特許第6805963号(P6805963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805963
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】車体支持装置
(51)【国際特許分類】
   F16M 11/20 20060101AFI20201214BHJP
   F16M 11/22 20060101ALI20201214BHJP
   B60S 5/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F16M11/20 R
   F16M11/22 Z
   B60S5/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-99776(P2017-99776)
(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公開番号】特開2018-192984(P2018-192984A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】市原 謙太
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−055936(JP,U)
【文献】 実開昭57−204264(JP,U)
【文献】 実開昭61−045272(JP,U)
【文献】 実開昭54−143561(JP,U)
【文献】 実開平06−023853(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0066461(US,A1)
【文献】 米国特許第06644615(US,B1)
【文献】 米国特許第05152505(US,A)
【文献】 実開昭61−139986(JP,U)
【文献】 実開昭57−153059(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 13/00
F16M 11/20
F16M 11/22
B66F 1/02
B62B 11/00
B62B 5/04
B60S 9/00 − 9/22
B60S 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に対し持ち上げられた車体の下面と前記床面との間に設けられ、その状態で車体を下ろしたときに同車体を床面上に支持する車体支持装置であって、
キャスタを有する移動ベースと、
前記移動ベースに対し上下動できるように設けられている支持柱と、
前記支持柱に設けられて車体の下面と係合することが可能な車体受け部と、
前記支持柱の下端が前記キャスタの下端よりも上に位置するよう同支持柱を前記移動ベースに支持する弾性部材と、を備え
前記支持柱には、車体からの荷重を受けて同支持柱の下面が床面に当接しているとき、その支持柱の傾きを抑制する脚部が設けられており、
前記移動ベースは、四角板状に形成されて四隅にそれぞれ前記キャスタを有しており、
前記支持柱は、前記移動ベースの中央部を貫通した状態となっており、
前記移動ベースの上側には、前記支持柱の周りを囲む四角枠が設けられており、
前記四角枠は、その四隅を前記移動ベースの四隅に対応して位置させた状態から、前記支持柱を中心として水平方向に45°回転させた状態で同支持柱に固定されており、
前記四角枠の四隅にはそれぞれ下方に突出する前記脚部が設けられていることを特徴とする車体支持装置。
【請求項2】
前記移動ベースに前記支持柱が前記弾性部材により支持されているときの前記車体受け部の高さ位置を調節するための高さ調節部を備える請求項1に記載の車体支持装置。
【請求項3】
前記移動ベースには上下方向に延びるガイド棒が設けられている一方、前記支持柱の周りを囲むように設けられている前記四角枠には前記ガイド棒が遊びを持った状態で貫通する貫通孔が形成されており、
前記弾性部材は、前記移動ベースと前記支持柱の前記四角枠との間に設けられて前記ガイド棒が貫通した状態となるコイルスプリングである請求項1又は2に記載の車体支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、車体に対しドアが建て付けられた後、その車体を車体支持装置によって床面上に支持し、その状態で車体の外面に対するドアの突出状態及び没入状態を測定して評価することが行われる。そして、上記車体支持装置としては、床面上での車体の支持を簡単に行える装置を用いることが望まれている。
