(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、固定タグが必要である。そのため、固定タグを設置するスペースが必要である等の問題がある。このことから、固定タグなしで、定められた通路を移動する無線タグを識別できる技術が望まれていた。
【0005】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、固定タグを必要とせずに、定められた通路を移動する無線タグを識別できるタグリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、発明の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、
予め定めた周波数の探索波を、無線タグが移動しているか否かを判断する通路の通過判断領域に向けて送信する送信アンテナ(11)と、
通過判断領域に存在している無線タグが探索波に応答して送信する応答波を受信するために、通路の長手方向において、互いの距離が探索波の波長の1/4以下になるように配置されている第1受信アンテナ(11)および第2受信アンテナ(12)とを備えたタグリーダであって、
第1時刻に送信アンテナから探索波を送信した後、無線タグの移動距離が探索波の波長の1/4以上になる前の第2時刻に送信アンテナから探索波を送信する送信制御部(S100)と、
第1時刻に送信アンテナが送信した探索波に応答して無線タグが送信し、第1受信アンテナ、第2受信アンテナがそれぞれ受信した応答波の位相(α、β)と、第2時刻に送信アンテナが送信した探索波に応答して無線タグが送信し、第1受信アンテナ、第2受信アンテナがそれぞれ受信した応答波の位相(γ、δ)を取得する位相取得部(S210、S220)と、
位相取得部が取得した4つの位相の位相差が位相の1周期分に入るように、4つの位相のうちの1つの位相を基準として、他の3つの位相を補正する位相補正部(S230)と、
位相補正部が補正した後の位相である補正後位相と基準とした位相とに基づいて、第1時刻における無線タグと第1受信アンテナとの間の距離(L1
t1)、第1時刻における無線タグと第2受信アンテナとの間の距離(L2
t1)、第2時刻における無線タグと第1受信アンテナとの間の距離(L1
t2)、第2時刻における無線タグと第2受信アンテナとの間の距離(L2
t2)を、同じ位相周回数を未知数として持つ4つの距離式でそれぞれ表す距離式決定部(S240)と、
第1受信アンテナの位置、第2受信アンテナの位置、第1時刻における無線タグの位置により定まる第1三角形(TR1)において、第1受信アンテナと第2受信アンテナとの間を底辺とし、底辺から無線タグの位置までを高さとして、三辺と高さとの関係を示す第1三角形関係式と、第1受信アンテナの位置、第2受信アンテナの位置、第2時刻における無線タグの位置により定まる第2三角形(TR2)において、第1受信アンテナと第2受信アンテナとの間を底辺とし、底辺から無線タグの位置までを高さとして、三辺と高さとの関係を示す第2三角形関係式に、距離式決定部で決定した4つの距離式を代入して、第1三角形および第2三角形の高さを算出する高さ算出部(S260)と、
高さ算出部が算出した高さを、タグリーダから無線タグが移動する経路までの最短距離であるとして、無線タグが通路を移動しているか否かを判断する通路判断部(S270)とを備えるタグリーダである。
【0008】
送信アンテナは、第1時刻と第2時刻に、無線タグが移動しているか否かを判断する通路の通過判断領域に向けて、探索波を送信する。この探索波を無線タグが受信した場合には応答波をタグリーダに返信する。応答波は第1受信アンテナおよび第2受信アンテナに受信される。
【0009】
無線タグ、第1受信アンテナ、第2受信アンテナにより三角形が形成できる。第1時刻において形成できる三角形を第1三角形とし、第2時刻において形成できる三角形を第2三角形とする。
【0010】
第1三角形においては、距離(L1
t1、L2
t1)が未知であり、第2三角形においては、距離(L1
t2、L2
t2)が未知である。これらの4つの距離(L)の変化は、いずれも位相変化に反映される。そこで、本発明では、第1、第2時刻において第1受信アンテナ、第2受信アンテナがそれぞれ受信した応答波の位相からこれらの距離(L)を推定する。
【0011】
位相からこれらの距離(L)を算出するためには、位相周回数を求める必要がある。しかし、それぞれの距離(L)における位相周回数を全て未知数としてしまうと、未知数が多すぎて未知数を求めることができない。
【0012】
