(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記他の移動端末から受信される信号の受信強度が閾値を上回るか否かを判定し、前記他の移動端末から受信される信号の受信強度が閾値を上回ることに基づき、前記他の移動端末の位置情報を用いた前記基準位置の更新を制御する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の移動端末。
前記制御部は、前記移動端末の位置情報の信頼度情報が示す信頼度より、前記他の移動端末の位置情報の信頼度情報が示す信頼度の方が高いことに基づき、前記他の移動端末の位置情報を用いた前記基準位置の更新を制御する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の移動端末。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成または論理的意義を有する複数の構成を、必要に応じて移動端末20A、20Bおよび20Cのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。例えば、移動端末20A、20Bおよび20Cを特に区別する必要が無い場合には、各移動端末を単に移動端末20と称する。
【0021】
<1.移動通信システムの構成>
図1は、本発明の実施形態による移動通信システムの構成を示す説明図である。
図1に示したように、本発明の実施形態による移動通信システムは、複数の移動端末20A〜20Cと、複数の固定ノード30Aおよび30Bと、を有する。
【0022】
固定ノード30は、固定位置に設置されたノードであり、自身の設置位置を示す位置情報を保持している。固定ノード30は、無線通信機能を有し、例えば自身の位置情報を含むビーコンを定期的に送信する。このような固定ノード30は、公衆の無線LAN(Local Area Network)アクセスポイントであってもよい。
【0023】
移動端末20は、ユーザによって携帯される情報処理装置である。例えば、
図1に示した例では、ユーザUAが移動端末20Aを携帯し、ユーザUBが移動端末20Bを携帯し、ユーザUCが移動端末20Cを携帯している。移動端末20は、スマートフォン、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、携帯用ゲーム機器、およびウェアラブル端末などの携帯型の情報処理装置であってもよい。
【0024】
また、移動端末20は、固定ノード30および他の移動端末20と通信する無線通信機能を有する。本実施形態による移動端末20は、基準位置に対して位置の変化量を累積することで現在位置を推定するPDR機能を有する。PDR機能での位置推定では誤差が累積されるので、移動端末20は、固定ノード30からビーコンが受信されると、当該ビーコンに含まれる位置情報を用いて基準位置を更新し、更新後の基準位置に対して位置の変化量を累積する。
【0025】
しかし、固定ノード30の設置には、場所的およびコスト的な制限がある。固定ノード30の設置密度に不足があると、固定ノード30からのビーコンのみに基づいて基準位置を更新する方法では、基準位置の更新の時間間隔が長期化し、誤差の累積量が大きくなってしまことが懸念された。
【0026】
本件発明者は、上記事情を一着眼点にして本発明の実施形態を創作するに至った。本発明の実施形態によれば、固定ノード30との通信以外の機会でも位置情報を更新することが可能である。結果、現在位置の推定精度を向上することが可能である。以下、このような本発明の実施形態の構成および動作を順次詳細に説明する。
【0027】
<2.移動端末の構成>
図2は、本実施形態による移動端末20の構成を示す説明図である。
図2に示したように、本実施形態による移動端末20は、センサ部220と、変化量計算部230と、基準情報管理部240と、位置推定部250と、精度特定部260と、送信部272と、受信部274と、表示部276と、バッテリ278と、を備える。
【0028】
(センサ部)
センサ部220は、移動端末20の動き、移動に関する情報を検出する。センサ部220は、例えば
図2に示したように、加速度センサ222、角速度センサ224および地磁気センサ226を有してもよい。加速度センサ222は加速度に関する情報を取得し、角速度センサ224は角速度に関する情報を取得し、地磁気センサ226は方位に関する情報を取得する。
【0029】
(変化量計算部)
変化量計算部230は、センサ部220から供給されるセンサ情報を用いて、移動端末20の位置の変化量を定期的に計算する。ここで、位置の変化量は、変化量計算部230が前回に位置の変化量を計算してから、次に位置の変化量を計算するまでの間での、移動端末20の位置の変化量である。
【0030】
(基準情報管理部)
基準情報管理部240は、位置推定部250による位置推定に用いられる基準情報を管理する。具体的には、基準情報管理部240は、
