特許第6805938号(P6805938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805938
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】仮想LANの時刻同期方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20201214BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20201214BHJP
   G04G 5/00 20130101ALI20201214BHJP
【FI】
   H04L7/00 990
   H04L12/28 200Z
   G04G5/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-71381(P2017-71381)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-174445(P2018-174445A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】田島 昌明
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−104772(JP,A)
【文献】 特開2016−184811(JP,A)
【文献】 特開2016−139846(JP,A)
【文献】 特開2011−139198(JP,A)
【文献】 特表2012−511849(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0212307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
G04G 5/00
H04L 12/28
H04J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想LANにおいてPTP(PrecisionTime Protocol)によりスレーブをマスターに時刻同期させる方法であって、
前記マスターにおいて前記PTPの処理に関連するパケットを受信し、かつ該パケットの所属する仮想LANについて透過処理が必要であれば、該仮想LANが所属する受信ポート以外の全ポートに前記パケットを転送するパケット転送ステップと、
前記パケットが「announceメッセージ」のときに実行されるマスター選出の条件に前記仮想LANの情報を加えるマスター選出処理ステップと、
前記「announceメッセージ」の情報が自身のマスター情報よりも優位であれば、前記マスターにおいて前記「announce」メッセージを受信したポートの所属する仮想LANについて透過処理を有効に設定し、該仮想LANに所属する全ポートに前記「announceメッセージ」のパケットを転送するメッセージ転送ステップと、
前記メッセージ転送ステップ後に前記「announceメッセージ」を受信したポートの所属する仮想LANと全ポートとについて透過処理が有効となれば、前記マスターがスレーブに遷移し、前記マスター選出処理で選出された新たなマスターと時刻同期を実行するマスター状態遷移ステップと、
を有することを特徴とする仮想LANの時刻同期方法。
【請求項2】
前記パケット転送ステップのパケットが「announceメッセージ」でなければ、前記マスターにおいて登録タイマーをチェックするステップと、
前記チェックの結果、タイマー種別が「announceメッセージ」/「syncメッセージ」の送信であれば、マスター前記において透過処理の無効な仮想LANに所属する全ポートへ「announceメッセージ」/「syncメッセージ」のパケットを送信するステップと、
前記チェックの結果、タイマー種別が「announceメッセージ」の受信であれば、前記マスターにおいて対象のVLANの透過処理を無効にするステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の仮想LANの時刻同期方法。
【請求項3】
仮想LANにおいてPTP(PrecisionTime Protocol)によりスレーブをマスターに時刻同期させる方法であって、
前記スレーブにおいて前記PTPの処理に関連するパケットを受信し、かつ該パケットについて透過処理する必要があれば、前記パケットを受信したポートのVLANに所属する受信ポート以外の全ポートに前記パケットを転送するスレーブ側のパケット転送ステップと、
