(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して実施例の電気自動車を説明する。実施例の電気自動車は、走行用の駆動源としてエンジンと3個のモータを備えるハイブリッド車である。まず、ハイブリッド車100の電力系を説明する。
図1に、ハイブリッド車100の電力系のブロック図を示す。ハイブリッド車100は、前輪を駆動する2個のモータ(第1フロントモータ91a、第2フロントモータ91b)と、後輪を駆動するリアモータ91cを備える。以下、説明を簡単にするため、第1フロントモータ91aを第1Fモータ91aと表記し、第2フロントモータ91bを第2Fモータ91bと表記する。また、フロントモータとリアモータを区別せずに言及するときには、単純にモータ91と表記する。
【0015】
3個のモータ91は、電力制御装置2によって制御される。以下、説明を簡単にするために、電力制御装置(Power Control Unit)2をPCU2と表記する。PCU2は、メインバッテリ80の電力から、3個のモータ91の夫々の駆動電力を生成する。PCU2は、3個の電圧コンバータ回路10a、10b、14と、3個のインバータ回路12a、12b、13と、電力制御回路15を備えている。
【0016】
電圧コンバータ回路10a、10bを説明する。電圧コンバータ回路10a、10bは、並列に接続されている。電圧コンバータ回路10a、10bは、メインバッテリ80の電圧を昇圧してインバータ回路12a、12b、13に供給する昇圧動作と、インバータ回路12a、12b、13から送られる回生電力(モータ91が発電した電力)を降圧してメインバッテリ80に供給する降圧動作が可能である。電圧コンバータ回路10a、10bは、いわゆる双方向DC−DCコンバータである。電圧コンバータ回路10a、10bのメインバッテリ80の側の端子を低圧正極端11a、低圧負極端11bと表記し、インバータ回路12a、12b、13の側の端子を高圧正極端11c、高圧負極端11dと表記する。
【0017】
電圧コンバータ回路10aは、2個のパワートランジスタ5a、5bと、2個の還流ダイオード8a、8bと、リアクトル4aを備えている。2個のパワートランジスタ5a、5bは直列に接続されており、夫々のパワートランジスタ5a、5bに還流ダイオード8a、8bが逆並列に接続されている。2個のパワートランジスタ5a、5bの直列接続の中点と、低圧正極端11aの間にリアクトル4aが接続されている。2個のパワートランジスタ5a、5bの直列接続は、高圧正極端11cと高圧負極端11dの間に接続されている。低圧負極端11bと高圧負極端11dは直接に接続されている。図中の下側のパワートランジスタ5bが主に昇圧動作に関与し、上側のパワートランジスタ5aが主に降圧動作に関与する。
図1の電圧コンバータ回路10aの動作は良く知られているので詳しい説明は省略する。
【0018】
電圧コンバータ回路10bは2個のパワートランジスタ5c、5dと2個の還流ダイオード8c、8dとリアクトル4bを備えている。電圧コンバータ回路10bの構造は電圧コンバータ回路10aと同じであるので説明は省略する。
【0019】
電圧コンバータ回路10a、10bの低圧正極端11aと低圧負極端11bは、PCU2のメインパワーコネクタ24に接続されている。メインパワーコネクタ24には、メインバッテリ80の電力をPCU2へ伝送するメインパワ−ケーブル31が接続される。別言すれば、メインパワ−ケーブル31とメインパワーコネクタ24を介してメインバッテリ80と電圧コンバータ回路10a、10bが接続される。
【0020】
電圧コンバータ回路10a、10bのメインバッテリ80の側の端子、即ち、低圧正極端11aと低圧負極端11bの間にはフィルタコンデンサ3が接続されている。電圧コンバータ回路10a、10bのインバータ回路側の端子、即ち、高圧正極端11cと高圧負極端11dの間には平滑コンデンサ7が接続されている。
【0021】
