(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態による建設機械について
図1から
図12に基づき説明する。以下、本発明に係る建設機械の一例として
図1に示す油圧ショベル1を例示する。なお、説明の便宜上、機械の前後方向及び左右方向を
図1、
図2のように定義する。
【0026】
図1に示すように、油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2と上部旋回体3とを備えて構成される。上部旋回体3は、下部走行体2上に搭載されており、下部走行体2に対して鉛直軸まわりに旋回することが可能である。上部旋回体3及び下部走行体2は、本発明に係る機械本体の一例である。
【0027】
図2に示すように、上部旋回体3には、左側センサ31Lと、右側センサ31Rと、後方センサ31Bとが備えられている。左側センサ31Lは上部旋回体3の左側面に設けられており、右側センサ31Rは上部旋回体3の右側面に設けられている。また、後方センサ31Bは、上部旋回体3の後面に設けられている。
【0028】
各センサ31L,31R,31Bは、何れも3次元測距センサであり、対象物に投射した赤外線レーザが往復する時間に基づいて距離を算出する。各センサ31L,31R,31Bは、本発明に係る障害物検知センサの一例である。
【0029】
また、各センサ31L,31R,31Bの他、上部旋回体3には、運転室、アタッチメント、エンジン等も備えられている。
【0030】
図3に示すように、油圧ショベル1は、各センサ31L,31R,31Bに加え、動作状態検知部35、GPS受信部37、制御部4、表示部6、通信部7を更に備えている。
【0031】
動作状態検知部35は、運転室に設けられる操作レバーの状態を検知することにより、油圧ショベル1が「旋回」、「走行」、「旋回+走行(旋回かつ走行)」、「その他」の何れの状態であるかを検知する。
【0032】
ここでいう「旋回」とは、下部走行体2に対して上部旋回体3が旋回している状態を意味する。「走行」とは、左右少なくとも一方のクローラが動作している状態を意味する。「旋回+走行」とは、旋回及び走行の動作が同時に行われている状態を意味する。「その他」とは、旋回及び走行のうち何れの動作も行われていない状態であり、アイドリング状態やバケット等の作業アタッチメントを動かしている状態を含む。動作状態検知部35は、本発明に係る動作状態情報取得手段の一例である。
【0033】
GPS受信部37は、GPS衛星により測位された位置情報や方位情報を受信する。GPS受信部37は、本発明に係る位置情報受信手段の一例である。
【0034】
制御部4は、処理部41、記憶部42及び計時部43を有する。処理部41は、例えばCPU、RAM、ROM等で構成され、
図5から
図8のフローチャートの処理(後述)を含む各種の処理を制御する。
【0035】
記憶部42は、後述のログデータテーブルTB1(
図9参照)を記憶する。ログデータテーブルTB1は、油圧ショベル1の周囲で検知された障害物に関する情報をログデータとして記録するためのテーブルである。ログデータの記録処理については後に詳述する。また、記憶部42は、自機の号機情報(号機番号)を記憶している。記憶部42は、フラッシュメモリ等、電源オフになっても記憶内容を保持する不揮発性メモリである。なお、記憶部42は、本発明に係る記憶手段の一例である。
【0036】
計時部43は、処理部41からの出力指示に応答して、現在時刻を出力する。計時部43は、本発明に係る時刻情報取得手段の一例である。
【0037】
表示部6は、運転室に設けられる公知のディスプレイであり、各種画面を表示する。通信部7は、携帯電話通信網等のネットワークNWを介して外部とネットワーク通信を行う。
【0038】
また、サーバ60がネットワークNWに接続されている。サーバ60は、ハードウェアとしては公知のサーバの構成を有する。サーバ60は、例えば建設機械メーカーが管理するサーバであり、油圧ショベル1を含む建設機械から送信されてくるログデータを受信して記憶することが可能である。