前記パケットが「announceメッセージ」のときに実行されるマスター選出の条件に前記仮想LANの情報を加えるマスター選出処理ステップと、
前記パケットの送信元が前記マスター側であれば、前記スレーブにおいて「announceメッセージ」についての受信タイムアウト用のタイマーを再登録する第1のタイマー再登録ステップと、
前記パケットの送信元が前記マスターでなければ、前記スレーブにおいてマスター選出処理の結果、新たなマスターが選出されているか否かを確認し、新たなマスターが選出されているときは前記受信タイムアウト用のタイマーを再登録する第2のタイマー再登録ステップと、
を有することを特徴とする仮想LANの時刻同期方法。
【請求項4】
前記パケットが「syncメッセージ」であれば、前記スレーブにおいて前記パケットの送信元が前記マスターであるか否かを確信し、送信元が前記マスターの場合は「delay requestメッセージ」を返信するステップを、
さらに有することを特徴とする請求項3記載の仮想LANの時刻同期方法。
【請求項5】
前記第2のタイマー再登録ステップ後、スレーブにおいて前記受信タイムアウト用のタイマーがタイムアウトか否かを確認するステップと、
前記確認の結果、タイムアウトの場合にタイマー種別が「announceメッセージ」の受信であれば、前記スレーブにおいて前記マスターの情報をクリアしてマスター判定状態に遷移するステップと、
を有することを特徴とする請求項3または4に記載の仮想LANの時刻同期方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想LAN(Virtual LAN:以下、VLANとする。)において、IEEE1588規格のPTP(PrecisionTime Protocol)の時刻同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のようにパーソナルコンピュータ(いわゆるパソコン)などの情報処理装置やインターネットの普及により、多くの企業や大学においてイーサネット(登録商標)方式の社内ネットワーク・学内ネットワークが構築され、種々の業務に利用されている。
【0003】
特に大企業においては、社内ネットワークが大規模なため、ネットワークを部署毎やプロジェクト毎にグループ化が可能なVLANの技術が広く利用されている。このVLANは、物理的なケーブル配線や情報処理装置の設置場所などに依存せずにLAN上の情報処理装置を仮想的にグループ化する技術に関し、IEEE802.1Qにおいて標準化されている。
【0004】
現在では、VLAN機能を備えたスイッチングハブが数多く市販され、VLAN機能を使えば、スイッチングハブは1台のままでポート毎に論理的にネットワークを分割可能となる。
【0005】
したがって、VLAN機能によれば、同じスイッチングハブに接続されている情報処理装置を異なるグループに分類し、異なるスイッチングに接続されている情報処理装置を同じグループに分類することができる。このとき情報処理装置群で構成されたネットワークシステムを管理するためには、情報処理装置同士の時刻を同期させておくことが重要になる。
【0006】
この点につき従来の時刻同期用プロトコル、即ちNTP(Network Time Protocol)は、WAN(Wide Area Network)環境でも機能するように作られ、ミリ秒RMSの同期精度のために作られた。このNTPを使用した時刻同期については、例えば特許文献1が公知となっている。
【0007】
ところが、従来のNTPは、高精度な時刻同期(マイクロ秒RMS以下のタイプスタンプ精度)には対応できず、厳密な時刻管理が難しい。このため、より時刻精度の高い時刻同期プロトコルが求められ、非特許文献1のPTP(Precision Time Protocol:高精度時刻プロトコル)が開発された。
【0008】
PTPは、ネットワーク全体の時刻を同期させるために使用される標準プロトコルであり、PTPの仕様はIEEE1588として規定されている。ここではGM(Grand master)が高精度な時刻の配信を実行し、スレーブが配信された時刻を受け取る。
【0009】
また、PTPでは、ネットワークインターフェースのMAC(Media Access Control:メディアアクセス制御)やPHY(PHYsical Layer Chip)に実装されたハードウェアタイムスタンプ機能を使って高精度な時刻同期(マイクロ秒RMS以下のタイプスタンプ精度)を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013 −118502
