特許第6805842号(P6805842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805842鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805842
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20201214BHJP
   G21F 7/00 20060101ALI20201214BHJP
   G21C 11/02 20060101ALI20201214BHJP
   B23B 41/00 20060101ALI20201214BHJP
   B23B 35/00 20060101ALI20201214BHJP
   B23B 51/04 20060101ALI20201214BHJP
   B23D 57/00 20060101ALN20201214BHJP
   B28D 1/08 20060101ALN20201214BHJP
【FI】
   B28D1/14
   G21F7/00 Z
   G21C11/02 100
   B23B41/00 K
   B23B35/00
   B23B51/04 A
   !B23D57/00
   !B28D1/08
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-9890(P2017-9890)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-118402(P2018-118402A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】高濱 雄一
(72)【発明者】
【氏名】岸本 学
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−114546(JP,A)
【文献】 特開2015−155639(JP,A)
【文献】 特開2002−243884(JP,A)
【文献】 特開2016−173339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
B23B 35/00
B23B 41/00
B23B 51/04
G21C 11/02
G21F 7/00
B23D 57/00
B28D 1/08
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート躯体に連通孔を穿設して開口を形成するボーリング装置のスリーブを備えた鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置であって、
前記鉄筋コンクリート躯体に対して前記ボーリング装置が配設される側に設置され、前記鉄筋コンクリート躯体にスタックしたスリーブを切断する切断機と、
前記切断機で切断したスリーブの基端側と交換自在に配設され、前記鉄筋コンクリート躯体に残存したスリーブの先端側を引き抜ける位置まで該スリーブの先端側の外周部をコアリングする、前記スリーブとは異なる口径の回復スリーブと
を備えた鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置。
【請求項2】
前記鉄筋コンクリート躯体は、原子力発電所の生体遮蔽壁であり、
前記切断機でスリーブを切断した後、前記スリーブを回復スリーブに交換する間、穿設された連通孔と、前記切断機と、鉄筋コンクリート躯体に残存したスリーブとを遮蔽自在となるよう、前記切断機の手前側に配設される遮蔽扉を備えた請求項1記載の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置。
【請求項3】
前記遮蔽扉は、前記生体遮蔽壁の開口の形成箇所を覆い且つ前記ボーリング装置が配備される遮蔽室の開口形成窓に設けられ、
前記遮蔽室は、前記スリーブ及び回復スリーブの搬入出口を備え、該搬入出口には搬入出扉が開閉自在となるよう取り付けられている請求項2記載の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置。
【請求項4】
前記回復スリーブは、前記スリーブより大口径である請求項3記載の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置。
【請求項5】
前記搬入出扉を閉じ且つ前記遮蔽扉を開いた状態で前記鉄筋コンクリート躯体に対しスリーブにより連通孔を穿設するコアリング工程と、
