(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水銀に限らず、物理吸着により物質をガスから除去する場合、通常その物質の沸点よりも低い温度域で、ガス中の吸着対象物質を回収する。一般的には回収する温度が低い程、吸着量が増加するため効率がよくなる。特許文献1では、排ガスに含まれるダストを吸着材として機能させている。そして、水銀等の重金属を吸着したダストを、排ガスを大気放出する前の最も低温になった時点で捕集して、水銀等の重金属を回収している。しかし、この様な方法では、回収するダスト量が多くなってダスト処理の負荷が増大してしまう。
【0008】
また、この様な水銀を含むダストを、原料としてセメントクリンカ製造装置の高温部に投入すると、水銀は蒸発して排ガス中の水銀濃度が上昇する。この排ガスには、セメントクリンカ側に回収されないダストを含んでいる。このため、蒸発した水銀は、温度が下がると再びダストに吸着される。このダストを原料としてセメントクリンカ製造装置に再投入することを繰り返し行えば、水銀は循環してセメントクリンカ製造装置内に蓄積されることになる。
【0009】
特許文献2では、このようにして蓄積された水銀等を低減するため、350℃以上の排ガスの一部を抽気している。そして、抽気した排ガスを100℃以下に冷却して、含有する水銀等の気化物を凝縮している。しかしながら、排ガスを100℃以下に冷却すると、結露対策が必要になり、また、設備も大型化する。このため水銀の回収コストが増加することが懸念される。
【0010】
そこで、本発明は、一つの側面において、ガス中の水銀を効率よく回収して大気中に放出される水銀の量を低減することが可能な水銀回収装置を提供することを目的とする。また、本発明は、別の側面において、ガス中の水銀を効率よく回収して大気中に放出される水銀の量を低減することが可能な水銀回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、流路を上流から下流に向かって流通するガスから水銀を回収する水銀回収装置であって、水銀含有ガスと未燃分を含む固体原料とを含有する混合ガスから、固体原料を回収する原料回収器と、原料回収器の下流において流路を流通する水銀含有ガスを抽気する抽気部と、抽気部で抽気される水銀含有ガスと水銀吸着材とを混合して、水銀含有ガスに含まれる水銀を吸着した水銀吸着材を回収する水銀回収部と、抽気部の下流において、前記混合ガスよりも低い温度で流路を流通する水銀含有ガス中の水銀を含む原料ダストを集塵する集塵器と、原料ダストを、原料回収器の上流側において流路を流通するガスに合流させる流路と、を備える、水銀回収装置を提供する。
【0012】
上記水銀回収装置は、水銀含有ガスと未燃分を含む固体原料とを含有する混合ガスから、原料回収器によって固体原料を回収している。混合ガスは固体原料から蒸発した水銀を含むことから、ガス状態の水銀を除去しつつ固体原料を回収できる。このため、固体原料中における水銀濃度を低減することができる。そして、原料回収器の下流の抽気部において水銀含有ガスを抽気している。この水銀含有ガスには、水銀含有ガス及び固体原料に含まれていた水銀が濃縮されている。したがって、水銀回収部において、抽気した水銀含有ガスと水銀吸着材とを混合して、水銀含有ガスに含まれる水銀を吸着することによって、効率よく水銀を回収することができる。また、抽気する水銀含有ガスの量も低減することができる。
【0013】
一方、抽気部で抽気されない水銀含有ガスは、原料回収器で回収されず、且つ抽気部で抽気されない固体原料を含む原料ダストを含有する。原料ダストは水銀の吸着性能に優れる未燃分及び微粉を多く含有することから、抽気部の下流に配置される集塵器において水銀を含む原料ダストを集塵する。ここでは、水銀含有ガスの温度が原料回収部に導入される混合ガスの温度よりも低いため、原料ダストの水銀吸着性能が向上して大気中に水銀が放出されることを抑制できる。集塵される原料ダストは、原料回収器の上流側において流路を流通するガスに合流させる。この原料ダストは、集塵器に導入される水銀含有ガスよりも高温のガスと合流することによって水銀が蒸発し、水銀含有ガスと固体原料とを含有する混合ガスとなって原料回収器に供給される。このように、集塵器において水銀を集塵して原料ダストとして回収しつつ、水銀回収部で水銀が濃縮された水銀含有ガスの水銀を水銀吸着材で吸着している。したがって、ガスに含まれる水銀を効率よく回収して、集塵器からガスとして放出される水銀の量を低減することができる。
【0014】
上記水銀回収装置は、流路を流通する水銀含有ガスに未燃分を含有する固体原料を合流させる合流部を、抽気部と集塵器との間に備えることが好ましい。未燃分は水銀の吸着性能に優れることから、集塵器の上流側において水銀を固体原料に吸着させることができる。そのため水銀の回収が容易になり、集塵器からガスとして放出される水銀を低減することができる。
【0015】
上記水銀回収装置は、抽気部と水銀回収部との間に、抽気された水銀含有ガスから固形分を除去する除去部を備えることが好ましい。これによって、水銀回収装置に流入する固形分が低減され、水銀吸着材の回収負荷を軽減することができる。なお、除去部では、水銀含有ガスの温度を200℃以上に維持することが好ましい。これによって、除去部において除去されるダストに含まれる水銀が低減され、水銀回収部で高濃度の水銀を含有する水銀含有ガスを処理することができる。したがって、水銀吸着材の回収負荷を軽減しつつ、効率よく水銀を回収することができる。
【0016】
上記水銀回収装置は、水銀回収部で回収された水銀吸着材の少なくとも一部を、水銀含有ガスに合流させる循環流路を備えることが好ましい。このように、水銀吸着材を循環して繰り返し使用することによって、水銀吸着材を有効利用して回収される水銀吸着材の量を低減することができる。
【0017】