そこで、本発明では、第1受信アンテナと第2受信アンテナを、通路の長手方向において互いの距離が探索波の波長の1/4以下になるように配置する。加えて、第2時刻は、送信アンテナから探索波を送信した後、無線タグの移動距離が探索波の波長の1/4以上になる前の時刻とする。詳しい説明は後述するが、これらの制約により、各距離(L)の相互の差が位相の1周期分以下になる。
【0013】
各距離(L)の相互の差が位相の1周期分以下になっても、位相周回数が同一であるとは限らず、ある距離(L)を基準としたときに、他の距離における位相周回数は、基準とした距離の位相周回数に対して1位相分ずれている可能性がある。そこで、位相補正部により、位相取得部が取得した4つの位相の位相差を、位相1周期分に入るように補正する。これにより、位相周回数を揃えたときの位相を決定できる。そして、補正後位相と基準となる位相で距離(L1
t1、L2
t1、L1
t2、L2
t2)を表す。
【0014】
第1三角形および第2三角形の各辺は、それぞれ未知数が位相周回数のみで表わせ、かつ、第1三角形、第2三角形は高さが同じである。そこで、第1三角形において三辺と高さとの関係を示す第1三角形関係式と、第2三角形において三辺と高さとの関係を示す第2三角形関係式とを立式すれば、連立方程式を解くことで、第1三角形および第2三角形の高さを求めることができる。
【0015】
この高さは、タグリーダから無線タグが移動するラインまでの最短距離を意味するので、この高さから、無線タグが、判断対象としている通路を移動しているか否かを判断することができる。
【0016】
このようにして、無線タグが、判断対象としている通路を移動しているか否かを判断できるので、固定タグを必要とせずに、定められた通路を移動する無線タグを識別できる。
【0017】
請求項2に係る発明では、
無線タグに対して、情報の書き込みをするための書き込み指示電波を送信する書き込み指示部(31)と、
第1三角形関係式と第2三角形関係式に、距離式決定部で決定した4つの距離式を代入して、未知数である位相周回数を求める位相周回数算出部(32)と、
位相周回数算出部が算出した位相周回数に基づいて、第2時刻における無線タグと第1受信アンテナとの間の距離(L1
t2)、第2時刻における無線タグと第2受信アンテナとの間の距離(L2
t2)の少なくとも一方である現在距離を算出する距離算出部(33)とを備え、
書き込み指示部は、現在距離に基づいて、無線タグが書き込みに必要な受信信号強度で書き込み指示電波を受信できる位置にいると判断したことに基づいて書き込み指示電波を送信する。
【0018】
無線タグの読み取りに必要な電波強度と比較して、無線タグに書き込むために必要な電波強度は強い。したがって、無線タグに情報の書き込みをする場合には、無線タグが書き込みに必要な受信信号強度で書き込み指示電波を受信できる位置にいるときが好ましい。
【0019】
そこで、この請求項2に係る発明では、無線タグの現在距離を算出する。現在距離を算出するために、未知数である位相周回数を求める。この位相周回数に基づいて、第2時刻における距離(L1
t2、L2
t2)を算出する。第2時刻は後の時刻であることから、第2時刻における距離(L1
t2、L2
t2)は現在距離を意味する。
【0020】
無線タグが通路を移動しており、かつ、現在距離が分かれば、無線タグの位置が分かるので、書き込み指示部は、無線タグが書き込みに必要な受信信号強度で書き込み指示電波を受信できる位置にいると判断したことに基づいて書き込み指示電波を送信する。これにより、書き込みに失敗してしまう可能性を低減できる。
【0021】
請求項3に係る発明では、
無線タグは通路を移動する物体に、通路に対して交差する方向に複数取り付けられており、
第1三角形関係式と第2三角形関係式に、距離式決定部で決定した4つの距離式を代入して、未知数である位相周回数を求める位相周回数算出部(32)と、
位相周回数算出部が算出した位相周回数に基づいて、第2時刻における無線タグと第1受信アンテナとの間の距離(L1
t2)、第2時刻における無線タグと第2受信アンテナとの間の距離(L2
t2)の少なくとも一方である現在距離を算出する距離算出部(33)とを備え、
通路判断部は、複数の無線タグに対して現在距離が算出できた場合、複数の無線タグに対して算出できた現在距離が、ともに予め記憶されている通路までの最短距離との差が所定距離以下になり、かつ、そのときの、複数の無線タグに対して算出された現在距離の差が基準距離差以下であることに基づいて、複数の無線タグは、通路を移動していると判断する。
【0022】
