(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805997
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
G05B19/05 N
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-149965(P2017-149965)
(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公開番号】特開2019-28875(P2019-28875A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 和彦
【審査官】
中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−134601(JP,A)
【文献】
特開2007−312573(JP,A)
【文献】
特開2000−050497(JP,A)
【文献】
特開平04−177504(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第2003−0004982(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/04−19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設プロセッサが設置される既設プロセッサ設置部と、
新設プロセッサが設置される新設プロセッサ設置部と、
前記既設プロセッサ設置部および前記新設プロセッサ設置部に接続されたプロセッサ切替部と、前記プロセッサ切替部に接続された制御部と、前記制御部に電力を供給する電源部とを有する既設IO電源と、
前記プロセッサ切替部および前記制御部に接続された既設IOと、を備え、
前記プロセッサ切替部は、
切替スイッチにより前記既設プロセッサと前記新設プロセッサから使用するプロセッサをいずれか1つ選択可能なプロセッサ切替回路と、
前記既設プロセッサから既設プロセッサ故障信号を、前記新設プロセッサから新設プロセッサ故障信号を入力し、前記プロセッサ切替回路により選択されたプロセッサから入力したプロセッサ故障信号を前記制御部へ出力するプロセッサ故障信号切替回路と、
前記既設プロセッサから既設IOデータ信号を、前記新設プロセッサから新設IOデータ信号を入力し、前記プロセッサ切替回路により選択されたプロセッサから入力したIOデータ信号を前記既設IOへ出力するIOデータ信号切替回路と、を有し、
前記制御部は、前記プロセッサ故障信号切替回路から入力したプロセッサ故障信号が正常値かつ前記電源部の状態を表すIO電源故障信号が正常値である場合に、正常値を示す出力制御信号を前記既設IOへ出力し、
前記既設IOは、前記制御部から正常値を示す出力制御信号を入力した場合に、前記プロセッサ切替部から入力したIOデータ信号に基づくIO出力信号を出力すること、
を特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制御装置に係り、特に、使用するプロセッサの切替が容易な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントを構成する機器を制御する制御装置として、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)が知られている。特許文献1に開示されるように、制御装置は、IO電源(電源部)、IO(入出力部)、CPUを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−50497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4を参照して従来の制御装置における課題について説明する。従来の制御装置は、特許文献1と同様に既設IO電源5a、既設IO6、既設CPUが設置された既設プロセッサ設置部7を備える。既設IO6は、既設IO電源5から出力制御信号を、既設CPUからIOデータ信号を入力し、これらの信号に基づいてIO出力信号を外部機器2へ出力している。
【0005】
ところで、従来の制御装置のプロセッサを既設CPUから新設CPUへ更新する場合がある。この更新において既設IO6を流用する場合、
図4の従来構成では、新設CPUが設置される新設プロセッサ設置部9と共に、新設IO電源8も追加する必要がある。さらに、新設CPUから既設IO6へIOデータ信号を渡し、出力制御する必要があるため、既設IO6は、既設CPUのIOデータ信号を切り離して新設CPUのIOデータ信号(破線矢印)を接続し、既設IO電源5の出力制御信号を切り離して新設IO電源8の出力制御信号(破線矢印)を接続する必要がある。
