特許第6805793号(P6805793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805793
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   F04C18/02 311W
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-243633(P2016-243633)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-96327(P2018-96327A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−101804(JP,A)
【文献】 特開平08−144971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に潤滑油を貯留するケーシング(11)と、
上記ケーシング(11)内に設けられ、冷媒を吸入して圧縮するための圧縮室(31)が内部に形成された圧縮機構(30)と、
圧縮途中の上記圧縮室(31)に冷媒を導入するためのインジェクション通路(90)と、
上記インジェクション通路(90)に設けられ、該インジェクション通路(90)を開閉する弁機構(91)と、
上記インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流に接続され、上記圧縮機構(30)の作動中に、上記ケーシング(11)内に貯留された潤滑油を上記圧縮室(31)に常に供給するための給油通路(80)と、を備え
上記インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流に設けられ、上記圧縮室(31)へ向かう冷媒の流通だけを許容するように開閉する逆止弁(95)を備え、
上記逆止弁(95)は上記圧縮機構(30)の内部に設けられ、
上記給油通路(80)は、上記逆止弁(95)の開閉状態によらず上記インジェクション通路(90)に上記逆止弁(95)の下流側で連通する位置に接続されている
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
請求項において、
上記ケーシング(11)内に設けられ、上記圧縮機構(30)に接続されて該圧縮機構(30)を駆動する駆動軸を備え、
上記給油通路(80)は、上記駆動軸に形成されて上記ケーシング(11)内に貯留された潤滑油を上記圧縮機構(30)まで送るための第1通路(81)と、上記圧縮機構(30)に形成されて上記第1通路(81)内を送られてきた潤滑油を上記インジェクション通路(90)まで送るための第2通路(82)とを含んでいる
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項3】
請求項において、
上記ケーシング(11)外に設けられ、上記ケーシング(11)の底部と上記インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流とを連通させ、かつ上記給油通路(80)を形成する管体(100)を備えている
ことを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関し、特に、圧縮機構へ潤滑油を供給するための給油構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば冷凍サイクルにおいて冷媒を圧縮する圧縮機の効率向上を目的として、圧縮室の中間圧の位置に、冷凍サイクルの高圧圧力と低圧圧力の間の圧力(中間圧力)の冷媒を注入する中間インジェクションを行うことがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の圧縮機はスクロール圧縮機である。スクロール圧縮機は、一般にケーシング内に圧縮機構と駆動機構とを備え、圧縮機構は、固定スクロールと可動スクロールとを有し、固定スクロール及び可動スクロールは、それぞれ、互いに対向して配置される鏡板(固定側鏡板部及び可動側鏡板部)と、各鏡板に一体的に形成されて互いに噛み合う渦巻き状のラップ(固定側ラップ及び可動側ラップ)とを有している。
【0003】
