特許第6805908号(P6805908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805908
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】摩擦性能の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/02 20060101AFI20201214BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G01N19/02 B
   B60C19/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-46284(P2017-46284)
(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公開番号】特開2018-151205(P2018-151205A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】川崎 智史
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−170138(JP,A)
【文献】 特開2006−103618(JP,A)
【文献】 特開2006−007882(JP,A)
【文献】 特許第4177557(JP,B2)
【文献】 米国特許第05641900(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/00−19/10
G01N 3/56
B60C 19/00
G01M 17/02
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ゴムからなり、その面積が既知の第一測定面を有する第一供試体と、この第一供試体と同じ配合の加硫ゴムからなり、その面積が既知の第二測定面を有する第二供試体と、荷重によりその屈折率又は透明度が変化する特性を有する樹脂組成物からなる第一薄膜及び第二薄膜と、その上面に試験面を備えた試験体とを準備する準備工程と、
上記第一測定面を摩擦処理する処理工程と、
上記第一薄膜の一方の面を、上記試験面に接触させ、この第一薄膜の他方の面に、上記摩擦処理された第一測定面を押しあてることにより、この第一薄膜に荷重する第一荷重工程と、
上記第二薄膜の一方の面を、上記試験面に接触させ、この第二薄膜の他方の面に、上記第二測定面を押しあてることにより、この第二薄膜に荷重する第二荷重工程と、
上記荷重された第一薄膜を採取して、この第一薄膜の屈折率又は透明度が変化した領域の面積を計測することにより、上記摩擦処理された第一測定面と上記試験面との実接触面積を算出する第一計測工程と、
上記荷重された第二薄膜を採取して、この第二薄膜の屈折率又は透明度が変化した領域の面積を計測することにより、上記摩擦処理されていない第二測定面と上記試験面との実接触面積を算出する第二計測工程とを含んでおり、
上記摩擦処理された第一測定面の単位面積当たりの実接触面積がS1であり、上記摩擦処理されていない第二測定面の単位面積当たりの実接触面積がS2であるとき、このS1及びS2を指標として、上記加硫ゴムの摩擦性能を評価する評価方法。
【請求項2】
上記指標が、上記単位面積当たりの実接触面積S2に対する上記単位面積当たりの実接触面積S1の比(S1/S2)である請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
上記樹脂組成物の基材樹脂がポリカーボネート樹脂であり、この樹脂組成物からなる第一薄膜及び第二薄膜が、荷重により白色化する特性を有しており、上記第一計測工程及び第二計測工程において、この白色化した領域の面積を計測して実接触面積を算出する請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項4】
上記摩擦処理された第一測定面上に、粘着性物質が存在している請求項1から3のいずれかに記載の評価方法。
【請求項5】
上記第一薄膜の厚みが、0.5μm以上2.0μm以下であり、
上記第二薄膜の厚みが、0.5μm以上2.0μm以下であり、
上記第一薄膜の厚みと、上記第二薄膜の厚みとが同じである請求項1から4のいずれかに記載の評価方法。
【請求項6】
上記第一荷重工程では、上記第一薄膜が0.1MPa以上1.0MPa以下の圧力で荷重され、
上記第二荷重工程では、上記第二薄膜が0.1MPa以上1.0MPa以下の圧力で荷重され、
上記第一薄膜と上記第二薄膜とが、同じ圧力で荷重される請求項1から5のいずれかに記載の評価方法。
