特許第6805844号(P6805844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805844
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20201214BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20201214BHJP
   H01G 11/58 20130101ALI20201214BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20201214BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20201214BHJP
   H01M 2/36 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01G11/12
   H01G11/58
   H01G11/84
   H01M2/02 A
   H01M2/36 101H
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-10610(P2017-10610)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-120718(P2018-120718A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】前田 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 諭史
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真也
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−501660(JP,A)
【文献】 特開2005−259379(JP,A)
【文献】 特開2018−101486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/12
H01G 11/58 − 11/64
H01G 11/78 − 11/86
H01M 2/02 − 2/08
H01M 2/36
H01M 10/0585
H01M 10/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板と、前記電極板の一方面に設けられた正極と、前記電極板の他方面に設けられた負極とを含む電極を有する蓄電モジュールの製造方法であって、
前記電極を積層方向に積層して積層体を得る積層工程と、
型枠内に樹脂材料を流通させる射出成形により、前記積層方向に延在する前記積層体の側面において前記電極板の縁部を保持する枠体を形成する枠体形成工程と、
前記枠体に設けられた注液口から前記枠体内に電解液を注入する注入工程と、
を含み、
前記注液口は、隣り合う前記電極間の空間と連通し、
前記枠体形成工程においては、前記積層方向において前記積層体の縁部を挟み込むように配置されると共に前記積層方向と交差する方向に沿って延びる延在部を有する入れ子を前記注液口に対応する位置に配置した状態で前記型枠内に前記樹脂材料を流通させ、前記枠体を形成する、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記延在部は、前記積層方向と交差する方向における前記電極の積層公差よりも長い寸法を有する、請求項1記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記枠体は、前記電極板の前記縁部を保持する第1樹脂部と、前記積層方向から見て前記第1樹脂部の周囲に設けられる第2樹脂部と、を備え、
前記注液口は、前記第1樹脂部に設けられた第1開口と、前記第2樹脂部に設けられた第2開口と、を有し、
前記第1開口は、隣り合う前記電極間の空間及び前記第2開口と連通し、
前記枠体形成工程においては、前記延在部を有する前記入れ子を前記第2開口に対応する位置に配置した状態で前記第2樹脂部の樹脂材料を前記型枠内に流通させ、前記第2樹脂部を形成する、請求項1又は2記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記延在部は、前記積層体の前記縁部における前記第1樹脂部の前記積層方向と交差する方向に沿う延在長さよりも短い寸法を有する、請求項3記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極板と、電極板の一方面に設けられた正極と、電極板の他方面に設けられた負極とを含むバイポーラ電極が積層された積層体を有するバイポーラ電池が知られている(例えば特許文献1)。このバイポーラ電池では、積層体が樹脂製のシール材(枠体)によって囲まれている。シール材は、電解液を注入するための開口部を有している。