特許第6805878号(P6805878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805878
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】モータ、及びモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20201214BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20201214BHJP
   H02K 3/38 20060101ALI20201214BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H02K5/10 Z
   H02K3/50 Z
   H02K3/38 Z
   H02K15/04 E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-32518(P2017-32518)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-137963(P2018-137963A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】片澤 徹朗
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−093880(JP,A)
【文献】 特開2007−288929(JP,A)
【文献】 特開2002−223552(JP,A)
【文献】 特開2011−217492(JP,A)
【文献】 特開2011−066980(JP,A)
【文献】 特開2010−226805(JP,A)
【文献】 特開平02−136579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
H02K 3/38
H02K 3/50
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に延びる複数のティースを有するステータコアの前記ティースに電機子巻線が巻装されてなるステータと、
前記ステータの軸方向一端面側を覆うように設けられる第1フレームと
を備え、前記電機子巻線は多数のセグメント導体にて構成されるとともにその巻線端部部位が軸方向一端側に延びて前記第1フレームを貫通するように設けられるモータであって、
前記第1フレームにおける前記巻線端部部位が貫通される位置に固定される絶縁性部材を備え、
前記絶縁性部材は、前記巻線端部部位の先端部に突き破られた状態の貫通孔を有することを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記巻線端部部位の先端部は、尖った形状に形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータであって、
前記絶縁性部材における前記巻線端部部位の先端部に突き破られる部位は、軸線方向の肉厚が他の部位に比べて薄い薄肉部とされたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
径方向に延びる複数のティースを有するステータコアの前記ティースに電機子巻線が巻装されてなるステータと、
前記ステータの軸方向一端面側を覆うように設けられる第1フレームと
を備え、前記電機子巻線が多数のセグメント導体にて構成され、その巻線端部部位が軸方向一端側に延びて前記第1フレームを貫通するように設けられるモータの製造方法であって、
前記第1フレームにおける前記巻線端部部位が貫通される位置に絶縁性部材を固定し、
前記巻線端部部位の先端部にて前記絶縁性部材を突き破って該絶縁性部材に貫通孔を形成しつつ、前記巻線端部部位を、前記第1フレームを貫通するように設けることを特徴とするモータの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のモータの製造方法であって、
前記巻線端部部位の先端部は、尖った形状に形成されたことを特徴とするモータの製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のモータの製造方法であって、