上記水銀回収装置は、水銀回収部において、水銀含有ガスから水銀を低減したガスを、抽気部よりも下流側の流路に戻す流路を備えることが好ましい。これによって、水銀の大気への放出量を一層抑制することができる。
【0018】
上記水銀回収装置は、集塵器は、300℃以下である水銀含有ガス中の水銀を含む原料ダストを集塵することが好ましい。これによって、水銀含有ガスの水銀ガスが凝縮して原料ダストに効率よく吸着される。原料ダストによって吸着される水銀の量が増えることから、大気に放出される水銀の量を一層低減することができる。
【0019】
上記水銀回収装置における原料回収器はセメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きキルンのサイクロンであり、サイクロンの入口側に固体原料を供給する投入機と、サイクロンの出口側に水銀含有ガスである排ガスを抽気する抽気部と、を備えていてもよい。このように水銀回収装置をセメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きキルンのサイクロンとして用いることによって、セメントクリンカ製造設備における水銀の大気への放出量を効率的に低減することができる。
【0020】
本発明においては、集塵器で集塵される固体原料は、石炭灰及び焼却灰の少なくとも一方を含むことが好ましい。石炭灰及び焼却灰は未燃分を含むことから、水銀の吸着性能に優れる。したがって、大気への水銀の放出量を十分に低減することができる。
【0021】
本発明は、別の側面において、流路を上流から下流に向かって流通するガスから水銀を回収する水銀回収方法であって、水銀含有ガスと未燃分を含む固体原料とを含む混合ガスから原料回収器によって固体原料を回収する原料回収工程と、固体原料を回収して得られる流路を流通する水銀含有ガスの一部を抽気部において抽気する抽気工程と、抽気された水銀含有ガスと水銀吸着材とを混合して、水銀含有ガスに含まれる水銀を吸着した水銀吸着材を回収する水銀回収工程と、抽気部の下流において、前記混合ガスよりも低い温度で流路を流通する水銀含有ガス中の水銀を吸着した原料ダストを集塵する集塵工程と、原料ダストを、原料回収器の上流側において流路を流通するガスに合流させる合流工程と、を有する、水銀回収方法を提供する。
【0022】
上記水銀回収方法によれば、水銀含有ガスと未燃分を含む固体原料とを含有する混合ガスから、原料回収器によって固体原料を回収する原料回収工程を有している。原料回収工程では固体原料から蒸発した水銀を含む混合ガスから固体原料を得ることで、ガス状態の水銀を除去しながら固体原料を回収できる。このため、固体原料中における水銀濃度を低減することができる。そして、抽気工程では固体原料を回収して得られる流路を流通する水銀含有ガスを抽気している。この水銀含有ガスには、固体原料及び水銀含有ガスに含まれる水銀が濃縮されている。したがって、水銀回収工程において、抽気された水銀含有ガスと水銀吸着材とを混合して、水銀含有ガスに含まれる水銀を吸着することによって、効率よく水銀を回収することができる。また、抽気工程において抽気する水銀含有ガスの量も低減することができる。
【0023】
一方、抽気工程で抽気されない水銀含有ガスは、原料回収工程で回収されず且つ抽気部で抽気されない固体原料を含む原料ダストを含有する。原料ダストは水銀の吸着性能に優れる未燃分及び微粉を多く含有することから、集塵工程において水銀を含む原料ダストが集塵される。ここでは、水銀含有ガスの温度が原料回収部に導入される混合ガスの温度よりも低いため、原料ダストの水銀吸着性能が向上して大気中に水銀が放出されることを抑制できる。集塵される原料ダストは、原料回収器の上流側において流路を流通するガスに合流させる。この原料ダストは、集塵工程で処理される水銀含有ガスよりも高温のガスと合流することによって水銀が蒸発し、水銀含有ガスと固体原料とを含有する混合ガスとなって、原料回収器に供給される。このように、集塵工程で水銀を原料ダストに吸着させて集塵することで水銀含有ガスから原料ダストを除去しつつ、水銀回収部で水銀が濃縮された水銀含有ガスの水銀を水銀吸着材で吸着し回収している。したがって、ガスに含まれる水銀を効率よく回収して、集塵工程を経てガスとして放出される水銀の量を低減することができる。
【0024】
上記集塵工程では、300℃以下である水銀含有ガス中の水銀を含む原料ダストを集塵することが好ましい。これによって、水銀含有ガスの水銀ガスが凝縮して原料ダストに効率よく吸着される。原料ダストによって吸着される水銀の量が増えることから、大気に放出される水銀を一層低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、一つの側面において、ガスに含まれる水銀を効率よく回収して大気中に放出される水銀の量を低減することが可能な水銀回収装置を提供することができる。また、本発明は、別の側面において、ガスに含まれる水銀を効率よく回収して大気中に放出される水銀の量を低減することが可能な水銀回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、場合により図面を参照して、本発明の水銀回収装置の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0028】
図1は、水銀回収装置の一実施形態を示す図である。
図1の水銀回収装置100は、流路P1を流通するガスから水銀を回収する装置である。流路P1は、各種機器とこれらを接続する配管で構成される。流路P1内のガスは、
図1の左から右に向かって流通している。このため、
図1の左側が流路P1を流通するガスの流通方向の上流側に該当し、
図1の右側が流路P1を流通するガスの流通方向の下流側に該当する。水銀回収装置100は、流路P1の水銀含有ガスの流通方向に沿って、上流側から、合流部11、原料回収器12、抽気部13、合流部17及び集塵器15がこの順に直列に配置されている。合流部11、原料回収器12、抽気部13、合流部17及び集塵器15は、流路P1によって連通している。
