特許第6806043号(P6806043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806043
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】車両の後席用ディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20201221BHJP
   B60R 1/00 20060101ALI20201221BHJP
   B60R 1/04 20060101ALI20201221BHJP
   B60R 1/08 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B60R11/02 C
   B60R1/00 A
   B60R1/04 G
   B60R1/08 Z
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-229580(P2017-229580)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-98841(P2019-98841A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三輪 智章
(72)【発明者】
【氏名】木下 晶晴
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐士
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−078597(JP,A)
【文献】 特開2004−082835(JP,A)
【文献】 特開2015−160543(JP,A)
【文献】 特開平11−291817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60R 1/00
B60R 1/04
B60R 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられ、正面側からの入射光を反射するとともに背面側からの入射光を透過する光学部材、前記光学部材の背面側に配置され、車両の後方視界の画像を表示する後方視界用ディスプレイ、及び前記光学部材の鏡面に映る反射像により後方視認を行う第1使用状態と前記後方視界用ディスプレイに前記画像を表示することにより後方視認を行う第2使用状態とのいずれかに使用状態を切り替え可能な切替機構を備えるインサイドミラーを備える車両に適用され、
車室内の前席と後席との間に設けられ、前記後席側に向けて情報を表示する後席用ディスプレイと、前記後席用ディスプレイを天井に沿って格納する格納位置と、天井から吊り下げられる展開位置との間で変位させる変位機構と、前記変位機構の駆動を制御する制御装置と、前記第1使用状態のときの前記インサイドミラーの姿勢を検出する姿勢検出部と、運転者の目の位置を検出する位置検出部とを備える車両の後席用ディスプレイ装置であって、
前記制御装置は、前記第2使用状態から前記第1使用状態に切り替えられたときに、前記第1使用状態での運転者による後方視界を遮る視界確保領域内である第2展開位置から車両の後方視界が確保される視界確保領域の外である第1展開位置に前記後席用ディスプレイが変位するように前記変位機構の駆動を制御し、
前記制御装置は、運転者が後方を振り返ったときの前記姿勢検出部の検出結果及び前記位置検出部の検出結果に基づいて前記視界確保領域を導出し、前記第2展開位置から前記視界確保領域に重ならない第3展開位置に前記後席用ディスプレイが変位するように前記変位機構の駆動を制御する
車両の後席用ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後席用ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂ミニバンなどの車両においては、1列目シートと2列目シートとの間の天井から吊り下げられ、2列目シートや3列目シートの乗員向けに映像などの情報を表示する後席用ディスプレイ装置が設けられたものがある(例えば特許文献1参照)。このような後席用ディスプレイ装置には、天井に沿って格納される格納位置と、天井から吊り下げられる展開位置との間でディスプレイを変位させる変位機構が設けられている。
【0003】
特許文献1の後席用ディスプレイ装置では、車両の変速レバーが後退位置に操作されたときにモータの駆動を制御することで、後席用ディスプレイが展開位置から格納位置へと変位される。
【0004】