PCU2が並列接続された2個の電圧コンバータ回路10a、10bを有しているのは、パワートランジスタの1個当たりの負荷を軽減するためである。
【0022】
直列に接続された2個のパワートランジスタ5a、5bと2個の還流ダイオード8a、8bは一つのパッケージに収容されており、そのパッケージをパワーモジュール6aと表記する。直列に接続された2個のパワートランジスタ5c、5dと2個の還流ダイオード8c、8dも一つのパッケージに収容されており、そのパッケージをパワーモジュール6bと表記する。
【0023】
インバータ回路12aについて説明する。インバータ回路12aは、パワーモジュール6aと同様の6個のパワーモジュール6c−6hを備えている。
図1では、パワーモジュール6c、6dの内部構造のみを示してあり、他のパワーモジュール6e−6hの内部構造は図示を省略した。パワーモジュール6c−6hは並列に接続されている。
図1に示すように、パワーモジュール6c、6dの夫々の中で、2個のパワートランジスタ5e、5fが直列に接続されている。パワートランジスタ5e、5fのそれぞれに還流ダイオード8e、8fが逆並列に接続されている。パワートランジスタ5e、5fの直列接続の中点同士が接続されている。パワーモジュール6c、6dの図中の上側の2個のパワートランジスタ5eは同期して動作するように制御される。パワーモジュール6c、6dの図中の下側の2個のパワートランジスタ5fも同期して動作するように制御される。即ち、パワーモジュール6c、6dは、同期して動作するように制御され、あたかも一つのパワーモジュールのように機能する。2個のパワーモジュール6c、6dを同期して動作させることによって、1個当たりのパワートランジスタの負荷が軽減される。
【0024】
パワーモジュール6e、6fも、パワーモジュール6c、6dと同様の接続構造を有している。パワーモジュール6g、6hも、パワーモジュール6c、6dと同様の接続構造を有している。パワーモジュール6c、6dのパワートランジスタ5e、5fの直列接続の中点から交流が出力される。パワーモジュール6e、6fのパワートランジスタの直列接続の中点からも交流が出力される。パワーモジュール6g、6hのパワートランジスタの直列接続の中点からも交流が出力される。それら3種類の交流は互いに120度の位相差を有しており、3種類の交流が三相交流を成す。パワーモジュール6e、6fを同期して動作させることによって、また、パワーモジュール6g、6fを同期して動作させることによって、1個当たりのパワートランジスタの負荷が軽減される。
【0025】
インバータ回路12aの三相交流を伝達する内部ケーブルはフロントモータコネクタ27に接続されている。以下では、パワーモジュール6a−6hを区別なく言及するときにはパワーモジュール6と表記する。後述するようにインバータ回路12b、13にも同様のパワーモジュールが含まれる。それらのパワーモジュールも「パワーモジュール6」と表記する。
【0026】
インバータ回路12bはインバータ回路12aと同じ構造を有しており、
図1ではインバータ回路12bの回路構成の図示を省略した。インバータ回路12bも6個のパワーモジュール6を備えている。インバータ回路12bの三相交流を伝達する内部ケーブルもフロントモータコネクタ27に接続されている。フロントモータコネクタ27は、前輪81(
図2参照)の駆動に関わる2個のモータ(第1Fモータ91a、第2Fモータ91b)へ電力を伝送するフロントモータパワーケーブル32が接続されるコネクタである。フロントモータコネクタ27とフロントモータパワーケーブル32を介してPCU2から第1Fモータ91aと第2Fモータ91bに電力が供給される。
【0027】
インバータ回路13は、後輪82(