【0029】
合流部17には固体原料が流路P1内を流通する水銀含有ガスに合流するように、流路P4を介して原料投入機14が接続されている。原料投入機14としては、例えば、固体原料の供給量を調節可能なものが挙げられる。例えば、回転数を調整可能なロータリーフィーダであってもよい。原料投入機14は、適切な量の固体原料を供給して水銀含有ガスに合流させる。固体原料は、未燃分を含む固体状のものを用いることが可能であり、例えば、石炭灰及び焼却灰が挙げられる。なお、排ガスや固体原料の性状に応じて、金属HgをHgCl
2に変化させる塩化物が不足するようであれば、水銀吸着材と共に多少の塩化物を入れてもよい。
【0030】
固体原料は、例えば活性炭等の水銀吸着材を水銀含有ガスに吹き込んだ後、集塵して得られるダストを含んでいてもよい。固体原料は未燃カーボンなどの未燃分を含むため、水銀含有ガスに含まれる水銀を十分吸着することができる。したがって、大気への水銀の放出量を十分に低減することができる。集塵器15から流路P9を流通して放出される排ガス中の水銀濃度は、例えば、50μg/m
3N以下であってもよく、30μg/m
3N以下であってもよい。
【0031】
合流部17において水銀含有ガスに固体原料を合流させた後、固体原料を含む水銀含有ガスは、集塵器15に導入される(集塵工程)。集塵器15は、例えば、電気集塵器であってもよく、バグフィルタであってもよい。集塵器15に導入される水銀含有ガスの温度は、固体原料の水銀吸着性能向上の観点から、原料回収器12に導入される混合ガスよりも温度が低く、例えば50〜300℃である。集塵器15が電気集塵器の場合、集塵効率や水銀除去効率から、集塵器15に導入される混合ガスの温度は90〜120℃であることが好ましいが、250℃以上でも運転できる。水銀含有ガスの温度は、集塵器15の上流側で、例えば散水等によって低減することができる。集塵器15がバグフィルタの場合、適切な材質を選択することによって混合ガスの温度が50〜300℃でも運転可能である。混合ガスの温度は低いほど物理吸着の効率が高くなるが、結露対策、煙突効果及び材料コストの観点から、100〜180℃であることが好ましい。
【0032】
集塵器15がバグフィルタの場合、水銀含有ガスと固体原料との接触時間を長くすることができる。集塵器15が電気集塵器の場合、原料投入機14から供給される未燃分を含む固体原料の量をバグフィルタの場合よりも多くすることによって、バグフィルタと同程度に排ガスからの水銀の放出を抑えることができる。
【0033】
集塵器15の上流側に、集塵器15の負荷を下げるために、サイクロンや重力沈降室等の集塵設備を設けてもよい。集塵設備には、調湿塔のように、散水後に排ガスの流れを変え重力も利用して集塵する装置も含まれる。
【0034】
集塵器15では未燃分を含む固体原料を含有する原料ダストが集塵される。この原料ダストには、未燃分の他に、未燃分に吸着された水銀が含まれる。集塵器15には、集塵した原料ダストを、原料回収器12の上流側の合流部11において流路P1を流通するガスに合流させる流路P5が接続されている。集塵器15で集塵された原料ダストは、流路P5を流通して、合流部11において流路P1を流通するガスに合流する。このとき、合流して得られる水銀含有ガスの温度が、集塵器15に導入される混合ガスの温度よりも高くなるように合流する(合流工程)。
【0035】
集塵器15で捕集された原料ダストの少なくとも一部は、流路P10によって抜き出されて他の用途に用いられてもよい。一方、集塵器15で捕集された原料ダストの全てを、合流部11においてガスに合流させてもよい。この場合、流路P10はなくてもよい。
【0036】
流路P5には投入機を設け、投入機から合流部11に原料ダストを供給してもよい。投入機としては、粉体等の固形分を供給する装置を用いることができる。気密性の観点から、ロータリーフィーダであることが好ましい。
【0037】
水銀の沸点は、金属Hgは357℃で、HgCl
2は304℃である。したがって、水銀含有ガスの温度は400℃以上であることが好ましく、例えば、400〜800℃であってもよい。この場合、合流部11でガスと合流する原料ダストは300〜400℃程度に加熱される。このため、原料ダストに含まれる水銀の大部分は蒸発する。これによって、流路P1には高濃度の水銀含有ガスが流通することになる。
【0038】
合流部11で原料ダストと合流するガスは、例えばセメントクリンカ製造装置の排ガスであってもよく、ガスバーナーを用いる炉の燃焼ガスであってもよい。また、石炭を燃焼した排ガスや、水銀を含む原料を加熱した水銀含有ガスであってもよい。ガスが、水銀と未燃分又はダストを含む場合、ガスに含まれる水銀とダストの除去を同時に行うことができる。
【0039】
合流部11で得られた水銀含有ガスは、原料回収器12に導入される(原料回収工程)。原料回収器12の集塵効率は80%以上であることが好ましい。回収される原料に吸着する水銀の量を減らして水銀回収部10で回収される水銀の量を増やすため、合流部11から原料回収器12に導入されるまで、及び原料回収器12内の混合ガスの温度は高い方が好ましく、例えば300℃以上であることが好ましい。これによって、水銀を蒸発させるとともに、未燃分の水銀吸着性能を低くして、原料回収器12で回収される固体原料中の水銀濃度を低減することができる。
【0040】
原料回収器12は、流路P1に設けられるため低圧損であることが好ましい。また、原料回収器12において水銀含有ガスの温度を高く維持するため、水銀含有ガスの滞留時間が短く且つ水銀含有ガスが冷却され難いことが好ましい。このような観点から、原料回収器12は、例えばサイクロン又は慣性集塵器であることが好ましい。
【0041】