一方、車室内には、車両の後方視認性を確保するためのインサイドミラーが設けられている。特許文献2には、こうしたインサイドミラーの一形態としての電子ミラー装置が開示されている。この電子ミラー装置は、入射光の一部を反射し、一部を透過させるマジックミラー(one−way mirror)と、マジックミラーの背面側に配置される液晶ディスプレイとを備える。マジックミラーは、正面側(運転者に露呈されている側)からの入射光を反射させるとともに背面側(液晶ディスプレイ側)からの入射光を透過させる。この電子ミラー装置では、マジックミラー及び液晶ディスプレイを傾動させ、マジックミラーの鏡面に映る反射像により後方視認を行う第1の使用状態と、マジックミラーの鏡面が第1の使用状態よりも上向きに傾斜し液晶ディスプレイの表示画像によって後方視認を行う第2の使用状態とのいずれかに使用状態を切り替える切替機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−234390号公報
【特許文献2】特開2017−30425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載の電子ミラー装置を備えた車両においては、電子ミラー装置の液晶ディスプレイの表示画像によって後方視認を行うことができることから、運転者による車両の後方視界を確保しつつ、後席用ディスプレイの大型化を図ることができる。
【0007】
しかしながら、悪天候のときや、車両の後方視界の画像を撮影するカメラのレンズに汚れが付着しているときには、液晶ディスプレイの表示画像によって後方視認を行うことが困難となる。この場合、電子ミラー装置を第1の使用状態に切り替えても、後席用ディスプレイが邪魔になって運転者が後方視認を行うことが難しくなるおそれがある。またこうした問題は、後席用ディスプレイを大型化するほど顕著なものとなる。
【0008】
本発明の目的は、後席用ディスプレイの大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することのできる車両の後席用ディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、車室内に設けられ、正面側からの入射光を反射するとともに背面側からの入射光を透過する光学部材、前記光学部材の背面側に配置され、車両の後方視界の画像を表示する後方視界用ディスプレイ、及び前記光学部材の鏡面に映る反射像により後方視認を行う第1使用状態と前記後方視界用ディスプレイに前記画像を表示することにより後方視認を行う第2使用状態とのいずれかに使用状態を切り替え可能な切替機構を備えるインサイドミラーを備える車両に適用される車両の後席用ディスプレイ装置は、車室内の前席と後席との間に設けられ、前記後席側に向けて情報を表示する後席用ディスプレイと、前記後席用ディスプレイを変位させる変位機構と、前記変位機構の駆動を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記第2使用状態から前記第1使用状態に切り替えられたときに、前記第1使用状態での運転者による車両の後方視界が確保される視界確保領域の外に前記後席用ディスプレイが変位するように前記変位機構の駆動を制御する、ことを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、第2使用状態から第1使用状態に切り替えられたときには、第1使用状態での視界確保領域の外まで後席用ディスプレイが変位される。このため、第1使用状態に切り替えられた場合であっても、運転者が車両の後方視界を確保することができる。したがって、後席用ディスプレイの大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することができる。
【0011】
上記課題を解決するために、車室内に設けられ、正面側からの入射光を反射するとともに背面側からの入射光を透過する光学部材、前記光学部材の背面側に配置され、車両の後方視界の画像を表示する後方視界用ディスプレイ、及び前記光学部材の鏡面に映る反射像により後方視認を行う第1使用状態と前記後方視界用ディスプレイに前記画像を表示することにより後方視認を行う第2使用状態とのいずれかに使用状態を切り替え可能な切替機構を備えるインサイドミラーを備える車両に適用される車両の後席用ディスプレイ装置は、車室内の前席と後席との間に設けられ、前記後席側に向けて情報を表示するとともに当該情報を表示しない部分が透明となる後席用ディスプレイと、前記後席用ディスプレイの表示態様を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記第2使用状態から前記第1使用状態に切り替えられたときに、前記後席用ディスプレイのうち前記第1使用状態での運転者による車両の後方視界が確保される視界確保領域内の部分が透明となるように前記後席用ディスプレイの表示態様を制御する、ことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、第2使用状態から第1使用状態に切り替えられたときには、後席用ディスプレイのうち第1使用状態での視界確保領域内の部分が透明となる。