図2参照)を駆動するリアモータ91cの駆動電力を生成する。インバータ回路13も、電圧コンバータ回路10a、10bの高圧正極端11cと高圧負極端11dに接続されている。インバータ回路12a、12bは、2個のパワーモジュール6が並列動作するように構成されているが、インバータ回路13は3個のパワーモジュールを有しており、120度の位相差を有する交流を生成する。このことは、リアモータ91cが第1Fモータ91a及び第2Fモータ91bと比較して出力が小さいからである。インバータ回路13の三相交流を伝達する内部ケーブルはリアモータコネクタ23に接続されている。リアモータコネクタ23は、後輪82を駆動するリアモータ91cへ電力を伝送するリアモータパワーケーブル33が接続されるコネクタである。リアモータコネクタ23とリアモータパワーケーブル33を介してPCU2からリアモータ91cへ電力が供給される。
【0028】
電圧コンバータ回路14について説明する。電圧コンバータ回路14は、電圧コンバータ回路10a、10bと異なり、トランスを介して電圧を変換する絶縁型コンバータである。絶縁型コンバータ回路は良く知られているので、詳しい回路図は省略した。電圧コンバータ回路14は、メインパワーコネクタ24を介してメインバッテリ80と接続されている。電圧コンバータ回路14は、メインバッテリ80の電圧を補機バッテリ97の電圧まで降圧して補機バッテリ97へ供給する。補機バッテリ97は、カーオーディオやルームランプなど低電圧で動作するデバイスへ電力を供給するバッテリである。補機バッテリ97から電力供給を受けて動作するデバイスを「補機」と総称する。PCU2の電力制御回路15(後述)も「補機」に属する。
【0029】
電圧コンバータ回路14は、PCU2の筐体に設けられたAMDコネクタ25を介して補機バッテリ97に接続される。電圧コンバータ回路14は、PCU2の上位の制御器であるHV制御装置95から指令を受けて動作する。電圧コンバータ回路14とHV制御装置95は、PCU2の筐体に設けられたDDC信号コネクタ26を介して接続される。
【0030】
電圧コンバータ回路10a、10b、インバータ回路12a、12b、13のパワートランジスタは、電力制御回路15から指令を受けて動作する。電力制御回路15は、低圧コネクタ22を介してHV制御装置95及び補機バッテリ97と接続されている。電力制御回路15は、補機バッテリ97から電力供給を受けるとともに、HV制御装置95から指令を受けて動作する。
【0031】
PCU2は、メインバッテリ80の電力をエアコン94へ伝達する中継器としても機能する。PCU2の筐体にはエアコンコネクタ21が設けられている。エアコンコネクタ21は筐体の内部でメインパワーコネクタ24と接続されている。PCU2は、メインバッテリ80の電力を中継してエアコン94に送る。
【0032】
PCU2と第1Fモータ91aと第2Fモータ91bは、エンジンとともに車両のフロントコンパートメントに搭載される。
図2に、ハイブリッド車100の平面図を示す。
【0033】
図中の座標系について説明する。F軸の矢印は車両前方を示し、V軸の矢印は車両上方向を示し、H軸の矢印は車両右側を示す。「右側」、「左側」は、車両前方を向いた姿勢を基準として定義される。H軸の方向は、車幅方向と表現されることがある。
【0034】
ハイブリッド車100のフロントコンパートメント99には、エンジン96、トランスアクスル90、エアコン94、補機バッテリ97が搭載されている。トランスアクスル90のハウジングには第1Fモータ91aと第2Fモータ91bが収容されている。それゆえ、トランスアクスル90はモータハウジングと呼ぶことができる。トランスアクスル90とエンジン96は、連結されており、不図示の2本のサイドメンバに懸架されている。トランスアクスル90のハウジングとエンジン96のハウジングを、前輪の車軸98が貫いている。
【0035】
PCU2は、トランスアクスル90(モータハウジング)の上に固定されている。PCU2がトランスアクスル90の上に配置されているため、PCU2と第1、第2Fモータ91a、91bをつなぐフロントモータパワーケーブル32(
図1参照)を短くすることができる。
【0036】
フロントコンパートメント99の左前部(図中の右下部)に補機バッテリ97が配置されており、右前部(図中の左下部)にエアコン94が接続されている。
【0037】
