特許第6805893号(P6805893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805893
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   B62D55/253 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-39072(P2017-39072)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-144533(P2018-144533A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】福島 康晴
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−248470(JP,A)
【文献】 特開2004−268655(JP,A)
【文献】 特開2006−69416(JP,A)
【文献】 特開2001−278137(JP,A)
【文献】 特開2004−216936(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0075456(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスベルト状である本体と、この本体の内周面から突出する複数の駆動突起と、この本体の外周面から突出する複数の第一ラグと、この本体の外周面から突出する複数の第二ラグとを備えており、
それぞれの第一ラグが、中心線から左側に向かう左側部分と、中心線から右側に向かう右側部分とを有しており、上記左側部分の右端と上記右側部分の左端とは中心線上で一致しており、上記左側部分と上記右側部分とは、それぞれ、全体として、幅方向中心から外側に向かって進行方向後側に向かう方向に延在しており、
それぞれの第二ラグが、中心線から左側に向かう左側部分と、中心線から右側に向かう右側部分とを有しており、上記左側部分の右端と上記右側部分の左端とは中心線上で一致しており、上記左側部分と上記右側部分とは、それぞれ、全体として、幅方向中心から外側に向かって進行方向後側に向かう方向に延在しており、
上記第二ラグの幅W2が、上記第一ラグの幅W1よりも小さく、
上記第二ラグが、周方向において、上記第一ラグと隣接しており、
上記駆動突起が、周方向において、上記第一ラグ又は第二ラグとオーバーラップしている弾性クローラ。
【請求項2】
上記第一ラグが、一対の第一内側突出部と一対の第一外側突出部とを有しており、
一方の第一内側突出部が、幅方向中心において、他方の第一内側突出部と対向しており、
それぞれの第一外側突出部が、上記第一内側突出部の幅方向外側に位置しており、
上記第一外側突出部の進行方向後側の傾斜角度θaが、上記第一内側突出部の進行方向後側の傾斜角度θbよりも大きく、
上記第一外側突出部の進行方向前側の傾斜角度θcが、上記第一内側突出部の進行方向前側の傾斜角度θdよりも小さく、
上記第二ラグが、一対の第二内側突出部と一対の第二外側突出部とを有しており、
一方の第二内側突出部が、幅方向中心において、他方の第二内側突出部と対向しており、
それぞれの第二外側突出部が、上記第二内側突出部の幅方向外側に位置しており、
上記第二外側突出部の進行方向後側の傾斜角度θeが、上記第二内側突出部の進行方向後側の傾斜角度θfよりも大きく、
上記第二外側突出部の進行方向前側の傾斜角度θgが、上記第二内側突出部の進行方向前側の傾斜角度θhよりも小さい、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
上記一対の第一内側突出部がなす角度θ1が、上記一対の第二内側突出部のなす角度θ2と同一かこの角度θ2よりも大きい請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
全ての第一ラグが、周方向に沿って等ピッチに並んでいる請求項1から3のいずれかに記載の弾性クローラ。
【請求項5】
上記第一ラグが、接地面と、この接地面から凹陥する溝とを有している請求項1から4のいずれかに記載の弾性クローラ。
【請求項6】
上記第二ラグが、接地面と、この接地面から凹陥する溝とを有している請求項1から5のいずれかに記載の弾性クローラ。
【請求項7】
上記第一ラグが、その幅方向外側端に、幅方向外側に向かって開口する凹みを有している請求項1から6のいずれかに記載の弾性クローラ。
【請求項8】