このため、第1使用状態に切り替えられた場合であっても、運転者が車両の後方視界を確保することができる。したがって、後席用ディスプレイの大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することができる。
【0013】
上記構成において、前記第1使用状態のときの前記インサイドミラーの姿勢を検出する姿勢検出部と、運転者の目の位置を検出する位置検出部とを備え、前記制御装置は、前記姿勢検出部の検出結果及び前記位置検出部の検出結果に基づいて前記視界確保領域を導出する、ことが好ましい。
【0014】
同構成によれば、運転者の体格に合わせた視界確保領域が導出されるので、運転者が交代しても、その運転者に応じた適切な車両の後方視界が確保される。
上記課題を解決するために、車室内の前席と後席との間に設けられ、前記後席側に向けて情報を表示するとともに当該情報を表示しない部分が透明となる後席用ディスプレイと、前記後席用ディスプレイの表示態様を制御する制御装置とを備える車両の後席用ディスプレイ装置は、運転者の目の位置を検出する位置検出部とを備え、前記制御装置は、前記位置検出部の検出結果に基づいて運転者による車両の後方視界が確保される視界確保領域を導出し、前記後席用ディスプレイのうち前記視界確保領域内の部分が透明となるように前記後席用ディスプレイの表示態様を制御する、ことを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、例えば運転者が後方を振り返ったときには、制御装置を通じて、運転者の目の位置に基づいて運転者による車両の後方視界が確保される視界確保領域が導出される。そして、後席用ディスプレイのうち視界確保領域内の部分が透明となる。このため、運転者が後方を振り返った場合であっても、運転者が車両の後方視界を確保することができる。したがって、後席用ディスプレイの大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両の後席用ディスプレイ装置は、後席用ディスプレイの大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することのできるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1及び第2実施形態における、車両の後席用ディスプレイ装置が設けられる車両を側方から見た模式的な図であって、インサイドミラーが第2使用状態とされるときの図。
図2】第1、第2、及び第3実施形態における、インサイドミラーの側面図。
図3】第1、第2、及び第3実施形態における、インサイドミラーの正面図。
図4】第1、第2、及び第3実施形態における、後席用ディスプレイ装置の概略構成を示すブロック図。
図5】第1及び第2実施形態における、車両の後席用ディスプレイ装置が設けられる車両を側方から見た模式的な図であって、インサイドミラーが第1使用状態とされるときの図。
図6】第2実施形態における、車両の後席用ディスプレイ装置が設けられる車両を側方から見た模式的な図であって、運転者が後方を振り返ったときの図。
図7】第3実施形態における、(a)は後席用透明ディスプレイの表示可能領域の全域を使用して画像を表示する際の後席用透明ディスプレイの正面図、(b)は表示可能領域の一部(上半分)を使用して画像を表示する際の後席用透明ディスプレイの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、反射像による後方視認が行われる状態と撮影用画像による後方視認が行われる状態とが切り替えられるインサイドミラーを備える車両に適用される車両の後席用ディスプレイ装置を具体化した第1実施形態を図1〜5にしたがって説明する。
【0019】
図1に示すように、車両10の車室内には、前から後にかけて順に1列目シート11、2列目シート12、及び3列目シート13が備えられている。1列目シート11は、運転席及び助手席の総称であるとともに前席に相当し、2列目シート12及び3列目シート13は、それぞれ後席に相当する。
