【文献】
杉浦綾,産業用無人ヘリコプタを用いたフィールド情報のリモートセンシングシステム,北海道大学大学院農学研究院邦文紀要,北海道大学,2007年 2月16日,28(2),p.133-201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態においては、作業車両をトラクタ1として説明する。なお、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。そして、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、実施形態に係る作業車両の作業管理システムの説明図であり、図示するように、作業管理システムには、作業車両であるトラクタ1と、複数の回転翼24を備えた無人飛行体であるドローン2とが含まれる。なお、
図1においては、トラクタ1を便宜上、一点鎖線の囲みの中で側面視と平面視とで示した。
【0019】
トラクタ1は、記憶装置120や情報処理装置を備えるコンピュータにより構築された車両制御部100と、タブレット端末のように携行自在であって、車両制御部100と有線あるいは無線で接続可能な情報記憶端末10とを有する制御部1Aを備える(
図5参照)。また、情報記憶端末10は、基地局3を介して、インターネットあるいは所定の通信網に接続されており、トラクタ1を用いた作業管理を行う管理者が所有するサーバ4と、パーソナルコンピュータなどの複数の端末装置5と接続している。なお、端末装置5からもサーバ4を介してトラクタ1の作業を管理することは可能である。
【0020】
また、トラクタ1には、機体に複数のカメラ7が設けられるとともに、キャビン上部には、GNSSアンテナ6が設けられている。
【0021】
一方、ドローン2は、コントローラ200(
図5参照)と、カメラ22と、複数の航法衛星Sから送信される電波を受信して自己位置を測定する測位装置21としてのGNSS(Global Navigation Satellite System)装置とを備えており、後述する飛行経路R2に沿って圃場8の上空を飛行しながら、カメラ22によって圃場画像を撮影することができる。なお、コントローラ200は、記憶装置や情報処理装置を備えるコンピュータから構成される。
【0022】
上述した作業管理システムにおいて、詳しくは後述するが、トラクタ1側に設けられる制御部1Aは、ドローン2のカメラ22が撮像した画像情報と、測位装置21から取得したカメラ22による撮像位置を示す位置情報とを合成処理して圃場情報を生成し、生成した圃場情報に基づいて作業管理処理を実行することができる。
【0023】
先ず、トラクタ1について、
図2および
図3を参照して説明する。
図2は、実施形態に係る作業車両であるトラクタ1の模式的説明図、
図3は、同トラクタ1の伝動機構を示す線図である。
【0024】
圃場8で作業を行うトラクタ1は、
図2に示すように、機体の左右側それぞれに、左右の前車軸406L,406Rに取付けられた前輪301L,301Rと、左右の後車軸405L,405Rに取付られた左右の後輪302L,302Rとを備える。なお、以下では、符号にLを付して左側を、Rを付して右側を示すことにするが、左右を区別する必要が無い場合は、例えば、前輪301、後輪302などのように記す場合がある。
【0025】
機体の前部には、エンジン321が搭載されており、かかるエンジン321から動力伝達機構を介して前輪301や後輪302へ伝達される。なお、本実施形態に係るトラクタ1は、4WDクラッチ324を備えており、この4WDクラッチ324の切換えによって、後輪302のみ駆動する2WD方式と、前輪301および後輪302が共に駆動する4WD方式とに切換え自在に構成されている。
【0026】
後輪302への動力伝達機構は、エンジン321の後段に、前後進クラッチ322を介して主変速部323が配設され、さらにその後段に副変速部325が配設され、その後段には後輪差動歯車装置326が配設される。そして、この後輪差動歯車装置326と後輪302とを連結する後車軸405の基部には、それぞれブレーキ装置312を設けている。
【0027】
また、副変速部325の後段に設けられたアイドルギヤを介して変速軸404へ入力され、4WDクラッチ324、前輪差動歯車装置320を介して前輪301への動力伝達がなされる。
【0028】
ところで、本実施形態に係るトラクタ1は、自動走行ができるように、車両制御部100により制御される自動走行ユニット150(