【0039】
次に、油圧ショベル1から送信された情報をサーバ60から受信して表示手段に表示を行う情報処理装置50について説明する。情報処理装置50は、例えば公知のパソコンであり、工事を施工する会社(以下、「施工会社」という)等に設置されている。
【0040】
図3に示すように、情報処理装置50は、制御部51、通信部52、入力部53、表示部54、インターフェース(I/F)55を備えている。制御部51は、例えばCPU、RAM、ROM等で構成され、各種の演算や入出力装置の制御を行う。通信部52は、ネットワークNWを介してサーバ60とネットワーク通信を行うことができる。入力部53はキーボードやマウス等であり、表示部54は液晶ディスプレイ等である。情報処理装置50は、I/F55を介してプリンタ56と接続されている。なお、情報処理装置50はタブレット端末やスマートフォン等であってもよい。
【0041】
以上、
図3に基づき説明した油圧ショベル1、サーバ60及び情報処理装置50が、障害物監視システムを構成する。
【0042】
続いて、
図4を参照しつつ、油圧ショベル1の周囲に設定される監視領域300について説明する。監視領域300は、油圧ショベル1に接近する物や人を障害物として検知するために予め設定され、記憶部42に記憶されている。記憶部42は、本発明に係る「監視領域設定手段」の一例である。
【0043】
ここでは、オペレータから直接視において確認不可能な部分に監視領域300が設定されている。ただし、これに限定されず、オペレータから直接視において確認可能な部分についても監視領域を設定してもよい。
【0044】
監視領域300は、停止領域310(310L,310R,310B)と減速領域311(311L,311R,311B)とから構成される。停止領域310は、油圧ショベル1の近傍に設けられ、この領域に障害物が進入すると機械の動作を停止する。減速領域311は、停止領域310の外側に設けられ、この領域に障害物が進入すると機械の動作を減速する。
【0045】
停止領域310L及び減速領域311Lは、油圧ショベル1の左側方に設定される領域であり、左側センサ31Lによるセンシング対象の領域である。停止領域310R及び減速領域311Rは、油圧ショベル1の右側方に設定される領域であり、右側センサ31Rによるセンシング対象の領域である。停止領域310B及び減速領域311Bは、油圧ショベル1の後方に設定される領域であり、後方センサ31Bによるセンシング対象の領域である。
【0046】
次に、
図5から
図8を参照しながら、本実施形態によるログデータ記録処理について説明する。ログデータ記録処理は、制御部4の処理部41によって実行される。なお、以下の説明では、ステップを「S」と略する。
【0047】
オペレータが油圧ショベル1の運転を開始し、制御部4の電源がオンになると、処理部41は
図5のログデータ記録処理を開始する。まず、処理部41は、センサ31L,31R,31Bのうち何れかのセンサが障害物に反応したか否か判断する(S1)。何れかのセンサが反応したと判断した場合(S1:Yes)、センサ反応方向決定処理(S2)に進む。どのセンサも反応していないと判断した場合(S1:No)、S11に進む。
【0048】
センサ反応方向決定処理(S2)では、どのセンサ31L,31R,31Bが反応したか決定する。
【0049】
図6に示すように、S21で左側センサ31Lが反応したと判断した場合(S21:Yes)、「センサ反応方向」=「左」であると決定し、その旨のデータをRAMに記憶する(S22)。また、S21:Noの判断がなされ且つ右側センサ31Rが反応したと判断した場合(S23:Yes)、「センサ反応方向」=「右」であると決定し、その旨のデータをRAMに記憶する。一方、S23:Noと判断した場合は、「センサ反応方向」=「後」であると決定し、その旨のデータをRAMに記憶する。その後、
図5のログデータ記録処理のメインルーチンに戻る。
【0050】
次に、停止/減速領域決定処理(S3)では、
図4の停止領域310と減速領域311とのうちどちらの領域で障害物が検知されたかを決定する。
【0051】