特許文献1のスクロール圧縮機では、固定スクロールにインジェクション通路(90)が形成されている。インジェクション通路(90)には、中間インジェクションを行うときにインジェクション通路(90)を開き、中間インジェクションを行わないときにインジェクション通路(90)を閉じるように、電磁弁などの開閉弁が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−144971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記開閉弁はインジェクション通路(90)の途中に設けられるので、インジェクション通路(90)の圧縮室への開口部と開閉弁との間が比較的大きな死容積(圧縮に関与せず吐出後に冷媒が残る容積)になる。圧縮機では、吸入行程、圧縮行程、吐出行程がこの順に繰り返し行われるが、死容積が大きいと吐出行程が完了して次の圧縮行程が開始されるときに該死容積から圧縮室へ冷媒が逆流して再膨張し、圧縮室への吸入冷媒が少なくなるために圧縮機の効率が低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、中間インジェクションを行う圧縮機において、インジェクション通路が死容積になることで圧縮機の効率が低下するのを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の圧縮機は、底部に潤滑油を貯留するケーシング(11)と、上記ケーシング(11)内に設けられ、冷媒を吸入して圧縮するための圧縮室(31)が内部に形成された圧縮機構(30)と、圧縮途中の上記圧縮室(31)に冷媒を導入するためのインジェクション通路(90)と、上記インジェクション通路(90)に設けられ、該インジェクション通路(90)を開閉する弁機構(91)と、上記インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流に接続され、上記圧縮機構(30)の作動中に、上記ケーシング(11)内に貯留された潤滑油を上記圧縮室(31)に常に供給するための給油通路(80)と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
この第1の発明では、上記圧縮機構(30)の動作中には、インジェクション動作を行うか行わないかに関わらず、給油通路(80)からインジェクション通路(90)を通って潤滑油が圧縮室(31)へ供給される。したがって、インジェクション通路(90)の中には常に潤滑油が入っていて冷媒ガスが残りにくくなるから、該インジェクション通路(90)が死容積になるのを抑えられる。
【0009】
第1の発明は、さらに、上記インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流に設けられ、上記圧縮室(31)へ向かう冷媒の流通だけを許容するように開閉する逆止弁(95)を備え、上記逆止弁(95)は上記圧縮機構(30)の内部に設けられ、上記給油通路(80)は、上記逆止弁(95)の開閉状態によらず上記インジェクション通路(90)に上記逆止弁(95)の下流側で連通する位置に接続されていることを特徴としている。
【0010】
この第1の発明では、インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流に圧縮室(31)へ向かう冷媒の流通だけを許容するように開閉する逆止弁(95)を設け、給油通路(80)を、上記逆止弁(95)の開閉状態によらず上記インジェクション通路(90)に上記逆止弁(95)の下流側で連通するようにしているので、インジェクション通路(90)における逆止弁(95)の下流側に常に潤滑油が流通し、死容積が低減される。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記ケーシング(11)内に設けられ、上記圧縮機構(30)に接続されて該圧縮機構(30)を駆動する駆動軸を備え、上記給油通路(80)は、上記駆動軸に形成されて上記ケーシング(11)内に貯留された潤滑油を上記圧縮機構(30)まで送るための第1通路(81)と、上記圧縮機構(30)に形成されて上記第1通路(81)内を送られてきた潤滑油を上記インジェクション通路(90)まで送るための第2通路(82)とを含んでいることを特徴としている。
【0012】
この第2の発明では、駆動軸の第1通路(81)と圧縮機構(30)の第2通路(82)を通ってインジェクション通路(90)へ流入してから圧縮室(31)へ供給される。この構成においてもインジェクション通路(90)を潤滑油が流れるので、死容積が低減される。
【0013】
第3の発明は、第1の発明において、上記ケーシング(11)外に設けられ、上記ケーシング(11)の底部と上記インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流とを連通させ、かつ上記給油通路(80)を形成する管体(100)を備えていることを特徴としている。
【0014】