電解液は、チューブ又はノズルを用いて開口部から注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−234823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電モジュールでは、電極の積層方向に延在する積層体の側面において電極板の縁部を保持し、電解液を注入する注液口が設けられた枠体を射出成形により形成することがある。このような枠体は、例えば、入れ子を注液口に対応する位置に配置した状態で、入れ子の周囲に形成され積層方向と交差する方向を軸方向とする筒状領域に枠体の樹脂材料を流通させる射出成形により形成される。ここで、筒状領域に流通された樹脂材料が積層体の側面と入れ子との間に流入すると、流入した樹脂材料によって注液口が閉塞され、電解液を注入することができなくなる可能性がある。
【0005】
本発明の一側面は、電解液を確実に注入することが可能となる蓄電モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、電極板と、電極板の一方面に設けられた正極と、電極板の他方面に設けられた負極とを含む電極を有する蓄電モジュールの製造方法であって、電極を積層方向に積層して積層体を得る積層工程と、型枠内に樹脂材料を流通させる射出成形により、積層方向に延在する積層体の側面において電極板の縁部を保持する枠体を形成する枠体形成工程と、枠体に設けられた注液口から枠体内に電解液を注入する注入工程と、を含み、注液口は、隣り合う電極間の空間と連通し、枠体形成工程においては、積層方向において積層体の縁部を挟み込むように配置されると共に積層方向と交差する方向に沿って延びる延在部を有する入れ子を注液口に対応する位置に配置した状態で型枠内に樹脂材料を流通させ、枠体を形成する。
【0007】
この蓄電モジュールの製造方法では、枠体形成工程において、注液口に対応する位置に入れ子を配置した状態で型枠内に樹脂材料を流通させる射出成形により、枠体を形成する。入れ子は、積層方向において積層体の縁部を挟み込むように配置されると共に積層方向と交差する方向に沿って延びる延在部を有する。この延在部により、注液口となる部分に樹脂材料が流入することが抑制され、樹脂材料によって注液口が閉塞されることが抑制される。よって、電解液を確実に注入することが可能となる。
【0008】
延在部は、積層方向と交差する方向における電極の積層公差よりも長い寸法を有してもよい。この場合、電極の積層公差の範囲で生じる隙間が延在部により確実に覆われる。よって、注液口となる部分に樹脂材料が流入することをより確実に抑制できる。
【0009】
上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、枠体は、電極板の縁部を保持する第1樹脂部と、積層方向から見て第1樹脂部の周囲に設けられる第2樹脂部と、を備え、注液口は、第1樹脂部に設けられた第1開口と、第2樹脂部に設けられた第2開口と、を有し、第1開口は、隣り合う電極間の空間及び第2開口と連通し、枠体形成工程においては、延在部を有する入れ子を第2開口に対応する位置に配置した状態で第2樹脂部の樹脂材料を型枠内に流通させ、第2樹脂部を形成してもよい。
【0010】
延在部は、積層体の縁部における第1樹脂部の積層方向と交差する方向に沿う延在長さよりも短い寸法を有してもよい。この場合、第2樹脂部における第2開口の周囲に形成された領域の端部が第1樹脂部と接する余地を確保できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、電解液を確実に注入することが可能となる蓄電モジュールの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法により製造される蓄電モジュールを備える蓄電装置を示す概略断面図である。
図2図2は、図1の蓄電モジュールを示す概略断面図である。
図3図3は、図2の蓄電モジュールを示す概略斜視図である。
図4図4は、図3の蓄電モジュールの一部を拡大した側面図である。
図5図5は、積層工程の一例を示す概略断面図である。
図6図6は、枠体形成工程を説明するための概略断面図である。
図7図7は、枠体形成工程を説明するための概略断面図である。
図8図8は、枠体形成工程を説明するための概略断面図である。
図9図9は、枠体形成工程を説明するための概略断面図である。
図10図10は、枠体形成工程を説明するための概略断面図である。
図11図11は、枠体形成工程の比較例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図面にはXYZ直交座標系が示される。
【0014】
[蓄電装置の構成]
