(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805941
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】保護継電装置および保護継電装置のサイクルナンバ制御方法
(51)【国際特許分類】
H02H 3/28 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
H02H3/28 W
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-75701(P2017-75701)
(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公開番号】特開2018-182828(P2018-182828A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】川島 弘成
【審査官】
杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−262615(JP,A)
【文献】
特開2003−111266(JP,A)
【文献】
特開2009−268259(JP,A)
【文献】
特開2011−188644(JP,A)
【文献】
米国特許第4760487(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 1/00
H02H 3/28
H02H 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線の複数の端子に各々設けられ、電力系統の事故を検出する保護継電装置であって、前記送電線の自端子の電気量データを、他端子に設けられた保護継電装置と同期して一定間隔でサンプリングして収集する自端データ収集部と、前記自端データ収集部のデータと他端子でサンプリングされたデータの送受信を行うデータ送受信部と、前記自端データ収集部により収集された自端子のデータと前記データ送受信部を介して得られた他端子のデータとに基づいて保護演算を行うリレー演算部とを備えた保護継電装置において、
前記各保護継電装置の自端データ収集部には、
設定した所定数範囲を1周期として繰り返される複数個の連続した番号を設定した時間毎に計数してサンプリングナンバを得、該サンプリングナンバを前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたサンプリングデータに対して、同一のサンプリング時間には同一の番号となるように付与する機能と、
電力系統の基本周波数と同数の範囲で繰り返される複数個の連続した番号を前記基本周波数の逆数の時間毎に計数してサイクルナンバを得、該サイクルナンバを前記自端データ収集部で収集されたサンプリングデータに対して付与する機能と、を持たせ、
前記各保護継電装置に、
前記サンプリングナンバの、ある1周期中の番号のうち最後の番号であるタイミングにおける、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに付与されたサイクルナンバの多数決をとってサイクルナンバ候補値を決定するサイクルナンバ候補探索部と、
前記サンプリングナンバの、前記ある1周期の次の1周期中の番号のうち最初の番号であるタイミングで、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに各々付与されたサイクルナンバすべてを、前記サイクルナンバ候補探索部で決定されたサイクルナンバ候補値に1を加えたサイクルナンバに各々更新するサイクルナンバ同期部と、を設けたことを特徴とする保護継電装置。
【請求項2】
前記サイクルナンバ候補探索部は、サイクルナンバ候補値を多数決により決定できないときは、前記多数決に代えて、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに付与されたサイクルナンバの最大値をサイクルナンバ候補値に決定することを特徴とする請求項1に記載の保護継電装置。
【請求項3】
前記自端データ収集部が収集する電気量データは、前記送電線の相電流を電気角30度間隔で各々サンプリングしたデータであり、
前記サンプリングナンバは、前記送電線の相電流の1サイクル中のデータサンプリング数12と同数の連続した番号を、(電力系統の基本周波数×12)の逆数の時間毎に計数して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の保護継電装置。
【請求項4】
送電線の複数の端子に各々設けられ、電力系統の事故を検出する保護継電装置であって、前記送電線の自端子の電気量データを、他端子に設けられた保護継電装置と同期して一定間隔でサンプリングして収集する自端データ収集部と、前記自端データ収集部のデータと他端子でサンプリングされたデータの送受信を行うデータ送受信部と、前記自端データ収集部により収集された自端子のデータと前記データ送受信部を介して得られた他端子のデータとに基づいて保護演算を行うリレー演算部とを備えた保護継電装置のサイクルナンバ制御方法において、
前記各保護継電装置の自端データ収集部が、
設定した所定数範囲を1周期として繰り返される複数個の連続した番号を設定した時間毎に計数してサンプリングナンバを得、該サンプリングナンバを前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたサンプリングデータに対して、同一のサンプリング時間には同一の番号となるように付与するステップと、