この第3の発明では、ケーシング(11)の底部に溜まった潤滑油がケーシング(11)外の管体(100)を通ってインジェクション通路(90)へ流入してから圧縮室(31)へ供給される。この構成においてもインジェクション通路(90)を潤滑油が流れるので、死容積が低減される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記圧縮機構(30)の動作中に、インジェクション動作を行うか行わないかに関わらず、給油通路(80)からインジェクション通路(90)を通って潤滑油が圧縮室(31)へ供給されるように構成したことにより、該インジェクション通路(90)が死容積になるのを抑えられるから、トータルの死容積を小さくし、圧縮機の効率が低下するのを抑えられる。
【0016】
上記第1の発明によれば、インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流に圧縮室(31)へ向かう冷媒の流通だけを許容するように開閉する逆止弁(95)を設け、給油通路(80)を、上記逆止弁(95)の開閉状態によらず上記インジェクション通路(90)に上記逆止弁(95)の下流側で連通するようにしたことにより、インジェクション通路(90)における逆止弁(95)の下流側に常に潤滑油が流通し、死容積が低減されるから、圧縮機の効率が低下するのを簡単な構成でより確実に抑えられる。
【0017】
上記第2の発明によれば、駆動軸の第1通路(81)と圧縮機構(30)の第2通路(82)を通ってインジェクション通路(90)へ流入してから圧縮室(31)に供給されるようにしたことにより、上記各発明と同様にインジェクション通路(90)を潤滑油が流れるので、死容積を小さくして圧縮機の効率低下を抑えられる。
【0018】
上記第3の発明によれば、ケーシング(11)の底部に溜まった潤滑油がケーシング(11)外の管体(100)を通ってインジェクション通路(90)へ流入してから圧縮室(31)へ供給されるようにしたことにより、上記各発明と同様にインジェクション通路(90)を潤滑油が流れるので、死容積を小さくして圧縮機の効率低下を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態1に係るスクロール圧縮機の構成を示す縦断面図である。
図2図2は、図1のII−II線断面図である。
図3図3は、インジェクション通路及び給油通路の合流部分を示す拡大断面図である。
図4】実施形態2に係るスクロール圧縮機の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態1に係るスクロール圧縮機の構成を示す縦断面図、図2図1のII−II線断面図である。スクロール圧縮機(10)は、例えば、空気調和装置で蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続されるものである。スクロール圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、回転式の圧縮機構(30)と、圧縮機構(30)を回転駆動する駆動機構(20)とを備えている。
【0023】
ケーシング(11)は、両端が閉塞された縦長円筒状の密閉容器で構成されており、円筒状の胴部(12)と、胴部(12)の上端側に固定された上部鏡板(13)と、胴部(12)の下端側に固定された下部鏡板(14)とを備えている。
【0024】
ケーシング(11)の内部は、ケーシング(11)の内周面に接合されたハウジング(50)によって上下に区画されている。ハウジング(50)よりも上側の空間が上部空間部(15)を構成し、ハウジング(50)よりも下側の空間が下部空間部(16)を構成している。
【0025】
ケーシング(11)における下部空間部(16)の底部には、スクロール圧縮機(10)の摺動部分を潤滑する潤滑油が貯留される油溜まり部(17)が設けられている。
【0026】
ケーシング(11)には、吸入管(18)及び吐出管(19)が取り付けられている。この吸入管(18)の一端部は、吸入管継手(47)に接続されている。吐出管(19)は、胴部(12)を貫通している。この吐出管(19)の端部は、ケーシング(11)の下部空間部(16)に開口している。
【0027】
駆動機構(20)は、モータ(21)と、駆動軸(23)とを備えている。モータ(21)は、ケーシング(11)の下部空間部(16)に収容されている。モータ(21)は、円筒状に形成されたステータ(21a)及びロータ(21b)を備えている。ステータ(21a)は、ケーシング(11)の胴部(12)に固定されている。ステータ(21a)の中空部には、ロータ(21b)が配置されている。ロータ(21b)の中空部には、ロータ(21b)を貫通するように駆動軸(23)が固定されており、ロータ(21b)と駆動軸(23)が一体で回転するようになっている。