図1は、蓄電モジュールを備える蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。同図に示す蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置10は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール12を備えるが、単一の蓄電モジュール12を備えてもよい。蓄電モジュール12は例えばバイポーラ電池である。蓄電モジュール12は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池であるが、電気二重層キャパシタであってもよい。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0015】
複数の蓄電モジュール12は、例えば金属板等の導電板14を介して積層され得る。積層方向D1から見て、蓄電モジュール12及び導電板14は例えば矩形形状を有する。各蓄電モジュール12の詳細については後述する。導電板14は、蓄電モジュール12の積層方向D1(Z方向)において両端に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置される。導電板14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向D1に直列に接続される。積層方向D1において、一端に位置する導電板14には正極端子24が接続されており、他端に位置する導電板14には負極端子26が接続されている。正極端子24は、接続される導電板14と一体であってもよい。負極端子26は、接続される導電板14と一体であってもよい。正極端子24及び負極端子26は、積層方向D1に交差する方向(X方向)に延在している。これらの正極端子24及び負極端子26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
【0016】
導電板14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板14の内部に設けられた複数の空隙14aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール12からの熱を効率的に外部に放出できる。各空隙14aは例えば積層方向D1に交差する方向(Y方向)に延在する。積層方向D1から見て、導電板14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。
【0017】
蓄電装置10は、交互に積層された蓄電モジュール12及び導電板14を積層方向D1に拘束する拘束部材16を備え得る。拘束部材16は、一対の拘束プレート16A,16Bと、拘束プレート16A,16B同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)とを備える。各拘束プレート16A,16Bと導電板14との間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置される。各拘束プレート16A,16Bは、例えば鉄等の金属によって構成されている。積層方向D1から見て、各拘束プレート16A,16B及び絶縁フィルム22は例えば矩形形状を有する。絶縁フィルム22は導電板14よりも大きくなっており、各拘束プレート16A,16Bは、蓄電モジュール12よりも大きくなっている。積層方向D1から見て、拘束プレート16Aの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。同様に、積層方向D1から見て、拘束プレート16Bの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H2が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。積層方向D1から見て各拘束プレート16A,16Bが矩形形状を有している場合、挿通孔H1及び挿通孔H2は、拘束プレート16A,16Bの角部に位置する。
【0018】
一方の拘束プレート16Aは、負極端子26に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート16Bは、正極端子24に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば一方の拘束プレート16A側から他方の拘束プレート16B側に向かって挿通孔H1に通され、他方の拘束プレート16Bから突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向D1に拘束荷重が付加される。
【0019】