【請求項7】
上記試験面が、その表面に多数の微細な凹凸を有する擬似路面である請求項1から6のいずれかに記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴムの摩擦性能の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加硫ゴムは、種々の用途に利用されている。例えば、加硫ゴムは、タイヤのトレッドに用いられる。タイヤが装着された車両が路面を走行するとき、加硫ゴムからなるトレッドが路面と接触する。路面に対する加硫ゴムの摩擦性能は、タイヤのグリップ性能等に影響する。タイヤ開発上、加硫ゴムの摩擦性能を、精度よく簡便に評価する方法が求められている。
【0003】
加硫ゴムの摩擦性能に関し、従来、ヒステリシス摩擦及び粘着摩擦の寄与が知られている。ヒステリシス摩擦は、加硫ゴムの周期的な変形及び復元に伴って生じるエネルギー損失として定義される。粘着摩擦とは、加硫ゴムと路面との付着及び剪断により生じる摩擦である。
【0004】
これまで、車両が走行する路面(以下、実路面と称する)における加硫ゴムの摩擦性能には、ヒステリシス摩擦による寄与が特に大きいと考えられてきた。このヒステリシス摩擦の寄与を評価する方法として、例えば、加硫ゴムの損失正接(tanδ)を指標とする方法が提案されている。しかし、この損失正接(tanδ)による摩擦性能の評価結果は、必ずしも、実路面における評価結果と相関するものではなかった。実路面における加硫ゴムの摩擦性能には、粘着摩擦による寄与も場合によっては無視できない程度に大きいと考えられる。
【0005】
ヒステリシス摩擦及び粘着摩擦は、いずれも加硫ゴムと路面との接触により生じる。加硫ゴムと路面との接触状態が、ヒステリシス摩擦及び粘着摩擦に影響する。通常、実路面の表面には、ミクロンサイズの凹凸が多数存在する。ミクロスケールでは、実路面における多数の微細な凸部が、実際に加硫ゴムと接触して、ヒステリシス摩擦及び粘着摩擦に影響する。加硫ゴムの摩擦性能の評価には、このミクロスケールでの接触状態の把握が重要である。
【0006】
下記非特許文献1には、光学顕微鏡を用いて、透明なゴム平板とガラス半球との接触状態を調べる方法が開示されている。下記非特許文献2には、透過光学系装置を用いて、透明な物体同士の真実接触部を観察する方法と、反射光学系装置を用いて、少なくとも一方が透明な物体同士の真実接触部を観察する方法とが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本ゴム協会誌第88巻第2号第43頁(2015年)
【非特許文献2】日本ゴム協会誌第85巻第10号第313頁(2012年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
加硫ゴムには、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク等の充填剤が配合される場合がある。タイヤのトレッドゴムに例示されるように、実用に供される加硫ゴムには、配合された充填剤に起因して、不透明なものが多い。また、加硫ゴムからなるタイヤが走行する路面も、通常は、不透明である。非特許文献1及び2に開示された方法によって、不透明な加硫ゴムと不透明な実路面との接触状態を正確に把握することは、困難である。
【0009】
また、多数の微細な凹凸を有する路面との摩擦により、加硫ゴムの表面状態が変動する場合がある。例えば、走行中のタイヤでは、トレッドゴムの内部から粘着性物質が滲出して、トレッド表面に付着する。タイヤ表面の粘着性物質は、摩擦性能に影響する。加硫ゴムの表面状態の変動は、実路面での評価結果との齟齬の原因の一つと考えられるが、加硫ゴムの摩擦性能評価結果に、この表面状態の変動による影響を反映しうる評価方法は、未だ提案されていない。
【0010】
本発明の目的は、加硫ゴムの摩擦性能を、精度よく評価することができる評価方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る摩擦性能評価方法は、
(1)加硫ゴムからなり、その面積が既知の第一測定面を有する第一供試体と、この第一供試体と同じ配合の加硫ゴムからなり、その面積が既知の第二測定面を有する第二供試体と、荷重によりその屈折率又は透明度が変化する特性を有する樹脂組成物からなる第一薄膜及び第二薄膜と、その上面に試験面を備えた試験体とを準備する準備工程、
(2)第一測定面を摩擦処理する処理工程、
(3)第一薄膜の一方の面を試験面に接触させ、この第一薄膜の他方の面に、摩擦処理された第一測定面を押しあてることにより、この第一薄膜に荷重する第一荷重工程、