【0028】
本発明では、上記ケーシング(11)内に貯留された潤滑油を上記圧縮機構(30)まで送るための給油通路(80)として、上記駆動軸(23)に形成された給油路(27)からなる第1通路(81)と、上記第1通路(81)内を送られてきた潤滑油を後述のインジェクション通路(90)まで送るために上記圧縮機構(30)に形成された第2通路(82)とが設けられている。
【0029】
また、駆動軸(23)の下端部には、潤滑油を吸い上げるための吸入部材としての吸入ノズル(61)が設けられている。吸入ノズル(61)は容積式のポンプを構成している。吸入ノズル(61)の吸入口(61a)は、ケーシング(11)の油溜まり部(17)に開口している。吸入ノズル(61)の吐出口は、駆動軸(23)の給油路(27)(第1通路(81))に連通するように接続されている。吸入ノズル(61)によって油溜まり部(17)から吸い上げられた潤滑油は、上記給油路(27)(第1通路(81))から上記第2通路(82)を通って上記圧縮機構へ供給される。
【0030】
圧縮機構(30)は、可動スクロール(35)と、固定スクロール(40)と、ハウジング(50)とを備えた、いわゆるスクロール型の圧縮機構である。ハウジング(50)及び固定スクロール(40)は、互いにボルトで締結されており、その間に可動スクロール(35)が収容されている。
【0031】
可動スクロール(35)は、略円板状の可動側鏡板部(36)を有している。この可動側鏡板部(36)の上面に可動側ラップ(37)が立設され、可動側ラップ(37)は可動側鏡板部(36)と一体的に形成されている。この可動側ラップ(37)は、図2に示すように、可動側鏡板部(36)の中心付近から径方向外方へインボリュート曲線に沿って渦巻き状に延びる壁体である。また、可動側鏡板部(36)の下面にボス部(軸受部)(38)が突設されている。
【0032】
固定スクロール(40)は、略円板状の固定側鏡板部(41)を有している。この固定側鏡板部(41)の下面に固定側ラップ(42)が立設され、固定側ラップ(42)は固定側鏡板部(41)と一体的に形成されている。この固定側ラップ(42)は、図2に示すように、固定側鏡板部(41)の中心付近から径方向外方へインボリュート曲線に沿って渦巻き状に延び、且つ可動スクロール(35)の可動側ラップ(37)と噛み合うように形成された壁体である。上記固定側鏡板部(41)及び可動側鏡板部(36)は互いに対向して配置されている。そして、上記圧縮機構(30)の内部には、上記固定側ラップ(42)と可動側ラップ(37)との間に、冷媒を吸入して圧縮するための圧縮室(31)が形成されている。
【0033】
固定スクロール(40)は、固定側ラップ(42)の最外周壁から径方向外方へ連続する外縁部(43)を有している。この外縁部(43)の下端面がハウジング(50)の上端面に固定される。また、この外縁部(43)には、上方へ開口する開口部(44)が形成されている。そして、この開口部(44)の内部と圧縮室(31)の最外周端とを連通する吸入ポート(34)が外縁部(43)に形成されている。この吸入ポート(34)は、圧縮室(31)の吸入位置に開口している。なお、この外縁部(43)の開口部(44)には、上述した吸入管継手(47)が接続されている。
【0034】
また、固定スクロール(40)の固定側鏡板部(41)には、固定側ラップ(42)の中心付近に位置して上下方向へ貫通する吐出ポート(32)が形成されている。この吐出ポート(32)の下端は、圧縮室(31)の吐出位置に開口している。吐出ポート(32)の上端は、固定スクロール(40)の上部に区画された吐出室(46)に開口している。また、図示しないが、この吐出室(46)は、ケーシング(11)の下部空間部(16)に連通している。
【0035】
上記ハウジング(50)は、略円筒状に形成されている。ハウジング(50)の外周面は、その下側部分に対して上側部分が大径になるように形成されている。そして、この外周面の上側部分がケーシング(11)の内周面に固定されている。
【0036】
上記ハウジング(50)の中空部には、駆動軸(23)が挿入されている。また、この中空部は、中空部の下側部分に対して上側部分(クランク室(54))が大径になるように形成されている。中空部の下側部分に軸受部(53)が形成されている。この軸受部(53)が駆動軸(23)における主軸部(24)の上端部分を回転支持する。また、中空部の上側部分はシール部材(55)に仕切られて背圧空間を構成する。背圧空間は可動スクロール(35)の背面に面している。ハウジング(50)の上面と可動スクロール(35)の背面との間には、上記シール部材(55)が嵌合している。また、この背圧空間には、可動スクロール(35)のボス部(38)が位置している。このボス部(38)には、軸受部(53)の上端から突出した駆動軸(23)の偏心部(クランクピン)(25)が係合していて、圧縮機構(20)が駆動軸(23)で回転駆動される。
