(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被印刷媒体に複数のラインのそれぞれを印刷するための1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間を設定するとともに、前記1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うことなく印刷装置のサーマルヘッドの複数の発熱素子の温度変化を調整するための第2の通電制御期間を、前記サーマルヘッドの前記複数の発熱素子への通電が行われない非通電期間を介して、前記第1の通電制御期間より時間的に後のタイミングに設定し、
前記複数のラインを印刷させるための印刷データに基づいて、前記複数のラインにおけるスティッキングが発生する可能性があると推定される第nラインと、前記第nライン(nは1以上の整数)に続けて印刷される第(n+1)ラインと、を対策対象ライン群に設定し、
前記対策対象ライン群に含まれる前記ラインのそれぞれにおける前記第2の通電制御期間中において前記複数の発熱素子の少なくとも一部に電圧が印加されるように制御する対策ラインデータを生成する、
ことを特徴とする印刷制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る印刷装置1の斜視図である。印刷装置1は、被印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドを備える印刷装置であり、例えば、長尺状の被印刷媒体Mに、シングルパス方式で印刷を行うラベルプリンタである。以降では、インクリボンを使用する熱転写方式のラベルプリンタを例にして説明するが、印刷方式は特に限定されない。スティッキングが発生し得る印刷方式であればよく、例えば、感熱紙を使用する感熱方式であってもよい。被印刷媒体Mは、例えば、接着層を有する基材と、接着層を覆うように剥離可能に基材に貼付された剥離紙と、を有するテープ部材である。被印刷媒体Mは、離型紙なしのテープ部材であってもよい。
【0016】
印刷装置1は、
図1に示すように、装置筐体2と、入力部3と、表示装置4と、開閉蓋18と、カセット収納部19を備える。装置筐体2の上面には、入力部3、表示装置4、及び開閉蓋18が配置されている。また、図示しないが、装置筐体2には、電源コード接続端子、外部機器接続端子、記憶媒体挿入口等が設けられている。
【0017】
入力部3は、入力キー、十字キー、変換キー、決定キーなどの種々のキーを備える。表示装置4は、例えば液晶表示パネルであり、入力部3からの入力に対応する文字等、各種設定のための選択メニュー、各種処理に関するメッセージ等を表示する。また、印刷中には、被印刷媒体Mへの印刷が指示された文字や図形等の内容(以降、印刷内容と記す)が表示され、印刷処理の進捗状況が表示されてもよい。なお、表示装置4にはタッチパネルユニットが設けられていてもよく、その場合、表示装置4を入力部3の一部として看做してもよい。
【0018】
開閉蓋18は、カセット収納部19の上部に開閉可能に配置されている。開閉蓋18は、ボタン18aを押下されることにより開放される。開閉蓋18には、この開閉蓋18が閉じた状態でもカセット収納部19にテープカセット30(
図2参照)が収納されているか否かを目視で確認可能とするために、窓18bが形成されている。また、装置筐体2の側面には、排出口2aが形成されている。印刷装置1内で印刷が行われた被印刷媒体Mは、排出口2aから装置外へ排出される。
【0019】
図2は、印刷装置1に収納されるテープカセット30の斜視図である。
図3は、印刷装置1のカセット収納部19の斜視図である。
図4は、印刷装置1の断面図である。
図2に示すテープカセット30は、
図3に示すカセット収納部19に着脱自在に収納される。
図4には、テープカセット30がカセット収納部19に収納された状態が示されている。
【0020】
テープカセット30は、
図2に示すように、サーマルヘッド被挿入部36及び係合部37が形成された、被印刷媒体MとインクリボンRを収容するカセットケース31を有する。カセットケース31には、テープコア32とインクリボン供給コア34とインクリボン巻取りコア35が設けられている。被印刷媒体Mは、カセットケース31内部のテープコア32にロール状に巻かれている。また、熱転写用のインクリボンRは、その先端がインクリボン巻取りコア35に巻きつけられた状態で、カセットケース31内部のインクリボン供給コア34にロール状に巻かれている。
【0021】
装置筐体2のカセット収納部19には、
図3に示すように、テープカセット30を所定の位置で支持するための複数のカセット受け部20が設けられている。また、カセット受け部20には、テープカセット30が収容するテープ(被印刷媒体M)の幅を検出するためのテープ幅検出スイッチ24が設けられている。テープ幅検出スイッチ24は、カセットの形状に基づいて被印刷媒体Mの幅を検出する幅検出部である。
【0022】
カセット収納部19には、さらに、複数の発熱素子を有し、被印刷媒体Mに印刷を行うサーマルヘッド10と、被印刷媒体Mを搬送する搬送部であるプラテンローラ21と、テープコア係合軸22と、インクリボン巻取り駆動軸23が設けられている。さらに、サーマルヘッド10には、サーミスタ13が埋め込まれている。サーミスタ13は、サーマルヘッド10の温度を測定するヘッド温度測定部である。
【0023】
テープカセット30がカセット収納部19に収納された状態では、
図4に示すように、カセットケース31に設けられた係合部37がカセット収納部19に設けられたカセット受け部20に支持されて、サーマルヘッド10がカセットケース31に形成されたサーマルヘッド被挿入部36に挿入される。また、テープコア係合軸22には、テープカセット30のテープコア32が係合し、さらに、インクリボン巻取り駆動軸23には、インクリボン巻取りコア35が係合する。
【0024】
印刷装置1に印刷指示が入力されると、被印刷媒体Mは、プラテンローラ21の回転によりテープコア32から繰り出される。この際、インクリボン巻取り駆動軸23がプラテンローラ21に同調して回転することで、被印刷媒体MとともにインクリボンRがインクリボン供給コア34から繰り出される。これにより、被印刷媒体MとインクリボンRは重なった状態で搬送される。そして、サーマルヘッド10とプラテンローラ21の間を通過する際にインクリボンRがサーマルヘッド10によって加熱されることで、インクが被印刷媒体Mに転写され、印刷が行われる。
【0025】
サーマルヘッド10とプラテンローラ21の間を通過した使用済みのインクリボンRは、インクリボン巻取りコア35に巻き取られる。一方、サーマルヘッド10とプラテンローラ21の間を通過した印刷済みの被印刷媒体Mは、ハーフカット装置16及びフルカット装置17で切断され、排出口2aから排出される。