距離算出部により、無線タグまでの現在距離が算出できる。しかし、距離のみでは無線タグが通路を通過していることは確実には判断できない。通路からずれた分だけ、無線タグの位置が高さ方向に接近していれば、通路からずれた位置にあっても、無線タグの距離は通路を移動している場合と同じ距離になるからである。
【0023】
そこで、請求項3に係る発明では、複数の無線タグに対して算出できた現在距離が、ともに予め記憶されている通路までの最短距離との差が所定距離以下になったかを判断する。それに加えて、そのときの、複数の無線タグに対して算出された現在距離の差が基準距離差以下であるか否かも判断する。
【0024】
通路からずれた位置を移動している物体に装着されて移動している複数の無線タグは、タグリーダに最も接近したときでも、現在距離が相互に相違する。これに対して、通路を移動している物体に装着されて移動している複数の無線タグは、タグリーダに最も接近したとき、現在距離はともに、通路までの最短距離に近い距離になる。したがって、このようにすれば、無線タグが通路を通過していることの判断精度が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[使用状態の一例]
図1は、本発明の実施形態となるタグリーダ10の使用状態を示している。
図1に示す使用例では、タグリーダ10は、ゲート2の上部に設置されており、無線タグ3が、通路4を通っている否かを判断する。なお、ゲート2の付近における通路4は直線状である。
【0027】
図1の例では、無線タグ3は荷箱6に貼り付けられており、荷箱6はフォークリフト7により運ばれている。図示の便宜上、無線タグ3は、一つの荷箱6にのみ貼り付けられているが、実際には、管理を必要とする荷箱6には無線タグ3が貼り付けられている。
【0028】
なお、荷箱6以外の物品に無線タグ3が取り付けられていてもよい。また、無線タグ3が取り付けられる物品の搬送手段がフォークリフト7ではない搬送手段、たとえば、ベルトコンベアーラインでもよい。
【0029】
タグリーダ10は、通路4のゲート下付近に、無線タグ3を探索するため電波である探索波を送信する。探索波の周波数は、法規上許可されている周波数であればよい。本実施形態では、UHF帯、より具体的にはISMバンドとされている920MHz帯の周波数を用いる。
【0030】
無線タグ3はパッシブタグであり、探索波を受信したことで生じる電力で動作して、探索波に応答する信号を電波でタグリーダ10に送信する。無線タグ3が送信する信号には、無線タグ3を識別するIDが含まれている。無線タグ3が送信する電波を、以下、応答波とする。
【0031】
タグリーダ10は、異なる2つの時刻である第1時刻t1と第2時刻t2に探索波を送信し、応答波を受信する。そして、応答波の位相から、無線タグ3と第1アンテナ11、第2アンテナ12までの距離L1、L2を算出し、さらに、その距離L1、L2から、無線タグ3の移動経路において、タグリーダ10と無線タグ3との最短距離Lminを算出する。この最短距離Lminから無線タグ3の移動経路が通路4であるか否かを判断する。
【0032】
[タグリーダ10の構成]
図2にタグリーダ10の構成図を示す。タグリーダ10は、第1アンテナ11、第2アンテナ12、送信機13、カプラ14、アンテナ共用器15、第1受信部21、第2受信部22、演算部30、不揮発性メモリ40を備えている。
【0033】
第1アンテナ11は、探索波を送信するとともに、探索波に応答して無線タグ3が送信した応答波を受信する。この第1アンテナ11は請求項の第1受信アンテナに相当する。第1アンテナ11は、通路4の長手方向において通過判断地点5の両側を含むように通信可能領域を形成する。通信可能領域は、無線タグ3との通信が可能な領域である。タグリーダ10は無線タグ3と通信することで、無線タグ3が通路4を通過したか否かを判断する。よって、通信可能領域は通過判断領域ということもできる。
【0034】
第2アンテナ12は、応答波を受信するアンテナであり、探索波の送信には用いない。第2アンテナ12は、第1アンテナ11に対して通路4の長手方向に配置される。第2アンテナ12は請求項の第2受信アンテナに相当する。第1アンテナ11と第2アンテナ12との間の距離は、探索波の波長の1/4以下になっている。この理由は後述する。第1アンテナ11と第2アンテナ12はともに、通路4の幅方向中央に配置されている。
【0035】
送信機13は、探索波を表す信号である探索信号を生成して出力する。この信号は、カプラ14により分岐される。カプラ14により分岐された探索信号は、アンテナ共用器15、第1受信部21の直交復調器211、第2受信部22の直交復調器221に向かう。
【0036】