(4)第二薄膜の一方の面を試験面に接触させ、この第二薄膜の他方の面に、第二測定面を押しあてることにより、この第二薄膜に荷重する第二荷重工程、
(5)荷重された第一薄膜を採取して、この第一薄膜の屈折率又は透明度が変化した領域の面積を計測することにより、摩擦処理された第一測定面と試験面との実接触面積を算出する第一計測工程
及び
(6)荷重された第二薄膜を採取して、この第二薄膜の屈折率又は透明度が変化した領域の面積を計測することにより、摩擦処理されていない第二測定面と試験面との実接触面積を算出する第二計測工程
を含む。摩擦処理された第一測定面の単位面積当たりの実接触面積がS1であり、摩擦処理されていない第二測定面の単位面積当たりの実接触面積がS2であるとき、この評価方法では、実接触面積S1及びS2を指標として、加硫ゴムの摩擦性能を評価する。好ましくは、この指標は、実接触面積S2に対する実接触面積S1の比(S1/S2)である。
【0012】
好ましくは、この樹脂組成物の基材樹脂はポリカーボネート樹脂である。この樹脂組成物からなる第一薄膜及び第二薄膜は、荷重により白色化する特性を有している。第一計測工程及び第二計測工程では、この白色化した領域の面積を計測して実接触面積を算出する。
【0013】
好ましくは、この摩擦処理された第一測定面上には、粘着性物質が存在している。
【0014】
好ましくは、第一薄膜の厚みは0.5μm以上2.0μm以下である。好ましくは、第二薄膜の厚みは、0.5μm以上2.0μm以下である。好ましくは、第一薄膜の厚みと第二薄膜の厚みとが、同じである。
【0015】
第一荷重工程において、好ましくは、第一薄膜は0.1MPa以上1.0MPa以下の圧力で荷重される。第二荷重工程において、好ましくは、第二薄膜は0.1MPa以上1.0MPa以下の圧力で荷重される。好ましくは、第一薄膜と第二薄膜とは、同じ圧力で荷重される。
【0016】
好ましくは、この試験面は、その表面に多数の微細な凹凸を有する擬似路面である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る評価方法は、加硫ゴムと路面との実接触面積を精度よく算出する工程を含んでいる。この評価方法では、摩擦処理された加硫ゴムの実接触面積の、摩擦処理されていない加硫ゴムの実接触面積に対する比を指標として、加硫ゴムの摩擦性能を評価する。この評価方法で得られる評価結果は、実路面における評価結果と高い精度で相関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る評価方法のフローチャートである。
図2図2は、図1の処理工程が示された概略図である。
図3図3は、図1の第一荷重工程及び第二荷重工程を説明する概略図である。
図4図4は、図1の第一計測工程で得られた第一薄膜の撮影画像である。
図5図5は、図1の第二計測工程で得られた第二薄膜の撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明の詳細を説明するが、この説明に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る評価方法が示されたフローチャートである。この評価方法は、準備工程、処理工程、第一荷重工程及び第二荷重工程並びに第一計測工程及び第二計測工程を含む。この評価方法は、準備工程後に、処理工程を経て、第一荷重工程から第一計測工程に進むラインAと、準備工程後に、処理工程を経ることなく、第二荷重工程から第二計測工程に進むラインBとからなる。
【0021】
準備工程は、加硫ゴムからなり、その面積が既知の第一測定面を有する第一供試体と、この第一供試体と同じ配合の加硫ゴムからなり、その面積が既知の第二測定面を有する第二供試体と、荷重によりその屈折率又は透明度が変化する特性を有する樹脂組成物からなる第一薄膜及び第二薄膜と、その上面に試験面を備えた試験体とを準備する工程である。この実施形態では、第一測定面の面積はA1である。第二測定面の面積はA2である。第一供試体、第一薄膜及び試験体が、ラインAに供される。第二供試体、第二薄膜及び試験体が、ラインBに供される。
【0022】
ラインAでは、初めに、処理工程で、第一供試体の第一測定面を摩擦処理する。図2は、この実施形態の処理工程を示す概略図である。詳細には、摩擦試験装置(図示されず)を用いて、第一供試体2の第一測定面6を摩擦処理する工程を説明するための概略図である。図2において、紙面上下方向が鉛直方向であり、紙面左右方向が水平方向である。
【0023】
