特許第6805852号(P6805852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6805852ガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805852
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/16 20060101AFI20201214BHJP
   G01N 25/22 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G01N27/16 B
   G01N25/22
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-15940(P2017-15940)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-124153(P2018-124153A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 裕
(72)【発明者】
【氏名】海田 佳生
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−005865(JP,A)
【文献】 特開平05−010901(JP,A)
【文献】 特開昭57−190259(JP,A)
【文献】 特開2012−247239(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0297860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00 − G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検知部と触媒部とを有するガスセンサ素子であって、
前記触媒部が、触媒材料が担持されていない担体材料からなる担体層と、前記担体層上に形成され、前記触媒材料が担持された担体材料からなる触媒層と、を有し、
前記担体層は、バインダを有する前記担体層の塗布体を熱処理して、前記バインダの一部が前記担体層の前記塗布体内部に残存するように形成され、前記触媒層は、熱処理後の前記担体層の前記塗布体上に形成された前記触媒層の塗布体を熱処理して、前記担体層の前記塗布体に残存するバインダを除去するとともに、前記触媒層の前記塗布体に含まれるバインダを除去することにより形成され
前記担体層の前記塗布体を熱処理する温度を第1熱処理温度、前記触媒層の前記塗布体を熱処理する温度を第2熱処理温度としたときに、前記第1熱処理温度は、前記第2熱処理温度よりも低いことを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項2】
前記第1熱処理温度が100℃以上200℃以下であり、前記第2熱処理温度が300℃以上500℃以下であることを特徴とする請求項に記載のガスセンサ素子。
【請求項3】
前記触媒層は、前記担体層以外の前記ガスセンサ素子に接触していないことを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサ素子。
【請求項4】
前記触媒部を平面視したときに、前記担体層は、前記触媒層と接触している接触部分を取り囲む周縁部分を有していることを特徴とする請求項に記載のガスセンサ素子。
【請求項5】
ガス検知部と触媒部とを有するガスセンサ素子を製造する方法であって、
前記触媒部が、触媒材料が担持されていない担体材料からなる担体層と、前記担体層上に形成され、前記触媒材料が担持された担体材料からなる触媒層とを有しており、
バインダを有する前記担体層用ペーストを用いて前記担体層の塗布体を形成して熱処理する第1熱処理工程と、
バインダを有する前記触媒層用ペーストを用いて前記触媒層の塗布体を前記第1熱処理工程後の前記担体層の前記塗布体上に形成して熱処理する第2熱処理工程と、を有し、
前記第1熱処理工程では、前記担体層の前記塗布体内部に前記バインダの一部を残存させ、前記第2熱処理工程では、前記担体層の前記塗布体に残存するバインダを除去するとともに、前記触媒層の前記塗布体に含まれるバインダを除去し、
前記第1熱処理工程における保持温度を第1熱処理温度、前記第2熱処理工程における保持温度を第2熱処理温度としたときに、前記第1熱処理温度は、前記第2熱処理温度よりも低いことを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1熱処理温度が100℃以上200℃以下であり、前記第2熱処理温度が300℃以上500℃以下であることを特徴とする請求項に記載のガスセンサ素子の製造方法。
【請求項7】
前記第2熱処理工程において、前記触媒層の前記塗布体が、前記担体層の前記塗布体以外のガスセンサ素子に接触しないように形成されることを特徴とする請求項5または6に記載のガスセンサ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法に関する。特に、触媒を有するガスセンサ素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、雰囲気中に存在するガスを検知し、その種類、濃度等の情報を電気信号に変換して出力する装置である。このようなガスセンサは、家電機器、産業用機器、環境モニタリング機器等に搭載され、人間、環境等に対して影響を及ぼすガスの漏洩を検知するために用いられている。