【0037】
駆動軸(23)の偏心部(25)は、可動スクロール(35)のボス部(38)に、軸受(29a)を介して回転自在に支持されている。また、駆動軸(23)の主軸部(24)は、ハウジング(50)が有する軸受部(53)に、軸受(29b)を介して回転自在に支持されている。さらに、駆動軸(23)の主軸部の下側部分である下部主軸部(26)は、ケーシング(11)における胴部(12)の下端付近に固定された下部軸受部(28)に、軸受(29c)を介して回転自在に支持されている。
【0038】
上述したように、上記ハウジング(50)の中空部の上側部分は、圧縮機構(30)と駆動軸(23)の偏心部(25)との連結部分が収納されるクランク室(54)になっている。ハウジング(50)には、クランク室(54)からハウジング(50)の外周面までのび、外周面のところで下方へのびる排油通路(70)が形成されている。ハウジング(50)の排油溝(73)の下方には、油を油溜まりへ導くための油戻しガイド(75)が設けられている。
【0039】
上記圧縮機構(30)には、圧縮途中の上記圧縮室(31)に冷媒を導入するためのインジェクション通路(90)が接続されている。このインジェクション通路(90)には、該インジェクション通路(90)を開閉する電磁弁が弁機構(91)として設けられている。インジェクション通路(90)は圧縮機構(30)(固定スクロール(40))の内部を通り、圧縮室(31)に中間圧の位置で連通している。
【0040】
上記ハウジング(50)には、クランク室(54)から上記圧縮室(31)へ潤滑油を供給するための上記第2通路(82)が形成されている。この第2通路(82)は、ハウジング内通路(83)と固定スクロール内通路(84)とから構成されている。ハウジング内通路(83)は、上記ハウジング(50)のクランク室(54)の底面に形成された環状溝(85)と、この環状溝(85)から径方向外方へのびる径方向通路(86)と、この径方向通路(86)と交差して軸方向へのび、固定スクロール(40)との合わせ面で開口する軸方向通路(87)とから構成されている。また、固定スクロール内通路(84)は、上記軸方向通路(87)から上記インジェクション通路(90)に連通している。
【0041】
具体的には、上記給油通路(第2通路(82))(80)の固定スクロール内通路(84)は、上記インジェクション通路(90)に対して上記弁機構(91)の下流側に接続されている。この給油通路(80)は、上記圧縮機構(30)の作動中に、上記ケーシング(11)内に貯留された潤滑油を上記圧縮室(31)に常に供給するための通路である。
【0042】
上記インジェクション通路(90)には、上記弁機構(91)の下流に、上記圧縮室(31)へ向かう冷媒の流通だけを許容するように開閉する逆止弁(95)が設けられている。この逆止弁(95)は、図3に詳細を示しているように、固定スクロール(40)に固定されたリテーナ(96)と、弁体(97)と、弁体(97)に対してインジェクション通路の下流側に設けられたほぼ円筒状の弁押さえ(98)と、弁押さえ(98)と弁体(97)との間に設けられたバネ(99)とから構成されている。
【0043】
リテーナ(96)は、所定のピッチ円周上の複数箇所に冷媒が流れる貫通孔(96a)を有している。弁体(97)は、中央部に冷媒が流れる開口(97a)が形成された円形プレート状の部材である。リテーナ(96)と弁体(97)とが密着した状態では貫通孔(96a)と開口(97a)がともに閉鎖され、リテーナ(96)と弁体(97)とが離れた状態では貫通孔(96a)と開口(97a)ともに開放される。
【0044】
バネ(99)は、弁押さえ(98)と弁体(97)とを互いに離れる方向へ付勢する圧縮コイルバネである。インジェクション動作が行われないときは、弁押さえ(98)と弁体(97)とが図3に実線で示すように密着した状態になってインジェクション通路(90)が閉鎖され、インジェクション動作行われるときは弁押さえ(98)と弁体(97)とが仮想線で示すように離れた状態になってインジェクション通路(90)が開放される。
【0045】
弁押さえ(98)は、インジェクション通路(90)の上流側へ向かって段階的に外径が細くなる中空筒状の部材で、インジェクション通路(90)の下流側の端部に大径のバネ受け部(98a)を有し、上流側の端部に貫通孔(98b)を有している。
【0046】