【0003】
ちなみに、特許文献1には、車両におけるデファレンシャルギヤを支持する装置が記載されている。同装置は、キャスタを有する移動ベースと、その移動ベース上に上下動可能に設けられている受け部と、を備えている。そして、車体の外面に対するドアの突出状態及び没入状態を測定する際、上記装置を用いて車体を床面上に支持することが考えられる。
【0004】
特許文献1の装置で車体を床面上に支持する場合、車両の車輪が床面から浮くように車体を持ち上げて同車体の下に移動ベースを移動させ、その状態で車体を下ろして上記受け部で同車体の荷重を受けるようにする。その結果、車体が上記装置のキャスタ、移動ベース、及び受け部を介して床面上に支持される。この場合、同装置(移動ベース)を持ち上げられた車体の下に容易に移動させることができ、同装置による床面上での車体の支持を簡単に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3196221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の装置では、車体を同装置のキャスタ、移動ベース、及び受け部を介して床面上に支持するため、そのように車体を支持した状態のときに上記装置のキャスタ(車輪)が回転することにより車体が床面上で動いてしまうおそれがある。そして、車体の外面に対するドアの突出状態及び没入状態を測定するとき、車体支持装置によって支持された車体が床面上で動くと、上記測定を精密に行うことが困難になり、車体の外面に対するドアの突出状態及び没入状態を正しく評価できなくなる。
【0007】
本発明の目的は、床面上での車体の支持を簡単に行いながら、その支持を行っているときの車体が床面上で動くことを抑制できる車体支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車体支持装置は、床面に対し持ち上げられた車体の下面と同床面との間に設けられ、その状態で車体を下ろしたときに同車体を床面上に支持する。同装置は、キャスタを有する移動ベースと、その移動ベースに対し上下動できるように設けられている支持柱と、その支持柱に設けられて車体の下面と係合することが可能な車体受け部と、上記支持柱の下端が上記キャスタの下端よりも上に位置するよう同支持柱を移動ベースに支持する弾性部材と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、車体支持装置の支持柱は、その下端が移動ベースのキャスタよりも上に位置するよう弾性部材によって同移動ベースに支持されている。このため、上記キャスタを用いて車体支持装置(移動ベース)を簡単に移動させることができるとともに、支持柱を弾性部材の弾性力に抗して下方に変位させることにより車体受け部の高さ位置を低くすることができる。従って、車体支持装置を床面に対し持ち上げられた車体の下に簡単に移動させることができ、その状態で弾性部材の弾性力により支持柱を上方に移動させることにより車体受け部を車体の下面に係合させることができる。その後、車体が下ろされて車体支持装置の車体受け部が車体の荷重を受けると、支持柱が弾性部材の弾性力に抗して移動ベースに対し下方に相対移動する。そして、支持柱の下面が床面に当接することにより、その支持柱によって車体が床面上に支持される。このときには、床面と支持柱の下面との間での摩擦により、支持柱によって支持された車体が床面上で動くことは抑制される。
【0010】
上記車体支持装置については、移動ベースに支持柱が弾性部材により支持されているときの車体受け部の高さ位置を調節するための高さ調節部を備えるものとすることが考えられる。
【0011】
この構成によれば、床面に対する車体の下面の高さ位置が車種によって異なるとしても、それに合わせて、移動ベースに支持柱が弾性部材により支持されているときの車体受け部の高さ位置を上記高さ調節部によって調節することができる。
【0012】
上記車体支持装置において、移動ベースには上下方向に延びるガイド棒が設けられている一方、支持柱には上記ガイド棒が遊びを持った状態で貫通する貫通孔を有するガイド部が設けられているものとすることが考えられる。更に、上記弾性部材については、移動ベースと支持柱のガイド部との間に設けられて上記ガイド棒が貫通した状態となるコイルスプリングとすることが考えられる。
