(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る樹脂成形体の具体的な実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1−
図4を用いて、第1実施形態の樹脂成形体1について説明する。
樹脂成形体1は、射出成形によって溶融樹脂を金型に流し込んで形成される部材である。樹脂成形体1は、溶融樹脂にグラスファイバー等の強化繊維が混入された繊維強化樹脂により形成されたものである。樹脂成形体1は、例えばエンジン用パーツやターボダクトなどに用いられる。樹脂成形体1は、
図1に示す如く、ボルト4を用いて締結対象部材2に締結される。この締結対象部材2は、例えば金属製のシリンダブロックなどの他部材である。
【0012】
樹脂成形体1は、締結対象部材2に対する取付部としてのフランジ部10を有している。フランジ部10は、平面板状に形成された部位である。フランジ部10は、所定厚さを有している。フランジ部10には、ボルト締結用の取付孔11が形成されている。すなわち、樹脂成形体1は、取付孔11を備えている。取付孔11は、
図2に示す如く、フランジ部10を貫通する孔であって、断面略円形に形成されている。尚、取付孔11の形状は、後に詳述する。取付孔11の周囲には、周縁部12が形成されている。すなわち、樹脂成形体1は、取付孔11の周囲に環状に形成された周縁部12を備えている。
【0013】
取付孔11には、カラー3が挿入されている。カラー3は、円筒状に形成された金属製の部材である。カラー3は、断面円形に形成されている。カラー3は、取付孔11の径に対応した外径を有していると共に、取付孔11の軸方向の長さに対応した軸方向の長さを有している。カラー3は、取付孔11に圧入され或いは焼嵌めされることにより嵌合される。
【0014】
カラー3の径方向内側には、ボルト4が挿通される。ボルト4は、ヘッド部4aと、ヘッド部4aから軸方向に延びるシャフト部4bと、を有している。シャフト部4bは、カラー3の内径以下の外径を有している。シャフト部4bには、雄ネジが形成されている。締結対象部材2には、内壁に雌ネジが形成された固定孔2aが形成されている。固定孔2aは、ボルト4のシャフト部4bの外径に合致する径を有している。
【0015】
ボルト4は、シャフト部4bがカラー3を介して取付孔11に挿通された状態で、そのシャフト部4bの雄ネジが締結対象部材2の固定孔2aの雌ネジに螺合されることにより、その締結対象部材2に締め付けられる。このボルト4による締め付けにより、樹脂成形体1が締結対象部材2に締結される。尚、この締結時、
図1に示す如く、ボルト4のヘッド部4aと、カラー3及び樹脂成形体1のフランジ部10の軸方向端面との間に、金属製のワッシャ5が介在されていてもよい。
【0016】
樹脂成形体1のフランジ部10には、ウェルド部13が形成されている。ウェルド部13は、成形時における樹脂の合流により取付孔11周囲の周縁部12に形成される部位である。すなわち、周縁部12は、ウェルド部13を有している。ウェルド部13は、取付孔11周囲の周縁部12に一箇所設けられる。尚、ウェルド部13は、少なくとも一箇所に設けられていればよい。
【0017】
樹脂成形体1の周縁部12は、互いにウェルド部13を挟んで周方向に対向する対向部12a,12bを有している。ウェルド部13は、成形後に対向部12a,12bそれぞれを形成する予定の溶融樹脂同士が成形時に合流することにより、その対向部12a,12bそれぞれの周方向対向側に向いた端面同士が接した位置に発生する。ウェルド部13は、フランジ部10の外側面、取付孔11の孔壁面、及びフランジ部10の軸方向両端面に形成されるウェルドラインLを有している。ウェルドラインLは、フランジ部10の外側面と取付孔11の孔壁面とを結ぶように径方向に延びると共に、フランジ部10の軸方向両端間を結ぶように軸方向に延びる。
【0018】
次に、樹脂成形体1の取付孔11の形状について説明する。