図2に示したように、基準情報記憶部242および更新判定部244を有する。
【0031】
基準情報記憶部242は、基準情報として、基準位置を示す基準位置情報、および基準精度を示す基準精度情報を記憶する。更新判定部244は、これら基準情報を更新するか否かを判定し、判定結果に応じて基準情報の更新を制御する制御部の一例である。
【0032】
例えば、更新判定部244は、固定ノード30から閾値を上回る受信電力でビーコンが受信された場合、当該ビーコンに含まれる位置情報で基準位置情報を更新する。受信電力が高いほど固定ノード30と移動端末20の距離が小さいので、受信電力が閾値を上回る場合に固定ノード30の位置情報で基準位置情報を更新することで、基準位置情報の信頼性を向上することができる。すなわち、受信電力の閾値は、移動端末20と他の移動端末20との距離による位置のずれが実用上問題ない程度の近さの場合の受信電力値が設定される。なお、固定ノード30の位置情報を用いた基準位置情報の更新を、以下では、第1の更新と称する場合がある。
【0033】
基準精度情報は、基準位置情報の信頼度を示す情報である。更新判定部244は、第1の更新と併せて、基準精度情報を所定値に設定する。
【0034】
さらに、本実施形態による更新判定部244は、他の移動端末20から受信されたビーコンに基づいて基準情報を更新するか否かの判定も行う。他の移動端末20から受信されたビーコンに基づく基準情報の更新については、詳細に後述する。
【0035】
(位置推定部)
位置推定部250は、移動端末20の位置の変化量を基準位置に累積して移動端末20の位置情報を取得する位置情報取得部である。具体的には、位置推定部250は、基準情報記憶部242に記憶されている基準位置情報に、変化量計算部230により計算された位置の変化量を累積することで、移動端末20の現在位置を推定する。
【0036】
(精度特定部)
精度特定部260は、位置推定部250により推定される位置情報の精度情報(信頼度情報)を特定する信頼度取得部の一例である。上述したように、PDR機能による位置推定では、時間の経過に従って誤差が累積する。このため、精度特定部260は、前回の基準位置情報の更新からの経過時間に基づいて精度情報を推定してもよい。
【0037】
(送信部)
送信部272は、他の移動端末20または固定ノード30に信号を送信する。特に、本実施形態による送信部272は、位置推定部250により推定された移動端末20の位置情報、および精度特定部260により特定された精度情報を含むビーコンを送信する。
【0038】
図3は、ビーコンの構成例を示す。
図3に示したように、ビーコンは、ヘッダおよびペイロードからなる。ヘッダには、プリアンブルおよび制御情報などが格納される。ペイロードには、移動端末20の位置情報および精度情報が含まれる。ビーコンは、通信方式に応じて決められるタイミングで送信される。
【0039】
(受信部)
受信部274は、他の移動端末20または固定ノード30から送信された信号を受信する。例えば、受信部274は、固定ノード30から固定ノード30の位置情報を含むビーコンを受信する固定ノード情報取得部、および、他の移動端末20から他の移動端末20の位置情報および精度情報を含むビーコンを受信する他端末情報取得部、としての機能を有する。
【0040】
(表示部)
表示部276は、多様な情報を表示する。例えば、表示部276は、位置推定部250により推定された移動端末20の位置情報を表示してもよい。移動端末20のユーザは、表示部276を目視することで現在位置を把握することが可能となる。
【0041】
(バッテリ)
バッテリ278は、汎用的な二次電池である。移動端末20は、バッテリ278に蓄積された電力に基づいて動作する。
【0042】
<3.位置推定の精度について>
以上、本実施形態による移動端末20の構成を説明した。続いて、位置推定部250により推定される移動端末20の位置情報の精度について説明する。
【0043】
移動端末20の実際の位置は、位置推定部250により推定された位置と必ずしも一致しない。すなわち、移動端末20は、実際には、位置推定部250により推定された位置(x’、y’)の近傍の位置(x、y)に存在する確率がある。移動端末20が位置(x、y)に存在する確率は、位置推定部250により推定された位置(x’、y’)を用いて、以下の数式1に示す標準二変量正規分布の確率密度関数で表現される。なお、数式1ではx座標およびy座標における確率密度関数を示しているが、高さ方向が加わった三次元での確率密度関数が適用されてもよい。
【0045】
数式1において、σxはx座標における誤差の標準偏差であり、σyはy座標における誤差の標準偏差である。上述したように、PDR機能による位置推定では時間の経過に従って誤差が累積するので、標準偏差σxおよびσyは、基準位置情報の更新からの時間の経過と共に値が大きくなる任意の関数fx(t)、fy(t)に従って特定される。