【0003】
ガスセンサとしては、検知するガスの種類、濃度範囲、精度、動作原理、構成材料等の違いにより種々のガスセンサが知られている。検知するガスが可燃性ガスである場合、接触燃焼式、半導体式、熱伝導式等のガスセンサが知られている。
【0004】
接触燃焼式または半導体式のガスセンサの場合、たとえば、基板または基板上に形成された薄膜上に触媒が形成される。しかしながら、触媒と触媒が形成された面との間の密着性は悪く、剥離しやすくなるという問題があった。触媒が剥離してしまうと、ガスの検知感度が極めて低下する、または、検知が不可能となってしまい、センサとしての役割を果たすことができない。
【0005】
たとえば、特許文献1には、半導体式のガスセンサとして、基板上に形成されたシリコン酸化膜上に、ガス検知膜を介して、検知対象ガスの選択性を付与する触媒としての選択燃焼膜を形成した場合に、シリコン酸化膜と選択燃焼膜との間の密着性が悪化することが記載されている。そこで、特許文献1では、選択燃焼膜にシリカを含有させることにより、シリコン酸化膜と選択燃焼膜との間の密着性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−5865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、触媒に、担体材料および触媒材料以外の材料を含有させると、触媒反応には不要な材料が触媒に含まれることになり、ガス検知特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、触媒反応に不要な材料を触媒に含有させることなく、触媒と当該触媒が形成される面との密着性を向上できるガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のガスセンサ素子は、
[1]ガス検知部と触媒部とを有するガスセンサ素子であって、
触媒部が、触媒材料が担持されていない担体材料からなる担体層と、担体層上に形成され、触媒材料が担持された担体材料からなる触媒層と、を有し、
担体層は、バインダを有する担体層の塗布体を熱処理して、バインダの一部が担体層の塗布体内部に残存するように形成され、触媒層は、熱処理後の担体層の塗布体上に形成された触媒層の塗布体を熱処理することにより形成されることを特徴とするガスセンサ素子である。
【0010】
[2]担体層の塗布体を熱処理する温度を第1熱処理温度、触媒層の塗布体を熱処理する温度を第2熱処理温度としたときに、第1熱処理温度は、第2熱処理温度よりも低いことを特徴とする[1]に記載のガスセンサ素子である。
【0011】
[3]第1熱処理温度が100℃以上200℃以下であり、第2熱処理温度が300℃以上500℃以下であることを特徴とする[2]に記載のガスセンサ素子である。
【0012】
[4]触媒層は、担体層以外のガスセンサ素子に接触していないことを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載のガスセンサ素子である。
【0013】
[5]触媒部を平面視したときに、担体層は、触媒層と接触している接触部分を取り囲む周縁部分を有していることを特徴とする[4]に記載のガスセンサ素子である。
【0014】
また、本発明のガスセンサ素子の製造方法は、
[6]ガス検知部と触媒部とを有するガスセンサ素子を製造する方法であって、
触媒部が、触媒材料が担持されていない担体材料からなる担体層と、担体層上に形成され、触媒材料が担持された担体材料からなる触媒層とを有しており、
バインダを有する担体層用ペーストを用いて担体層の塗布体を形成して熱処理する第1熱処理工程と、
バインダを有する触媒層用ペーストを用いての触媒層の塗布体を第1熱処理工程後の担体層の塗布体上に形成して熱処理する第2熱処理工程と、を有し、
第1熱処理工程では、担体層の塗布体内部にバインダの一部を残存させることを特徴とするガスセンサ素子の製造方法である。
【0015】
[7]第1熱処理工程における保持温度を第1熱処理温度、第2熱処理工程における保持温度を第2熱処理温度としたときに、第1熱処理温度は、第2熱処理温度よりも低いことを特徴とする[6]に記載のガスセンサ素子の製造方法である。
【0016】
[8]第1熱処理温度が100℃以上200℃以下であり、第2熱処理温度が300℃以上500℃以下であることを特徴とする[7]に記載のガスセンサ素子の製造方法である。
【0017】
[9]第2熱処理工程において、触媒層の塗布体が、担体層の塗布体以外のガスセンサ素子に接触しないように形成されることを特徴とする[6]から[8]のいずれかに記載のガスセンサ素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、触媒反応に不要な材料を触媒に含有させることなく、触媒と当該触媒が形成される面との密着性を向上できるガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るガスセンサ素子の断面模式図である。
図2図2(a)は、本発明の一実施形態に係るガスセンサ素子において、触媒部の構成を説明するための断面概略模式図であり、図2(b)は、本発明の一実施形態に係るガスセンサ素子において、触媒部の構成を説明するための平面概略模式図である。
図3図3(a)は、触媒部において、触媒層がサーミスタ部の表面に接触せず、担体層と触媒層とが同程度の大きさを有していることを説明するための断面概略模式図であり、図3(b)は、触媒部において、触媒層がサーミスタ部の表面に接触していることを説明するための断面概略模式図である。
