特許第6805961号(P6805961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805961
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ボールねじ装置及びアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20201214BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20201214BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F16H25/20 H
   F16H25/22 C
   F16H25/24 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-98046(P2017-98046)
(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公開番号】特開2018-194081(P2018-194081A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 キン
(72)【発明者】
【氏名】下村 祐二
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−176507(JP,A)
【文献】 実開平5−8104(JP,U)
【文献】 特開2013−221605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストッパーを有するねじ軸と、
前記ねじ軸の軸方向に沿う第1キー溝を有するナットと、
前記ねじ軸と前記ナットの間に設けられる複数の転動体と、
前記ナットの外周に設けられ且つ前記軸方向に沿う第2キー溝を有する動力伝達部材と、
前記第1キー溝及び前記第2キー溝に嵌まるキーと、
を備え、
前記ストッパーは、前記軸方向から見て前記ナットの端面と重なり、
前記キーの先端は、前記端面よりも前記ストッパー側に突出している
ボールねじ装置。
【請求項2】
前記ナットに取り付けられる保持部材を備え、
前記ナットは、周方向に沿う第1保持溝を備え、
前記キーは、前記第1保持溝よりも前記端面とは反対側に位置する基部と、前記第1保持溝よりも前記端面側に位置する突出部と、前記基部と前記突出部との間に位置し且つ前記第1保持溝に繋がる第2保持溝を備え、
前記保持部材は、前記第1保持溝及び前記第2保持溝に嵌まり、且つ前記基部に接する
請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記動力伝達部材は、前記第2キー溝の表面から前記軸方向に対する直交方向に突出する凸部を備え、
前記キーは、前記凸部よりも前記端面とは反対側に位置する基部と、前記凸部よりも前記端面側に位置する突出部と、を備え、
前記凸部は、前記基部に接する
請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記ナットは、前記第1キー溝に交差する交差溝を備え、
前記キーは、前記交差溝に嵌まる突起を備える
請求項1から3のいずれか1項に記載のボールねじ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のボールねじ装置と、
軸受を介して前記ナットを支持するハウジングと、
前記動力伝達部材に伝わる動力を発生させるモータと、
を備えるアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置及びアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動を直動運動に変換するボールねじ装置を備えたアクチュエータが知られている。ボールねじ装置は、ねじ軸と、ナットと、ねじ軸とナットの間に配置される複数のボールとを備えている。ねじ軸及びナットの一方が回転運動し、他方が直動運動する。ボールねじ装置には、ナットがねじ軸から逸脱しないようにするためのストッパーが設けられる。例えば特許文献1には、ストッパーの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−159191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、ストッパーを切削加工で形成する場合と比較して材料コストを低くすることが可能となる。しかしながら、ストッパーを形成するための工程は必要である。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ねじ軸がナットから脱落することを防止でき且つ製造工程を簡略化することができるボールねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様のボールねじ装置は、ストッパーを有するねじ軸と、前記ねじ軸の軸方向に沿う第1キー溝を有するナットと、前記ねじ軸と前記ナットの間に設けられる複数の転動体と、前記ナットの外周に設けられ且つ前記軸方向に沿う第2キー溝を有する動力伝達部材と、前記第1キー溝及び前記第2キー溝に嵌まるキーと、を備え、前記ストッパーは、前記軸方向から見て前記ナットの端面と重なり、前記キーの先端は、前記端面よりも前記ストッパー側に突出している。