原料回収器12で回収できなかった固体原料は、一般に未燃分を多く含む小径の粒子が多く、原料投入機14から供給される未燃分を含む固体原料と同様の水銀吸着作用を有する。このため、原料回収器12を低圧損化して、90〜98%の集塵効率で小径の粒子を多少逃がす方が好ましい。なお、運転条件に応じて、集塵効率の高いバッグフィルタ又は電気集塵器も利用してもよい。
【0042】
原料回収器12において原料を回収することによって得られる水銀含有ガスは、固体原料に由来する水銀も含むため、水銀濃度が高くなっている。この水銀含有ガスは、原料回収器12で回収できなかった未燃分を多く含む小径の原料ダストを含んでいてもよい。このような水銀含有ガスが、流路P1を流通して原料回収器12の下流側にある抽気部13に到達する。抽気部13では、抽気管P3が流路P1に接続されている。抽気部13では流路P1を流通してきた水銀含有ガスの一部を抽気する(抽気工程)。
【0043】
抽気管P3は、抽気部13において、流路P1から分岐するように設けられる。抽気管P3は、流路P1における水銀含有ガスの流通方向に対して鋭角をなすように接続されてもよい。これによって、低圧損化を図ることができる。逆に、抽気管P3は、流路P1における水銀含有ガスの流通方向に対して鈍角をなすように接続されてもよい。これによって、水銀含有ガスに含まれるダストの吸引量を減らすことができる。このような形態は、抽気部13から水銀吸着材を混合するまでの間に固形分を除去する装置を設けない場合に特に好ましい。抽気部13は、原料回収器12と合流部17との間に配置される。抽気管P3は、通常の配管であってよく、温度によっては耐火物が施工されていてもよい。
【0044】
抽気部13において、流路P1は屈曲部又は湾曲部を有していてもよい。この場合、抽気管P3を流路P1の屈曲部又は湾曲部の内周側に接続して抽気部13を構成すれば、抽気される水銀含有ガスのダストの量を低減することができる。これによって、水銀回収集塵器10Bで回収されるダストの量を低減することができる。
【0045】
抽気率とは、流路P1内を流通する水銀含有ガスを抽気部13で抽気する割合をいう。必要な抽気率は、水銀回収装置100で水銀を回収していない場合に大気に放出される水銀量に対して、水銀回収装置100で水銀を回収している場合に回収される水銀量の割合である回収率(Aとする)と、濃縮率(Bとする)とから概ね計算できる。ここで濃縮率は、水銀回収装置100で水銀を回収していない場合に大気に放出される水銀の量(例えばg/日のような単位で表される時間当たりの量)に対する、抽気部13で抽気する直前の流路P1を流通する水銀の量を同じ単位で表した量の倍率である。Aが80%程度以下の場合、濃縮率はあまり変化しないので、必要な抽気率は、概ね、A/Bに2倍程度の安全率を掛けて計算することができる。本実施形態では、Bは100倍以上にすることも可能である。Aが50%なら、上記計算(50%/100×2=1%)から、抽気率は1%以下で十分である。
【0046】
抽気管P3を流通する水銀含有ガスは、水銀回収部10に導入され、水銀が除去される(水銀回収工程)。水銀回収部10は、水銀吸着材を抽気管P3に供給して水銀吸着材を水銀含有ガスに混合する投入機10Aと、水銀含有ガスに含まれる水銀を吸着した水銀吸着材を集塵する水銀回収集塵器10Bとを備える。投入機10Aは、一般的な粉体を供給する装置を利用できる。気密性の観点から、投入機10Aは、ロータリーフィーダを有することが好ましいまた、投入する水銀吸着材の計量の精度向上のため、テーブルフィーダを有することが好ましい。
【0047】
水銀回収集塵器10Bは、集塵器15と同様に、電気集塵器であってもよく、バグフィルタであってもよい。水銀吸着材への水銀吸着効率の観点から、水銀回収集塵器10Bはバグフィルタであることが好ましい。水銀回収集塵器10Bはサイクロンであってもよい。
【0048】
水銀吸着材は、大きい比表面積を有し、物理吸着性能に優れる一般的な材料を用いることができる。例えば、未燃分の多いダスト、飛灰、活性炭及びゼオライトが挙げられる。水銀回収集塵器10Bで回収される固形分を低減する観点から、活性炭又はゼオライトを用いてもよい。飛灰は、CaCl
2のような塩化物を含んでいてもよい。塩化物を含む場合、水銀含有ガスに含まれる水銀が反応してHgCl
2が生成する。金属HgよりもHgCl
2の方が吸着しやすいため、塩化物を含む飛灰を用いることによって、水銀の回収効率を一層向上することができる。この場合、水銀含有ガスの温度が200℃以上であっても効率よく水銀を吸着することができる。
【0049】
乾式で取り出した焼却灰や石炭灰は塩化物をかなり含む。これらを粉砕して取り出した未燃分は、水銀含有ガスの温度が200℃以上であっても水銀吸着材として好適に使用することができる。活性炭又はゼオライトを、塩化物を含むガスに通して改質してもよい。これによって、上述の飛灰と同様に水銀含有ガスの温度が200℃以上であっても水銀を効率よく吸着することができる。塩化物を含むガスによる改質は、原料投入機14から供給される固体原料に対して施してもよい。
【0050】
水銀回収集塵器10Bで水銀吸着材を捕集したガスは、適切に処理をすれば、流路P7から大気に放出することができる。ただし、当該処理ガスは、再び抽気されないように、流路P1を流通する水銀含有ガスに合流させてもよい。また、抽気部13よりも下流側を流通する水銀含有ガスに合流させるとよい。本実施形態では、水銀濃度が高い水銀含有ガスを抽気しているため、抽気する水銀含有ガスの量を低減することができる。このため、水銀回収集塵器10Bからの排ガスを、流路P1を流通する水銀含有ガスに合流させても、各機器の負荷を大きく増大させることなく安定して処理を継続することができる。
【0051】
一方、水銀回収集塵器10Bで捕集された水銀を吸着した水銀吸着材は、少なくとも一部を投入機10Aに戻して再利用してもよいし、流路P8から排出してもよい。使用済みの水銀吸着材は、公知のプロセスによって処理される。このようにして、大気に放出される水銀を低減することができる。抽気部13で抽気されなかった水銀含有ガスには、合流部17において固体原料が合流する。合流後、上述した一連のプロセスが繰り返し行われる。これによって、水銀を含む固体原料を連続的に使用することができる。