図7に示すように、S31では、センサ31L,31R又は31Bによって検知された障害物との距離に基づき、障害物が停止領域310と減速領域311とのどちらで検知されたかを判断する。S31で、障害物が停止領域310で検知されたと判断した場合(S31:Yes)、「領域」=「停止」であると決定し、その旨のデータをRAMに記憶する(S32)。一方、障害物が減速領域311で検知されたと判断した場合(S31:No)、「領域」=「減速」であると決定し、その旨のデータをRAMに記憶する(S33)。その後、
図5のログデータ記録処理のメインルーチンに戻る。
【0052】
次に、動作状態決定処理(S4)では、動作状態検知部35により運転室の操作レバーの状態を検知し、油圧ショベル1が「旋回」、「走行」、「旋回+走行」、「その他」の何れの状態であるかを決定する。
【0053】
図8に示すように、動作状態決定処理では、まず、旋回中であるか否かを判断する(S41)。旋回中であると判断した場合(S41:Yes)、走行中である否かを判断する(S42)。S42で走行中であると判断した場合(S42:Yes)、「動作」=「旋回+走行」であると決定し、その旨のデータをRAMに記憶する(S43)。S42で走行中でないと判断した場合(S42:No)、「動作」=「旋回」であると決定し、その旨のデータをRAMに記憶する(S44)。
【0054】
一方、S41において旋回中でないと判断した場合(S41:No)、走行中である否かを判断する(S45)。S45で走行中であると判断した場合(S45:Yes)、「動作」=「走行」であると決定し、その旨のデータをRAMに記憶する(S46)。S45で走行中でないと判断した場合(S45:No)、「動作」=「その他」であると決定し、その旨のデータをRAMに記憶する(S47)。その後、
図5のログデータ記録処理のメインルーチンに戻る。
【0055】
図5のS5において、処理部41は、GPS受信部37からの信号に基づき、油圧ショベル1の位置情報を取得してRAMに記憶する。
【0056】
S6では、処理部41は、計時部43に現在時刻を出力させ、当該現在時刻を障害物が検知された時刻として取得してRAMに記憶する。なお、実際に障害物が検知された時刻からS6で現在時刻を取得するまでの時間は非常に短いためタイムラグは無視できるが、S6の処理をS1の直後に実行してもよい。
【0057】
次に、S7では、処理部41は、ステップS2で決定したセンサ反応方向と、ステップS3で決定した停止/減速領域と、ステップS4で決定した動作状態と、ステップS5で取得した位置情報と、ステップS6で取得した発生時刻とをRAMから読み出し、これらの情報と自機の号機情報とを関連付けたログデータを、
図9に示すログデータテーブルTB1に記憶(蓄積)する。上述のとおり、ログデータテーブルTB1は不揮発性の記憶部42に記憶されるため、制御部4の電源がオフになっても記憶内容が保持される。
【0058】
S8では、処理部41は、計時部43から現在時刻を取得し、0時になったか否か判断する。0時になった場合は(S8:Yes)、蓄積したデータを出力する(S9)。より具体的には、処理部41は、ログデータテーブルTB1に蓄積されたデータを通信部7からサーバ60へ送信する。すなわち、本実施形態では、ログデータが1日の間蓄積され、1日の終わりに蓄積されたログデータが出力される。
【0059】
その後、S10において、処理部41は、ログデータテーブルTB1に蓄積されたログデータをリセット(消去)して、S1に戻る。
【0060】
一方、S8で0時になっていない場合は(S8:No)、S1に戻り、引き続きセンサが反応したか否か判断する。センサが反応しない間はS1の判断を繰り返すが(S1:No、S11:No)、その間に0時になった場合は(S11:Yes)、蓄積されたデータを出力し(S9)、その後リセットする(S10)。なお、ログデータテーブルTB1に蓄積されたログデータは、本発明に係る接近情報の一例である。
【0061】
次に、情報処理装置50側で行う処理について説明する。上述した