図4図4(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るガスセンサ素子の製造方法において、触媒部を形成する方法を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.ガスセンサ素子
1.1 ガスセンサ素子の全体構成
1.2 触媒部
1.3 ガス検知部
1.4 ヒータ部
1.5 基板部
1.6 ガスセンサ素子の動作原理
2.ガスセンサ素子の製造方法
3.本実施形態における効果
4.変形例
【0021】
(1.ガスセンサ素子)
本実施形態に係るガスセンサ素子は、可燃性ガスを検知するための接触燃焼式ガスセンサ素子である。このガスセンサ素子を外部回路に接続してガスセンサとして用いてもよいし、測定雰囲気と連通する公知のパッケージ内に収容して用いてもよい。また、このガスセンサ素子のみでガスを検知してもよいし、温度補償用のセンサ素子、別種のガスを検知するための他のガスセンサ素子等とともにガスを検知してもよい。
【0022】
(1.1 ガスセンサ素子の全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係るガスセンサ素子1は、基板部40、ヒータ部30、ガス検知部20および触媒部10がこの順序で積層された構成を有する積層構造体である。触媒部10は、担体層11および触媒層12から構成され、ガス検知部20は、ガス検知材21、ガス検知電極22およびガス検知材保護膜23から構成される。また、ヒータ部30は、所定の抵抗値を有する配線からなるヒータ31およびヒータ保護膜32から構成される。基板部40において、支持基板41の一方の主面に絶縁膜42が形成されるとともに、支持基板41には空洞部43が形成されている。各構成要素についての詳細な説明は後述する。
【0023】
また、ガスセンサ素子1には、外部回路と、素子内部に埋設されたガス検知電極22またはヒータ31とを電気的に接続できるよう素子表面に引き出された引出電極50が形成されている。なお、図1には、ガス検知部内部に形成されたガス検知電極22と電気的に接続され、素子表面に引き出されている引出電極50のみが図示されているが、別の断面においては、ヒータ部内部に形成されたヒータ31と電気的に接続され、素子表面に引き出されている別の引出電極が形成されている。
【0024】
(1.2 触媒部)
図2(a)および(b)に示すように、触媒部10はガス検知部20の表面(本実施形態では、ガス検知材保護膜23)上に形成されており、ガス検知部20の表面と接触している担体層11と、担体層11上に形成され、ガス検知部20の表面と接触していない触媒層12との2層構造を有している。
【0025】
担体層11は、担体材料の複数の粒子が集合し一体化されて形成される多孔質状材料であることが好ましい。担体材料は、担体として用いられる材料であれば特に制限されない。具体的には、酸化アルミニウム(γアルミナ等)、酸化チタン、酸化シリコン、酸化セリウム等が例示され、本実施形態では、担体材料が酸化アルミニウムであることが好ましい。
【0026】
担体層11の厚みは特に制限されず、本実施形態では、2〜30μm程度であればよい。
【0027】
また、触媒層12は、担体材料に触媒材料が担持されたものから構成されていれば特に制限されない。触媒層12を構成する担体材料としては、担体層11と同様に、担体として用いられる材料であれば特に制限されない。具体的には、酸化アルミニウム(γアルミナ等)、酸化チタン、酸化シリコン、酸化セリウム等が例示され、本実施形態では、担体材料が酸化アルミニウムであることが好ましい。
【0028】
触媒層12において、担体材料に担持されている触媒材料としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)等の貴金属、または、希土類元素酸化物、ビスマス酸化物等の酸化物が例示される。また、これらを組み合わせて、複数の触媒材料を担体材料に担持させてもよい。本実施形態では、ガスセンサ素子の性能を向上させるために、貴金属と酸化物とを含む触媒材料であることが好ましい。
【0029】
触媒層12の厚みは特に制限されず、本実施形態では、2〜30μm程度であればよい。
【0030】
本実施形態では、特に、担体層11を構成する担体材料と触媒層12を構成する担体材料とは同じ材料であることが好ましい。当該材料は酸化アルミニウムであることが好ましい。また、担体層11を構成する担体材料粒子の平均粒子径と、触媒層12を構成する担体材料粒子の平均粒子径とは同程度であることが好ましい。
【0031】
触媒部10を上記のように担体層11と触媒層12との2層構造とすることにより、触媒反応に不要な材料を含有させることなく、触媒部10を形成できる。さらに、触媒部10が、以下のような工程を経て形成されることにより、触媒部と触媒部が形成される面との間の密着性を劇的に高めることができる。
【0032】
まず、担体層を形成するためのペースト(担体層用ペースト)を塗布して得られる担体層の塗布体を熱処理する際に、担体層の塗布体に含まれるバインダの一部が残存するように熱処理を調整する。そして、熱処理後の担体層の塗布体上に、触媒層を形成するためのペースト(触媒層用ペースト)を塗布して得られる触媒層の塗布体を、担体層の塗布体とともに熱処理することにより、担体層の塗布体に残存するバインダ等および触媒層の塗布体に含まれるバインダ等を除去して、担体層と触媒層とからなる触媒部を形成する。
【0033】