【0026】
図5は、印刷装置1のハードウェア構造を示したブロック図である。印刷装置1は、上述の入力部3、表示装置4、サーマルヘッド10、サーミスタ13、ハーフカット装置16、フルカット装置17、プラテンローラ21、テープ幅検出スイッチ24に加えて、制御装置5、ROM(Read Only Memory)6、RAM(Random Access Memory)7、表示装置駆動回路8、ヘッド駆動回路9、搬送用モータ駆動回路11、ステッピングモータ12、カッターモータ駆動回路14、及び、カッターモータ15、温度センサ25を備える。なお、少なくとも制御装置5、ROM6、及びRAM7は、印刷装置1のコンピュータを形成している。
【0027】
制御装置5は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ5aを含む。制御装置5は、ROM6に記憶されているプログラムをRAM7に展開し実行することで、印刷装置1の各部の動作を制御する。
【0028】
制御装置5は、印刷データに基づいてスティッキングが発生する可能性が比較的高いライン(以降、スティッキング発生推定ラインと記す。)を推定する推定部として機能する。また、制御装置5は、スティッキングの発生を抑制するための対策データを生成するデータ生成部としても機能する。また、制御装置5は、被印刷媒体Mに印刷を行うための第1の通電制御期間と、被印刷媒体Mに印刷を行うことなくサーマルヘッド10の温度変化を調整するための第2の通電制御期間と、を指定する制御信号の一例であるストローブ信号を生成するヘッド制御部としても機能する。制御装置5は、少なくともストローブ信号と印刷データと対策データをヘッド駆動回路9へ供給し、ヘッド駆動回路9を介してサーマルヘッド10を制御する。また、制御装置5は、プラテンローラ21を制御する搬送制御部としても機能する。さらに、制御装置5は、カット装置を制御するカット制御部としても機能する。
【0029】
なお、通電制御期間とは、ストローブ信号がONである期間をいう。第1の通電制御期間は、サーマルヘッド10が有する複数の発熱素子10aへの通電又は非通電が印刷データに応じて設定される期間であり、印刷データに応じて被印刷媒体Mが発色する期間である。即ち、印刷データは、第1の通電制御期間中における複数の発熱素子10aへの通電又は非通電を指定するデータである。ここで、発色するとは、インクリボンRから溶けたインクが被印刷媒体Mに転写されることにより被印刷媒体Mが着色されることと、被印刷媒体M自体が自己発色することの少なくとも何れかを含む。
【0030】
また、第2の通電制御期間は、サーマルヘッド10が有する複数の発熱素子10aへの通電又は非通電が対策データに応じて設定される期間であり、被印刷媒体Mが発色することなく対策データに応じてサーマルヘッド10の温度変化(特に温度低下)が調整される期間である。即ち、対策データは、第2の通電制御期間中における複数の発熱素子10aへの通電又は非通電を指定するデータである。第2の通電制御期間は、第1の通電制御期間から時間的に離間した期間であり、第1の通電制御期間よりも時間的に短い期間である。第2の通電制御期間は、例えば、第1の通電制御期間の30%〜50%程度である。
【0031】
ROM6は、被印刷媒体Mに印刷を行う印刷プログラム、印刷プログラムの実行に必要な各種データ(例えば、フォント、通電テーブル、閾値テーブル等)を記憶する。ROM6は、制御装置5によって読取り可能なプログラムが記憶された記憶媒体としても機能する。RAM7は、印刷内容のパターンを示すデータ(以降、印刷データと記す)を記憶する印刷データ記憶部を含む。さらに、RAM7は、表示データを記憶する表示データ記憶部を含む。
【0032】
表示装置駆動回路8は、RAM7に記憶された表示データに基づいて表示装置4を制御する。表示装置4は、表示装置駆動回路8の制御下で、例えば、印刷処理の進捗状況が認識可能な態様で印刷内容を表示してもよい。
【0033】
ヘッド駆動回路9は、制御装置5から供給された制御信号であるストローブ信号と印刷データと対策データとに基づいてサーマルヘッド10を駆動するヘッド駆動部である。より詳細には、ストローブ信号(制御信号)がONである通電制御期間中に、印刷データ及び対策データに基づいて複数の発熱素子10aへ印加する電圧の通電又は非通電を行う。
【0034】
サーマルヘッド10は、主走査方向に配列された複数の発熱素子10aを有し、被印刷媒体Mに複数のラインを印刷する印刷ヘッドである。ヘッド駆動回路9が、制御装置5から供給されたストローブ信号の通電制御期間中に、印刷データ及び対策データに応じて発熱素子10aへ印加する電圧を選択的に通電することで、発熱素子10aが発熱してインクリボンRを加熱する。これにより、サーマルヘッド10は、熱転写により被印刷媒体Mに1つのラインずつ印刷を行う。即ち、印刷装置1は、サーマルラインプリンタである。
【0035】
搬送用モータ駆動回路11は、ステッピングモータ12を駆動する。ステッピングモータ12は、プラテンローラ21を回転させる。プラテンローラ21は、ステッピングモータ12の動力によって回転し、被印刷媒体Mの長手方向(副走査方向)に被印刷媒体Mを搬送する搬送部である。
【0036】
カッターモータ駆動回路14は、カッターモータ15を駆動する。ハーフカット装置16及びフルカット装置17は、カッターモータ15の動力によって動作し、被印刷媒体Mをハーフカット又はフルカットする。フルカットとは、被印刷媒体Mの基材を剥離紙とともに幅方向に沿って切断する動作のことであり、ハーフカットは、基材のみを幅方向に沿って切断する動作のことである。
【0037】
温度センサ25は、印刷装置1の周囲の温度を環境温度として測定する環境温度測定部である。
【0038】
図6は、印刷装置1の機能構造を示したブロック図である。
図6には、主に、印刷装置1に含まれる制御装置5の機能構成が示されている。制御装置5は、推定部40と、データ生成部50と、ヘッド制御部60を備えている。なお、推定部40、データ生成部50、ヘッド制御部60は、それぞれ専用の回路で構成されていてもよく、また、ROM6に格納されているプログラムの実行により実現されてもよい。
【0039】
推定部40は、サーマルヘッド10の温度が急激に低下し得るラインを、印刷データに基づいて特定することで、スティッキングが発生する可能性が比較的高いスティッキング発生推定ラインを推定する。具体的には、印刷データに含まれる複数の印刷ラインデータのうちの、2以上の印刷ラインデータを比較することにより、スティッキングが発生するラインを推定する。なお、推定部40が使用する印刷データは、RAM7の印刷データ記憶部7aから読み出される。また、スティッキング発生推定ラインは、スティッキングが発生する可能性があると推定されるラインであればよく、推定部は、スティッキングが発生する可能性があると推定されるラインをスティッキング発生推定ラインとして推定しても良い。