図5のログデータ記録処理によって、前日のログデータがサーバ60に記憶されている。ここで、施工会社が油圧ショベル1を含む複数の建設機械を稼働させている場合は、複数の建設機械から送信されたログデータがサーバ60に記憶される。
【0062】
より具体的には、サーバ60には、
図10に示すログデータテーブルTB2が記憶される。ログデータテーブルTB2は、3台の建設機械(号機番号:N151,N152,N153)から送信された1日分(
図10では、2017年2月6日)のログデータを含む。このうち、号機番号N151はログデータテーブルTB1を送信した油圧ショベル1の号機番号である。従って、ログデータテーブルTB2は、ログデータテーブルTB1の情報を包含している。
【0063】
ここで、施工会社の管理者(現場監督など)は、情報処理装置50を用いてサーバ60にアクセスする。情報処理装置50は、サーバ60に記憶されたログデータテーブルTB2のデータを受信する。管理者は、入力部53に対して、全体デイリーレポートDR1(
図11)を表示させるための所定の操作を行う。情報処理装置50の制御部51は、所定の操作を受け付けると、受信したログデータテーブルTB2の情報のうち号機情報及び発生位置情報に基づき、全体デイリーレポートDR1を表示部54に表示させる。あるいは、全体デイリーレポートDR1を、プリンタ56によって用紙に印刷してもよい。
【0064】
図11の全体デイリーレポートDR1は、例えば、管理する建設機械がどこにあり、各建設機械においてどれぐらいの頻度で障害物検知が発生したかの全体感を把握するのに使用される。全体デイリーレポートDR1では、地図上に、3台の建設機械(号機番号:N151,N152,N153)を示すアイコンがそれぞれ赤色、黄色、青色の各色で表示されている。ただし、
図11では、便宜上、赤色、黄色、青色をそれぞれ、斜線、ドット、縦線の模様で表示している。
【0065】
即ち、赤色のアイコンR1,R2,R3は号機番号N151の建設機械(油圧ショベル1)を示し、黄色のアイコンY1は号機番号N152の建設機械を示し、青色のアイコンB1,B2,B3は号機番号N153の建設機械を示す。また、号機番号N151,N153の建設機械は複数のアイコンが表示されていることから、1日の間に、複数の現場で作業を行ったことが分かる。
【0066】
また、アイコンの円の大きさは、障害物検知の発生回数を示している。例えば、小サイズのアイコンR3,B2,B3が発生回数0〜1回、中サイズのアイコンR2,Y1,B1が発生回数2〜3回、大サイズのアイコンR1が発生回数4回以上を示す。
【0067】
また、全体デイリーレポートDR1には、テーブルT1が表示されている。テーブルT1には、判別色(識別色)と号機番号と積算発生回数とが、判別色によって地図上のアイコンと対応付けられた形で表示されている。
【0068】
次に、
図12の詳細デイリーレポートDR2について説明する。詳細デイリーレポートDR2は、例えば、管理者(現場監督)が、障害物検知が発生した機械について発生の原因を分析するため、当事者(オペレータ)を呼んで当時の様子をヒアリングするときの資料として使用する。
【0069】
管理者は、表示部54に表示された全体デイリーレポートDR1(
図11)上で、分析をしたい機械のアイコンを入力部53(マウスやタッチパネルなど)によって選択すると、選択された機械に関する詳細デイリーレポートDR2が表示される。あるいは、アイコンを選択するのではなく、所定の画面で号機番号を入力することにより、分析をしたい機械に関する詳細デイリーレポートDR2を表示させてもよい。ここでは、号機番号N151の建設機械を選択したとする。
【0070】
詳細デイリーレポートDR2は、反応方向・領域別チャート201と時間帯別チャート202と詳細テーブル203とを含む。
【0071】
反応方向・領域別チャート201は、ログデータテーブルTB1の情報のうちセンサ反応方向情報及び領域情報に基づき、表示される。反応方向・領域別チャート201は、各センサ31L,31R,31B、及び、停止/減速領域の各領域について、1日の間に障害物が検知された回数を、建設機械を示す画像210とともに表示する。各領域は、