前記各保護継電装置の自端データ収集部が、
電力系統の基本周波数と同数の範囲で繰り返される複数個の連続した番号を前記基本周波数の逆数の時間毎に計数してサイクルナンバを得、該サイクルナンバを前記自端データ収集部で収集されたサンプリングデータに対して付与するステップと、
前記各保護継電装置のサイクルナンバ候補探索部が、
前記サンプリングナンバの、ある1周期中の番号のうち最後の番号であるタイミングにおける、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに付与されたサイクルナンバの多数決をとってサイクルナンバ候補値を決定するサイクルナンバ候補探索ステップと、
前記各保護継電装置のサイクルナンバ同期部が、
前記サンプリングナンバの、前記ある1周期の次の1周期中の番号のうち最初の番号であるタイミングで、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに各々付与されたサイクルナンバすべてを、前記サイクルナンバ候補探索部で決定されたサイクルナンバ候補値に1を加えたサイクルナンバに各々更新するサイクルナンバ同期ステップと、
を備えたことを特徴とする保護継電装置のサイクルナンバ制御方法。
【請求項5】
前記サイクルナンバ候補探索ステップは、サイクルナンバ候補値を多数決により決定できないときは、前記多数決に代えて、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに付与されたサイクルナンバの最大値をサイクルナンバ候補値に決定することを特徴とする請求項4に記載の保護継電装置のサイクルナンバ制御方法。
【請求項6】
前記自端データ収集部が収集する電気量データは、前記送電線の相電流を電気角30度間隔で各々サンプリングしたデータであり、
前記サンプリングナンバは、前記送電線の相電流の1サイクル中のデータサンプリング数12と同数の連続した番号を、(電力系統の基本周波数×12)の逆数の時間毎に計数して得られることを特徴とする請求項4又は5に記載の保護継電装置のサイクルナンバ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線の保護対象区間内の系統事故を検出する保護継電装置に係り、例えば送電線の複数の端子で同一タイミングでサンプリング収集した電流データ間の差に基づいて事故判定を行うPCM(Pulse Code Modulation)電流差動方式の保護継電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PCM電流差動方式の保護継電装置において、送電線の各端子に設けられた保護リレーは、各端末が同じ時刻でサンプリングした電気量を保護リレー間で送受し、それらの差電流を算出することで系統の事故を検出する。
【0003】
すなわち同時刻にサンプリングしパルス符号化(PCM)した各相電流瞬時値のデジタル信号(電気量データ)を相互に伝送し、該伝送されたデジタルデータを演算部(マイクロプロセッサ)により差動演算処理する。
【0004】
前記各相電流瞬時値のデジタル信号は、電気角30度毎にサンプリングしたデータ(1サイクルに12サンプルのデータ)であり、それらサンプリングデータが各端子間で同期していることが必要である。
【0005】
従来の保護継電装置として、例えば下記特許文献1には、所定周期でサンプリングした送電線の電気量データとそのサンプリング時刻とを含む送信データを通信ネットワークを介して通信することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−188644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の、PCM電流差動保護継電装置を含む保護継電装置において、送電線の各端子で得られた電気量データが、同じサンプリングタイミングのデータか否かを確認するためには、サンプリングデータが相電流のどのサイクルのデータであるかを表すサイクルナンバが、各端子間で同期している(同一の値をとる)必要がある。
【0008】
しかし、各端子間では装置起動のタイミング及び同期がとれるタイミングが異なるため、サイクルナンバの同期はとれていない状態となる。このため、各端子間のサンプリングデータの比較が困難となり、例えば各端子からの電気量データをモニタリングする際に、同じサンプリングタイミングのデータかどうかを容易に確認することができない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、送電線の複数の端子間で、データに付与されるサイクルナンバの同期をとることができる保護継電装置およびそのサイクルナンバ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の保護継電装置は、送電線の複数の端子に各々設けられ、電力系統の事故を検出する保護継電装置であって、前記送電線の自端子の電気量データを、他端子に設けられた保護継電装置と同期して一定間隔でサンプリングして収集する自端データ収集部と、前記自端データ収集部のデータと他端子でサンプリングされたデータの送受信を行うデータ送受信部と、前記自端データ収集部により収集された自端子のデータと前記データ送受信部を介して得られた他端子のデータとに基づいて保護演算を行うリレー演算部とを備えた保護継電装置において、
前記各保護継電装置の自端データ収集部には、