アンテナ共用器15は、送信機13からの信号は第1アンテナ11に出力し、第1アンテナ11が受信した応答波を表す応答信号は直交復調器211に出力する。第1アンテナ11は、探索波を空中に放射し、無線タグ3が送信した応答波を受信する。
【0037】
第1アンテナ11が受信した応答波は、直交復調器211に入力される。直交復調器211は、移相器212と、2つのミキサ213i、213qを備えている。移相器212には、カプラ14で分岐した探索信号が入力される。一方のミキサ213iには、応答信号と探索信号とが入力される。応答信号と探索信号とがミキサ213iで混合されると、ベースバンド信号の同相成分であるI信号が得られる。他方のミキサ213qには、応答信号と、探索信号が移相器212により位相が90度移相された信号が入力される。このミキサ213qからは、ベースバンド信号の直交成分であるQ信号が得られる。
【0038】
ミキサ213iで得られた信号はバンドパスフィルタ214i、ADコンバータ215iを介して演算部30に入力され、ミキサ213qで得られた信号はバンドパスフィルタ214q、ADコンバータ215qを介して演算部30に入力される。バンドパスフィルタ214i、214qは、時間位相ωtを持たない信号成分を選択的に通過させる。
【0039】
第2受信部22は第2アンテナ12と接続されており、第2アンテナ12が受信した応答波を表す応答信号が供給される。第2受信部22の構成は第1受信部21と同じである。第2受信部22は、直交復調器221、バンドパスフィルタ224i、224q、ADコンバータ225i、225qを備えている。これらは、第1受信部21が備える直交復調器211、バンドパスフィルタ214i、214q、ADコンバータ215i、215qと同じ構成である。また、直交復調器221は、移相器222と、2つのミキサ223i、223qを備えている。これらは、第1受信部21が備える直交復調器211の移相器212、ミキサ213i、213qと同じ構成である。
【0040】
演算部30は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータであり、CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMなどの記録媒体に記憶されているプログラムを実行することで、
図3、
図4のフローチャートに示す処理を実行する。これらのフローチャートに示す処理を実行することは、プログラムに対応する方法が実行されることを意味する。なお、演算部30が備える機能ブロックの一部又は全部は、一つあるいは複数のIC等を用いて(換言すればハードウェアとして)実現してもよい。また、演算部30が備える機能の一部又は全部は、CPUによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。
【0041】
不揮発性メモリ40には、タグリーダ10から通路4までの最短距離Lminが記憶されている。なお、タグリーダ10の通信可能領域に複数の通路4がある場合、それぞれの通路4の最短距離Lminが不揮発性メモリ40に記憶される。
【0042】
[演算部30の処理]
演算部30は、周期的に探索波を送信する。送信周期は、無線タグ3の移動距離が1/4波長以上になる時間よりも短い周期とする。920MHz帯の周波数を用いる場合、1/4波長は約8cmである。無線タグ3の移動速度は未知である。そこで、検出したい無線タグ3の移動速度として想定できる移動速度に基づいて送信周期を決定する。
【0043】
たとえば、送信周期が0.03sである場合を考える。0.03秒間に8cm移動する場合の速度は、8(cm)×3600(秒)/0.03(秒)=9.6(km/h)になる。ベルトコンベアーラインの移動速度やフォークリフトの移動速度を考えると、0.03秒程度にしておけば、無線タグ3の移動速度が不明でも、十分に、無線タグ3の移動距離が1/4波長以上になる時間よりも短い送信周期であることになる。
【0044】
演算部30は、
図3に示す送信制御処理S100を送信周期毎に実行する。
図3に示す処理は請求項の送信制御部としての処理を含んでいる。
ステップ(以下、ステップを省略する)S101では、探索波を送信する。S102では、応答波を受信したか否かを判断する。応答波を受信したか否かは、応答信号を復号し、IDなど所定の情報が得られたか否かにより判断する。S2の判断がNOであれば
図3の処理を終了し、YESであればS3に進む。
【0045】
S103では、応答波の位相を決定し、決定した位相を、演算部30が備えるRAMなどの所定の記憶部に記憶する。応答波の位相は式1と、I信号、Q信号の符号による定まる象限から決定する。式1において、A