図2は、図1の蓄電装置を構成する蓄電モジュールを示す概略断面図である。同図に示す蓄電モジュール12は、複数のバイポーラ電極(電極)32が積層された積層体30を備える。バイポーラ電極32の積層方向D1から見て積層体30は例えば矩形形状を有する。隣り合うバイポーラ電極32間にはセパレータ40が配置され得る。バイポーラ電極32は、電極板34と、電極板34の一方面に設けられた正極36と、電極板34の他方面に設けられた負極38とを含む。積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極36は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極38は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極36と対向している。積層方向D1において、積層体30の一端には、内側面に負極38が配置された電極板34(負極側終端電極)が配置され、積層体30の他端には、内側面に正極36が配置された電極板34(正極側終端電極)が配置される。負極側終端電極の負極38は、セパレータ40を介して最上層のバイポーラ電極32の正極36と対向している。正極側終端電極の正極36は、セパレータ40を介して最下層のバイポーラ電極32の負極38と対向している。これら終端電極の電極板34はそれぞれ隣り合う導電板14(図1参照)に接続される。
【0020】
蓄電モジュール12は、積層方向D1に延在する積層体30の側面30aにおいて電極板34の縁部34aを保持する枠体50を備える。枠体50は、積層体30の側面30aを取り囲むように構成されている。枠体50は、電極板34の縁部34aを保持する第1樹脂部52と、積層方向D1から見て第1樹脂部52の周囲に設けられる第2樹脂部54とを備え得る。
【0021】
枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の一方面(正極36が形成される面)から縁部34aにおける電極板34の端面にわたって設けられている。積層方向D1から見て、各第1樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34a全周にわたって設けられている。隣り合う第1樹脂部52同士は、各バイポーラ電極32の電極板34の他方面(負極38が形成される面)の外側に延在する面において溶着している。その結果、第1樹脂部52には、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aが埋没して保持されている。各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aと同様に、積層体30の両端に配置された電極板34の縁部34aも第1樹脂部52に埋没した状態で保持されている。これにより、積層方向D1に隣り合う電極板34,34間には、当該電極板34,34と第1樹脂部52とによって気密に仕切られた内部空間(空間)Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。
【0022】
枠体50の外壁を構成する第2樹脂部54は、積層方向D1を軸方向として延在する筒状部である。第2樹脂部54は、積層方向D1において積層体30の全長にわたって延在する。第2樹脂部54は、積層方向D1に延在する第1樹脂部52の外側面を覆っている。第2樹脂部54は、積層方向D1から見て内側において第1樹脂部52に溶着されている。
【0023】
電極板34は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板34の縁部34aは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第1樹脂部52に埋没して保持される領域となっている。正極36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。電極板34の他方面における負極38の形成領域は、電極板34の一方面における正極36の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0024】
セパレータ40は、例えばシート状に形成されている。セパレータ40を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。また、セパレータ40は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ40は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0025】
枠体50(第1樹脂部52及び第2樹脂部54)は、例えば絶縁性の樹脂を用いた射出成形によって矩形の筒状に形成されている(詳しくは後述)。枠体50を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0026】
図3は、図2の蓄電モジュールを示す概略斜視図である。図4は、図3の蓄電モジュールの一部を拡大した平面図である。図3及び図4に示されるように、蓄電モジュール12の枠体50は、積層体30の外周に沿って延在する側面50sを有する。側面50sは積層方向D1から見て外側に位置する第2樹脂部54の面である。側面50sは、積層方向D1に交差する方向から見て例えば矩形形状を有している。この場合、側面50sは4つの矩形面から構成される。
【0027】
第2樹脂部54は、本体領域56と、積層方向D1と交差する方向を軸方向D2とする筒状領域58と、を有している。本体領域56の側面形状は、例えば矩形である。本体領域56は、積層体30の縁部30bを覆う第2樹脂部54の本体部である。積層体30の縁部30bは、各電極板34の縁部34aを保持する各第1樹脂部52によって構成される外側面を含めた場合の積層体30の縁部である(図2参照)。
