(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態の圧縮機1について、
図1〜
図6を参照して説明する。圧縮機1は、圧縮機本体10と、圧縮機本体10が収容された収容体20とを有する。圧縮機1は、
図1に示すようにヒートポンプサイクル50を有する車両用空調装置100に適用される。ヒートポンプサイクル50は、車両用空調装置100において車室内に送風する空気を加熱あるいは冷却する機能を有する冷凍サイクルである。ヒートポンプサイクル50は、少なくとも2つの空調運転モードの冷媒回路に切り替え可能に構成されている。1つは、送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房運転モードの冷媒回路である。他の1つは送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房運転モードの冷媒回路である。
【0011】
ヒートポンプサイクル50は、複数の冷凍サイクル機能部品を有する。複数の冷凍サイクル機能部品とは、少なくとも圧縮機本体10、凝縮器11、絞り部、蒸発器13、室外熱交換器12を含む。ヒートポンプサイクル50において、複数の冷凍サイクル機能部品は配管によって環状に接続されている。ヒートポンプサイクル50を有する車両用空調装置100は、例えば走行用の駆動源としてモータを有する車両、例えばハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池自動車等に適用される。
【0012】
車両用空調装置100は、乗員が車両に乗車する前に車室内の冷房または暖房を行うプレ空調運転を実行可能に構成されている。例えば、乗車前の乗員が携帯機等を操作してプレ空調運転の命令信号を送信すると、エアコンECU30がこの命令信号を受信して所定のプログラムによる演算を行ってプレ空調運転を実行する。または、乗員がプレ空調運転を実行したい時間帯にあらかじめタイマーを設定すると、エアコンECU30がこのタイマーに従ってプレ空調運転を実行する。
【0013】
圧縮機本体10は、冷媒を圧縮して吐出し、ヒートポンプサイクル50に冷媒を循環させる電動式の流体機械である。圧縮機本体10は、例えば略円筒形状のケーシングと、ケーシング内に収容された電動モータと、電動モータによって駆動され冷媒を圧縮する圧縮機構部とを有する。圧縮機構部には、斜板形やワッブル形等の往復式の圧縮機構、またはスクロール形やベーン形等の回転式の圧縮機構等、種々の圧縮機構を適宜選択することができる。圧縮機本体10には、流入する冷媒が通過する配管および流出する冷媒が通過する配管が接続される。圧縮機本体10は、エアコンECU30と通信可能に接続されている。圧縮機本体10は、エアコンECU30によってその駆動を制御される。
【0014】
収容体20は、圧縮機本体10を内部に収容する。
図2および
図3に示すように、収容体20は、例えば一面が開口した箱体として形成されている。
図2および
図3は、圧縮機1の外観を示した図である。
図2および
図3において外側から見えない部分は点線で示している。圧縮機1をハイブリッド車両等のエンジン60を有する車両に適用する場合、収容体20は、例えばエンジン60に取り付けられる。収容体20は、被取付体であるエンジン60と直接接触して取り付けられる取付壁部20aを有する。収容体20は、取付壁部20aから圧縮機本体10の周囲を取り囲むように延びる4つの側壁部20bを有する。4つの側壁部20bの、取付壁部20aと反対側の端部は、開口部20cを形成する。
【0015】
スライドドア部21は開口部20cが閉塞された状態である閉状態と、開口部20cが開放された状態である開状態とを切り替える開閉部である。開状態の場合、スライドドア部21は、例えば1つの側壁部20bの表面を覆う位置に位置している。開状態から閉状態に切り替わると、スライドドア部21は、開状態の位置から開口部20cを覆うようにスライドして開口部20cを閉塞する。スライドドア部21は、駆動部22によって駆動されることで閉状態と開状態とを切り替えることができる。スライドドア部21は、スライドする際に収容体20の外形に沿って変形可能に構成されている。例えば、スライドドア部21は、可撓性の材料によって形成されることで変形可能に形成されている。または、複数の板部材が機械的に連結され、連結部分を軸に各板部材が回動可能な構成によって外形に沿って変形可能に構成されていてもよい。
【0016】
駆動部22は、例えばサーボモータ等の電動モータと、電動モータの回転軸に接続され、電動モータの回転駆動力をスライドドア部21に伝達するギアとを有する。駆動部22は、電動モータの駆動によってギアを回転することでスライドドア部21を駆動する。モータは、エアコンECU30と接続され、エアコンECU30によってその駆動を制御可能に構成されている。