【0006】
すなわち、既設CPUから新設CPUへの更新にて既設IO6を流用する場合には、新設CPU用の新設IO電源8を追加する必要があり、またIOデータ信号と出力制御信号の配線入替作業が必要となり、費用的・時間的なコストが問題となる。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、既設プロセッサから新設プロセッサへの更新にて既設IOを流用する場合に、IOデータ信号および出力制御信号の切替が容易であり、かつ、IO電源の追加が不要である制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る制御装置は、既設プロセッサが設置される既設プロセッサ設置部と、新設プロセッサが設置される新設プロセッサ設置部と、既設IO電源と、プロセッサ切替部および制御部に接続された既設IOとを備える。既設IO電源は、既設プロセッサ設置部および新設プロセッサ設置部に接続されたプロセッサ切替部と、プロセッサ切替部に接続された制御部と、制御部に電力を供給する電源部とを有する。
【0009】
プロセッサ切替部は、さらにプロセッサ切替回路と、プロセッサ故障信号切替回路と、IOデータ信号切替回路とを有する。プロセッサ切替回路は、切替スイッチにより既設プロセッサと新設プロセッサから使用するプロセッサを選択可能である。プロセッサ故障信号切替回路は、既設プロセッサから既設プロセッサ故障信号を、新設プロセッサから新設プロセッサ故障信号を入力し、プロセッサ切替回路により選択されたプロセッサから入力したプロセッサ故障信号を制御部へ出力する。IOデータ信号切替回路は、既設プロセッサから既設IOデータ信号を、新設プロセッサから新設IOデータ信号を入力し、プロセッサ切替回路により選択されたプロセッサから入力したIOデータ信号を既設IOへ出力する。
【0010】
また、制御部は、プロセッサ故障信号切替回路から入力したプロセッサ故障信号が正常値かつ電源部の状態を表すIO電源故障信号が正常値である場合に、正常値を示す出力制御信号を前記既設IOへ出力する。既設IOは、制御部から正常値を示す出力制御信号を入力した場合に、プロセッサ切替部から入力したIOデータ信号に基づくIO出力信号を出力する。
【0011】
このように、本実施形態に係る制御装置は、プロセッサ切替部を介して、既設・新設プロセッサと既設IO電源の制御部とが接続し、また、既設・新設プロセッサと既設IOとが接続する構成を有する。プロセッサ切替部によるプロセッサの切替により、制御部が入力するプロセッサ故障信号および既設IOが入力するIOデータ信号が切替られる。このようなプロセッサ切替機能付きIO電源を備えることで、IOデータ信号と出力制御信号の配線入替作業をすることなく、また、新設プロセッサ用のIO電源を追加することなく、既設プロセッサから新設プロセッサへの更新にて既設IOを流用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態に係る制御装置によれば、既設プロセッサから新設プロセッサへの更新にて既設IOを流用する場合に、IOデータ信号および出力制御信号の切替が容易であり、かつ、IO電源の追加が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る制御装置の全体構成を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るプロセッサ切替部の構成図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る制御部および既設IOの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
実施の形態1.
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る制御装置の全体構成を説明するための図である。制御装置3は、外部電源1から電力が供給され、プラントを構成する外部機器2(例えばアクチュエータや制御用ネットワーク)へIO出力信号を出力する装置である。制御装置3は、例えばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)である。
【0016】
制御装置3は、既設IO電源5、既設IO6、既設プロセッサ設置部7、新設プロセッサ設置部9を備える。さらに、既設IO電源5は、電源部51と制御部52とプロセッサ切替部53を備える。
