特許第6805863号(P6805863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805863
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20201214BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20201214BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20201214BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20201214BHJP
   C08F 222/14 20060101ALI20201214BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L9/06
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08F222/14
   B60C1/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-23990(P2017-23990)
(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公開番号】特開2018-131478(P2018-131478A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大下 雅樹
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−533406(JP,A)
【文献】 特開2015−105278(JP,A)
【文献】 特開2015−086280(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/075971(WO,A1)
【文献】 特開2011−031709(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0004845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
C08F 222/14
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
38℃における溶融粘度が0.1〜3000Pa・sであるコア部と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体であるシェル部とを備えたコア−シェル構造粒子を含有し、
前記コア部が、下記式(1)で表される化合物の重合体、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体、共役ジエン化合物と下記式(1)で表される化合物との共重合体、芳香族ビニル化合物と下記式(1)で表される化合物との共重合体、及び共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物と下記式(1)で表される化合物との共重合体からなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記コア部及び前記シェル部に使用される前記共役ジエン化合物が、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン及びミルセンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記コア部及び前記シェル部に使用される前記芳香族ビニル化合物が、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン及びジビニルナフタレンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記コア−シェル構造粒子の平均粒径が100〜3000nmであるタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、R11及びR12は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記コア−シェル構造粒子100質量%中、前記コア部の含有量が5〜95質量%、前記シェル部の含有量が5〜95質量%である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量部に対する前記コア−シェル構造粒子の含有量が1〜50質量部である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
カーボンブラック及び/又はシリカを含む請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したタイヤ部材を有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴム組成物は、低燃費性及び耐摩耗性に優れることが要求されるが、これらは互いに背反する関係にあり、通常、両立は困難である。そのため、低燃費性及び耐摩耗性をバランスよく改善する手法の開発が行われており、このような手法の一例として、特許文献1では、コア部がメラミン樹脂で、シェル部がシリカで構成されたコア−シェル構造粒子を配合する手法が開示されている。
【0003】
しかしながら、タイヤ用ゴム組成物は、低燃費性及び耐摩耗性だけでなく、ロードノイズ低減性に優れることも要求されるところ、特許文献1では、ロードノイズ低減性を向上させる点について充分に検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−308625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、耐摩耗性及びロードノイズ低減性がバランスよく改善されたタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、38℃における溶融粘度が0.1〜3000Pa・sであるコア部と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体であるシェル部とを備えたコア−シェル構造粒子を含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0007】
上記コア部が、下記式(1)で表される化合物の重合体、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体、共役ジエン化合物と下記式(1)で表される化合物との共重合体、芳香族ビニル化合物と下記式(1)で表される化合物との共重合体、及び共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物と下記式(1)で表される化合物との共重合体からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【化1】
(式(1)中、R11及びR12は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0008】
上記コア−シェル構造粒子100質量%中、上記コア部の含有量が5〜95質量%、上記シェル部の含有量が5〜95質量%であることが好ましい。
【0009】
上記コア−シェル構造粒子の平均粒径が100〜10000nmであることが好ましい。
【0010】