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Endrum IEEE 1588 PTP グランドマスタークロック”,[online],平成29年2月1日検索,インターネット<URL:http://www.shoshin.co.jp/c/endrum/1588ptp.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
IEEE1588の規格による高精度時刻同期の機能(以下、PTP機能とする。)を実行するスイッチングハブ(以下、PTPハブとする。)では、VLAN機能との同時使用が求められているものの、PTP機能の仕様においてVLAN機能が実装されることが考慮されていない。
【0013】
図9に基づき詳細を説明する。ここで図9中の10は、L2レベルのPTPハブを示している。このPTPハブ10は、矢印Pに示すように、VLAN1〜3毎にPTPタスク12を生成し、内部のデータをVLAN1〜3毎に保存している。
【0014】
このPTPハブによれば、VLAN処理の対応は可能なものの、これを動作させるためにはVLAN毎に使用するCPU使用量やメモリ(RAM)などの資源(リソース)がVLAN数の2倍の量が必要となってしまう。このようにPTP機能のタスク1つあたりで相当のハードウェア資源を使用するため、VLAN毎にPTPタスクを生成する方法は、一つの機能で使用できる資源(リソース)が限定される組み込み系の機器にとっては現実的ではない。
【0015】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、単一のPTP処理タスクで最大限度のVLAN処理を実行可能なPTPの時刻同期方法を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明は、仮想LANにおいてPTP(PrecisionTime Protocol)によりスレーブをマスターに時刻同期させる方法に関する。この発明の一態様は、以下のステップA〜Dを有する。
A:前記マスターにおいて前記PTPの処理に関連するパケットを受信し、かつ該パケットの所属する仮想LANについて透過処理が必要であれば、該仮想LANが所属する受信ポート以外の全ポートに前記パケットを転送するパケット転送ステップ
B:前記パケットが「announceメッセージ」のときに実行されるマスター選出の条件に前記仮想LANの情報を加えるマスター選出処理ステップ
C:前記「announceメッセージ」の情報が自身のマスター情報よりも優位であれば、前記マスターにおいて前記「announce」メッセージを受信したポートの所属する仮想LANについて透過処理を有効に設定し、該仮想LANに所属する全ポートに前記「announceメッセージ」のパケットを転送するメッセージ転送ステップ
D:前記メッセージ転送ステップ後に前記「announceメッセージ」を受信したポートの所属する仮想LANと全ポートとについて透過処理が有効となれば、前記マスターがスレーブに遷移し、前記マスター選出処理で選出された新たなマスターと時刻同期を実行するマスター状態遷移ステップ
(2)本発明の他の態様は、以下のステップ(a)〜(d)を有する。
a:前記スレーブにおいて前記PTPの処理に関連するパケットを受信し、かつ該パケットについて透過処理する必要があれば、前記パケットを受信したポートのVLANに所属する受信ポート以外の全ポートに前記パケットを転送するスレーブ側のパケット転送ステップ
b:前記パケットが「announceメッセージ」のときに実行されるマスター選出の条件に前記仮想LANの情報を加えるマスター選出処理ステップ
c:前記パケットの送信元が前記マスター側であれば、前記スレーブにおいて「announceメッセージ」についての受信タイムアウト用のタイマーを再登録する第1のタイマー再登録ステップ
d:前記パケットの送信元が前記マスターでなければ、前記スレーブにおいてマスター選出処理の結果、新たなマスターが選出されているか否かを確認し、新たなマスターが選出されているときは前記受信タイムアウト用のタイマーを再登録する第2のタイマー再登録ステップ
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単一のPTP処理タスクで最大限度のVLAN処理を実行可能なPTPの時刻同期方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る仮想LANの時刻同期方法に使用するPTPハブの構成図。
図2】同 PTPハブの全体的なVLANを示すフロー図。
図3図2中のマスター処理の詳細を示すフロー図。
図4図2中のスレーブ処理の詳細を示すフロー図。
図5】実施例1の冗長化接続図。