設定した所定数範囲を1周期として繰り返される複数個の連続した番号を設定した時間毎に計数してサンプリングナンバを得、該サンプリングナンバを前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたサンプリングデータに対して、同一のサンプリング時間には同一の番号となるように付与する機能と、
電力系統の基本周波数と同数の範囲で繰り返される複数個の連続した番号を前記基本周波数の逆数の時間毎に計数してサイクルナンバを得、該サイクルナンバを前記自端データ収集部で収集されたサンプリングデータに対して付与する機能と、を持たせ、
前記各保護継電装置に、
前記サンプリングナンバの、ある1周期中の番号のうち最後の番号であるタイミングにおける、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに付与されたサイクルナンバの多数決をとってサイクルナンバ候補値を決定するサイクルナンバ候補探索部と、
前記サンプリングナンバの、前記ある1周期の次の1周期中の番号のうち最初の番号であるタイミングで、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに各々付与されたサイクルナンバすべてを、前記サイクルナンバ候補探索部で決定されたサイクルナンバ候補値に1を加えたサイクルナンバに各々更新するサイクルナンバ同期部と、を設けたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項4に記載の保護継電装置のサイクルナンバ制御方法は、送電線の複数の端子に各々設けられ、電力系統の事故を検出する保護継電装置であって、前記送電線の自端子の電気量データを、他端子に設けられた保護継電装置と同期して一定間隔でサンプリングして収集する自端データ収集部と、前記自端データ収集部のデータと他端子でサンプリングされたデータの送受信を行うデータ送受信部と、前記自端データ収集部により収集された自端子のデータと前記データ送受信部を介して得られた他端子のデータとに基づいて保護演算を行うリレー演算部とを備えた保護継電装置のサイクルナンバ制御方法において、
前記各保護継電装置の自端データ収集部が、
設定した所定数範囲を1周期として繰り返される複数個の連続した番号を設定した時間毎に計数してサンプリングナンバを得、該サンプリングナンバを前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたサンプリングデータに対して、同一のサンプリング時間には同一の番号となるように付与するステップと、
前記各保護継電装置の自端データ収集部が、
電力系統の基本周波数と同数の範囲で繰り返される複数個の連続した番号を前記基本周波数の逆数の時間毎に計数してサイクルナンバを得、該サイクルナンバを前記自端データ収集部で収集されたサンプリングデータに対して付与するステップと、
前記各保護継電装置のサイクルナンバ候補探索部が、
前記サンプリングナンバの、ある1周期中の番号のうち最後の番号であるタイミングにおける、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに付与されたサイクルナンバの多数決をとってサイクルナンバ候補値を決定するサイクルナンバ候補探索ステップと、
前記各保護継電装置のサイクルナンバ同期部が、
前記サンプリングナンバの、前記ある1周期の次の1周期中の番号のうち最初の番号であるタイミングで、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに各々付与されたサイクルナンバすべてを、前記サイクルナンバ候補探索部で決定されたサイクルナンバ候補値に1を加えたサイクルナンバに各々更新するサイクルナンバ同期ステップと、
を備えたことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、送電線の複数の端子各々に設けられた保護継電装置間で、異なるサイクルナンバを制御して同期させることができる。これによって、各端子間のサンプリングデータの比較をより容易に行うことができる。
【0013】
また、請求項2に記載の保護継電装置は、請求項1において、前記サイクルナンバ候補探索部は、サイクルナンバ候補値を多数決により決定できないときは、前記多数決に代えて、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに付与されたサイクルナンバの最大値をサイクルナンバ候補値に決定することを特徴としている。
【0014】
また、請求項5に記載の保護継電装置のサイクルナンバ制御方法は、請求項4において、前記サイクルナンバ候補探索ステップは、サイクルナンバ候補値を多数決により決定できないときは、前記多数決に代えて、前記複数の端子の各自端データ収集部で収集されたデータに付与されたサイクルナンバの最大値をサイクルナンバ候補値に決定することを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、サイクルナンバが同一となる端子が存在せずサイクルナンバが全ての端子で異なった場合でも、サイクルナンバの同期を行うことができる。
【0016】
また、請求項3に記載の保護継電装置は、請求項1又は2において、前記自端データ収集部が収集する電気量データは、前記送電線の相電流を電気角30度間隔で各々サンプリングしたデータであり、