触媒部を上記のように形成することにより、密着性が向上する理由は明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。ペーストを塗布して形成される塗布体の熱処理は、ペーストに含まれるバインダ等を除去し、塗布された面に塗布体を固着させるために行われる処理である。従来は、この熱処理では、バインダ等をできる限り除去することが好ましいと考えられていた。
【0034】
しかしながら、担体層11および触媒層12を形成する際の熱処理において、バインダ等をできる限り除去して触媒部10を形成した場合、担体層11とガス検知部20との界面、担体層11と触媒層12との界面、または、その両方における接合が弱く、密着性が低下すると考えられる。
【0035】
また、触媒層用ペーストを、熱処理後の担体層の塗布体上に塗布すると、担体層の塗布体の熱処理時においてバインダ等が除去されて形成された空隙に触媒層用ペーストが入り込んでしまう可能性がある。触媒層用ペーストには触媒材料が担持された担体材料が含まれているので、熱処理後の担体層の塗布体の空隙に当該ペーストが入り込んでしまうと、触媒層に含まれるべき触媒材料量が変化してしまい、想定のガス検知特性が得られない可能性がある。
【0036】
これに対し、上述したように熱処理を調整することにより、担体層11とガス検知部20との界面、担体層11と触媒層12との界面、または、その両方における接合状態が変化して、その結果、良好な密着性が得られると考えられる。また、担体層の塗布体の熱処理後にも、一部のバインダ等が残存しているので、触媒層用ペーストを担体層の塗布体上に塗布しても、担体層の塗布体に形成されている空隙が少なく、かつ残存しているバインダがいわば壁となるので、触媒層用ペーストはほとんど担体層の塗布体に入り込まない。その結果、触媒層に含まれるべき触媒材料量はほとんど変化しないので、想定のガス検知特性を得ることができる。
【0037】
また、触媒部と触媒部が形成される面との間の密着性には別の要因も考えられる。図3(b)に示すように、触媒層の塗布体をガス検知部20に接触した状態で熱処理して触媒層12を形成すると、触媒層12とガス検知部20との接触が一部分でしか生じていない場合であっても、それらの間の密着性が極めて悪化する傾向にある。
【0038】
したがって、図2(a)および図3(a)に示すように、触媒部10において、触媒層12がガス検知部20と接触しない構成が好ましい。特に、密着性の観点および触媒部10の形成の容易さの観点から、図2(a)および(b)に示すように、担体層11を平面視した場合において、担体層11には、触媒層12との接触部分111を取り囲む周縁部分112が形成されていることがより好ましい。なお、図2(b)では、担体層11と触媒層12とは平面視矩形状に形成されるが、担体層11および触媒層12の平面視形状は特に制限されず、円形状等であってもよい。
【0039】
(1.3 ガス検知部)
図1に示すように、ガス検知部20は、ガス検知材21と、ガス検知電極22と、ガス検知材保護膜23とから構成されている。本実施形態では、ガス検知材21はサーミスタである。サーミスタ21は、負の抵抗温度係数を持ち、触媒部10における可燃性ガスの燃焼による温度変化に起因して抵抗値が変化することによりガス検知を行う。サーミスタ21を構成する材料としては、サーミスタとして使用可能な材料であれば特に制限されない。本実施形態では、サーミスタ21の材料としては、複合金属酸化物、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ゲルマニウム等が例示される。
【0040】
サーミスタ21は薄膜状に形成されており、その厚みは目標とするサーミスタ抵抗値に応じて調整すればよい。たとえば、室温での抵抗値(R25)を2MΩ程度に設定する場合、素子の電極間の距離に応じて、厚みを0.2〜1μm程度の範囲内に設定することができる。
【0041】
本実施形態では、ガス検知に伴うサーミスタ21の抵抗値変化を検出し電気信号として取り出すために、所定の抵抗値を有する配線からなるサーミスタ電極22が形成されている。サーミスタ電極22はサーミスタ21に被覆され、サーミスタ21の抵抗値変化を精度よく検出できるように配線が配置される。本実施形態では、ガスが燃焼する触媒部10の形成領域に対応する領域において、サーミスタ電極22の配線が一対の対向電極、もしくは、一対の櫛歯電極であることが好ましい。
【0042】
サーミスタ電極22を構成する材料は、導電性の材料であって、かつサーミスタ21の成膜工程および熱処理工程等の高温プロセスに耐えうる比較的高融点の材料であることが好ましい。本実施形態では、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、または、これらを2つ以上含む合金が例示される。
【0043】
サーミスタ21を複合金属酸化物で構成する場合、サーミスタ21を高温に保持すると、複合金属酸化物から酸素が奪われ、複合金属酸化物の還元が生じて劣化することが知られている。そこで、このような還元劣化によるサーミスタ特性への悪影響を防ぐために、サーミスタ21を耐還元性材料としてのサーミスタ保護膜23により被覆することが好ましい。サーミスタ保護膜23を構成する材料は、高温で安定な材料であることが好ましい。本実施形態では、後述するヒータ保護膜32および絶縁膜42と同じ材料で構成するために、当該材料として、酸化シリコン等が例示される。
【0044】
(1.4 ヒータ部)