この実施形態では、先ず、摩擦面18を備えた摩擦試験装置として、HENTSCHEL社製のPortable friction tester(PFT装置)が準備される。次に、摩擦面18上に第一供試体2を載置して、この摩擦面18と、第一供試体2の第一測定面6とを接触させる。続いて、この第一供試体2に荷重を負荷して、第一測定面6を摩擦面18に押しあてながら移動させることにより、第一測定面6を摩擦処理する。図2に示された矢印F1は、第一供試体2に荷重する方向であり、矢印Dは、第一供試体2の移動方向である。
【0024】
第一荷重工程は、試験体の試験面と摩擦処理された第一測定面6との間に第一薄膜を設置して、この第一薄膜に荷重する工程である。以下、図3に示される概略図を用いて、この実施形態の第一荷重工程を説明する。図3において、紙面上下方向が鉛直方向であり、紙面左右方向が水平方向である。
【0025】
この実施形態では、その表面に多数の微細な凹凸を有する試験面16を備えた試験体14が準備される。次に、この試験面16の上に、第一薄膜10を載置する。図示されるとおり、この試験面16に載置された第一薄膜10の一方の面には、試験面16と接触する領域と、接触しない領域とが形成される。
【0026】
続いて、この第一薄膜10の上に第一供試体2を載置して、この第一薄膜10の他方の面に、摩擦処理された第一測定面6を接触させる。その後、図3に矢印F2として示される方向に荷重して、摩擦処理された第一測定面6を第一薄膜10に押しあてることにより、第一薄膜10に荷重する。この実施形態では、第一薄膜10は、主として、試験面16との接触領域において荷重される。前述したとおり、第一薄膜10は、荷重により屈折率又は透明度が変化する特性を有する樹脂組成物からなる。この実施形態では、主として、第一薄膜10と試験面16との接触領域の屈折率又は透明度が、荷重により変化する。
【0027】
この評価方法では、第一薄膜10と試験面16との接触領域が、摩擦処理された第一測定面6と試験面16との接触領域(以下、実接触部と称する)に対応する。即ち、第一荷重工程を経た第一薄膜10において、荷重により屈折率又は透明度が変化した領域(以下、変化領域)が、摩擦処理された第一測定面6と試験面16との実接触部である。この第一荷重工程とは、換言すれば、摩擦処理された第一測定面6と、試験面16との実接触部において第一薄膜10に荷重して、この実接触部に対応する領域の屈折率又は透明度を変化させる工程である。
【0028】
第一計測工程は、第一薄膜10の、荷重によって屈折率又は透明度が変化した領域の面積を計測し、試験面16と、摩擦処理された第一測定面6との実接触面積B1を算出する工程である。この実施形態では、光学顕微鏡による画像解析により、変化領域の面積を計測する。
【0029】
図4は、第一荷重工程を経た第一薄膜10のマイクロスコープによる撮影画像である。白色部分が、荷重によって屈折率又は透明度が変化した領域であり、試験面16と、摩擦処理された第一測定面6との実接触部20に対応する領域である。この図4の画像を二値化処理した後、白色部分の面積を、試験面16と、摩擦処理された第一測定面6との実接触面積B1として計測する。続いて、この実接触面積B1を、第一測定面6の面積A1で除して、試験面16に対する、摩擦処理された第一測定面6の単位面積当たりの実接触面積S1(=B1/A1)を算出する。
【0030】
ラインBでは、処理工程を実施しない。この実施形態では、図3において、第一供試体2を第二供試体4に変更し、第一薄膜10を第二薄膜12に変更する以外は、第一荷重工程と同様にして、第二荷重工程をおこなう。
【0031】
詳細には、先ず、試験面16の上に、第二薄膜12を載置して、この第二薄膜12の一方の面に、試験面16と接触する領域を形成する。続いて、この第二薄膜12の上に、第二供試体4を載置して、この第二薄膜12の他方の面に、摩擦処理されていない第二測定面8を接触させる。その後、図3に矢印F2として示される方向に荷重して、摩擦処理されていない第二測定面8を第二薄膜12に押しあてる。これにより、第二薄膜12は、主として、試験面16との接触領域において荷重される。この実施形態では、主として、第二薄膜12と試験面16との接触領域の屈折率又は透明度が、荷重により変化する。
【0032】
この評価方法では、第二薄膜12と試験面16との接触領域が、摩擦処理されていない第二測定面8と試験面16との実接触部に対応する。即ち、第二荷重工程を経た第二薄膜12における変化領域が、摩擦処理されていない第二測定面8と試験面16との実接触部である。この第二荷重工程とは、換言すれば、摩擦処理されていない第二測定面8と、試験面16との実接触部において第二薄膜12に荷重して、この実接触部に対応する領域の屈折率又は透明度を変化させる工程である。
【0033】