前記絶縁性部材における前記巻線端部部位の先端部に突き破られる部位は、軸線方向の肉厚が他の部位に比べて薄い薄肉部とされたことを特徴とするモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、及びモータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータとしては、径方向に内側に延びる複数のティースを有するステータコアのティースに電機子巻線が巻装されてなるステータを備え、前記ステータコアを第1フレームと第2フレームとで軸方向に挟んだ状態として第1フレーム及び第2フレームをボルトで締結したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−147175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したモータの電機子巻線は多数のセグメント導体が接続されて構成されており、その巻線端部部位が軸方向一端側に延びて第1フレームを貫通するように設けられて第1フレームの外部に導出された巻線端部部位の先端部が他の電気回路部品に接続されることになる。このような場合、巻線端部部位が第1フレームに直接接触しないように、第1フレームにおける巻線端部部位が貫通される位置にゴム材や樹脂材からなる絶縁性部材を固定し、巻線端部部位は絶縁性部材を貫通するようにすることが好ましい。その場合、絶縁性部材に巻線端部部位を通すための貫通孔を予め形成しておくことが考えられるが、内部への異物の侵入を防ぐためには貫通孔を小さくする必要があり、貫通孔を小さくすると巻線端部部位を通すために貫通孔や巻線端部部位等の各寸法精度を高くする必要が生じてしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、高い寸法精度を必要とせずに貫通孔を介して内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができるモータ、及びモータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するモータは、径方向に延びる複数のティースを有するステータコアの前記ティースに電機子巻線が巻装されてなるステータと、前記ステータの軸方向一端面側を覆うように設けられる第1フレームとを備え、前記電機子巻線は多数のセグメント導体にて構成されるとともにその巻線端部部位が軸方向一端側に延びて前記第1フレームを貫通するように設けられるモータであって、前記第1フレームにおける前記巻線端部部位が貫通される位置に固定される絶縁性部材を備え、前記絶縁性部材は、前記巻線端部部位の先端部に突き破られた状態の貫通孔を有する。
【0007】
同構成によれば、第1フレームにおける巻線端部部位が貫通される位置に固定される絶縁性部材を備え、絶縁性部材は、巻線端部部位の先端部に突き破られた状態の貫通孔を有するため、高い寸法精度を必要とせずに(容易に組み付けることができるとともに)貫通孔を介して内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
【0008】
上記モータであって、前記巻線端部部位の先端部は、尖った形状に形成されることが好ましい。
同構成によれば、前記巻線端部部位の先端部は、尖った形状に形成されるため、絶縁性部材を小さな力で且つ綺麗に(貫通孔が大きくならないように)に突き破ることができる。
【0009】
上記モータであって、前記絶縁性部材における前記巻線端部部位の先端部に突き破られる部位は、軸線方向の肉厚が他の部位に比べて薄い薄肉部とされることが好ましい。
同構成によれば、絶縁性部材における巻線端部部位の先端部に突き破られる部位は、軸線方向の肉厚が他の部位に比べて薄い薄肉部とされるため、巻線端部部位の先端部によって小さな力で且つ綺麗に(貫通孔が大きくならないように)に突き破ることができる。
【0010】
上記課題を解決するモータの製造方法は、径方向に延びる複数のティースを有するステータコアの前記ティースに電機子巻線が巻装されてなるステータと、前記ステータの軸方向一端面側を覆うように設けられる第1フレームとを備え、前記電機子巻線が多数のセグメント導体にて構成され、その巻線端部部位が軸方向一端側に延びて前記第1フレームを貫通するように設けられるモータの製造方法であって、前記第1フレームにおける前記巻線端部部位が貫通される位置に絶縁性部材を固定し、前記巻線端部部位の先端部にて前記絶縁性部材を突き破って該絶縁性部材に貫通孔を形成しつつ、前記巻線端部部位を、前記第1フレームを貫通するように設ける。
【0011】
同方法によれば、第1フレームにおける巻線端部部位が貫通される位置に絶縁性部材を固定し、巻線端部部位の先端部にて絶縁性部材を突き破って該絶縁性部材に貫通孔を形成しつつ、巻線端部部位を、第1フレームを貫通するように設けるため、高い寸法精度を必要とせずに貫通孔を介して内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
【0012】
上記モータの製造方法であって、前記巻線端部部位の先端部は、尖った形状に形成されることが好ましい。