【0046】
例えば、標準偏差σxおよびσyは、以下の数式2に示されるように時間t(第1の更新からの経過時間)の一次関数であってもよいし、以下の数式3に示されるように時間tの二次関数であってもよい。下記数式において、a〜fは比例定数である。具体的な関数は、センサの性能をもとに実験的に設計され得る。
【0049】
図4は、確率密度関数p(x、y)の時間の経過に伴う変化を示す説明図である。上述したように、標準偏差σxおよびσyは基準位置情報の更新からの時間の経過と共に大きくなるので、確率密度関数p(x、y)のピークは、時間の経過と共に下がり、確率分布が全体的に分散する。この確率密度関数p(x、y)は、位置推定部250により推定される位置情報の信頼度、精度を示す指標と言える。
【0050】
以上より、精度特定部260は、位置推定部250により推定される位置情報の精度情報として、確率密度関数p(x、y)または確率密度関数p(x、y)のピーク値を特定してもよい。
【0051】
または、確率密度関数p(x、y)および確率密度関数p(x、y)のピーク値は標準偏差σxおよびσyに依存するので、精度特定部260は、精度情報として、標準偏差σxおよびσyを特定してもよい。さらに、標準偏差σxおよびσyは第1の更新からの経過時間に依存するので、精度特定部260は、精度情報として、第1の更新からの経過時間を特定してもよい。基準位置情報の更新からの経過時間が精度情報として用いられる場合、精度情報のデータ量が小さいので、精度情報の通信のためのトラフィック量が抑制される。精度特定部260により特定された精度情報は、上述したように、位置情報と共に送信部272から送信される。
【0052】
<4.基準位置情報の更新判定>
更新判定部244は、他の移動端末20から受信されたビーコンに含まれる位置情報を用いて基準位置情報を更新するか否かを、ビーコンに含まれる精度情報に基づいて判定する。具体的には、更新判定部244は、他の移動端末20から受信された精度情報の方が、精度特定部260により特定された精度情報よりも高い精度を示す場合、他の移動端末20から受信されたビーコンに含まれる位置情報で基準位置情報を更新(上書き)すると判定する。なお、他の移動端末20から受信されたビーコンに含まれる位置情報を用いた基準位置情報の更新を、以下では第2の更新と称する場合がある。
【0053】
例えば、第1の更新からの経過時間が精度情報として利用される場合、更新判定部244は、他の移動端末20から受信されたビーコンに含まれる経過時間と、精度特定部260により特定された経過時間とを比較する。そして、更新判定部244は、他の移動端末20から受信されたビーコンに含まれる経過時間の方が精度特定部260により特定された経過時間より短い場合に、他の移動端末20から受信されたビーコンに含まれる位置情報で基準位置情報を更新する。
【0054】
ここで、他の移動端末20から受信された位置情報にも誤差が含まれる。このため、他の移動端末20から受信された位置情報で基準位置情報が更新された後に、更新後の基準位置情報を用いて位置推定部250が移動端末20の位置を推定する場合、推定結果には、基準位置情報に含まれる誤差と、基準位置情報の更新後に生じた誤差の合計が含まれることになる。
【0055】
従って、更新判定部244は、第2の更新の際に、他の移動端末20から受信されたビーコンに含まれる経過時間を基準精度情報に設定する。その後、精度特定部260は、第2の更新からの経過時間と、基準精度情報が示す時間(設定時間)との合計時間を精度情報として特定する。ここで、基準精度情報が示す時間は、他の移動端末20において第1の更新が行われてから、移動端末20により第2の更新が行われるまでの時間である。従って、上記合計時間は、他の移動端末20において第1の更新が行われたタイミングから現在時点までの経過時間に相当する。このような合計時間を精度特定部260が精度情報として特定することにより、精度情報に、基準位置情報に含まれる誤差と、基準位置情報の更新後に生じた誤差の双方を反映させることが可能となる。なお、本明細書においては、上記の合計時間を、便宜上、第1の更新からの経過時間と称する場合もある。
【0056】
結果、移動端末20Aが移動端末20Bから受信した位置情報で基準位置情報を更新した後、移動端末20Cが移動端末20Aから受信した位置情報で基準位置情報を更新するというような、移動端末20間での連鎖的な基準位置情報の更新を適切に実現することが可能となる。なお、更新判定部244は、第1の更新の際には、基準精度情報を所定値(例えば、0)に更新してもよい。
【0057】