上記ゴム成分100質量部に対する前記コア−シェル構造粒子の含有量が1〜50質量部であることが好ましい。
【0011】
上記タイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラック及び/又はシリカを含むことが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したタイヤ部材を有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、38℃における溶融粘度が0.1〜3000Pa・sであるコア部と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体であるシェル部とを備えたコア−シェル構造粒子を含有するタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性、耐摩耗性及びロードノイズ低減性をバランスよく改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、38℃における溶融粘度が0.1〜3000Pa・sであるコア部と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体であるシェル部とを備えたコア−シェル構造粒子を含有する。
【0015】
上記コア−シェル構造粒子をゴム組成物に配合することで、タイヤ振動特性(損失係数η)が低下し、ロードノイズ低減性を改善することができる。
また、従来のコア−シェル構造粒子を配合した場合、ゴム組成物が硬くなりすぎて、低燃費性が悪化する場合があったが、上記コア−シェル構造粒子は、コア部の38℃における溶融粘度が0.1〜3000Pa・sという低粘度(常温で液状)であるため、配合したゴム組成物の硬度変化が抑制され、これにより、低燃費性とロードノイズ低減性とを両立させることが可能となる。
さらに、上記コア−シェル構造粒子は、補強剤としての機能も有しているため、ゴム組成物に配合することで、耐摩耗性を改善することができる。
【0016】
本発明で使用できるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、SBR、BRが好ましい。
なお、SBR、BRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0017】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、好ましくは45質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
同様の理由から、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは55質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
【0018】
本発明で使用するコア−シェル構造粒子は、38℃における溶融粘度が0.1〜3000Pa・sであるコア部と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物であるシェル部とを備える。
なお、上記コア−シェル構造粒子において、コア部は、38℃における溶融粘度が0.1〜3000Pa・sの化合物で実質的に構成されていればよく、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。シェル部についても同様である。
また、上記コア−シェル構造粒子は、少なくとも、コア部とシェル部とを備えていればよく、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の領域(例えば、コア部を構成する化合物とシェル部を構成する化合物とが混ざり合った領域)を備えていてもよい。
【0019】
コア部の38℃における溶融粘度は、ロードノイズ低減効果がより良好になるという理由から、好ましくは1Pa・s以上、より好ましくは5Pa・s以上であり、また、ゴム組成物が硬くなりすぎることを抑制し、良好な低燃費性が得られるという理由から、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以下である。
なお、コア部の溶融粘度は、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0020】
コア部を構成する化合物は、所定の溶融粘度を有するものであれば特に限定されないが、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、及び下記式(1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種のモノマー成分を用いた(共)重合体であることが好ましい。該(共)重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化2】
(式(1)中、R11及びR12は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0021】
コア部でモノマー成分として使用する共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン、ミルセンが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。
【0022】
コア部でモノマー成分として使用する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スチレンが好ましい。
【0023】
式(1)中、R11及びR12の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。
【0024】
11及びR12の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、1〜10のものがより好ましく、1〜3のものが更に好ましい。該脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。なかでも、低燃費性、耐摩耗性及びロードノイズ低減性をバランスよく改善できる点から、メチル基、エチル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0025】
脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜8のものが好ましく、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。
【0026】
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル(tolyl)基、キシリル(xylyl)基、ナフチル基等が挙げられる。なお、トリル基及びキシリル基におけるベンゼン環上のメチル基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置でもよい。
【0027】
