(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、特別な素子を用いることなく、スイッチング素子のオン抵抗を用いて過電流検出を行うことができる。しかしながら、スイッチング素子のオン抵抗は、スイッチング素子に流れる電流が同じであっても、スイッチング電源に供給される電源電圧の影響によって変動するので、オン状態におけるスイッチング素子のソース・ドレイン間電圧も同様に変動する。従って、単にスイッチング素子のソース・ドレイン間電圧を測定するだけでは、精度の高い過電流検出を行うことができない。
【0007】
そこで、上記の点に鑑み、本発明の第1の目的は、電力損失を生じる電流センス抵抗を用いることなく、電源電圧が変化しても精度の高い過電流検出を行うことが可能な過電流検出回路を提供することである。また、本発明の第2の目的は、そのような過電流検出回路を内蔵した半導体装置を提供することである。さらに、本発明の第3の目的は、そのような半導体装置を用いた電源装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の第1の観点に係る過電流検出回路は、電源電圧に従って変化する比較電圧を生成する比較電圧生成部と、スイッチングトランジスターのドレイン・ソース間電圧を比較電圧と比較して比較結果信号を生成する比較部とを備える。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、オン状態において電源電圧に従って変化するスイッチングトランジスターのドレイン・ソース間電圧を、同じく電源電圧に従って変化する比較電圧と比較することにより、電力損失を生じる電流センス抵抗を用いることなく、電源電圧が変化しても精度の高い過電流検出を行うことが可能な過電流検出回路を提供することができる。
【0010】
ここで、比較電圧生成部が、電源電圧に依存しない基準電圧と電源電圧との差を増幅することにより、比較電圧を生成する増幅回路を含むようにしても良い。それにより、電源電圧の変化が所望の増幅率で増幅された変化特性を有する比較電圧を生成することができる。
【0011】
その場合に、比較電圧生成部が、電源電圧と基準電圧との差を反転増幅する反転増幅回路を含むようにしても良い。オン状態におけるスイッチングトランジスターのドレイン・ソース間電圧は、電源電圧の上昇に伴って低下するので、反転増幅回路を用いることにより、同様に電源電圧の上昇に伴って低下する比較電圧を生成することができる。
【0012】
以上において、過電流検出回路が、スイッチングトランジスターのドレイン・ソース間電圧を増幅する第2の増幅回路をさらに備え、比較部が、第2の増幅回路によって増幅されたスイッチングトランジスターのドレイン・ソース間電圧を比較電圧と比較するようにしても良い。それにより、スイッチングトランジスターのドレイン・ソース間電圧を、比較に適した電圧に変換することができる。
【0013】
本発明の第2の観点に係る半導体装置は、出力端子に接続されたドレインを有するスイッチングトランジスターと、上記いずれかの過電流検出回路と、比較結果信号に従って、スイッチングトランジスターに流れる電流を制限するスイッチング制御回路とを備える。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、電力損失を生じる電流センス抵抗を用いることなく、電源電圧が変化しても精度の高い過電流検出を行うことにより、電力損失を抑えながら、スイッチングトランジスターに流れる過電流を適切に制限することが可能な半導体装置を提供することができる。
【0015】
ここで、スイッチング制御回路が、比較結果信号に従って、スイッチングトランジスターを駆動する駆動信号のデューティー比を変更するようにしても良い。それにより、過電流が検出された場合に、スイッチングトランジスターがオン状態となる期間を短くして、スイッチングトランジスターに流れる電流を制限することができる。
【0016】
また、過電流検出回路が、スイッチングトランジスターがオフ状態のときに動作を停止するようにしても良い。スイッチングトランジスターがオフ状態のときには、スイッチングトランジスターに過電流が流れないので、過電流を検出する必要がない。従って、過電流検出回路が動作を停止することにより、消費電流を低減すると共に誤動作を防止することができる。
【0017】