【0020】
車両10の後部には、車両後方を撮影する後方カメラ14が設けられている。本実施形態における後方カメラ14は、車室内に設けられているが、車室外に設けられていてもよい。
【0021】
また、車両10の車室内には、フロントウインドウFWから支持部材15を介して吊り下げ支持されるインサイドミラー20が設けられている。
図2及び図3に示すように、インサイドミラー20は、ケース21、マジックミラー22、後方視界用ディスプレイ23、及び操作レバー24を備えている。
【0022】
ケース21は、車両後方側に開口部21aを有し、マジックミラー22の正面側を車室内に露出させた状態でマジックミラー22を収容することともに、固定している。また、ケース21は、マジックミラー22の背面側(車両前方側)に後方視界用ディスプレイ23を収容するとともに、固定している。ケース21は、支持部材15により所望の姿勢(角度)に保持されるとともに、保持される姿勢が変更可能とされている。
【0023】
マジックミラー22は、正面側(車両後方側)からの入射光(可視光線)を反射するとともに、背面側からの入射光を透過する性質を有するものである。マジックミラー22は、運転者に対する姿勢に応じて、正面側(車両後方側)からの入射光(可視光線)を反射させて運転者に提供する状態と、背面側からの入射光を透過させて運転者に提供する状態とが切り替わるものとされている。なお、マジックミラー22は、光学部材に相当する。
【0024】
後方視界用ディスプレイ23は、マジックミラー22に向けて、後方カメラ14により撮影された画像を表示するものである。後方視界用ディスプレイ23により表示される画像(入射光)は、マジックミラー22を透過する。
【0025】
操作レバー24は、ケース21の下部に設けられ、回動操作させられることにより、支持部材15に対してケース21が支持される姿勢(角度)を所定の傾動角度で傾動させるために操作される部位であって、図示しない切替機構と機械的な接続関係にある。したがって、操作レバー24が回動操作させられることに伴って切替機構が作動してケース21の姿勢が変更されることにより、運転者に対するマジックミラー22の姿勢も変更される。なお、操作レバー24の回動操作に伴い傾動するケース21の傾動角度は、運転者に対してマジックミラー22が正面側からの入射光を反射させて提供する状態と、背面側からの入射光を透過させて提供する状態とが切り替わる角度に設定されている。ここで、本実施形態における操作レバー24は、マジックミラー22の姿勢をケース21ごと可変させるものであるが、支持部材15に対するケース21の姿勢は変更されずにマジックミラー22及び後方視界用ディスプレイ23の姿勢のみが変更される構成であってもよい。
【0026】
インサイドミラー20は、操作レバー24が回動操作されることにより、マジックミラー22が正面側(車両後方側)からの入射光(可視光線)を反射させて運転者に提供する第1使用状態と、マジックミラー22が後方視界用ディスプレイ23に表示される画像を透過させて運転者に提供する第2使用状態とが切り替えられる。なお、第2使用状態では、マジックミラー22の鏡面が第1使用状態よりも上向きとなる。これにより、インサイドミラー20が第2使用状態とされるとき、運転者に提供される後方視界用ディスプレイ23の画像に反射像が写り込むことが抑制される。
【0027】
なお、操作レバー24の回動位置により、後方視界用ディスプレイ23のオンオフも切り替えられる。後方視界用ディスプレイ23は、インサイドミラー20が第2使用状態とされる回動位置に操作レバー24が操作されると後方視界用ディスプレイ23がオン(画像を表示する状態)となり、インサイドミラー20が第1使用状態とされる回動位置に操作レバー24が操作されると後方視界用ディスプレイ23がオフ(画像を表示しない状態)となる。
【0028】
したがって、運転者は、インサイドミラー20が第1使用状態とされるとき、マジックミラー22に映る反射像により後方視認を行い、インサイドミラー20が第2使用状態とされるとき、マジックミラー20越しに表示される後方視界用ディスプレイ23の画像により後方視認を行う。
【0029】
さらに、図1に示すように、車両10の車室内には、1列目シート11と2列目シート12との間の天井16に支持される車両の後席用ディスプレイ装置40が設けられている。
【0030】
図4に示すように、後席用ディスプレイ装置40は、変位機構41と、後席用ディスプレイ42と、制御装置43とを備える。