【0013】
この構成によれば、車体の前部と後部とをそれぞれ別の車体支持装置で床面上に支持する場合であって、車体の前部と後部との一方を先に車体支持装置で支持するとき、その際の支持柱の下方への移動を安定して行うことができる。すなわち、車体の前部と後部との一方を先に持ち上げて、その持ち上げた部分の下に車体支持装置を移動させて車体受け部を車体の下面と係合させた後、上記持ち上げた部分を下ろすことによって同装置の車体受け部が車体の荷重を受けるようになる。このときの車体は前部と後部との一方が持ち上げられた状態となっているため、車体が床面に対し傾いた状態で車体受け部が同車体の下面を受けて支持柱が下方に変位することになる。このときには車体の上記傾きに対応して車体受け部が変位するように支持柱が傾く。こうした支持柱の傾きは、ガイド棒の外周面と貫通孔の内周面との間の遊びによって許容される。そして、このように許容される支持柱の傾きにより、車体受け部が車体の傾きに対応して変位した状態で車体の下面を受けるため、上述したように車体が傾いていたとしても、車体からの荷重を受けた支持柱が安定して下方に移動するようになる。
【0014】
なお、上記支持柱には、車体からの荷重を受けて同支持柱の下面が床面に当接しているとき、その支持柱の傾きを抑制する脚部を設けることが考えられる。
この構成によれば、車体を底面上に支持する支持柱が傾くことは脚部によって抑制されるため、その支持柱が倒れることを未然に防ぐことができる。
【0015】
上記車体支持装置において、上記移動ベースは四角板状に形成されて四隅にそれぞれ前記キャスタを有しており、上記支持柱は移動ベースの中央部を貫通した状態となっており、その移動ベースの上側には上記支持柱の周りを囲む四角枠が設けられているものとすることが考えられる。上記四角枠は、その四隅を移動ベースの四隅に対応して位置させた状態から、支持柱を中心として水平方向に45°回転させた状態で同支持柱に固定されるものとすることが考えられる。更に、上記四角枠の四隅にはそれぞれ下方に突出する上記脚部を設けることが考えられる。
【0016】
上記構成によれば、車体支持装置における上述した移動ベースのキャスタと四角枠の脚部との位置関係により、キャスタを有する移動ベースにより車体支持装置を移動可能とすることと、車体を床面上にする支持柱の傾きを脚部によって抑制することとを、車体支持装置の大型化を招くことなく両立することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、床面上での車体の支持を簡単に行いながら、その支持を行っているときの車体が床面上で動くことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車体を車体支持装置によって床面上に支持した状態を示す側面図。
図2】車体支持装置を示す側面図。
図3】車体支持装置を示す平面図。
図4】車体の前部を床面に対し持ち上げた状態を示す側面図。
図5】車体のフランジと車体支持装置の車体受け部との位置関係を示す側面図。
図6】車体のフランジと車体支持装置の車体受け部との位置関係を示す側面図。
図7】車体の前部に位置するフランジと車体支持装置の車体受け部とを係合させた状態を示す側面図。
図8】車体のフランジを車体支持装置によって床面上に支持した状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車体支持装置の一実施形態について、図1図8を参照して説明する。
図1は、車両1のドア3を車体2に対し建て付けた後、車体2の外面に対するドア3の突出状態及び没入状態を測定して評価するため、車体2を車体支持装置4によって床面5上に支持した状態を示している。このときの車体支持装置4は、車体2の下面と床面5との間であって、二つの前輪6(図1には一つのみ図示)の後側にそれぞれ位置しているとともに、二つの後輪7(図1には一つのみ図示)の前側にもそれぞれ位置している。そして、前輪6の後側の車体支持装置4は車体2の前部下面に形成されて下方に突出するフランジ8を支持しており、後輪7の前側の車体支持装置4は車体2の後部下面に形成されて下方に突出するフランジ8を支持している。
【0020】