さらに、半導体装置が、第1導電型の半導体基板と、半導体基板内に配置された第2導電型の第1のウェルと、第1のウェル内に配置された第1導電型の第2のウェルと、第2のウェル内に配置され、スイッチングトランジスターのドレイン及びソースを構成する複数の第2導電型の不純物領域と、半導体基板に電気的に接続された第1の端子と、第2のウェル及びスイッチングトランジスターのソースに電気的に接続された第2の端子とを備えるようにしても良い。
【0018】
このように、半導体基板から電気的に絶縁された第2のウェルにスイッチングトランジスターを配置して、半導体基板に電気的に接続された第1の端子とは別個に、第2のウェル及びスイッチングトランジスターのソースに電気的に接続された第2の端子を設けることにより、スイッチングトランジスターにおいて発生するスイッチングノイズが他の内部回路に及ぼす影響を低減することができる。
【0019】
本発明の第3の観点に係る電源装置は、上記いずれかの半導体装置と、第1の電源配線と半導体装置の出力端子との間に接続されたインダクターとを備えており、半導体装置の出力端子に接続されたアノードを有するダイオードと、ダイオードのカソードと第2の電源配線との間に接続されたキャパシターとをさらに備えるようにしても良い。
【0020】
本発明の第3の観点によれば、電力損失を生じる電流センス抵抗を用いることなく、電源電圧が変化しても精度の高い過電流検出を行うことにより、変換効率が高く、スイッチングトランジスターに流れる過電流を適切に制限することが可能な電源装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電源装置の構成例を示す回路図である。以下の実施形態においては、電源装置の一例として、電源電圧を昇圧するスイッチングレギュレーター(DC/DCコンバーター)について説明する。
【0023】
<スイッチングレギュレーター>
図1に示すように、このスイッチングレギュレーターは、本発明の一実施形態に係る半導体装置100と、インダクターL1と、ダイオードD1と、抵抗R1及びR2と、キャパシターC1とを含んでいる。
【0024】
スイッチングレギュレーターは、第1の電源配線PL1から高電位側の電源電位VDDが供給されると共に第2の電源配線PL2から低電位側の電源電位VSSが供給され、電源電圧(VDD−VSS)を昇圧して、昇圧された電源電圧を昇圧ノードN1から負荷Zに供給する。
図1には、電源電位VSSが接地電位(0V)である場合が示されている。
【0025】
半導体装置100は、基準電圧生成回路10と、発振回路20と、オペアンプ30と、PWM(パルス幅変調)回路40と、スイッチング制御回路50と、本発明の一実施形態に係る過電流検出回路60と、スイッチングトランジスターQN1と、端子P1〜P5とを含んでいる。端子P1〜P5は、半導体チップに設けられたパッド、又は、パッケージに設けられたピンである。
【0026】
基準電圧生成回路10は、例えば、バンドギャップリファレンス回路等を含み、電源電圧に依存しない基準電圧V
REF1及びV
REF2、及び、バイアス電圧V
Bを生成する。また、発振回路20は、例えば、水晶発振回路又はCR発振回路等で構成され、発振動作を行うことにより、所定の周波数を有するクロック信号CLKを生成する。
【0027】
オペアンプ30の非反転入力端子には、基準電圧生成回路10から基準電圧V
REF1が供給され、反転入力端子には、昇圧ノードN1に直列接続された抵抗R1及びR2で構成される分圧回路から帰還端子P4を介してフィードバック電圧V
FBが供給される。オペアンプ30は、基準電圧V
REF1とフィードバック電圧V
FBとの差を増幅して、出力端子から誤差信号ERRを出力する。
【0028】
PWM回路40は、オペアンプ30から供給される誤差信号ERRに基づいて、発振回路20から供給されるクロック信号CLKをパルス幅変調するために用いられるリセット信号RSTを生成する。例えば、PWM回路40は、クロック信号CLKの立ち上がりに同期して三角波信号を生成し、三角波信号の電位が誤差信号ERRの電位よりも低い期間において、リセット信号RSTをローレベルに非活性化する。一方、PWM回路40は、三角波信号の電位が誤差信号ERRの電位よりも高くなると、リセット信号RSTをハイレベルに活性化する。
【0029】
スイッチング制御回路50は、発振回路20から供給されるクロック信号CLK、及び、PWM回路40から供給されるリセット信号RSTに基づいて、パルス幅が変調された駆動信号DRVを生成する。例えば、スイッチング制御回路50は、通常動作状態において、クロック信号CLKの立ち上がりに同期して駆動信号DRVをハイレベルに活性化し、リセット信号RSTの立ち上がりに同期して駆動信号DRVをローレベルに非活性化する。ここで、駆動信号DRVのハイレベルは、電源電位VDDに略等しく、駆動信号DRVのローレベルは、電源電位VSSに略等しい。