取付孔11は、上記の如く断面略円形に形成されているが、具体的には以下の構造を有している。取付孔11は、断面円形に形成されつつ、外縁側(孔壁)の周方向一部(本実施形態では二箇所)が孔内側へ向けて凹むように形成されている。取付孔11周囲の周縁部12は、内壁側において周方向に部分的に切り欠かれた形状を有している。すなわち、周縁部12は、更に、切り欠かれた部位としての円弧部14と、その円弧部14に対して孔内側へ突出する突出部15と、を有している。
【0019】
円弧部14は、仮想円柱の側面に沿う円弧面14aを有している。この円弧面14aは、取付孔11の外方から軸方向に見て、仮想円柱の軸心Oを中心にしかつその仮想円柱の側面により形成される仮想円Cの円周上に沿うように形成されている。円弧部14は、取付孔11周囲の周縁部12において周方向二箇所に設けられている。周方向二箇所の円弧部14の円弧面14aは、互いに同一形状に形成されており、仮想円柱の軸心Oを挟んで互いに対向するように点対称に配置されている。尚、円弧部14は、カラー3と周縁部12との接触面積を小さくするうえでは周方向の弧長が長いことが好ましい。
【0020】
突出部15は、円弧部14の円弧面14aに対して仮想円柱の軸心O側へ突出する部位であって、断面略台形状に形成されている。突出部15は、仮想円柱の側面に沿う円弧面15aを有している。この円弧面15aを形成するための仮想円柱は、円弧部14の円弧面14aを形成するための仮想円柱に対して軸心が一致しかつその仮想円柱よりも径が小さい同心円柱である。突出部15の円弧面15aは、取付孔11の外方から軸方向に見て、仮想円柱の軸心Oを中心にしかつその仮想円柱の側面により形成される仮想円の円周上に沿うように形成されている。円弧面15aは、周方向に円弧状に広がりかつ軸方向に平行に延びるように形成されている。突出部15は、取付孔11周囲の周縁部12において周方向二箇所に設けられている。周方向二箇所の突出部15の円弧面15aは、互いに同一形状に形成されており、仮想円柱の軸心Oを挟んで互いに対向するように点対称に配置されている。
【0021】
円弧部14及び突出部15は、樹脂成形体1の取付孔11周囲の周縁部12において周方向に交互に配置されている。円弧部14と突出部15との境界には、段差となる角部16が形成されている。尚、角部16は、テーパ状に切り欠かれていてもよい。突出部15の円弧面15aの軸心Oからの距離(すなわち円弧半径)は、円弧部14の円弧面14aの軸心Oからの距離(すなわち円弧半径)よりも短い。
【0022】
上記の如く、カラー3は、取付孔11に圧入或いは焼嵌めにより嵌合される。突出部15とカラー3とは、互いに所定の締め代を有するように形成されている。一方、円弧部14とカラー3とは、突出部15とカラー3との締め代に比して小さい或いはゼロの締め代を有するように形成されている。突出部15は、取付孔11へのカラー3の嵌合状態においてカラー3の外筒面に接触する。一方、円弧部14は、取付孔11へのカラー3の嵌合状態においてカラー3の外筒面に対して非接触である。カラー3が取付孔11に嵌合された状態において、カラー3の外筒面と円弧部14との間には、隙間Sが形成されている。この隙間Sは、円弧部14に対応する領域に亘って一定の径方向幅で周方向に延びている。
【0023】
尚、上記の非接触には、以下の態様が含まれてもよい。この態様は、例えば、円弧部14とカラー3とは現に接触しているが、円弧部14がカラー3から円弧外方へ受ける力が予め定めた所定値以下である状態である。以下、円弧部14を非接触円弧部14と、突出部15を接触突出部15と、それぞれ称す。
【0024】
取付孔11へのカラー3の嵌合は、それぞれ円弧面15aが取付孔11(具体的には、円弧面14a,15aの仮想円柱)の軸心Oを挟んで互いに対向する周方向二箇所の接触突出部15の接触面15aの間にカラー3が挟み込まれるように行われると共に、カラー3の外筒面と非接触円弧部14との間に隙間Sが形成されるように行われる。
【0025】
この嵌合構造によれば、カラー3の軸心が取付孔11の軸心Oからずれることすなわちカラー3が取付孔11に対して軸心Oに直交する何れかの方向に相対移動することは規制されるので、取付孔11でのカラー3の保持力を確保することができる。また、カラー3と接触突出部15とが面接触するので、取付孔11でのカラー3の保持力を向上させることができる。
【0026】