メインバッテリ80は後部座席の下に配置されており、リアモータ91cは車両の後部空間に配置されている。
図2の太線はパワーケーブルや通信ケーブルなどを表している。PCU2は、様々なデバイスと接続されている。
図3を参照してPCU2が有するコネクタについて説明する。
【0038】
図3は、フロントコンパートメント99におけるデバイスレイアウトと、PCU2と他のデバイスの電気的接続関係を示す平面図である。まず、PCU2の筐体20の各面を定義する。フロントコンパートメント99にてトランスアクスル90の上に固定されたPCU2の筐体20の車両前方を向く面を前面20aと表記する。筐体20の車両後方を向く面を後面20bと表記する。筐体20の車幅方向の右側を向く面を右側面20cと表記し、左側を向く面を左側面20dと表記する。右側面20cと左側面20dの一方を区別なく示すときには横側面と表記する。
【0039】
筐体20には、7個のコネクタが設けられている。筐体20の後面20bに、メインパワーコネクタ24とリアモータコネクタ23が設けられている。筐体20の左側面20dに、フロントモータコネクタ27と、AMDコネクタ25と、DDC信号コネクタ26が設けられている。筐体20の右側面20cに、エアコンコネクタ21が設けられている。筐体20の上面には低圧コネクタ22が設けられている。
【0040】
メインパワーコネクタ24には、メインバッテリ80から電力を伝送するメインパワーケーブル31が接続される。リアモータコネクタ23には、リアモータ91cへ電力を伝送するリアモータパワーケーブル33が接続される。フロントモータコネクタ27には、第1Fモータ91aと第2Fモータ91bに電力を伝送するフロントモータパワーケーブル32が接続される。なお、フロントモータパワーケーブル32は、フロントモータコネクタ27の下に配策されるため、
図2、
図3では見えない。
【0041】
AMDコネクタ25には、PCU2の内部の電圧コンバータ回路14から補機バッテリ97へ電力を伝送するケーブルが接続される。補機バッテリ97とPCU2は、低圧コネクタ22を介してもつながっている。低圧コネクタ22を介して補機バッテリ97から筐体20の内部の電力制御回路15(
図1参照)へ電力が供給される。
【0042】
DDC信号コネクタ26には、HV制御装置95との通信ケーブルが接続される。DDC信号コネクタ26を介してHV制御装置95と電圧コンバータ回路14が接続される。HV制御装置95とPCU2は、低圧コネクタ22を介してもつながっている。低圧コネクタ22を介してHV制御装置95から筐体20の内部の電力制御回路15(
図1参照)へ指令が通信される。
【0043】
エアコンコネクタ21にはエアコン94へ電力を伝送するケーブルが接続される。エアコンコネクタ21は筐体20の内部でメインパワーコネクタ24と接続されている。PCU2の筐体20は、メインバッテリ80の電力をエアコン94へ伝送する中継器として機能する。
【0044】
ハイブリッド車100では、車両後方に配置されているデバイス(メインバッテリ80、リアモータ91c)と接続されるケーブルは、PCU2の筐体20の後面20bに設けられたコネクタ(メインパワーコネクタ24、リアモータコネクタ23)に接続される。車両右前部(図中の左下部)に配置されているエアコン94と接続されるケーブルは、筐体20の右側面20cに設けられたコネクタ(エアコンコネクタ21)に接続される。車両左前部(図中の右下部)に配置されている補機バッテリ97と接続されるケーブルは、筐体20の左側面20dに設けられたコネクタ(AMDコネクタ25)に接続される。このように、ハイブリッド車100では、PCU2の多くのコネクタが、ケーブル接続先のデバイスに近い面に設けられている。
【0045】
筐体20の前面20aには、2本のパイプ(冷媒供給パイプ31aと冷媒排出パイプ31b)が接続されている。2本のパイプは、不図示の冷媒循環装置に接続されている。
【0046】
図4から
図6を参照してPCU2の筐体20の内部のデバイスレイアウトを説明する。