図1に示すように、ヒータ部30は、通電により発熱する抵抗体であるヒータ31とヒータ保護膜32とから構成される。ヒータ31として、サーミスタ21を効率よくかつ確実に加熱できるように所定の抵抗値を有する配線が配置される。本実施形態では、触媒部10およびサーミスタ部20の形成領域に対応する領域において、ヒータ31の配線が複数回折り返され所定の間隔で平行に配置されるパターン(ミアンダパターン)であることが好ましい。
【0045】
ヒータ31を構成する材料は、サーミスタ電極22と同様に、導電性の材料であって、かつサーミスタ21の成膜工程および熱処理工程等の高温プロセスに耐えうる比較的高融点の材料であることが好ましい。本実施形態では、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、または、これらを2つ以上含む合金が例示される。イオンミリング等の高精度なドライエッチングが可能であり、耐腐食性が高いという理由から、特に白金が好ましい。ヒータ31を構成する材料として、白金を用いる場合、後述する絶縁膜42との密着性を向上させるために白金と絶縁膜42との間にチタン(Ti)等の密着層を形成することが好ましい。
【0046】
ヒータ保護膜32は、ヒータ31を被覆するように形成されている。ヒータ保護膜32は、ヒータ31と接触して形成されている部分以外は、絶縁膜42上に積層されて形成されているので、ヒータ保護膜32を構成する材料は、絶縁膜42と同じ材料であることが好ましい。異種材料を積層した場合に比べて、同じ材料を積層する場合、材料特性が同じであるため、積層界面の密着性が強固であり十分な機械的強度が得られるからである。
【0047】
本実施形態に係るガスセンサ素子の作動時には、ヒータ保護膜32と絶縁膜42との間に形成されているヒータ31は数十度から数百度にまで上昇した後、常温へ下がるという熱ストレスを繰り返し受ける。そのため、絶縁膜42の材料と、ヒータ保護膜32の材料とが異なる場合、継続的に受ける熱ストレスにより、絶縁膜42とヒータ保護膜32との層間が剥離したり、クラックが生じたりする場合がある。
【0048】
ヒータ保護膜32の厚みは、ヒータ31を確実に覆うことができ、かつ層間の絶縁が十分確保できる厚みであれば、特に制限されない。本実施形態では、厚みは0.1〜3.0μm程度である。
【0049】
(1.5 基板部)
図1に示すように、基板部40は、支持基板41と絶縁膜42と空洞部43とから構成されている。支持基板41は、その上に形成されるヒータ部30、サーミスタ部20、触媒部10等を支持できる程度の機械的強度を有し、かつエッチング等の微細加工に適した材料で構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、支持基板41として、シリコン単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミック基板、石英基板、ガラス基板等が例示される。
【0050】
支持基板41の主面には絶縁膜42が形成される。絶縁膜42を構成する材料としては、支持基板41とヒータ31との絶縁性が十分に確保できる材料であれば特に制限されず、酸化シリコン、窒化シリコン等が例示される。本実施形態では、絶縁膜42の上には、上述したように、ヒータ部30が形成されるので、絶縁膜42の材料は酸化シリコンであることが好ましい。
【0051】
支持基板41には、ヒータ31を高温に保持した時に、発生する熱が支持基板41へ伝導するのを抑制するために、ヒータ31の形成領域に対応する支持基板41の領域を除去して形成された空洞部43が形成されている。空洞部43により支持基板41が除去され支持基板41が薄肉化した部分はメンブレンと呼ばれる。メンブレンでは支持基板41を除去した分だけ熱容量が小さくなるため、非常に少ない消費電力でヒータ31を加熱して高温にすることができる。また、メンブレンから支持基板41への熱の伝導経路は、厚みが1μm程度の薄膜部分のみである断熱構造であるため、支持基板41への熱伝導が小さく、効率よくヒータ31を高温にすることができる。
【0052】
絶縁膜42の厚みは、支持基板41とヒータ31との絶縁性が十分に確保され、かつ空洞部43を形成する際のエッチング停止層として機能する程度の厚みであれば特に制限されない。本実施形態では、厚みは0.1〜1.0μm程度である。
【0053】
(1.6 ガスセンサ素子の動作原理)
ガスセンサ素子1において、ヒータ31およびサーミスタ電極22は図示しない外部回路に接続される。ガスセンサ素子1を作動させると、ヒータ31に所定の電圧が印加される。また、サーミスタ電極22には固定抵抗が直列に接続されており、バイアス電圧が印加される。サーミスタ21およびその上に位置する触媒部10は、ヒータ31に印加される電圧に応じて、所定の温度に加熱される。
【0054】
この状態において、ガスセンサ素子1が配置された空間に、検知対象である一酸化炭素などの可燃性ガスが存在すると、その存在割合に応じて、触媒部10上で可燃性ガスと酸素等が結合し燃焼する。この時、可燃性ガスの燃焼により触媒部10において生じた燃焼熱はサーミスタ21を加熱する。この燃焼熱による温度変化に起因するサーミスタ21の抵抗値の変化がサーミスタ電極22により検出され、電気信号として外部回路に出力される。その結果、可燃性ガスの濃度を検知することができる。
【0055】
(2.ガスセンサ素子の製造方法)
次に、図1に示すガスセンサ素子の製造方法の一例について以下に説明する。
【0056】