【0028】
筒状領域58は、枠体50内に電解液を注入するための注液口50aを設けるために本体領域56に形成された突出部を含む領域である。筒状領域58は、注液口50aの周囲に形成され、積層方向D1において注液口50aから離れるように突出している。筒状領域58は、例えば、積層方向D1から見た本体領域56の上面の矩形形状の一辺における中央に設けられている。筒状領域58の断面形状は、例えば矩形である。
【0029】
この筒状領域58では、積層方向D1において積層体30の縁部30bを挟み込むように第2樹脂部54が形成されている。筒状領域58では、積層方向D1の両側において第1樹脂部52の表面52s(図10参照)に溶着されている。
【0030】
注液口50aは、隣り合うバイポーラ電極32間の内部空間Vと連通する。具体的には、注液口50aは、図4に示されるように、第1樹脂部52に設けられた第1開口52aと、第2樹脂部54に設けられた第2開口54aとを有し得る。第1開口52aは、例えば隣り合うバイポーラ電極32の第1樹脂部52において、電極板34の一方面側に溝を形成することによって第1樹脂部52,52間に形成された空隙であってもよい。この溝は、第1樹脂部52の成型の際、内部空間V及び第2開口54aを連通するように同時に成型されてもよいし、第1樹脂部52の成型後の加工によって形成されてもよい。第2樹脂部54には、複数の第1開口52aを覆うように広がる単一の第2開口54aが設けられている。第1開口52aは、隣り合うバイポーラ電極32間の内部空間V(図2参照)及び第2開口54aと連通している。すなわち、第2樹脂部54は、第2開口54aの周囲に形成され、積層方向D1と交差する方向を軸方向D2とする筒状領域58を有する。この場合、電解液は第2開口54aから第1開口52aを経由して枠体50内に注入される。注液口50aは、電解液の注入後にシール材(不図示)によって封止される。
【0031】
[蓄電装置の製造方法]
図5図10は、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法における積層工程及び枠体形成工程を説明するための概略断面図である。以下、図2に示される蓄電モジュール12の製造方法の一例を説明する。なお、図7図10の説明において、上側とは、各図の紙面上方側を意味し、上面とは、当該方向の一方面を意味する。また、下側とは、各図の紙面下方側を意味し、下面とは、当該方向の他方面を意味する。
【0032】
まず、図5に示されるように、例えばセパレータ40を介してバイポーラ電極32が積層される。これにより、積層体30が得られる(積層工程)。
【0033】
(枠体形成工程)
続いて、図6に示されるように、型枠60内に樹脂材料54Pを流通させる射出成形により、積層方向D1に延在する積層体30の側面30aにおいて電極板34の縁部34aを保持する枠体50を形成する(枠体形成工程)。枠体形成工程においては、まず、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aに、例えば射出成形により第1樹脂部52を形成する。このとき、隣り合うバイポーラ電極32の下側の第1樹脂部52においては、その上面に溝が形成される。また、この溝によって、第1樹脂部52,52間に第1開口52aが形成される。その後、第2樹脂部54の樹脂材料54Pを型枠60内(本体領域56及び筒状領域58を形成する空間)に流通させ、第1樹脂部52の外側面(積層体30の縁部30b)に沿って第2樹脂部54を形成する。これにより、図3及び図4に示されるように、第1樹脂部52及び第2樹脂部54を有する枠体50が形成される。
【0034】
第2樹脂部54の形成について、より具体的に説明する。型枠60内に、流動性を有する第2樹脂部54の樹脂材料54Pを流し込むことによって、第2樹脂部54が形成される。型枠60は、本体領域56及び筒状領域58(図4参照)の外縁を形成する下側型61及び上側型62と、注液口50aの第2開口54aを形成するための入れ子63と、を有する。入れ子63は、本体部63aと、積層方向D1における本体部63aの両端側に配置された一対の延在部63b,63cとを有する。延在部63bは、本体部63aの下側型61に近接する側に配置されている。下側型61及び延在部63bにより、樹脂材料54Pが流通される流路V1が形成される。延在部63cは、本体部63aの上側型62に近接する側に配置されている。上側型62及び延在部63cにより、樹脂材料54Pが流通される流路V2が形成される。第2樹脂部54の樹脂材料54Pは、積層方向D1に交差する方向に流れる。例えば、第2樹脂部54の樹脂材料54Pは、互いに対向配置された下側型61と上側型62との間を流れた後、入れ子63に衝突して、入れ子63の周囲に沿って2つに分かれる。2つに分かれた第2樹脂部54の樹脂材料54Pは、それぞれ流路V1と流路V2とを流れた後、合流して、下側型61と上側型62との間を流れる。これにより、第2樹脂部54が形成される。