【0007】
これにより、キーは、動力伝達部材に加わるトルクをナットに伝達する。さらに、キーは、ねじ軸が所定量移動するとストッパーに当たる。これにより、ナットの回転が規制され、ねじ軸の移動が停止する。また、第1キー溝及び第2キー溝は、トルクをナットに伝達する部材のためにもともと必要である。このため、ナットの製造工程において加工が増加しない。したがって、ボールねじ装置は、ねじ軸がナットから脱落することを防止でき且つ製造工程を簡略化することができる。
【0008】
ボールねじ装置の上記の態様として、前記ナットに取り付けられる保持部材を備え、前記ナットは、周方向に沿う第1保持溝を備え、前記キーは、前記第1保持溝よりも前記端面とは反対側に位置する基部と、前記第1保持溝よりも前記端面側に位置する突出部と、前記基部と前記突出部との間に位置し且つ前記第1保持溝に繋がる第2保持溝を備え、前記保持部材は、前記第1保持溝及び前記第2保持溝に嵌まり、且つ前記基部に接することが望ましい。
【0009】
これにより、第1保持溝に嵌まった保持部材は、ナットに対して軸方向に移動しない。保持部材が基部に接するので、キーはナットの端面側に移動できない。このため、キーがナットから脱落することが防止される。
【0010】
ボールねじ装置の上記の態様として、前記動力伝達部材は、前記第2キー溝の表面から前記軸方向に対する直交方向に突出する凸部を備え、前記キーは、前記凸部よりも前記端面とは反対側に位置する基部と、前記凸部よりも前記端面側に位置する突出部と、を備え、前記凸部は、前記基部に接することが望ましい。
【0011】
これにより、キーはナットの端面側に移動しない。凸部によって、キーがナットから脱落することが防止される。
【0012】
ボールねじ装置の上記の態様として、前記ナットは、前記第1キー溝に交差する交差溝を備え、前記キーは、前記交差溝に嵌まる突起を備えることが望ましい。
【0013】
これにより、キーは、ナットに対して相対的に移動しない。交差溝及び突起によって、キーがナットからねじ軸の軸方向に移動して脱落することが防止される。
【0014】
本発明の一態様のアクチュエータは、上記のボールねじ装置と、軸受を介して前記ナットを支持するハウジングと、前記動力伝達部材に伝わる動力を発生させるモータと、を備える。
【0015】
これにより、アクチュエータは、製造工程を簡略化することができるボールねじ装置を含むので、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ねじ軸がナットから脱落することを防止でき且つ製造工程を簡略化することができるボールねじ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係るアクチュエータの断面図である。
図2図2は、本実施形態に係るボールねじ装置の断面図である。
図3図3は、本実施形態に係るボールねじ装置の斜視図である。
図4図4は、本実施形態に係る動力伝達部材の斜視図である。
図5図5は、本実施形態に係るナットの斜視図である。
図6図6は、本実施形態に係るキーの斜視図である。
図7図7は、第1変形例に係るボールねじ装置の断面図である。
図8図8は、第1変形例に係るキーの斜視図である。
図9図9は、第2変形例に係るボールねじ装置の断面図である。
図10図10は、第3変形例に係るボールねじ装置の斜視図である。
図11図11は、第3変形例に係るボールねじ装置の平面図である。
図12図12は、第3変形例に係るキーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るアクチュエータの断面図である。図2は、本実施形態に係るボールねじ装置の断面図である。図3は、本実施形態に係るボールねじ装置の斜視図である。図4は、本実施形態に係る動力伝達部材の斜視図である。図5は、本実施形態に係るナットの斜視図である。図6は、本実施形態に係るキーの斜視図である。
【0020】
図1に示すように、アクチュエータ1は、ハウジング10と、モータ11と、第1動力伝達部材13と、第2動力伝達部材17と、軸受5と、ボールねじ装置2と、を備える。
【0021】
図1に示すように、ハウジング10は中空状の部材である。ハウジング10の内部にモータ11、第1動力伝達部材13、第2動力伝達部材17、軸受5、及びボールねじ装置2が配置されている。
【0022】