図2及び図3はそれぞれ、車体支持装置4を側方から見た状態、及び、上方から見た状態を湿している。車体支持装置4は、四角板状に形成されて下面の四隅にそれぞれキャスタ9を有する移動ベース10と、その移動ベース10の中央部を上下に貫通した状態で上下動することが可能とされている支持柱11と、その支持柱11を移動ベース10に支持するための弾性部材として機能するコイルスプリング12と、を備えている。
【0021】
移動ベース10の上側には支持柱11の周りを囲む四角枠13が設けられている。図3に示すように、四角枠13は、その四隅を移動ベース10の四隅に対応して位置させた状態から、支持柱11を中心として水平方向に45°回転させた状態で、同支持柱11に対し次のように固定されている。すなわち、四角枠13の上面には連結棒16が固定されており、同連結棒16には金具17が取り付けられており、この金具17がボルト18により支持柱11の側面に固定されている。これにより、四角枠13が連結棒16、金具17、及びボルト18によって支持柱11の側面に固定されている。また、図2に示すように、支持柱11には上記ボルト18をねじ込むためのボルト穴19が上下二段に形成されており、図2の例では下段のボルト穴19に金具17を支持柱11に固定するための上記ボルト18がねじ込まれている。
【0022】
四角枠13の四隅には、支持柱11の下端に対応する位置まで下方に突出する脚部20が固定されている。また、四角枠13の各辺にはそれぞれ上下方向に延びる貫通孔14が形成されており、四角枠13の下面における貫通孔14の周りに対応する部分と移動ベース10の上面との間には上記コイルスプリング12が設けられている。そして、移動ベース10には、上記貫通孔14及び上記コイルスプリング12を上から下に向けて貫通するボルト15がねじ込まれている。なお、ボルト15は移動ベース10に設けられた上下方向に延びるガイド棒としての役割を担い、四角枠13は上記ガイド棒が遊びを持った状態で貫通する貫通孔14を有するガイド部としての役割を担う。
【0023】
支持柱11は、コイルスプリング12により、同支持柱11の下端がキャスタ9の下端よりも上に位置するよう移動ベース10に支持されている。コイルスプリング12は、支持柱11に対し下向きの荷重を加えたとき、同支持柱11の下端がキャスタ9の下端に対応する位置まで到達するよう設定されている。また、支持柱11の下端部には、同支持柱11の上下方向の長さを長くするための嵩上げ台21が、ボルト22によって取り外し可能に取り付けられている。この嵩上げ台21を取り外したときには、上記金具17を支持柱11に固定するためのボルト18を、下段のボルト穴19にねじ込む代わりに上段のボルト穴19にねじ込むことにより、脚部20の下端が上記嵩上げ台21を取り外した後の支持柱11の下端に対応して位置するようになる。
【0024】
支持柱11の上端部には、上方に向けて開口する溝24を備えた車体受け部23が設けられている。この車体受け部23は、支持柱11の上端に対し、シム25を挟んだ状態でボルト26によって取り付けられている。ちなみに、ボルト26を緩めて車体受け部23を支持柱11から取り外し、シム25を厚さの異なるものに交換してから車体受け部23を支持柱11の上端に取り付け直せば、支持柱11の長さ(車体受け部23の高さ位置)を調整することができる。なお、上記シム25、上記嵩上げ台21、ボルト18、及びボルト穴19は、移動ベース10に支持柱11がコイルスプリング12により支持されているときの車体受け部23の高さ位置を調節するための高さ調節部として機能する。
【0025】
車体受け部23は、溝24内に車体2の下面に形成された上記フランジ8が挿入されることにより、同フランジ8と係合するようになっている。このフランジ8を介して車体2からの荷重が車体受け部23に作用すると、支持柱11がコイルスプリング12の弾性力に抗して移動ベース10に対し下方に相対移動する。そして、支持柱11(嵩上げ台21)の下面が床面5に当接することにより、その支持柱11によって車体2が床面5上に支持される。このとき、支持柱11が傾くことは、四角枠13に固定された脚部20によって抑制される。
【0026】
次に、本実施形態における車体支持装置4の作用について説明する。