そして、上記給油通路(80)は、上記インジェクション通路(90)に、上記逆止弁(95)の開閉状態に関わらず常に上記逆止弁(95)の下流に連通する位置(実線の位置の弁体(97)と仮想線の位置の弁体(97)の間で開口する位置)に接続されている。つまり、上記給油通路(80)は、インジェクション動作を行うときには図3に仮想線で示すように弁体(97)が弁押さえ(98)と突き当たるまで移動して矢印Aの流れで圧縮室(31)と連通し、インジェクション動作を行わないときには図3に実線で示すように弁体(97)がリテーナ(96)と当接してインジェクション通路(90)を閉じ、矢印Bで示す流れで圧縮室(31)と連通する。
【0047】
−運転動作−
次に、上述したスクロール圧縮機(10)の運転動作について説明する。スクロール圧縮機(10)のモータ(21)へ通電されると、ロータ(21b)とともに駆動軸(23)が回転し、可動スクロール(35)が公転運動する。この可動スクロール(35)の公転運動に伴って、圧縮室(31)の容積が周期的に増減を繰り返す。
【0048】
具体的に、駆動軸(23)が回転すると、吸入ポート(34)から圧縮室(31)へ冷媒が吸入される。そして、駆動軸(23)の回転に伴い、圧縮室(31)が閉じ切られる。さらに、駆動軸(23)の回転が進むことで、圧縮室(31)の容積が縮小し始め、圧縮室(31)における冷媒の圧縮が開始される。
【0049】
その後、圧縮室(31)の容積がさらに縮小し、この圧縮室(31)の容積が所定容積まで縮小したときに、吐出ポート(32)が開く。この吐出ポート(32)を通じて、圧縮室(31)で圧縮された冷媒が固定スクロール(40)の吐出室(46)へ吐出される。この吐出室(46)の冷媒は、ケーシング(11)の下部空間部(16)を介して吐出管(19)から吐出される。なお、上述したように、下部空間部(16)は背圧空間と連通しており、この背圧空間の冷媒圧力で、可動スクロール(35)が固定スクロール(40)へ押し付けられる。
【0050】
圧縮機(10)の運転中には、油溜まり部(17)の油が吸入ノズル(61)でくみ上げられて給油路(27)(第1通路(81))を上昇し、各摺動部分に供給される。偏心部(25)と軸受(29a)の摺動面に供給された潤滑油は、その摺動面から流れ出してクランク室(54)に溜まっていく。クランク室(54)に入った潤滑油(65)は、排油通路(70)を通ってクランク室(54)から流出し、油溜まり部(17)に戻る。
【0051】
また、クランク室(54)の潤滑油は、第2通路(82)を通ってインジェクション通路(90)の冷媒と合流し、圧縮室(31)へ流入する。この実施形態では、上記圧縮機構(30)の動作中には、インジェクション動作を行うか行わないかに関わらず、給油通路(80)からインジェクション通路(90)を通って潤滑油が圧縮室(31)へ供給される。
【0052】
つまり、上記給油通路(80)は、インジェクション動作を行うときには図3に仮想線で示すように弁体(97)が弁押さえ(98)と突き当たるまで移動して矢印Aの流れで圧縮室(31)と連通する。一方、上記給油通路(80)は、インジェクション動作を行わないときには、図3に実線で示すように弁体(97)がリテーナ(96)と当接してインジェクション通路(90)が閉じられ、矢印Bで示す流れで圧縮室(31)と連通する。このように、インジェクション動作が行われるか行われないかにかかわらず、給油通路(80)は常に圧縮室(31)と連通する。
【0053】
したがって、インジェクション通路(90)の中には常に潤滑油が入っていて冷媒ガスが残りにくくなるから、該インジェクション通路(90)が死容積になるのを抑えられる。
【0054】
また、この実施形態では、インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流に圧縮室(31)へ向かう冷媒の流通だけを許容するように開閉する逆止弁(95)を設け、給油通路(80)を、上記逆止弁(95)の開閉状態によらず上記インジェクション通路(90)に上記逆止弁(95)の下流側で連通するようにしているので、インジェクション通路(90)における逆止弁(95)の下流側に常に潤滑油が流通する。したがって、このことも死容積の低減に寄与する。
【0055】
−実施形態1の効果−
本実施形態によれば、上記圧縮機構(30)の動作中に、インジェクション動作を行うか行わないかに関わらず、常に給油通路(80)からインジェクション通路(90)を通って潤滑油が圧縮室(31)へ供給されるように構成したことにより、該インジェクション通路(90)が死容積になるのを抑えられるから、死容積を小さくし、スクロール圧縮機(10)の効率が低下するのを抑えられる。
【0056】