取付孔11にカラー3が嵌合された状態において樹脂成形体1の周縁部12に発生する応力は、軸心O側から接触突出部15の円弧面15aに向けた方向(
図4に示す矢印方向A)に作用する応力のみである。すなわち、その周縁部12に、軸心O側から非接触円弧部14の円弧面14aに向けた方向に作用する応力は発生しない。
【0027】
上記したウェルド部13は、周縁部12における接触突出部15の円弧面15aの径方向外側に、すなわち、周縁部12のうち接触突出部15の円弧面15aが形成された対応領域に設けられている。尚、ウェルド部13は、周縁部12に設けられた複数箇所の接触突出部15のうち成形時における樹脂の最下流側の一箇所の接触突出部15に対応して設けられていればよい。また、ウェルド部13は、接触突出部15の周方向中央位置を通って径方向に延びる線に沿うように形成されている。
【0028】
樹脂成形体1の取付孔11にカラー3が挿入され嵌合された状態で、ボルト4のシャフト部4bがそのカラー3に挿通されて、そのシャフト部4bの雄ネジが締結対象部材2の固定孔2aの雌ネジに螺合されると、その樹脂成形体1がボルト4を用いてその締結対象部材2に締結される。
【0029】
上記構造を有する樹脂成形体1において、カラー3が取付孔11に嵌合された状態では、周縁部12に、軸心O側から各接触突出部15の円弧面15aに向けた方向(
図4に示す矢印方向A)にのみ応力が作用するので、その応力が作用する方向がウェルド部13に対してウェルドラインLに沿った径方向になる。かかる応力が作用すると、周縁部12におけるウェルド部13とは異なる部位(具体的には、ウェルド部13から略90°だけ周方向に離間した、ウェルドラインLに対して略平行な方向に接線が延びる非接触円弧部14)に、そのウェルドラインLと平行な方向(
図4に示す矢印方向B)に引き延ばす力が集中する。このため、接触突出部15のウェルド部13に作用する対向部12a,12b同士を周方向や径方向に引き離す力は抑制される。
【0030】
また、非接触円弧部14は、取付孔11へのカラー3の嵌合状態においてカラー3の外筒面に対して非接触であり、非接触円弧部14の円弧面14aとカラー3の外筒面との間には、隙間Sが形成される。この構造では、非接触円弧部14がウェルドラインLと平行な方向に引き延ばされると、その引き延ばしが非接触円弧部14の円弧面14aとカラー3の外筒面とが接しない状態で開始されるので、その非接触円弧部14が周方向へ引き延ばされ易くなる。非接触円弧部14と接触突出部15とが周方向に交互に配置された周縁部12において、非接触円弧部14が周方向に引き延ばされ易いと、その分だけ接触突出部15が周方向に引き延ばされ難くなる。このため、接触突出部15のウェルド部13に作用する対向部12a,12b同士を周方向や径方向に引き離す力は抑制される。
【0031】
また、ウェルド部13が接触突出部15の周方向中央位置を通って設けられている状態で、樹脂成形体1の周縁部12に、ウェルド部13に対してウェルドラインLに沿って径方向に向いた応力が発生すると、周縁部12におけるウェルド部13を挟んだ周方向両側の対向部12a,12bはそれぞれ、カラー3から互いに略同じ大きさの応力で径方向外側に圧力を受ける。このため、両対向部12a,12bが径方向に相対的にずれるように変形することは抑制される。
【0032】
更に、カラー3が取付孔11に嵌合された状態では、周縁部12に、軸心O側から非接触円弧部14の円弧面14aに向けた方向に作用する応力は発生しない。この場合、周縁部12におけるウェルド部13を挟んだ周方向両側の対向部12a,12bがそれぞれカラー3から周方向に受ける力の差はほとんどなく、それらの対向部12a,12bに互いに周方向異なる方向の力が作用することはなく或いは小さいので、両対向部12a,12bが周方向に相対的にずれるように変形することは抑制される。
【0033】
このように、周縁部12において、ウェルド部13に作用する対向部12a,12b同士を周方向や径方向に引き離す力が小さく或いは略ゼロであり、ウェルド部13を周方向に挟んだ対向部12a,12bが径方向に相対的にずれる変形及び周方向に相対的にずれる変形が共に抑制される。従って、樹脂成形体1の構造によれば、周縁部12のウェルド部13における伸び変形或いは歪み変形を低減させることができるので、そのウェルド部13の、対向部12a,12bの周方向への相対的ずれや径方向への相対的ずれによる破断を抑えることができる。