図5参照)を備えている。そして、車両制御部100には、前輪301の操舵角を検出する操舵角センサ304が接続されており、自動走行時は、検出された実際の前輪301の操舵角をフィードバックしながら車両制御部100がステアリングシリンダ303を制御して操舵するようにしている。
【0029】
後輪302に設けたブレーキ装置312は、機体に設けたブレーキペダル310を操縦者が踏み込むことで、ブレーキシリンダ311が油圧により作用して機能する。すなわち、左後車軸405Lの基部に設けた左ブレーキ装置312Lを左ブレーキシリンダ311Lに接続するとともに、右後車軸405Rの基部に設けた右ブレーキ装置312Rを右ブレーキシリンダ311Rに接続する。
【0030】
図示するように、左右のブレーキシリンダ311L,311Rは、車両制御部100に接続した左右のブレーキソレノイド330L,330Rと接続している。そのため、車両制御部100に所定のブレーキ信号が入力されると、車両制御部100は、ブレーキソレノイド330を駆動して、左右のブレーキ装置312L,312Rのいずれか一方または両方を作動させることができる。なお、ブレーキソレノイド330は、例えば、油圧ポンプ341、リリーフバルブ340などと共に油圧回路を構成する。
【0031】
次に、
図3を参照しながら、トラクタ1のエンジン321から前輪301、後輪302までの動力の伝達経路について説明する。図示するように、エンジン321の出力軸は、前・後進を切り換える前後進切換クラッチ322を介して動力伝達軸401と連結している。したがって、トラクタ1は、前後進切換クラッチ322を切換えることによって、動力伝達軸401を選択的に正逆転することができる。
【0032】
また、動力伝達軸401は、主変速部323、副変速部325に連結されている。主変速部323には、第1クラッチギヤ361と第3クラッチギヤ363とを有する一速/三速切換用クラッチ402と、第2クラッチギヤ362と第4クラッチギヤ364とを有する二速/四速切換用クラッチ403とが装着され、エンジン321からの動力を1速〜4速に変速して出力可能としている。
【0033】
さらに、主変速部323は、高低クラッチ365を装着しており、1速〜4速を、それぞれさらに高速あるいは低速に切換え可能としている。
【0034】
主変速部323の動力が入力される副変速部325には、図示しない副変速レバーで操作される二連の副変速クラッチの第1のシフタ381と第2のシフタ382と複数の伝達ギヤとを備える。かかる第1のシフタ381と第2のシフタ382とがいずれの伝達ギヤと係合するかにより、超低速、低速、中速および高速とに変速することができる。そして、副変速部325の出力軸の回転が、後輪差動歯車装置326から車軸および後輪遊星歯車機構391を介して後輪302へ伝動される。
【0035】
また、主変速部323から副変速部325へ入力される動力が、アイドルギヤを介して4WDクラッチ324を装備した変速軸404へ入力されることにより、前輪301への駆動力伝動がなされる。4WDクラッチ324の作用により、通常の前輪駆動から増速された前輪駆動への切り換えも可能となっている。なお、4WDクラッチ324を中立にすると、前輪301の駆動が断たれて後輪のみの駆動、すなわち2WDとなる。
【0036】
こうして、4WDクラッチ324の後段部に伝達された動力は、前輪差動歯車装置320と前輪遊星歯車機構390とを介して前輪301へと伝達される。
【0037】
また、作業車両であるトラクタ1は、PTO(Power Take Off)クラッチ366を備えており、PTOクラッチ366を繋ぐことで、エンジン321からの動力をPTO軸392へと伝達することができる。
【0038】
PTO軸392は、前段側にPTO変速第1シフタ371およびPTO変速第2シフタ372が設けられており、これらが操作されることにより、低速から高速でPTO軸392を順回転させることができるとともに、逆転させることも可能となっている。
【0039】
次に、無人飛行体であるドローン2について説明を加える。
図4は、本実施形態に係る作業管理システムで用いられるドローン2の説明図である。
【0040】
図示するように、ドローン2は、本体から放射状に延在する4本のアーム部20の先端に、それぞれ回転翼24が設けられる。また、本体部の下部には、例えば二点支持により姿勢変更自在に取付けられたカメラ22と、圃場8の地面形状を測定可能な圃場面形状測定装置としてのレーダ23とが設けられる。他方、ドローン2の本体内部には、飛行制御を行うためのコントローラ200および自己位置を認識可能な測位装置21が設けられる(