同構成によれば、前記巻線端部部位の先端部は、尖った形状に形成されるため、絶縁性部材を容易且つ綺麗に(貫通孔が大きくならないように)突き破ることができる。
【0013】
上記モータの製造方法であって、前記絶縁性部材における前記巻線端部部位の先端部に突き破られる部位は、軸線方向の肉厚が他の部位に比べて薄い薄肉部とされることが好ましい。
【0014】
同構成によれば、絶縁性部材における巻線端部部位の先端部に突き破られる部位は、軸線方向の肉厚が他の部位に比べて薄い薄肉部とされるため、巻線端部部位の先端部によって容易且つ綺麗に(貫通孔が大きくならないように)に突き破ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモータ、及びモータの製造方法では、高い寸法精度を必要とせずに貫通孔を介して内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態におけるモータの概略構成を示す模式断面図。
図2】一実施形態におけるモータの分解斜視図。
図3】(a)は一実施形態におけるモータの側面図、(b)はモータの断面図。
図4】一実施形態におけるモータの一部断面図。
図5】一実施形態におけるモータの断面図。
図6】一実施形態におけるモータの一部拡大斜視図。
図7】一実施形態における絶縁性部材の断面図。
図8】一実施形態における絶縁性部材の平面図。
図9】別例における絶縁性部材の断面図。
図10】別例における絶縁性部材の断面図。
図11】別例における巻線端部部位の先端部の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、一実施形態を図1図8に従って説明する。
図1に示すように、モータ10は、第1フレーム11と第2フレーム12とによって円環状のステータ13を回転軸方向に挟持した構成となっている。第1フレーム11と第2フレーム12とは、ステータ13の外周に配置される複数(本実施形態では2つ)の締結部材としてのスルーボルト14によって互いに固定(締結)されている。また、ステータ13の内側にロータ15が回転可能に配置されている。なお、本実施形態では、モータ10の軸方向反出力側(図1において上側)でステータ13を保持するエンドフレームを第1フレーム11とし、軸方向出力側でステータ13を保持するエンドフレームを第2フレーム12としている。
【0018】
図1及び図2に示すように、ステータ13は、円環状のステータコア16と、該ステータコア16に巻装された電機子巻線17とを有する。図3(b)に示すように、ステータコア16は、円環状をなす環状部16aと、環状部16aから径方向内側に延び周方向に並ぶ複数(本実施形態では60個)のティース16bと、環状部16aの外周面から径方向外側に突出し軸方向に沿って延びる4つのコア外周突出部16cとから構成されている。環状部16aの外周面は円筒状をなすとともに、同環状部16aの軸方向の両端面は、軸方向と直交する平面状をなしている。また、電機子巻線17は、複数のティース16bに跨って巻装された分布巻とされている。また、電機子巻線17は、3相(U相、V相、W相)分、設けられており、それぞれ多数のセグメント導体が軸方向端部で接続されて構成されている。また、電機子巻線17は、その各巻線端部部位17a(図2参照)が軸方向一端側に延びて第1フレーム11を貫通するように設けられる。詳しくは、各相(3つ)の電機子巻線17の一方の巻線端部部位17aは、周方向に近い位置で一方の群Z1を構成して軸方向一端側に延びるように設けられ、各相の電機子巻線17の他方の巻線端部部位17aは、周方向に近い位置で他方の群Z2を構成しつつ一方の群Z1とは180度離間した位置で軸方向一端側に延びるように設けられている。
【0019】
そして、図3(a)、図4及び図5に示すように、第1フレーム11における巻線端部部位17a(一方の群Z1と他方の群Z2)が貫通される位置であって180度間隔の位置には、絶縁性部材Rが固定されている。絶縁性部材Rは、巻線端部部位17aの先端部17bに突き破られた状態の貫通孔Ra(図4参照)を有する。また、絶縁性部材Rはゴム材よりなる。
【0020】
詳しくは、図7及び図8に示すように、成形された直後の状態の絶縁性部材Rは、貫通孔Raを有しておらず、第1フレーム11の嵌着孔11aに嵌着される筒状部Rbと、筒状部Rbの一端を閉塞する薄肉部Rcと、筒状部Rbの一端から外側に延びるフランジ部Rdとを有する。なお、薄肉部Rcは、後に巻線端部部位17aの先端部17bに突き破られることになる部位(貫通孔Raが形成される部位)であって、軸線方向(突き破られる方向)の肉厚が他の部位(フランジ部Rd等)に比べて薄く形成されている。また、筒状部Rbの内面には巻線端部部位17aの先端部17bを薄肉部Rcに導くべく傾斜した傾斜面Reが形成されている。また、筒状部Rbの外面には嵌着孔11aから抜けにくくするための返し部Rfが形成されている。