図4に示すように、車体2を車体支持装置4によって床面5上に支持する際には、車体2の前部と後部との一方(この例では前部)を先に持ち上げて、その持ち上げた部分であって前輪6の後側に位置するフランジ8の近傍に車体支持装置4を移動させる。この車体支持装置4(図2)の支持柱11及び脚部20の下端は、移動ベース10のキャスタ9よりも上に位置するようコイルスプリング12によって同移動ベース10に支持されている。このため、上記キャスタ9を用いて車体支持装置4(移動ベース10)を、床面5に対し持ち上げられた車体2の前部に位置するフランジ8の近傍に簡単に移動させることができる。
【0027】
図5は、車体支持装置4を上記フランジ8の近傍に移動させた状態を示している。このときには、フランジ8の下端の高さ位置が車体受け部23における溝24の底面とほぼ同じ高さ位置となる。すなわち、そのようなフランジ8の下端と溝24の底面との位置関係が実現するよう、車体2(図4)の前部が床面5に対して持ち上げられる。その後、支持柱11をコイルスプリング12の弾性力に抗して下方に変位させることにより、車体受け部23の上面の高さ位置をフランジ8の下端よりも低くする。
【0028】
図6は、このときの車体支持装置4における支持柱11(車体受け部23)の高さ位置を示している。このときの支持柱11の下端及び脚部20の下端はキャスタ9の下端よりも上に位置しており、同キャスタ9により車体支持装置4(移動ベース10)を床面5に沿って移動させることが可能となっている。このため、車体支持装置4を車体2の下面におけるフランジ8の下まで簡単に移動させることができ、その状態でコイルスプリング12の弾性力により支持柱11を上方に移動させることにより、車体受け部23の溝24に車体2のフランジ8を挿入することができる。これにより、車体受け部23がフランジ8に対し係合される。
【0029】
図7は、このときの車体2及び車体支持装置4の状態を示している。また、図2は、このときの車体支持装置4の状態を拡大して示している。この状態のもと、車体2が下ろされて車体支持装置4の車体受け部23がフランジ8を介して車体2の荷重を受けると、支持柱11がコイルスプリング12の弾性力に抗して移動ベース10に対し下方に相対移動する。
【0030】
ちなみに、図8に示すように、車体受け部23がフランジ8を介して車体2の荷重を受けるときには、車体2の前部のみが床面5に対し持ち上げられている。このため、フランジ8が車体2の後方(図8の右方)に向うほど下るように床面5に対し傾斜しており、そうした状態のフランジ8を車体受け部23の溝24で受けて支持柱11が下方に移動する。
【0031】
このとき、フランジ8の傾斜に対応して車体受け部23が変位するように支持柱11が傾く。こうした支持柱11の傾きは、図2に示す四角枠13における貫通孔14の内周面とボルト15の外周面との間の遊びによって許容される。そして、このように許容される支持柱11の傾きにより、車体受け部23がフランジ8の傾きに対応して変位した状態でフランジ8を受けるため、上述したようにフランジ8が傾いていたとしても、同フランジ8からの車体2の荷重を受けて支持柱11が安定して下方に移動するようになる。
【0032】
そして、上述したように下方に移動する支持柱11の下面が床面5に当接すると(図8)、支持柱11の下面全体が床面5に押し付けられることにより、支持柱11の傾きが解消されて同支持柱11によって車体2が床面5上に支持される。このときには、床面5と支持柱11の下面との間に摩擦力が作用するため、支持柱11によって支持された車体2が床面5上で動くことは抑制される。
【0033】
その後、車体2(図1)の後部が床面5に対し持ち上げられ、その状態のもとで後輪7の前側に位置するフランジ8の下に車体支持装置4を移動させ、同装置4の車体受け部23を上記フランジ8と係合させる。そして、車体受け部23とフランジ8とを係合させたまま、車体2を下ろすことにより、同車体2が支持柱11によって床面5上に支持される。
【0034】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)車体支持装置4によって床面5上での車体2の支持を簡単に行いながら、その支持を行っているときの車体2が床面5上で動くことを抑制できる。
【0035】