【0017】
エアコンECU30は、車両用空調装置100を制御する電子制御装置(Electronic Control Unit)である。エアコンECU30は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータを主なハードウェア要素として備える。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能な所定のプログラムを非一時的に記憶する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。エアコンECU30が提供する手段および/または機能は、記憶媒体に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、エアコンECU30がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。
【0018】
エアコンECU30は、エアミックスドア17の開度、ブロワ16の送風量、圧縮機本体10の吐出量等を制御する。エアコンECU30は、複数のセンサと接続され、各センサからの検出信号を受け取ることが可能となっている。複数のセンサとは、例えば、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、吐出温度センサ、吐出圧力センサ、蒸発器温度センサ、室外熱交換器温度センサ等である。エアコンECU30は、これら検出信号と記憶された空調制御プログラムとを用いて各種演算、処理を行い、車室内空調に寄与する各種の空調機能部品を制御する制御信号を出力する。空調機能部品には、圧縮機本体10、ブロワ16、内外気切替ドア15、エアミックスドア17、吹出モードドア等が含まれる。駆動部22の駆動を制御することによって、スライドドア部21の駆動を制御する。
【0019】
エアコンECU30は、吐出温度センサから受け取った冷媒の吐出温度情報を基に、スライドドア部21の開閉制御を実行する。エアコンECU30が実行する開閉制御を、
図4のフローチャートを用いて説明する。エアコンECU30は、吐出温度の上昇を抑制する必要がある場合にスライドドア部21を開状態に制御する。エアコンECU30は、吐出温度の低下を抑制する必要がある場合、スライドドア部21を閉状態に制御する。例えば、冬季にヒートポンプサイクル50が暖房運転を行う場合は、圧縮機本体10の温度が低下しやすく、これにより暖房性能が低下しやすい。また、夏季にヒートポンプサイクル50が冷房運転を行う場合は、圧縮機本体10の温度が上昇しやすく、これにより冷房性能が低下しやすい。また、圧縮機本体10の温度が上昇すると圧縮機本体10の耐久性が低下してしまうという問題もある。
【0020】
以上のような状況を回避するために、エアコンECU30は、吐出温度によってスライドドア部21の開状態および閉状態を切り替える。エアコンECU30は、例えば車両のイグニッションスイッチまたはスタートスイッチがオンになると
図4に示す開閉制御を開始する。または、着座センサや人感センサ等で車室内に乗員が乗車したことを検出した際に
図4に示す制御を開始してもよい。
【0021】
まず、ステップS10では、車両が停車中か否か、すなわち車両が停車中であるか走行中であるかを判定する。ステップS10では、例えば車両のシフトレバーがパーキングレンジまたはニュートラルレンジにある場合に車両が停車中であると判定し、シフトレバーがドライブレンジにある場合に車両が停車中ではない、すなわち走行中であると判定する。または、他の方法によって車両が停車中か否かを判定してもよい。例えば、車両の駆動輪の回転によって、車両が停車中か否かを判定してもよい。ステップS10は、特許請求の範囲における停車判定部に相当する。
【0022】
ステップS10において、車両が停車中であると判定された場合には、ステップS13へと進む。ステップS13では、圧縮機本体10の吐出温度が所定温度T1を上回るか否かを判定する。ステップS13では、冷媒の吐出温度を検出することによって、圧縮機本体10の温度を間接的に検出している。通常、圧縮機本体の温度が上昇すると吐出温度も相関して上昇し、圧縮機本体の温度が低下すると吐出温度も相関して低下する。したがって、吐出温度は圧縮機本体の温度に関連する関連温度であり、スライドドア部21を開状態に制御するか閉状態に制御するかを判定する判定用温度である。すなわち、吐出温度が所定温度T1を上回ると、圧縮機本体10の温度が過度に上昇していると判定する。所定温度T1は、例えば、ヒートポンプサイクル50の効率が好適となる吐出温度範囲の上限値に設定することが好ましい。または、所定温度T1は、圧縮機本体10が熱によって損傷を受けない温度範囲に対応する吐出温度範囲の上限値でもよい。ステップS13で、吐出温度が所定温度T1を上回ると判定された場合には、圧縮機本体10の熱の外部への放熱を促進するためにステップS14へと進む。所定温度T1は、特許請求の範囲における第1所定温度に相当する。