【0052】
図2は、水銀回収装置の別の実施形態を示す図である。
図2の水銀回収装置110は、
図1の水銀回収装置100と同様にして流路P1を流通するガスから水銀を回収する装置である。流路P1内のガスは、
図2の左から右に向かって流通している。このため、
図2の左側が流路P1を流通するガスの流通方向の上流側に該当し、
図2の右側が流路P1を流通するガスの流通方向の下流側に該当する。
【0053】
水銀回収装置110は、(i)抽気管P3にダストを除去する除去器10Dを設けている点、(ii)水銀回収集塵器10Bで水銀吸着材を捕集したガスを、流路P7を介して抽気部13よりも下流側を流通する水銀含有ガスに合流させている点、(iii)水銀回収集塵器10Bで捕集された水銀を吸着した水銀吸着材を含むダストの一部を、流路P11を介して投入機10Cに供給している点で、水銀回収装置100と異なっている。その他の構成は水銀回収装置100と同じであることから、重複する説明をここでは省略する。
【0054】
除去器10Dは、例えばバグフィルタ、及び電気集塵器が挙げられる。抽気管P3で抽気された水銀含有ガスに含まれる固形分の大部分は、除去器10Dにおいて除去される。除去器10Dは、除去される固形分に水銀が吸着するのを抑制するため、200℃以上、好ましくは300℃以上に維持される。除去器10Dを設けることによって、水銀含有ガスに同伴して水銀回収集塵器10Bに持ち込まれるダストを低減することができる。これによって、水銀回収集塵器10Bで回収される水銀吸着材の水銀濃度が高くなって効率よく水銀を吸着することが可能になるため、水銀吸着材の量を低減することができる。
【0055】
除去器10Dにおいて固形分が除去された後、水銀含有ガスには投入機10Cから水銀吸着材が供給され、水銀含有ガスと水銀吸着材が混合される。水銀回収集塵器10Bでは、水銀を吸着した水銀吸着材を含むダストが捕集される。捕集されたダストの一部は、流路P11を介して投入機10Cに戻し循環再利用される。一方、捕集されたダストの他部は、流路P8を流通して排出される。流路P11及び流路P12は例えば保温しないスクリューコンベアであってもよい。このように、流路P11及び流路P12においてダストを冷却しながら抽気管P3に送ると、再投入後の水銀含有ガスの温度が下がるため水銀吸着材の吸着性能を向上することができる。
【0056】
投入機10Cに戻す(循環利用する)ダストの量は、水銀含有ガスの温度及び水銀回収集塵器10Bの種類に応じて調整することができる。例えば、水銀回収集塵器10Bで回収されるダスト全体に対して80%以上のダストを投入機10Cに戻してもよい。このようにして再利用される水銀吸着材は、水銀含有ガスとの接触により、水銀吸着性能が上がる場合もある。したがって、水銀回収集塵器10Bから排出されるダストの量を低減することができる。
【0057】
水銀は、細孔容積の測定に使われることから分かるように、一般的な吸着材に濡れ難い性質を有する。そして、液体での温度範囲が広く、表面張力が極めて大きいといった、他の物質と異なる特徴を有しており、水銀同士が集まって液滴を形成し易い傾向にある。そのため、細長い細孔を多く有する吸着表面積の大きい吸着材を使うと、細孔の入口に水銀の液滴ができて蓋を形成する。このため、細孔の奥の吸着表面が本来の機能を発揮し難くなることがある。この液滴の蓋を形成する水銀も、温度と時間があれば再び蒸発して細孔の奥に移動して吸着される。これによって、水銀吸着材の吸着表面の全体を有効に活用することができる。
【0058】
そのため、水銀回収集塵器10Bで回収した水銀吸着材の少なくとも一部を、再び投入機10Cから供給する循環経路を備えると、一見ほぼ破過しているようでも、更にかなりの水銀を吸着することができる。したがって、循環使用される水銀吸着材では、水銀回収集塵器10Bで回収され再び投入機10Cから抽気管P3に再供給される間に温度が下がり、再供給時に温度が上がって細孔の奥に水銀が拡散し易くなることが考えられる。
【0059】
水銀回収部10は、投入機10Cに加えて、
図1に示す投入機10Aを有していてもよい。この場合、投入機10Cを水銀回収集塵器10Bで回収されたダストを投入する投入機とし、投入機10Aをフレッシュな水銀回収材を投入する投入機としてもよい。このようにすれば、水銀回収材の供給量の調節及び制御を行い易くすることができる。投入機10Cとしては、投入機10Aと同様のものを用いることができる。
【0060】
水銀回収集塵器10Bで回収されるダストのうち、水銀濃度の高いダストだけを流路P8から回収してもよい。例えば、水銀回収集塵器10Bのダスト出口に設置した槽において、水銀回収集塵器で回収されるダストを流動化し、浮き上がってくる未燃分の多いダストのみを集めて回収してもよい。一方、回収されなかったダストは、未燃分を含むダストとして流路P1の水銀含有ガスに混合してもよい。
【0061】
水銀回収集塵器10Bは、バグフィルタであってもよいし、サイクロンであってもよい。バグフィルタは、水銀吸着材がフィルタ表面にダストの層を形成するため、水銀含有ガスと水銀吸着材との接触も良好にすることができる。また、滞留時間も長くできるので、水銀回収部10における水銀等の吸着性能を一層向上することができる。サイクロンを用いる場合、集塵効率を例えば95%以上にするともに、水銀吸着材の循環再利用を十分に行って、水銀吸着材における水銀の吸着濃度を高くすることが好ましい。
【0062】
水銀回収集塵器10Bでダストを分離して水銀が低減された処理ガスは、流路P7を流通して流路P1に戻り、抽気部13で抽気されなかった水銀含有ガスと合流部18で合流する。これによって、水銀回収集塵器10Bから大気に放出される処理ガスが低減されるため、大気に放出される水銀の量を一層低減することができる。また、処理ガスの顕熱も有効利用することができる。