【0017】
既設プロセッサが設置される既設プロセッサ設置部7および新設プロセッサが設置される新設プロセッサ設置部9は、プロセッサ切替部53に接続している。プロセッサ切替部53は制御部52および既設IO6に接続している。電源部51は、外部電源1に接続し制御部52に電力を供給するAC/DC回路511を備える。既設IO6は、プロセッサ切替部53および制御部52に接続している。このように、既設プロセッサ設置部7および新設プロセッサ設置部9は、既設IO電源5を経由して既設IO6に接続しており、既設IO6はIO出力信号を外部機器2へ出力する。
【0018】
既設プロセッサ設置部7は、外部電源1に接続し交流を直流に変換するAC/DC回路71と、AC/DC回路71から電力供給を受けて動作する既設プロセッサである既設CPU(Central Processing Unit)72とを備える。既設CPU72は、既設CPU72の稼働状態に関する既設CPU故障信号、および、既設CPU72による演算結果である既設IOデータ信号を、既設IO電源5のプロセッサ切替部53へ出力する。
【0019】
同様に、新設プロセッサ設置部9は、外部電源1に接続し交流を直流に変換するAC/DC回路91と、AC/DC回路91から電力供給を受けて動作する新設プロセッサである新設CPU92とを備える。新設CPU92は、新設CPU92の稼動状態に関する新設CPU故障信号、および、新設CPU92による演算結果である新設IOデータ信号を、既設IO電源5のプロセッサ切替部53へ出力する。
【0020】
このように、既設プロセッサ設置部7と新設プロセッサ設置部9はそれぞれ、CPU故障信号およびIOデータ信号をプロセッサ切替部53へ出力する。
【0021】
(既設IO電源:プロセッサ切替部)
既設IO電源5のプロセッサ切替部53は、既設プロセッサ設置部7、新設プロセッサ設置部9、制御部52、既設IO6に接続している。また、プロセッサ切替部53は、プロセッサ切替回路531、プロセッサ故障信号切替回路532、IOデータ信号切替回路533、プロセッサ切替スイッチ534を備える。
【0022】
プロセッサ切替回路531は、トグルスイッチ、押ボタンスイッチ、ロッカースイッチ等のオペレータが操作可能なプロセッサ切替スイッチ534に接続され、この切替スイッチにより既設CPU72と新設CPU92から使用するプロセッサを選択可能である。
【0023】
プロセッサ故障信号切替回路532は、既設CPU72から既設CPU故障信号を、新設CPU92から新設CPU故障信号を入力し、プロセッサ切替回路531により選択されたプロセッサから入力したCPU故障信号を制御部52へ出力する。
【0024】
IOデータ信号切替回路533は、既設CPU72から既設IOデータ信号を、新設CPU92から新設IOデータ信号を入力し、プロセッサ切替回路531により選択されたプロセッサから入力したIOデータ信号を既設IO6へ出力する。
【0025】
図2を参照して、プロセッサ切替部53の動作について説明する。プロセッサ切替回路531は、プロセッサ切替スイッチ534がONの場合は新設CPU92を選択し、OFFの場合は既設CPU72を選択する。プロセッサ切替回路531は、選択されたプロセッサを示すCPU切替信号を、プロセッサ故障信号切替回路532とIOデータ信号切替回路533へ出力する。
【0026】
プロセッサ故障信号切替回路532は、既設CPU72から既設CPU故障信号を、新設CPU92から新設CPU故障信号を、プロセッサ切替回路531からCPU切替信号を入力する。新設CPU92を示すCPU切替信号が入力された場合、セレクタは新設CPU故障信号をCPU故障信号として制御部52へ出力する。一方、既設CPU72を示すCPU切替信号が入力された場合、セレクタは既設CPU故障信号をCPU故障信号として制御部52へ出力する。
【0027】
IOデータ信号切替回路533は、既設CPU72から既設IOデータ信号を、新設CPU92から新設IOデータ信号を、プロセッサ切替回路531からCPU切替信号を入力する。新設CPU92を示すCPU切替信号が入力された場合、セレクタは新設IOデータ信号をIOデータ信号として制御部52へ出力する。一方、既設CPU72を示すCPU切替信号が入力された場合、セレクタは既設IOデータ信号をIOデータ信号として既設IO6へ出力する。
【0028】
このように、プロセッサ切替部53は、プロセッサ切替スイッチ534のON/OFFに応じて、選択されたプロセッサのCPU故障信号およびIOデータ信号を出力する。
【0029】
(既設IO電源:制御部)