該コアリング工程中に前記鉄筋コンクリート躯体にスリーブがスタックした場合、該スタックしたスリーブを前記切断機で切断する切断工程と、
該切断工程でスリーブを切断した後、前記遮蔽扉を閉じることにより、前記鉄筋コンクリート躯体に既に穿設された連通孔を遮蔽する遮蔽工程と、
前記切断工程で切断したスリーブの先端側を残し前記搬入出扉を開いて前記スリーブの基端側を撤去し、該スリーブより大口径の回復スリーブに交換して前記搬入出扉を閉じる交換工程と、
前記遮蔽工程で閉じた遮蔽扉を開け、前記切断工程で切断したスリーブの先端側の外周部を、前記交換工程で交換した回復スリーブによりコアリングして、前記スリーブの先端側を撤去する復旧工程と
を行い、
前記復旧工程で前記スリーブの先端側を撤去した後、新しいスリーブにより前記コアリング工程を継続して行い、開口を形成する請求項4記載の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電所において、冷却材の喪失により原子炉燃料が溶融して原子炉構造材や制御棒等と共に冷えて固化した場合、原子炉内でデブリ化した核燃料物質(燃料デブリ)が発生し、原子炉圧力容器(RPV:Reactor Pressure Vessel)や原子炉格納容器(PCV:Primary Containment Vessel)内に残存する。
【0003】
前記燃料デブリが発生している原子炉を廃炉にする際には、外部環境の放射能汚染を防止する観点から、前記燃料デブリを事前に回収することが重要となる。
【0004】
このため、前記原子炉格納容器を囲う生体遮蔽壁(BSW:Biological Shield Wall)の側面に開口を形成し、前記燃料デブリを回収することが本発明者等によって提案されている。
【0005】
尚、前記生体遮蔽壁の側面に開口を形成して燃料デブリを回収する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−114546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記生体遮蔽壁は、放射線防護のために厚さが2m程度の鉄筋コンクリート躯体で構成され、しかも、建屋の強度部材としての役割をも担うことから、前記鉄筋コンクリート躯体には、非常に太い鉄筋(例えば、直径が38mm程度)が密に埋設されている。このため、ボーリング装置のスリーブを前記生体遮蔽壁に打ち込んで引き抜くことにより連通孔を穿設する、いわゆるコアリングを行い、該コアリングを繰り返し行うことによって前記生体遮蔽壁に多数の連通孔を穿設して開口を形成する際には、該ボーリング装置のスリーブが鉄筋の切断小片を噛み込んでスタックし、作業が停止することが想定される。
【0008】
通常の作業環境であれば、作業員が手作業でスタックしたスリーブを撤去することも可能であるが、このような作業は高線量下では困難となり、改善の余地が残されていた。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、スリーブが鉄筋の切断小片を噛み込んでスタックしても作業を円滑に継続し得る鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置は、鉄筋コンクリート躯体に連通孔を穿設して開口を形成するボーリング装置のスリーブを備えた鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置であって、
前記鉄筋コンクリート躯体に対して前記ボーリング装置が配設される側に設置され、前記鉄筋コンクリート躯体にスタックしたスリーブを切断する切断機と、
前記切断機で切断したスリーブの基端側と交換自在に配設され、前記鉄筋コンクリート躯体に残存したスリーブの先端側を引き抜ける位置まで該スリーブの先端側の外周部をコアリングする、前記スリーブとは異なる口径の回復スリーブと
を備えることができる。
【0011】
前記鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置において、前記鉄筋コンクリート躯体は、原子力発電所の生体遮蔽壁であり、
前記切断機でスリーブを切断した後、前記スリーブを回復スリーブに交換する間、穿設された連通孔と、前記切断機と、鉄筋コンクリート躯体に残存したスリーブとを遮蔽自在となるよう、前記切断機の手前側に配設される遮蔽扉を備えることができる。
【0012】
前記遮蔽扉は、前記生体遮蔽壁の開口の形成箇所を覆い且つ前記ボーリング装置が配備される遮蔽室の開口形成窓に設けられ、