図6】実施例2の単一VLAN同士の接続図。
図7】実施例3の複数VLAN同士の接続図。
図8】実施例4の複数VLAN接続の中継図。
図9】従来のPTPハブの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る仮想LANの時刻同期方法を説明する。この仮想LAN(VLAN)の時刻同期方法は、複数の図1に示すPTPハブ(L2レベル/L3レベル)20により実行される。このPTPハブ20は、VLAN機能を備え、イーサネット方式の社内・学内ネットワークの構築などに用いられ、情報処理装置(パーソナルコンピュータなど)が接続される。
【0020】
このPTPハブ20によれば、LAN上の情報処理装置をVLAN機能により仮想的にグループ化することができ、情報処理装置同士の時刻がPTP機能により同期される。このときPTPハブ20は、矢印Qに示すように、単一のPTP処理タスク21にてVLAN1〜3を処理することができる。
【0021】
≪全体処理≫
図2に基づき前記仮想LANの時刻同期方法の全体処理(処理ステップ)を説明する。ここではPTPハブ20は、自動でマスター(時刻同期元)とスレーブ(時刻同期先)とが切り替え可能であり、スレーブとマスターとでは動作が相違する。
【0022】
すなわち、LAN上にPTPハブ20が複数台接続され、マスター選出(best master clock:bmc)処理により一台のPTPハブ20がマスターに選出される。一方、マスター以外のPTPハブは、スレーブとしてマスターから同期情報(時刻情報)を取得し、該同期情報に基づきマスターと時刻同期する。
【0023】
したがって、前記仮想LANの時刻同期方法によれば、まずPTP処理タスク21は、PTPハブ20がマスター状態か否かを確認する(S01)。つぎにPTP処理タスク21は、S01の確認の結果、PTPハブ20がマスター状態であればマスター状態処理を実行する(S02)一方、PTPハブ20がマスター状態でなければスレーブ状態か否かを確認する(S03)。
【0024】
また、PTP処理タスク21は、S02の確認の結果、PTPハブ20がスレーブ状態であればスレーブ状態処理を実行する(S04)を実行する一方、PTPハブ20がスレーブ状態でなければその他状態処理(例えば時刻同期関係に無い場合の処理など)を実行する(S05)。
【0025】
ただし、前記仮想LANの時刻同期方法では、PTP処理タスク21の実行するS02のマスター状態処理(マスター側の処理)と、S04のスレーブ状態処理(スレーブ側の処理)とにVLAN対応処理が追加されている。
【0026】
以下では、マスターとなるPTPハブ20をマスター20aと示し、スレーブとなるPTPハブ20をスレーブ20bと示すこととする。また、S02のマスター状態処理とS04のスレーブ状態処理とに大別し、それぞれの処理に追加されたVLAN対応処理を中心に説明する。
【0027】
≪マスター状態処理(S02)≫
図3に基づきS02のマスター状態処理(マスター側の処理)を説明する。ここではマスターとなるPTPハブ(以下、マスターと省略する。)20の基本的なマスター状態処理A1と、タイマー処理B1とに大別して説明する。
【0028】
(1)マスター状態処理A1
S11〜S13:マスター20aは、受信したパケット(以下、受信パケットとする。)がPTPの時刻処理に関連するか否か、即ちIEEE1588に規定するPTPパケットが否かを判断する(S11)。
【0029】
この判断の結果、PTPパケットでなければマスター状態処理A1は開始されない(S12)一方、PTPパケットであればS13に進みマスター状態処理A1を開始する。
【0030】
S13:マスター20aは、受信パケットの所属するVLANについて、透過処理(transparent)をする必要があるか否かを判断する(S13)。その結果、必要がなければそのままS15に進む一方、必要があればVLAN単位の透過情報D1に基づき対象のVLANが所属する受信ポート以外の全ポートに受信パケットを転送し(S14)、S15に進む。
【0031】
S15〜S17:マスター20aは、受信パケットの種別が「announceメッセージ」であるか否かを確認し(S15)、「Announceメッセージ」でなければ従来と同様のPTP時刻同期を実行する(S16)。
【0032】
すなわち、マスター20aは、スレーブ20bとの間において「Syncメッセージ(同期メッセージ)」,「Delay_requestメッセージ(遅延要求メッセージ)」,「Delay_responsメッセージ(遅延応答メッセージ)」を交換し、タイマー処理B1に移行する。
【0033】