また、上記実施形態によれば、インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流に圧縮室(31)へ向かう冷媒の流通だけを許容するように開閉する逆止弁(95)を設け、給油通路(80)を、上記逆止弁(95)の開閉状態によらず上記インジェクション通路(90)に上記逆止弁(95)の下流側で連通するようにしているので、インジェクション通路(90)における逆止弁(95)の下流側に常に潤滑油が流通し、死容積が低減されるから、スクロール圧縮機(10)の効率が低下するのを簡単な構成で確実に抑えられる。
【0057】
また、後述の実施形態2とは違って給油通路(80)として外部に配管(パイプ(100))を設けなくてよいので、外部の配管の損傷による給油通路(80)の機能停止などのおそれが生じない。
【0058】
また、上記インジェクション通路(90)に逆止弁(95)を設けることにより、インジェクション動作を行わないときの死容積を、逆止弁(95)を設けない場合よりも小さくすることができ、圧縮機(10)の性能低下をより確実に抑えられる。
【0059】
《発明の関連技術
本発明の関連技術について説明する。
【0060】
関連技術に係るスクロール圧縮機(10)は、図4に示すように、給油通路(80)をスクロール圧縮機(10)のケーシング(11)の外に設けたものである。具体的には、上記給油通路(80)は、パイプ(管体)(100)で構成され、上記ケーシング(11)の底部と上記インジェクション通路(90)における上記弁機構(91)の下流とを連通させるように上記ケーシング(11)外に設けられている。このパイプ(100)には、途中に開口断面積を小さくした絞り部(101)が設けられていて、圧縮機構(30)へ供給される潤滑油の流量が調整されるようになっている。
【0061】
この構成では、圧縮機構(30)には給油通路(80)は設けられていない。また、実施形態1の逆止弁(95)は設けられていない。
【0062】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0063】
この関連技術では、インジェクション動作を行うときには、油溜まり部(17)に溜まった高圧の潤滑油が中間圧のインジェクション通路(90)を流れる冷媒と合流し、圧縮室(31)へ流入する。インジェクション動作を行わないときには、弁機構(電磁弁)(91)が閉じられ、油溜まり部(17)の高圧の潤滑油が弁機構(91)の下流でインジェクション通路(90)に流入し、圧縮室(31)へ供給される。このように、この関連技術でもインジェクション通路(90)を通って圧縮室(31)へ常に潤滑油が供給される。
【0064】
そして、この関連技術によれば、ケーシング(11)外に設けたパイプ(給油通路(80))(100)をインジェクション通路(90)に接続することにより、第1実施形態と同様にインジェクション通路(90)を潤滑油が流れるので、死容積を小さくしてスクロール圧縮機(10)の効率低下を抑えられる。
【0065】
また、前述の実施形態1と違って圧縮機構(30)の内部に給油通路(80)を形成しなくてよいので、圧縮機構(30)の構成が複雑になるのを抑えられる。
【0066】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0067】
上記実施形態1や関連技術は、潤滑油をインジェクション通路(90)から圧縮室(31)へ供給することで該インジェクション通路(90)が死容積になることを抑制するための好適な具体例を示したものであるが、本発明では、潤滑油をインジェクション通路(90)から圧縮室(31)へ供給することで該インジェクション通路(90)が死容積になることを抑制でき、逆止弁(95)を圧縮機構(30)の内部に設ける構成であれば、上記実施形態1以外の構成を採用してもよい。
【0068】
また、上記実施形態は、固定側ラップ(42)と可動側ラップ(37)の渦巻きの長さが異なる非対称渦巻き構造のスクロール圧縮機(40)に本発明を適用したものであるが、本発明は、固定側ラップ(42)と可動側ラップ(37)の渦巻きの長さが同じになる対称渦巻き構造のスクロール圧縮機に適用してもよい。さらに、本発明は、ローリングピストン型圧縮機や揺動ピストン型圧縮機のような、スクロール型ではない圧縮機に適用してもよい。
【0069】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明は、圧縮機において圧縮機構へ潤滑油を供給する給油構造について有用である。
【符号の説明】
【0071】
10 スクロール圧縮機
11 ケーシング
23 駆動軸
30 圧縮機構
31 圧縮室
80 給油通路
81 第1通路
82 第2通路
90 インジェクション通路
91 弁機構
95 逆止弁
100 パイプ(管体)
図1
図2
図3
図4