変位機構41は、モータ41aの駆動により、後席用ディスプレイ42を天井16に沿って格納する格納位置P0と、天井16から吊り下げられて2列目シート12及び3列目シート13から後席用ディスプレイ42を視認することができる第1展開位置P1及び第2展開位置P2との間で後席用ディスプレイ42を変位させる周知の機構である。
【0031】
なお、図1に示すように、第2展開位置P2は、2列目シート12及び3列目シート13の乗員から視認しやすい位置である一方で、運転者のインサイドミラー20の反射を利用した後方視界を遮る位置である。第2展開位置P2は、車両開発時におけるテストやシミュレーション等により、予め設定されている。第1展開位置P1は、第2展開位置P2から格納位置P0とは反対側へ回転させた位置であって、2列目シート12及び3列目シート13の乗員から視認が可能で、且つ、運転者のインサイドミラー20の反射を利用した後方視界を遮らない位置である。第1展開位置P1は、インサイドミラー20の姿勢や運転者の目の位置から導出される視界確保領域S1と重ならない位置に設定される。この視界確保領域S1は、運転者による車両の後方視界が確保される領域である。
【0032】
後席用ディスプレイ42は、第1展開位置P1及び第2展開位置P2にある状態で、車両後方側に向けて画像を表示するものである。本実施形態の後席用ディスプレイ42には、2列目シート12及び3列目シート13の乗員が視認しやすいように大型化されたものが採用されている。
【0033】
図4に示すように、制御装置43は、レバー検出部46、姿勢検出部47、及び位置検出部48の各部と電気的に接続されている。
レバー検出部46は、例えばタクトスイッチ等により、インサイドミラー20の操作レバー24の操作位置を検出するものである。
【0034】
姿勢検出部47は、例えばインサイドミラー20のケース21内にマジックミラー22及び後方視界用ディスプレイ23とともに収容された状態で当該ケース21に固定されて、重力方向の検出に基づきマジックミラー22の姿勢(角度)を検出するものである。本実施形態の姿勢検出部47は、操作レバー24の操作位置に連動し、インサイドミラー20が第1使用状態とされるときのマジックミラー22の姿勢を検出する。
【0035】
位置検出部48は、例えばインストルメントパネルに固定される位置検出用カメラ48a(図1参照)を通じて、撮影した画像情報に基づき、運転者の目の位置を検出するものである。
【0036】
制御装置43は、レバー検出部46、姿勢検出部47、及び位置検出部48の各部からの情報に基づき、後席用ディスプレイ42のオンオフの切り替え、及び変位機構41のモータ41aの駆動の制御を通じて後席用ディスプレイ42の位置を制御する。
【0037】
詳述すると、制御装置43は、図示しない車両10のアクセサリースイッチACCがオフからオンに切り替えられたことをトリガにモータ41aの駆動の制御を通じて、後席用ディスプレイ42を格納位置P0から第1展開位置P1又は第2展開位置P2へ変位させる。また、制御装置43は、アクセサリースイッチACCがオンからオフに切り替えられたことをトリガにモータ41aの駆動の制御を通じて、後席用ディスプレイ42を第1展開位置P1又は第2展開位置P2から格納位置P0へ変位させる。
【0038】
さらに、制御装置43は、アクセサリースイッチACCがオンとされる状態において、レバー検出部46の検出結果からインサイドミラー20が第1使用状態と判断されるとき、姿勢検出部47及び位置検出部48の検出結果から、マジックミラー22に映る反射像により運転者が車両の後方視認を行えるように、車両の後方視界が確保される視界確保領域S1を導出する。そして、制御装置43は、導出した視界確保領域S1と重ならない第1展開位置P1を導出し、当該第1展開位置P1に後席用ディスプレイ42が位置するようにモータ41aの駆動を制御する。
【0039】
また、制御装置43は、アクセサリースイッチACCがオンとされる状態において、レバー検出部46の検出結果からインサイドミラー20が第2使用状態と判断されるとき、後席用ディスプレイ42が第2展開位置P2に位置するようにモータ41aの駆動を制御する。
【0040】
次に、後席用ディスプレイ装置40の作用について説明する。
制御装置43は、アクセサリースイッチACCがオンとされ、且つインサイドミラー20が第2使用状態とされるとき、後席用ディスプレイ42が第2展開位置P2に位置するようにモータ41aの駆動を制御する。これにより、図1に示すように、2列目シート12及び3列目シート13の乗員から、大型化された後席用ディスプレイ42を視認しやすいので、これら後席の乗員は、快適な乗車環境のなかで移動することができる。
【0041】