上記第二ラグが、その幅方向外側端に、幅方向外側に向かって開口する凹みを有している請求項1から7のいずれかに記載の弾性クローラ。
【請求項9】
上記第一ラグが接地面を有しており、幅方向外側端における上記接地面の周方向距離Laに対する、幅方向中央近傍における上記接地面の周方向距離Lbの比(Lb/La)が、0.25以上0.60以下である請求項1から8のいずれかに記載の弾性クローラ。
【請求項10】
上記第二ラグが接地面を有しており、幅方向外側端における上記接地面の周方向距離Lcに対する、幅方向中央近傍における上記接地面の周方向距離Ldの比(Ld/Lc)が、0.25以上0.60以下である請求項1から9のいずれかに記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置の弾性クローラに関する。詳細には、本発明は、ラグを有するクローラに関する。
【背景技術】
【0002】
除雪機は、弾性クローラを有している。従来の弾性クローラが、特開2006−248470公報(特許第4157874号公報)に開示されている。この弾性クローラは、エンドレスベルト状である本体と、この本体の外周面から突出する複数のメインラグと、この本体の外周面から突出する複数の補助ラグとを有している。これらのメインラグと補助ラグとは、周方向において交互に配置されている。これらのメインラグ及び補助ラグは、クローラの牽引力に寄与しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−248470公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2006−248470公報に開示されたクローラでは、排雪性が不十分である。このクローラでは、メインラグと補助ラグとの間に、雪等が詰まりやすい。雪等のつまりは、クローラの牽引力を阻害するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、ラグとこれに隣接するラグとの間に雪等が詰まりにくく、従って雪等の詰まりに起因する牽引力低下が生じにくい弾性クローラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性クローラは、エンドレスベルト状である本体と、この本体の内周面から突出する複数の駆動突起と、この本体の外周面から突出する複数の第一ラグと、この本体の外周面から突出する複数の第二ラグとを備える。それぞれの第一ラグは、幅方向中心から外側に向かって進行方向後側に向かう方向に延在している。それぞれの第二ラグは、幅方向中心から外側に向かって進行方向後側に向かう方向に延在している。第二ラグのW2幅は、第一ラグの幅W1よりも小さい。第二ラグは、周方向において第一ラグと隣接している。駆動突起は、周方向において、第一ラグ又は第二ラグとオーバーラップしている。
【0007】
第一ラグは、一対の第一内側突出部と一対の第一外側突出部とを有しうる。一方の第一内側突出部は、幅方向中心において、他方の第一内側突出部と対向しうる。それぞれの第一外側突出部は、第一内側突出部の幅方向外側に位置しうる。好ましくは、第一外側突出部の進行方向後側の傾斜角度θaは、第一内側突出部の進行方向後側の傾斜角度θbよりも大きい。好ましくは、第一外側突出部の進行方向前側の傾斜角度θcは、第一内側突出部の進行方向前側の傾斜角度θdよりも小さい。
【0008】
第二ラグは、一対の第二内側突出部と一対の第二外側突出部とを有しうる。一方の第二内側突出部は、幅方向中心において、他方の第二内側突出部と対向しうる。それぞれの第二外側突出部は、第二内側突出部の幅方向外側に位置しうる。好ましくは、第二外側突出部の進行方向後側の傾斜角度θeは、第二内側突出部の進行方向後側の傾斜角度θfよりも大きい。好ましくは、第二外側突出部の進行方向前側の傾斜角度θgは、第二内側突出部の進行方向前側の傾斜角度θhよりも小さい。
【0009】
好ましくは、一対の第一内側突出部がなす角度θ1は、一対の第二内側突出部のなす角度θ2と同一か、この角度θ2よりも大きい。
【0010】
好ましくは、全ての第一ラグは、周方向に沿って等ピッチに並ぶ。
【0011】
好ましくは、第一ラグは、接地面と、この接地面から凹陥する溝とを有する。好ましくは、第二ラグは、接地面と、この接地面から凹陥する溝とを有する。
【0012】
好ましくは、第一ラグは、その幅方向外側端に、幅方向外側に向かって開口する凹みを有する。好ましくは、第二ラグは、その幅方向外側端に、幅方向外側に向かって開口する凹みを有する。
【0013】