【0040】
推定部40は、より詳細には、比較部41と決定部42を備える。比較部41は、複数の印刷ラインデータのうちの、互いに隣接して印刷される二つのラインのそれぞれに対応する二つの印刷ラインデータを比較する。決定部42は、比較部41による比較結果に基づいて、スティッキングが発生する可能性が比較的高いラインをスティッキング発生推定ラインとして決定する。即ち、推定部40は、互いに隣接して印刷される二つのラインのそれぞれに対応する二つの印刷ラインデータの比較結果に基づいて、スティッキング発生推定ラインを推定する。これは、互いに隣接して印刷される二つのラインのそれぞれに対応する二つの印刷ラインデータを比較することで、互いに隣接して印刷される二つのライン間で生じる急激な温度変化を予想することができるからである。
【0041】
比較部41は、例えば、互いに隣接して印刷される二つのラインのそれぞれに対応する二つの印刷ラインデータの一方に基づいて特定される、サーマルヘッド10の発熱素子10aを発熱させて被印刷媒体Mに印刷が行われるように設定されている印刷ドットの数と、互いに隣接して印刷される二つのラインのそれぞれに対応する二つの印刷ラインデータの他方に基づいて特定される印刷ドットの数と、を比較してもよい。印刷ドットの数を比較することで、サーマルヘッド10の温度の低下を予想することができるからである。
【0042】
比較部41は、例えば、互いに隣接して印刷される二つのラインのそれぞれに対応する二つの印刷ラインデータの一方に基づいて特定される所定数連続して並んでいる印刷ドットである印刷ドット群の数と、互いに隣接して印刷される二つのラインのそれぞれに対応する二つの印刷ラインデータの他方に基づいて特定される印刷ドット群の数と、を比較してもよい。印刷ドットが複数集まることで、1つずつばらばらに存在するよりもサーマルヘッド10の温度へ与える影響が大きくなり得る。このため、複数の印刷ドットの集合である印刷ドット群の数を比較することで、サーマルヘッド10の温度の低下を高精度に予想することができる。
【0043】
決定部42は、例えば、印刷ドット数又は印刷ドット群の数の比に対して閾値を設定してもよく、印刷ドット数又は印刷ドット群の数の減少数に対して閾値を設定してもよい。決定部42は、比または減少数が閾値以上又は閾値を上回っている場合に、スティッキングが発生する可能性が比較的高いと決定してもよい。
【0044】
なお、閾値は、予め設定された値であってもよく、温度センサ25で測定された環境温度に基づいて設定されてもよい。環境温度が低いほど一般にスティッキングが発生しやすいことから、環境温度に基づいて設定する場合には、環境温度が低いほど閾値を下げることが望ましい。これにより、スティッキングの発生を更に抑制することができる。また、閾値は、テープ幅検出スイッチ24で検出された被印刷媒体Mの幅に基づいて設定してもよい。例えば、被印刷媒体Mの幅が比較的狭いときには、被印刷媒体Mの幅が比較的広い場合によりも小さな閾値を用いてスティッキングが発生するラインを設定してもよい。これは、被印刷媒体Mの幅が狭いときにはサーマルヘッド10内の狭い領域だけが加熱されるため、サーマルヘッド10が急激に冷えやすくスティッキングが発生しやすいためである。
【0045】
推定部40は、スティッキング発生推定ラインを特定するデータ(以降、スティッキング発生推定ラインデータ)をデータ生成部50へ出力する。
【0046】
データ生成部50は、第2の通電制御期間中における複数の発熱素子10aへの通電又は非通電を指定する対策データを生成し、ヘッド制御部60へ出力する。対策データは、印刷データに含まれる複数の印刷ラインデータに対応する複数の対策ラインデータを含んでいる。
【0047】
印刷装置1は、スティッキングを引き起こす可能性が高い温度低下が予想される期間において、印刷データとは別のデータである対策データに基づいて発熱素子10aを発熱させることでサーマルヘッド10の急激な温度低下を抑制し、スティッキング発生を抑制する。ただし、対策データに基づいて発熱素子10aを発熱させる第2の通電制御期間は、被印刷媒体Mが発色しないように第1の通電制御期間に比べて短く設定される。
【0048】
このため、データ生成部50は、第2の通電制御期間中におけるサーマルヘッド10に含まれる発熱素子10aへの電圧の通電(印加)を、スティッキング発生推定ラインだけではなく、スティッキング発生推定ラインの後に、スティッキング発生推定ラインから連続して印刷される少なくとも一つのラインも連続して指定する対策データを生成する。これにより、急激な温度低下を確実に抑えることができるため、スティッキングの発生を十分に抑制することができる。ここで、スティッキング発生推定ライン及びスティッキング発生推定ラインの後に、スティッキング発生推定ラインから連続して印刷される少なくとも一つのラインを含む二つ以上のラインを、以降、対策対象ライン群と記す。即ち、データ生成部50は、複数のラインを印刷させるための印刷データに基づいて、複数のラインにおける、少なくとも、スティッキングが発生する可能性があると推定される第nライン(nは1以上の整数)と、その第nラインに続けて印刷される第(n+1)ラインと、を対策対象ライン群に設定し、その対策対象ライン群に含まれるラインのそれぞれにおける第2の通電制御期間中において、複数の発熱素子10aの少なくとも一部に電圧が印加されるように制御する対策ラインデータを生成する。
【0049】
データ生成部50は、より詳細には、ライン数設定部51とパターン設定部52を備えている。ライン数設定部51は、上述した複数のラインのライン数、即ち、対策対象ライン群に含まれるラインの数を設定する。パターン設定部52は、第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子を設定する。
【0050】
ライン数設定部51は、対策対象ライン群に含まれるラインの数を予め決められた数に設定してもよい。また、ライン数設定部51は、温度センサ25で測定された環境温度に基づいてライン数を設定してもよい。また、ライン数設定部51は、印刷データに基づいてライン数を設定してもよい。また、ライン数設定部51は、テープ幅検出スイッチ24で検出された被印刷媒体Mの幅に基づいてライン数を設定してもよい。また、ライン数設定部51は、環境温度と印刷データと被印刷媒体Mの幅の少なくとも一つに基づいて、ライン数を設定してもよい。