【0023】
ステップS14では、スライドドア部21を開状態にする制御を実行する。すなわち、エアコンECU30が駆動部22を制御し、スライドドア部21を開位置へと移動させる。これにより、収容体20の開口部20cが外部に対して開口した状態となり、収容体20の内部と外部との通気が可能となる。したがって、収容体20に収容された圧縮機本体10の熱が、外部へと放熱されやすくなる。これにより、圧縮機本体10の温度が低下し、ひいては吐出温度が低下する。すなわちステップS13、ステップS14の処理によって、圧縮機本体10の温度が過度に上昇することを抑制できる。したがって、ヒートポンプサイクル50の効率を向上することができる。また、圧縮機本体10の耐久性を向上することもできる。ステップS14の処理を終了すると、ステップS10に戻ってフローを繰り返す。
【0024】
一方、ステップS13で否定判定がなされた場合、すなわち吐出温度が所定温度T1を下回ると判定された場合には、ステップS15へと進む。ステップS15では、吐出温度が所定温度T2を上回るか否かを判定する。所定温度T2は、所定温度T1よりも低い温度に設定された温度閾値である。所定温度T2は、例えばヒートポンプサイクル50の効率が好適となる吐出温度範囲の下限値である。所定温度T2は、特許請求の範囲における第2所定温度に相当する。
【0025】
ステップS15で否定判定がなされた場合、すなわち吐出温度が所定温度T2を下回ると判定された場合には、ステップS16へと進み、スライドドア部21を閉状態にする制御を実行する。すなわち、エアコンECU30が駆動部22を制御し、スライドドア部21を閉位置へと移動させる。これにより、収容体20の開口部20cはスライドドア部21によって覆われて外部に対して閉塞された状態となり、収容体20の内部と外部との通気が不可能となる。したがって、圧縮機本体10の熱の外部への放熱が抑制される。これにより、圧縮機本体10の温度が上昇し、ひいては吐出温度が上昇する。すなわち、ステップS15、ステップS16の処理によって、圧縮機本体10の温度が過度に低下することを抑制できる。したがって、ヒートポンプサイクル50の効率を向上することができる。ステップS16の処理を終了すると、ステップS10に戻ってフローを繰り返す。
【0026】
ステップS16でスライドドア部21を閉状態に制御すると、圧縮機本体10は開口部20cが閉塞された収容体20の内部に収容されている状態となる。したがって、圧縮機本体10が発する騒音の外部への伝達は、開状態の場合よりも抑制される。すなわち、ステップS16の処理により、圧縮機本体10の騒音を抑制することも可能となる。
図4のフローチャートにおいて、ステップS16の処理は、スライドドア部21を開状態にする必要がない場合に実行される処理である。すなわち、本フローチャートの処理により、スライドドア部21を開状態にする必要がない場合にスライドドア部21を確実に閉状態にすることで、圧縮機本体10の騒音を抑制することも可能となる。
【0027】
一方、ステップS15で吐出温度が所定温度T2を上回ると判定された場合には、エアコンECU30はステップS15の判定の時点でのスライドドア部21の状態を変えないままステップS10に戻ってフローを繰り返す。すなわち、ステップS15の時点でスライドドア部21が開状態の場合は、開状態のままフローを繰り返す。したがって、次にスライドドア部21が閉状態に切り替え制御されるのは、吐出温度が所定温度T2を下回った場合である。そして吐出温度が所定温度T2を上回っている場合は、スライドドア部21は開状態に制御された状態を保持する。換言すれば、スライドドア部21が開状態である場合には、所定温度T1よりも低い所定温度T2を上回る場合にスライドドア部21を開状態に制御し、下回る場合に閉状態に制御している。
【0028】
同様に、ステップS15の時点でスライドドア部21が閉状態の場合は、閉状態のままフローを繰り返す。したがって、次にスライドドア部21が開状態に切り替え制御されるのは、吐出温度が所定温度T1を上回った場合である。そして吐出温度が所定温度T1を下回っている場合は、スライドドア部21は閉状態に制御された状態を保持する。換言すれば、スライドドア部21が閉状態である場合には、所定温度T2よりも高い所定温度T1を上回る場合にスライドドア部21を開状態に制御し、下回る場合に閉状態に制御している。ステップS13およびステップS15は、特許請求の範囲における判定部に相当する。
【0029】