【0021】
また、図4及び図7に示すように、巻線端部部位17aの先端部17bは、尖った形状に形成されている。なお、本実施形態の巻線端部部位17aの先端部17bは、1つの傾斜した平面を有することで尖った形状に形成されている。
【0022】
図3(a)及び図3(b)に示すように、コア外周突出部16cは、環状部16aの外周面における周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)となる4か所に設けられている。各コア外周突出部16cは、環状部16aの軸方向の一端から他端まで軸方向に沿って形成されている。また、各コア外周突出部16cには、各コア外周突出部16cの先端(径方向外側の端)から基端に向かって凹設されて径方向外側に開口した収容凹部としての円弧凹部16dが形成されている。円弧凹部16dは、その周方向中心ほど径方向内側に深く形成されており、軸方向から見た形状が円弧状をなすとともに、コア外周突出部16cを軸方向に貫通する溝状をなしている。なお、円弧凹部16dの曲率半径は、スルーボルト14における雄螺子状の部分の半径より若干大きい値となっている。そして、4つのコア外周突出部16cのうち周方向に180°間隔となる2箇所(図3(b)中、左右の2箇所)に設けられた円弧凹部16dは、軸方向に延びる略円柱状をなすスルーボルト14の一部(半分以下)が収容されるように配置される締結部材収容凹部16eとされている。
【0023】
図1に示すように、このステータコア16は、電磁鋼板材をプレス加工により打ち抜いて成形した状態の複数枚のステータコアシート18を軸方向に積層してかしめて一体化することにより形成されている。なお、このとき、本実施形態では同じ工程で打ち抜き成形された状態のステータコアシート18を90度回転させながら軸方向に積層することで、例えば電磁鋼板材の微小な歪みや残留応力等を軸方向及び周方向にバランスよく分散させてステータコア16のバランスを良好としている。また、ステータコア16の軸方向の両端部に積層された端部コアシート66は、径方向内側において軸方向外側に延設される軸方向延出部としてのロータ対向部65を備えた断面L字形状とされている。
【0024】
従って、ステータコア16の積厚(積層されたステータコアシート18及び端部コアシート66全体の厚み)を小さく抑えつつも、ティース16bの径方向内側端面16f(ロータ15との対向面)の軸方向長さを確保することが可能となっている。図3(a)では、ステータコアシート18を省略してステータコア16を簡略化して図示している。
【0025】
図1及び図2に示すように、ステータコア16の軸方向の両側に配置され該ステータコア16の対向する端面を覆うように設けられた第1フレーム11及び第2フレーム12は、金属材料よりなるとともに、鋳造により形成されている。第1及び第2フレーム11,12は、略円盤状の第1及び第2本体部21,31と、第1及び第2本体部21,31から軸方向に延出された円筒状の第1及び第2ステータ保持部22,32をそれぞれ備えている。また、第1及び第2フレーム11,12は、第1及び第2ステータ保持部22,32の外周面及び第1及び第2本体部21,31に一体に設けられた複数(本実施形態では2つずつ)の第1及び第2ボルト締結部23,33を備えている。第1及び第2ボルト締結部23,33は、周方向に等角度間隔(本実施形態では180°間隔)に設けられている。また、各第1ボルト締結部23には、スルーボルト14が挿通される第1締結孔23a(図2参照)が形成されるとともに、各第2ボルト締結部33には、スルーボルト14が螺合される雌螺子状の第2締結穴33a(図3(b)参照)が形成されている。第1フレーム11及び第2フレーム12は、第1締結孔23aを貫通し第2締結穴33aに螺合されたスルーボルト14によって第1及び第2ボルト締結部23,33が互いに連結されることにより、互いに固定されて一体化されている。また、第2フレーム12は、図示しない螺子にてモータ10を外部の固定場所に固定するための固定部34を有する。固定部34は、第2本体部31において2つの第2ボルト締結部33から周方向にずれた2箇所から径方向外側に延設されている。なお、モータ10は、例えば、第1フレーム11に対して第2フレーム12が下方に位置するように固定場所に固定される。
【0026】
図2及び図3(a)に示すように、第1ステータ保持部22の先端部には、ステータコア16の軸方向の一端部(図3(a)において上端部)が径方向内側に嵌合された第1嵌合部25が形成されている。同様に、第2ステータ保持部32の先端部には、ステータコア16の軸方向の他端部(図3(a)において下端部)が径方向内側に嵌合された第2嵌合部35が形成されている。