【0063】
図3は、水銀回収装置のさらに別の実施形態を示す図である。
図3の水銀回収装置120は、
図1の水銀回収装置100と同様にして流路P1を流通するガスから水銀を回収する装置である。流路P1内のガスは、
図3の左から右に向かって流通している。このため、
図3の左側が流路P1を流通するガスの流通方向の上流側に該当し、
図3の右側が流路P1を流通するガスの流通方向の下流側に該当する。
【0064】
水銀回収装置120は、合流部11と原料回収器12との間に、固体原料を、流路P1を流通するガスに合流させる合流部17を有する点で、水銀回収装置100と異なっている。その他の構成は水銀回収装置100と同じであることから、重複する説明をここでは省略する。水銀回収装置120の場合も、固体原料に含まれる水銀が、原料回収器12において固体原料と分離された後、抽気部13から抽気される水銀含有ガスを水銀回収部10で処理することによって、水銀が回収される。したがって、大気に放出される水銀を抑制しつつ、効率よく水銀を回収することができる。なお、抽気部13から抽気される水銀含有ガスに含まれる原料ダストの量が多くなることから、
図2の水銀回収装置110と同様に、ダストを除去する除去器10Dを設けてもよい。
【0065】
図4は、水銀回収装置のさらに別の実施形態を示す図である。
図4の水銀回収装置130は、
図1の水銀回収装置100と同様にして流路P1を流通するガスから水銀を回収する装置である。流路P1内のガスは、
図4の左から右に向かって流通している。このため、
図4の左側が流路P1を流通するガスの流通方向の上流側に該当し、
図4の右側が流路P1を流通するガスの流通方向の下流側に該当する。
【0066】
水銀回収装置130は、合流部11よりも上流側の流路P1に、固体原料を、流路P1を流通するガスに合流させる合流部17を有する点で、水銀回収装置100と異なっている。その他の構成は水銀回収装置100と同じであることから、重複する説明をここでは省略する。水銀回収装置130の場合も、固体原料に含まれる水銀が、原料回収器12において固体原料と分離された後、抽気部13から抽気される水銀含有ガスを水銀回収部10で処理することによって、水銀が回収される。したがって、大気に放出される水銀を抑制しつつ、効率よく水銀を回収することができる。なお、抽気部13から抽気される水銀含有ガスに含まれる原料ダストの量が多くなることから、
図2の水銀回収装置110と同様に、ダストを除去する除去器10Dを設けてもよい。また、合流部17を流路P5上に設けて、集塵器15で集塵された原料ダストとともに固体原料を合流部11から流路P1に投入してもよい。
【0067】
図5は、水銀回収装置を備えるセメントクリンカ製造設備を示す図である。
図5に示すセメントクリンカ製造設備200は、セメントクリンカ製造装置50と、水銀回収装置150とを備える。セメントクリンカ製造装置50は、キルン60と、サスペンションプレヒータSPとを備える。すなわち、セメントクリンカ製造装置50はサスペンションプレヒータ付きキルンを備える。サスペンションプレヒータSPの最上段サイクロン12は、原料回収器に相当する。
図5の実線は固体の流れを示し、破線はガス及びこれに同伴されるダスト等の流れを示している。
【0068】
セメントクリンカ製造装置50のサスペンションプレヒータSPの最上段サイクロン12から排出されるSP排ガスG1は、SPファン23の吸引によって主煙道である流路P1Bによって排気される。
【0069】
最上段サイクロン12から排出されるSP排ガスG1(水銀含有ガス)は、最上段サイクロン12等で蒸発した水銀を同伴することから水銀濃度が高くなっている。SP排ガスG1温度は、最上段サイクロン12から流路P1Bに排出された直後で例えば300〜400℃の温度を有していてもよい。なお、別の幾つかの実施形態では、流路P1Bの途中にボイラ又は散水装置を設けてSPファン23の出口において250℃程度まで冷却してもよい。
【0070】
SP排ガスG1は、SPファン23の出口に接続された流路P1C内を流通して抽気部13に到達する。抽気部13には抽気管P3が接続されている。SP排ガスG1の一部は抽気管P3によって抽気される。主煙道である流路P1Cから抽気管P3に抽気されるSP排ガスG1の抽気率は、例えば1%以下であってもよい。本実施形態によれば、SP排ガス中の水銀の濃縮率は100倍以上になるため、このように抽気率を低くすることができる。
【0071】
本実施形態の一例では、抽気部13で抽気されるSP排ガスG1の温度を250℃とし、原料投入機14から石炭灰を供給し、集塵器15として電気集塵器を用いて90℃程度で運転したときに、SP排ガス中の水銀の濃縮率は200倍程度と計算される。
【0072】
集塵器15としてバグフィルタを用いて水銀の大気への放出量をさらに低減したり、抽気部13で抽気されるSP排ガスG1の温度をさらに高温にして水銀の蒸発量を増やしたりすることによって、水銀の濃縮率をさらに高くすれば、抽気率をさらに低減することができる。
【0073】
抽気管P3で抽気されたSP排ガスG1は、除去器10Dに導入される。除去器10Dは、バグフィルタ又は電気集塵器であってもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。除去器10Dがバグフィルタを有することによって、原料ダストの除去を高い精度で行うことができる。除去器10Dはバグフィルタ及び電気集塵器に限定されず、例えば、集塵効率が99%以上の高効率のサイクロン(マルチクロン)であってもよい。
【0074】
除去器10Dによって、SP排ガスG1に同伴される原料ダストの大部分を除去することができる。これによって、水銀回収部10の後段部分の負荷を低減することができる。除去器10DにおけるSP排ガスG1の温度は200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。これによって、除去器10Dで捕捉される原料ダストに水銀が吸着することを抑制することができる。除去器10Dで捕集された原料ダストは、流路P21によって流路P5Bに合流させてもよい。