第一ラグは、接地面を有しうる。好ましくは、幅方向外側端における接地面の周方向距離Laに対する、幅方向中央近傍における接地面の周方向距離Lbの比(Lb/La)は、0.25以上0.60以下である。第二ラグは、接地面を有しうる。好ましくは、幅方向外側端における接地面の周方向距離Lcに対する、幅方向中央近傍における接地面の周方向距離Ldの比(Ld/Lc)は、0.25以上0.60以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る弾性クローラでは、ラグとこれに隣接するラグとの間に雪等が詰まりにくい。このクローラでは、雪等の詰まりに起因する牽引力低下が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る弾性クローラが示された模式的側面図である。
図2図2は、図1のクローラの一部が示された拡大側面図である。
図3図3は、図1のクローラの一部が内周面側から見られた状態が示された拡大図である。
図4図4は、図1のクローラの一部が外周面側から見られた状態が示された拡大図である。
図5図5は、図4のクローラの第一ラグが示された拡大図である。
図6図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図である。
図7図7は、図5の第一ラグの一部が示された拡大図である。
図8図8は、図4のクローラの第二ラグが示された拡大図である。
図9図9は、図8のIX−IX線に沿った断面図である。
図10図10は、図8の第二ラグの一部が示された拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1に示された弾性クローラ2は、ゴム組成物が架橋されることで形成されている。このクローラ2は、駆動輪4と転動輪6との間に巻き掛けられている。この駆動輪4及び転動輪6は、クローラ2を有する走行装置8の部材である。この走行装置8は、図示されない駆動手段(エンジン等)を有している。
【0018】
このクローラ2は、本体10、多数の駆動突起12、多数の第一ラグ14(メインラグ)及び多数の第二ラグ16(補助ラグ)を有している。
【0019】
本体10は、エンドレスベルト状である。この本体10は、内周面18及び外周面20を有している。本体10が、その内部に多数の芯金を有してもよい。
【0020】
図2はクローラ2の一部が示された拡大側面図であり、図3はこのクローラ2の一部が内周面18側から見られた状態が示された拡大図であり、図4はこのクローラ2の一部が外周面20側から見られた状態が示された拡大図である。図2−4において矢印Aで示されているのは、クローラ2の回転方向である。
【0021】
図2から明らかなように、それぞれの駆動突起12は、本体10の内周面18から突出している。図3に示されるように、多数の駆動突起12が、周方向に沿って並んでいる。これらの駆動突起12は、左側列I及び右側列IIを形成している。左側列Iでは、多数の駆動突起12が、周方向に沿って等ピッチで並んでいる。右側列IIでは、多数の駆動突起12が、周方向に沿って等ピッチで並んでいる。左側列Iに属する駆動突起12の周方向位置は、右側列IIに属する駆動突起12の周方向位置と一致している。左側列Iに属する駆動突起12と、右側列IIに属する駆動突起12とは、離間している。
【0022】
図2から明らかなように、それぞれの第一ラグ14は、本体10の外周面20から突出している。図4に示されるように、多数の第一ラグ14が、周方向に沿って並んでいる。本実施形態では、これらの第一ラグ14は、等ピッチで並んでいる。
【0023】
図2から明らかなように、それぞれの第二ラグ16は、本体10の外周面20から突出している。図4に示されるように、多数の第二ラグ16が、周方向に沿って並んでいる。本実施形態では、これらの第二ラグ16は、等ピッチで並んでいる。それぞれの第二ラグ16は、第一ラグ14と隣接している。換言すれば、第一ラグ14と第二ラグ16との間には、他のラグが存在していない。この実施形態では、多数の第一ラグ14と多数の第二ラグ16とが、周方向に沿って交互に配置されている。
【0024】
前述の通り、このクローラ2は、走行装置8の駆動輪4と転動輪6との間に巻き掛けられる(図1参照)。この駆動輪4は、その周縁に多数の駆動歯(図示されず)を有している。この走行装置8のエンジンにより、駆動輪4が回転させられる。この回転によってそれぞれの駆動歯が駆動突起12に当接し、この駆動突起12を押すことで、エンジンの駆動力がクローラ2に伝達される。この伝達によりクローラ2が回転し、さらに転動輪6が回転する。クローラ2の回転によって第一ラグ14及び第二ラグ16が地面を押し、牽引力が発生する。この牽引力により、走行装置8が前進する。