【0027】
第1嵌合部25は、周方向に離間して並ぶ複数(本実施形態では4個)の第1嵌合壁25aから構成されている。4つの第1嵌合壁25aは、周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)に設けられている。更に、4つの第1嵌合壁25aは、周方向に隣り合うコア外周突出部16cの間に1つずつ配置されている。即ち、コア外周突出部16cは、周方向に隣り合う第1嵌合壁25aの間に位置して第1嵌合壁25aと周方向に(交互に)重なっている。そして、コア外周突出部16cは、第1嵌合壁25aと径方向に重なっていない。また、第2嵌合部35は、周方向に離間して並ぶ複数(本実施形態では8個)の第2嵌合壁35aから構成されている。第2嵌合壁35aは、各コア外周突出部16cの周方向の両側に1つずつ(即ち周方向に隣り合うコア外周突出部16cの間に2つずつ)配置されている。即ち、コア外周突出部16cは、周方向に隣り合う第2嵌合壁35aの間に位置して第2嵌合壁35aと周方向に(2つ置きに)重なっている。そして、コア外周突出部16cは、第2嵌合壁35aと径方向に重なっていない。
【0028】
第1及び第2嵌合部25,35(第1及び第2嵌合壁25a,35a)は、第1及び第2ステータ保持部22,32における基端側の部分よりも径方向の厚さが薄く形成されている。また、第1及び第2嵌合壁25a,35aは、軸方向と平行に延出されるとともに、軸方向から見て周方向に沿った円弧状をなしている。更に、各第1及び第2嵌合壁25a,35aは、基端から先端(第1及び第2ステータ保持部22,35の先端側の端)に向かうにつれて周方向の幅が狭くなっている。
【0029】
図1に示すように、第1及び第2嵌合部25,35の内周面、即ち各第1及び第2嵌合壁25a,35aの径方向内側の側面は、第1及び第2フレーム11,12とステータコア16との芯出し用の第1及び第2芯出し面25b,35bとなっている。
【0030】
また、第1及び第2フレーム11,12は、第1及び第2ステータ保持部22,32の中心軸線と直交する方向に第1及び第2嵌合部25、35の基端部と隣り合う第1及び第2当接面26,36を有する。そして、第1当接面26には、第1嵌合部25に嵌入された環状部16aの軸方向の一端面(図1において上端面)が軸方向に当接している。また、第2当接面36には、第2嵌合部35に嵌入された環状部16aの軸方向の他端面(図1において下端面)が軸方向に当接している。この状態で、第1フレーム11及び第2フレーム12は、第1及び第2ステータ保持部22,32でステータ13を挟持しつつスルーボルト14にて互いに固定(締結)されている。
【0031】
なお、本実施形態では、第1及び第2ステータ保持部22,32の先端部に設けられた第1及び第2嵌合部25,35(第1及び第2嵌合壁25a,35a)は、第1及び第2当接面26,36から軸方向に突出している。そのため、第1フレーム11において第1芯出し面25bと第1当接面26とが直角をなして近接するとともに、第2フレーム12において第2芯出し面35bと第2当接面36とが直角をなして近接している。
【0032】
第1本体部21の中央部には、ボールベアリングB1を軸方向のステータ13側(モータ10の内部側)から組付け可能に凹設された軸受収容部29が形成されている。軸受収容部29は、軸方向視で円形状をなしており、その内周面が軸方向に延びる円筒状をなしている。また、軸受収容部29の中心軸線は、第1ステータ保持部22の中心軸線(第1嵌合部25の中心軸線)と一致している。そして、第1フレーム11は、この軸受収容部29内に円環状のボールベアリングB1を収容して保持している。また、軸受収容部29の底部中央には、軸受収容部29の底部を軸方向に貫通する貫通孔29aが形成されている。そして、軸受収容部29の底部における貫通孔29aの径方向外側の部分と軸受収容部29に収容されたボールベアリングB1との間には、ボールベアリングB1をステータ13側に軸方向に付勢するウェーブワッシャ41が介在されている。
【0033】
第2本体部31の中央部には、円環状のボールベアリングB2を収容して保持する軸受収容部40が凹設されている。軸受収容部40は、第2フレーム12の軸方向外側端面からモータ10の内部側(ステータ13側)に窪む凹形状をなしている。つまり、軸受収容部40は、ボールベアリングB2をモータ10の外部側(ステータ13と反対側)から組付け可能に形成されている。また、軸受収容部40の中心軸線は、第2ステータ保持部32の中心軸線(第2嵌合部35の中心軸線)と一致している。そして、第2フレーム12は、軸受収容部40内に配置されたボールベアリングB2を、第1フレーム11に保持されたボールベアリングB1と同軸となるように保持している。また、ボールベアリングB2は、軸受収容部40の底部に軸方向から当接することで、軸方向の位置決めがなされている。なお、軸受収容部40の底部中央には、軸受収容部40の底部を軸方向に貫通する貫通孔40aが形成されている。