前記遮蔽室は、前記スリーブ及び回復スリーブの搬入出口を備え、該搬入出口には搬入出扉が開閉自在となるよう取り付けられていることが好ましい。
【0013】
又、前記回復スリーブは、前記スリーブより大口径であることが好ましい。
【0014】
一方、前記鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置の使用方法としては、前記搬入出扉を閉じ且つ前記遮蔽扉を開いた状態で前記鉄筋コンクリート躯体に対しスリーブにより連通孔を穿設するコアリング工程と、
該コアリング工程中に前記鉄筋コンクリート躯体にスリーブがスタックした場合、該スタックしたスリーブを前記切断機で切断する切断工程と、
該切断工程でスリーブを切断した後、前記遮蔽扉を閉じることにより、前記鉄筋コンクリート躯体に既に穿設された連通孔を遮蔽する遮蔽工程と、
前記切断工程で切断したスリーブの先端側を残し前記搬入出扉を開いて前記スリーブの基端側を撤去し、該スリーブより大口径の回復スリーブに交換して前記搬入出扉を閉じる交換工程と、
前記遮蔽工程で閉じた遮蔽扉を開け、前記切断工程で切断したスリーブの先端側の外周部を、前記交換工程で交換した回復スリーブによりコアリングして、前記スリーブの先端側を撤去する復旧工程と
を行い、
前記復旧工程で前記スリーブの先端側を撤去した後、新しいスリーブにより前記コアリング工程を継続して行い、開口を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法によれば、スリーブが鉄筋の切断小片を噛み込んでスタックしても作業を円滑に継続し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法の実施例を示す斜視図である。
図2】本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法の実施例における切断機(ワイヤソー)を示す斜視図である。
図3】本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法の実施例におけるコアリング工程を示す斜視図であって、(a)はスリーブにより連通孔を穿設して開口を形成する状態を示す斜視図、(b)はスリーブを交換する状態を示す斜視図、(c)は交換したスリーブにより繰り返し連通孔を穿設して開口を形成する状態を示す斜視図である。
図4】本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法の実施例におけるコアリング工程を示す図3に対応する平面図であって、(a)はスリーブにより連通孔を穿設して開口を形成する状態を示す平面図、(b)はスリーブを交換する状態を示す平面図、(c)は交換したスリーブにより繰り返し連通孔を穿設して開口を形成する状態を示す平面図である。
図5】本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法の実施例における各工程を示す斜視図であって、(a)は切断工程を示す斜視図、(b)は遮蔽工程と交換工程を示す斜視図、(c)は復旧工程を示す斜視図である。
図6】本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法の実施例における各工程を示す平面図であって、(a)は切断工程を示す平面図、(b)は遮蔽工程と交換工程を示す平面図、(c)は復旧工程を示す平面図である。
図7】本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法の実施例を示すフローチャートである。
図8】本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法の実施例において、鉄筋コンクリート躯体が原子力発電所の生体遮蔽壁である場合の例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1図8は本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法の実施例である。
【0019】
本実施例では、図8に示す如く、原子力発電所1の原子炉圧力容器2及び原子炉格納容器3を囲う鉄筋コンクリート躯体である生体遮蔽壁4に開口5を形成する場合について説明する。但し、前記生体遮蔽壁4以外の鉄筋コンクリート躯体にも適用可能であることは言うまでもない。
【0020】