図4は、筐体20の上部カバーをカットした筐体20の平面図である。
図5は、筐体20の左側板をカットした筐体20の側面図である。
図6は、筐体20の前板をカットした筐体20の正面図である。なお、
図4では、積層ユニット40の上方に配置される基板45(後述)の図示を省略してある。
図5では、電流センサユニット44(後述)の図示を省略してある。また、
図4−
図6は、筐体20の内部のデバイスレイアウトを説明する図であり、各デバイスは模式的に簡単な図形で表してある。また、デバイス間の結線や、デバイスを固定する部品などの図示は省略した。
【0047】
筐体20の内部には、積層ユニット40、コンデンサユニット42、電流センサユニット44、2個のリアクトル4a、4b、電圧コンバータユニット41が収容されている。
【0048】
積層ユニット40について説明する。積層ユニット40は、複数のパワーモジュール6と複数の冷却器46が積層されたユニットである。
図4と
図5では、左側の2個のパワーモジュールにのみ符号6を付し、他のパワーモジュールに対する符号は省略した。また、
図4と
図5では、左側の2個の冷却器にのみ符号46を付し、残りの冷却器に対する符号は省略した。積層ユニット40の複数のパワーモジュール6は、
図1で説明したパワーモジュール6a−6h、及び、インバータ回路12bに含まれるパワーモジュールとインバータ回路13に含まれるパワーモジュールに相当する。
【0049】
積層ユニット40では、冷却器46とパワーモジュール6が1個ずつ交互に積層されており、夫々のパワーモジュール6の両側に冷却器46が接する。冷却器46の内部には液体の冷媒が流れる流路が形成されている。積層ユニット40の複数の冷却器46には、冷媒供給パイプ31aと冷媒排出パイプ31bが貫通している。冷媒供給パイプ31aを介して不図示の冷媒循環装置から冷媒が各冷却器46へ分配される。冷媒は各冷却器46の内部を流れる間に隣接するパワーモジュール6から熱を吸収する。熱を吸収した冷媒は冷媒排出パイプ31bを介して積層ユニット40の外へ排出され、不図示の冷媒循環装置へと戻される。
【0050】
積層ユニット40は、筐体20を上からみたときに、パワーモジュール6と冷却器46の積層方向が車両前後方向を向くように、筐体20の中に配置される。
図4が、筐体20を上からみたときの図に相当する。積層ユニット40の下側に2個のリアクトル4a、4bが配置されている(
図5、
図6参照)。2個のリアクトル4a、4bの後方に、電圧コンバータユニット41が配置されている(
図5参照)。電圧コンバータユニット41は、
図1で説明した電圧コンバータ回路14を収容したユニットである。
【0051】
積層ユニット40の右隣(
図4の上側、
図6の左側)にコンデンサユニット42が配置されている。コンデンサユニット42は、
図1で説明したフィルタコンデンサ3と平滑コンデンサ7を収容している。即ち、筐体20の内部にて、フィルタコンデンサ3と平滑コンデンサ7が車幅方向の同じ側(車両右側)で積層ユニット40の隣に配置されている。
【0052】
筐体20の後面20bの右寄りにメインパワーコネクタ24が設けられている。筐体20の右側面20cの後部にエアコンコネクタ21が設けられている。
図1で説明したように、メインパワーコネクタ24は筐体20の内部でエアコンコネクタ21と接続されている。別言すれば、筐体20の横側面であってメインパワーコネクタ24に近い側の横側面(右側面20c)の後方に、エアコンコネクタ21が設けられている。エアコンコネクタ21は、メインバッテリ80の電力をエアコン94に供給するエアコンケーブルを接続するコネクタである。
【0053】
図4によく示されているように、上方からみて、メインパワーコネクタ24の前方にフィルタコンデンサ3が位置している。
図1で説明したように、メインパワーコネクタ24とフィルタコンデンサ3が接続される。
図4の太破線Lが、メインパワーコネクタ24とエアコンコネクタ21とフィルタコンデンサ3の接続経路を示している。