変形例として、位置推定部250が推定する精度情報、および受信部274により他の移動端末20から受信される精度情報は、確率密度関数p(x、y)のピーク値、または標準偏差σxおよびσyなどであってもよい。この場合でも、第1の更新からの経過時間が精度情報に付加されることが望ましい。かかる構成により、更新判定部244が第2の更新を行った後に、精度特定部260が、第2の更新の際に他の移動端末20から受信された精度情報に付加された経過時間と、第2の更新からの経過時間との合計時間に基づいて、標準偏差σxおよびσyおよび確率密度関数p(x、y)のピーク値などを特定することが可能である。
【0058】
<5.動作>
以上、本発明の実施形態による移動端末20の構成を説明した。続いて、
図5を参照し、本発明の実施形態による移動端末20の動作を整理する。
【0059】
図5は、本発明の実施形態による移動端末20の動作を示すフローチャートである。
図5に示したように、まず、基準情報記憶部242が基準情報を記憶している場合(S304/Yes)、位置推定部250は、基準情報記憶部242に記憶されている基準位置情報に、変化量計算部230により計算された位置の変化量を累積することで、移動端末20の位置情報を推定する(S308)。また、精度特定部260は、位置推定部250により推定される位置情報の精度情報を特定する(S312)。そして、送信部272が、位置推定部250により推定された移動端末20の位置情報、および精度特定部260により特定された精度情報を含むビーコンを送信する(S316)。
【0060】
その後、ビーコンが受信されると(S320/Yes)、更新判定部244は、ビーコンの受信電力が閾値を上回るか否かを判定する(S324)。ビーコンの受信電力が閾値以下である場合(S324/No)、S308からの処理が繰り返される。一方、ビーコンの受信電力が閾値を上回る場合(S324/Yes)、更新判定部244は、ビーコンの送信元が固定ノード30または他の移動端末20のいずれであるかに応じて異なる処理を行う。
【0061】
具体的には、ビーコンの送信元が固定ノード30である場合(S328/固定ノード)、更新判定部244は、ビーコンに含まれる位置情報で基準情報記憶部242の基準位置情報を更新し(S332)、基準精度情報に所定値を設定する(S336)。
【0062】
一方、ビーコンの送信元が他の移動端末20である場合(S328/移動端末)、更新判定部244は、他の移動端末20から受信された精度情報の方が、精度特定部260により特定された精度情報よりも高い精度を示すか否かを判定する(S340)。他の移動端末20から受信された精度情報の方が精度特定部260により特定された精度情報よりも高い精度を示す場合(S340/Yes)、更新判定部244は、他の移動端末20から受信されたビーコンに含まれる位置情報で基準位置情報を更新する(S344)。さらに、更新判定部244は、他の移動端末20から受信されたビーコンに含まれる精度情報を用いて基準精度情報を設定する(S348)。他の移動端末20から受信された精度情報の方が精度特定部260により特定された精度情報よりも低い精度を示す場合(S340/No)、更新判定部244は、基準位置情報および基準精度情報の更新を行わない。その後、S308からの処理が繰り返される。ここで、精度情報を受信した電波の到来方向と、相対距離が推定できれば、受信した位置情報を前記到来方向に前記相対距離分ずらすことで、位置情報を補正しても良い。例えば、アレイアンテナを用いれば受信時刻の差異から電波の到来方向を推定することができる。また相対距離は、送信電力を予め決めておき距離と受信電力強度との関係をテーブルに記憶しておくことにより、受信電力値に基づき相対距離を推定することができる。
【0063】
なお、S304において基準情報記憶部242が基準情報を記憶していない場合(S304/No)、移動端末20は、他の移動端末20または固定ノード30からビーコンが受信されるまで待機する(S352/No)。他の移動端末20または固定ノード30からビーコンが受信されると、S324以降の処理が進められる。
【0064】
ここで、
図6〜
図8を参照し、本実施形態による移動端末20の動作をより具体的に説明する。
【0065】
図6〜
図8は、移動端末20間の通信の具体例を示す説明図である。
図6〜
図8においては、固定ノード30の位置情報を用いた基準位置情報の更新からの経過時間(分)が精度情報として用いられる例を示す。
【0066】
図6に示した例では、11時0分の時点で、移動端末20Aが固定ノード30から受信したビーコンに基づき、基準位置情報を更新する。このため、11時0分の時点で、移動端末20Aの精度情報が0(分)となる。なお、11時0分の時点で、移動端末20Bの精度情報が8(分)であり、移動端末20Cの精度情報が15(分)であるものとする。
【0067】
その後、
図7に示したように、11時5分の時点で、移動端末20Aと移動端末20Bが近づき、移動端末20Aと移動端末20Bが互いのビーコンを送受信する。この時、移動端末20Aの精度情報が5(分)であり、移動端末20Bの精度情報が13(分)であり、移動端末20Aの精度情報の方が移動端末20Bの精度情報より高い。このため、移動端末20Bは、移動端末20Aから受信されたビーコンに含まれる位置情報を用いて基準位置情報を更新する。また、移動端末20Bは、移動端末20Aの精度情報である5(分)を基準精度情報に設定する。