式(1)で表される化合物としては、例えば、イタコン酸、イタコン酸1−メチル、イタコン酸4−メチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸1−エチル、イタコン酸4−エチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸1−プロピル、イタコン酸4−プロピル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸1−ブチル、イタコン酸4−ブチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸1−エチル4−メチル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性、耐摩耗性及びロードノイズ低減性をバランスよく改善できる点から、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸1−プロピルが好ましく、イタコン酸ジエチルがより好ましい。
【0028】
コア部は、特に良好なロードノイズ低減性が得られるという理由から、式(1)で表される化合物の重合体、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体、共役ジエン化合物と式(1)で表される化合物との共重合体、芳香族ビニル化合物と式(1)で表される化合物との共重合体、及び共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物と式(1)で表される化合物との共重合体からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体、式(1)で表される化合物の重合体がより好ましく、式(1)で表される化合物の重合体が更に好ましい。
NMRによる分析結果から、式(1)で表される化合物の重合体は、分子内、又は、分子間に水素結合を形成していることが示唆されている。そのため、該重合体によるロードノイズの低減効果は、振動エネルギーが水素結合の開裂や形成に消費されることで発揮されると考えられる。
【0029】
上記コア−シェル構造粒子において、コア部の平均粒径は、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、好ましくは5nm以上、より好ましくは20nm以上であり、また、好ましくは10000nm以下、より好ましくは100nm以下である。
なお、コア部の平均粒径は、数平均粒径であり、透過型電子顕微鏡により測定される値である。
【0030】
上記コア−シェル構造粒子100質量%中、コア部の含有量は、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
【0031】
上記コア−シェル構造粒子のシェル部は、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体で構成される。該重合体でモノマー成分として使用する共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物の例示や好適な形態は、コア部で説明したものと同様である。
【0032】
シェル部は、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、芳香族ビニル化合物の重合体が好ましく、スチレンの重合体がより好ましい。
また、シェル部は、常温で固体である(38℃における溶融粘度が3000Pa・sを超える)ことが好ましい。
【0033】
上記コア−シェル構造粒子において、シェル部の厚みは、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、好ましくは5nm以上、より好ましくは20nm以上であり、また、好ましくは10000nm以下、より好ましくは100nm以下である。
なお、シェル部の厚みは、重合操作時におけるモノマーの仕込み質量比から算出される値である。
【0034】
上記コア−シェル構造粒子100質量%中、シェル部の含有量は、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%である。
【0035】
上記コア−シェル構造粒子の平均粒径は、粒子の凝集を抑制し、破壊の起点をつくりにくいという理由から、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上であり、また、上記コア−シェル構造粒子が破壊の起点となりにくく、良好な耐摩耗性が得られるという理由から、好ましくは10000nm以下、より好ましくは3000nm以下、更に好ましくは1000nm以下である。
なお、上記コア−シェル構造粒子の平均粒径は、数平均粒径であり、透過型電子顕微鏡により測定される値である。
【0036】
上記コア−シェル構造粒子の含有量は、良好なロードノイズ低減性が得られるという理由から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、良好な低燃費性、耐摩耗性が得られるという理由から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
【0037】
本発明のゴム組成物は、補強剤として、カーボンブラック及び/又はシリカを含有することが好ましく、カーボンブラック及びシリカを含有することがより好ましい。
なお、カーボンブラック、シリカとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0038】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、良好な補強性が得られるという理由から、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上であり、また、良好な低燃費性が得られるという理由から、好ましくは180m/g以下、より好ましくは150m/g以下である。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001で測定される値である。
【0039】
カーボンブラックの含有量は、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0040】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、良好な補強性が得られるという理由から、好ましくは100m/g以上、より好ましくは150m/g以上であり、また、良好な低燃費性が得られるという理由から、好ましくは220m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−8193に準じてBET法で測定される値である。
【0041】
シリカの含有量は、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
【0042】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン等のニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロ系等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0043】
シランカップリング剤の含有量は、良好な低燃費性、耐摩耗性、ロードノイズ低減性が得られるという理由から、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0044】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、ワックス、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄、加硫促進剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0045】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に使用することができるが、特にトレッドに好適に使用することができる。