図4の太破線Lが示すように、上記のレイアウトは、メインパワーコネクタ24とエアコンコネクタ21とフィルタコンデンサ3の間の接続経路を短くすることができる。特に、メインパワーコネクタ24とエアコンコネクタ21が筐体20の角を挟んで隣接しているので、それらの間の接続経路が短くなる。
【0054】
図4、
図6に示されているように、積層ユニット40の左隣に電流センサユニット44が配置されている。インバータ回路12aと12bが出力する三相交流を伝達するバスバ(不図示)は、電流センサユニット44を通過してフロントモータコネクタ27に達している。電流センサユニット44は、各バスバを流れる電流(即ち、第1、第2Fモータ91a、91bへ供給される三相交流)を計測する。
【0055】
図5、
図6に示されているように、積層ユニット40の上方に基板45が配置されている。基板45は、
図1で説明した電力制御回路15が実装されている電子部品である。筐体20の上面に低圧コネクタ22が設けられており、先に説明したように、基板45に実装されている電力制御回路15は、低圧コネクタ22を介して補機バッテリ97から電力供給を受ける。また、電力制御回路15は、低圧コネクタ22を介してHV制御装置95から指令を受ける。基板45と低圧コネクタ22が近接して配置されているので、基板45と低圧コネクタ22の間の接続経路を短くすることができる。
【0056】
図5、
図6に示すように、筐体20の内部では、リアクトル4a、4bは、積層ユニット40の積層方向(図中のF軸方向)から見ての積層ユニット40と重ならない位置に配置されている。積層ユニット40の積層方向の夫々の端は筐体20の内壁面に対向している。別言すれば、積層ユニット40の積層方向の夫々の端は筐体20の内壁面に近接している。積層ユニット40は、複数のパワーモジュール6と複数の冷却器46の積層体であり、積層方向の長さが長い。リアクトル4a、4bの少なくとも一方が積層方向で積層ユニット40と重なるように配置されていると、筐体20の車両前後方向の長さが長くなってしまう。実施例のハイブリッド車100のPCU2は、F軸方向(積層方向)からみてリアクトル4a、4bの両方が積層ユニット40と重ならないように配置されており、また、積層ユニット40の積層方向の夫々の端が筐体20の内壁面に対向しており、筐体20の車両前後方向が短くなっている。
【0057】
なお、「リアクトル4a、4bは、積層ユニット40の積層方向から見ての積層ユニット40と重ならない位置に配置されている」とは、次のように別言することができる。即ち、リアクトル4a、4bは、積層ユニット40の積層方向の延長上から離れて配置されている。あるいは、リアクトル4a、4bは、積層ユニット40の積層方向から外れた位置に配置されている。車輪駆動用のPCU2で用いられるリアクトル4a、4bは、体格が大きく、筐体20の前後方向の長さに対する影響が大きい。実施例のPCU2では、そのようなリアクトル4a、4bの配置を工夫することで、筐体20の車両前後方向の長さを短くすることができた。
【0058】
2個のコンデンサ(フィルタコンデンサ3、平滑コンデンサ7)も、積層方向(図中のF軸方向)からみて積層ユニット40と重ならないように配置されている。この点も、PCU2の筐体20の車両前後方向の長さを抑えることに貢献している。
【0059】
実施例のPCU2では、回路が実装された基板45が積層ユニット40の上方に配置されている。先に述べたように、積層ユニット40には液体の冷媒が通る。積層ユニット40からは液体が漏れるおそれがある。基板45が積層ユニット40の上方に配置されていることで、仮に積層ユニット40から液体が漏れても基板45は被水から免れる。
【0060】
PCU2の筐体内のデバイスレイアウトの第1変形例を説明する。
図7に、PCU102の筐体20の内部のデバイスレイアウトの正面図を示す。