一方、受信パケットの種別が「announceメッセージ」であれば、マスター選出処理が実行され(S17)、「bmc情報」D3を出力する。このときマスター選出の条件(bmcアルゴリズム)にVLAN情報D2を加える。例えばポートベースVLANであれば、接続ポート番号などのVLANグループを識別するための情報を付加することができる。これにより同一のPTPハブからの「announceメッセージ」の情報であっても別情報として扱えることが可能となる。
【0034】
S18〜S22:新たなマスターが検出されたか否かを確認する(S18)。すなわち、「bmc情報」D3の情報を参照して受信パケットに含まれる「announceメッセージ」の情報が、自身のマスター情報より優位であるか否かを確認する。
【0035】
この確認の結果、自身のマスター情報より優位であれば、VLAN情報D2を参照して「announce情報」を含む受信パケットの受信ポートが所属するVLANを判定する(S19)。
【0036】
ここで判定されたVLANに所属する全ポートについて透過処理を有効に設定し、該VLANに所属する全ポートに「announceメッセージ」を含む受信パケットを転送する(S20)。なお、S18にて自身のマスター情報より優位な情報が確認できなければ、タイマー処理B1に進む。
【0037】
S21,S22:S20の処理後、S19で透過処理を有効設定されたポートが1つでも所属するVLANの全ポートについて透過処理が有効となったか否かを判定する(S21)。
【0038】
この判定の結果、前記全ポートについて透過処理が有効となった場合には、タイマー情報D4から「announceメッセージ」に関連するタイマー削除して(S22)、既存のスレーブ状態処理A2へ移行し(S23)、マスター状態処理A1を終了する。
【0039】
一方、前記全ポートについて透過処理が有効となっていない場合には、対象のVLANの「announceメッセージ」受信タイムアウト用のタイマーを再登録し(S24)、タイマー処理B1に移行する。
【0040】
(2)タイマー処理B1
S30〜S32:マスター20aは、タイマー情報D4に基づき登録タイマーがタイムアウト状態か否かを確認し(S30)、タイムアウト状態であればタイマー処理B1を終了する。一方、登録タイマーがタイムアウト状態でなければ、タイマー種別が「announceメッセージ」の送信か否かを確認する(S31)。
【0041】
この確認の結果、タイマー種別が「announceメッセージ」の送信であれば、透過対象VLAN以外のポート、即ち透過処理が無効なVLANの所属する全ポート(S24の全ポート)に「announceメッセージ」のパケットを送信する(S32)。なお、タイマー種別が「announceメッセージ」の送信でなければS33に進む。
【0042】
S33:マスター20aは、タイマー種別が「syncメッセージ」の送信か否かを確認する。この確認の結果、タイマー種別が「syncメッセージ」の送信であれば、透過対象VLAN以外のポート、即ち透過処理が無効なVLANの所属する全ポート(S24の全ポート)に「syncメッセージ」のパケットを送信する(S32)。なお、タイマー種別が「syncメッセージ」の送信でなければS34に進む。
【0043】
S34,S35:マスター20aは、タイマー種別が「announceメッセージ」の受信か否かを確認する(S34)。この確認の結果、タイマー種別が「announceメッセージ」の受信であれば、対象のVLANの透過処理を無効として(S35)、タイマー処理を終了する。一方、タイマー種別が「announceメッセージ」の受信でなければ、従来のPTP処理を実行する(S16)。
【0044】
≪スレーブ状態処理(S04)≫
図4に基づきS04のスレーブ状態処理(スレーブ側の処理)を説明する。ここではスレーブとなるPTPハブ(以下、マスターと省略する。)20の基本的なスレーブ状態処理A2と、タイマー処理B2とに大別して説明する。
【0045】
(1)スレーブ状態処理A2
S41〜S43:スレーブ20bは、受信したパケット(以下、受信パケットとする。)がPTPの時刻処理に関連するか否か、即ちIEEE1588に規定するPTPパケットが否かを判断する(S41)。
【0046】
この判断の結果、PTPパケットでなければスレーブ状態処理A2が開始されない(S42)一方、PTPパケットであればS43に進んでスレーブ状態処理A2を開始する。
【0047】
S43:スレーブ20bは、透過処理する必要性を判断し(S43)、必要があればVLAN情報D2を参照して透過処理後(S44)、受信パケットを受信したポートのVLANに所属する受信パケット以外の全ポートに受信パケットを転送し(S45)、S46に進む。なお、透過処理の必要がなければS45の転送をすることなく、S46に進む。