【0046】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の空気入りタイヤが得られる。
【実施例】
【0047】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0048】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:JSR(株)製のSBR1502
BR:宇部興産(株)製のBR150B
粒子1〜4:下記製造例及び表1
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN110(NSA:130m/g)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤:精工化学(株)製のオゾノン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0049】
(乳化剤の調製)
イオン交換水936g、ロジン酸カリウム石鹸115g、脂肪酸ナトリウム石鹸33g、塩化カリウム5.1g、ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物3.0gを容器内に添加し、70℃で2時間撹拌することで、乳化剤を調製した。
【0050】
(製造例1:粒子1の製造)
内容積3リットルのステンレス製重合反応容器を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後にスチレン600g、t−ドデシルメルカプタン0.61g、上記乳化剤968g、ハイドロサルファイドナトリウム1.0ml、活性剤(FeSO4/EDTA/ロンガリット)各1.0ml、重合開始剤(日油(株)製のパーメンタH)1.0mlを添加し、攪拌下、10℃で1時間重合を行った。重合完了後、N.N−ジエチルヒドロキシルアミン0.5gを添加し、30分反応させてから、重合反応容器の内容物を取り出し、2.4gの2,6−ジ−t−フチル−p−クレゾール(住友化学(株)製のスミライザーBHT)を加え、水の大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、重合体(粒子1)を得た。
【0051】
(製造例2:粒子2の製造)
コア部の重合:内容積3リットルのステンレス製重合反応容器を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後に1,3−ブタジエン450g、スチレン150g、t−ドデシルメルカプタン0.61g、上記乳化剤968g、ハイドロサルファイドナトリウム1.0ml、活性剤(FeSO4/EDTA/ロンガリット)各1.0ml、重合開始剤(日油(株)製のパーメンタH)1.0mlを添加し、攪拌下、10℃で1時間重合を行った。
シェル部の重合:次に、得られた反応物に対して、重合開始剤(日油(株)製のパーメンタH)0.3ml、スチレン150g、ハイドロサルファイドナトリウム0.3mlを添加し、攪拌下、10℃で1時間重合を行った。重合完了後、N.N−ジエチルヒドロキシルアミン0.5gを添加し、30分反応させてから、重合反応容器の内容物を取り出し、2.4gの2,6−ジ−t−フチル−p−クレゾール(住友化学(株)製のスミライザーBHT)を加え、水の大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、重合体(粒子2)を得た。
得られた粒子2は、コア部及びシェル部が常温で固体であるコア−シェル構造粒子であった。
【0052】
(製造例3:粒子3の製造)
コア部の重合において、t−ドデシルメルカプタンの添加量を1.11gに変更した点以外は製造例2と同様の条件により、重合体(粒子3)を得た。
得られた粒子3は、コア部が常温で液状、シェル部が常温で固体であるコア−シェル構造粒子であった。
【0053】
(製造例4:粒子4の製造)
コア部の重合において、モノマー成分を1,3−ブタジエン、スチレンからイタコン酸ジエチルに変更した点以外は製造例2と同様の条件により、重合体(粒子4)を得た。
得られた粒子4は、コア部が常温で液状、シェル部が常温で固体であるコア−シェル構造粒子であった。
【0054】
(溶融粘度)
コア部の重合終了後の反応物(コア化合物)を少量サンプリングし、ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABS.INC.製)を用いて、38℃における溶融粘度を測定した。
【0055】
【表1】
【0056】
(実施例及び比較例)
(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーに、表2に示す配合内容の内、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を投入し、排出温度が約150℃となるように5分間混練りし、排出した(ベース練り工程)。
次に、得られた混練り物に表2に示す配合量の硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、排出温度が80℃となるように約3分間混練りして、未加硫ゴム組成物を得た(仕上げ練り工程)。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0057】
得られた加硫ゴム組成物について、下記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0058】
(転がり抵抗指数)
加硫ゴム組成物から所定サイズの試験片(加硫ゴムシート)を切り出し、(株)上島製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で、60℃における加硫ゴムシートの損失正接(tanδ)を測定し、比較例1のtanδを100として指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど、低燃費性に優れることを示す。
【0059】
(耐摩耗性指数)
加硫ゴム組成物から所定サイズの試験片を切り出し、ランボーン摩耗試験機を用いて、20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下で、試験片のランボーン摩耗量を測定した。そして、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1のランボーン摩耗指数を100として指数表示した(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0060】
(タイヤ振動特性指数)
得られた加硫ゴム組成物から所定サイズの試験片(加硫ゴムシート)を切り出し、B&K社製中央加振測定機を用いて、23℃における加硫ゴムシートの損失係数(η)を測定し、比較例1のηを100として指数表示した(タイヤ振動特性指数)。指数が大きいほど、ロードノイズ低減性(耐ノイズ性)に優れることを示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2より、38℃における溶融粘度が0.1〜3000Pa・sであるコア部と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体であるシェル部とを備えたコア−シェル構造粒子(粒子3、4)を配合した実施例は、低燃費性、耐摩耗性及びロードノイズ低減性の全性能が改善され、特に、ロードノイズ低減性が大幅に向上することが明らかとなった。