モータ11は、ハウジング10に支持されている。モータ11は、回転軸Z2を中心に回転するシャフト110を備える。図1に示すように、第1動力伝達部材13は、シャフト110に固定されている。第1動力伝達部材13は、例えばプーリである。モータ11が駆動すると、第1動力伝達部材13がシャフト110と共に回転する。第2動力伝達部材17は、例えばベルトである。第2動力伝達部材17は、第1動力伝達部材13の外周面に接している。
【0023】
軸受5は、ハウジング10に支持されている。軸受5は、ハウジング10とボールねじ装置2との間に配置されている。軸受5は、外輪51と、内輪53と、複数の転動体52と、を備える。外輪51は、ハウジング10に固定されている。内輪53は、ボールねじ装置2のナット4に固定されている。転動体52は、外輪51と内輪53との間に配置されている。
【0024】
図1に示すように、ボールねじ装置2は、ねじ軸3と、ナット4と、複数の転動体6と、第3動力伝達部材15と、キー7と、保持部材8と、を備える。
【0025】
ねじ軸3は、棒状の部材であって、外周面にねじ溝を備える。ねじ軸3は、軸方向の端部にストッパー35を備える。以下の説明において、ねじ軸3の軸方向は単に軸方向と記載される。ストッパー35は、放射方向に突出している。放射方向は、軸方向に対する直交方向である。図1及び図3に示すように、ストッパー35は、軸方向から見てナット4の端面40と重なる。ねじ軸3は、ナット4を貫通している。ねじ軸3は、ナット4が回転すると、軸方向に沿って直進運動する。
【0026】
ナット4は、内周面にねじ溝を備える。ナット4は、回転軸Z1を中心に回転する。複数の転動体6は、ねじ軸3のねじ溝とナット4のねじ溝とで形成される螺旋状の空間に配置される。転動体6は、螺旋状の空間の中で循環する。図3に示すように、ナット4は、コマ穴41と、コマ42と、フランジ49と、第1キー溝45と、第1保持溝48と、を備える。
【0027】
コマ穴41は、ナット4を放射方向に貫通する穴である。コマ42は、コマ穴41に嵌められる。コマ42は、転動体6を循環させるための部材である。コマ42は、デフレクタとも呼ばれる。コマ42の位置まで達した転動体6は、コマ42によって、ねじ軸3とナット4との間の螺旋状の空間に戻される。なお、コマ42は、図3で示す1つを除き図面上では省略されている。
【0028】
図5に示すように、フランジ49は、ナット4の軸方向の端部に配置される。フランジ49は、ナット4の外周面から放射方向に突出しており、環状である。図1に示すように、軸受5の内輪53がフランジ49に接している。フランジ49によりナット4が位置決めされる。
【0029】
図5に示すように、第1キー溝45は、軸方向に沿う溝である。第1キー溝45は、フランジ49とは反対側のナット4の端面40から軸方向に延びている。すなわち、第1キー溝45は、ナット4の端面40で開口している。例えば、第1キー溝45は、軸方向から見て略矩形である。図5に示すように、第1キー溝45は、底面451と、側面452と、側面453と、側面454と、を含む。例えば、底面451は、放射方向に対して直交する平面である。側面452及び側面453は、底面451に対して直交する平面である。側面452は、側面453と対向している。側面454は、側面452及び側面453を繋ぐ曲面である。
【0030】
図5に示すように、第1保持溝48は、ナット4の周方向に沿う溝である。周方向は、回転軸Z1を中心とした接線方向である。第1保持溝48の深さ(放射方向の長さ)は、第1キー溝45の深さより小さい。第1保持溝48の両端は、第1キー溝45に繋がっている。第1保持溝48の一端は、側面452で開口している。第1保持溝48の他端は、側面453で開口している。
【0031】
第3動力伝達部材15は、ナット4の放射方向の外側に設けられる。第3動力伝達部材15は、図4に示すようにプーリである。図1に示すように、第3動力伝達部材15は、軸受5に接する。図1に示す第2動力伝達部材17は、第3動力伝達部材15の外周面に接する。第2動力伝達部材17は、は、第1動力伝達部材13及び第3動力伝達部材15に架け渡される。モータ11で生じたトルクは、第1動力伝達部材13及び第2動力伝達部材17を介して第3動力伝達部材15に伝達される。
【0032】
第3動力伝達部材15、図4に示すように第2キー溝151を備える。第2キー溝151は、筒状である第3動力伝達部材15の内周面に設けられている。第2キー溝151は、軸方向に沿う溝である。すなわち、第2キー溝151は、第1キー溝45と平行である。第2キー溝151は、第3動力伝達部材15の軸方向の一端から他端に亘っている。
【0033】
キー7は、第3動力伝達部材15とナット4とを連結する部材である。キー7は、図2に示すように第1キー溝45及び第2キー溝151に嵌まる。キー7は、第3動力伝達部材15に加わるトルクをナット4に伝達する。図3に示すように、キー7は、ナット4の端面40よりも、ねじ軸3のストッパー35側に突出している。キー7は、図6に示すように基部71と、突出部73と、連結部72と、フック部75と、第2保持溝78と、を備える。