【0035】
ここで、例えば図11に示されるように、第2樹脂部154を形成するために下側型161、上側型162及び入れ子163を用いると、入れ子163と積層体30の縁部30bとの間に樹脂材料154Pが染み出してしまい、染み出した樹脂材料154Qによって注液口150aの少なくとも一部が閉塞され得る。この現象は、積層工程におけるバイポーラ電極32の積層公差に起因して生じる。バイポーラ電極32の積層公差とは、隣接するバイポーラ電極32の端面が積層方向D1に交差する方向(例えば軸方向D2)に互いにずれるズレ量の公差である。なお、本実施形態のように各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aにおける電極板34の端面にわたって第1樹脂部52が設けられている場合には、バイポーラ電極32の積層公差は、隣接するバイポーラ電極32に設けられた第1樹脂部52の外側面が積層方向D1に交差する方向に互いにずれるズレ量の公差であるとして捉えられてもよい。実際上、バイポーラ電極32の積層公差は、一定の程度で存在する。そのため、入れ子163と積層体30の縁部30bとの間には、バイポーラ電極32の積層公差に応じた微小な隙間が生じ得る。その結果、樹脂材料154Pは、この微小な隙間から入れ子163と積層体30の縁部30bとの間に染み出し得る。
【0036】
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者らは、積層方向D1において積層体30の縁部30bを挟み込むように配置されると共に軸方向D2に沿って延びる延在部63b,63cを有する入れ子63を設けることに想到した。この延在部63b,63cを設けることにより、筒状領域58の流路V1,V2に流通された樹脂材料54Pが注液口50aに流入することが抑制されると共に、流入した樹脂材料54Pによって注液口50aが閉塞されることが抑制されることにより、内部空間Vに電解液を確実に注入することが可能となるという知見を得た。このような入れ子63を用いて、筒状領域58は、以下のようにして形成される。
【0037】
すなわち、図7に示されるように、枠体形成工程において、下側型61の上面61sに延在部63bを載置すると共に所定の手法により固定する。固定の手法としては、例えばボルトによる固定が挙げられる。そして、延在部63bの上面が本体部63aの下面及び第1樹脂部52の縁面52eに当接された状態となるように、積層工程において得られた積層体30と本体部63aとを延在部63b上に載置する。このとき、積層体30と本体部63aとの境界部Wは、可能な限り近づけて当接される。これにより、下側型61、延在部63b、及び表面52sによって流路V1が画成される。
【0038】
続いて、図8に示されるように、下側型61と上側型62とを型合わせする。このとき、例えば上側型62の所定の位置に延在部63cが予め取り付けられていてもよい。取り付けの手法としては、例えばボルトによる固定が挙げられる。この場合、型合わせに伴って、延在部63cの下面は、本体部63aの上面及び第1樹脂部52の縁面52fに当接された状態となる。これにより、上側型62、延在部63c、及び表面52sによって流路V2が画成される。また、延在部63b,63cが、軸方向D2に沿って延びると共に積層方向D1において積層体30の縁部30bを挟み込むように配置された状態となる。
【0039】
ここでの延在部63b,63cは、軸方向D2におけるバイポーラ電極32の積層公差よりも長い寸法を有する。また、延在部63b,63cは、積層体30の縁部30bにおける第1樹脂部52の軸方向D2に沿う延在長さよりも短い寸法を有する。したがって、積層体30と本体部63aとの境界部Wは、延在部63b,63cにより覆われた状態となり、流路V1及び流路V2から遮断される。
【0040】
なお、下側型61と上側型62との型合わせのとき、例えば、上側型62の所定の位置に延在部63cを予め取り付けることに代えて、延在部63cの下面が、本体部63aの上面及び第1樹脂部52の縁面52fに当接された状態となるように、延在部63cを予め本体部63a上に取付けてもよい。
【0041】
続いて、図9に示されるように、例えば射出成型により、第2樹脂部54の樹脂材料54Pを流路V1及び流路V2に流通させる。これにより、筒状領域58を含む第2樹脂部54が形成される。このとき、延在部63b,63cが軸方向D2に沿って延びると共に積層体30の縁部を挟み込むように配置されているため、積層体30と本体部63aとの境界部Wへの樹脂材料54Pの染み出しが抑制される。また、流路V1,V2の一部が表面52sにより画成されているため、樹脂材料54Pは、第1樹脂部52の表面52sに接触する。その結果、筒状領域58の端部58eは、積層方向D1において第1樹脂部52の表面52sを介して電極板34の縁部34aを挟み込んだ状態となる。つまり、第1樹脂部52及び第2樹脂部54は、表面52sにおいて互いに接触している状態となる。この状態で、第1樹脂部52及び第2樹脂部54は、表面52sにおいて互いに溶着される。これにより、表面52sにおける気密性が確保される。第1樹脂部52及び第2樹脂部54により枠体50が形成される。