【0025】
図5は、図4のクローラ2の第一ラグ14が示された拡大図である。図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図である。図7は、図5の第一ラグ14の一部が示された拡大図である。図5−7において、左右方向はクローラ2の幅方向である。図5において矢印W1で示されているのは、第一ラグ14の幅である。
【0026】
図5から明らかなように、第一ラグ14は、中心線CLに対して対称な形状を有している。第一ラグ14のうち中心線CLよりも左側の部分は、中心線CLから左側に向かうに従って上側に向かっている。換言すれば、中心線CLよりも左側の部分は、幅方向外側に向かって進行方向後側に向かう方向に延在している。第一ラグ14のうち中心線CLよりも右側の部分は、中心線CLから右側に向かうに従って上側に向かっている。換言すれば、中心線CLよりも右側の部分も、幅方向外側に向かって進行方向後側に向かう方向に延在している。第一ラグ14は、概して「V」字形状を有する。
【0027】
図5に示されるように、第一ラグ14は、一対の第一内側突出部22と一対の第一外側突出部24とを有している。一方の第一内側突出部22は、中心線CLにおいて、他方の第一内側突出部22と対向している。図5において矢印θ1で示されているのは、2つの第一内側突出部22がなす角度である。それぞれの第一外側突出部24は、第一内側突出部22の幅方向外側に位置している。この第一外側突出部24は、第一内側突出部22に連続している。
【0028】
第一内側突出部22は、第一内側接地面26、第一内側後スロープ28及び第一内側前スロープ30を有している。第一内側接地面26は、実質的に、本体10の外周面20(図2参照)と平行である。第一内側後スロープ28は、外周面20に対して傾斜している。第一内側後スロープ28は、外周面20と連続しており、かつ第一内側接地面26とも連続している。第一内側前スロープ30は、外周面20に対して傾斜している。第一内側前スロープ30は、外周面20と連続しており、かつ第一内側接地面26とも連続している。
【0029】
第一外側突出部24は、第一外側接地面32、第一外側後スロープ34及び第一外側前スロープ36を有している。第一外側接地面32は、実質的に、本体10の外周面20(図2参照)と平行である。第一外側後スロープ34は、外周面20に対して傾斜している。第一外側後スロープ34は、外周面20と連続しており、かつ第一外側接地面32とも連続している。第一外側前スロープ36は、外周面20に対して傾斜している。第一外側前スロープ36は、外周面20と連続しており、かつ第一外側接地面32とも連続している。
【0030】
第一ラグ14は複数の溝38を有している。図6に示されるように、それぞれの溝38は、第一内側接地面26又は第一外側接地面32から凹陥している。
【0031】
第一ラグ14は、一対の凹み40を有している。それぞれの凹40みは、第一ラグ14の幅方向外側端に位置している。図6に示されるように、この凹み40は、幅方向外側に向かって開口している。
【0032】
図8は、図4のクローラ2の第二ラグ16が示された拡大図である。図9は、図8のIX−IX線に沿った断面図である。図10は、図8の第二ラグ16の一部が示された拡大図である。図8−10において、左右方向はクローラ2の幅方向である。図8において矢印W2で示されているのは、第二ラグ16の幅である。この幅W2は、第一ラグ14の幅W1(図5参照)よりも小さい。
【0033】
図8から明らかなように、第二ラグ16は、中心線CLに対して対称な形状を有している。第二ラグ16のうち中心線CLよりも左側の部分は、中心線CLから左側に向かうに従って上側に向かっている。換言すれば、中心線CLよりも左側の部分は、幅方向外側に向かって進行方向後側に向かう方向に延在している。第二ラグ16のうち中心線CLよりも右側の部分は、中心線CLから右側に向かうに従って上側に向かっている。換言すれば、中心線CLよりも右側の部分も、幅方向外側に向かって進行方向後側に向かう方向に延在している。第二ラグ16は、概して「V」字形状を有する。
【0034】
図8に示されるように、第二ラグ16は、一対の第二内側突出部42と一対の第二外側突出部44とを有している。一方の第二内側突出部42は、中心線CLにおいて、他方の第二内側突出部42と対向している。図8において矢印θ2で示されているのは、2つの第二内側突出部42がなす角度である。それぞれの第二外側突出部44は、第二内側突出部42の幅方向外側に位置している。この第二外側突出部44は、第二内側突出部42に連続している。