【0034】
基部71は、例えば直方体状である。図3に示すように、基部71は、第1キー溝45のうち第1保持溝48よりも側面454側に配置される。突出部73は、例えば直方体状である。突出部73は、連結部72によって基部71と接続されている。突出部73の放射方向の厚さは、連結部72の放射方向の厚さよりも大きい。これにより、基部71と突出部73との間に第2保持溝78が形成されている。また、突出部73の強度が向上しやすい。突出部73は、第1キー溝45のうち第1保持溝48よりもストッパー35側に配置される。突出部73は、ナット4の端面40よりもストッパー35側に突出している。フック部75は、突出部73から放射方向の内側に向かって延びている。フック部75は、ナット4の端面40に接する。第2保持溝78は、基部71及び突出部73に形成される溝である。第2保持溝78は、ナット4の第1保持溝48に繋がる。第2保持溝78及び第1保持溝48により環状の溝が形成される。
【0035】
保持部材8は、キー7の軸方向の移動を規制する部材である。保持部材8は、例えば止め輪とも呼ばれる略C字状の部材である。保持部材8は、第1保持溝48及び第2保持溝78に嵌められる。すなわち、保持部材8は、ナット4及びキー7に跨る。第1保持溝48に嵌まった保持部材8は、ナット4に対して軸方向に移動しない。保持部材8が第2保持溝78に嵌まっているので、キー7はナット4に対して軸方向に移動しない。このため、キー7の軸方向の移動が規制される。
【0036】
保持部材8は、第3動力伝達部材15の軸方向の移動を規制する部材でもある。保持部材8は、図2に示すように第3動力伝達部材15に接する。第3動力伝達部材15の軸方向の一端が図1に示す軸受5に接し且つ他端が保持部材8に接しているので、第3動力伝達部材15の軸方向の移動が規制される。
【0037】
モータ11が駆動すると、ナット4が回転軸Z1を中心に回転する。ナット4が回転すると、ねじ軸3が直進運動する。このため、ストッパー35がナット4に近付く。ねじ軸3の移動量が所定量に達すると、キー7の突出部73及びフック部75がストッパー35に接する。これにより、ナット4の回転が止まる。キー7及びストッパー35は、ねじ軸3がナット4から脱落することを防止している。
【0038】
なお、第2キー溝151は、必ずしも第3動力伝達部材15の軸方向の一端から他端に亘っていなくてもよい。第2キー溝151の軸方向の長さは、少なくとも軸方向における基部71の長さ以上であればよい。
【0039】
以上で説明したように、ボールねじ装置2は、ストッパー35を有するねじ軸3と、ねじ軸3の軸方向に沿う第1キー溝45を有するナット4と、ねじ軸3とナット4の間に設けられる複数の転動体6と、ナット4の外周に設けられ且つ軸方向に沿う第2キー溝151を有する動力伝達部材(第3動力伝達部材15)と、第1キー溝45及び第2キー溝151に嵌まるキー7と、を備える。ストッパー35は、軸方向から見てナット4の端面40と重なる。キー7の先端は、端面40よりもストッパー35側に突出している。
【0040】
これにより、キー7は、動力伝達部材(第3動力伝達部材15)に加わるトルクをナット4に伝達する。さらに、キー7は、ねじ軸3が所定量移動するとストッパー35に当たる。これにより、ナット4の回転が規制され、ねじ軸3の移動が停止する。また、第1キー溝45及び第2キー溝151は、トルクをナット4に伝達する部材のためにもともと必要である。このため、ナット4の製造工程において加工が増加しない。したがって、ボールねじ装置2は、ねじ軸3がナット4から脱落することを防止でき且つ製造工程を簡略化することができる。
【0041】
また、ボールねじ装置2は、ナット4に取り付けられる保持部材8を備える。ナット4は、周方向に沿う第1保持溝48を備える。キー7は、第1保持溝48よりも端面40とは反対側に位置する基部71と、第1保持溝48よりも端面40側に位置する突出部73と、基部71と突出部73との間に位置し且つ第1保持溝48に繋がる第2保持溝78を備える。保持部材8は、第1保持溝48及び第2保持溝78に嵌まり、且つ基部71に接する。
【0042】
これにより、第1保持溝48に嵌まった保持部材8は、ナット4に対して軸方向に移動しない。保持部材8が基部71に接するので、キー7はナット4の端面40側に移動できない。このため、キー7がナット4から脱落することが防止される。
【0043】
また、アクチュエータ1は、ボールねじ装置2と、軸受5を介してナット4を支持するハウジング10と、動力伝達部材(第3動力伝達部材15)に伝わる動力を発生させるモータ11と、を備える。
【0044】
これにより、アクチュエータ1は、製造工程を簡略化することができるボールねじ装置2を含むので、容易に製造することができる。
【0045】
(第1変形例)
図7は、第1変形例に係るボールねじ装置の断面図である。図8は、第1変形例に係るキーの斜視図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0046】