【0075】
除去器10Dによって固形分が十分に低減されたSP排ガスG1に、投入機10Aから流路P12Aによって水銀吸着材を供給して、水銀含有ガスであるSP排ガスG1と水銀吸着材とを混合する。これによってSP排ガスG1に含まれる水銀は水銀吸着材に吸着される。水銀吸着材は投入機10Aから計量して供給してもよい。SP排ガスG1と水銀吸着材とを含む混合ガスは、水銀回収集塵器10Bに導入される。水銀回収集塵器10Bでは、水銀を吸着した水銀吸着材を含むダストが集塵されるとともに、SP排ガスG1よりも水銀濃度が低減された排ガスが得られる。
【0076】
水銀回収集塵器10Bで集塵したダストは、その一部を流路P8から系外に排出し、残りのダストは流路P11を経由して投入機10Cに戻す。そして、投入機10Cから、流路P12Cを経由してSP排ガスG1と再び混合される。このように流路P11、投入機10C及び流路P12Cは、水銀吸着材の循環流路を構成する。水銀吸着材を循環して繰り返し使用することによって、水銀吸着材の使用量を低減することができる。流路P8から排出されるダストは、図示しないプロセスによって水銀を除去して、その水銀の最終処理を行ってもよい。
【0077】
水銀吸着材としては、例えば、未燃分の多いダスト、飛灰、活性炭及びゼオライトを用いることができる。
【0078】
水銀回収集塵器10Bで集塵したダストを投入する投入機10Cと、フレッシュな水銀吸着材を投入する投入機10Aとは別個に設けられている。投入機10Aから供給される水銀吸着材は計量しながら供給するのに対し、投入機10Cから投入される水銀吸着材(循環利用)は計量せずに供給してもよい。投入機10Cとしては、例えば、スクリューコンベアを用いてもよい。このとき、例えばマテリアルシールが効くように運転すると、循環利用される水銀吸着材を適度に冷却することができる。
【0079】
水銀回収集塵器10Bは例えば100〜300℃で運転する。これによって、抽気されたSP排ガスG1の水銀回収率を十分に高くすることができる。抽気されたSP排ガスG1の水銀回収率は、例えば80%以上にすることができる。水銀回収集塵器10Bを、250℃を超える温度で運転する場合、高温バグフィルタを用いることが好ましい。これによって、抽気されたSP排ガスG1の水銀回収率を例えば50%以上に維持することができる。水銀回収率が低い場合には、抽気率を上げることによって水銀回収率を高くすることができる。
【0080】
水銀回収集塵器10Bで集塵したダストの内、流路P8から系外に排出されるダストの量は、バランス上、除去器10Dで除去されないダストと、投入機10Aから供給される水銀吸着材の合計になる。このような場合、輸送能力がネックにならない範囲は、系外に抜き出すダストの割合を一定に保てば自動的にバランスを取ることができる。例えば、流路P8から系外に排出されるダスト中の水銀の濃度が適当な目標値になるように、流路P8と流路P11との分岐点に振り分けダンパを用いて上記割合を調整してもよい。
【0081】
水銀回収集塵器10Bで得られる水銀が低減された排ガスは、流路P7を流通して流路P1Cに戻り、抽気部13で抽気されなかったSP排ガスG1と合流部18で合流する。流路P1CにおけるSP排ガスG1の流通方向を基準として、合流部18は、抽気部13よりも下流側に設けられる。なお、別の幾つかの実施形態では、水銀回収集塵器10Bからの排ガスは、流路P1Cに戻さずに別途排ガス処理を施して大気に放出してもよいし、流路P1Cのさらに下流側に戻してもよい。
【0082】
流路P1Bを流通するSP排ガスG1は合流部18で水銀回収集塵器10Bからの排ガスと合流し、分岐部26及び流路P1Dを流通した後、ガス処理部80に導入される。ガス処理部80は、乾燥粉砕機82、散水装置84及び乾燥器86を用いる。乾燥粉砕機82は、石灰石、粘土、硅石、及び鉄精鉱等のセメント原料を粉砕する装置であり、乾燥器86は、セメント原料を乾燥する装置である。散水装置84は、水を噴霧することによって排ガスの温度を冷却する装置である。乾燥粉砕機82及び乾燥器86で粉砕及び乾燥されたセメント原料は、図示しない流路を経由した後、流路P25から原料サイロ20に導入される。
【0083】
流路P1Dを流通してきた排ガスは、乾燥粉砕機82、乾燥器86及び散水装置84に導入され冷却される。乾燥粉砕機82を通過した排ガスは、流路P1Eで抜き出される。流路P1Eの合流部17には、原料投入機14から固体原料を供給する流路P4が接続されている。この合流部17において、流路P1Eを流通する排ガスと固体原料が合流する。固体原料は、未燃分を含む固体状のものを用いることが可能であり、例えば、石炭灰及び/又は焼却灰を含むことが好ましい。未燃分を含む固体原料を、乾燥粉砕機82の下流側の合流部17で合流させることによって、排ガスと固体原料との接触時間を長くすることができる。これによって、固体原料による水銀の吸着量を多くして、水銀の回収の効率を一層高くすることができる。
【0084】
合流部17で得られた排ガスと固体原料の混合ガスは、散水装置84及び乾燥器86から排出される排ガスと合流した後、流路P1Fを流通して集塵器15に導入される。集塵器15では、混合ガスが原料ダストと排ガスとに分離される。混合ガスに含まれる水銀は、未燃分を含有する固体原料に吸着されることから、集塵器15からの排ガスは水銀濃度が十分に低減されている。このため、流路P9を介して大気に放出される。
【0085】
ガス処理部80の構成は上述のものに限定されない。例えば、