図5参照)。
【0041】
次に、
図5を参照しながら、トラクタ1の作業管理システムにおける制御系について説明する。
図5は、トラクタ1の制御部1Aを中心とした機能ブロック図である。制御系の中核をなす制御部1Aは、トラクタ1に搭載された車両制御部100と、例えば作業者が携行するタブレットタイプの情報記憶端末10とで構成される。なお、情報記憶端末10は、トラクタ1内にセットすることも可能である。このように、本実施形態では、トラクタ1の制御部1Aを、車両制御部100と情報記憶端末10とを備える構成としているが、車両制御部100と情報記憶端末10とのうち、いずれか一方のみの構成であってもトラクタ1の制御部1Aの構築は可能である。
【0042】
情報記憶端末10は、ハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部11と、タッチパネルにより構成される表示部12および操作部13とを備える。なお、操作部13としては、各種キーやボタンなどが設けられていてもよい。
【0043】
本実施形態に係るトラクタ1は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、トラクタ1が備える車両制御部100は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部をはじめ、各種プログラムや、圃場8毎に予め定めた予定走行経路データなどの必要なデータ類が格納された記憶装置120と、複数のコントローラを備える。
【0044】
コントローラとしては、例えば、走行系を制御する走行系コントローラ110、作業管理に関する制御を行う作業管理コントローラ130、機体後部に連結する、例えば耕耘装置などの作業機を制御する作業機系コントローラ140などがある。なお、記憶装置120は、ハードディスクやROM、RAMなどで構成され、かかる記憶装置120に格納されたデータなどは、情報記憶端末10や
図1に示すサーバ4や端末装置5と共有することも可能である。
【0045】
走行系コントローラ110、作業管理コントローラ130、および作業機系コントローラ140は、これらについても、いずれもCPUなどを有する処理部や、制御プログラムが格納されるROM、作業領域用のRAMなどのストレージ部、さらには入出力部が設けられており、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能となっている。なお、ストレージ部のROMには、各コントローラの制御対象に応じた制御プログラムなどがそれぞれ格納される。
【0046】
また、車両制御部100には、
図2および
図3に示した伝動機構を含む走行駆動装置160、トラクタ1の機体に搭載したカメラ7などを含む走行系各種センサ170、PTOクラッチ366や図示しない作業機昇降装置などを含む作業機昇降駆動装置180、作業機を制御するために必要な作業機系各種センサ190などが接続される。
【0047】
こうして、トラクタ1は、作業者が機体に搭乗して走行しながら所定の作業を実行するほか、車両制御部100により自動走行ユニット150を駆動して自動走行させながら所定の作業を実行させることができる。
【0048】
トラクタ1を自動走行させる場合、作業内容に応じた予定走行経路R1が予め圃場8毎に定められ(
図6および
図7を参照)、データ化されて記憶装置120に格納される。予定走行経路R1は、圃場8の形状、大きさ、圃場8内に形成された畝の幅、長さおよび本数、そして作物の種類などに応じて設定される。予定走行経路R1の設定は、例えば、
図1におけるサーバ4や端末装置5を用いて設定することができる。
【0049】
なお、予定走行経路R1にしたがって実行されるトラクタ1の自動走行について、本実施形態では車両制御部100により実行させるようにしたが、例えば、情報記憶端末10を介しても実行させることが可能であり、さらには、
図1に示した端末装置5を介して実行させることも可能である。
【0050】
また、
図5に示すように、制御部1Aとドローン2とは、無線による通信が可能である。すなわち、ドローン2のコントローラ200が備える通信装置を介して、情報記憶端末10および車両制御部100のいずれもがドローン2と通信することができる。
