特許第6805896号(P6805896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805896
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】全方向移動車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20201214BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20201214BHJP
   B60W 50/029 20120101ALI20201214BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20201214BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20201214BHJP
【FI】
   B60L15/20 S
   G05D1/02 W
   B60W50/029
   B60W10/08
   B60L3/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-43056(P2017-43056)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-148728(P2018-148728A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】南田 将哉
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−166740(JP,A)
【文献】 特開2004−175313(JP,A)
【文献】 特開2016−134983(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0162896(US,A1)
【文献】 特開2014−186694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−58/40
B60W 10/00−60/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の円周方向において自由回転する複数のローラが設けられた全方向車輪と、
前記全方向車輪が少なくとも3つ設けられた機台と、
各全方向車輪を駆動するモータを有する駆動系と、
前記モータを制御する制御部と、
を有し、前記全方向車輪の車軸の軸線前記機台に対して変動させることなく当該全方向車輪の回転と前記ローラの回転とによって前記機台を全方向に移動させる全方向移動車両において、
前記制御部は、少なくとも2つの駆動系が正常な状態で、他の駆動系に異常を検出した場合に、正常な駆動系の全方向車輪を駆動して走行する退避走行モードを設定し、当該退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪により任意の方向に走行できる車両姿勢となるように、正常な駆動系の全方向車輪を駆動して前記機台を旋回させることを特徴とする全方向移動車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記退避走行モードにおいて、進行方向の前側に正常な駆動系の全方向車輪が位置するとともに、正常な駆動系の全方向車輪の後側に異常な駆動系の全方向車輪が位置する状態で走行させる処理を含むことを特徴とする請求項に記載の全方向移動車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪を3つ以上有する場合に、2つの正常な駆動系の全方向車輪を駆動するとともに、残りの正常な駆動系の全方向車輪を駆動せずに走行させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の全方向移動車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪を3つ以上有するとともに、2つの正常な駆動系の全方向車輪が互いに平行かつ対向配置されている場合に、互いに平行かつ対向配置された2つの正常な駆動系の全方向車輪を駆動して走行させることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の全方向移動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向移動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オムニホイール車両が、例えば特許文献1において開示されており、この種の全方向移動車両は、切り返し動作が不要で、狭い場所や混み合った場所でも並進、旋回、斜行により自由な動作が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−61442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば4輪オムニホイール車両において駆動する場合、モータを有する駆動系において、例えば、車輪駆動関連のアクチュエータ(モータ)やセンサ(エンコーダ)が故障した場合、意図した経路を走行させることができない。例えば、図7に示すように、4つのオムニホイール100,101,102,103のうちの1つのオムニホイール100の駆動系が故障すると進行方向が前進であるべきものが右に曲がってしまう。このため、故障発生時には停止させてユーザに通知することが一般的である。しかし、全方向移動車両は無人自律走行車として利用されるケースが多く、故障車両の発見が遅れることが予測される。