【0030】
スイッチングトランジスターQN1としては、例えば、出力端子P3に電気的に接続されたドレインと、電源端子P5に電気的に接続されたソースと、駆動信号DRVが印加されるゲートとを有するNチャネルMOSトランジスターが用いられる。スイッチングトランジスターQN1は、駆動信号DRVがハイレベルに活性化されている期間においてオン状態となり、駆動信号DRVがローレベルに非活性化されている期間においてオフ状態となることにより、駆動信号DRVに従ってスイッチングを行う。
【0031】
インダクターL1は、電源電位VDDを供給する第1の電源配線PL1と半導体装置100の出力端子P3との間に接続されている。なお、第1の電源配線PL1とインダクターL1との間にPNPバイポーラトランジスター又はPチャネルMOSトランジスター等が接続されていても良い。例えば、PNPバイポーラトランジスターは、半導体装置100からベースに印加されるイネーブル信号に従ってオン又はオフする。
【0032】
ダイオードD1は、半導体装置100の出力端子P3に接続されたアノードと、昇圧ノードN1に接続されたカソードとを有している。ダイオードD1としては、例えば、PN接合ダイオードに比べて順方向電圧が低くてスイッチング速度が速いショットキーバリアダイオードが用いられる。
【0033】
キャパシターC1は、ダイオードD1のカソードと電源電位VSSを供給する第2の電源配線PL2との間に接続されており、昇圧ノードN1における昇圧電源電圧V
OUTを平滑化する。抵抗R1及びR2は、昇圧ノードN1と第2の電源配線PL2との間に直列接続されており、昇圧ノードN1における昇圧電源電圧V
OUTを分圧してフィードバック電圧V
FBを生成する分圧回路を構成している。
【0034】
あるいは、ダイオードD1又は抵抗R1及びR2を半導体装置100に内蔵しても良い。また、ダイオードD1の替りにトランジスターが設けられても良い。その場合に、スイッチング制御回路50は、そのトランジスターがスイッチングトランジスターQN1と交互にオン状態又はオフ状態となるように制御しても良い。
【0035】
スイッチングトランジスターQN1は、オン状態であるときにインダクターL1に電流を供給する。そのとき、ダイオードD1は、オフ状態となっている。インダクターL1に電流が流れることにより、インダクターL1において電気エネルギーが磁気エネルギーに変換されて蓄積される。
【0036】
一方、スイッチングトランジスターQN1がオフ状態であるときには、インダクターL1に蓄積された磁気エネルギーが電気エネルギーとしてダイオードD1を介して昇圧ノードN1に放電される。それにより、昇圧ノードN1において、電源電圧(VDD−VSS)が昇圧されて昇圧電源電圧V
OUTが生成され、キャパシターC1が充電される。
【0037】
昇圧ノードN1における昇圧電源電圧V
OUTは、駆動信号DRVのデューティー比によって決定される。ここで、駆動信号DRVのデューティー比Dは、発振回路20によって生成されるクロック信号CLKの1周期Tにおいて駆動信号DRVが活性化される期間τを用いて、次式で表される。
D=τ/T
ただし、0≦D≦1である。
【0038】
<過電流検出回路>
図2は、
図1に示す半導体装置の出力電圧の時間的変化を示す波形図である。スイッチングトランジスターQN1がオフ状態であるときに、半導体装置の出力端子P3における出力電圧は、昇圧ノードN1における昇圧電源電圧V
OUTと、ダイオードD1の順方向電圧V
Fとを用いて、(V
OUT+V
F)として表される。
【0039】
また、スイッチングトランジスターQN1がオン状態であるときに、半導体装置の出力端子P3における出力電圧(スイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧V
DS)は、スイッチングトランジスターQN1のドレイン電流I
Dと、スイッチングトランジスターQN1のオン抵抗R
ONとを用いて、(I
D・R
ON)として表される。
【0040】
図3は、
図1に示す半導体装置の出力電圧の電源電圧依存性を示す図である。
図1に示す半導体装置には、例えば、1.8V〜5.5Vの範囲内の電源電圧(VDD−VSS)が供給される。スイッチングトランジスターQN1のオン抵抗R
ONは、電源電圧(VDD−VSS)の上昇に伴って低下するので、スイッチングトランジスターQN1がオン状態であるときの半導体装置の出力電圧(I