図4の停止領域310L,310R,310B及び減速領域311L,311R,311Bに対応している。
【0072】
なお、反応方向・領域別チャート201の各領域は、見易いように色分けされており、例えば、停止領域310L,310R,310Bがそれぞれ濃い黄色、濃い赤色、濃い青色で表示され、減速領域311L,311R,311Bがそれぞれ淡い黄色、淡い赤色、淡い青色で表示されている。即ち、停止領域310L,310R,310Bの方が、減速領域311L,311R,311Bよりも濃い色で表示される。このように、各領域の障害物検知の回数を、建設機械を示す画像210とともに表示するため、どの領域で障害物検知が発生したのか一目で把握することができる。
【0073】
時間帯別チャート202は、ログデータテーブルTB1の情報のうち発生時刻情報及び動作情報に基づき、表示される。時間帯別チャート202は、「走行」、「旋回」、「旋回+走行」、「その他」の各動作状態について、1時間毎に区切られた時間帯毎に障害物が検知された回数を棒グラフ形式で表示する(なお、
図12では「その他」の動作状態については省略している)。即ち、時間帯別チャート202の各グラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は障害物が検知された回数を表す。
【0074】
また、時間帯別チャート202の各棒グラフにおいて、回数を示す棒は、反応方向・領域別チャート201と同じ色で色分けされている。例えば、8時台の時間帯で、左方向の停止領域(濃い黄色)で1回、及び、左方向の減速領域(淡い黄色)で1回、障害物が検知されたことが示されている。このように、反応方向・領域別チャート201と時間帯別チャート202とで、対応する色が用いられているため、両チャート間の対応関係を把握し易い。
【0075】
詳細テーブル203は、
図9のログデータテーブルTB1の内容を表示するテーブルである。詳細テーブル203は、更に詳細な情報が必要になった場合等に使用される。このため、詳細デイリーレポートDR2は、詳細テーブル203を含まなくてもよい。その場合は、実際に必要になった際に、詳細テーブル203を表示すればよい。
【0076】
なお、ここでは、全体デイリーレポートDR1(
図11)に、1台の機械について複数のアイコン(例えば、
図11のアイコンR1〜R3)が表示されている場合、何れかのアイコンを選択すると、複数の現場をまとめた形で、選択された機械に関する詳細デイリーレポートDR2が表示される。これに対して、選択されたアイコンが位置する現場のみの詳細デイリーレポートDR2が表示されるようにしてもよい。
【0077】
以上説明した本実施形態による油圧ショベル1によれば、複数のセンサ31L,31R,31Bの何れかにより障害物が検知されたことを示す接近情報(ログデータ)を、1日間、累積して記憶し、その接近情報を表示部54に表示するために出力する。これにより、表示された接近情報を関係者が確認し、オペレータに当時の状況を確認する等して、以後の作業の安全に役立てることができる。
【0078】
本実施形態による油圧ショベル1によれば、障害物が検知された時刻を時刻情報として取得し、1日間、累積して記憶された接近情報を出力する。このため、どの時刻に障害物の接近が起こったかという情報を確認することができる。
【0079】
本実施形態による油圧ショベル1によれば、停止領域と減速領域との何れで障害物が検知されたかを示す領域情報を出力する。このため、油圧ショベル1に対してどの程度まで障害物が接近したかという情報を確認することができる。
【0080】
本実施形態による油圧ショベル1によれば、位置情報を受信して出力するため、どの現場にいた機械で障害物の接近が起こったかという情報を確認することができる。
【0081】
本実施形態による油圧ショベル1によれば、全体デイリーレポートDR1では、油圧ショベル1から出力された情報に基づき、障害物が検知された号機と障害物が検知された回数とを視覚的に識別できる画像(アイコンR1〜R3,Y1,B1〜B3)を地図上に表示する。このため、どの現場においてどの号機で障害物の接近がどれぐらいの回数起こったかという情報を地図上で確認することができる。