第二計測工程は、第二薄膜12の変化領域の面積を計測し、試験面16と、摩擦処理されていない第二測定面8との実接触面積B2を算出する工程である。
【0034】
図5は、第二荷重工程を経た第二薄膜12のマイクロスコープによる撮影画像である。白色部分が、荷重によって屈折率又は透明度が変化した領域であり、試験面16と、摩擦処理されていない第二測定面8との実接触部20に対応する領域である。この図5の画像を二値化処理した後、白色部分の面積を、試験面16と、摩擦処理されていない第二測定面8との実接触面積B2として計測する。続いて、この実接触面積B2を、第二測定面8の面積A2で除して、試験面16に対する、摩擦処理されていない第二測定面8の単位面積当たりの実接触面積S2(=B2/A2)を算出する。
【0035】
この実施形態では、摩擦処理された第一測定面6の単位面積当たりの実接触面積S1の、摩擦処理されていない第二測定面8の単位面積当たりの実接触面積S2に対する比(S1/S2)を指標として、第一供試体2及び第二供試体4をなす加硫ゴムの摩擦性能を評価する。この比(S1/S2)を指標として得られる評価結果は、実路面での加硫ゴムの摩擦性能と、高い精度で相関する。
【0036】
この評価方法では、加硫ゴムからなる第一供試体2及び第二供試体4を準備する方法は特に限定されない。例えば、所定の配合に従って、基材ゴム及び各種添加剤をオープンロール、バンバリーミキサー等に投入して混練することにより未加硫ゴムとし、この未加硫ゴムを所定の形状の金型中で加熱及び加圧して、加硫ゴムからなるシートを作製し、この加硫ゴムシートを所定の形状に切削加工して、第一供試体2及び第二供試体4を準備してもよい。また、未加硫ゴムをトレッド等の形状に併せて押出加工した後、他のタイヤ部材と併せて加硫機中で加熱及び加圧することによりタイヤを製造し、このタイヤのトレッド表面をなす加硫ゴムを、所定形状に切り出すことにより、第一供試体2及び第二供試体4を準備してもよい。市販のタイヤのトレッドから採取した加硫ゴムを、第一供試体2及び第二供試体4として準備することも可能である。
【0037】
この評価方法において、第一供試体2及び第二供試体4は、同じ配合の加硫ゴムからなる。第一供試体2及び第二供試体4をなす加硫ゴムに配合される基材ゴム及び各種添加剤の種類は、特に限定されない。例えば、基材ゴムとして、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。添加剤としては、充填剤、ステアリン酸、オイル、ワックス、酸化亜鉛、可塑剤、硫黄、加硫促進剤及び老化防止剤が挙げられる。具体的な加硫ゴムの配合例としては、タイヤのトレッドゴム用の配合が挙げられる。
【0038】
好ましくは、第一供試体2及び第二供試体4の形状は、所定の厚さを有する板状又はシート状である。好ましくは、第一供試体2が有する第一測定面6及び第二供試体4が有する第二測定面8は、略平面である。第一供試体2が板状又はシート状の場合、その上面又は下面が第一測定面6とされる。第二供試体4が板状又はシート状の場合、その上面又は下面が第二測定面8とされる。この評価方法では、第一供試体2及び第二供試体4の平面視形状及びその大きさに特に制限はない。精度向上及び作業効率上の観点から、第一供試体2の平面視形状と第二供試体4の平面視形状とが、略同じであることが好ましい。同様の観点から、第一測定面6の面積と、第二測定面8の面積とが、概ね同じであることが好ましい。
【0039】
精度向上及び作業性の観点から、第一供試体2の厚みは、5mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましい。第一供試体2の厚みは、20mm以下が好ましい。同様の観点から、第二供試体4の厚みは、5mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましい。第二供試体4の厚みは、20mm以下が好ましい。好ましくは、第一供試体2の厚みと、第二供試体4の厚みとは同じである。なお、第一供試体2に関しては、処理工程を経た後に、切削加工等によりその形状及び厚みを調整することも可能である。
【0040】
第一薄膜10及び第二薄膜12をなす樹脂組成物の種類は、特に限定されず、荷重によりその屈折率又は透明度が変化する特性を有する樹脂組成物が、適宜選択されて用いられる。この樹脂組成物の基材樹脂として、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル−スチレン)系共重合体等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂等が挙げられる。2種以上を併用してもよい。
【0041】