(2)嵩上げ台21を取り外して金具17を支持柱11に固定するためのボルト18を下段のボルト穴19にねじ込む代わりに上段のボルト穴19にねじ込めば、コイルスプリング12で移動ベース10に支持されているときの支持柱11の高さが低くなる。従って、車両1が前輪6及び後輪7で床面5上に支持されているときの床面5に対する車体2におけるフランジ8の高さ位置が車種によって異なるとしても、同フランジ8の高さ位置に合わせて、支持柱11における車体受け部23の高さ位置を高くしたり低くしたりして調整することができる。
【0036】
(3)更に、支持柱11の上面と車体受け部23との間に挟まれたシム25を厚さの異なるものに交換することにより、支持柱11における車体受け部23の高さ位置を微調整することができる。
【0037】
(4)車体2の前部を後部よりも先に持ち上げ、その前部の下に車体支持装置4を移動させて車体受け部23を車体2のフランジ8と係合させた後、車体2の前部を下ろすことにより車体受け部23がフランジ8を介して車体2からの荷重を受けるとき、フランジ8が床面5に対し傾斜した状態となる。このときにはフランジ8の傾きに対応して車体受け部23が変位するよう、支持柱11にはボルト15の外周面と貫通孔14の内周面との間の遊びによって許容される分の傾きが生じる。そして、このように許容される支持柱11の傾きにより、車体受け部23が上記フランジ8の傾きに対応して変位した状態で車体2からの荷重を受けるため、上述したようにフランジ8が傾いていたとしても、車体2からの荷重を受けた支持柱11が安定して下方に移動する。
【0038】
(5)車体2における前輪6の後側のフランジ8を車体支持装置4によって床面5上で支持するとともに、後輪7の前側のフランジ8を車体支持装置4によって床面5上で支持しているとき、それら車体支持装置4の支持柱11が傾くことは、同支持柱11に固定された四角枠13の脚部20によって抑制される。これにより、車体2を床面5上に支持している車体支持装置4の支持柱11が傾いて倒れることを未然に防ぐことができる。
【0039】
(6)車体支持装置4において、移動ベース10の四隅にはキャスタ9が設けられている。更に、同装置4の、四角枠13は、その四隅を移動ベース10の四隅に対応して位置させた状態から、移動ベース10に支持された支持柱11を中心として水平方向に45°回転させた状態で、同支持柱11に対し固定されている。そして、この四角枠13の四隅に脚部20が固定されている。こうした移動ベース10のキャスタ9と四角枠13の脚部20との位置関係により、キャスタ9を有する移動ベース10により車体支持装置4を移動可能とすることと、車体2を床面5上にする支持柱11の傾きを脚部20によって抑制することとを、車体支持装置4の大型化を招くことなく両立することができる。従って、車体2における前輪6の後側のフランジ8、及び、後輪7の前側のフランジ8といった箇所を、車体支持装置4によって前輪6及び後輪7に干渉することなく床面5上で支持することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・車体支持装置4によって床面5上に車体2を支持するに当たり、車体2の後部のみを持ち上げて同後部を車体支持装置4で支持した後、車体2の前部を持ち上げて同前部を車体支持装置4で支持するようにしてもよい。
【0041】
・車体2の前部と後部とを同時に持ち上げて、それら前部及び後部を車体支持装置4によって支持するようにしてもよい。
・車体支持装置4において、脚部20を設けることは必須ではない。
【0042】
・シム25の交換による支持柱11の高さ調節と嵩上げ台21及びボルト穴19による支持柱11の高さ調節とのうち、一方の高さ調節のみを行うようにしてもよい。
・車体支持装置4に必ずしも支持柱11の高さ調節機能を持たせる必要はない。
【0043】
・車体支持装置4において、ボルト15の外周面と貫通孔14の内周面との間に遊びを持たせることは必須ではない。
・弾性部材としてコイルスプリング12の代わりにゴム等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…車両、2…車体、3…ドア、4…車体支持装置、5…床面、6…前輪、7…後輪、8…フランジ、9…キャスタ、10…移動ベース、11…支持柱、12…コイルスプリング、13…四角枠、14…貫通孔、15…ボルト、16…連結棒、17…金具、18…ボルト、19…ボルト穴、20…脚部、21…嵩上げ台、22…ボルト、23…車体受け部、24…溝、25…シム、26…ボルト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8