前記サンプリングナンバは、前記送電線の相電流の1サイクル中のデータサンプリング数12と同数の連続した番号を、(電力系統の基本周波数×12)の逆数の時間毎に計数して得られることを特徴としている。
【0017】
また、請求項6に記載の保護継電装置のサイクルナンバ制御方法は、請求項4又は5において、前記自端データ収集部が収集する電気量データは、前記送電線の相電流を電気角30度間隔で各々サンプリングしたデータであり、
前記サンプリングナンバは、前記送電線の相電流の1サイクル中のデータサンプリング数12と同数の連続した番号を、(電力系統の基本周波数×12)の逆数の時間毎に計数して得られることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、送電線の複数の端子各々に設けられたPCM電流差動保護継電装置間で、異なるサイクルナンバを制御して同期させることができる。これによって、各端子間のサンプリングデータの比較をより容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
(1)請求項1〜6に記載の発明によれば、送電線の複数の端子各々に設けられた保護継電装置間で、異なるサイクルナンバを制御して同期させることができる。これによって、各端子間のサンプリングデータの比較をより容易に行うことができる。
(2)請求項2、4に記載の発明によれば、サイクルナンバが同一となる端子が存在せずサイクルナンバが全ての端子で異なった場合でも、サイクルナンバの同期を行うことができる。
(3)請求項3、6に記載の発明によれば、送電線の複数の端子各々に設けられたPCM電流差動保護継電装置間で、異なるサイクルナンバを制御して同期させることができる。これによって、各端子間のサンプリングデータの比較をより容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態例による保護継電システムの全体構成図。
【
図2】本発明の実施形態例によるサイクルナンバ制御方法の一例を示す説明図。
【
図3】本発明の実施形態例によるサイクルナンバ制御方法の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本実施形態例による保護継電システムの全体構成を示している。
図1において、300は保護対象の送電線であり、401,402は送電線300に介挿された遮断器である。
【0023】
100は送電線300の一端側に設けられた保護リレー(保護継電装置)、200は送電線300の他端側に設けられ、保護リレー100と同様に構成された保護リレー(保護継電装置)であり、これらは例えばPCM電流差動保護継電装置により各々構成されている。
【0024】
図1では保護リレー100,200のみ図示しているが、送電線300のn個の端子には、保護リレー100,200と同一構成の図示省略の保護リレーが各々設けられており、保護リレーは合計n個設けられている。
【0025】
保護リレー100の110は、送電線300の一端(端子1)側の相電流を変流器等で検出したアナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換部である。
【0026】
120は送電線300の一端側の電気量データを収集する自端データ収集部であり、A/D変換部110の出力から、送電線300に設けられた他の保護リレーと同期して、電気角30度毎にサンプリングしたデータ(1サイクルに12サンプルのデータ)を収集する。
【0027】
自端データ収集部120は、A/D変換部110から収集したサンプリングデータに対して、次に述べるように、サンプリングナンバを付与する機能と、サイクルナンバを付与する機能を有している。
【0028】
前記サンプリングナンバは、設定した所定数範囲を1周期として繰り返される複数個の連続した番号、例えば前記送電線300の相電流の1サイクル中のデータサンプリング数12と同数の連続した番号(例えば0〜11の範囲)を、(電力系統の基本周波数×12)の逆数の時間毎に計数して得られる。
【0029】
基本周波数が例えば50Hzであればカウンタを1秒間に50×12=600カウントする。これをカウント周期で表現すると、カウント周期は1/600秒であり、1/600秒毎に+1カウントアップして0〜11のサンプリングナンバが順次得られる。
【0030】
そして自端データ収集部120は、前記サンプリングナンバを、複数(n個)の端子の各自端データ収集部120で収集されたサンプリングデータに対して、同一のサンプリング時間には同一の番号となるように付与する。
【0031】
前記サイクルナンバは、電力系統の基本周波数と同数の範囲で繰り返される複数個の連続した番号(例えば0〜(基本周波数−1)の範囲)、例えば基本周波数が50Hzであれば0〜49を、その基本周波数の逆数の時間毎、すなわち1/50秒毎に係数して得られる。したがって、送電線300の相電流の1サイクル毎にカウンタを+1カウントアップし、基本周波数が50Hzであれば0〜49のサイクルナンバが順次得られる。
【0032】
そして自端データ収集部120は、サンプリングナンバ0〜11のサンプリングデータ(すなわち1サイクル中の12個のサンプリングデータ)にそれぞれ同一の前記サイクルナンバを付与する。
【0033】
図1では、自端データ収集部120のエリアに、自端子(端子1)側で収集したサンプリングデータおよびそれに付与されたサンプリングナンバ、サイクルナンバの例を図示している。
【0034】