【0051】
環境温度が低いほど一般にスティッキングが発生しやすいことから、ライン数設定部51が環境温度に基づいてライン数を設定する場合には、環境温度が低いほどライン数を増やして急激な温度低下を抑制することが望ましい。これにより、印刷装置1が置かれた環境によらずスティッキングの発生を抑制することができる。また、環境温度が高い環境ではスティッキングが発生しにくいため、環境温度が予め設定された閾値(例えば、40℃など)よりも高い場合には、ライン数設定部51はライン数を0に設定し、第2の通電制御期間における通電制御を省略してもよい。
【0052】
スティッキング発生推定ラインに続くラインにおいて、第1の通電制御期間に十分な数の発熱素子10aに電圧が印加される場合には、それらのラインでは温度低下が生じないため、第2の通電制御期間における通電制御は省略可能と判断できる。従って、ライン数設定部51は、印刷データに基づいて、スティッキング発生推定ラインの後に、スティッキング発生推定ラインから連続して印刷される複数のラインに、印刷ドット数が閾値以下のライン(以降、低印字率ラインと記す。)が何ライン連続して並んでいるかを算出し、算出した低印字率ラインの連続数に基づいて対策対象ライン群に含まれるラインの数を設定してもよい。また、ライン数設定部51は、被印刷媒体Mの幅に基づいてライン数を設定してもよい。例えば、被印刷媒体Mの幅が閾値(例えば、18mm)よりも広い場合には、サーマルヘッド10に電圧を印加する電源回路の電流容量の制限を考慮してライン数を0に設定し、被印刷媒体Mの幅が閾値以下の場合でのみ、第2の通電制御期間における通電制御を行ってもよい。
【0053】
パターン設定部52は、テープ幅検出スイッチ24で検出された被印刷媒体Mの幅に基づいて、第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子を設定してもよい。例えば、被印刷媒体Mの幅に基づいて、被印刷媒体Mに対向する発熱素子を特定し、特定した発熱素子を第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子に設定してもよい。また、被印刷媒体Mの幅に基づいて、被印刷媒体M中の余白部分を除いた印刷領域に対向する発熱素子を特定し、特定した発熱素子を第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子に設定してもよい。これにより、第2の通電制御期間中に印刷に用いられる発熱素子全体を一斉に発熱させることができるため、スティッキング発生推定ライン内のスティッキングの発生が予想される箇所だけではなくその周囲も合わせて加熱することができる。従って、スティッキングの発生が予想される箇所の急激な温度低下をその箇所とその周囲の熱により効率よく抑制することができる。このため、短い通電期間(第2の通電時間)でスティッキングの発生を十分に抑制することができる。
【0054】
パターン設定部52は、予め決められた発熱素子を第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子に設定してもよい。例えば、第2の通電制御期間中に、サーマルヘッド10に電圧を印加する電源回路の電流容量の制限を越えない範囲で多くの発熱素子を一斉に発熱させるように、第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子に設定してもよい。
【0055】
パターン設定部52は、印刷データに基づいて、第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子に設定してもよい。パターン設定部52は、少なくともスティッキング発生推定ライン内のスティッキングの発生が予想される箇所に対応する発熱素子を第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子を設定する。
【0056】
ヘッド制御部60は、第1の通電制御期間と第2の通電制御期間を指定する制御信号であるストローブ信号を生成し、ヘッド駆動回路9へ出力する。つまり、ヘッド制御部60は、複数のラインのそれぞれを印刷するための1ライン周期内に被印刷媒体Mに印刷を行うための第1の通電制御期間を設定するとともに、その1ライン周期内に被印刷媒体Mに印刷を行うことなくサーマルヘッド10の温度変化を調整するための、第1の通電制御期間から離間した、第2の通電制御期間を設定する。ヘッド制御部60は、より詳細には、ROM6の通電テーブル記憶部6aから読み出した通電時間データとサーミスタ13で測定したヘッド温度に基づいて第1の通電制御期間と第2の通電制御期間の通電時間を算出する。そして、通電時間に応じたストローブ信号(制御信号)と、印刷データと、データ生成部50で生成された対策データと、をヘッド駆動回路9へ出力する。なお、通電時間は、通電期間の時間的な長さである。
【0057】
以上のように構成された印刷装置1によれば、対策データに基づいて第2の通電制御期間における発熱素子10aへの通電を制御することで、サーマルヘッド10の急激な温度低下を抑制することができる。従って、簡単な制御でスティッキングの発生を抑制することができる。このため、スティッキングに起因する印刷品位の低下も回避することができる。特に高速印刷に対応したサーマルヘッド10では、発熱素子が比較的温まり易く、且つ、冷え易い特性を有していることからスティッキングが発生しやすいが、上述した技術によればスティッキングの発生を大幅に抑制することができる。
【0058】
図7は、印刷処理のフローチャートである。
図8は、スティッキング発生推定ライン決定処理のフローチャートである。
図9は、閾値テーブルを例示した図である。
図10は、スティッキング発生推定ラインデータを例示した図である。
図11は、対策データ生成処理のフローチャートである。
図12は、対策データ生成処理で生成される対策データを例示した図である。
図13は、ライン印刷処理のフローチャートである。
図14は、通電テーブルを例示した図である。
図15は、制御信号について説明する図である。以下、
図7から
図15を参照しながら、印刷装置1が行う印刷処理について具体的に説明する。
【0059】
印刷装置1は、印刷データが入力され、
図7に示す印刷処理が開始されると、まず、被印刷媒体Mの幅を取得する(ステップS100)。ここでは、制御装置5は、テープ幅検出スイッチ24からの信号に基づいて、被印刷媒体Mの幅を取得する。続いて、印刷装置1の周囲の環境温度を取得する(ステップS200)。ここでは、制御装置5は、温度センサ25から出力される環境温度のデータを取得する。その後、印刷装置1は、