【0035】
第二内側突出部42は、第二内側接地面46、第二内側後スロープ48及び第二内側前スロープ50を有している。第二内側接地面46は、実質的に、本体10の外周面20(図2参照)と平行である。第二内側後スロープ48は、外周面20に対して傾斜している。第二内側後スロープ48は、外周面20と連続しており、かつ第二内側接地面46とも連続している。第二内側前スロープ50は、外周面20に対して傾斜している。第二内側前スロープ50は、外周面20と連続しており、かつ第二内側接地面46とも連続している。
【0036】
第二外側突出部44は、第二外側接地面52、第二外側後スロープ54及び第二外側前スロープ56を有している。第二外側接地面52は、実質的に、本体10の外周面20(図2参照)と平行である。第二外側後スロープ54は、外周面20に対して傾斜している。第二外側後スロープ54は、外周面20と連続しており、かつ第二外側接地面52とも連続している。第二外側前スロープ56は、外周面20に対して傾斜している。第二外側前スロープ56は、外周面20と連続しており、かつ第二外側接地面52とも連続している。
【0037】
第二ラグ16は複数の溝58を有している。図9に示されるように、それぞれの溝58は、第二内側接地面46又は第二外側接地面52から凹陥している。
【0038】
第二ラグ16は、一対の凹み60を有している。それぞれの凹み60は、第二ラグ16の幅方向外側端に位置している。図9に示されるように、この凹み60は、幅方向外側に向かって開口している。
【0039】
このクローラ2は、前述の通り、幅W1が大きな第一ラグ14と幅W2が小さな第二ラグ16とを有している。第一ラグ14の形状は概して「V」字状であり、第二ラグ16の形状も概して「V」字状である。従って、ラグ間の雪が幅方向外側へと排出されやすい。このクローラ2は、排雪性に優れる。このクローラ2では、ラグ間に雪が詰まりにくい。このクローラ2では、雪の詰まりに起因する牽引力低下が生じにくい。
【0040】
排雪性の観点から、幅W1に対する幅W2の比(W2/W1)は0.45以上0.65以下が好ましく、0.50以上0.60以下が特に好ましい。
【0041】
図2から明らかなように、駆動突起12は、周方向において、第一ラグ14とオーバーラップしている。このクローラ2では、駆動突起12に当接する駆動歯が、周方向において、ラグとこれに隣接するラグとの間に位置する。このクローラ2の、駆動輪4に巻かれた部分では、外周面20に付着した雪が除去されやすい。このクローラ2は、排雪性に優れる。駆動突起12が、周方向において、第二ラグ16とオーバーラップしてもよい。
【0042】
好ましくは、第一ラグ14における角度θ1(図5参照)は、第二ラグ16における角度θ2(図8参照)と同一か、この角度θ2よりも大きい。換言すれば、角度θ1及びθ2は、下記数式を満たす。
θ1 ≧ θ2
上記数式を満たすクローラ2は、排雪性に優れ、かつ牽引力にも優れる。これらの観点から、比(θ1/θ2)は1.00以上1.10以下が好ましく、1.02以上1.08以下が特に好ましい。
【0043】
図7において符号θaで示されているのは、第一外側突出部24の進行方向後側の、幅方向に対する傾斜角度である。この傾斜角度θaは、第一外側接地面32と第一外側後スロープ34との境界に沿って測定される。図7において符号θbで示されているのは、第一内側突出部22の進行方向後側の、幅方向に対する傾斜角度である。この傾斜角度θbは、第一内側接地面26と第一内側後スロープ28との境界に沿って測定される。傾斜角度θaは、傾斜角度θbよりも大きい。
【0044】
図7において符号θcで示されているのは、第一外側突出部24の進行方向前側の、幅方向に対する傾斜角度である。この傾斜角度θcは、第一外側接地面32と第一外側前スロープ36との境界に沿って測定される。図7において符号θdで示されているのは、第一内側突出部22の進行方向前側の、幅方向に対する傾斜角度である。この傾斜角度θdは、第一内側接地面26と第一内側前スロープ30との境界に沿って測定される。傾斜角度θcは、傾斜角度θdよりも小さい。
【0045】
傾斜角度θaが傾斜角度θbよりも大きく、かつ傾斜角度θcが傾斜角度θdよりも小さいので、第一ラグ14は排雪性に寄与しうる。排雪性の観点から、差(θa−θb)は2°(degree)以上が好ましく、4°以上が特に好ましい。排雪性の観点から、差(θd−θc)は2°以上が好ましく、4°以上が特に好ましい。θaは、15°以上22°以下が好ましい。θbは、9°以上16°以下が好ましい。θcは、4°以上12°以下が好ましい。θdは、9°以上16°以下が好ましい。