QはQ信号の振幅であり、A
IはI信号の振幅である。式1は、受信波の波動関数から算出できる式である。
【数1】
【0046】
応答波は第1アンテナ11および第2アンテナ12でともに受信できるはずである。位相は、第1アンテナ11で受信した応答波、第2アンテナ12で受信した応答波の両方とも算出する。
【0047】
S104では、同じIDの無線タグ3から、応答波を連続して受信したか否かを判断する。この判断がNOであれば
図3の処理を終了し、YESであれば
図4に示す通路決定処理S200を実行する。
【0048】
[通路決定処理S200の概要]
図4に示す各ステップの処理を説明する前に、
図5、
図6を用いて、通路決定処理の概要を説明する。以下の説明において、第1時刻t1は、
図3のS4で連続受信したと判断した応答波のうち、先に受信した応答波に対応する探索波の送信時刻である。第2時刻t2は後に受信した応答波に対応する探索波の送信時刻である。
【0049】
第1時刻t1、第2時刻t2において、無線タグ3はそれぞれ
図5に示す位置にあるとする。距離L1
t1は、第1時刻t1における無線タグ3から第1アンテナ11までの距離である。距離L2
t1は、第1時刻t1における無線タグ3から第2アンテナ12までの距離である。距離L1
t2は、第2時刻t2における無線タグ3から第1アンテナ11までの距離である。距離L2
t2は、第2時刻t2における無線タグ3から第2アンテナ12までの距離である。距離dは、第1アンテナ11から第2アンテナ12までの距離である。
【0050】
また、距離L1
t1、距離L2
t1、距離dにより形成される三角形を第1三角形TR1とし、距離L1
t2、距離L2
t2、距離dにより形成される三角形を第2三角形TR2とする。距離L1
t1、距離L2
t1、距離L1
t2、距離L2
t2は、それぞれ、式2〜式5で表すことができる。
(式2) L1
t1=2kπ+α
(式3) L2
t1=2mπ+β
(式4) L1
t2=2nπ+γ
(式5) L2
t2=2pπ+δ
式2〜式5において、α、β、γ、δは位相である。位相αは第1時刻t1において第1アンテナ11が受信した応答波の位相であり、位相βは第1時刻t1において第2アンテナ12が受信した応答波の位相である。位相γは第2時刻t2において第1アンテナ11が受信した応答波の位相であり、位相δは第2時刻t2において第2アンテナ12が受信した応答波の位相である。k、m、n、pは位相周回数である。位相周回数は、各距離Lに存在する波の数である。
【0051】
第1三角形TR1と第2三角形TR2は、高さhが同じである。第1三角形TR1においては、高さhは式6で表すことができ、第2三角形TR2においては、高さhは式7で表すことができる。
【数6】
【数7】
【0052】
式6は、第1三角形TR1において、第1アンテナ11と第2アンテナ12との間の距離dを底辺とし、底辺から無線タグ3の位置までを高さhとして、三辺と高さとの関係を示す式であり、請求項の第1三角形関係式に相当する。式7は、第2三角形TR2において、距離dを底辺とし、底辺から無線タグ3の位置までを高さhとして、三辺と高さとの関係を示す式であり、請求項の第2三角形関係式に相当する。
【0053】
式6と式7の2つの連立方程式が成り立つので、未知数が2つであれば、それら2つの未知数を求めることができる。しかし、式6、式7には、そのままでは、4つの位相周回数k、m、n、pと、高さhの5つの未知数が存在する。
【0054】
そこで、位相周回数を1つにすることを考える。位相周回数を1つにするためには、距離L1
t1、L2
t1、L1
t2、L2
t2の差が、位相にして±π以内、すなわち、λ/2以下であればよい。ただし、位相差は往路と復路とも生じる。よって、さらに半分の差である必要がある。つまり、距離L1
t1、L2
t1、L1
t2、L2
t2の差をλ/4以下にすればよい。
【0055】
第1三角形TR1に着目すると、幾何学的に第1三角形TR1が成立しているので、式8が成立する。
(式8) |L2
t1−L1
t1|<d
式8の左辺は、距離L1
t1、L2
t1の差である。よって、dをλ/4より小さくすれば、|L2
t1−L1
t1|が、常にλ/4より小さくなることが分かる。式8とd<λ/4が成立するとき、L2
t1の式すなわち式3の位相周回数mを、L1
t1の式すなわち式2の位相周回数kとすることができる。
【0056】
同様に、第2三角形TR2に着目すると、幾何学的に第2三角形TR2が成立しているので、式9が成立する。
(式9) |L2
t2−L1
t2|<d
