特許第6805875号(P6805875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6805875-電池開回路電圧推定装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805875
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】電池開回路電圧推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/388 20190101AFI20201214BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G01R31/388
   H01M10/48 P
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-28937(P2017-28937)
(22)【出願日】2017年2月20日
(65)【公開番号】特開2018-136136(P2018-136136A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】小田切 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西垣 研治
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−197275(JP,A)
【文献】 特開2000−323183(JP,A)
【文献】 特開2014−102078(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0158914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36−31/396
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電中の電池に流れる電流を検出する電流検出部と、
充放電中の前記電池の電圧を検出する電圧検出部と、
検出タイミング毎に、前記電流検出部により検出される電流及び前記電圧検出部により検出される電圧を記憶する記憶部と、
正の電流または負の電流を示すx軸と正の電圧を示すy軸とからなる2次元座標において、前記記憶部に記憶された電流と電圧に対応する座標位置を算出する座標位置算出部と、
前記座標位置算出部により算出される複数の座標位置のうち、前記電流検出部により検出される正の電流の積算値と負の電流の積算値が互いに同じになる期間に算出された座標位置を複数抽出し、その抽出した各座標位置に近似する一次関数を前記2次元座標上に求め、その求めた一次関数と前記y軸との交点に対応する電圧を、充放電中の前記電池の開回路電圧として推定する開回路電圧推定部と、
を備えることを特徴とする電池開回路電圧推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電中の電池の開回路電圧を推定する電池開回路電圧推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の電池開回路電圧推定装置として、正の電流または負の電流を示すx軸と正の電圧を示すy軸とからなる2次元座標において、検出タイミング毎に記憶部に記憶された電池の電流と電圧に対応する座標位置を算出し、各座標位置に近似する一次関数を2次元座標上に求め、その求めた一次関数とy軸との交点に対応する電圧を、充放電中の電池の開回路電圧として推定するものがある。
【0003】
ところで、分極が大きく、かつ、分極解消に長時間を要する電池(例えば、SiO負極を採用したリチウムイオン電池)は、電池に流れる電流の積算値が放電中よりも充電中の方が大きいと、充放電中に取得される電池の電圧が充電によって生じる分極の影響を受けた電圧になり、電池に流れる電流の積算値が充電中よりも放電中の方が大きいと、充放電中に取得される電池の電圧が放電によって生じる分極の影響を受けた電圧になる。すなわち、充放電中に電池に流れる電流の収支が合っていないと、充電によって生じる分極の大きさ、または、放電によって生じる分極の大きさに応じて、電池の電圧が変動する。
【0004】
関連する技術として、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−519701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既存の電池開回路電圧推定装置において、上述のように、分極が大きく、かつ、分極解消に長時間を要する電池の開回路電圧を推定する場合では、充放電中に電池に流れる電流の収支が合っていないと、充電によって生じる分極の大きさ、または、放電によって生じる分極の大きさに応じて、電池の電圧が変動するため、2次元座標において、広い範囲の電池の電圧にわたって各座標位置が点在してしまい、一次関数を一意に求めることが難しくなり、開回路電圧の推定精度が低下するおそれがある。
【0007】
本発明の一側面に係る目的は、分極が大きく、かつ、分極解消に長時間を要する電池の開回路電圧の推定精度を向上させることが可能な電池開回路電圧推定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一つの形態である電池開回路電圧推定装置は、電流検出部と、電圧検出部と、記憶部と、座標位置算出部と、開回路電圧推定部とを備える。
電流検出部は、充放電中の電池に流れる電流を検出する。
【0009】
電圧検出部は、充放電中の電池の電圧を検出する。
記憶部は、検出タイミング毎に、電流検出部により検出される電流及び電圧検出部により検出される電圧を記憶する。
【0010】
座標位置算出部は、正の電流または負の電流を示すx軸と正の電圧を示すy軸とからなる2次元座標において、検出タイミング毎に記憶部に記憶された電流と電圧に対応する座標位置を算出する。
【0011】
開回路電圧推定部は、座標位置算出部により算出される複数の座標位置のうち、電流検出部により検出される正の電流の積算値と負の電流の積算値が互いに同じになる期間に算出された座標位置を複数抽出し、その抽出した各座標位置に近似する一次関数を2次元座標上に求め、その求めた一次関数とy軸との交点に対応する電圧を、充放電中の電池の開回路電圧として推定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分極が大きく、かつ、分極解消に長時間を要する電池の開回路電圧の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の電池開回路電圧推定装置の一例を示す図である。
図2】座標位置算出部の動作の一例を示すフローチャートである。
図3】開回路電圧推定部の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】EVモード期間、HVモード期間、及び充電器充電期間における電池の電圧の変動例を示す図である。
図5】充放電中の電池に流れる電流の収支の一例を示す図である。
図6】開回路電圧の推定方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