ステップS10で停車中ではないと判定された場合、すなわち車両が走行中であると判定された場合には、ステップS12へと進む。ステップS12では、ヒートポンプサイクル50が冷房運転を実行しているか否かを判定する。ステップS12で、冷房運転を実行していると判定された場合には、ステップS14へと進み、スライドドア部21を開状態に制御する。ステップS14およびステップS15は、特許請求の範囲における開閉制御部に相当する。
【0030】
ステップS10、ステップS12、ステップS14の一連のフローによって、エアコンECU30は、車両が走行中でかつヒートポンプサイクル50が冷房運転中の場合に、スライドドア部21を開状態に制御できる。車両が走行中の場合は、走行音によって圧縮機本体10からの騒音がかき消されるために圧縮機本体10の騒音を抑制する必要がなく、この点で圧縮機1はスライドドア部21を閉状態にする必要がない。さらに、冷房運転中の場合は冷媒の吐出温度がより低い方がヒートポンプサイクル50の冷房性能が向上するため、圧縮機本体10の温度を上昇させる必要がなく、この点でも圧縮機1はスライドドア部21を閉状態にする必要がない。すなわち、車両が走行中でかつヒートポンプサイクル50が冷房運転中の場合には、圧縮機1はスライドドア部21を閉状態にする必要がない。したがって、ステップS10、ステップS12、ステップS14のフローにより、圧縮機1はスライドドア部21を閉状態にする必要がない場合に確実にスライドドア部21を開状態にすることができる。さらに車両用空調装置100が冷房運転中であるときにスライドドア部21を開状態に制御して圧縮機本体10の放熱を促すことができるので、車両用空調装置100の冷房性能を向上することができる。ステップS12は、特許請求の範囲における冷房判定部に相当する。
【0031】
一方で、ステップS12でヒートポンプサイクル50が冷房運転を実行していない、すなわち暖房運転を実行していると判定された場合には、ステップS13へと進む。暖房運転を実行している場合には、圧縮機本体10が過度に冷却されると暖房性能が低下してしまう。すなわち、車両が走行中であってもヒートポンプサイクル50が暖房運転を実行中の場合は、スライドドア部21を閉状態にする必要が生じる状況がある。したがって、ステップS10、ステップS12、ステップS13の一連のフローによって、車両が走行中でかつヒートポンプサイクル50が暖房運転中の場合に、スライドドア部21を開状態にするか閉状態にするかの判定を確実に実行することができる。
【0032】
以上の制御によって、圧縮機1は、
図5のタイムチャートに示すように冷媒の吐出温度を所定温度T1から所定温度T2の間に保つことができる。ひいては、圧縮機本体の温度を、ヒートポンプサイクル50の運転に適した温度範囲に保つことができる。
【0033】
次に、車両用空調装置100がプレ空調を実施する場合にエアコンECU30が実行する開閉制御について
図6のフローチャートを参照して説明する。
図6のフローチャートの処理は、車両用空調装置100がプレ空調を実施し得る状況で実行される。車両用空調装置100がプレ空調を実施し得る状況とは、例えば車両のイグニッションスイッチまたはスタートスイッチがオフになっている状況、着座センサや人感センサ等で車両に人が乗車していないと判断される状況等である。
【0034】
車両用空調装置100がプレ空調を実行する場合、圧縮機本体10の騒音が問題となる。すなわち、プレ空調を実行する際は、車両が停車している状態であり、さらにエンジン60等の車両用空調装置100以外の車両機器が稼働していない状態である。このため、圧縮機本体10からの騒音が走行音や他の車両機器からの騒音によってかき消されることなく車外に聞こえやすくなる。したがって、エアコンECU30は、圧縮機本体10の騒音を極力抑制するようにスライドドア部21の開閉制御を実行する。
【0035】
エアコンECU30は、まずステップS20でヒートポンプサイクル50がプレ空調を実行中か否かを判定する。ステップS20でプレ空調を実行していると判定された場合には、ステップS21に進む。ステップS21では、ステップS14と同様に、吐出温度が所定温度T1を上回るか否かを判定する。ステップS21で吐出温度が所定温度T1を上回ると判定された場合にはステップS22へと進み、下回ると判定された場合にはステップS24へと進む。ステップS22、ステップS24、ステップS25は、それぞれステップS14、ステップS15、ステップS16と同様の制御であるため、説明は省略する。
【0036】
ステップS20、ステップS21、ステップS24の処理により、車両用空調装置100がプレ空調を実行中で且つ吐出温度が所定温度T2よりも低い場合には確実にスライドドア部21を閉状態に制御することができる。プレ空調は、乗員の乗車前、すなわち車両の駆動源が起動していない場合に実行される。したがって、プレ空調の実行中には圧縮機本体10の騒音が車両の他の作動音によってかき消されることなく車外へと伝達されやすい。ステップS20、ステップS21、ステップS24の処理により、スライドドア部21を開状態にする必要がない場合に確実にスライドドア部21を閉状態に制御し、圧縮機本体10の騒音を抑制することができる。