図8に示すスティッキング発生推定ライン決定処理(ステップS300)、
図11に示す対策データ生成処理(ステップS400)、
図13に示すライン印刷処理(ステップS500)を行う。なお、スティッキング発生推定ライン決定処理は推定部40により行われ、対策データ生成処理はデータ生成部50により行われ、ライン印刷処理はヘッド制御部60により行われる。
【0060】
スティッキング発生推定ライン決定処理では、
図8に示すように、推定部40は、まず、印刷データのうちの先頭ラインの印刷ラインデータと次ラインの印刷ラインデータを取得する(ステップS301、ステップS302)。ここでは、推定部40がRAM7から先頭ラインの印刷ラインデータ(本通電用のラインデータ)と次ラインの印刷ラインデータ(本通電用のラインデータ)を読み出す。
【0061】
その後、推定部40は、互いに隣接して印刷される二つにラインのそれぞれに対応する二つの印刷ラインデータを比較する(ステップS303)。ここでは、比較部41が、ステップS302で取得した次ラインの印刷ラインデータとその1ライン前の印刷ラインデータ(以降、前ラインデータと記す。例えば、先頭ラインの印刷ラインデータ)を比較する。具体的には、例えば、前ラインの印刷ラインデータと次ラインの印刷ラインデータの各々に含まれる8ドット連続した印刷ドットを示すデータ“0xff”をカウントし、その差(前ラインの0xff数−次ラインの0xff数)を算出する。
【0062】
推定部40は、比較結果に基づいて次ラインがスティッキング発生推定ラインか否かを判定する(ステップS304)。ここでは、決定部42が前ラインの印刷ラインデータと次ラインの印刷ラインデータとの比較結果に基づいて、次ラインでスティッキングが発生するか否かを判定する。具体的には、例えば、決定部42は、ROM6に格納されている
図9に示す閾値テーブルTB1を参照して、ステップS100で取得した被印刷媒体Mの幅に応じた閾値を取得する。そして、ステップS303で算出した差(前ラインの0xff数−次ラインの0xff数)が閾値テーブルTB1から取得した閾値以上である場合に、スティッキングが発生する可能性が比較的高いと判定し、閾値未満である場合にはスティッキングが発生する可能性は比較的低いと判定する。
【0063】
スティッキングが発生する可能性が比較的低いと判定されると、ステップS305の処理はスキップされる。スティッキングが発生する可能性が比較的高いと判定されると、推定部40は、スティッキング発生推定ラインを決定する(ステップS305)。ここでは、決定部42は、ステップS302でラインデータを取得した次ラインをスティッキング発生推定ラインに決定する。
【0064】
その後、推定部40は、ステップS302で印刷ラインデータを取得した次ラインが最終ラインか否かを印刷データに基づいて判定し(ステップS306)、最終ラインであればスティッキング発生推定ライン決定処理を終了する。一方、最終ラインでなければ、ステップS306で最終ラインであると判定されるまで、ステップS302からS306の処理を繰り返す。
【0065】
以上により、印刷装置1(推定部40)は、スティッキング発生推定ラインを特定するスティッキング発生推定ラインデータを生成する。
図10(a)に示すスティッキング発生推定ラインデータD1は、第30ライン目がスティッキング発生推定ラインであると推定された場合に生成されるスティッキング発生推定ラインデータの一例である。また、
図10(b)に示すスティッキング発生推定ラインデータD2は、第30ライン目と第95ライン目がスティッキング発生推定ラインであると推定された場合に生成されるスティッキング発生推定ラインデータの一例である。
【0066】
図8に示すスティッキング発生推定ライン決定処理が終了すると、データ生成部50は、
図11に示す対策データ生成処理を開始する。対策データ生成処理では、データ生成部50は、まず、スティッキング発生推定ラインから連続して第2の通電制御期間中に発熱素子に電圧を印加するライン(対策対象ライン群に含まれるライン)の数である対策対象ライン数を設定する(ステップS401)。ここでは、ライン数設定部51が、例えば、対策対象ライン数を予め設定されたライン数に設定してもよく、温度センサ25から出力される環境温度に基づいて対策対象ライン数を設定してもよい。
【0067】
次に、データ生成部50は、発熱パターンを設定する(ステップS402)。発熱パターンとは、第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子の組み合わせのことである。ここでは、パターン設定部52が、例えば、ステップS100で取得した被印刷媒体Mの幅に基づいて、被印刷媒体Mに対向する発熱素子を特定し、特定した発熱素子を第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子に設定する。
【0068】
次いで、データ生成部50は、印刷データのうちの先頭ラインの印刷ラインデータを取得する(ステップS403)。ここでは、データ生成部50が印刷データ記憶部7aから先頭ラインの印刷ラインデータ(本通電用の印刷ラインデータ)を読み出し、先頭ラインを現在ラインに設定する。
【0069】
その後、データ生成部50は、履歴通電用の印刷ラインデータを生成する(ステップS404)。ここでは、既に取得されている本通電用の印刷ラインデータに基づいて、データ生成部50が現在ラインの履歴通電用の印刷ラインデータを生成し、印刷データ記憶部7aに格納する。
【0070】
履歴通電用の印刷ラインデータが生成されると、データ生成部50は、現在ラインがスティッキング発生推定ラインか否かをスティッキング発生推定ラインデータに基づいて判定する(ステップS405)。データ生成部50は、例えば、スティッキング発生推定ラインデータが
図10(a)に示すデータD1である場合には、現在ラインが第30ライン目であれば、スティッキング発生推定ラインに該当すると判定する。
【0071】
現在ラインがスティッキング発生推定ラインであると判定されると、データ生成部50は、ステップS402で設定された発熱パターンを有する現在ラインの対策ラインデータを生成する(ステップS406)。
【0072】
現在ラインがスティッキング発生推定ラインでないと判定されると、データ生成部50は、現在ラインがスティッキング発生推定ラインからステップS401で設定した対策対象ライン数以内か否かを判定する(ステップS407)。
【0073】
ステップS407で対策対象ライン数以内と判定されると、データ生成部50は、ステップS402で設定された発熱パターンを有する現在ラインの対策ラインデータを生成する(ステップS406)。
【0074】