好ましい基材樹脂は、ポリカーボネート樹脂である。基材樹脂がポリカーボネート樹脂である樹脂組成物からなる第一薄膜10及び第二薄膜12は、透明性が高く、かつ、荷重によって白色化する。本発明の目的が達成される限り、第一薄膜10及び第二薄膜12をなす樹脂組成物の基材樹脂が、ポリカーボネート樹脂と他の樹脂とを含んでもよい。基材樹脂の主成分が、ポリカーボネート樹脂である樹脂組成物が好ましい。本発明の効果が阻害されない限り、この樹脂組成物は、さらに、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を含みうる。第一薄膜10をなす樹脂組成物と、第二薄膜12をなす樹脂組成物とが、同じであることが好ましい。
【0042】
この評価方法において、第一薄膜10及び第二薄膜12の厚みは、樹脂組成物の種類及びその特性により適宜選択されうる。好ましくは、0.1MPa以上1.0MPa以下の圧力で荷重したときに、少なくとも一部の領域の屈折率又は透明度が変化するように、第一薄膜10及び第二薄膜12の厚みを設定する。第一薄膜10の厚みと、第二薄膜12の厚みとが同じであることが好ましい。
【0043】
第一薄膜10をなす樹脂組成物の基材樹脂がポリカーボネート樹脂の場合、荷重による白色化の観点から、第一薄膜10の厚みは、2.0μm以下が好ましく、1.8μm以下がより好ましい。耐久性の観点から、好ましい第一薄膜10の厚みは、0.5μm以上である。同様に、第二薄膜12をなす樹脂組成物の基材樹脂がポリカーボネート樹脂の場合、荷重による白色化の観点から、第二薄膜12の厚みは、2.0μm以下が好ましく、1.8μm以下がより好ましい。耐久性の観点から、好ましい第二薄膜12の厚みは、0.5μm以上である。
【0044】
第一薄膜10及び第二薄膜12については、その平面視形状及び大きさは特に限定されない。好ましくは、第一薄膜10と第二薄膜12とは、平面視同形状である。好ましくは、第一薄膜10は第一測定面6より大きく、第二薄膜12は第二測定面8より大きい。
【0045】
この評価方法において、第一薄膜10及び第二薄膜12を準備する方法は特に限定されず、選択した樹脂組成物の種類及び物性に応じて、溶液流延法(キャスティング法)、溶融押出成形法、熱プレス法等が適宜選択されて用いられる。例えば、樹脂組成物の基材樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、透明度が高く、厚みが均一な第一薄膜10及び第二薄膜12を形成できる方法として、溶液流延法が好適である。
【0046】
この評価方法では、試験体14の形状及び大きさは特に限定されない。好ましくは、試験体14は、その上面に、略平面状の試験面16を備えている。好ましくは、この試験面16は、その表面に多数の微細な凹凸を有する擬似路面である。この擬似路面の材質として、例えば、各種アスファルト、コンクリート、砥石等が挙げられる。試験面16が、実路面であってもよい。
【0047】
処理工程における摩擦処理条件は、特に限定されず、第一供試体2をなす加硫ゴムの種類、第一供試体2の形状等に応じて適宜設定される。例えば、前述の摩擦試験装置を使用する場合、摩擦面18をウェット状態又はドライ状態に設定してもよい。この摩擦面18に第一測定面6を押しあてながら、第一供試体2を複数回移動させることにより、第一測定面6を摩擦処理してもよい。本発明の目的が達成される限り、摩擦試験装置以外の方法により、第一測定面6を摩擦処理してもよい。
【0048】
好ましくは、処理工程を経た第一測定面6の表面には、粘着性物質が存在する。この粘着性物質の詳細は明らかではないが、第一供試体2をなす加硫ゴムに含まれる各種添加剤の一部又はその誘導体が、摩擦処理によって第一測定面6に滲出して堆積した混合物と推測される。この評価方法において、好ましくは、第一測定面6の表面に粘着性物質が付着した状態の第一供試体2が、第一荷重工程に供される。
【0049】
第一荷重工程及び第二荷重工程において、第一薄膜10及び第二薄膜12に荷重する方法は、特に限定されない。簡便には、第一供試体2又は第二供試体4の上面に、所定の質量を有するウェイトを一定時間載置する方法が用いられる。適宜選択した加圧プレス機等により荷重する方法もとりうる。
【0050】
第一荷重工程及び第二荷重工程における荷重条件は、第一薄膜10及び第二薄膜12をなす樹脂組成物の種類に応じて、適宜設定される。第一薄膜10の少なくとも一部及び第二薄膜12の少なくとも一部に、変化領域を形成しうる荷重条件が好ましい。第一薄膜10及び第二薄膜12を、同じ条件で荷重することが好ましい。
【0051】
