【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
複数のリンクと、前記複数のリンクを相対回転可能に接続する関節と、を備えるマニプレータの動作可否を判定する動作判定装置であって、
前記マニプレータの所定点を移動させる位置である動作点の設定時に、前記設定時の温度における前記複数のリンクの長さ及び前記動作点に基づいて、前記所定点が移動する位置である第1位置を算出する第1位置算出部と、
所定温度における前記複数のリンクの長さに基づいて、前記第1位置算出部により算出された前記第1位置に前記所定点を移動させる時の前記関節の角度を算出する角度算出部と、
前記角度算出部による前記角度の算出結果に基づいて、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが可能であるか否か判定する角度判定部と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、マニプレータにおいて、複数のリンクが関節により相対回転可能に接続されている。ここで、複数のリンクが相対回転することにより、リンクの温度が上昇する。リンクは温度の上昇に伴って熱膨張するため、リンクの長さは温度に応じて変化する。これに対して、マニプレータの所定点を移動させる位置である動作点の設定時に、設定時の温度における複数のリンクの長さ及び動作点に基づいて、所定点が移動する位置である第1位置が算出される。
【0008】
しかしながら、動作点の設定時とマニプレータによる作業時とで、リンクの温度が異なると、作業時に第1位置に所定点を移動させることができないおそれがある。例えば、高温時に関節を完全に伸ばした状態で動作点を設定すると、低温時にリンクの長さが足りず、第1位置(動作点)に所定点を移動させることができない。
【0009】
この点、角度算出部により、所定温度における複数のリンクの長さに基づいて、第1位置に所定点を移動させる時の関節の角度が算出される。所定温度において第1位置に所定点を移動させることが可能であれば、角度算出部により有効な関節の角度が算出される。一方、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であれば、角度算出部により有効な関節の角度が算出されない。したがって、角度算出部による角度の算出結果に基づいて、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが可能であるか否か判定することができる。その結果、所定温度において、設定した通りにマニプレータを動作させることが可能か否か判定することができる。
【0010】
具体的には、第2の手段のように、前記角度判定部は、前記角度算出部により前記角度が算出されなかった場合、又は前記角度算出部により算出された前記角度が、前記関節により実現不可能な角度であった場合に、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能であると判定するといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であることを容易に判定することができる。
【0011】
具体的には、第3の手段のように、前記角度判定部は、前記角度算出部により算出された前記角度が、前記関節により実現可能な角度であった場合に、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが可能であると判定するといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが可能であることを容易に判定することができる。
【0012】
第4の手段では、前記第1位置は、複数の前記動作点により規定される動作軌道上の点を含む。
【0013】
マニプレータの所定点が楕円軌道上やスプライン軌道上を移動する場合、設定された動作点に所定点を移動させることができても、軌道上の他の点に所定点を移動させることができない場合がある。例えば、軌道において曲率が大きい部分の両脇に、関節を伸ばした状態で動作点が設定されていると、曲率が大きい部分に所定点を移動させることができない場合がある。
【0014】
この点、上記構成によれば、第1位置は、複数の動作点により規定される動作軌道上の点を含んでいる。したがって、設定された動作点のみならず、複数の動作点により規定される動作軌道上の点に、所定温度において所定点を移動させることが可能であるか否か判定することができる。
【0015】
第5の手段では、前記所定点を含むリンクと異なるリンクにおける1点が基点に設定されており、前記動作点の設定時の温度における前記基点から前記第1位置までの距離と、前記所定温度において前記関節を完全に伸ばした状態での前記基点から前記所定点までの長さとに基づいて、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが可能であるか否か判定する長さ判定部を備える。
【0016】
第6の手段は、複数のリンクと、前記複数のリンクを相対回転可能に接続する関節と、を備えるマニプレータの動作可否を判定する動作判定装置であって、
前記マニプレータの所定点を含むリンクと異なるリンクにおける1点が基点に設定されており、
前記所定点を移動させる位置である動作点の設定時に、前記設定時の温度における前記複数のリンクの長さ及び前記動作点に基づいて、前記所定点が移動する位置である第1位置を算出する第1位置算出部と、
前記動作点の設定時の温度における前記基点から前記第1位置までの距離と、所定温度において前記関節を完全に伸ばした状態での前記基点から前記所定点までの長さとに基づいて、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが可能であるか否か判定する長さ判定部と、
を備える。
【0017】
第5,第6の手段によれば、マニプレータの所定点を含むリンクと異なるリンクにおける1点が基点に設定されている。所定温度において所定点を移動させることができる基点から最も離れた位置は、関節を完全に伸ばした状態での所定点の位置となる。したがって、第1位置がこの位置よりも外側にある場合は、所定温度において所定点を第1位置に移動させることができない。
【0018】