前記生体遮蔽壁4の側面には、前記開口5の形成箇所を覆うための遮蔽室6を配置するようになっている。
【0021】
前記遮蔽室6は、図1に示す如く、中空直方体形状の金属製のセルで構成され、前壁7と、床8と、側壁9と、天井10と、後壁11とを備えている。因みに、図面において、説明の都合上、前記前壁7、床8、側壁9、天井10、後壁11は、内部を透視し得るように記載してある。前記前壁7は、開口形成窓7aを備え、前記生体遮蔽壁4(図8参照)の外面に密着して設けられ、前記開口形成窓7aには遮蔽扉7bが開閉自在となるよう取り付けられている。前記後壁11は、搬入出口11aを備え、該搬入出口11aには搬入出扉11bが開閉自在となるよう取り付けられている。尚、前記開口5を形成する作業中、前記遮蔽扉7bは開放されるため、前記遮蔽室6の前壁7と床8と側壁9と天井10と後壁11は、放射線防護のための遮蔽厚さを有しており、前記遮蔽扉7b及び搬入出扉11bも、放射線防護のための遮蔽厚さを有している。
【0022】
前記遮蔽室6の内部には、スリーブ12により前記生体遮蔽壁4に多数の連通孔5a(図3及び図4参照)を穿設して前記開口5を形成するためのボーリング装置13と、該ボーリング装置13にスリーブ12を装填すると共に前記ボーリング装置13からスリーブ12を回収するための天井クレーン14とが配備されている。前記ボーリング装置13は、前記スリーブ12を回転駆動しつつ前記生体遮蔽壁4に対し進退動させるスリーブ駆動ユニット15と、該スリーブ駆動ユニット15及びスリーブ12を支持しつつ前記生体遮蔽壁4に対して位置決めする位置調整ユニット16とを備えている。前記位置調整ユニット16は、図3(a)及び図4(a)に示す如く、前記スリーブ駆動ユニット15及びスリーブ12の先端側を支持する前方支持フレーム16Fと、前記スリーブ駆動ユニット15及びスリーブ12の基端側を支持する後方支持フレーム16Rとを備えている。前記前方支持フレーム16F及び後方支持フレーム16Rはそれぞれ、前記床8及び天井10に生体遮蔽壁4の表面に沿う水平方向へ延びるよう敷設されたガイドレール16aと、該ガイドレール16aに沿ってスライド自在に配設された横行ブロック16bと、該横行ブロック16bの間に掛け渡す如く上下方向へ延びるよう配設されたガイドピラー16cと、該ガイドピラー16cに沿って昇降自在に配設された昇降ブロック16dとを備えている。前記スリーブ駆動ユニット15及びスリーブ12は、前記前方支持フレーム16Fの昇降ブロック16dと前記後方支持フレーム16Rの昇降ブロック16dとの間に掛け渡される形で支持されるようになっている。
【0023】
前記前壁7の開口形成窓7aには、前記生体遮蔽壁4にスタックしたスリーブ12を切断する切断機17が前記生体遮蔽壁4の外面側(前記ボーリング装置13が配設される側)に設置されている(図1及び図2参照)。前記切断機17としては、例えば、ワイヤソー17Aを採用することができ、該ワイヤソー17Aは、駆動プーリ17a(図5(b)及び図6(b)参照)と、ガイドプーリ17bと、切断用可動プーリ17c(図2参照)と、ワイヤ17dとを備えている。前記駆動プーリ17aは、図5(b)及び図6(b)に示す如く、遮蔽室6の内部に二個配設されて、モータ17eによって回転駆動されるようになっている。前記ガイドプーリ17bは、遮蔽室6の内部(図5(b)及び図6(b)参照)並びに開口形成窓7aの縁部(図2参照)に多数配設されている。前記切断用可動プーリ17cは、図2に示す如く、前記開口形成窓7aの縁部において上下方向へ延びる切断用フレーム17fに沿って図示していない駆動装置により昇降自在に配設されている。前記ワイヤ17dは、前記駆動プーリ17aとガイドプーリ17bと切断用可動プーリ17cとに掛け回されている。前記切断機17としてのワイヤソー17Aは、前記モータ17eによって駆動プーリ17aを回転駆動しワイヤ17dを往復動させつつ前記切断用可動プーリ17cを下降させることにより、ワイヤ17dをスリーブ12の外周面に押し当てて該スリーブ12を切断するようになっている。
【0024】
更に、前記切断機17で切断されて生体遮蔽壁4に残存したスリーブ12を撤去するために、スリーブ12とは異なる口径の回復スリーブ12X(図5(c)及び図6(c)参照)を交換自在に備えている。尚、回復スリーブ12Xの内径は、図5(c)及び図6(c)に示す例では、スリーブ12の外径より大口径としてある。
【0025】
尚、図7には、本実施例における後述する各工程の流れをフローチャートとして示している。
【0026】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0027】