【0034】
また、周縁部12において、カラー3の外筒面に接触しない非接触円弧部14は、仮想円柱の軸心Oを中心にした仮想円の円周上に沿うように形成されている。この構造では、非接触円弧部14とカラー3の外筒面との間の隙間Sが周方向に亘って均一な径方向幅を有する。このため、樹脂成形体1の構造によれば、例えば周縁部12においてカラー3の外筒面に接触しない部位が例えば楕円の周上に沿うように形成される構造に比べて、非接触円弧部14をウェルドラインLと平行な方向に引き延ばし易くなっている。
【0035】
また、この樹脂成形体1の構造においては、接触突出部15とカラー3との締め代が予め想定される大きさに比して大きい寸法であっても、周縁部12においてウェルド部13から略90°だけ周方向に離間した非接触円弧部14に作用する、そのウェルドラインLと平行な方向に引き延ばす力が増加するだけであり、ウェルド部13に作用する対向部12a,12b同士を周方向や径方向に引き離す力はほとんど変わらない。従って、樹脂成形体1の構造によれば、接触突出部15とカラー3との締め代寸法の不良を低減することができ、その良品幅を拡大することができる。このため、樹脂成形体1の歩留まりを向上させることができ、コストダウンを図ることができる。
【0036】
更に、樹脂成形体1は、繊維強化樹脂により形成されている。この構造では、ウェルド部13において繊維が周方向に亘って延在しないので、ウェルド部13の弾性率が他の部位に比べて高くなり、ウェルド部13の強度が問題となり易い。これに対して、樹脂成形体1においては、上記の如く、応力がウェルド部13に対してウェルドラインLに沿った径方向に作用することで、ウェルド部13の、対向部12a,12bの周方向への相対的ずれや径方向への相対的ずれによる破断を抑えることができるので、この繊維強化樹脂により形成されたものでもウェルド部13の強度問題が生じ難く、より顕著な効果を得ることが可能である。また、繊維強化樹脂により形成された樹脂成形体1によれば、高温下で高い強度が必要となるエンジン用パーツやターボダクトなどにも使用可能であるので、対象範囲の拡大を図ることができる。
【0037】
ところで、上記の第1実施形態においては、カラー3の外筒面に面接触する円弧面15aを有する接触突出部15が、樹脂成形体1の取付孔11周囲の周縁部12に周方向二箇所設けられている。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。その円弧面15aを有する接触突出部15が、その周縁部12に周方向三箇所以上設けられていてもよい。例えば、
図5に示す如く、この接触突出部15が、周縁部12に周方向三箇所設けられていてもよい。尚、周方向三箇所の接触突出部15は、互いに同一形状に形成されているのが好ましい。また、周方向三箇所の接触突出部15は、周方向に等間隔に離間して設けられているのが好ましい。また、ウェルド部13は、周方向三箇所の接触突出部15のうち何れか一の接触突出部15の径方向外側に設けられていればよい。
【0038】
[第2実施形態]
図6を用いて、第2実施形態の樹脂成形体1について説明する。尚、
図6において、上記
図1−
図4に示す構成と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0039】
上記した第1実施形態では、樹脂成形体1の周縁部12の接触突出部15が、カラー3の外筒面に面接触する接触面としての円弧面15aを有している。この構造では、カラー3が取付孔11に対して軸心Oに直交する何れかの方向に相対移動するのを規制するうえで、円弧面15aを有する接触突出部15が周縁部12に周方向二箇所以上設けられていればよい。
【0040】
これに対して、第2実施形態の樹脂成形体1では、周縁部12の接触突出部15が、カラー3の外筒面に線接触する接触部15bを有している。接触突出部15は、非接触円弧部14の円弧面14aに対して仮想円柱の軸心O側へ突出している。接触突出部15は、仮想円柱の軸心O側に断面弦状に広がる板状の板面部15cを有している。上記の接触部15bは、板面部15c上において軸心Oに対して平行に延びる方向に線状に形成される。