【0051】
ドローン2のコントローラ200は、記憶部(不図示)を備えており、この記憶部に格納された飛行経路情報や飛行プログラムおよび撮像プログラムなどに従って、所望する圃場8(
図6、
図7を参照)の上空を飛行しながら、圃場画像を撮影することができる。なお、記憶部に格納された飛行経路情報や飛行プログラムおよび撮像プログラムなどは、車両制御部100や情報記憶端末10、あるいは、
図1に示したサーバ4や端末装置5などからドローン2のコントローラ200に送信することもできる。また、ドローン2の動作制御は、情報記憶端末10や、
図1に示した端末装置5によって制御することもできる。
【0052】
ここで、作業管理対象となる圃場8について説明する。
図6は、作業管理対象となる圃場8を示す説明図、
図7は、作業管理対象となる圃場8におけるトラクタ1の予定走行経路R1を示す説明図である。
【0053】
図6に示すように、農道を挟んで、それぞれ矩形状に区画された複数の圃場8a〜8fがあるとする。予定走行経路R1は、各圃場8a〜8fに応じてそれぞれ設定されるが、例えば、各圃場8a〜8fの形状や面積、および進入・進退路810の位置が同じで、かつ作物も同じである場合は、同一の予定走行経路R1を兼用することもできる。
【0054】
予定走行経路R1は、
図7に示すように、例えば、圃場8内を効率的に走行しながら圃場8内の畝全体に対して所定の作業が行えるように規定されるもので、図示するように、圃場8に設けられたトラクタ1の進入路81から退出路82にかけて設定される。なお、
図7においては、便宜上、進入路81と退出路82とをそれぞれ独立して設けたものとしているが、
図6に示すように圃場8に対して1つの進入・進退路810を設けてあっても構わない。
【0055】
上述した作業管理システムにおける制御系の構成において、制御部1Aは、飛行経路データに沿って圃場8の上空を飛行するドローン2のカメラ22が撮像した画像情報と、測位装置21から取得したカメラ22の撮像位置を示す撮像情報とを合成処理して圃場情報を生成する。そして、制御部1Aは、生成した圃場情報に基づいて、トラクタ1による作業の管理を行うようにしている。
【0056】
ここで、飛行経路データに従って飛行するドローン2の飛行経路R2について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、作業管理対象となる圃場8におけるドローン2の飛行経路R2を示す説明図である。
【0057】
図示するように、本実施形態では、対象となる圃場8を、碁盤目状に区画して複数の小領域800を規定する。そして、ドローン2は、各小領域800の中央を順次通過しながら、各小領域800における圃場画像を撮像するようにしている。
【0058】
したがって、各小領域800と番地情報(座標情報)とをリンクさせた地図情報を、ドローン2とトラクタ1とが共有することになるため、圃場8内の圃場状態にばらつきがあっても、それぞれの位置が座標的に特定できる複数の小領域800における圃場画像のデータを利用することで、圃場8の状態のばらつきの管理を、勘や経験などに頼らず科学的に管理することができる。また、例えば、
図6に示した複数の圃場8a〜8fについて、同じ条件で区画した小領域800の圃場画像を収集しておくことで、いわゆる精密農法(精密農業)における有益なデータ収集が可能となる。なお、小領域800を設定する場合、小領域800の中央に、各畝における作物植付位置が重なるようにするとよい。
【0059】
また、本実施形態に係る作業管理システムでは、作業の管理の一環として、制御部1Aは、予め設定された予定走行経路R1と、ドローン2のカメラ22が撮像した画像情報を利用して生成した圃場情報とを比較し、比較結果に基づいて、予定走行経路R1を修正するようにしている。
【0060】
すなわち、作物を植え付けたときの圃場情報を画像データとして取得しておき、植付けた作物が生育した際の圃場情報をこれも画像データとして取得し、両者を画像的に重ねることで、例えば雑草が生えた場合、
図9Aに示すように、その位置を作物の位置と関連付けて特定することが可能となる。
図9Aは、トラクタ1の作業管理システムにおいて取得する圃場情報の一例を示す説明図である。
【0061】