【0037】
ステップS22でドア部を開状態に制御した後、ステップS23へと進む。ステップS23では、圧縮機本体10の回転数を低下させる制御を実行する。これによって、吐出温度が高温でドア部を開状態に制御しなければならない状態において、圧縮機本体10の回転数を小さくすることにより、圧縮機本体10からの騒音を低減することが可能となる。
【0038】
次に第1実施形態の圧縮機1がもたらす作用効果について説明する。圧縮機1は、ヒートポンプサイクル50を有する車両用空調装置100の圧縮機である。圧縮機1は、ヒートポンプサイクル50を流通する冷媒を圧縮する圧縮機本体10と、開口部20cを有し、圧縮機本体10が収容される収容体20を備える。圧縮機1は、開口部20cが開放された開状態と開口部20cが閉塞された閉状態とを切り替え可能なスライドドア部21と、スライドドア部21を制御可能なエアコンECU30とを備える。エアコンECU30は、吐出温度が所定温度T1を上回るか否かを判定する判定部として、ステップS13およびステップS15を有する。エアコンECU30は、ステップS13にて吐出温度が所定温度T1を上回ると判定された場合にスライドドア部21を開状態に制御する。エアコンECUは、ステップS15で吐出温度が所定温度T2を下回ると判定された場合にスライドドア部21を閉状態に制御する。
【0039】
これによれば、冷媒の吐出温度が所定温度T1よりも高い場合には、収容体20の開口部20cを開放し、低い場合には閉塞することができる。したがって、吐出温度が上昇する状況では、開口部20cを開放して圧縮機本体10の放熱を促すことで、吐出温度の過度な上昇を抑制できる。また、吐出温度が低下する状況では、圧縮機本体10を収容体20に閉塞して放熱を抑制することで、吐出温度の過度な低下を抑制することができる。温度の低下および上昇の両方を抑制可能な圧縮機1を提供することができる。
【0040】
エアコンECU30は、スライドドア部21が閉状態である場合には、スライドドア部21を開状態に切り替え制御するか閉状態に保持するかを、吐出温度が所定温度T1を上回るか否かで判定する。エアコンECU30は、スライドドア部21が開状態である場合には、スライドドア部21を開状態に保持するか閉状態に切り替え制御するかを、吐出温度が所定温度T1よりも低い所定温度T2を上回るか否かによって判定する。これによれば、吐出温度が所定温度T1を下回った直後ではなく、所定温度T1よりもさらに低い温度である所定温度T2を下回った際にスライドドア部21を閉状態に制御することができる。したがって、1つの所定温度を閾値としてスライドドア部21の開閉状態を切り替える場合と比較してスライドドア部21の駆動制御の頻度を減少させることができ、効率的な開閉制御が可能となる。
【0041】
エアコンECU30は、ステップS10で車両が停車しているか否かを判定し、停車していると判定した場合にステップS13へと進み吐出温度が所定温度T1を上回るか否かを判定する。これによれば、車両が停車している状況で、確実にスライドドア部21を開状態に制御するか閉状態に制御するかの判定を実行することができる。すなわち、圧縮機本体10の騒音が外部に聞こえやすい状況で、且つスライドドア部21を開状態にする必要がない場合に、確実にスライドドア部21を閉状態に切り替えて圧縮機本体10の騒音を抑制することができる。
【0042】
エアコンECU30は、ステップS10で車両が停車していない、すなわち車両が走行中であると判定すると、ステップS12で車両用空調装置100が冷房運転をしているか否かを判定する。ステップS12で冷房運転していると判定されると、エアコンECU30は、吐出温度に関わらずスライドドア部21を開状態に切り替え制御する。これによれば、車両が走行中で且つ車両用空調装置100が冷房運転中というスライドドア部21を閉状態にする必要のない状況において、確実にスライドドア部21を開状態にして圧縮機本体10を冷却することができる。
【0043】
開閉部は、収容体20の外面に沿って移動するスライドドア部21である。これによれば、収容体20の周囲の部材との干渉を抑制できる開閉部を提供することができる。すなわち、より省スペースな圧縮機1を提供することができる。
【0044】
制御装置は、車両用空調装置100を制御するエアコンECU30である。これによれば、スライドドア部21の開閉制御をエアコンECU30によって実行することができる。すなわち、エアコンECU30が車両用空調装置100を制御するために取得する情報を利用して、エアコンECU30で開閉制御を実行することができる。したがって、新しいECUおよびセンサを設ける必要がなく、コストを抑制することができる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態における圧縮機1の変形例について説明する。