なお、第2使用状態におけるインサイドミラー20は、後方カメラ14に撮影された映像を後方視界用ディスプレイ23に表示することにより、マジックミラー22越しに運転者に車両の後方視界を提供する。これにより、運転者は、車両後方を確認できる状態が確保された状態で車両10を運転することができる。
【0042】
また、制御装置43は、アクセサリースイッチACCがオンとされ、且つインサイドミラー20が第1使用状態とされるとき、後席用ディスプレイ42が第1展開位置P1に位置するようにモータ41aの駆動を制御する。これにより、図5に示すように、2列目シート12及び3列目シート13の乗員から、後席用ディスプレイ42を視認することができる。
【0043】
また、第1展開位置P1は、姿勢検出部47により検出されるマジックミラー22の姿勢及び位置検出部48により検出される運転者の目の位置に基づき導出される視界確保領域S1と重ならない位置に設定されるものである。したがって、運転者がインサイドミラー20(マジックミラー22)を見たとき、当該インサイドミラー20には後席用ディスプレイ42が映らないので、運転者は、インサイドミラー20に映る反射像により車両の後方視認を行うことができる。
【0044】
次に、反射像による後方視認が行われる状態と撮影用画像による後方視認が行われる状態とが切り替えられるインサイドミラー20を備える車両10に適用される後席用ディスプレイ装置40の作用効果について説明する。
【0045】
(1)インサイドミラー20が第2使用状態から第1使用状態に切り替えられたとき、後席用ディスプレイ42は、視界確保領域S1の範囲内に位置する第2展開位置P2から視界確保領域S1の外である第1展開位置まで変位する。このため、第1使用状態に切り替えられた場合であっても、運転者が車両の後方視界を確保することができる。したがって、後席用ディスプレイ42の大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することができる。
【0046】
(2)第1使用状態とされるときのインサイドミラー20(マジックミラー22)の姿勢を検出する姿勢検出部47及び運転者の目の位置を検出する位置検出部48を備える車両10に後席用ディスプレイ装置40を設けた。これにより、後席用ディスプレイ装置40の制御装置43は、運転者がマジックミラー22に映る反射像により後方確認する際に必要な視界確保領域S1を導出することができる。したがって、運転者が交代しても、その運転者の体格に応じた視界確保領域S1が導出され、その視界確保領域S1の範囲外まで後席用ディスプレイ42が変位する。これにより、姿勢検出部47及び位置検出部48が設けられず、規定の視界確保領域に応じて視界確保領域が設定される場合と比較して、いずれの運転者においても後席用ディスプレイ42に遮られることなくインサイドミラー20に映る反射像により後方確認することができる。
【0047】
<第2実施形態>
次に、後席用ディスプレイ装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態と第1実施形態との主たる相違点は、インサイドミラー20が第2使用状態とされる場合であっても、制御装置43が後席用ディスプレイ42を変位させるべくモータ41aの駆動を制御することである。このため、第2実施形態の各構成については、第1実施形態と同様であるため同様の符号を付すとともに、その説明を割愛する。
【0048】
図4に示すように、制御装置43は、位置検出部48と電気的に接続されている。制御装置43は、インサイドミラー20が第1使用状態であるか第2使用状態であるかに関わらず、常時、位置検出部48から運転者の目の位置を示す情報を得る構成とされている。したがって、図6に示すように、運転者が後方を振り返るなどして、位置検出部48において、運転者の目の位置を検出できない場合、制御装置43は、その旨示す情報を確認することができる。
【0049】
制御装置43の図示しないメモリには、車両開発時におけるテストやシミュレーション等により設定される規定の視界確保領域S2に重ならない後席用ディスプレイ42の位置である第3展開位置P3が記憶されている。インサイドミラー20が第2使用状態とされる状態で、位置検出部48から運転者の目の位置が検出されない旨示す情報を確認したとき、制御装置43は、第2展開位置P2から第3展開位置P3へ変位させるべくモータ41aの駆動を制御する。なお、本第2実施形態における第3展開位置P3は、第1実施形態における第1展開位置P1と同じ位置として図示しているが、これら2つの位置は異なる位置であってもよい。とくに第1展開位置P1は、運転者の体格に応じて変更されるものである。
【0050】