図8に示す如く、原子炉格納容器3を囲う鉄筋コンクリート躯体で構成された生体遮蔽壁4の側面に開口5を形成し、燃料デブリを回収する際には、前記生体遮蔽壁4の側面に、遮蔽室6が配置される。
【0028】
この状態で、図7のフローチャートに示す如く、コアリング工程が行われる(ステップS1参照)。前記コアリング工程中、スリーブ12がスタックしたか否かの判定が行われ(ステップS2参照)、スリーブ12がスタックしていなければ、開口5の形成が全て完了したか否かの判定が行われ(ステップS3参照)、開口5の形成が全て完了していなければ、前記ステップS1に戻ってコアリング工程が繰り返され、開口5の形成が全て完了するまで継続される。
【0029】
前記コアリング工程中、前記ステップS2においてスリーブ12がスタックしたと判定された場合、先ず、切断工程が行われ(ステップS4参照)、続いて、遮蔽工程が行われ(ステップS5参照)、この後、交換工程が行われ(ステップS6参照)、最後に、復旧工程が行われる(ステップS7参照)。前記復旧工程が行われた後、前記ステップS1に戻り、コアリング工程が再開される。
【0030】
以下、前記コアリング工程、切断工程、遮蔽工程、交換工程、復旧工程について詳述する。
【0031】
前記コアリング工程においては、図3(a)及び図4(a)に示す如く、前記鉄筋コンクリート躯体で構成された生体遮蔽壁4に対し、ボーリング装置13のスリーブ12を、位置調整ユニット16にて位置決めした状態でスリーブ駆動ユニット15にて回転駆動しつつ進行させることにより、連通孔5aが穿設される。この時、遮蔽扉7bは開口形成窓7aを開いているが、搬入出扉11bは搬入出口11aを閉じているため、連通孔5aが穿設されても、放射線が外部に漏洩することはない。前記スリーブ12による連通孔5aの穿設が完了すると、該スリーブ12はスリーブ駆動ユニット15にて遮蔽室6の内部に引き戻され、図3(b)及び図4(b)に示す如く、遮蔽扉7bは開口形成窓7aを閉じ、搬入出扉11bは搬入出口11aを開き、新しいスリーブ12が搬入されて、連通孔5aの穿設を完了したスリーブ12と交換される。前記スリーブ12の交換作業、即ち、前記ボーリング装置13からスリーブ12を回収して、ボーリング装置13に新しいスリーブ12を装填する作業は、天井クレーン14によって行われる。前記スリーブ12の交換が完了すると、図3(c)及び図4(c)に示す如く、搬入出扉11bは搬入出口11aを閉じ、遮蔽扉7bは開口形成窓7aを開き、位置調整ユニット16による新しいスリーブ12の位置決めがなされ、スリーブ駆動ユニット15によるスリーブ12の回転駆動と進行動作により、新たな連通孔5aが穿設される。以下、スリーブ12がスタックしない限り、上述と同様の作動が繰り返し行われる。
【0032】
前記切断工程においては、前記コアリング工程中に前記鉄筋コンクリート躯体で構成された生体遮蔽壁4にスリーブ12がスタックした場合、図5(a)及び図6(a)に示す如く、該スタックしたスリーブ12が切断機17としてのワイヤソー17Aで切断される。この時、前記切断機17としてのワイヤソー17Aのモータ17eによって駆動プーリ17aが回転駆動されてワイヤ17dが往復動し、この状態で切断用可動プーリ17c(図2参照)を切断用フレーム17fに沿って下降させると、前記ワイヤ17dがスリーブ12の外周面に押し当てられて該スリーブ12が切断される。
【0033】
前記遮蔽工程においては、前記切断工程でスリーブ12を切断した後、図5(b)及び図6(b)に示す如く、前記遮蔽扉7bを閉じることにより、前記生体遮蔽壁4に既に穿設された連通孔5aが遮蔽される。これにより、放射線の外部への漏洩が最小限に抑えられる。
【0034】
前記交換工程においては、前記切断工程で切断したスリーブ12の先端側を残し前記搬入出扉11bを開いて前記スリーブ12の基端側が撤去され、該スリーブ12より大口径の回復スリーブ12X(図5(b)及び図6(b)参照)に交換される。前記ボーリング装置13からスタックしたスリーブ12の基端側を撤去して、ボーリング装置13に回復スリーブ12Xを装填する作業も、通常のスリーブ12の交換と同様、天井クレーン14によって行われる。この時、搬入出扉11bは搬入出口11aを開いているが、前記遮蔽扉7bは閉じているため、放射線が外部へ漏洩する心配はない。尚、前記交換工程を終えた後、前記搬入出扉11bは閉じられる。
【0035】