【0068】
さらに、
図8に示したように、11時10分の時点で、移動端末20Bと移動端末20Cが近づき、移動端末20Bと移動端末20Cが互いのビーコンを送受信する。この時、移動端末20Bの精度情報が10(分)であり、移動端末20Cの精度情報が25(分)であり、移動端末20Bの精度情報の方が移動端末20Cの精度情報より高い。このため、移動端末20Cは、移動端末20Bから受信されたビーコンに含まれる位置情報を用いて基準位置情報を更新する。また、移動端末20Cは、移動端末20Bの精度情報である10(分)を基準精度情報に設定する。
【0069】
このように、各移動端末20は、他の移動端末20から受信されるより確からしい位置情報を用いて基準位置情報を更新することができる。従って、本実施形態によれば、基準位置情報を更新できる機会が増えるので、移動端末20による位置の推定精度を向上することが可能である。
【0070】
<6.応用例>
以上、本発明の実施形態を説明した。上述した本発明の実施形態には、多様な応用を適用することが可能である。以下、本発明の実施形態に適用可能な応用の一例を説明する。
【0071】
位置推定部250は、加速度センサ222から得られる情報に基づいてユーザの進行距離を計算し、角速度センサ224から得られる情報に基づいてユーザの進行方向を計算できる。上記の進行距離の誤差および進行方向の誤差は、正規分布で近似できることが実験的に分かっている。
【0072】
位置推定部250は、進行距離Dおよび進行方向Eを用いて、移動端末20の位置(x’、y’)を下記数式に従って推定することができる。
【0074】
数式4によれば、位置推定部250による位置推定の精度は、進行距離Dおよび進行方向Eの精度に依存する。ここで、進行距離Dおよび進行方向Eの精度低下の程度は、ユーザの移動履歴によっても異なる。例えば、角速度センサ224により検出される角速度に関する情報には、角速度の変化が大きいほど誤差が加わり易い。
【0075】
図9は、進行方向の変化角度と、発生する誤差量の関係を模式的に示す説明図である。
図9に示したように、進行方向の変化角度の絶対値が大きくなるほど、発生する誤差の量は例えば2次関数的に増加する。このため、ユーザが進行方向を変えると、ユーザが真っ直ぐ歩行している場合よりも、誤差が加わり易い。移動速度についても同様であり、移動速度が速いほど、誤差が加わり易いと考えられる。
【0076】
そこで、応用例による精度特定部260は、第1の更新からの経過時間に加え、ユーザの進行方向の変更履歴や移動速度などの移動履歴に基づいて精度情報を特定する。例えば、精度特定部260は、数式2または数式3などの右辺に、ユーザの移動履歴に基づいて計算される項が加えられた数式で表現される標準偏差を精度情報として特定してもよい。
【0077】
上記項は、進行方向の変化角度および進行方向の変化回数が大きいほど大きな値を示す項であることが望ましい。例えば、上記項は、ユーザの進行方向の変化角度が閾値を上回った回数と所定の計数との乗算であってもよい。建物においては曲がり角が90度であることが多いので、ユーザが曲がり角を曲がった回数を用いるという観点から、上記閾値は90度であってもよいし、ユーザが緩やかに曲がり角を曲がることもあり得ることを考慮して、上記閾値は90度未満の例えば80度に設定されてもよい。または、上記項は、進行方向の変化角度に応じた重みの累積値を示してもよい。
【0078】
このような応用例によれば、精度特定部260が精度情報をより適切に特定することが可能となるので、更新判定部244も基準位置情報の更新に関する判定をより適切に行うことが可能となる。なお、移動距離についても同様に単位時間当たりの移動距離が大きいほど誤差が加わり得るので、精度特定部260は、移動距離の履歴にも基づいて精度情報を特定してもよい。
【0079】
<7.ハードウェア構成>
以上、本発明の実施形態を説明した。上述した位置推定および更新判定などの情報処理は、ソフトウェアと、以下に説明する移動端末20のハードウェアとの協働により実現される。
【0080】
図10は、移動端末20のハードウェア構成を示した説明図である。
図10に示したように、移動端末20は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、入力装置208と、出力装置210と、ストレージ装置211と、通信装置215とを備える。