このように、雑草などの障害物9と作物との位置が明確になるため、予定走行経路R1上に、例えば雑草などが障害物9として存在する場合、その障害物9の規模などに応じて予定走行経路R1を修正することができる。したがって、例えば、薬剤散布作業などのような作物が生育中の圃場8を走行して作業を行う場合、生育状況をトラクタ1の走行予定経路R1に反映することができる。そして、障害物9を避けた走行経路となるように修正することで、トラクタ1を自動走行させても安全性が損なわれることはない。
【0062】
また、制御部1Aは、例えば、作物の植付け時における圃場情報と、作物の植付位置情報とを関連付けた植付時圃場情報を生成し、植付けた作物が生育中の圃場8における圃場情報と、植付時圃場情報とを比較してトラクタ1による作業領域を決定することもできる。
【0063】
このとき、制御部1Aは、ドローン2に設けたレーダ23(
図1、
図4を参照)を用いて、
図9Bに示すように所定の高さで飛行しながら、圃場面形状情報を圃場情報の一つとして取得することができる。
図9Bは、トラクタ1の作業管理システムにおける圃場面形状測定方法の一例を示す説明図である。
【0064】
図9Bに示すように、圃場面形状情報を立体的に捉えることができるため、盛り上がった畝
830なども認識することができ、畝
830が形成された圃場8であっても、畝
830の並び方などを配慮しながら作業領域を決定することができるため、トラクタ1を安全に自動走行させて所望する作業を行うことができる。
【0065】
また、図示するように、ドローン2から作物までの距離H1、ドローン2から畝
830の高さまでの距離H2、ドローン2から圃場面まで距離H3などを取得することができるため、作物の高さなども正確に把握することができ、生育度合などを確認できる圃場情報として、圃場の管理作業に有効活用することができる。特に、かかる作物などの高さを含む情報を、ドローン2を定期的に飛行させて取得すれば、作物の生育状態に応じた精密な作業管理を行うことが可能となる。
【0066】
このように、本実施形態に係る作業管理システムによれば、圃場8内に盛り上がった畝
830が複数列で存在し、かかる畝
830に作物820が生育している場合、植付時圃場情報と、ドローン2のカメラ22が撮像した画像情報を利用して生成した圃場情報に示される雑草などの障害物9との互いの位置関係が明確に表示される。したがって、予定走行経路R1の修正も容易に行えるとともに、より充実した作業管理を行うことができる。
【0067】
上述してきたトラクタ1の作業管理システムにおける作業管理処理について、
図10および
図11を参照しながら説明する。
図10および
図11は、実施形態に係るトラクタ1の作業管理システムにおける作業管理処理の一例を示すフローチャートである。
【0068】
図10に示すように、制御部1Aは、先ず、ドローン2がカメラ22で撮像した圃場8の画像情報を取得する(ステップS110)。
【0069】
次いで、制御部1Aは、ドローン2に設けられた測位装置21から取得した、カメラ22による撮像位置を示す位置情報を取得する(ステップS120)。
【0070】
そして、制御部1Aは、ステップS110およびステップS120で取得した画像情報と位置情報とを合成し、圃場情報を生成する(ステップS130)。かかる圃場情報には、当初設定したトラクタ1の予定走行経路R1上には存在していなかった雑草や窪地などの障害物情報が位置データとして含まれるほか、撮像された圃場画像もデータとして記録されるようにする。
【0071】
次いで、制御部1Aは、記憶装置120に格納されている予定走行経路R1のデータを取得し(ステップS140)、ステップS130で生成した圃場情報と比較する(ステップS150)。
【0072】
そして、制御部1Aは、予定走行経路R1に重なるように、例えば雑草などの障害物9が存在するかどうかを判定する(ステップS160)。すなわち、予定走行経路R1を示す位置座標データの上に障害物情報が存在するか否かを判定する。なお、かかる判定は、ステップS130で生成した圃場情報を、例えば
図9Aに示すような画像として情報記憶端末10の表示部12、あるいは端末装置5(
図1参照)に表示させることで、作業者が判定することもできる。
【0073】
ステップS160において、予定走行経路R1上に障害物9は存在しないと判定した場合(ステップS160:No)、制御部1Aは、処理をそのまま終える一方、予定走行経路R1上に障害物9が存在すると判定した場合(ステップS160:Yes)、予定走行経路R1を修正して最新版に更新する(ステップS170)。例えば、雑草や窪地などの障害物9であれば、その程度に応じて迂回するように進路を変更する。また、雑草などの位置もピンポイントで認識することができるため、例えば薬剤散布などの予定していた作業の前に、雑草除去作業を新たな作業として組込むような作業管理の変更も容易に行うことができる。