式9から、dをλ/4とすれば、|L2
t2−L1
t2|が常にλ/4より小さくなることが分かる。式9とd<λ/4が成立するとき、L2
t2の式すなわち式5の位相周回数pを、L1
t2の式すなわち式3の位相周回数nとすることができる。ここまでで、位相周回数をkとnの2つに減らすことができた。
【0057】
さらに、
図6に示す第3三角形TR3、第4三角形TR4を考える。第3三角形TR3は、第1三角形TR1の距離dに代えて、第1時刻t1から第2時刻t2までに無線タグ3が移動した距離Rを用いる三角形である。第4三角形TR4は、第2三角形TR2の距離dに代えて距離Rを用いる三角形である。
【0058】
第1三角形TR1および第2三角形TR2の場合と同様に考えると、幾何学的に第3三角形TR3が成立しているので式10が成立し、幾何学的に第4三角形TR4が成立しているので式11が成立する。
(式10) |L1
t2−L1
t1|<R
(式11) |L2
t2−L2
t1|<R
式8、式9の場合と同様に考えると、式10から、Rをλ/4とすれば、|L1
t2−L1
t1|が常にλ/4より小さくなることが分かる。また、式11から、Rをλ/4とすれば、|L2
t2−L2
t1|が常にλ/4より小さくなることが分かる。
【0059】
式10とR<λ/4が成立するとき、L1
t2の式すなわち式4の式における位相周回数nを、L1
t1の式すなわち式1の位相周回数kとすることができる。これにより、位相周回数nも位相周回数kに置き換えることができた。
【0060】
これにより、式6、式7を解くことで、位相周回数kを求めることができるようになる。また、高さhも求めることができる。高さhは、無線タグ3がタグリーダ10の真下にきたときの距離、すなわち、距離Lの最小値である。距離Lの最小値は、無線タグ3が通路4を通っているか、あるいは、他の通路や通路以外のところを通っているかにより変化する。よって、距離Lの最小値、すなわち高さhにより、無線タグ3が通路4を移動しているか否かを判断できるのである。
【0061】
次に、
図4を説明する。S210では位相α、βを取得する。S220では位相γ、δを取得する。これらS210、S220は請求項の位相取得部に相当する。
【0062】
S230では、位相補正処理を行う。S230は請求項の位相補正部に相当する。本実施形態では、距離d、Rをともにλ/4より小さくすることで、位相α、β、γ、δは、相互の位相差が−π〜πの間になる。しかし、S103で算出される位相は、0〜2πの範囲である。そのため、算出される位相は、基準の位相に対して−π〜π以上の差がある場合がある。そこで、位相補正処理を行うのである。なお、本実施形態では、基準の位相を位相αとする。たとえば、位相αが240度、位相βが、位相αに対して130度後の位相の場合、算出される位相βは10度になる。この場合、位相βを240度+130度=370度に補正する。
【0063】
位相補正処理は詳しくは
図7に示す処理を実行する。S2301では、α−βをAとし、Aを−π、πと比較する。−π≦A≦πであればS2302に進み、βをそのまま補正後位相βcとする。π<AであればS2303に進み、βc=β+2πとする。A<−πであればS2304に進み、βc=β−2πとする。
【0064】
S2301〜S2304の処理により補正後位相βcは、位相αを基準として−π〜πの間になる。S2301〜S2304の処理は、式8とd<λ/4が成立していることに基づく補正である。S2302、S2303、S2304を実行した時点で、式3の位相周回数mを位相周回数kに置き換えた式12が得られる。
(式12) L2
t1=2kπ+βc
S2305では、γ−δをBとし、Bを−π、πと比較する。−π≦B≦πであればS2306に進み、δをそのまま補正後位相δcとする。π<BであればS2307に進み、δc=δ+2πとする。B<−πであればS2308に進み、δc=δ−2πとする。
【0065】
S2305〜S2308の処理により補正後位相δcは、位相γを基準として−π〜πの間になる。S2305〜S2308の処理は、式9とd<λ/4が成立していることに基づく補正である。S2307、S2308、S2309を実行した時点で、式5の位相周回数pを位相周回数nに置き換えた式13が得られる。
(式13) L2
t2=2nπ+δc
S2309では、α−γをCとし、Cが0であるか否かを判断する。Cが0である場合、時間が経過したにも関わらず位相が変化していないことになる。そこでCが0である場合にはS2310に進み、無線タグ3は停止しているとする。S2310を実行した場合には、処理を終了し、送信周期が経過した後、再び
図3を最初から実行する。