次に、第1実施形態の作用効果に加えて後席用ディスプレイ装置40によって得られる作用効果について説明する。
(3)インサイドミラー20が第2使用状態であっても、運転者が後方を振り返れば、後席用ディスプレイ42が第2展開位置P2から規定の視界確保領域S2に重ならない第3展開位置P3へ変位する。このため、運転者が車両の後方視界を確保することができる。したがって、後席用ディスプレイ42の大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することができる。
【0051】
<第3実施形態>
次に、後席用ディスプレイ装置の第3実施形態について説明する。第3実施形態と第1実施形態との主たる相違点は、後席用ディスプレイとして、画像を表示しない部分が透明なる、いわゆる透明ディスプレイを採用したことである。この透明ディスプレイは、天井16に据え付けられるものとし、変位機構は省略されている。このため、第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同様の符号を付すとともに、その説明を割愛する。
【0052】
図4に示すように、後席用ディスプレイ装置40の後席用透明ディスプレイ50は、画像を表示しない部分が透明となる透明ディスプレイである。制御装置43は、後席用透明ディスプレイ50に表示される画像の大きさや位置を適宜調整する。
【0053】
詳述すると、図7(a)に示すように、制御装置43は、インサイドミラー20が第2使用状態とされるとき、後席用透明ディスプレイ50の表示可能領域DAいっぱいに画像を表示させる。すなわち、この場合、後席用透明ディスプレイ50における画像表示領域VAは、後席用透明ディスプレイ50の表示可能領域DAと等しい。
【0054】
一方、図7(b)に示すように、制御装置43は、インサイドミラー20が第1使用状態とされるとき、後席用透明ディスプレイ50の表示可能領域DAのうち、姿勢検出部47及び位置検出部48の検出結果より導出される視界確保領域S1と重ならない部分に画像を表示させる。ここでは、後席用透明ディスプレイ50の表示可能領域DAのうち下半分が視界確保領域S1と重なるものとする。この場合、制御装置43は、後席用透明ディスプレイ50の表示可能領域DAのうち視界確保領域S1と重ならない上半分を画像表示領域VAとして各種の情報を表示し、下半分を透明領域TAとして情報を表示しない。このように、後席用透明ディスプレイ50の画像を表示しない部分は透明(透明領域TA)となるので、1列目シート11側からは当該透明領域TAを介して後方の視認が可能となり、2列目シート12及び3列目シート13側からは当該透明領域TAを介して前方の視認が可能となる。
【0055】
次に、後席用透明ディスプレイ50を採用した後席用ディスプレイ装置40において得られる作用効果について説明する。
(4)インサイドミラー20が第2使用状態から第1使用状態に切り替えられたとき、後席用ディスプレイ装置40の制御装置43は、後席用透明ディスプレイ50の表示可能領域のうち視界確保領域S1と重なる部分を画像が表示されない状態、すなわち透明にする。このため、インサイドミラー20が第1使用状態に切り替えられた場合であっても、運転者の車両の後方視界が確保される。したがって、後席用透明ディスプレイ50の大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することができる。
【0056】
(5)運転者が後方を振り返った場合でも、後席用透明ディスプレイ50の表示可能領域DAのうち上半分は画像表示領域VAとして、引き続き画像を表示する。このため、2列目シート12及び3列目シート13の乗員は、後席用透明ディスプレイ50から引き続き情報を得ることができる。
【0057】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1実施形態において、姿勢検出部47及び位置検出部48を省略してもよい。この場合、第2実施形態のように、制御装置43は、インサイドミラー20が第1使用状態であるとき、後席用ディスプレイ42が規定の視界確保領域S2に基づき設定される第3展開位置P3に位置するように、インサイドミラー20が第2使用状態であるとき、後席用ディスプレイ42が第2展開位置P2に位置するように、それぞれモータ41aの駆動を制御する。このように構成した場合でも、上記第1実施形態の効果(1)と同様の作用効果が得られる。
【0058】