【0046】
図10において符号θeで示されているのは、第二外側突出部44の進行方向後側の、幅方向に対する傾斜角度である。この傾斜角度θeは、第二外側接地面52と第二外側後スロープ54との境界に沿って測定される。図10において符号θfで示されているのは、第二内側突出部42の進行方向後側の、幅方向に対する傾斜角度である。この傾斜角度θfは、第二内側接地面46と第二内側後スロープ48との境界に沿って測定される。傾斜角度θeは、傾斜角度θfよりも大きい。
【0047】
図10において符号θgで示されているのは、第二外側突出部44の進行方向前側の、幅方向に対する傾斜角度である。この傾斜角度θgは、第二外側接地面52と第二外側前スロープ56との境界に沿って測定される。図10において符号θhで示されているのは、第二内側突出部42の進行方向前側の、幅方向に対する傾斜角度である。この傾斜角度θhは、第二内側接地面46と第二内側前スロープ50との境界に沿って測定される。傾斜角度θgは、傾斜角度θhよりも小さい。
【0048】
傾斜角度θeが傾斜角度θfよりも大きく、かつ傾斜角度θgが傾斜角度θhよりも小さいので、第二ラグ16は排雪性に寄与しうる。排雪性の観点から、差(θe−θf)は2°以上が好ましく、4°以上が特に好ましい。排雪性の観点から、差(θh−θg)は2°以上が好ましく、4°以上が特に好ましい。θeは、15°以上22°以下が好ましい。θfは、9°以上16°以下が好ましい。θgは、4°以上12°以下が好ましい。θhは、9°以上16°以下が好ましい。
【0049】
前述の通り、第一ラグ14は溝38及び凹み40を有しており、第二ラグ16は溝58及び凹み60を有している。これらの溝38、58及び凹み40、60は、クローラ2の横滑りを抑制する。
【0050】
図4において符号Laで示されているのは、第一ラグ14の接地面の、幅方向外側端における周方向距離である。図7において符号Lbで示されているのは、第一ラグ14の接地面の、幅方向中央近傍における周方向距離である。距離Laは、距離Lbよりも大きい。この第一ラグ14は、クローラ2の横滑りを抑制する。この観点から、距離Laに対する距離Lbの比(Lb/La)は、0.25以上0.60以下が好ましく、0.30以上0.55以下が特に好ましい。
【0051】
図4において符号Lcで示されているのは、第二ラグ16の接地面の、幅方向外側端における周方向距離である。図10において符号Ldで示されているのは、第二ラグ16の接地面の、幅方向中央近傍における周方向距離である。距離Lcは、距離Ldよりも大きい。この第二ラグ16は、クローラ2の横滑りを抑制する。この観点から、距離Lcに対する距離Ldの比(Ld/Lc)は、0.25以上0.60以下が好ましく、0.30以上0.55以下が特に好ましい。
【0052】
前述の通り、多数の第一ラグ14は等ピッチで並んでおり、多数の第二ラグ16も等ピッチで並んでいる。図4において矢印Pで示されているのは、第一ラグ14のピッチである。このピッチPは、第二ラグ16のピッチでもある。図4において矢印Lで示されているのは、第一ラグ14とこの第一ラグ14に隣接する第二ラグ16との周方向距離である。ピッチPに対する距離Lの比(L/P)は、0.40以上0.60以下が好ましく、0.45以上0.55以下が特に好ましい。比(L/P)がこの範囲内であるクローラ2では、走行時に振動が発生しにくい。この観点から、理想的な比(L/P)は、0.50である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る弾性クローラは、種々の走行装置に適している。
【符号の説明】
【0054】
2・・・弾性クローラ
10・・・本体
12・・・駆動突起
14・・・第一ラグ
16・・・第二ラグ
18・・・内周面
20・・・外周面
22・・・第一内側突出部
24・・・第一外側突出部
26・・・第一内側接地面
28・・・第一内側後スロープ
30・・・第一内側前スロープ
32・・・第一外側接地面
34・・・第一外側後スロープ
36・・・第一外側前スロープ
38、58・・・溝
40、60・・・凹み
42・・・第二内側突出部
44・・・第二外側突出部
46・・・第二内側接地面
48・・・第二内側後スロープ
50・・・第二内側前スロープ
52・・・第二外側接地面
54・・・第二外側後スロープ
56・・・第二外側前スロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10