【0005】
本発明の目的は、早期に退避することができる全方向移動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、少なくとも3つの全方向車輪と、各全方向車輪を駆動するモータを有する駆動系と、前記モータを制御する制御部と、を有する全方向移動車両において、前記制御部は、少なくとも2つの駆動系が正常な状態で、他の駆動系に異常を検出した場合に、正常な駆動系の全方向車輪を駆動して走行する退避走行モードを設定することを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、制御部により、少なくとも2つの駆動系が正常な状態で、他の駆動系に異常を検出した場合に退避走行モードが設定されて、正常な駆動系の全方向車輪が駆動されて走行する。これにより、早期に退避することができる。
【0008】
請求項2に記載のように、請求項1に記載の全方向移動車両において、前記制御部は、前記退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪により任意の方向に走行できる車両姿勢となるように、正常な駆動系の全方向車輪を駆動して旋回させる処理を含むとよい。
【0009】
請求項3に記載のように、請求項2に記載の全方向移動車両において、前記制御部は、前記退避走行モードにおいて、進行方向の前側に正常な駆動系の全方向車輪が位置するとともに、正常な駆動系の全方向車輪の後側に異常な駆動系の全方向車輪が位置する状態で走行させる処理を含むとよい。
【0010】
請求項4に記載のように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の全方向移動車両において、前記制御部は、前記退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪を3つ以上有する場合に、2つの正常な駆動系の全方向車輪を駆動するとともに、残りの正常な駆動系の全方向車輪を駆動せずに走行させるとよい。
【0011】
請求項5に記載のように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の全方向移動車両において、前記制御部は、前記退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪を3つ以上有するとともに、2つの正常な駆動系の全方向車輪が互いに平行かつ対向配置されている場合に、互いに平行かつ対向配置された2つの正常な駆動系の全方向車輪を駆動して走行させるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、早期に退避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における4輪オムニホイール車両の概略平面図。
図2】車両のブロック図。
図3】作用を説明するためのフローチャート。
図4】(a),(b),(c)は作用を説明するための4輪オムニホイール車両の概略平面図。
図5】(a),(b),(c)は作用を説明するための4輪オムニホイール車両の概略平面図。
図6】(a),(b),(c),(d)は4輪オムニホイール車両の概略平面図。
図7】課題を説明するための4輪オムニホイール車両の動作を説明するための概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両10は、全方向移動車両である。車両10は、機台20と4つの車輪30,31,32,33を備えている。4つの車輪30,31,32,33は、機台20に設けられている。詳しくは、平面視において機台20の中心に対し90°毎に車輪30,31,32,33が配置されている。各車輪30,31,32,33は、それぞれ全方向車輪であって、具体的にはオムニホイールであり、各車輪30,31,32,33は、全方向に駆動可能に構成された車輪である。即ち、各車輪において、車輪の円周方向において自由回転するローラ(樽型を有する小輪)が複数設けられ、前後・左右に自由に動くことができる。このように構成された車輪を4つ用いて車軸を変動させないで機台を全方向に可動できるようになっている。
【0015】
図2に示すように、車両10は、モータ40,41,42,43と、ドライブ回路50,51,52,53と、制御部60と、フィードバック用回転センサ70,71,72,73を備える。各モータ40,41,42,43として、それぞれDCモータを使用している。
【0016】
モータ40,41,42,43、ドライブ回路50,51,52,53、制御部60及びフィードバック用回転センサ70,71,72,73は機台20に搭載されている。