図7において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0046】
第2実施形態の圧縮機1は、第1実施形態の圧縮機1に対して開閉制御のフローが相違する。すなわち、第2実施形態のエアコンECU30は、
図7のフローチャートに示すように、ステップS13で吐出温度が所定温度T1を下回っていると判定されると、吐出温度が所定温度T2を上回るか否かを判定することなくステップS16へと進み、スライドドア部21を閉状態に制御する。これにより、第4実施形態の圧縮機1は、圧縮機本体10の温度を所定温度T1に近付くようにスライドドア部21を制御することができる。このとき所定温度T1は、例えばヒートポンプサイクル50の効率が好適となる吐出温度範囲の上限値と下限値との中間の値である。または、所定温度T1は、第1実施形態と同様にヒートポンプサイクル50の効率が好適となる吐出温度範囲の上限値でもよく、圧縮機本体10が熱によって損傷を受けない温度範囲に対応する吐出温度範囲の上限値でもよい。
【0047】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態における圧縮機1の変形例について説明する。
図8および
図9において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0048】
第3実施形態の圧縮機1は、車両のフレーム70に取り付けられる。圧縮機本体10は、制振用のゴム部材を介してフレーム70に直接取り付けられている。圧縮機1は、収容体320を有する。収容体320は、圧縮機本体10を覆うようにしてフレーム70に取り付けられている。収容体320は、圧縮機本体10と被取付部であるフレーム70とを隔てる取付壁部を有さない。
図8および
図9に示すように、圧縮機本体10と被取付部であるフレーム70とは、収容体320によって隔てられていない。すなわち、収容体320は、取付壁部を省略した形状を有している。換言すれば、フレーム70が取付壁部の役割を有している。したがって、収容体320は、取付壁部を有する場合よりも寸法を小さく設定できる。収容体20は、円筒形状である圧縮機本体10に沿って湾曲する外形を有する。第3実施形態の圧縮機1は、例えばエンジン60を有さない電気自動車等に適用することができる。
【0049】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態における圧縮機1の変形例について説明する。
図10において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0050】
第4実施形態の圧縮機1は、収容体420を有する。収容体420は、スライドドア部21の代わりに片持ちドア部421を開閉部として有する。片持ちドア部421は、端部が収容体420に対して連結され、この端部を軸として収容体420に対して回動可能に構成された板状の開閉部材である。片持ちドア部421は端部を軸として収容体420に対して回動することで、開口部20cを閉塞する閉状態と、開口部20cを開口する開状態とを切り替える。以上のような構成であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0051】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0052】
上述の実施形態において、エアコンECU30は冷媒の吐出温度を温度センサによって検出することで、圧縮機本体10の温度を間接的に検出するとした。これに代えて、圧縮機本体10の温度を判定用温度として直接的に検出してもよい。例えば、圧縮機本体10の外壁面に温度センサを取り付け、この外壁面の温度を検出する構成であってもよい。また、圧縮機本体10の温度に関連する関連温度は吐出温度に限定されない。
【0053】
上述の実施形態において、開閉部の開閉制御はエアコンECU30によって実行されるとした。これに代えて、エアコンECU30とは別体の制御装置によって実行されてもよい。例えば、駆動部22のモータに制御装置が一体的に設けられ、この制御装置によって開閉部の開閉制御が実行されてもよい。
【0054】
上述の実施形態において、エアコンECU30は、開閉部の開閉状態を開状態および閉状態の2つの段階で切り替えるとした。これに代えて、エアコンECU30は3つ以上の段階で開閉部の開閉状態を切り替えてもよい。すなわち、開閉部の開度を段階的に切り替えてもよい。
【0055】
上述の実施形態において、収容体は開口部を1つ有するとした。これに代えて、収容体が開口部を複数有する構成であってもよい。例えば、収容体は、複数の孔部を開口部として有していてもよい。