【0066】
S2309の判断がYESであればS2311に進む。S2311では、Cを−π、πと比較する。−π≦C<0、0<C≦πであればS2312に進み、この時点でのγ、δをそのまま補正後位相γc、δcとする。π<CであればS2313に進み、γc=γ+2π、δc=δ+2πとする。C<−πであればS2314に進み、γc=γ−2π、δc=δ−2πとする。
【0067】
S2311〜S2314の処理により補正後位相γc、δcは、位相αを基準として−π〜πの間になる。S2311〜S2314の処理は、式10とR<λ/4が成立していることに基づく補正である。S2312、S2313、S2314を実行した時点で、式4、式13の位相周回数nを位相周回数kに置き換えた式14、式15が得られる。
(式14) L1
t2=2kπ+γc
(式15) L2
t2=2kπ+δc
以上により、式12、式14、式15に示すように、距離L2
t1、L1
t2、L2
t2を、いずれもL1
t1の式である式2と同様、位相周回数kで表す式が得られた。説明を
図4に戻す。
【0068】
S240は請求項の距離式決定部に相当し、距離L1
t1、L2
t1、L1
t2、L2
t2を、同じ位相周回数kで表す距離式を決定する。説明の便宜上、すでに説明しているが、距離L1
t1を位相周回数kで表す距離式は式2である。式2は、距離L1
t1を位相周回数kと基準とする位相αで表す式である。距離L2
t1を位相周回数kで表す距離式は式12である。距離L1
t2を位相周回数kで表す距離式は式14である。距離L2
t2を位相周回数kで表す距離式は式15である。
【0069】
S250では、式6および式7に、S240で決定した4つの距離式を代入して、位相周回数kを算出する。詳しい解法の説明は省略するが、kは三次方程式を解いて求めることになる。そのため、3つの解が得られる。3つの解の中で整数が求める解である。整数解がない場合には、整数に最も近い解を採用する。また、kの取り得る範囲は、予め決めることができる。通信可能領域および波長λが既知だからである。よって、kの取り得る範囲を外れている解を除外することで、解を絞り込むこともできる。
【0070】
位相周回数kを算出したらS260に進む。S260は請求項の高さ算出部に相当する。S260では、式6あるいは式7にkを代入することで高さhを算出する。
【0071】
続くS270は請求項の通路判断部に相当する。S270では、高さhを、タグリーダ10から無線タグ3が移動するラインまでの最短距離Lminであるとする。高さhが、予め記憶している通路4の最短距離Lminに対して一定範囲内にあれば、無線タグ3は通路4を移動しているとする。
【0072】
よって、本実施形態では、固定タグを必要とせずに、定められた通路4を移動する無線タグ3を識別できる。
【0073】
さらに、位相周回数kを式14、15に代入することで距離L1
t2、L2
t2を算出し、この距離L1
t2、L2
t2が最短距離Lmin付近になったか否かを判断すれば、無線タグ3がゲート2の下の地点である通過判断地点5を通過したかどうかも判断できる。
【0074】
また、本実施形態では、探索波を指向性を絞って送信する必要はなく、むしろ指向性を広くすることが好ましい。指向性を広くすることで、無線タグ3の読みこぼしも減少する。
【0075】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0076】
第2実施形態では、演算部30は、第1実施形態で説明した機能に加えて、
図8に示すように、書き込み指示部31、距離算出部33を備える。また、位相周回数算出部32は、S250の処理を意味する。
【0077】
また、本実施形態では、無線タグ3は書き込み可能なタグであるとする。なお、第1実施形態の無線タグ3は、読み取り専用タグでも、書き込み可能なタグでもどちらでもよい。
【0078】
書き込み指示部31は、情報の書き込みをするための書き込み指示電波を、送信機13に送信させる。
図9には、無線タグ3の位置に対するRSSI、および、読み取りに必要なRSSIと書き込みに必要なRSSIを示している。タグリーダ10は、
図9に示す関係を、予め不揮発性メモリ40に記憶している。
【0079】
図9に示すように、無線タグ3の読み取りに必要なRSSIと比較して、無線タグ3に書き込むために必要な電波強度は強い。したがって、無線タグ3に情報の書き込みをする場合には、無線タグ3が書き込みに必要な受信信号強度で書き込み指示電波を受信できる位置にいるときが好ましい。そこで、無線タグ3の現在距離を算出する。
【0080】