ステップS407で対策対象ライン数以内ではないと判定されると、データ生成部50は、全ての発熱素子への非通電を指定する(即ち、オフだけからなる空パターンを有する)現在ラインの対策ラインデータを生成する(ステップS408)。
【0075】
対策ラインデータが生成されると、データ生成部50は、現在ラインが最終ラインか否かを判定し(ステップS409)、最終ラインであれば対策データ生成処理を終了する。一方、最終ラインでなければ、データ生成部50は、印刷データ記憶部7aから次ラインの印刷ラインデータ(本通電用の印刷ラインデータ)を読み出し、読み出したラインを現在ラインに設定する(ステップS410)。
【0076】
その後、ステップS409で現在ラインが最終ラインであると判定されるまで、ステップS404からS410の処理を繰り返す。これにより、印刷ライン数と同数の対策ラインデータを含む対策データが生成される。なお、
図12には、被印刷媒体Mの幅が3.5mmであり、第30ライン目がスティッキング発生推定ラインであり、対策対象ライン数が3であるときに生成された対策ラインデータの一例が示されている。ここで、
図12では、本通電データ、履歴通電データ及び対策データにおいて、サーマルヘッド10の発熱素子10aを発熱させるときをオンとして黒丸で示し、発熱素子10aを発熱させないときをオフとして白丸で示している。
【0077】
図11に示す対策データ生成処理が終了すると、ヘッド制御部60は、
図13に示すライン印刷処理を開始する。ライン印刷処理では、ヘッド制御部60は、まず、サーミスタ13から出力されるサーマルヘッド10のヘッド温度のデータを取得する(ステップS501)。
【0078】
次に、ヘッド制御部60は、ROM6の通電テーブル記憶部6aから通電時間を取得する(ステップS502)。ここでは、ヘッド制御部60は、通電テーブル記憶部6aに格納されている通電テーブルを参照して、ヘッド温度に応じた通電時間を取得する。具体的には、例えば、
図14に示す通電テーブルTB2に対して、ステップS501で取得したヘッド温度をキーに検索処理を実行し、そのヘッド温度に対応するレコードから本通電時間、履歴通電時間、対策通電時間を取得する。
【0079】
通電時間を取得すると、ヘッド制御部60は、RAM7の印刷データ記憶部7aからラインデータ(本通電用のラインデータと履歴通電用のラインデータ)と対策ラインデータを取得する(ステップS503)。
【0080】
その後、ヘッド制御部60は、印刷ラインデータ(本通電用の印刷ラインデータと履歴通電用の印刷ラインデータ)と対策ラインデータと制御信号であるストローブ信号をヘッド駆動回路9へ出力する(ステップS504)。ここでは、ヘッド制御部60は、ステップS502で取得した本通電時間と履歴通電時間と対策通電時間に応じたストローブ信号を生成し、ヘッド駆動回路9へ出力する。これにより、ヘッド駆動回路9が印刷ラインデータ(本通電用の印刷ラインデータと履歴通電用の印刷ラインデータ)と対策ラインデータと制御信号(ストローブ信号)に基づいてサーマルヘッド10を駆動し、サーマルヘッド10により被印刷媒体Mに1ライン分の印刷が行われる。
【0081】
なお、
図15に示すストローブ信号SSは、ヘッド制御部60により生成されるストローブ信号の一例である。ヘッド制御部60は、ストローブ信号SSの本通電制御期間T11、履歴通電制御期間T12、第2の通電制御期間T2の時間的な長さをステップS502で取得した本通電時間と履歴通電時間と対策通電時間に応じて設定する。
【0082】
最後に、ヘッド制御部60は、ステップS503で印刷ラインデータを取得したラインが最終ラインか否かを判定し(ステップS505)、最終ラインであればライン印刷処理を終了する。一方、最終ラインでなければ、ステップS505で最終ラインであると判定されるまで、ステップS501からS505を繰り返す。
【0083】
印刷装置1が
図7に示す印刷処理を行うことで、簡単な制御によりスティッキングの発生を抑制することができる。特に、対策データは、
図12に示すように、スティッキング発生推定ラインから複数ライン連続して第2の通電制御期間に発熱素子10aへ電圧が印加されるように生成される。このため、印刷装置1では、スティッキング発生推定ライン以降での温度の急激な低下を緩和することができる。
【0084】
また、印刷装置1では、推定部40が隣接する印刷ラインデータを比較する。このため、ラインをまたがって生じる急激な温度低下を予想することができるため、スティッキング発生推定ラインを高精度で推定することができる。なお、上記の例では、制御装置5は、印刷データに含まれる、連続して印刷される複数のラインのそれぞれに対応する複数の印刷ラインデータのうちの、少なくとも二つの印刷ラインデータを比較した結果に基づいて、スティッキングが発生する可能性があると推定される第nラインをスティッキング発生推定ラインとして決定するが、3つ以上の印刷ラインデータを比較してもよく、その場合、さらに高い精度でスティッキング発生推定ラインを推定し得る。
【0085】
また、印刷装置1では、データ生成部50が被印刷媒体Mの幅に基づいて第2の通電制御期間中に電圧を印加する発熱素子を設定する。このため、被印刷媒体Mに対向しない発熱素子を無駄に加熱することを避けることが可能であり、電力消費を抑えることができる。また、被印刷媒体Mに対向する発熱素子を一斉に発熱させることで、比較的短い通電時間でサーマルヘッド10へ効率的にエネルギーを供給することができるため、スティッキングの発生を比較的短い通電時間で良好に抑制することができる。
【0086】
なお、
図8では、全てのラインに対してスティッキングが発生するか否かを判定する例を示したが、スティッキング発生推定ライン決定処理では、スティッキング発生推定ラインから対策対象ライン数以内のラインについては判定処理を省略しても良い。これは、スティッキング発生推定ラインから対策対象ライン数以内のラインでは、対策データに基づくスティッキング対策が行われるため、スティッキングが発生する可能性は低いと判断できるからである。
【0087】
[第2の実施形態]
図16は、本実施形態に係る印刷システム100のハードウェア構造を例示した図である。印刷システム100は、印刷制御装置70と、印刷装置1aを備えている。印刷制御装置70は、例えば、標準的なコンピュータであり、プロセッサ、メモリ、ストレージ等を備えている。印刷システム100は、第1の実施形態に係る印刷装置1の一部の処理が印刷制御装置70で行われる点が、印刷装置1とは異なる。
【0088】