【0082】
本実施形態による油圧ショベル1によれば、詳細デイリーレポートDR2のうち反応方向・領域別チャート201において、複数のセンサ31L,31R,31Bのうちどのセンサが反応したかというセンサ反応方向毎に、1日の間に障害物が検知された回数を、建設機械を示す画像210とともに表示する。このため、建設機械に対してどの方向で接近が起こったかという情報を視覚的に確認することができる。
【0083】
本実施形態による油圧ショベル1によれば、詳細デイリーレポートDR2の時間帯別チャート202において、障害物が検知された回数を時間帯毎に示す画像を表示する。このため、どの時間帯に障害物の接近が何回起こったかという情報を視覚的に確認することができる。
【0084】
本発明による建設機械は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0085】
(1)変形例によるログデータ記録処理について
図13を参照しながら説明する。
図13の変形例では、操作レバーからの信号に基づき、走行していない時(即ち、旋回やアイドリング時)のログデータ(接近情報)を蓄積して出力する。
【0086】
処理部41は、
図13のログデータ記録処理を開始すると、動作状態検知部35により運転室の操作レバーの状態を検知し、油圧ショベル1が走行しているか否かを判断する(S100)。走行している間は(S100:Yes)、S100の処理を繰り返し、走行を停止すると(S100:No)、S101に進む。S101,S102,S103,S105では、処理部41は、
図5のS1,S2,S3,S5と同様の処理を実行する。次に、S107でログデータを記憶(蓄積)する。
【0087】
その後、油圧ショベル1が走行しているか否かを再び判断する(S108)。走行していなければ(S108:No)、S101へ戻り、センサが反応するまで待機する(S101:No、S111:No)。S108で走行が開始されれば(S108:Yes)、それまでに蓄積されたログデータを出力し(S109)、その後リセットする(S110)。S101:No及びS111:Noで待機している間に走行が開始された場合(S111:Yes)、蓄積されたログデータがあれば(S112:Yes)、ログデータを出力し(S109)、その後リセットする(S110)。蓄積されたログデータがなければ(S112:No)、S100に戻り、走行が停止するまで待機する。
【0088】
なお、
図13の変形例では走行していない時のログデータを蓄積して出力したが、走行時に限ってログデータを蓄積して出力したり、走行も旋回もしていない時(アイドリングなど)に限ってログデータを蓄積して出力したりしてもよい。走行も旋回もしていない時のログデータを蓄積して出力すれば、移動していない油圧ショベル1の周囲を通る人の動きについての情報等を得ることができる。また、制御部4にカウンタを設けて、障害物が検知された回数をカウントしてもよい。
【0089】
本変形例による油圧ショベルによれば、動作状態情報を取得して、所定の動作状態の間、累積して記憶された接近情報を出力する。このため、どの動作状態で障害物の接近が何回起こったかという情報を確認することができる。
【0090】
(2)上記実施形態では、
図5のログデータ記録処理において、S3で停止/減速領域を取得したが、必ずしも取得しなくてもよい。また、S4で動作状態を取得したが、これも必ずしも取得しなくてもよい。この場合、側方センサ(左側センサ31L、右側センサ31R)が反応した場合は旋回動作である可能性が高く、後方センサ31Bが反応した場合は走行動作(後退動作)である可能性が高い。このため、必ずしも動作状態を取得しなくても、どの動作状態で障害物の接近が起こったかを推測することができる。
【0091】
また、S5で位置情報を取得しなくてもよい。更に、S6で発生時刻を取得しなくてもよい。ただし、計時部43が設けられていない場合は、0時になったか否かの判定ができないため、例えば、制御部4の電源オフ時に蓄積データを出力すればよい。