130は、自端子(端子1)側の保護リレー100の自端データ収集部のデータと他端子(端子2〜端子n)側の保護リレーの自端データ収集部のデータとの送受信を行うデータ送受信部であり、131は、自端データ収集部120で収集されたサンプリングデータおよびそれに付与されたサンプリングナンバ、サイクルナンバを、他端子側の保護リレーのデータ送受信部へ送信する送信部である。 132は、他端子側の保護リレーから送信される、自端データ収集部で収集されたサンプリングデータおよびそれに付与されたサンプリングナンバ、サイクルナンバを受信する受信部である。
【0035】
図1では、データ送受信部130のエリアに、受信部132で受信して得られた端子2〜端子n側のサンプリングデータおよびそれに付与されたサンプリングナンバ、サイクルナンバの例を図示している。
【0036】
140は、自端子(端子1)のサンプリングデータ(自端データ収集部120のデータ)と他端子(端子2〜端子n)から受信したサンプリングデータ(受信部132で受信したデータ)を用いて保護演算を行うリレー演算部である。
【0037】
150は、各端子(端子1〜端子n)間で異なるサイクルナンバを制御して同期させるサイクルナンバ制御部であり、同期させるサイクルナンバの候補を探して候補値を決定するサイクルナンバ候補探索部151と、サイクルナンバの更新を行って同期させるサイクルナンバ同期部152とを備えている。
【0038】
次にサイクルナンバ制御部150で実行される制御の例を
図2、
図3とともに説明する。
図2、
図3で図示したサンプリングナンバの、「11」は、ある1周期中の最後の番号を表し、「0」はその次の1周期中の最初の番号を表している。
【0039】
サイクルナンバ候補探索部151は、一例として、自端データ収集部のデータと受信部132で受信されたデータに基づいて、各端子1〜nのサイクルナンバを比較し、最も多いサイクルナンバをサイクルナンバ候補値に決定する(サイクルナンバの多数決をとる)。
【0040】
そしてサイクルナンバ同期部152は、サイクルナンバ候補探索部151により決定されたサイクルナンバ候補値に「1」を加算し、サイクルナンバを(サイクルナンバ候補値+1)に更新し、これを最新サイクルナンバとする。
【0041】
前記サイクルナンバ候補探索部151におけるサイクルナンバ候補値を決定する処理は、例えば
図2のように自端子のサンプリングナンバが「11」の時に(1周期中の番号のうち最後の番号であるタイミングで)実行され、サイクルナンバ同期部152におけるサイクルナンバを更新する処理は、
図2のサンプリングナンバが「0」の時に(前記サイクルナンバ候補値決定後の次の1周期中の番号のうち最初の番号であるタイミングで)実行される。
【0042】
図2の例では、サンプリングナンバ「11」のタイミングで、サイクルナンバは端子番号「1」、「2」における「5」が最も多いため、サイクルナンバ候補値は「5」に決定され、次のサンプリングナンバ「0」のタイミングで送電線300に設けられた全ての端子(
図2では端子番号1〜5のみ記載)のサイクルナンバが「5+1」に更新される。
【0043】
そして更新された最新のサイクルナンバのデータは、送信部131を介して他の端子側の保護リレーに送信される。
【0044】
前記サイクルナンバ候補探索部151におけるサイクルナンバ候補値を決定する処理は、サイクルナンバが全ての端子(1〜n)で異なる等の理由で多数決によりサイクルナンバ候補値が決定できない場合は、例えば
図3のように各端子のサイクルナンバのうち最大値をサイクルナンバ候補値に決定する。
【0045】
図3において、サイクルナンバ候補探索部151が行うサイクルナンバ候補値を決定する処理は、
図2の場合と同様にサンプリングナンバが「11」の時に実行され、サイクルナンバ同期部152が行うサイクルナンバ更新処理は、
図2の場合と同様にサンプリングナンバが「0」の時に実行される。
【0046】
図3の例では、サンプリングナンバ「11」のタイミングで、全ての端子(
図3では端子番号1〜5のみ記載)のサイクルナンバが各々異なるので、その中の最大値である「20」がサイクルナンバ候補値として決定され、次のサンプリングナンバ「0」のタイミングで送電線300に設けられた全ての端子のサイクルナンバが「20+1」に更新される。
【0047】
そして更新された最新のサイクルナンバのデータは、送信部131を介して他の端子側の保護リレーに送信される。
【0048】
以上のように本実施形態例によれば、送電線300の複数の端子(1〜n)各々に設けられた保護リレー間で異なるサイクルナンバを制御して同期させることができる。
【0049】
これによって、各端子間のサンプリングデータの比較が容易となり、例えば各端子からの電気量データをモニタリングする際に、同じサンプリングタイミングのデータかどうかを容易に確認することができる。
【0050】
また、各端子のサイクルナンバのうち最大値をサイクルナンバ候補値に決定する処理を行う実施例によれば、サイクルナンバが同一となる端子が存在せずサイクルナンバが全ての端子で異なった場合でも、サイクルナンバの同期を行うことができる。
【0051】
尚、本発明はPCM電流差動保護継電装置に適用するに限らず、他の継電装置に適用することができ、その場合も前記と同様の作用、効果を奏する。
【符号の説明】
【0052】
100,200…保護リレー
110…A/D変換部
120…自端データ収集部
130…データ送受信部
131…送信部
132…受信部
140…リレー演算部
150…サイクルナンバ制御部
151…サイクルナンバ候補探索部
152…サイクルナンバ同期部
300…送電線
401,402…遮断器