第一薄膜10をなす樹脂組成物の基材樹脂が、ポリカーボネート樹脂である場合、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上の圧力で第一薄膜10に荷重する。これにより、第一薄膜10の少なくとも一部が、検出可能な程度に白色化する。第一薄膜10の変形又は破損防止の観点から、1.0MPa以下の圧力で荷重することが好ましい。
【0052】
第二薄膜12をなす樹脂組成物の基材樹脂が、ポリカーボネート樹脂である場合、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上の圧力で第二薄膜12に荷重する。これにより、第二薄膜12の少なくとも一部が、検出可能な程度に白色化する。第二薄膜12の変形又は破損防止の観点から、1.0MPa以下の圧力で荷重することが好ましい。
【0053】
第一計測工程及び第二計測工程において、変化領域の面積を計測する方法は特に限定されない。第一薄膜10及び第二薄膜12をなす樹脂組成物の種類及び物性に応じて、光学顕微鏡等による画像解析、吸光度測定、透過率測定、濁度測定、屈折率測定、白色度測定、光学濃度測定等が適宜選択されて用いられる。第一薄膜10及び第二薄膜12をなす樹脂組成物の基材樹脂が、ポリカーボネート樹脂である場合、光学顕微鏡による画像解析法が好適に用いられる。
【0054】
本発明に係る評価方法では、処理工程、第一荷重工程及び第一計測工程を経ることによって、試験面16と、摩擦処理された第一測定面6とのミクロスケールでの接触状態を把握することができる。この評価方法では、第二荷重工程及び第二計測工程を経ることによって、試験面16と、摩擦処理されていない第二測定面8とのミクロスケールでの接触状態を把握することができる。
【0055】
本発明に係る評価方法によれば、試験面16に対する摩擦処理された第一測定面6の単位面積当たりの実接触面積S1と、摩擦処理されていない第二測定面8の単位面積当たりの実接触面積S2とを指標とすることにより、好ましくは、単位面積当たりの実接触面積S1と単位面積当たりの実接触面積S2との比(S1/S2)を指標とすることにより、加硫ゴムと試験面とのミクロスケールでの接触状態を反映した評価結果が得られる。さらに、この評価結果には、摩擦による加硫ゴムの表面状態の変動も反映されうる。この評価方法によって得られる加硫ゴムの摩擦性能の評価結果は、実路面における評価結果とよく相関する。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0057】
[実施例1]
バンバリーミキサーに、基材ゴム(旭化成社製のスチレンブタジエンゴム、「タフデン4850」)、カーボンブラック(新日化カーボン社製の「ニテロン#55S」)、シリカ(デグッサ社製の「ウルトラジルVN3」)、老化防止剤1(大内新興化学工業社製の「ノクラック6C」)、老化防止剤2(フレキシス社製の「ノクラック224」)、ステアリン酸(日油社製の「桐」)、酸化亜鉛(三井金属鉱業社製)、カップリング剤(デグッサ社製の「Si69」)、ワックス(大内新興化学社製の「サンノックN」)及びオイル(ジャパンエナジー社製の「プロセスX−260」)を投入して、150℃で5分間混練した。得られた混練物に、硫黄(鶴見化学工業社製の粉末硫黄)、加硫促進剤DPG(大内新興化学工業社製のノクセラーD)及び加硫促進剤CZ(住友化学製のソクシノールCZ)を添加して、オープンロールを用いて100℃で3分間混練することにより、未加硫ゴムを得た。得られた未加硫ゴムをモールドに投入して、170℃で12分間、プレス加硫することにより、配合Aの加硫ゴムからなるゴムシートを作製した。
【0058】
所定量の水酸化アルミニウム(昭和電工社製の「ハイジライトH−43」)を添加した以外は同様にして、配合B及び配合Cの加硫ゴムシートを作製した。基材ゴム100質量部に対する水酸化アルミニウムの添加量が、下記表1に示されている。
【0059】
初めに、配合Aの加硫ゴムシートを切削加工して、幅25mm×長さ33mm×厚み8mmである第一供試体と、幅20mm×長さ30mm×厚み6mmである第二供試体とを準備した。
【0060】
次に、ポリカーボネート樹脂(ACROS ORGANICS製)をクロロホルム(和光純薬製、試薬特級)に溶解して、濃度5質量%のキャスト液を得た。このキャスト液5mlをガラス板に滴下し、スピンコーター(回転速度2000rpm、回転時間30秒)で均一に塗布した後、60℃で2時間乾燥して、ガラス板から剥離することを繰り返して、直径30mm、厚み1μmの第一薄膜及び第二薄膜を準備した。
【0061】
準備した第一供試体の底面を、HENTSCHEL社製のPortable friction tester(PFT装置)を用いて摩擦処理した。摩擦処理条件は、以下の通りである。