まず、支持基板を準備する。準備した支持基板の一方の主面に絶縁膜を形成する。絶縁膜を形成する方法としては、熱酸化法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の成膜法を用いればよい。
【0057】
続いて、形成した絶縁膜上にヒータ部を形成する。まず、公知の成膜法により、ヒータを構成する導電性材料の薄膜を形成する。ヒータが、複数の導電性材料を積層して構成される場合には、複数の薄膜を形成して積層すればよい。次に、触媒部の形成領域に対応する領域において、ヒータの配線が複数回折り返され所定の間隔で平行に配置されるパターン(ミアンダパターン)となるように薄膜をエッチングする。
【0058】
ヒータの配線パターンを形成した後、当該ヒータの配線パターンが少なくとも覆われるように、絶縁膜の形成と同様にして、ヒータを保護するヒータ保護膜を公知の成膜法により形成する。これにより、ヒータ部が形成される。なお、本実施形態では、ヒータ保護膜の材料は、絶縁膜の材料と同じ材料である。
【0059】
続いて、形成したヒータ部上にガス検知部を形成する。本実施形態では、上述したようにガス検知部はサーミスタ部である。まず、ヒータ部上、すなわち、ヒータ保護膜上に、公知の成膜法により、サーミスタ電極を構成する導電性材料の薄膜を形成する。次に、ヒータの配線パターンの形成と同様にして、触媒部の形成領域に対応する領域において、サーミスタ電極の配線が一対の対向電極、もしくは、一対の櫛歯電極となるように薄膜をエッチングする。サーミスタ電極の配線パターンを形成した後、サーミスタ電極の配線パターンが少なくとも覆われるように、ガス検知材としてのサーミスタを形成する。
【0060】
サーミスタは、公知の成膜法を用いて形成すればよい。たとえば、サーミスタが上述した複合酸化物で構成される場合には、当該複合酸化物の組成となるように、スパッタリング法により成膜する。その後、所定の温度および保持時間で熱処理を行った後、所定の形状となるようにエッチングする。
【0061】
続いて、サーミスタ電極およびサーミスタが覆われるように、サーミスタを保護するサーミスタ保護膜を形成する。絶縁膜の形成と同様にして、サーミスタ保護膜を公知の成膜法により形成する。これにより、サーミスタ部が形成される。なお、本実施形態では、サーミスタ保護膜の材料は、絶縁膜の材料と同じ材料である。
【0062】
以上の工程を経て、支持基板上に、絶縁膜、ヒータ部およびサーミスタ部が、この順序で積層された積層構造体が得られる。この積層構造体に対し、引出電極をたとえばリフトオフ法により形成する。また、支持基板の主面のうち、絶縁膜が形成されていない主面において所定の領域にエッチングマスクを施し、他方の主面に形成された絶縁膜が露出するまで支持基板をエッチングし、ヒータの形成領域に対応する領域に空洞部を形成する。
【0063】
本実施形態では、上記の積層構造体の表面、すなわち、サーミスタ部のサーミスタ保護膜上に触媒部を形成して、ガスセンサ素子を得る。具体的には、ペーストを用いて担体層および触媒層となる塗布体を形成し、これを所定の温度で熱処理することにより、担体層および触媒層を形成する。以下、図4(a)〜(c)を用いて詳細に説明する。
【0064】
まず、担体層11を構成する材料を、溶剤、バインダおよび添加剤と混合して担体層用ペーストを得る。担体層を構成する材料としては、触媒材料が担持されていない担体材料を用いる。本実施形態では、粉末状の担体材料(担体材料粉末)であることが好ましい。担体材料粉末の平均粒子径は、特に制限されないが0.1〜5μmであることが好ましい。
【0065】
溶剤は、バインダ等を溶解できれば特に制限されず、公知の溶剤を用いることができる。バインダも公知のバインダを用いればよい。添加剤としては、たとえば、分散剤等が例示される。
【0066】
また、触媒層12を構成する材料を、溶剤、バインダおよび添加剤と混合して触媒層用ペーストを得る。触媒層12を構成する材料としては、担体材料に触媒材料を担持させたものを用いる。本実施形態では、粉末状の担体材料(担体材料粉末)であることが好ましい。担体材料粉末の平均粒子径は、特に制限されないが0.1〜5μmであることが好ましい。また、触媒材料を担体材料に担持させる方法は特に制限されず、公知の方法を用いればよい。
【0067】
担体層用ペーストと同様に、溶剤は、バインダ等を溶解できれば特に制限されず、公知の溶剤を用いることができる。バインダも公知のバインダを用いればよい。添加剤としては、たとえば、分散剤等が例示される。
【0068】
担体層を構成する担体材料粉末と、触媒層を構成する担体材料粉末とは、その材質、平均粒子径等が異なっていてもよいが、本実施形態では、その材質は同じであることが好ましい。さらに、担体層を構成する担体材料粉末の平均粒子径と、触媒層を構成する担体材料粉末の平均粒子径とは同程度であることが好ましい。
【0069】
図4(a)に示すように、調製した担体層用ペーストをサーミスタ保護膜23上に塗布する。担体層用ペーストは、ヒータがミアンダパターン状に配線されている領域と対応する領域に塗布され、所定の形状を有する塗布体11aが形成される。担体層用ペーストを塗布する方法は特に制限されず、公知の方法、たとえば、スクリーン印刷法、ディスペンサによる吐出等が例示される。
【0070】
担体層用ペーストにより形成される担体層の塗布体11aは、溶剤、バインダ等を含むグリーン体である。この担体層の塗布体11aに対して、バインダ等の一部が塗布体11a内に残存するように熱処理を行う(第1熱処理工程)。
【0071】