【0034】
ロータ15は、ボールベアリングB1,B2に回転可能に支持された回転軸51と、回転軸51の中央のローレット部51aに一体回転可能に固定された円筒状のロータコア52と、ロータコア52の外表面と当接するように配置された周方向に複数の永久磁石53と、各永久磁石53の外表面を覆って保持する筒状の非磁性カバー54とを備える。各永久磁石53は、ステータコア16の内周面(ティース16bの径方向内側端面16f)と非磁性カバー54を介して径方向に対向している。回転軸51の先端部(図1において下端部)は、貫通孔40aを貫通しボールベアリングB2から第2フレーム12の外部であってモータ10の外部に突出しており、その突出部分には、出力部としてのジョイント55(図2参照)が装着される。また、回転軸51の基端部(図1において上端部)は、貫通孔29aを貫通し第1フレーム11の外部に突出しており、その突出部分には、固定部材56を介して円盤状のセンサマグネット57が固定されている。
【0035】
図1及び図2に示すように、第1フレーム11の外側面には制御部61が固定されている。制御部61は、第1フレーム11に固定されるカバー62と、カバー62の内部に収容される回路基板63とを備えている。回路基板63には、前記センサマグネット57と対向する磁気センサ63a等を含む種々の素子が実装されている。また、回路基板63には、前記巻線端部部位17aの先端部17bが電気的に接続される。また、回路基板63には、モータ10に給電するための外部コネクタ(図示略)が接続されるコネクタ部64が固定されるとともに、該コネクタ部64はカバー62の外部に露出している。そして、外部コネクタから供給される電源が回路基板63を介して電機子巻線17に供給されることにより、ロータ15が回転するようになっている。
【0036】
ここで、本実施形態のステータコア16の外周と、第1フレーム11及び第2フレーム12の外周とには、基準となる周方向位置に径方向外側に開口した周方向位置決め凹部71〜73が形成されている。
【0037】
詳しくは、図3(a)、図3(b)及び図5に示すように、まずステータコア16の前記円弧凹部16dの内の1つであって、前記締結部材収容凹部16eとは90度離間した位置の1つの円弧凹部16dが周方向位置決め凹部71とされている。
【0038】
また、図2図3(a)、及び図4に示すように、第1フレーム11の周方向位置決め凹部72は、ステータコア16の周方向位置決め凹部71と軸方向に連続した(延長した)同形状の凹部となるように形成されている。
【0039】
また、図3(a)、及び図4に示すように、第2フレーム12の周方向位置決め凹部73は、ステータコア16の周方向位置決め凹部71と軸方向に連続した(延長した)同形状の凹部となるように形成されている。
【0040】
これにより、ステータコア16と第1フレーム11と第2フレーム12とを(大まかに周方向の位置決めを行って)軸方向に組み付けた後に、それらの周方向位置決め凹部71〜73に軸方向に跨って単一の治具74を挿入することで挿入された部材の周方向の(相対的な)位置決めを高精度に行うことが可能とされている。なお、治具74は、先端が周方向位置決め凹部71〜73にほぼ隙間無く収容されるように軸方向から見て円弧形状に形成されるとともに軸方向長さが周方向位置決め凹部71〜73の一連の長さ以下に設定されている。
【0041】
また、図5に示すように、本実施形態のステータコア16と第1フレーム11とには、互いの周方向の相対位置が予め設定された位置でのみ軸方向の組み付けを可能とする誤組付け規制部としての延出部81と凸部82とが設けられている。
【0042】
即ち、本実施形態では、巻線端部部位17aの一方の群Z1と他方の群Z2とが180度離間して配置されており、延出部81と凸部82とが設けられていない構成では第1フレーム11に対してステータ13が180度間違えた相対位置で誤組付けされる可能性があるが、これを不能とすべく、延出部81と凸部82とが設けられている。
【0043】
具体的には、ステータコア16の延出部81は、前記端部コアシート66にのみ設けられ、端部コアシート66の周方向に隣り合う(90度間隔の)2つのコア外周突出部16cから径方向外側に更に延出して形成されている。
【0044】
また、第1フレーム11の凸部82は、前記予め設定された位置以外で前記延出部81と軸方向に衝突して軸方向の組み付けを不能とすべく軸方向に凸設されている。