D・R
ON)も、電源電圧(VDD−VSS)の上昇に伴って低下する。
【0041】
従って、スイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧V
DSを一定の比較電圧と比較して過電流を検出する場合には、精度の高い過電流検出を行うことができない。過電流が生じても過電流を検出できない場合には、スイッチングトランジスターQN1等が破壊されるおそれがある。
【0042】
そこで、
図1に示す過電流検出回路60は、電源電圧(VDD−VSS)に従って変化する比較電圧V
Cを生成する比較電圧生成部61と、スイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧を比較電圧V
Cと比較して比較結果信号CMPを生成する比較部63とを含み、スイッチングトランジスターQN1に流れる過電流を検出する。
【0043】
比較電圧生成部61は、電源電圧(VDD−VSS)に依存しない基準電圧V
REF2と電源電圧(VDD−VSS)との差を増幅することにより、比較電圧V
Cを生成する増幅回路を含むようにしても良い。それにより、電源電圧(VDD−VSS)の変化が所望の増幅率で増幅された変化特性を有する比較電圧V
Cを生成することができる。
【0044】
その場合に、比較電圧生成部61は、電源電圧(VDD−VSS)と基準電圧V
REF2との差を反転増幅する反転増幅回路を含むようにしても良い。オン状態におけるスイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧は、電源電圧(VDD−VSS)の上昇に伴って低下するので、反転増幅回路を用いることにより、同様に電源電圧(VDD−VSS)の上昇に伴って低下する比較電圧V
Cを生成することができる。
【0045】
図1に示す例においては、比較電圧生成部61が、オペアンプ61aと、抵抗R11及びR12とを含んでいる。電源電位VSSが接地電位(0V)である場合に、オペアンプ61aの出力電圧V
OPは、次式で表される。
V
OP≒(R12/R11)(V
REF2−VDD)+V
REF2
従って、オペアンプ61aの出力電圧V
OPは、基準電圧V
REF2をオフセット電圧として、電源電圧VDDと基準電圧V
REF2との差が反転増幅された電圧となる。
【0046】
また、過電流検出回路60は、スイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧V
DSを増幅する第2の増幅回路62をさらに含むようにしても良い。それにより、スイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧V
DSを、比較に適した電圧に変換することができる。
【0047】
図1に示す例においては、第2の増幅回路62が、オペアンプ62aと、抵抗R21及びR22とを含んでいる。電源電位VSSが接地電位(0V)である場合に、オペアンプ62aの閉ループゲインGは、次式で表される。例えば、閉ループゲインを10倍程度としても良い。
G≒(R21+R22)/R21
以上において、例えば、抵抗R12及びR22を可変抵抗として、オペアンプ61a及び62aの閉ループゲインを調整できるようにしても良い。
【0048】
比較部63は、例えば、コンパレーター又はオペアンプ等で構成される。第2の増幅回路62が設けられている場合には、比較部63が、第2の増幅回路62によって増幅されたスイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧V
DS'を比較電圧V
Cと比較する。
【0049】
比較部63は、スイッチングトランジスターQN1に過電流が流れてドレイン・ソース間電圧V
DS'が比較電圧V
Cよりも大きいときに、比較結果信号CMPをハイレベルに活性化し、通常動作状態においてドレイン・ソース間電圧V
DS'が比較電圧V
Cよりも小さいときに、比較結果信号CMPをローレベルに非活性化する。
【0050】
図4は、
図1に示す比較部の入力電圧の電源電圧依存性を示す図である。
図4には、スイッチングトランジスターQN1がオン状態であるときの入力電圧が示されている。比較部63の非反転入力端子には、第2の増幅回路62によって増幅されたスイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧V
DS'が印加される。一方、比較部63の反転入力端子には、比較電圧生成部61によって生成された比較電圧V
Cが印加される。