次に、図4(b)に示すように、熱処理後の担体層の塗布体11a上に、調製した触媒層用ペーストを塗布して、触媒層の塗布体12aを形成する。触媒層用ペーストを塗布する方法は、担体層用ペーストを塗布する方法と同様にすればよい。
【0072】
本実施形態では、ディスペンサの吐出量の調整等により、触媒層用ペーストがサーミスタ部の表面に接触しないように塗布することが好ましい。図3(b)に示すように、触媒層の塗布体12aがサーミスタ部の表面に接触した状態で熱処理を行って触媒部を形成すると、触媒層とサーミスタ保護膜との間の密着性が非常に悪く、触媒部が剥離しやすくなってしまうからである。そこで、触媒層がサーミスタ保護膜と接触しないように触媒部を形成することにより、触媒部とサーミスタ保護膜との間の密着性を高めることができる。特に、図2(a)および(b)に示すように、担体層11が周縁部分111を有するように触媒層用ペーストを塗布することが好ましい。
【0073】
形成された触媒層の塗布体12aに対し、熱処理を行う(第2熱処理工程)。第2熱処理工程は、担体層の塗布体11aに残存するバインダ等を除去するとともに、触媒層の塗布体12aに含まれるバインダ等を除去するために行われる。第2熱処理工程後に、図4(c)に示すように、サーミスタ保護膜23上には、担体層11および触媒層12からなる触媒部10が形成され、ガスセンサ素子1が得られる。
【0074】
第1熱処理では、担体層の塗布体に含まれるバインダ等の一部を塗布体に残存させているのに対し、第2熱処理では、担体層の塗布体に残存しているバインダ等および触媒層の塗布体に含まれるバインダ等をほぼ除去している。したがって、第1熱処理における保持温度(第1熱処理温度)は、第2熱処理における保持温度(第2熱処理温度)よりも低くしてあり、たとえば、担体層の塗布体に含まれるバインダの熱分解温度近傍としてもよい。
【0075】
なお、本実施形態では、第1熱処理温度は100℃以上200℃以下であることが好ましい。第2熱処理温度は300℃以上500℃以下であることが好ましい。
【0076】
以上の工程を経ることにより、触媒部10に触媒反応には不要な材料を含有させることなく、触媒部10とサーミスタ部の表面との密着性が良好なガスセンサ素子を得ることができる。
【0077】
このようにして得られるガスセンサ素子は、ガスセンサとして外部回路に接続して用いてもよいし、単独、または、温度補償用のセンサ素子、別種のガスを検知するガスセンサ素子とともに、公知のパッケージ内に収容してガスセンサとして用いてもよい。
【0078】
(3.本実施形態における効果)
本実施形態では、サーミスタ部の上に形成される触媒部を複数の層から構成し、サーミスタ部と接触する層を、触媒材料が担持されていない担体材料からなる担体層とし、その上に、触媒材料が担持されている担体材料からなる触媒層を形成することにより、触媒部には、触媒反応に不要な材料が含まれることはない。
【0079】
また、担体層の塗布体をサーミスタ部の上に形成して、これを熱処理する際の保持温度(第1熱処理温度)を、従来の触媒部を形成する際の熱処理温度よりも低くして、担体層の塗布体にバインダ等の一部を残存させる。その後、バインダ等の一部が残存している担体層の塗布体上に、触媒層の塗布体を形成して、双方の塗布体を第1熱処理温度よりも高い温度(第2熱処理温度)で熱処理して触媒部を形成する。これにより、触媒部とサーミスタ部との密着性を向上させることができる。
【0080】
さらに、平面視した担体層において、触媒層が担体層に接触している部分を取り囲む周縁部分を形成することにより、触媒層がサーミスタ部に接触することを確実に防ぐことができ、その結果、触媒部とサーミスタ部との密着性を向上させることができる。
【0081】
(4.変形例)
上述の実施形態では、接触燃焼式のガスセンサ素子について説明したが、触媒部が形成されるガスセンサ素子であれば、接触燃焼式以外のガスセンサ素子であってもよい。たとえば、半導体式のガスセンサ素子であってもよい。
【0082】
また、上述した実施形態では、ガス検知部がサーミスタ部である場合について説明したが、ガス検知部がサーミスタ部以外であってもよい。たとえば、ガス検知部が白金測温抵抗体であってもよい。
【0083】
さらに、本発明者らは、触媒材料として、白金(Pt)のみを担持させた担体材料をサーミスタ部上に形成しても密着性が良好であるのに対し、触媒材料として、白金と酸化物との複合触媒を担持させた担体材料をサーミスタ部上に形成した場合に、サーミスタ部との密着性が悪化することを見出した。そこで、白金と酸化物との複合触媒を担持させた担体材料を触媒層として用いる場合に、特に、本実施形態に係るガスセンサ素子の構成とすることにより、触媒部と触媒部が形成される面との間の密着性を向上させることができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
まず、絶縁膜としての酸化シリコン膜を支持基板としてのシリコン単結晶基板の主面にCVD法で成膜した。次に、スパッタ法によりチタン薄膜(膜厚5nm)及び白金薄膜(膜厚100nm)を絶縁膜上に順次堆積し、ヒータになるPt/Ti膜を成膜した。その後、Pt/Ti膜にドライエッチングを施し、ミアンダパターンを有するヒータを形成した。次に、ヒータ保護膜としての酸化シリコン膜を絶縁膜およびヒータ上にCVD法で成膜した。
【0087】
続いて、スパッタ法によりチタン薄膜(膜厚5nm)及び白金薄膜(膜厚100nm)をヒータ保護膜上に順次堆積し、サーミスタ電極になるPt/Ti膜を成膜した。その後、Pt/Ti膜にドライエッチングを施し、一対の対向電極を有するサーミスタ電極を形成した。
【0088】