図1に戻り、既設IO電源5の制御部52について説明する。制御部52は、電源部51、プロセッサ切替部53、既設IO6に接続している。また、制御部52は、出力制御回路521、電源監視回路522を備える。
【0030】
制御部52は、プロセッサ故障信号切替回路532から入力したCPU故障信号が正常値(CPUが正常状態であることを示す値)かつ電源部51の状態を表すIO電源故障信号が正常値(IO電源が正常状態であることを示す値)である場合に、正常値を示す出力制御信号を既設IO6へ出力する。また、制御部52は、CPU故障信号とIO電源故障信号の少なくとも一方が異常値(CPU又はIO電源が異常状態であることを示す値又は信号が無い)である場合に、異常値を示す出力制御信号を既設IO6へ出力する。
【0031】
図3を参照して、制御部52の動作について説明する。制御部52の電源監視回路522は、IO電源(電源部51の出力)と基準電源524とを比較器523に入力し、比較結果をIO電源故障信号として出力する。例えば、IO電源の電流値や電圧値が基準電源524の設定値を下回る場合に、異常値(異常又は故障を示す値)を示すIO電源故障信号が出力される。IO電源故障信号と、プロセッサ故障信号切替回路532からのCPU故障信号は、合成器525に入力され、論理積を示す出力制御信号が制御周期毎に既設IOへ出力される。例えば、CPU故障信号が正常値、IO電源故障信号が正常値である場合に、正常値を示す出力制御信号(ON)が出力され、CPU故障信号およびIO電源故障信号の少なくとも一方が異常値である場合に、異常値を示す出力制御信号(OFF)が出力される。
【0032】
(既設IO)
図1に戻り、既設IO6について説明する。既設IO6は、既設IO電源5および外部機器2に接続している。また、既設IO6は、IOバッファ61および出力回路62を備える。既設IO6は、制御部52から正常値を示す出力制御信号を入力した場合に、プロセッサ切替部53から入力したIOデータ信号に基づくIO出力信号を出力する。
【0033】
図3を参照して、既設IO6の動作について説明する。既設IO6に入力されるIOデータ信号は、データの内容であるIOデータとIOデータの処理命令に関する制御信号とで構成される。既設IO6のIOバッファ61は、IOデータを制御信号のタイミングでデータラッチ回路611に保持する。保持されたIOデータは、出力回路62のゲート付き出力バッファ回路621に入力される。ゲート付き出力バッファ回路621は、既設IO電源5の制御部52から入力される出力制御信号がONの場合に、ゲート付き出力バッファ回路621から外部機器2へIO出力信号を出力する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置3は、プロセッサ切替部53を介して、既設・新設プロセッサと既設IO電源5の制御部52とが接続し、また、既設・新設CPUと既設IO6とが接続する構成を有する。プロセッサ切替部53によるプロセッサの切替により、制御部52が入力するCPU故障信号および既設IO6が入力するIOデータ信号が切替られる。このようなプロセッサ切替機能付きの既設IO電源5を備えることで、IOデータ信号と出力制御信号の配線入替作業をすることなく、また、新設CPU用のIO電源を追加することなく、既設CPUから新設CPUへの更新にて既設IO6を流用することができる。そのため、本実施形態に係る制御装置3によれば、既設CPUから新設CPUへの更新にて既設IO6を流用する場合に、IOデータ信号および出力制御信号の切替が容易であり、かつ、IO電源の追加が不要である。
【0035】
(変形例)
ところで、上述した実施の形態1では、2つのプロセッサ間で切替る構成について説明したが、3つ以上のプロセッサ間で切替る構成としてもよい。また、プロセッサはCPUに限定されるものではなく、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ等であってもよい。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 外部電源
2 外部機器
3 制御装置
5,5a 既設IO電源
7 既設プロセッサ設置部
8 新設IO電源
9 新設プロセッサ設置部
51 電源部
52 制御部
53 プロセッサ切替部
61 IOバッファ
62 出力回路
71,91,511 AC/DC回路
72 既設CPU
92 新設CPU
521 出力制御回路
522 電源監視回路
523 比較器
524 基準電源
525 合成器
531 プロセッサ切替回路
532 プロセッサ故障信号切替回路
533 IOデータ信号切替回路
534 プロセッサ切替スイッチ
611 データラッチ回路
621 ゲート付き出力バッファ回路