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、第1展開位置P1を格納位置P0に変更してもよい。すなわち、インサイドミラー20が第2使用状態から第1使用状態へ切り替えられたとき、制御装置43は、後席用ディスプレイ42を第2展開位置P2から格納位置P0へ変位するようにモータ41aの駆動を制御してもよい。このように構成した場合であっても、運転者が車両の後方視界を確保することができる。したがって、後席用ディスプレイ42の大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することができる。
【0059】
・上記第3実施形態を、上記第2実施形態に適用してもよい。この場合、制御装置43は、運転者が後方を振り返った場合に、後席用透明ディスプレイ50のうち規定の視界確保領域S2と重なる部位を透明領域TAとする。このように構成した場合、後席用透明ディスプレイ50を採用した場合であれ、後方を振り返った運転者の後方視界が確保される。
【0060】
なお、このように、後方を振り返った運転者の後方視界が確保される構成であれば、レバー検出部46を省略してもよい。
・上記第3実施形態において、インサイドミラー20が第2使用状態から第1使用状態に切り替えられたとき、制御装置43は、後席用透明ディスプレイ50の表示可能領域DAの全体を透明領域TAとしてもよい。
【0061】
・上記第3実施形態において、第1及び第2実施形態のように、後席用透明ディスプレイ50は、格納位置と展開位置との間を変位する構成とされてもよい。
・上記第3実施形態において、後席用透明ディスプレイ50は、天井16に吊り下げ支持されるものに限らない。1列目シート11、すなわち運転席の後部と助手席の後部との間に架設配置される構成であってもよいし、センターコンソールに支持される構成であってもよい。また、車室内の床面に支持される構成であってもよい。
【0062】
・上記第3実施形態において、姿勢検出部47を省略してもよい。この場合、制御装置43は、位置検出部48の検出結果に基づいて、運転者の目の位置(目の高さ)から運転者が後方を振り返ったときに、後方視界の確保に必要な視界確保領域S1を導出する。そして、制御装置43は、位置検出部48から、運転者の目の位置が検出できない旨示す検出結果を認識した場合、運転者が後方を振り返ったもの判断する。そして、後席用透明ディスプレイ50の表示可能領域DAのうち、導出した視界確保領域S1と重なる部分を透明領域TA、それ以外の部分を画像表示領域VAとなるように、後席用透明ディスプレイ50の表示を制御する。これにより、運転者が後方を振り返った場合であっても、運転者が車両の後方視界を確保することができる。したがって、後席用ディスプレイである後席用透明ディスプレイ50の大型化を図りつつ、運転者による車両の後方視界を確保することができる。
【0063】
・上記第1〜第3実施形態において、天井16に後方を振り返った運転者の目の位置を検出する位置検出部を設け、その位置検出部から得られる情報に基づき後方を振り返った運転者の視界確保領域を算出してもよい。
【0064】
・上記第1〜第3実施形態において、後方カメラ14が設けられる位置は適宜変更可能である。
・上記第1〜第3実施形態において、後席用ディスプレイ42及び後席用透明ディスプレイ50は、1列目シート11と2列目シート12との間に設けられたが、2列目シート12と3列目シート13との間に設けられてもよい。なお、例えばバスなど、さらに多くのシートが列状に並ぶ車両にも後席用ディスプレイ装置を適用することができる。そのような車両に適用される場合、後席用ディスプレイ及び後席用透明ディスプレイは、運転席がある1列目シートの後方且つ最後列のシートの前方に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0065】
P0…格納位置、P1…第1展開位置、P2…第2展開位置、P3…第3展開位置、S1…視界確保領域、S2…視界確保領域、DA…表示可能領域、TA…透明領域、VA…画像表示領域、ACC…アクセサリースイッチ、10…車両、11…1列目シート(前席)、12…2列目シート(後席)、13…3列目シート(後席)、14…後方カメラ、15…支持部材、16…天井、20…インサイドミラー、21…ケース、21a…開口部、22…マジックミラー(光学部材)、23…後方視界用ディスプレイ、24…操作レバー、40…後席用ディスプレイ装置、41…変位機構、41a…モータ、42…後席用ディスプレイ、43…制御装置、46…レバー検出部、47…姿勢検出部、48…位置検出部、48a…位置検出用カメラ、50…後席用透明ディスプレイ(後席用ディスプレイ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7