次に、基板温度600℃、成膜圧力0.5Pa、O/Ar流量比1%、RFパワー400Wのスパッタ条件で、サーミスタとしてのMnNiCo系酸化物を0.4μm程度の厚みで堆積した。その後、焼成炉を用いてMnNiCo系酸化物膜に大気雰囲気で650℃1時間の熱処理を施し、塩化第二鉄水溶液を用いたウェットエッチングで所定形状にパターニングした。次に、サーミスタ保護膜としての酸化シリコン膜をサーミスタ電極およびサーミスタ上にCVD法で成膜した。
【0089】
続いて、引出電極として、膜厚1μmのアルミニウムパッドをリフトオフ法により形成した。その後、シリコン単結晶基板の主面のうち、絶縁膜が形成されていない主面にエッチングマスクを施し、アルカリ溶液を用いて絶縁膜が露出するまでシリコン単結晶基板をウェットエッチングし、空洞部を形成した。
【0090】
次に、担体材料として、平均粒子径が2μmであるAl粉末を準備した。このAl粉末の一部に、公知の方法により触媒材料としてのPtおよびCeOを担持させた。PtおよびCeOが担持されていないAl粉末が担体層用粉末であり、PtおよびCeOが担持されているAl粉末が触媒層用粉末である。
【0091】
上記の担体層用粉末100重量部、α-ターピネオール400重量部、分散剤である楠本化成社製「ED−216 」20重量部およびバインダであるエチルセルロース40重量部を、3本ロールにより混練してペースト化し、担体層用ペーストを得た。触媒層用ペーストについても、担体層用ペーストと同様にして得た。
【0092】
まず、比較例1の試料として、触媒層用ペーストをディスペンサによりサーミスタ保護膜上に塗布した。得られた触媒層塗布体を、表1に示す第2熱処理温度で30分熱処理を行い、担体層が形成されていない触媒部を有するガスセンサ素子を得た。
【0093】
次に、比較例2および実施例1の試料として、作製した担体層用ペーストをディスペンサによりサーミスタ保護膜上に塗布した。得られた担体層塗布体を、表1に示す第1熱処理温度で30分熱処理を行った。
【0094】
続いて、第1熱処理後の担体層の塗布体上に、作製した触媒層用ペーストをディスペンサにより塗布した。このとき、触媒層用ペーストの吐出量を調整して、触媒層の塗布体が担体層の塗布体よりも小さくなり周縁部分が形成されるように触媒層用ペーストを塗布した試料(図2(a))と、触媒層の塗布体が担体層の塗布体と同程度の大きさになるように触媒層用ペーストを塗布した試料(図3(a))と、触媒層の塗布体がサーミスタ部に接触するように触媒層用ペーストを塗布した試料(図3(b))とを作製した。得られた触媒層塗布体を表1に示す第2熱処理温度で30分熱処理し(第2熱処理)、触媒部が形成されたガスセンサ素子を得た。
【0095】
なお、表1の「担体層と触媒層との積層関係」の項目では、図3(b)に示す構成を「A」と表記し、図3(a)に示す構成を「B」と表記し、図2(a)に示す構成を「C」と表記した。
【0096】
得られたガスセンサ素子について、触媒部とサーミスタ部との密着性を評価した。触媒部の直上1cmから、ゴム製ブロアーにより触媒部にエアーを3回吹きかけた。今回の評価ではHAKUBA製のブロアープロCPを使用した。ブロアーからのエアーの噴出によって、触媒部とサーミスタ部との界面の剥離、または、触媒部における担体層と触媒層との界面の剥離の有無について評価した。密着性は、各試料について12個評価し、剥離が生じた個数により評価した。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1より、第1熱処理温度が第2熱処理温度よりも低く、上述した範囲内である場合(実施例1a〜1c)には、触媒部の剥離がほとんど生じず、密着性が良好であることが確認できた。
【0099】
一方、サーミスタ保護膜上に触媒層のみを形成し、担体層を形成しなかった場合(比較例1)、および、第1熱処理温度が第2熱処理温度と同じであり、かつ上述した範囲外である場合(比較例2a〜2c)には、触媒部の剥離が生じ、密着性が悪いことが確認できた。なお、剥離が生じたガスセンサ素子を用いて、ガス検知感度測定を評価したところ、検知対象ガスを全く検知できなかった。
【0100】
また、担体層が周縁部分を有するように触媒層を形成した場合(実施例1cおよび比較例2c)には、第1熱処理温度が第2熱処理温度と同じであり、かつ上述した範囲外である場合(比較例2c)であっても、触媒部の剥離をある程度抑制できることが確認できた。したがって、触媒層がサーミスタ部の表面に接触しないように触媒部を形成することにより、密着性が向上することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係るガスセンサ素子は、触媒部と触媒部が形成される面との密着性が良好であるため、センサとしての役割を十分に果たすことができるので、家電機器、産業用機器、環境モニタリング機器等に搭載されるガスセンサとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0102】
1… ガスセンサ素子
10… 触媒部
11… 担体層
111… 接触部分
112… 周縁部分
11a… 担体層の塗布体
12… 触媒層
12a… 触媒層の塗布体
20… ガス検知部(サーミスタ部)
21… ガス検知材(サーミスタ)
22… ガス検知電極(サーミスタ電極)
23… ガス検知材保護膜(サーミスタ保護膜)
30… ヒータ部
31… ヒータ
32… ヒータ保護膜
40… 基板部
41… 支持基板
42… 絶縁膜
43… 空洞部
50… 引出電極
図1
図2
図3
図4