この点、動作点の設定時の温度における基点から第1位置までの距離と、所定温度において関節を完全に伸ばした状態での基点から所定点までの長さとに基づいて、所定温度において所定点を第1位置に移動させることが可能であるか否か判定される。このため、設定した通りにマニプレータを動作させることが可能か否かを、簡易な演算により高速で判定することができる。詳しくは、第1位置に対応する各関節の角度を用いて動作可否の判定を行う場合、マニプレータの姿勢を含めた演算が必要となり、その結果動作不可能と判定されると、改めて動作点を設定し直して同様の演算を繰り返し行うことになる。第1位置によっては、上記のような演算を極めて多くこなすことになる場合があり、その場合最終的には動作可能という回答が得られるにしても、それを得るためにかなりの演算時間を必要として非効率である。それに対して、上記構成のように長さ比較により動作可否の判定を行えば、1回の演算により最終的な回答に到達できるので、極めて演算時間を短縮できる。例えばロボット(マニプレータ)において、一番手間が掛かる(時間や費用の効率が悪い)のは、導入初期の教示やキャリブレーションといった必ず人手を介さないとできない段階である。本願は元々、そのタイミングで行われるものであるので、上記構成により演算時間を短縮できれば、手間の改善につながり効率的なロボット導入も可能になることから、ロボットにとっては極めて意味のあるものである。
【0019】
具体的には、第7の手段のように、前記長さ判定部は、前記動作点の設定時の温度における前記基点から前記第1位置までの距離が、前記所定温度において前記関節を完全に伸ばした状態での前記基点から前記所定点までの長さよりも長い場合に、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能であると判定するといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であることを、簡易な演算により高速で判定することができる。
【0020】
具体的には、第8の手段のように、前記長さ判定部は、前記動作点の設定時の温度における前記基点から前記第1位置までの距離が、前記所定温度において前記関節を完全に伸ばした状態での前記基点から前記所定点までの長さよりも短い場合に、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが可能であると判定するといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが可能であることを、簡易な演算により高速で判定することができる。
【0021】
第9の手段では、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能であることを通知する。
【0022】
上記構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であることが通知される。このため、ユーザは、現在の動作点の設定では、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能となることを知ることができる。その結果、動作点の設定終了後に動作点の設定をやり直す必要が生じることや、マニプレータの納入後に動作不能になることを抑制することができる。
【0023】
第10の手段では、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能となる温度を通知する温度通知部を備える。
【0024】
上記構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、第1位置に所定点を移動させることが不可能となる温度が通知される。このため、ユーザは、マニプレータを使用する環境の温度やマニプレータの使用状態を考慮して、第1位置に所定点を移動させることが可能であるか否か判断することができる。
【0025】
第11の手段では、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、前記動作点の設定時に前記関節の角度を修正すべき方向を通知する角度通知部を備える。
【0026】
上記構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、動作点の設定時に関節の角度を修正すべき方向が通知される。このため、ユーザは、所定温度において第1位置に所定点を移動させることを可能とするために、動作点の設定時に関節の角度を修正する方向を容易に知ることができる。
【0027】
第12の手段では、前記角度通知部は、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、前記動作点の設定時に前記関節の角度を修正すべき量を通知する。
【0028】
上記構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、動作点の設定時に関節の角度を修正すべき量が通知される。このため、ユーザは、所定温度において第1位置に所定点を移動させることを可能とするために、動作点の設定時に関節の角度を修正する量を容易に知ることができる。
【0029】
第13の手段では、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、前記動作点の設定時に前記動作点の位置を修正すべき方向を通知する位置通知部を備える。
【0030】
上記構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、動作点の設定時に動作点の位置を修正すべき方向が通知される。このため、ユーザは、所定温度において第1位置に所定点を移動させることを可能とするために、動作点の設定時に動作点の位置を修正する方向を容易に知ることができる。
【0031】
第14の手段では、前記位置通知部は、前記所定温度において前記第1位置に前記所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、前記動作点の設定時に前記動作点の位置を修正すべき量を通知する。
【0032】
上記構成によれば、所定温度において第1位置に所定点を移動させることが不可能であると判定された場合に、動作点の設定時に動作点の位置を修正すべき量が通知される。このため、ユーザは、所定温度において第1位置に所定点を移動させることを可能とするために、動作点の設定時に動作点の位置を修正する量を容易に知ることができる。