【0048】
S46:スレーブ20bは、受信パケットの種別が「announceメッセージ」であるか否かを確認し、「announceメッセージ」でなければS47に進む一方、「announceメッセージ」であればS51に進む。
【0049】
S47〜S50:スレーブ20bは、受信パケットがマスター20aを送信元とする「syncメッセージ」であるか否かを確認する(S47)。この確認の結果、マスター20aからの「syncメッセージ」でなければ、従来のPTP処理を実行する(S50)。
【0050】
一方、マスター20aからの「syncメッセージ」であれば、スレーブ20bはsync処理を実行する(S48)。ここではスレーブ20bは、受信した「syncメッセージ」の受信時刻t1を記憶し、該「syncメッセージ」の送信時刻t2を抽出して記憶する。
【0051】
その後、スレーブ20bは「syncメッセージ」の送信元(要求元)のマスター20aに「Delay_requestメッセージ」を送信し(S49)、従来のPTP処理を実行する(S50)。
【0052】
すなわち、スレーブ20bは、「Delay_requestメッセージ」の送信時刻t3と、「Delay_requestメッセージ」に対する「Delay_responsメッセージ」の受信時刻t4とを記憶し、時刻t1〜t4に基づきマスター20aとの時刻同期処理を実行する。ここでは時刻t1〜t4のタイムスタンプに基づきメッセージ往復の遅延時間と、マスター・スレーブ間の時刻差(クロックのオフセット)を算出し、スレーブ20bの時刻を補正する。
【0053】
S51:マスター選出処理が実行され、「bmc情報」D3を出力する。このときマスター選出の条件(bmcアルゴリズム)にVLAN情報D2を加えて、同一のPTPハブからの「announceメッセージ」の情報であっても別情報として扱えるようにする。
【0054】
S52:スレーブ20bは、今回の「announceメッセージ」、即ち受信パケットがマスター20aから送信されているか否かを確認する。ここでは受信パケットの送信元が、S51のマスター検出処理前の旧マスター20aか否かを確認する。
【0055】
S53:スレーブ20bは、S52の確認の結果、受信パケットの送信元がマスター20aであれば、スレーブ20bは「announceメッセージ」の受信タイムアウト用のタイマーをタイマー情報D5に再登録し(S53)、処理を終了する。
【0056】
S54,S55:スレーブ20bは、S52の確認の結果、受信パケットの送信元がマスター20aでなければ、スレーブ20bはS51のマスター選出処理の結果、新マスター20aが選出されているか否かを確認する(S54)。
【0057】
この確認の結果、新マスターが選出されていれば、「announceメッセージ」受信タイムアウト用のタイマーを再登録し(S55)、その後にタイマー処理B2を行って処理を終了する。なお、新マスターが選出されていなければ、前記タイマー再登録(S22)をすることなく、タイマー処理B2に移行する。
【0058】
(2)タイマー処理B2
スレーブ20bは、登録タイマーがタイムアウト状態か否かを確認する(S60)。この確認の結果、タイムアウト状態でなければ、スレーブ20bは従来のPTPのタイマー処理を実行する(S61)。
【0059】
一方、タイムアウト状態であれば、スレーブ20bはタイマー種別について「announceメッセージ」の受信か否かを確認する(S62)。この確認の結果、「announceメッセージ」の受信であれば、マスター情報をクリアして「bmc情報」D3に出力し(S63)、マスター判定状態へ遷移する(S64)。
【0060】
すなわち、「announceメッセージ」の送受信によりマスター/スレーブ階層が確立され、その後の時刻転送プロセスによりSyncメッセージ」,「Follow_upメッセージ」,「Delay_requestメッセージ」,「Delay_responsメッセージ」が交換される。なお、S62の確認の結果、「announceメッセージ」の受信でなければ、S61に進んで従来のPTP処理が実行される。
【0061】
このように前記仮想LANの時刻同期方法によれば、PTP処理タスク21によってマスター状態処理(S11〜S35)とスレーブ状態処理(S41〜S64)が実行される。したがって、単一のPTP処理タスク21で最大限度のVLAN処理を実行可能なPTPの時刻同期方法を提供することが可能となる。
【0062】
≪作用・動作の説明≫
前記仮想LANの時刻同期方法によれば、簡易VLAN対応のPTPを使用することでVLANを使った幅広いネットワーク構成が可能となる。以下、代表的な実施例を説明する。