モータ40の出力軸が車輪30と駆動連結されており、モータ40により車輪30を駆動することができる。同様に、モータ41の出力軸が車輪31と駆動連結されており、モータ41により車輪31を駆動することができる。モータ42の出力軸が車輪32と駆動連結されており、モータ42により車輪32を駆動することができる。モータ43の出力軸が車輪33と駆動連結されており、モータ43により車輪33を駆動することができる。
【0017】
ドライブ回路50によりモータ40が駆動され、このモータ40の駆動により車輪30が駆動される。ドライブ回路51によりモータ41が駆動され、このモータ41の駆動により車輪31が駆動される。ドライブ回路52によりモータ42が駆動され、このモータ42の駆動により車輪32が駆動される。ドライブ回路53によりモータ43が駆動され、このモータ43の駆動により車輪33が駆動される。
【0018】
制御部60はドライブ回路50,51,52,53を介してモータ40,41,42,43を制御して各車輪30,31,32,33を駆動させる。これにより、機台20を前後方向、左右方向及び回転方向に移動させることができる。
【0019】
フィードバック用回転センサ70はモータ40の出力軸の回転を検出している。フィードバック用回転センサ71はモータ41の出力軸の回転を検出している。フィードバック用回転センサ72はモータ42の出力軸の回転を検出している。フィードバック用回転センサ73はモータ43の出力軸の回転を検出している。フィードバック用回転センサ70,71,72,73としてエンコーダを用いることができる。
【0020】
制御部60はフィードバック用回転センサ70,71,72,73からのモータ回転検出信号を入力して所望のモータ回転数となるようにドライブ回路50,51,52,53を介してモータ40,41,42,43を制御する。即ち、制御部60はモータ40,41,42,43をフィードバック制御する。
【0021】
制御部60は駆動指令を入力してドライブ回路50〜53を介してモータ40,41,42,43を制御して車輪30,31,32,33の回転を制御する。
このように、全方向移動車両である車両10は、少なくとも3つの全方向車輪30,31,32,33と、各全方向車輪30,31,32,33を駆動するモータ40,41,42,43と、モータ40,41,42,43を制御する制御部60と、を有する。
【0022】
本実施形態では、車輪30を駆動するための駆動系(第1の駆動系)がドライブ回路50とモータ40と回転センサ(エンコーダ)70である。車輪31を駆動するための駆動系(第2の駆動系)がドライブ回路51とモータ41と回転センサ(エンコーダ)71である。車輪32を駆動するための駆動系(第3の駆動系)がドライブ回路52とモータ42と回転センサ(エンコーダ)72である。車輪33を駆動するための駆動系(第4の駆動系)がドライブ回路53とモータ43と回転センサ(エンコーダ)73である。即ち、全方向移動車両である車両10は、各全方向車輪30,31,32,33を駆動するモータ40,41,42,43を有する駆動系を有する。
【0023】
各ドライブ回路50,51,52,53には、それぞれ、過電流保護回路及び過負荷保護回路が設けられており、各ドライブ回路50,51,52,53における過電流保護回路からの過電流検出信号及び過負荷保護回路からの過負荷検出信号が制御部60に送られる。制御部60は、過電流保護回路による過電流を検知することができるとともに過負荷保護回路による過負荷を検知することができるようになっている。
【0024】
本実施形態では、モータ40の回転状態を検出するセンサとしての回転センサ(エンコーダ)70によりモータ40の故障を検出することができ、モータ41の回転状態を検出するセンサとしての回転センサ(エンコーダ)71によりモータ41の故障を検出することができるようになっている。また、モータ42の回転状態を検出するセンサとしての回転センサ(エンコーダ)72によりモータ42の故障を検出することができ、モータ43の回転状態を検出するセンサとしての回転センサ(エンコーダ)73によりモータ43の故障を検出することができるようになっている。
【0025】
次に、作用について説明する。
まず、全方向移動車両である4輪オムニホイール車両における走行の際の動きを説明する。
【0026】
図6(a),(b),(c),(d)は、4輪オムニホイール車両の駆動例である。図6(a)に示すように、4つの車輪30,31,32,33のうちの車輪30を正転させ、車輪31を逆転させ、車輪32を逆転させ、車輪33を正転させることにより、機台20を前進させることができる。図6(b)に示すように、4つの車輪30,31,32,33のうちの車輪30を停止させ、車輪31を逆転させ、車輪32を停止させ、車輪33を正転させることにより、機台20を斜行させることができる。図6(c)に示すように、4つの車輪30,31,32,33のうちの車輪30を逆転させ、車輪31を逆転させ、車輪32を正転させ、車輪33を正転させることにより、機台20を横行させることができる。図6(d)に示すように、4つの車輪30,31,32,33のうちの車輪30を正転させ、車輪31を正転させ、車輪32を正転させ、車輪33を正転させることにより、機台20を旋回させることができる。このようにして、並進、旋回、斜行により自由な動作が可能である。