現在距離を算出するために、位相周回数算出部32は、式6および式7に、S240で決定した4つの距離式を代入して、未知数である位相周回数kを求める。
【0081】
距離算出部33は、この位相周回数kを式14、式15に代入して、第2時刻t2における距離L1
t2、L2
t2を算出する。第2時刻t2は後の時刻であることから、第2時刻t2における距離L1
t2、L2
t2は現在距離を意味する。なお、距離L1
t2、L2
t2のいずれか一方のみを算出するようにしてもよい。
【0082】
無線タグ3が通路を移動している場合、現在距離が分かれば、無線タグ3の位置が分かる。そこで、書き込み指示部31は、無線タグ3が書き込みに必要な受信信号強度で書き込み指示電波を受信できる位置にいると判断したときに、書き込み指示電波を送信する。書き込みに必要な受信信号強度で書き込み指示電波を受信できる位置は、
図9において、実線が一点鎖線よりも上にある位置である。特に、タグリーダ10の真下付近にきたときに、書き込み指示電波を送信することが好ましい。無線タグ3が書き込みに必要な受信信号強度で書き込み指示電波を受信できる位置にいると判断したときに、書き込み指示電波を送信することで、書き込みに失敗してしまう可能性を低減できる。
【0083】
<第3実施形態>
第3実施形態では、演算部30は、
図10に示すように、位相周回数算出部32、距離算出部33、通路判断部34を備える。位相周回数算出部32、距離算出部33は、第2実施形態と同じである。
【0084】
距離算出部33により、無線タグ3までの現在距離が算出できる。しかし、距離のみでは無線タグ3が通路4を通過していることは確実には判断できない。通路4からずれた分だけ、無線タグ3の位置が高さ方向に接近していれば、通路4からずれた位置にあっても、無線タグ3の距離は通路4を移動している場合と同じ距離になるからである。
【0085】
そこで、1つの荷箱6に、通路4に対して交差するように、好ましくは通路4の長手方向に直交するように、複数の無線タグ3を貼り付ける。
【0086】
通路判断部34は、1つの荷箱6に貼り付けられている複数の無線タグ3に対して算出できた現在距離と、予め記憶されている通路4までの最短距離Lminとの差が、いずれも、所定距離以下になったかを判断する。所定距離は、無線タグ3がタグリーダ10に最も接近した状態であることを判断するための距離として適宜設定される。なお、複数の無線タグ3が同じ荷箱6に貼り付けられているか否かは、互いに同じ荷箱6に貼り付けられている無線タグ3をIDにより区別できるようにしておき、無線タグ3から読み取ったIDにより判断する。
【0087】
図11において、荷箱6Aはタグリーダ10の真下に位置する。荷箱6Bは、通路長手方向における位置は荷箱6Aと同じであるが、通路4から外れた位置にあり、かつ、荷箱6Aよりも高い位置にある。
【0088】
無線タグ3A、3B、3C、3Dからタグリーダ10までの距離は、L11、L12、L21、L22である。L11、L12、L21は、ほぼ同じ距離である。したがって、荷箱6Aには無線タグ3Aしか貼り付けられておらず、荷箱6Bには無線タグ3Cしか貼り付けられていない場合、L11、L21からは、無線タグ3A、3Cが荷箱6Aの位置にあるか、荷箱6Bの位置にあるかを判断することはできない。
【0089】
しかし、L22はL21よりも長いのに対して、L11、L12は互いに類似した距離になる。そこで、通路判断部34は、複数の無線タグ3に対して算出された現在距離の差が基準距離差以下であるか否かも判断する。基準距離差は、たとえば、通路4を移動する複数の無線タグ3に対して算出される現在距離の差の変動範囲の最大値に、測定誤差分を加えた値とする。
【0090】
通路4からずれた位置を移動している荷箱6Bに貼り付けられている無線タグ3C、3Dは、タグリーダ10に最も接近したときでも、現在距離が相互に相違する。これに対して、通路4を移動している荷箱6Aに貼り付けられている無線タグ3A、3Bは、タグリーダ10に最も接近したとき、現在距離はともに、通路4までの最短距離に近い距離になる。したがって、このようにすれば、無線タグ3が通路を通過していることの判断精度が向上する。
【0091】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0092】
<変形例1>
送信アンテナと受信アンテナを共用する必要はない。受信アンテナとは別に送信アンテナを備えてもよい。
【0093】
<変形例2>
基準とする位相は位相αに限られない。どの位相を基準としてもよい。
【0094】
<変形例3>
第1実施形態においては位相周回数kを算出する必要はなく、高さhのみを求めてもよい。