【0042】
続いて、図10に示されるように、上側型62を脱型する。更に、入れ子63を軸方向D2に沿って積層体30から離間する方向へ移動させる。これにより、入れ子63が配置されていた位置に注液口50aの第2開口54aが形成される。これにより、第2開口54aと内部空間Vとを連通する注液口50aが形成される。その後、枠体50が形成された積層体30を型枠60から取り出す。
【0043】
(注入工程)
続いて、枠体50に設けられた注液口50aから枠体50内の内部空間Vに電解液を注入する(注入工程)。注入工程では、例えば、内部空間V(図2参照)から空気を排出する真空ポンプ、電解液を供給するディスペンサ、及び電解液を収容するタンクを備える注入装置(不図示)を用いて電解液の注入が行われる。電解液の注入は、注入装置を用いて例えば以下のように行われる。まず、真空ポンプを作動させる。これにより、枠体50内の内部空間Vから空気が排出される。その後、ディスペンサから供給されタンクに収容された電解液が枠体50内の内部空間Vに注入される。
【0044】
上記工程を経た後、シール材(不図示)により注液口50aを封止することによって、図2に示される蓄電モジュール12が製造される。その後、図1に示されるように、導電板14を介して複数の蓄電モジュール12を積層する。積層方向D1の両端に位置する導電板14にはそれぞれ正極端子24及び負極端子26が予め接続されている。その後、積層方向D1の両端に、絶縁フィルム22を介して一対の拘束プレート16A,16Bをそれぞれ配置する。その後、ボルト18の軸部を拘束プレート16Aの挿通孔H1に挿入し、拘束プレート16Bの挿通孔H2に挿入する。その後、拘束プレート16Bから突出したボルト18の先端に、ナット20を螺合する。このようにして図1に示される蓄電装置10が製造される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の蓄電モジュールの製造方法では、枠体形成工程において、注液口50aに対応する位置に入れ子63を配置した状態で型枠60内に樹脂材料54Pを流通させる射出成形により、枠体50を形成する。入れ子63は、積層方向D1において積層体30の縁部30bを挟み込むように配置されると共に軸方向D2に沿って延びる延在部63b,63cを有する。この延在部63b,63cにより、樹脂材料54Pが注液口50aとなる部分に流入する(積層体30と本体部63aとの境界部Wに染み出す)ことが抑制され、流入した樹脂材料54Pによって注液口50aが閉塞されることが抑制される。よって、電解液を確実に注入することが可能となる。
【0046】
延在部63b,63cは、軸方向D2におけるバイポーラ電極32の積層公差よりも長い寸法を有してもよい。これにより、バイポーラ電極32の積層公差の範囲で生じる隙間が延在部63b,63cにより確実に覆われる。よって、注液口50aとなる部分に樹脂材料54Pが流入することをより確実に抑制できる。
【0047】
延在部63b,63cは、積層体30の縁部30bにおける第1樹脂部52の軸方向D2に沿う延在長さよりも短い寸法を有してもよい。これにより、筒状領域58の端部58eが第1樹脂部52と接する余地を確保できる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0049】
例えば、注液口50a及び筒状領域58の形状は、上述した例に限定されない。例えば、軸方向D2から見た断面は、円形、楕円、その他種々の矩形であってもよい。
【0050】
筒状領域58の軸方向D2は、上述した例に限定されない。要は、筒状領域58により形成される注液口50aが第2開口54aと内部空間Vとを連通可能な方向であれば、X方向以外の任意の方向であってもよい。
【0051】
第2樹脂部54における筒状領域58の位置は、上述した例に限定されない。また、枠体50は、必ずしも第1樹脂部52及び第2樹脂部54から構成されていなくてもよく、例えば一体的に形成された枠体50に筒状領域58が設けられていてもよい。
【0052】
電極の例としてバイポーラ電極32を示したが、これに限定されない。上述した蓄電モジュールの製造方法は、その他の種類の電極を用いる蓄電装置を製造する方法としても適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
12…蓄電モジュール、30…積層体、30a…側面、30b…縁部、32…バイポーラ電極(電極)、34…電極板、34a…縁部、36…正極、38…負極、50…枠体、50a…注液口、58…筒状領域、52…第1樹脂部、52a…第1開口、54…第2樹脂部、54a…第2開口、54P…樹脂材料、63…入れ子、63b,63c…延在部、D1…積層方向、D2…軸方向、V…内部空間(空間)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11