第1変形例のボールねじ装置2Aは、上述したキー7とは異なるキー7Aを備える。キー7Aは、図8に示すように突出部73Aを備える。図8に示すように、突出部73Aの放射方向の厚さは、連結部72の放射方向の厚さと等しい。これにより、キー7Aの形状が単純になるので、キー7Aの製造が容易になる。
【0047】
(第2変形例)
図9は、第2変形例に係るボールねじ装置の断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0048】
第2変形例に係るボールねじ装置2Bは、上述した第3動力伝達部材15とは異なる第3動力伝達部材15Bを備える。第3動力伝達部材15Bは、図9に示すように凸部155を備える。凸部155は、第2キー溝151の表面から放射方向の内側に突出する突起である。例えば、凸部155は、第2キー溝151のうちナット4の端面40側の端部に設けられる。凸部155は、キー7の基部71よりも端面40側に位置する。凸部155は、基部71に接する。
【0049】
なお、第2変形例のボールねじ装置2Bにおいて、第1変形例のキー7Aが適用されてもよい。すなわち、ボールねじ装置2Bが、キー7に代えてキー7Aを備えていてもよい。
【0050】
上述したように、動力伝達部材(第3動力伝達部材15B)は、第2キー溝151の表面から軸方向に対する直交方向に突出する凸部155を備える。キー7は、凸部155よりも端面40とは反対側に位置する基部71と、凸部155よりも端面40側に位置する突出部73と、を備える。凸部155は、基部71に接する。
【0051】
これにより、キー7はナット4の端面40側に移動しない。凸部155によって、キー7がナット4から脱落することが防止される。
【0052】
(第3変形例)
図10は、第3変形例に係るボールねじ装置の斜視図である。図11は、第3変形例に係るボールねじ装置の平面図である。図12は、第3変形例に係るキーの斜視図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0053】
第3変形例に係るボールねじ装置2Cは、上述したナット4とは異なるナット4Cと、上述したキー7とは異なるキー7Cと、を備える。
【0054】
図10に示すように、ナット4Cは、交差溝456と、交差溝457と、を備える。交差溝456及び交差溝457は、第1キー溝45と交差する。交差溝456は、第1キー溝45から周方向に延びている。交差溝457は、第1キー溝45から周方向に延びており且つ交差溝456とは反対方向に延びている。例えば、交差溝456の軸方向の位置は、交差溝457の軸方向の位置に等しい。交差溝456及び交差溝457は、第1保持溝48よりも端面40とは反対側に位置している。
【0055】
図12に示すように、キー7Cは、突起76と、突起77と、を備える。例えば、突起76及び突起77は、基部71から周方向に突出する。図10に示すように、突起76が交差溝456に嵌まり、突起77が交差溝457に嵌まる。
【0056】
なお、第3変形例のキー7Cにおいて、第1変形例のキー7Aが有する突出部73Aが適用されてもよい。すなわち、キー7Cが突出部73に代えて突出部73Aを備えていてもよい。
【0057】
なお、交差溝456及び交差溝457の位置は、必ずしも上述した位置でなくてもよい。例えば、交差溝456及び交差溝457が、第1保持溝48よりも端面40側に位置していてもよい。交差溝456の軸方向の位置が、交差溝457の軸方向の位置とは異なっていてもよい。また、キー7Cは、必ずしも交差溝456及び交差溝457の両方を備えていなくてもよく、少なくとも交差溝456及び交差溝457の一方を備えていればよい。
【0058】
上述したように、ナット4Cは、第1キー溝45に交差する交差溝456及び交差溝457を備える。キー7Cは、交差溝456に嵌まる突起76を備える。キー7Cは、交差溝457に嵌まる突起77を備える。
【0059】
これにより、キー7Cは、ナット4Cに対して相対的に移動しない。交差溝456、交差溝457、突起76及び突起77によって、キー7Cがナット4Cから軸方向に移動して脱落することが防止される。
【符号の説明】
【0060】
1 アクチュエータ
10 ハウジング
110 シャフト
11 モータ
13 第1動力伝達部材
15、15B 第3動力伝達部材
151 第2キー溝
155 凸部
17 第2動力伝達部材
2、2A、2B、2C ボールねじ装置
3 ねじ軸
35 ストッパー
4、4C ナット
40 端面
41 コマ穴
42 コマ
45 第1キー溝
451 底面
452、453、454 側面
456、457 交差溝
48 第1保持溝
49 フランジ
5 軸受
6 転動体
7、7A、7C キー
71 基部
72 連結部
73、73A 突出部
75 フック部
76、77 突起
78 第2保持溝
8 保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12