【0051】
図4に示すように、比較電圧V
Cは電源電圧(VDD−VSS)に追従して変化するので、スイッチングトランジスターQN1に過電流が流れない通常動作状態においては、電源電圧(VDD−VSS)が変化しても、比較電圧V
CとスイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧V
DS'との関係を略一定に保つことができる。
【0052】
本実施形態に係る過電流検出回路60によれば、オン状態において電源電圧(VDD−VSS)に従って変化するスイッチングトランジスターQN1のドレイン・ソース間電圧を、同じく電源電圧(VDD−VSS)に従って変化する比較電圧V
Cと比較することにより、電力損失を生じる電流センス抵抗を用いることなく、電源電圧(VDD−VSS)が変化しても精度の高い過電流検出を行うことが可能となる。
【0053】
<スイッチング制御回路>
スイッチング制御回路50は、比較部63から供給される比較結果信号CMPに従って、スイッチングトランジスターQN1に流れる電流を制限する。例えば、スイッチング制御回路50は、比較結果信号CMPに従って、スイッチングトランジスターQN1を駆動する駆動信号DRVのデューティー比を変更するようにしても良い。それにより、過電流が検出された場合に、スイッチングトランジスターQN1がオン状態となる期間を短くして、スイッチングトランジスターQN1に流れる電流を制限することができる。
【0054】
図5は、
図1に示すスイッチング制御回路の第1の構成例を示す回路図である。第1の構成例において、スイッチング制御回路50は、AND回路51と、RSフリップフロップ52と、インバーター53とを含んでいる。RSフリップフロップ52は、2つのNOR回路で構成される。
【0055】
AND回路51の反転入力端子には、
図1に示す比較部63から比較結果信号CMPが供給され、AND回路51の非反転入力端子には、
図1に示す発振回路20からクロック信号CLKが供給される。従って、AND回路51は、比較結果信号CMPがローレベルに非活性化されているときにクロック信号CLKを出力し、比較結果信号CMPがハイレベルに活性化されているときに出力信号をローレベルとする。AND回路51の出力信号は、RSフリップフロップ52のセット信号Sとして用いられる。
【0056】
RSフリップフロップ52は、
図1に示すPWM回路40から供給されるリセット信号RSTがローレベルに非活性化されているときに、AND回路51から供給されるセット信号Sの立ち上がりに同期してセットされ、第1の出力信号Q1をハイレベルに活性化すると共に第2の出力信号Q2をローレベルに非活性化する。それにより、インバーター53が、ハイレベルの駆動信号DRVを出力する。
【0057】
また、RSフリップフロップ52は、セット信号Sがローレベルに非活性化されているときに、リセット信号RSTの立ち上がりに同期してリセットされ、第1の出力信号Q1をローレベルに非活性化すると共に第2の出力信号Q2をハイレベルに活性化する。それにより、インバーター53が、ローレベルの駆動信号DRVを出力する。
【0058】
図1に示す過電流検出回路60において過電流が検出されると、比較結果信号CMPがハイレベルに活性化されるので、セット信号Sがローレベルに非活性化される。それにより、RSフリップフロップ52がリセットされた後にクロック信号CLKが立ち上がっても、RSフリップフロップ52がセットされなくなるので、インバーター53から出力される駆動信号DRVがローレベルに維持されて、駆動信号DRVのオンデューティー比がゼロになる。このようにして、スイッチング制御回路50は、駆動信号DRVのデューティー比を変更して、
図1に示すスイッチングトランジスターQN1をオフ状態に維持することにより、スイッチングトランジスターQN1に流れる電流を制限する。
【0059】
図6は、
図1に示すスイッチング制御回路の第2の構成例を示す回路図である。第2の構成例において、スイッチング制御回路50は、
図5に示すスイッチング制御回路の構成に加えて、OR回路54を含んでいる。
【0060】
OR回路54の一方の入力端子には、
図1に示す比較部63から比較結果信号CMPが供給され、OR回路54の他方の入力端子には、
図1に示すPWM回路40からリセット信号RSTが供給される。従って、OR回路54は、比較結果信号CMPがローレベルに非活性化されているときにリセット信号RSTを出力し、比較結果信号CMPがハイレベルに活性化されているときに出力信号をハイレベルとする。OR回路54の出力信号は、RSフリップフロップ52のリセット信号Rとして用いられる。