【0041】
接触部15bを有する接触突出部15は、周縁部12に周方向三箇所以上(本実施形態では周方向三箇所)設けられている。周方向三箇所の接触突出部15は、互いに同一形状に形成されており、周方向に等間隔に離間して設けられている。非接触円弧部14は、取付孔11周囲の周縁部12に周方向三箇所以上(本実施形態では周方向三箇所)設けられている。
【0042】
非接触円弧部14及び接触突出部15は、樹脂成形体1の取付孔11周囲の周縁部12において周方向に交互に配置されている。接触突出部15の接触部15bの軸心Oからの距離は、非接触円弧部14の円弧面14aの軸心Oからの距離(すなわち円弧半径)よりも短い。
【0043】
カラー3は、取付孔11に圧入或いは焼嵌めにより嵌合される。接触突出部15とカラー3とは、互いに所定の締め代を有するように形成されている。一方、非接触円弧部14とカラー3とは、接触突出部15とカラー3との締め代に比して小さい或いはゼロの締め代を有するように形成されている。接触突出部15の接触部15bは、取付孔11へのカラー3の嵌合状態においてカラー3の外筒面に線接触する。取付孔11へのカラー3の嵌合は、カラー3が周方向三箇所の接触突出部15の接触部15bにより軸心O側に向けて押されるように行われると共に、カラー3の外筒面と非接触円弧部14との間に隙間Sが形成されるように行われる。
【0044】
この嵌合構造によれば、カラー3の軸心が取付孔11の軸心Oからずれることすなわちカラー3が取付孔11に対して軸心Oに直交する何れかの方向に相対移動することは規制されるので、取付孔11でのカラー3の保持力を確保することができる。また、上記の嵌合状態においてカラー3の外筒面と接触突出部15の接触部15bとが線接触する接触面積は、面接触時の接触面積に比べて小さいので、カラー3を取付孔11に挿入する際の組み付け性を向上させることができる。
【0045】
ウェルド部13は、周縁部12における接触突出部15の接触部15bの径方向外側に、すなわち、接触突出部15の接触部15bの位置を通るように周縁部12に設けられている。尚、ウェルド部13は、周縁部12に設けられた複数箇所の接触突出部15のうち成形時における樹脂の最下流側の一箇所の接触突出部15に設けられていればよい。また、ウェルド部13は、ウェルドラインLが接触突出部15の接触部15bから径方向外側に向けて延びる線に沿うように設けられていることが望ましい。
【0046】
上記構造を有する樹脂成形体1において、カラー3が取付孔11に嵌合された状態では、周縁部12に、軸心O側から各接触突出部15の接触部15bに向けた方向に応力が作用する。その応力の一つが作用する方向がウェルド部13に対してウェルドラインLに沿った径方向になると共に、他の応力がウェルド部13とは異なる部位(具体的には、ウェルド部13から周方向120°だけ離間した部位)に生じるので、ウェルド部13に作用する対向部12a,12b同士を周方向や径方向に引き離す力は小さい。
【0047】
また、上記の如く接触部15bに向けた方向の応力が作用すると、周縁部12における接触突出部15間の非接触円弧部14に、周方向に引き延ばす力が集中する。更に、非接触円弧部14の円弧面14aとカラー3の外筒面との間には、隙間Sが形成されるので、その非接触円弧部14が周方向へ引き延ばされ易い。このため、接触突出部15のウェルド部13に作用する対向部12a,12b同士を周方向や径方向に引き離す力は抑制される。
【0048】
また、ウェルド部13が接触突出部15の接触部15bの位置を通って設けられている状態で、樹脂成形体1の周縁部12に、ウェルド部13に対してウェルドラインLに沿って径方向に向いた応力が発生すると、周縁部12におけるウェルド部13を挟んだ周方向両側の対向部12a,12bはそれぞれ、カラー3から互いに略同じ大きさの応力で径方向外側に接触圧を受ける。このため、両対向部12a,12bが径方向に相対的にずれるように変形することは抑制される。
【0049】