【0092】
(3)上記実施形態では、ログデータテーブルTB1に蓄積されたデータをサーバ60へ出力し、情報処理装置50の表示部54に表示したり、プリンタ56によって印刷することにより用紙に表示したりしたが、これに限られない。例えば、ログデータテーブルTB1に蓄積されたデータを、油圧ショベル1の運転室に設けられる表示部6に表示してもよい。この場合、運転したオペレータ自身がログデータを確認したり、別のオペレータがログデータを確認して障害物情報を共有したりすることにより、安全に役立てることができる。
【0093】
(4)上記実施形態では、ログデータテーブルTB1に蓄積されたデータを通信部7から出力したが、これに限られない。例えば、USBインターフェース等から記憶媒体にデータを出力し、これを情報処理装置50で読み込んでもよい。
【0094】
(5)上記実施形態では、左側センサ31L、右側センサ31R、後方センサ31Bという3個の障害物検知センサが設けられていたが、障害物検知センサの数や設けられる位置は限定されない。例えば、左右2個の後方センサを設けてもよい。また、油圧ショベル1の周囲に設定される監視領域300の形状も特に限定されない。
【0095】
(6)上記実施形態では、油圧ショベル1が運転されている時(制御部4の電源がオンの時)は、常時、ログデータ記録処理が実行されていた(即ち、安全機能がオンとされていた)。しかし、油圧ショベル1の周囲を頻繁に作業員が通ることが分かっている時等は全てのログデータを記憶すると煩雑となるため、一時的に安全機能をオフにできるようにしてもよい。
【0096】
(7)上記実施形態では、
図6のセンサ反応方向決定処理において、どのセンサ31L,31R,31Bが反応したか択一的に決定した。しかし、1人が側面、別の1人が後方から同時に接近する場合等、複数のセンサが同時に反応することもあり得る。このため、センサ反応方向決定処理で「センサ反応方向」=「左」及び「後方」と複数の反応方向を記憶し、各反応方向について停止/減速領域を決定し(S3)、各反応方向についてログデータを蓄積してもよい(S7)。即ち、2個のセンサが同時に反応した場合は、2個のログデータを蓄積するようにしてもよい。
【0097】
(8)上記実施形態では、障害物を検知する際に、人と物とを区別していなかったが、人と物とを区別した上でログデータとして蓄積してもよい。人と物とを区別する方法としては、赤外線カメラで障害物の温度を検出したり、画像処理で人の形を判別したりすることが考えられる。人と物とを区別して検出することにより、分析のためのより詳細な情報を得ることが可能となる。
【0098】
(9)上記実施形態の全体デイリーレポートDR1では、同じ号機を同じ色で表示することによって号機を識別していた(赤色アイコンR1〜R3,黄色アイコンY1,青色アイコンB1〜B3)。号機を識別する方法はこれに限られない。例えば、色分けをせずに、同じ号機に対応する複数のアイコンを線で繋いでもよい。
【0099】
(10)上記実施形態の全体デイリーレポートDR1では、アイコンの円の大きさによって、障害物検知の発生回数を示していた。障害物検知の発生回数を示す方法はこれに限られない。例えば、アイコンの円の大きさを変えずに、アイコンの色の濃度で発生回数を示してもよい。例えば、発生回数0〜1回は淡い赤色のアイコン、発生回数2〜3回は中濃度の赤色のアイコン、発生回数4回以上は濃い赤色のアイコンで示せばよい。
【0100】
(11)上記実施形態では、全体デイリーレポートDR1及び詳細デイリーレポートDR2を表示するようにしたが、更に、定期的にデータをまとめたレポートを表示手段に表示するようにしてもよい。例えば、障害物検知発生件数を月別にグラフで表示してもよい。
【0101】
(12)上記実施形態では、所定の時間として、1日のログデータを累積して記憶したが、この時間は特に限定されず、例えば1時間でも1週間でもよい。
【0102】
(13)上記実施形態では、建設機械の一例として、上部旋回体3及び下部走行体2を有する油圧ショベル1について説明したが、本発明は旋回式でない建設機械に対しても適用可能である。