前記復旧工程においては、前記遮蔽工程で閉じた遮蔽扉7bが開かれ、前記切断工程で切断したスリーブ12の先端側の外周部が、図5(c)及び図6(c)に示す如く、前記交換工程で交換した回復スリーブ12Xによりコアリングされて引き抜かれ、前記スリーブ12の先端側が撤去される。
【0036】
前記復旧工程で前記スリーブ12の先端側が撤去されると、新しいスリーブ12により前記コアリング工程が継続して行われ、開口5(図8参照)が形成される。
【0037】
この結果、ボーリング装置13のスリーブ12によって前記生体遮蔽壁4に多数の連通孔5aを穿設して開口5を形成する際に、該ボーリング装置13のスリーブ12が鉄筋の切断小片を噛み込んでスタックし、作業が停止したとしても、作業員が手作業でスタックしたスリーブ12を撤去せずに済み、高線量下での作業性が大幅に改善される。
【0038】
こうして、スリーブ12が鉄筋の切断小片を噛み込んでスタックしても作業を円滑に継続し得る。
【0039】
そして、本実施例の場合、前記鉄筋コンクリート躯体は、原子力発電所1の生体遮蔽壁4であり、前記切断機17でスリーブ12を切断した後、前記スリーブ12を回復スリーブ12Xに交換する間、穿設された連通孔5aと、前記切断機17と、鉄筋コンクリート躯体で構成された生体遮蔽壁4に残存したスリーブ12とを遮蔽自在となるよう、前記切断機17の手前側に配設される遮蔽扉7bを備えている。このように構成すると、遮蔽扉7bを閉じることにより、放射線の外部への漏洩を防止でき、原子炉を廃炉にする際に必要となる開口5の形成作業を円滑に行う上で有効となる。
【0040】
又、前記遮蔽扉7bは、前記生体遮蔽壁4の開口5の形成箇所を覆い且つ前記ボーリング装置13が配備される遮蔽室6の開口形成窓7aに設けられ、前記遮蔽室6は、前記スリーブ12及び回復スリーブ12Xの搬入出口11aを備え、該搬入出口11aには搬入出扉11bが開閉自在となるよう取り付けられている。このように構成すると、前記遮蔽扉7bが開いていても、前記搬入出扉11bを閉じれば、放射線が外部へ漏洩することはなく、前記開口5の形成作業をより円滑に行うことが可能となる。
【0041】
更に又、前記回復スリーブ12Xは、前記スリーブ12より大口径としてある。このように構成すると、スタックして切断されたスリーブ12の先端側を回復スリーブ12Xの内部に取り込む形でコアリングすることができ、前記スリーブ12の先端側の撤去を効率良く行うことができる。
【0042】
一方、本実施例の使用方法では、前記搬入出扉11bを閉じ且つ前記遮蔽扉7bを開いた状態で前記鉄筋コンクリート躯体に対しスリーブ12により連通孔5aを穿設するコアリング工程と、該コアリング工程中に前記鉄筋コンクリート躯体にスリーブ12がスタックした場合、該スタックしたスリーブ12を前記切断機17で切断する切断工程と、該切断工程でスリーブ12を切断した後、前記遮蔽扉7bを閉じることにより、前記鉄筋コンクリート躯体に既に穿設された連通孔5aを遮蔽する遮蔽工程と、前記切断工程で切断したスリーブ12の先端側を残し前記搬入出扉11bを開いて前記スリーブ12の基端側を撤去し、該スリーブ12より大口径の回復スリーブ12Xに交換して搬入出扉11bを閉じる交換工程と、前記遮蔽工程で閉じた遮蔽扉7bを開け、前記切断工程で切断したスリーブ12の先端側の外周部を、前記交換工程で交換した回復スリーブ12Xによりコアリングして、前記スリーブ12の先端側を撤去する復旧工程とを行い、前記復旧工程で前記スリーブ12の先端側を撤去した後、新しいスリーブ12により前記コアリング工程を継続して行い、開口5を形成するようにしてある。このように構成すると、スリーブ12が鉄筋の切断小片を噛み込んでスタックしても、放射線の外部への漏洩を最小限に抑えつつ作業を円滑に継続することができる。
【0043】
尚、本発明の鉄筋コンクリート躯体の開口自動形成装置及びその使用方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、スタックして切断されたスリーブより小口径の回復スリーブを用いて、前記スリーブの先端側の外周部を全周に亘りコアリングし、前記スリーブの先端側の撤去を行うようにしても良いこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 原子力発電所
4 生体遮蔽壁(鉄筋コンクリート躯体)
5 開口
5a 連通孔
6 遮蔽室
7a 開口形成窓
7b 遮蔽扉
11a 搬入出口
11b 搬入出扉
12 スリーブ
12X 回復スリーブ
13 ボーリング装置
17 切断機
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8