図1は、実施形態の電池開回路電圧推定装置の一例を示す図である。
図1に示す電池開回路電圧推定装置は、電池Bの開回路電圧を推定するものであって、スイッチSWと、電流検出部1と、電圧検出部2と、記憶部3と、制御部4とを備える。
【0015】
電池Bは、例えば、1つの二次電池(リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、または電気二重層コンデンサなど)により構成されてもよいし、2つ以上の二次電池により構成されてもよい。また、スイッチSWが導通しているとき、充電器Chから電池Bへ電力が供給されると、または、電池Bが搭載される車両Ve(例えば、プラグインハイブリッド車)の負荷Lo(例えば、モータなど)から電池Bへ回生電力が供給されると、電池Bが充電される。また、スイッチSWが導通しているとき、電池Bから負荷Loへ電力が供給されると、電池Bが放電される。また、電池Bは、分極が大きく、かつ、分極解消に長時間を要するものとする。
【0016】
電流検出部1は、例えば、ホール素子またはシャント抵抗により構成され、充放電中の電池Bに流れる電流Iを検出する。
電圧検出部2は、例えば、IC(Integrated Circuit)により構成され、充放電中の電池Bの電圧V(閉回路電圧)を検出する。
【0017】
記憶部3は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)により構成され、検出タイミング毎に、電流検出部1により検出される電流及び電圧検出部2により検出される電圧を記憶する。
【0018】
制御部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、またはプログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)など)により構成され、座標位置算出部41と、開回路電圧推定部42とを備える。例えば、CPU、マルチコアCPU、またはプログラマブルなデバイスが記憶部3などに記憶されているプログラムを実行することにより、座標位置算出部41や開回路電圧推定部42が実現される。
【0019】
座標位置算出部41は、検出タイミング毎に、電流検出部1により検出される電流及び電圧検出部2により検出される電圧を記憶部3に記憶させる。
また、座標位置算出部41は、正の電流または負の電流を示すx軸と正の電圧を示すy軸とからなる2次元座標において、記憶部3に記憶される電流と電圧に対応する座標位置を算出する(図2:S21)。
【0020】
開回路電圧推定部42は、座標位置算出部41により算出される複数の座標位置のうち、電流検出部1により検出される正の電流の積算値(絶対値)と負の電流の積算値(絶対値)が互いに同じになる期間に算出された座標位置を複数抽出し(図3:S31)、その抽出した各座標位置に近似する一次関数を2次元座標上に求め(図3:S32)、その求めた一次関数とy軸との交点に対応する電圧を、充放電中の電池Bの開回路電圧として推定する(図3:S33)。
【0021】
例えば、車両Veがプラグインハイブリッド車である場合、図4に示すように、車両Veが電池Bから供給される電力によって走行する期間(EVモード期間)、車両Veが電池Bから供給される電力やガソリンエンジンの駆動力によって走行する期間(HVモード期間)、及び充電器Chにより電池Bが充電される期間(充電器充電期間)がある。
【0022】
このうち、HVモード期間では、図5に示すように、正の電流の積算値と負の電流の積算値が互いに同じにならない期間と、正の電流の積算値と負の電流の積算値が互いに同じになる期間とが混在する。
【0023】
正の電流の積算値と負の電流の積算値が互いに同じにならない期間、例えば、正の電流の積算値が負の電流の積算値よりも大きい期間では、図6(a)に示すように、2次元座標において、各座標位置が、充電によって生じる分極の大きさ、または、放電によって生じる分極の大きさに応じて正の電圧軸方向において広がり、かつ、正の電流軸側に広がる。このように、正の電流の積算値が負の電流の積算値よりも大きい期間に算出された各座標位置は、正の電流軸側の電圧値の高い側に偏る。そして、これらの座標位置に近似する一次関数f1を求めた場合、その一次関数f1の傾きが正の電圧軸方向の各座標位置の広がりの影響を受けて変化してしまうため、一次関数f1が真の一次関数に対して正しく求められていない可能性が高い。そのため、その一次関数f1とy軸との交点p1に対応する電圧を、充放電中の電池Bの開回路電圧として推定した場合、開回路電圧を精度良く推定することができないおそれがある。
【0024】
一方、正の電流の積算値と負の電流の積算値が互いに同じになる期間では、例えば、図6(b)に示すように、2次元座標において、各座標位置が、充電によって生じる分極の大きさ、または、放電によって生じる分極の大きさに応じて正の電圧軸方向において広がり、かつ、正の電流軸側及び負の電流軸側にそれぞれ広がる。このように、正の電流の積算値と負の電流の積算値が互いに同じになる期間に算出された各座標位置は、正の電流軸側の電圧値の高い側及び負の電流軸側の電圧値の低い側のどちらか一方に偏ることはない。そして、これらの座標位置に近似する一次関数f2を求めた場合、その一次関数f2の傾きが正の電圧軸方向の各座標位置の広がりの影響を受けて変化してしまうことを抑えることができるため、一次関数f2が真の一次関数に対して正しく求められている可能性が高い。そのため、その一次関数f2とy軸との交点p2に対応する電圧を、充放電中の電池Bの開回路電圧として推定した場合、開回路電圧を精度良く推定することができる。
【0025】
そこで、開回路電圧推定部42では、例えば、最小二乗法などを用いて、座標位置算出部41により算出される複数の座標位置のうち、電流検出部1により検出される正の電流の積算値と負の電流の積算値が互いに同じになる期間に算出された座標位置を複数抽出し、その抽出した各座標位置に近似する一次関数f2を求め、その求めた一次関数f2とy軸との交点p2に対応する電圧を、充放電中の電池Bの開回路電圧として推定する。
【0026】
このように、実施形態の電池開回路電圧推定装置では、座標位置算出部41により算出される複数の座標位置のうち、電流検出部1により検出される正の電流の積算値と負の電流の積算値が互いに同じになる期間に算出された座標位置を複数抽出し、それら各座標位置に近似する一次関数f2を2次元座標上に求め、その求めた一次関数f2とy軸との交点p2に対応する電圧を、充放電中の電池Bの開回路電圧として推定している。これにより、電池Bが、分極が大きく、かつ、分極解消に長時間を要する電池であり、充電によって生じる分極の大きさ、または、放電によって生じる分極の大きさに応じて電池Bの電圧が変動しても、2次元座標上に正しい一次関数f2を求めることができるため、充放電中の電池Bの開回路電圧を精度良く推定することができる。
【0027】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 電流検出部
2 電圧検出部
3 記憶部
4 制御部
41 座標位置算出部
42 開回路電圧推定部
B 電池
SW スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6