【0074】
このように、本実施形態に係る作業管理システムによれば、トラクタ1が予定走行経路R1にしたがって自動走行する場合、予定走行経路R1を設定した際には存在していなかった障害物9が生じたとしても、自動走行前に障害物9を認識してトラクタ1を安全に自動走行させることができる。
【0075】
次に、植付けた作物を育成中の圃場8における圃場情報と、植付時圃場情報とを比較してトラクタ1による作業領域を決定する作業管理の処理について説明する。
図11に示すように、制御部1Aは、作物の植付時圃場情報を第1圃場情報として取得する(ステップS210)。
【0076】
次いで、制御部1Aは、作物が生育中の圃場8における圃場情報を第2圃場情報として取得する(ステップS220)。
【0077】
そして、制御部1Aは、ステップS210で取得した第1圃場情報とステップS220で取得した第2圃場情報とを比較し(ステップS230)、生育中の作物近傍に障害物9となりうる雑草などが生えているか否かを判定する(ステップS240)。
【0078】
制御部1Aは、作物近傍にそのような雑草は生えていないと判断すると処理を終了する(ステップS240:No)。一方、作物近傍にそのような雑草が生えていると判断した場合(ステップS240:Yes)、かかる雑草を除去するための除草領域(作業領域)を決定し、作業領域を示す位置データを管理データとして作業管理コントローラ130に渡し、本処理を終了する。
【0079】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る作業車両の作業管理システムによれば、圃場8内での作物の育成状況に関する圃場情報を取得することで、取得した圃場情報に基づき、作物の育成状況に応じた適切な作業管理を行うことができる。
【0080】
上述してきた実施形態より、以下のトラクタ1(作業車両)の作業管理システムが実現する。
【0081】
(1)カメラ22と、自己位置を測定する測位装置21とを備え、所定の飛行経路R2に沿って圃場8の上空を飛行しながらカメラ22によって圃場画像を撮影するドローン2と、カメラ22が撮像した画像情報と、測位装置21から取得したカメラ22による撮像位置を示す位置情報とを合成処理して圃場情報を生成する制御部1Aとを有し、制御部1Aは、生成した圃場情報に基づいて作業管理処理を実行する作業車両の作業管理システム。
【0082】
(2)上記(1)において、所定の飛行経路R2は、圃場8を碁盤目状に区画した各小領域800を順次通過しながら、各小領域800における圃場画像を撮像可能な飛行経路R2とした作業車両の作業管理システム。
【0083】
(3)上記(1)または(2)において、制御部1Aは、作業管理処理として、生成した圃場情報と、予め設定された予定走行経路R1とを比較し、比較結果に基づいて当該予定走行経路R1を修正する作業車両の作業管理システム。
【0084】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、制御部1Aは、作物の植付け時における圃場情報と、作物の植付位置情報とを関連付けた植付時圃場情報を生成し、植付けた作物が生育中の圃場8における圃場情報と、植付時圃場情報とを比較してトラクタ1による作業領域を決定する作業車両の作業管理システム。
【0085】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、ドローン2は、圃場8の地面形状を測定するレーダ23をさらに備え、圃場情報の一つは、測位装置21により所定の高さで飛行しながらドローン2が取得した圃場面形状情報である作業車両の作業管理システム。
【0086】
上述してきた実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。例えば、作業車両としてはトラクタ1に限定するものではなく、圃場8において走行しながら作業を行うものは全て含まれる。また、各構成や、形状、表示要素などのスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質など)は、適宜に変更して実施することができる。