図5ではガス処理部80において、排ガスの流通方向を基準として、乾燥粉砕機82、散水装置84及び乾燥器86を並列に配置しているが、これらの装置を直列に配置してもよいし、直列と並列とを組み合わせてもよい。また例えば、乾燥器86及び散水装置84の少なくとも一方はなくてもよい。また、合流部17は、乾燥粉砕機82、散水装置84及び乾燥器86からの排ガスが合流した後に設けてもよい。ガス処理部80の上流側、例えば、抽気部13と分岐部26との間に合流部17を設けてもよい。また、合流部18は、分岐部26の下流側に設けられてもよい。また、分岐部26はなくてもよく、流路P1Bを流通するSP排ガスG1は合流部18で水銀回収集塵器10Bからの排ガスと合流した後、その全量がガス処理部80に導入されてもよい。
【0086】
集塵器15は、集塵される原料ダストの水銀吸着性能が高い場合、電気集塵器を使うことができる。セメントクリンカ製造の場合、原料ダストの比抵抗との関係から、電気集塵器は100℃程度で運転される。このような低温では、原料ダストは通常十分な水銀の吸着性能を有する。
【0087】
合流部18からの排ガスの一部は、ガス処理部80に導入されずに分岐部26で分岐した後、流路P1Fを流通してそのまま集塵器15に導入されてもよい。ただし、排ガス中の水銀濃度が高い場合、ガス処理部80をバイパスして流路P1Fから集塵器15に導入される排ガスの量は低減することが好ましい。流路P9からの排ガス中の水銀濃度が高い場合には、原料投入機14からの原料供給量を増加したり、集塵器15における温度を下げたりすることによって水銀濃度を低減することができる。この場合、集塵器15としては、バグフィルタを使うとことが好ましい。
【0088】
集塵器15で集塵した原料ダストは、流路P5Aを流通し、通常は、図示していない混合サイロを経て、原料サイロ20に導入される。このように、セメントクリンカ製造設備200では、集塵器15で集塵した原料ダストのほぼ全量を、再び原料として再使用することができる。原料サイロ20では、他の原料とともに流路P5Bを流通して投入機24に導入される。原料ダストは他のセメント原料とともに投入機24からサスペンションプレヒータSPの最上段サイクロン12の入口側の流路P1Aに供給される。ここで、サイクロン内を上昇するガス(排ガス)と合流する。最上段サイクロン12において、原料ダストに吸着した水銀が完全に蒸発する必要はなく、例えば、セメント原料72のように下段のサイクロンに落下後に蒸発してもよい。このように高温のサイクロンに投入されることによって殆どの水銀を蒸発させることができる。このようにして、サスペンションプレヒータSPから排出される水銀を含むSP排ガスG1は、SPファン23の吸引によって主煙道である流路P1Bによって抽気される。
【0089】
サスペンションプレヒータSPを流下したセメント原料74は、キルン60に導入される。セメント原料74はキルン60においてバーナ64の燃焼によって焼成され、セメントクリンカが生成する。キルン60で得られたセメントクリンカは、クリンカクーラー62で冷却された後、取り出される。セメントクリンカ製造装置50は、サスペンションプレヒータの下方にバーナ61を備える仮焼炉を有している。この仮焼炉には、クリンカクーラー62からの抽気ダクト66が接続されている。なお、セメントクリンカ製造装置50は、このような構成に限定されるものではない。例えば、原料回収器に相当するサイクロン12は最上段サイクロンでなくてもよく、2段目以降のサイクロンであってもよい。
【0090】
図5における流路P1A,P1B,P1C,P1D,P1E及びP1Fは、
図1〜
図4における流路P1に相当する。
図5における流路P5A及び流路P5Bは、
図1〜
図4における流路P5に相当する。
【0091】
図5のセメントクリンカ製造設備200は、水銀回収装置150の水銀回収部10において、SP排ガスG1に含まれる水銀を水銀吸着材に吸着させて、水銀回収集塵器10Bで回収し、少なくとも一部を抜き出して処理している。これに併せて、ガス処理部80において排ガスに未燃分を含む原料を混合して排ガス中に含まれる水銀を吸着した後、集塵器15で原料を含むダストを集塵している。集塵した原料ダストは、他のセメント原料と共にサスペンションプレヒータSPに導入している。
【0092】
導入後、水銀は蒸発して除去され、他の原料とともにセメントクリンカとなる。一方、サスペンションプレヒータSPから排出されるSP排ガスG1には、蒸発した水銀が濃縮される。このように、水銀回収部10において水銀が濃縮されたSP排ガスG1から水銀を低減ないし除去していることから、大気に放出される水銀を効率よく低減することができる。
【0093】
次に、本発明の水銀回収方法の実施形態について説明する。本実施形態の水銀回収方法は、流路P1(P1A〜P1F)を上流から下流に向かって流通するガスから水銀を回収する水銀回収方法であって、次の工程を有する。下記の一連の工程を繰り返し行うことによって、継続的に水銀回収装置を運転することができる。
【0094】
・水銀含有ガスと未燃分を含む固体原料とを含有する混合ガスから原料回収器12によって固体原料を回収する原料回収工程
・固体原料を回収して得られる流路P1(P1C)を流通する水銀含有ガスの一部を抽気部13において抽気する抽気工程
・抽気された水銀含有ガスと水銀吸着材とを混合して、水銀含有ガスに含まれる水銀を吸着した水銀吸着材を回収する水銀回収工程
・抽気部13の下流において流路を流通し、混合ガスよりも低い温度で前記流路を流通する水銀含有ガス中の水銀を吸着した原料ダストを集塵する集塵工程
・原料ダストを、原料回収器12の上流側において流路P1(P1A)を流通するガスに合流させる合流工程
【0095】
上述の水銀回収方法は、例えば
図1〜
図5に示す水銀回収装置100,110,120,130,150のいずれかを用いて実施してもよいし、他の水銀回収装置を用いて実施してもよい。各工程の内容は、上述の水銀回収装置の説明内容を適用して行うことができる。この水銀回収方法によれば、水銀を効率よく回収して大気への水銀の放出量を低減することができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。