【0063】
(1)実施例1
図5に基づき実施例1を説明する。この実施例1は、PTPハブ20の冗長化接続例を示している(PTPハブの冗長化接続が可能)。
【0064】
図5中のPTPハブ1,2はスレーブ(slave)となるPTPハブ20を示し、同PTPハブ3はマスター(master)となるPTPハブ20を示し、PTPハブ1,2とPTPハブ3とが、VLAN10,20により重複接続されている。
【0065】
これにより回線A,Bの一方が維持されれば、他の回線のいずれかに異常が発生しても、PTPハブ1,2とPTPハブ3との時刻同期が可能となる。
【0066】
なお、PTPハブ3から送信される「announceメッセージ」は、VLAN10,20の両方を流れ続けるので、通常よりVLAN10,20の切替時間を短縮することができる。
【0067】
(2)実施例2
図6に基づき実施例2を説明する。この実施例2は、単一VLAN同士の接続例を示している(単一VLAN同士の接続が可能)。
【0068】
図6中のPTPハブ1,4は、VLAN20,10の各グループについてマスターとなるPTPハブ20を示している。また、図6中のPTPハブ2,3は、PTPハブ1をマスターとするスレーブのPTPハブ20を示し、同PTPハブ5,6は、PTPハブ4をマスターとするスレーブのPTPハブ20を示している。
【0069】
さらにVLAN10グループのPTPハブ4とVLAN20グループのPTPハブ3とが接続され、PTPハブ1,4については「PTPハブ1>PTPハブ4」の優先度が設定されているものとする。
【0070】
このときVLANグループ20,10のマスター、即ちPTPハブ1,4の優先度によっては一方がマスター状態処理(S02)を維持し、他方がスレーブ状態処理(S04)に移行する(図3のS23)。すなわち、図6のVLAN構成によれば、PTPハブ1,4の優先度が「PTPハブ1>PTPハブ4」と設定されているため、PTPハブ4がスレーブ状態処理(S04)に移行し、PTPハブ2〜4がPTPハブ1に時刻同期する。
【0071】
(3)実施例3
図7に基づき実施例3を説明する。この実施例3は、複数VLAN同士の接続例を示している(複数VLAN同士の接続が可能)。
【0072】
図7中のPTPハブ2は、VLAN10,20が重複接続され、PTPハブ1,3をスレーブとするマスターを示している。また、図7中のPTPハブ4は、VLAN20,30が重複接続され、PTPハブ5,6をスレーブとするマスターを示している。このPTPハブ2,4については「PTPハブ2>PTPハブ4」の優先度が設定されているものとする。
【0073】
このようなVLAN構成において、PTPハブ1をPTPハブ4に接続すれば、PTPハブ4は、VLAN20についてマスター状態処理(S02)を停止し、透過処理となるため、PTPハブ5の時刻同期元がPTPハブ4からPTPハブ2へと切り替わる(S13〜S23)。一方、PTPハブ4は、VLAN30についてマスター状態処理(S02)をそのまま維持し(S16)、PTPハブ6がPTPハブ4に時刻同期したままとなる。
【0074】
なお、PTPハブ1とPTPハブ4との接続を開放すれば、VLAN20についてPTPハブ4は、S55のタイマー再登録後に元の状態、即ちVLAN20のマスター状態処理(S02)に戻ることができる。
【0075】
(4)実施例4
図8に基づき実施例4を説明する。この実施例4は、遠隔地の複数VLAN接続の中継接続を示している(遠隔地の複数VLAN接続の中継が可能)。図8中のPTPハブ1〜3は拠点Aに配置されたマスターのPTPハブ20を示し、同PTPハブ6〜8は拠点Bに配置されたスレーブのPTPハブ20を示し、PTPハブ1〜3の優先度についてはPTPハブ1が最も高く設定されている。
【0076】
また、図8中のPTPハブ4,5は、PTPハブ1〜3・PTPハブ6〜8間のVLAN10〜30の接続をタグVLANにて中継するPTPハブ20を示している。ここではPTPハブ4,5間を1本の光ファイバーケーブルCで接続し、PTPハブ1〜3・PTPハブ6〜8間を時刻同期させている。
【0077】
このときPTPハブ4,5は、PTPハブ1〜3中で最も優先度の高いものと時刻同期するため、PTPハブ1と時刻同期を実行し(S41〜S53,S60,S61)、他のVLAN20,30(PTPハブ2,3)については透過処理のみとなる(S44〜S50)。
【符号の説明】
【0078】
20…PTPハブ
21…PTP処理タスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9