路面状態:ウェット状態のアスファルト路面
処理温度:23℃
移動速度:2000mm/秒
繰り返し回数:8回
摩擦処理された底面に付着した少量の粘着性物質を、目視により確認した。その後、摩擦処理された底面を残すように、第一供試体を切削して、幅20mm×長さ30mm×厚み6mmに加工した。
【0062】
続いて、ドライ状態のアスファルト路面(温度23℃)を準備し、この路面上に、第一薄膜を設置した。この第一薄膜上に第一供試体を載置して、第一供試体の摩擦処理された底面と第一薄膜とを接触させた。その後、第一供試体上に、質量12kgのウェイトを60秒間静置して、第一薄膜を0.2MPaの圧力で荷重した。
【0063】
荷重後に、第一薄膜を採取して、マイクロスコープで撮影して、図4の画像を得た。この画像を、マイクロスコープに付属の画像解析ソフトを用いて2値化処理した後、白色領域の面積を計測した。白色領域の面積を、第一供試体の底面の面積600mm(20mm×30mm)で除して、単位面積当たりの実接触面積S1を算出した。
【0064】
前述のアスファルト路面に、第二薄膜を設置し、この第二薄膜上に、第二供試体を載置して、第二供試体の底面と第二薄膜を接触させた。その後、第二供試体上に、質量12kgのウェイトを60秒間静置して、第二薄膜を0.2MPaの圧力で荷重した。荷重後に採取した第二薄膜をマイクロスコープで撮影して得られた画像が、図5に示されている。この画像の白色領域の面積を計測し、第二供試体の底面の面積600mm(20mm×30mm)で除して、単位面積当たりの実接触面積S2を算出した。
【0065】
配合Aの加硫ゴムシートに代えて、配合B及び配合Cの加硫ゴムシートを用いる以外は同様にして、単位面積当たりの実接触面積S1及びS2を、それぞれ算出した。
【0066】
その後、配合A−Cの加硫ゴムについて、それぞれ、実接触面積S2に対する実接触面積S1の比(S1/S2)を計算して、加硫ゴムの摩擦性能を評価した。配合Aの加硫ゴムについて得られた比(S1/S2)を100としたときの指数が、INDEX(S1/S2)として、下表1に示されている。数値が大きいほど、評価が高い。
【0067】
[比較例1]
比較例1では、加硫ゴムの損失正接(tanδ)を指標として摩擦性能を評価した。初めに、実施例1で作製した配合A−Cの加硫ゴムシートから、それぞれ加硫ゴムを採取して、JIS K6394に準拠して試験片を作成した。その後、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所製)を用いて、温度0℃、初期歪み10%、動的歪み0.5%、周波数10Hzの条件下で、粘弾性測定をおこない、配合A−Cの加硫ゴムの損失正接(tanδ)を得た。配合Aの加硫ゴムの損失正接(tanδ)を100としたときの指数が、INDEX(tanδ)として下表1に示されている。数値が大きいほど、評価が高い。
【0068】
[比較例2]
比較例2では、実施例1で算出した単位面積当たりの実接触面積S2を指標として、加硫ゴムの摩擦性能を評価した。配合Aの加硫ゴムについて得られた実接触面積S2を100としたときの指数が、INDEX(S2)として下表1に示されている。数値が大きいほど、評価が高い。
【0069】
[参考例]
実施例1で前述した配合Aの加硫ゴムをトレッドゴムとする試作タイヤA(サイズ:195/65R15)を製造した。試作タイヤAを正規リムに組み込んだ後、内圧180kPaで空気を充填し、試験車両に装着した。ウェット状態のアスファルト路面で、試験車両を速度80km/hで走行させ、ブレーキをかけてから停止するまでの最大摩擦係数μを測定した。同様に、配合Bの加硫ゴムをトレッドゴムとする試作タイヤBと、配合Cの加硫ゴムをトレッドゴムとする試作タイヤCとを製造して、各試作タイヤの最大摩擦係数μを測定した。試作タイヤAの測定値を100としたときの指数が、INDEX(μ)として下表1に示されている。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示されるように、実施例1の評価結果は、参考例の評価結果と相関する。比較例1及び2の評価結果は、いずれも参考例の評価結果とは相関しない。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明された方法は、種々の高分子材料の摩擦性能の評価にも適用されうる。
【符号の説明】
【0073】
2・・・第一供試体
4・・・第二供試体
6・・・第一測定面
8・・・第二測定面
10・・・第一薄膜
12・・・第二薄膜
14・・・試験体
16・・・試験面
18・・・摩擦面
20・・・実接触部
図1
図2
図3
図4
図5