【0061】
RSフリップフロップ52は、OR回路54から供給されるリセット信号Rがローレベルに非活性化されているときに、AND回路51から供給されるセット信号Sの立ち上がりに同期してセットされ、第1の出力信号Q1をハイレベルに活性化すると共に第2の出力信号Q2をローレベルに非活性化する。それにより、インバーター53が、ハイレベルの駆動信号DRVを出力する。
【0062】
また、RSフリップフロップ52は、セット信号Sがローレベルに非活性化されているときに、リセット信号Rの立ち上がりに同期してリセットされ、第1の出力信号Q1をローレベルに非活性化すると共に第2の出力信号Q2をハイレベルに活性化する。それにより、インバーター53が、ローレベルの駆動信号DRVを出力する。
【0063】
図1に示す過電流検出回路60において過電流が検出されると、比較結果信号CMPがハイレベルに活性化されるので、リセット信号Rがハイレベルに活性化される。それにより、RSフリップフロップ52が直ちにリセットされるので、インバーター53から出力される駆動信号DRVが強制的にローレベルにされて、駆動信号DRVのオンデューティー比が減少する。
【0064】
また、比較結果信号CMPがハイレベルに活性化されると、セット信号Sがローレベルに非活性化される。それにより、RSフリップフロップ52がリセットされた後にクロック信号CLKが立ち上がっても、RSフリップフロップ52がセットされなくなるので、インバーター53から出力される駆動信号DRVがローレベルに維持されて、駆動信号DRVのオンデューティー比がゼロになる。このようにして、スイッチング制御回路50は、駆動信号DRVのデューティー比を変更して、
図1に示すスイッチングトランジスターQN1を強制的にオフ状態にすることにより、スイッチングトランジスターQN1に流れる電流を制限する。
【0065】
<マスク回路>
過電流検出回路60は、スイッチングトランジスターQN1がオフ状態のときに動作を停止するようにしても良い。そのために、過電流検出回路60は、スイッチングトランジスターQN1がオフ状態のときに、オペアンプ61a及び62a、及び、比較部63に対するバイアス電圧V
Bの供給を停止するマスク回路64を含んでいる。
【0066】
図7は、
図1に示すマスク回路の構成例を示す回路図である。
図7に示すように、マスク回路64は、遅延素子65と、OR回路66と、インバーター67と、NチャネルMOSトランジスターQN2及びQN3と、PチャネルMOSトランジスターQP2とを含んでいる。
【0067】
遅延素子65は、例えば、直列接続された偶数個のインバーター等で構成され、
図1に示すスイッチング制御回路50から供給される駆動信号DRVを所定の遅延時間だけ遅延させる。OR回路66は、
図1に示す発振回路20から供給されるクロック信号CLKと遅延素子65によって遅延された駆動信号DRVとの論理和を求めることにより、制御信号CNTを生成する。インバーター67は、制御信号CNTを反転して反転制御信号XCNTを出力する。
【0068】
トランジスターQN2及びQP2は、アナログスイッチを構成しており、制御信号CNTがハイレベルであるときにオン状態となって、バイアス電圧VBをオペアンプ61a及び62a及び比較部63(
図1)のバイアス回路に供給する。それにより、オペアンプ61a及び62a及び比較部63が動作する。
【0069】
一方、制御信号CNTがローレベルであるときには、トランジスターQN2及びQP2で構成されるアナログスイッチがオフ状態となり、トランジスターQN3がオン状態となって、バイアス電圧VBがオペアンプ61a及び62a及び比較部63のバイアス回路に供給されない。それにより、オペアンプ61a及び62a及び比較部63が動作を停止する。
【0070】
再び
図1を参照すると、スイッチングトランジスターQN1がオフ状態のときには、スイッチングトランジスターQN1に過電流が流れないので、過電流を検出する必要がない。従って、過電流検出回路60が動作を停止することにより、消費電流を低減すると共に誤動作を防止することができる。なお、スイッチングトランジスターQN1がオフ状態のときには、過電流検出回路60において、比較結果信号CMPがローレベルに非活性化される。
【0071】
<ノイズ対策>
