクから急激に充電される、その結果dV/dtとdI/dtが大きくなりEMCに対して悪影響を及ぼす。
【0012】
本発明が目的とするところは、スイッチング素子がオフするときのdV/dtとdI/dtを小さくできるEMCに有効なEMIノイズ低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、各スイッチング素子と並列にスナバー回路を接続したインバータで直流電圧を交流電圧に変換し、変換された交流電圧を整流器で直流電圧に変換し、直流電圧を調整しながら段階的若しくは徐々に充電電流を減らしながらバッテリーに充電する充電器での充電方法において、
前記バッテリーへの充電電流が所定値(押込み充電電流)以下となったときに、前記スイッチング素子のオン時間を遅くするものである。
【0014】
本発明では、スナバー回路を、抵抗とコンデンサを直接続したCRスナバー回路とし、スナバー回路の抵抗値を極力小さい値としたものである。
【0015】
また、本発明では、バッテリーへの充電電流が所定値以下となったときに、前記インバータのデッドタイムを短くするものである。
【0016】
本発明は、各スイッチング素子と並列にスナバー回路を接続したインバータで
直流電圧を交流電圧に変換し、変換された交流電圧を、トランスを介して整流器に出力して直流電圧に変換し、変換された直流電圧を調整しながら段階的若しくは徐々に充電電流を減らしながらバッテリーに充電する充電器での充電方法において、
前記トランスと並列に、コンタクタとリアクトルの直列回路を接続し、
前記スナバー回路を、抵抗とコンデンサを直接続したCRスナバー回路としてスナバー回路の抵抗値を極力小さい値とし、
前記バッテリーへの充電電流が所定値(押込み充電電流)以下となったとき充電電圧に対応して前記インバータのデッドタイムを小さくし、且つ前記コンタクタをオンして前記リアクトルにダミー電流を流すものである。
【0017】
また、本発明は、バッテリーへの充電電流が所定値(押込み充電電流)以外で充電電流が小さくなったとき、充電電流に対応して前記デッドタイムを順次大きくするものである。
【0018】
更に本発明は、バッテリーへの充電電流が所定値(押込み充電電流)以上の電流であって、充電開始時の小さい充電開始電流に前記コンタクタをオンして前記リアクトルにダミー電流を流すことを特徴とするものである。