即ち、ステータ13(ステータコア16)が第1フレーム11に対して180度間違えた相対位置で巻線端部部位17aが前記絶縁性部材Rを貫通するように組み付けられると、凸部82と延出部81とが軸方向に衝突して軸方向の組み付けを阻止する構成とされている。
【0045】
そして、図5及び図6に示すように、ステータ13(ステータコア16)が第1フレーム11に対して予め設定された正常な相対位置で巻線端部部位17aが前記絶縁性部材Rを貫通するように組み付けられると、延出部81と凸部82とが衝突せずに軸方向の組み付けが許容される構成とされている。
【0046】
次に、上記のように構成されるモータ10の製造方法及びその作用について説明する。
本実施形態のモータ10の製造方法は、第1フレーム11における巻線端部部位17aが貫通される(嵌着孔11aが形成された)位置に絶縁性部材Rを固定する工程を含んでいる。また、モータ10の製造方法は、その第1フレーム11とステータ13(ステータコア16)とを軸方向に相対移動させて、巻線端部部位17aの先端部17bにて絶縁性部材R(の薄肉部Rc)を突き破って該絶縁性部材Rに貫通孔Raを形成しつつ、巻線端部部位17aを、第1フレーム11を貫通するように設ける工程を含んでいる。これにより、巻線端部部位17aの先端部17bは、第1フレーム11の外部に導出され、後に回路基板63と電気的に接続可能とされる。
【0047】
また、本実施形態のモータ10の製造方法は、第1フレーム11とステータコア16と第2フレーム12とを軸方向に相対移動させて軸方向に組み付け、その後、ステータコア16の外周と第1フレーム11及び第2フレーム12の外周とに形成された周方向位置決め凹部71〜73に軸方向に跨って治具74を挿入する工程を含んでいる。そして、その状態でスルーボルト14にてステータコア16を軸方向に挟んだ状態の第1フレーム11と第2フレーム12とを締結する。これにより、例えば、ステータコア16と第2フレーム12とが僅かに周方向にずれており、スルーボルト14が第2フレーム12の第2締結穴33aに挿入されずに第2ボルト締結部33に衝突してしまうといったことが防止される。
【0048】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)第1フレーム11における巻線端部部位17aが貫通される位置に固定される絶縁性部材Rを備え、絶縁性部材Rは、巻線端部部位17aの先端部17bに突き破られた状態の貫通孔Raを有する。よって、高い寸法精度を必要とせずに(容易に組み付けることができるとともに)貫通孔Raの大きさを最小限として該貫通孔Raを介してモータ10の内部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
【0049】
(2)巻線端部部位17aの先端部17bは、尖った形状に形成されるため、絶縁性部材Rを小さな力で且つ綺麗に(貫通孔Raが大きくならないように)に突き破ることができる。
【0050】
(3)絶縁性部材Rにおける巻線端部部位17aの先端部17bに突き破られる部位は、軸線方向の肉厚が他の部位に比べて薄い薄肉部Rcとされるため、巻線端部部位17aの先端部17bによって小さな力で且つ綺麗に(貫通孔Raが大きくならないように)に突き破ることができる。
【0051】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の絶縁性部材Rは、巻線端部部位17aの先端部17bに突き破られる形状のものであれば、他の形状や構成としてもよい。
【0052】
例えば、図9に示すように、上記実施形態の傾斜面Reが形成されていない絶縁性部材R2としてもよい。
また、例えば、図10に示すように、上記実施形態の薄肉部Rcが形成されていない絶縁性部材R3としてもよい。
【0053】
また、絶縁性部材R(R2,R3)は、樹脂材よりなるものとしてもよい。
・上記実施形態では、巻線端部部位17aの先端部17bは、1つの傾斜した平面を有することで尖った形状に形成されているとしたが、これに限定されず、他の尖った形状としてもよい。
【0054】
例えば、図11に示すように、2つ以上の傾斜した(互いに近づく)平面を有することで尖った形状に形成された先端部17cを有した巻線端部部位17aとしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…モータ、11…第1フレーム、13…ステータ、16…ステータコア、16b…ティース、17…電機子巻線、17a…巻線端部部位、17b,17c…先端部、R,R2,R3…絶縁性部材、Ra…貫通孔、Rc…薄肉部。
図1
図2
図3
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図5
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図11