スイッチングトランジスターQN1がスイッチングする際には、インダクターL1やスイッチングトランジスターQN1において大きなスイッチングノイズが発生する。そこで、第1の電源配線PL1は、半導体装置100の電源端子P1から離れた位置においてインダクターL1に電源電位VDDを供給するように配置されている。それにより、インダクターL1において発生するスイッチングノイズが半導体装置100の内部回路に及ぼす影響を低減することができる。
【0072】
また、半導体装置100は、スイッチングトランジスターQN1以外の内部回路に電源電位VSSを供給する第1の端子である電源端子P2とは別個に、スイッチングトランジスターQN1のソースに電源電位VSSを供給する第2の端子である電源端子P5を備えている。
【0073】
図8は、
図1に示す半導体装置の構造を模式的に示す断面図である。
図8に示すように、半導体装置100は、P型の半導体基板101と、半導体基板101内に配置された第1のウェルであるNウェル102と、Nウェル102内に配置された第2のウェルであるPウェル103とで構成されるトリプルウェル構造を有している。
【0074】
また、半導体装置100は、半導体基板101内に配置されたP型のコンタクト領域104と、Nウェル102内に配置されたN型のコンタクト領域105と、Pウェル103内に配置されたP型のコンタクト領域106と、Pウェル103内に配置され、スイッチングトランジスターQN1のドレイン及びソースを構成する複数のN型の不純物領域107及び108とを有している。
【0075】
さらに、スイッチングトランジスターQN1は、不純物領域107及び108等が形成された半導体装置100上にゲート絶縁膜を介して配置されたゲート電極110を有している。スイッチングトランジスターQN1以外の内部回路のトランジスターは、半導体基板101に設けられるか、又は、半導体基板101内に配置された通常のNウェル又はPウェルに設けられている。
【0076】
なお、スイッチングトランジスターとしては、PチャネルMOSトランジスター又はバイポーラトランジスター等を用いても良い。例えば、スイッチングトランジスターとしてPチャネルMOSトランジスターを用いる場合には、
図1及び
図8等において、P型とN型とが逆になると共に、電源電位VDDと電源電位VSSとが逆に接続される。また、スイッチングトランジスターとしてバイポーラトランジスターを用いる場合には、本願において、「ドレイン・ソース間電圧」が、「コレクター・エミッター間電圧」に読み替えられる。
【0077】
図8に示すように、電源端子P1は、N型のコンタクト領域105を介してNウェル102に電気的に接続されている。なお、電源端子P1をNウェル102に接続しないで、Nウェル102をフローティング状態としても良い。電源端子P2は、P型のコンタクト領域104を介して半導体基板101に電気的に接続されている。
【0078】
出力端子P3は、スイッチングトランジスターQN1のドレインを構成する不純物領域107に電気的に接続されている。電源端子P5は、P型のコンタクト領域106を介してPウェル103に電気的に接続されると共に、スイッチングトランジスターQN1のソースを構成する不純物領域108に電気的に接続されている。
【0079】
このように、半導体基板101から電気的に絶縁されたPウェル103にスイッチングトランジスターQN1を配置して、半導体基板101に電気的に接続された電源端子P2とは別個に、Pウェル103及びスイッチングトランジスターQN1のソースに電気的に接続された電源端子P5を設けることにより、スイッチングトランジスターQN1において発生するスイッチングノイズが他の内部回路に及ぼす影響を低減することができる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、電力損失を生じる電流センス抵抗を用いることなく、電源電圧(VDD−VSS)が変化しても精度の高い過電流検出を行うことにより、電力損失を抑えながら、スイッチングトランジスターQN1に流れる過電流を適切に制限することが可能な半導体装置100を提供することができる。また、変換効率が高く、スイッチングトランジスターQN1に流れる過電流を適切に制限することが可能な電源装置を提供することができる。
【0081】
以上の実施形態においては、電源電圧を昇圧するスイッチングレギュレーターについて説明したが、本発明は、電源電圧を降圧するスイッチングレギュレーターにも適用することができる。このように、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野において通常の知識を有する者によって、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。