印刷制御装置70は、プロセッサがプログラムを実行することで印刷装置1の推定部40と同様に機能する、推定部71を備えている。推定部71は、印刷装置1の比較部41と同様に機能する比較部72と、決定部42と同様に機能する決定部73を備えている。即ち、印刷制御装置70は、2以上の印刷ラインデータを比較することによりスティッキング発生推定ラインを推定し、スティッキング発生推定ラインデータを印刷装置1aへ出力するように構成されている。換言すると、印刷制御装置70は、印刷データに含まれる、連続して印刷される複数のラインのそれぞれに対応する複数の印刷ラインデータのうちの、少なくとも二つの印刷ラインデータを比較することによりスティッキングが発生する可能性があると推定される第nラインを決定し、スティッキングが発生する可能性があると推定された第nラインを特定するデータを印刷装置1aへ出力する。
【0089】
印刷装置1aは、制御装置5の代わりに制御装置110を備える点が印刷装置1とは異なる。制御装置110は、データ生成部50とヘッド制御部60を備えているが、推定部40を備えていない。このため、印刷装置1aでは、データ生成部50は、印刷制御装置70から出力されてスティッキング発生推定ラインデータ記憶部7bに格納されたスティッキング発生推定ラインデータを読み出して対策データを生成する。
【0090】
本実施形態に係る印刷システム100によっても、印刷装置1と同様に、簡単な制御により、スティッキングの発生を抑制することができる。
【0091】
[第3の実施形態]
図17は、本実施形態に係る印刷システム200のハードウェア構造を例示した図である。印刷システム200は、印刷制御装置80と、印刷装置1bを備えている。印刷制御装置80は、例えば、標準的なコンピュータであり、プロセッサ、メモリ、ストレージ等を備えている。印刷システム200は、第1の実施形態に係る印刷装置1の一部の処理が印刷制御装置80で行われる点が、印刷装置1とは異なる。
【0092】
印刷制御装置80は、プロセッサがプログラムを実行することで、印刷装置1の推定部40と同様に機能する推定部71と、印刷装置1のデータ生成部50と同様に機能するデータ生成部81を備えている。推定部71は、印刷装置1の比較部41と同様に機能する比較部72と、決定部42と同様に機能する決定部73を備えている。データ生成部81は、印刷装置1のライン数設定部51と同様に機能するライン数設定部82と、パターン設定部52と同様に機能するパターン設定部83を備えている。即ち、印刷制御装置80は、2以上の印刷ラインデータを比較することによりスティッキング発生推定ラインを推定し、第2の通電制御期間中における発熱素子への通電を、スティッキング発生推定ラインから複数ライン連続して指定する対策データを生成し、対策データを印刷装置1bへ出力するように構成されている。
【0093】
印刷装置1bは、制御装置5の代わりに制御装置210を備える点が印刷装置1とは異なる。制御装置210は、ヘッド制御部60を備えているが、推定部40とデータ生成部50を備えていない。このため、印刷装置1bでは、ヘッド制御部60は、コンピュータ80から出力されて対策データ記憶部7cに格納された対策データを読み出して制御信号を生成する。
【0094】
本実施形態に係る印刷システム200によっても、印刷装置1及び印刷システム100と同様に、簡単な制御により、スティッキングの発生を抑制することができる。
【0095】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。印刷装置、印刷システム、印刷制御方法、及び、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0096】
例えば、印刷装置は、一ラインの印刷で通電される発熱素子の数が特定数を超える場合、つまり、被印刷媒体Mに特定数を超える数の印刷ドットを有するラインの印刷を行う場合には、そのラインの印刷を複数回に分けて行うように制御してもよい。このような可変分割印刷が行われる印刷装置にも上述した技術は適用可能である。
【0097】
例えば、推定部40が本通電用の印刷ラインデータを比較することでスティッキング発生推定ラインを推定する例を示したが、推定部40は、履歴通電用の印刷ラインデータを考慮してスティッキング発生推定ラインを推定してもよい。
【0098】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
複数の発熱素子を有し、被印刷媒体に複数のラインを印刷するサーマルヘッドと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記複数のラインのそれぞれを印刷するための1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間を設定するとともに、前記1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記サーマルヘッドの温度変化を調整するための、前記第1の通電制御期間から離間した、第2の通電制御期間を設定し、
前記複数のラインを印刷させるための印刷データに基づいて、前記複数のラインにおける、少なくとも、スティッキングが発生する可能性があると推定される第nライン(nは1以上の整数)と、前記第nラインに続けて印刷される第(n+1)ラインと、を対策対象ライン群に設定し、前記対策対象ライン群に含まれる前記ラインのそれぞれにおける前記第2の通電制御期間中において、前記複数の発熱素子の少なくとも一部に電圧が印加されるように制御する対策ラインデータを生成する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記2]
付記1に記載の印刷装置において、
前記制御装置は、
前記印刷データに含まれる、連続して印刷される前記複数のラインのそれぞれに対応する複数の印刷ラインデータのうちの、少なくとも二つの前記印刷ラインデータを比較した結果に基づいて、前記スティッキングが発生する可能性があると推定される前記第nラインをスティッキング発生推定ラインとして決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記3]
付記2に記載の印刷装置において、
前記制御装置は、
前記複数の印刷ラインデータのうちの、互いに隣接して印刷される二つの前記ラインのそれぞれに対応する二つの前記印刷ラインデータを比較した結果に基づいて、前記スティッキングが発生する可能性があると推定される前記第nラインを前記スティッキング発生推定ラインとして決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記4]
付記3に記載の印刷装置において、
前記制御装置は、前記二つの印刷ラインデータの一方に基づいて特定される印刷ドットの数と、前記二つの印刷ラインデータの他方に基づいて特定される印刷ドットの数と、を比較して、当該比較の結果に基づいて、前記スティッキング発生推定ラインを決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記5]