更に、カラー3が取付孔11に嵌合された状態では、周縁部12に、軸心O側から非接触円弧部14の円弧面14aに向けた方向に作用する応力は発生しない。この場合、周縁部12におけるウェルド部13を挟んだ周方向両側の対向部12a,12bがそれぞれカラー3から周方向に受ける力の差はほとんどなく、それらの対向部12a,12bに互いに周方向異なる方向の力が作用することはなく或いは小さいので、両対向部12a,12bが周方向に相対的にずれるように変形することは抑制される。
【0050】
このように、周縁部12において、ウェルド部13に作用する対向部12a,12b同士を周方向や径方向に引き離す力が小さく或いは略ゼロであり、ウェルド部13を周方向に挟んだ対向部12a,12bが径方向に相対的にずれる変形及び周方向に相対的にずれる変形が共に抑制される。従って、樹脂成形体1の構造においても、周縁部12のウェルド部13における伸び変形或いは歪み変形を低減させることができるので、そのウェルド部13の、対向部12a,12bの周方向への相対的ずれや径方向への相対的ずれによる破断を抑えることができる。
【0051】
また、周縁部12において、カラー3の外筒面に接触しない非接触円弧部14は、仮想円柱の軸心Oを中心にした仮想円の円周上に沿うように形成されている。この構造では、非接触円弧部14とカラー3の外筒面との間の隙間Sが周方向に亘って均一な径方向幅を有する。このため、樹脂成形体1の構造によれば、例えば周縁部12においてカラー3の外筒面に接触しない部位が例えば楕円の周上に沿うように形成される構造に比べて、非接触円弧部14をウェルドラインLと平行な方向に引き延ばし易くなっている。
【0052】
また、この樹脂成形体1の構造においては、接触突出部15とカラー3との締め代が予め想定される大きさに比して大きい寸法であっても、周縁部12の接触部15bから径方向外側に作用する力が増加するだけであり、ウェルド部13に作用する対向部12a,12b同士を周方向や径方向に引き離す力はほとんど変わらない。従って、樹脂成形体1の構造においても、接触突出部15とカラー3との締め代寸法の不良を低減することができ、その良品幅を拡大することができる。このため、樹脂成形体1の歩留まりを向上させることができ、コストダウンを図ることができる。
【0053】
ところで、上記の第2実施形態においては、接触突出部15が、カラー3の外筒面に線接触する接触部15bを有し、その接触部15bが、取付孔11の軸心O側に断面弦状に広がる板状の板面部15c上において軸心Oに対して平行に延びる方向に線状に形成される。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図7に示す如く、接触部15bが、その板面部15cに代えて、取付孔11の軸心O側に山状又は瘤状に出っ張った出張部15dの頂点上において軸心Oに対して平行に延びる方向に線状に形成されていてもよい。この変形形態の構造でも、第2実施形態の構造と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、上記の第2実施形態においては、接触部15bを有する接触突出部15は、周縁部12に周方向三箇所設けられている。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。その接触部15bを有する接触突出部15が、その周縁部12に周方向四箇所以上設けられていてもよい。例えば、
図8に示す如く、この接触突出部15が、周縁部12に周方向四箇所設けられていてもよい。尚、周方向四箇所の接触突出部15は、互いに同一形状に形成されていてよく、また、周方向に等間隔に離間して設けられていてよい。また、ウェルド部13は、周方向四箇所の接触突出部15のうち何れか一の接触突出部15の径方向外側に設けられていればよい。
【0055】
また、上記の第2実施形態においては、周縁部12の接触突出部15の接触部15bが、カラー3の外筒面に線接触する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、その接触部15bが、カラー3の外筒面に点接触するものであってもよい。この変形形態において、この接触突出部15は、軸方向に離間して点在するように配置されるものであってよい。
【0056】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。