【0027】
次に、駆動系の故障による制御切替えについて説明する。
制御部60は図3に示すフローを実行する。図3に示す処理は一定時間ごとに行われる。
【0028】
図3において、制御部60は、ステップS100で、駆動系の故障の有無を判定する。制御部60は、駆動系の故障が発生していないと、ステップS101に移行して通常走行を行う。
【0029】
一方、制御部60は、ステップS100において駆動系の故障が発生していると、その故障が1輪故障または2輪故障であればステップS102に移行し、3輪故障であればステップS105に移行する。
【0030】
1輪故障または2輪故障の場合、制御部60は、ステップS102において旋回を行い、その後、ステップS103で退避走行モードを設定してステップS104でモータ駆動を行って退避走行により走行レーンから外れて退避場所に走行させる。これにより、全方向移動車両は無人自律走行車として利用される場合において、故障車両の発見が早期に行われることになる。
【0031】
このようにして、制御部60は、少なくとも2つの駆動系が正常な状態で、他の駆動系に異常を検出した場合に、正常な駆動系の全方向車輪を駆動して走行する退避走行モードを設定する。即ち、故障による車両制御方法として、1つまたは2つの駆動系(車輪)が故障した場合、他の2つの駆動系(2輪)を用いて退避走行を実施する。つまり、車輪駆動関連のアクチュエータ(モータ)やセンサ(エンコーダ)が故障した場合にも、車両の制御方法を変更し、車両を停止させることなく、退避走行させて任意の場所に帰還させる。
【0032】
特に、制御部60は、退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪により任意の方向に走行できる車両姿勢となるように、正常な駆動系の全方向車輪を駆動して旋回させる処理を含む。
【0033】
このように、従来の制御では故障発生時には停止させてユーザに通知していたが、本実施形態では車両を停止させることなく、退避走行モードを設定して任意の場所に帰還させることが可能となる。
【0034】
一方、3輪故障の場合、制御部60は、ステップS105において車両の走行停止モードを設定し、その後、ステップS106でモータを停止する。さらに、制御部60は、ステップS107で故障をユーザに知らせる。
【0035】
次に、故障判定方法について説明する。
モータ故障については、以下の(a),(b),(c)のいずれかの条件が成立した時、モータ故障と判断する。
【0036】
(a)として、制御部60は各ドライブ回路50〜53からの過電流検出信号により過電流保護回路にて過電流を検知した場合には故障が発生したと判定する。
(b)として、制御部60は各ドライブ回路50〜53からの過負荷検出信号により過負荷保護回路にて過負荷を検知した場合にも故障が発生したと判定する。
【0037】
(c)として、制御部60はセンサ(エンコーダ)70〜73からの信号によりモータの出力状態(回転状態)をモニタし、駆動要求値に比べて出力が一定閾値以下の状態が一定時間経過した場合にも故障が発生したと判定する。即ち、出力レベルが低い若しくは回転していない場合には故障が発生したと判定する。
【0038】
エンコーダ故障については、以下の(A),(B),(C)のいずれかの条件が成立した時、エンコーダ故障と判断する。
(A)として、制御部60はセンサ(エンコーダ)70〜73からの信号によりモータ出力とパルスロック(パルスがハイレベルで固定又はローレベルで固定)との関係においてモータ出力なしで、パルス波形がハイレベルで固定となっている状態が一定時間経過した場合にはエンコーダ故障と判断する。
【0039】
(B)として、制御部60はセンサ(エンコーダ)70〜73からの信号によりモータ出力とパルスロック(パルスがハイレベルで固定又はローレベルで固定)との関係においてモータ出力ありで、パルス波形がローレベルで固定となっている状態が一定時間経過した場合にもエンコーダ故障と判断する。
【0040】
(C)として、制御部60はセンサ(エンコーダ)70〜73からの信号によりパルス間隔が閾値以下の場合にもエンコーダ故障と判断する。即ち、パルス間隔が非常に短い場合にはノイズが乗っているので、故障と判定する。
【0041】
次に、退避走行について説明する。
図4(a)に示すように、1つの車輪30の駆動系が故障した場合(または対角にある2つの車輪の駆動系が故障した場合)には、図4(b)に示すように、故障していない駆動系の2輪が左右にくるように旋回させ、図4(c)に示すように、車輪31と車輪33による2輪走行を実施する。
【0042】
このように、制御部60は、退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪を3つ以上有する場合に、2つの正常な駆動系の全方向車輪31,33を駆動するとともに、残りの正常な駆動系の全方向車輪32を駆動せずに走行させる。また、制御部60は、退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪を3つ以上有するとともに、2つの正常な駆動系の全方向車輪31,33が互いに平行かつ対向配置されている場合に、互いに平行かつ対向配置された2つの正常な駆動系の全方向車輪31,33を駆動して走行させる。