付記3に記載の印刷装置において、
前記制御装置は、前記二つの印刷ラインデータの一方に基づいて特定される所定数連続して並んでいる印刷ドットである印刷ドット群の数と、前記二つの印刷ラインデータの他方に基づいて特定される印刷ドット群の数と、を比較して、当該比較の結果に基づいて、前記スティッキング発生推定ラインを決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記6]
付記1乃至付記5のいずれかに記載の印刷装置は、
前記被印刷媒体の幅を検出する幅検出部を備え、
前記制御装置は、前記幅検出部で検出された前記被印刷媒体の幅に基づいて、前記対策ラインデータにおいて前記対策対象ライン群に含まれる前記ラインのそれぞれでの前記第2の通電制御期間中に電圧を印加する前記発熱素子を設定する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記7]
付記6に記載の印刷装置において、
前記制御装置は、少なくとも前記被印刷媒体に対向する位置にある前記発熱素子を、前記対策ラインデータにおいて前記対策対象ライン群に含まれる前記ラインのそれぞれでの前記第2の通電制御期間中に電圧を印加する前記発熱素子に設定する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記8]
付記6に記載の印刷装置において、
前記制御装置は、前記幅検出部で検出された前記被印刷媒体の幅に基づいて、前記対策対象ライン群に含まれる前記ラインの数を設定する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記9]
付記6に記載の印刷装置は、
前記印刷装置の周囲の温度を環境温度として測定する環境温度測定部を備え、
前記制御装置は、前記環境温度、前記幅検出部で検出された前記被印刷媒体の幅及び前記印刷データの少なくとも何れかに基づいて、前記対策対象ライン群に含まれる前記ライン数を設定する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記10]
付記1乃至付記7のいずれかに記載の印刷装置は、
前記印刷装置の周囲の温度を環境温度として測定する環境温度測定部を備え、
前記制御装置は、前記環境温度に基づいて、前記対策対象ライン群に含まれる前記ラインの数を設定する、
ことを特徴とする印刷装置。
[付記11]
付記1に記載の印刷装置と、
前記スティッキングが発生する可能性があると推定された前記第nラインを特定するデータを前記印刷装置へ出力する印刷制御装置と、備え、
前記印刷制御装置は、
前記印刷データに含まれる、連続して印刷される前記複数のラインのそれぞれに対応する複数の印刷ラインデータのうちの、少なくとも二つの前記印刷ラインデータを比較することにより前記スティッキングが発生する可能性があると推定される前記第nラインを決定する、
ことを特徴とする印刷システム。
[付記12]
印刷装置と、
印刷制御装置と、を備え、
前記印刷装置は、
複数の発熱素子を有し、被印刷媒体に複数のラインを印刷するサーマルヘッドと、
前記複数のラインのそれぞれを印刷するための1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間を設定するとともに、前記1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記サーマルヘッドの温度変化を調整するための、前記第1の通電制御期間から離間した、第2の通電制御期間を設定し、
前記複数のラインを印刷させるための印刷データと、前記第2の通電制御期間中における前記複数の発熱素子への通電又は非通電を指定する、前記印刷制御装置で生成された対策データと、に基づいて、前記サーマルヘッドを駆動するヘッド駆動部と、を備え、
前記印刷制御装置は、
前記印刷データに含まれる、連続して印刷される前記複数のラインのそれぞれに対応する複数の印刷ラインデータのうちの、少なくとも二つの前記印刷ラインデータを比較することによりスティッキングが発生する可能性がある第nライン(nは1以上の整数)と、前記第nラインに続けて印刷される第(n+1)ラインと、を対策対象ライン群に設定し、前記対策対象ライン群に含まれる前記ラインのそれぞれにおける前記第2の通電制御期間中において前記複数の発熱素子の少なくとも一部に電圧が印加されるように前記対策データを生成する、
ことを特徴とする印刷システム。
[付記13]
被印刷媒体に複数のラインのそれぞれを印刷するための1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間を設定するとともに、前記1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記印刷装置のサーマルヘッドの温度変化を調整するための、前記第1の通電制御期間から離間した、第2の通電制御期間を設定し、
前記複数のラインを印刷させるための印刷データに基づいて、前記複数のラインにおけるスティッキングが発生する可能性があると推定される第nラインと、前記第nライン(nは1以上の整数)に続けて印刷される第(n+1)ラインと、を対策対象ライン群に設定し、
前記対策対象ライン群に含まれる前記ラインのそれぞれにおける前記第2の通電制御期間中において前記複数の発熱素子の少なくとも一部に電圧が印加されるように制御する対策ラインデータを生成する、
ことを特徴とする印刷制御方法。
[付記14]
印刷装置が備えるコンピュータに、
被印刷媒体に複数のラインのそれぞれを印刷するための1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間を設定するとともに、前記1ライン周期内に前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記印刷装置のサーマルヘッドの温度変化を調整するための、前記第1の通電制御期間から離間した、第2の通電制御期間を設定させ、
前記複数のラインを印刷させるための印刷データに基づいて、前記複数のラインにおけるスティッキングが発生する可能性があると推定される第nライン(nは1以上の整数)と、前記第nラインに続けて印刷される第(n+1)ラインと、を対策対象ライン群に設定させ、前記対策対象ライン群に含まれる前記ラインのそれぞれにおける前記第2の通電制御期間中において、前記複数の発熱素子の少なくとも一部に電圧が印加されるように制御する対策ラインデータを生成させる、
ことを特徴とするプログラム。