図6と同じ部品には同じ符号を付した。この例では、リアクトル4aが積層方向(図中のF軸方向)からみて積層ユニット40の車両右側(図の左側)に配置されている。リアクトル4bは、リアクトル4aの車両後方側に配置されている。そして、コンデンサユニット42(フィルタコンデンサ3、平滑コンデンサ7)が積層ユニット40の下側に配置されている。この変形例でも、リアクトル4a、4bは、積層方向(図中のF軸方向)からみて積層ユニット40と重ならないように配置されている。コンデンサユニット42(フィルタコンデンサ3と平滑コンデンサ7)も、積層方向からみて積層ユニット40と重ならないように配置されている。なお、積層ユニット40の積層方向の夫々の端は、筐体20の内壁面に対向している。別言すれば、積層ユニット40の積層方向の夫々の端は、筐体20の内壁面に近接している。この変形例でも、リアクトル4a、4bとフィルタコンデンサ3と平滑コンデンサ7は、積層ユニット40と積層方向で並んでいないので、PCU102の車両前後方向の長さを抑えることができる。
【0061】
PCU2の筐体内のデバイスレイアウトの第2変形例を説明する。
図8に、PCU202の筐体20の内部のデバイスレイアウトの平面図を示す。
図9に、PCU202の筐体20の内部のデバイスレイアウトの側面図を示す。
図4、
図5に示したPCU2と同じ部品には同じ符号を付した。PCU202は、小型の二輪駆動の電気自動車に搭載される。その電気自動車は、走行用の駆動源として1個のモータのみを備える。それゆえ、PCU202の積層ユニット240は、前述のPCU2の積層ユニット40よりも半導体モジュール6の数が少ない。それゆえ、積層ユニット240の積層方向の長さが積層ユニット40の長さよりも短い。一方、PCU202の筐体20は、前述のPCU2と同じタイプの筐体を利用している。それゆえ、PCU202の筐体20では、積層ユニット240の積層方向(図中のF軸方向)の隣に大きな空間Spが存在する。このように、積層ユニットの積層方向にリアクトルが存在しないことで、積層ユニットにおける半導体モジュールの枚数を増減させることが容易となる。なお、PCU202の筐体内の空間Spには、リアクトル以外のデバイス(例えばコンデンサやワイヤハーネスなど)を配置してもよい。
【0062】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。電力変換装置は、車両の後部空間に搭載されてもよい。
【0063】
実施例のAMDコネクタ25が補機バッテリコネクタの一例である。実施例のフィルタコンデンサ3が第1コンデンサの一例である。実施例の平滑コンデンサ7が第2コンデンサの一例である。実施例のトランスアクスル90がモータハウジングの一例である。実施例のインバータ回路13がリアインバータの一例である。実施例の電圧コンバータ回路10a、10bが第1電圧コンバータ回路の一例である。実施例の電圧コンバータユニット41に収容される電圧コンバータ回路14が、第2電圧コンバータ回路の一例である。
【0064】
積層ユニット40のパワーモジュール6と冷却器46の積層方向は、概ね車両前後方向を向いていればよい。例えば、積層方向は、車幅方向からみて水平線から少し傾いていてもよく、あるいは、上から見て前後方向に延びる直線に対して少し傾いていてもよい。
【0065】
実施例の電気自動車(ハイブリッド車100)は、走行用に2個のフロントモータ91a、91bと、リアモータ91cを備えている。本明細書が開示する技術は、走行用のモータの数に限定されない。本明細書が開示する技術は、リアモータを備えない電気自動車に適用することも好適である。本明細書が開示する技術は、走行用にモータを備えるがエンジンを備えない自動車、及び、燃料電池車に適用してもよい。
【0066】
実施例の電気自動車(ハイブリッド車100)は、2個のリアクトル4a、4bを備えている。本明細書が開示する技術は、1個のリアクトルを備える電気自動車に適用してもよいし、3個以上のリアクトルを備える電気自動車に適用してもよい。
【0067】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。