【0043】
図5(a)に示すように、隣接する2つの車輪30,31の駆動系が故障した場合には、図5(b)に示すように、故障していない駆動系の2輪を前方に位置するように旋回させて、図5(c)に示すように、前方の2輪である車輪32,33により走行を制御する。
【0044】
このように、制御部60は、退避走行モードにおいて、進行方向の前側に正常な駆動系の全方向車輪32,33が位置するとともに、正常な駆動系の全方向車輪32,33の後側に異常な駆動系の全方向車輪30,31が位置する状態で走行させる処理(前輪駆動走行処理)を含む。つまり、駆動する車輪32,33を機台20の進行方向前側に配置した前輪駆動走行とする。この場合には、駆動する車輪を機台20の進行方向後側に配置した後輪駆動走行よりも安定した走行が可能となる。
【0045】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)全方向移動車両の構成として、制御部60は、少なくとも2つの駆動系が正常な状態で、他の駆動系に異常を検出した場合に、正常な駆動系の全方向車輪を駆動して走行する退避走行モードを設定する。これにより、早期に退避することができる。
【0046】
(2)制御部60は、退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪により任意の方向に走行できる車両姿勢となるように、正常な駆動系の全方向車輪を駆動して旋回させる処理を含むので、実用的である。特に、駆動系の異常を検出して退避走行モードに切り替わる際に、異常を検出した位置にて、旋回して車両の姿勢を変更させた後に、正常な駆動系の全方向車輪により任意の方向に走行するように制御している。よって、異常を検出した後に全方向移動車両が予期しない方向へ走行することを抑制できる。
【0047】
(3)制御部60は、退避走行モードにおいて、進行方向の前側に正常な駆動系の全方向車輪が位置するとともに、正常な駆動系の全方向車輪の後側に異常な駆動系の全方向車輪が位置する状態で走行させる処理を含む。つまり、退避走行モードにおいて前輪駆動となり、走行が安定する。
【0048】
(4)少なくとも4つの全方向車輪を有する全方向移動車両において、制御部60は、退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪を3つ以上有する場合に、2つの正常な駆動系の全方向車輪を駆動するとともに、残りの正常な駆動系の全方向車輪を駆動せずに走行させる。これにより退避走行モードにおいて、2つの正常な駆動系の全方向車輪の駆動制御だけで走行させることができ、3つの正常な駆動系の全方向車輪の駆動制御により走行する場合と比較して、制御を簡素化できる。
【0049】
(5)制御部60は、退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪を3つ以上有するとともに、2つの正常な駆動系の全方向車輪が互いに平行かつ対向配置されている場合に、互いに平行かつ対向配置された2つの正常な駆動系の全方向車輪を駆動して走行させる。この場合、車輪が平行かつ対向配置された2輪車両となるため、直進走行が安定する。また、モータ負荷を小さくすることができる。
【0050】
(6)センサを用いて検出しているので、モータ性能が低下した場合の故障も検出することができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0051】
○ オムニホイールを4輪有する車両について説明したが、オムニホイールが3輪以上有する車両に適用できる。
○ 全方向車輪としてオムニホイールを用いたが、他にも、メカナムホイール等を用いてもよい。
【0052】
○ センサを用いないで故障を検出してもよい。
○ センサを用いたフィードバック制御の場合について説明したがオープン制御の場合に適用してもよく、この場合において別途センサを設けて故障を検出するようにしてもよい。
【0053】
○ 故障判定方法については、各駆動系における断線や短絡を検出することにより判断しても良い。
○ 制御部は、退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪を3つ以上有する場合に、2つの正常な駆動系の全方向車輪を駆動するとともに、残りの正常な駆動系の全方向車輪を駆動せずに走行させていたが、正常な駆動系の全方向車輪を全て駆動させて走行させても良い。退避走行モードにおいて、正常な駆動系の全方向車輪の駆動数は任意設定可能であり、少なくとも2つの正常な駆動系の全方向車輪が駆動できれば、退避走行モードにて走行可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…車両、30…全方向車輪、31…全方向車輪、32…全方向車輪、33…全方向車輪、40…モータ、41…モータ、42…モータ、43…モータ、60…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7