【0081】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って移動端末20内の動作全般を制御する。また、CPU201は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM202は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバスにより相互に接続されている。CPU201、ROM202およびRAM203とソフトウェアとの協働により、変化量計算部230、基準情報管理部240、位置推定部250、および精度特定部などの機能が実現され得る。
【0082】
入力装置208は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。移動端末20のユーザは、該入力装置208を操作することにより、移動端末20に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0083】
出力装置210は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置およびランプなどの表示装置を含む。さらに、出力装置210は、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置を含む。例えば、表示装置は、撮像された画像や生成された画像などを表示する。一方、音声出力装置は、音声データ等を音声に変換して出力する。
【0084】
ストレージ装置211は、本実施形態にかかる移動端末20の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置211は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。このストレージ装置211は、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0085】
通信装置215は、他の装置と通信するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置215は、無線LAN(Local Area Network)対応通信装置であっても、LTE(Long Term Evolution)対応通信装置であっても、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。
【0086】
<8.むすび>
以上説明したように、本発明の実施形態による移動端末20は、他の移動端末20から受信されるより確からしい位置情報を用いて基準位置情報を更新することができる。従って、本実施形態によれば、基準位置情報を更新できる機会が増えるので、移動端末20による位置の推定精度を向上することが可能である。
【0087】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0088】
例えば、上記実施形態では移動端末20が位置推定機能を有する例を説明したが、移動端末20は位置推定機能を有さなくてもよい。この場合、移動端末20がセンサ部220により得られた情報を固定ノード30に送信し、固定ノード30が移動端末20から受信した情報に基づいて移動端末20の位置情報を推定し、固定ノード30が当該位置情報を移動端末20に例えばビーコンにより通知してもよい。
【0089】
また、固定ノード30は、ビーコンを送信するビーコン送信部に加え、移動端末20から移動端末20の位置情報を受信する受信部、および移動端末20の位置情報を表示する表示部を有してもよい。
【0090】
また、各移動端末20が精度情報として確率密度関数を送信する場合、各移動端末20は、他の複数の移動端末20から受信される確率密度関数を利用する統計的処理により、移動端末20の位置を推定することも可能である。例えば、統計的処理として最尤推定が挙げられ、最尤推定によれば、複数の確率密度関数から現在の尤もらしい移動端末20の位置を推定することができる。
【0091】
また、上記では正確な位置情報を提供する装置の一例として固定ノード30を説明したが、正確な位置情報を提供する装置は固定ノード30に限定されない。例えば、GPS機能を有する装置、位置が既知である複数の装置から受信される電波の受信強度に基づいて自身の位置を推定する機能を有する装置、などを、正確な位置情報を提供する装置として本発明の実施形態に適用することも可能である。
【0092】
また、本明細書の移動端末20の処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図またはフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、移動端末20の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0093】
また、移動端末20に内蔵されるCPU201、ROM202およびRAM203などのハードウェアに、上述した移動端末20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。