特許第6806056号(P6806056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806056
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】針状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   A61M37/00 510
   A61M37/00 505
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-524949(P2017-524949)
(86)(22)【出願日】2016年6月22日
(86)【国際出願番号】JP2016068551
(87)【国際公開番号】WO2016208635
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-125950(P2015-125950)
(32)【優先日】2015年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】塩満 一彦
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02823850(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0112283(US,A1)
【文献】 特許第4885816(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂で構成された基板部の第1面に針状部を備える針状体の製造方法であって、
前記針状部の形状に対応した凹部を備える複製版に前記熱可塑性樹脂を充填して前記針状体を形成する工程と、
前記針状体を構成する材料とは異なる材料で構成されているサポート部材を、前記基板部の前記第1面とは逆側の第2面に配置する工程と、
前記針状体と前記サポート部材を一体として前記複製版から剥離する工程と、
前記針状体から前記サポート部材を除去する工程と、
を備える針状体の製造方法。
【請求項2】
前記針状体から前記サポート部材を除去する工程は、前記サポート部材を構成する材料が可溶な溶媒を用いて前記針状体から前記サポート部材を除去する工程である、
請求項に記載の針状体の製造方法。
【請求項3】
前記サポート部材は、水溶性の材料で構成されている、
請求項またはに記載の針状体の製造方法。
【請求項4】
前記サポート部材は、ポリビニルアルコールで構成されている、
請求項からのうちの何れか1項に記載の針状体の製造方法。
【請求項5】
前記サポート部材を前記基板部の前記第2面に配置する工程は、外部刺激により粘着性が変化する接着剤を用いて前記サポート部材を前記基板部の前記第2面に貼付する工程、または、前記外部刺激により粘着性が変化する材料で構成されている前記サポート部材を前記基板部の前記第2面に貼付する工程であり、
前記針状体から前記サポート部材を除去する工程は、前記外部刺激を与えることにより前記針状体から前記サポート部材を除去する工程である、
請求項に記載の針状体の製造方法。
【請求項6】
前記外部刺激は、紫外線、電子線、赤外線あるいは熱である、請求項に記載の針状体の製造方法。
【請求項7】
前記基板部の前記第2面と接する前記サポート部材の面には、凹部、凸部またはこれらを組み合わせた構造が形成されている、
請求項からのうちの何れか1項に記載の針状体の製造方法。
【請求項8】
前記サポート部材が除去された後の前記基板部の前記第2面を、補強層が備えている凸状の湾曲面に貼付する工程を備える、
請求項からのうちの何れか1項に記載の針状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚内に薬剤を投与するのに用いられる針状体及び針状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンなどの薬剤を注射により体内に投与することは、広く定着している。注射は、安全性の高い投与方法であるが、その多くは皮下組織への薬剤投与のために注射針を体内深くまで穿刺するため強い痛みを伴う。また、特に発展途上国では注射針の再利用による感染や針刺し事故などが絶えない。
【0003】
そこで、注射に代わる薬剤の投与方法として、ミクロンオーダーの多数の針状体からなるアレイを用いて皮膚に穿孔し、皮膚内に直接薬剤を投与する方法が注目されている。この方法によれば、針状体の長さを真皮層の神経細胞に到達しない長さに制御することにより皮膚への穿刺時にほとんど痛みを感じることをなくすことが可能である。また、投薬用の特別な機器を用いることなく、簡便に薬剤を皮内投与することができる(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
さらに、針状体を用いてワクチンを皮内投与する場合には、抗原提示細胞が豊富に存在する皮膚内へ投与するために皮下注射に比べて使用するワクチンの量を低減できる可能性がある。
【0005】
針状体の形状は、皮膚を穿孔するための十分な細さと先端角、および皮内に薬液を浸透させるための十分な長さを有していることが必要とされる。このため、針状体は、直径が数μmから数百μm、長さが皮膚の最外層である角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さ、具体的には数十μmから数百μmであることが望ましいとされている。
【0006】
針状体を構成する材料は、仮に針状体が破損して体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼさないことが要求される。このような材料として、例えば医療用シリコーンや、マルトース、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、デキストラン等の生体適合性を有する樹脂が有望視されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−345983号公報
【特許文献2】特開2006−341089号公報
【特許文献3】特開2005−21677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような樹脂材料を用いて針状体のような微細構造を低コスト、かつ大量に製造するためには、射出成型法、インプリント法、キャスティング法等に代表される転写成型法が有効である。しかし、いずれの方法においても成型を行うためには、所望の形状を凹凸反転させた型が必要となり、針状体のようなアスペクト比(構造体の直径に対する高さ、もしくは深さの比率)が高い構造体を形成するには複雑な製造工程を必要とするという問題を有する。
【0009】
このような、生体適合性を有する樹脂は一般的な樹脂材料に比べて高コストであり、機能を損なわないように使用量を減らすことがコスト削減の効果的な手法の一つである。
【0010】
また、針状部以外の基板部の厚みを薄くすることで、基板部が柔軟に変形し、対象物の凹凸に沿った形状に変形することが可能となる。
【0011】
しかしながら、例えば100μm程度の基板部の薄い針状体を作製する場合、製造方法が問題となりうる。
【0012】
特にプラスチック成形にて針状体を作製する場合、基板部の強度が不足するため、一般的なエジェクターピンを用いた離型などが行えない。
【0013】
また、成形後の取り扱いが困難である。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、簡便かつ安価な手法で、基板部の薄い針状体及び針状体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る針状体は、複数の針状部と、前記針状部が形成されている第1面、及び、前記第1面とは逆側の第2面を有する基板部と、を備え、前記第1面と直交する方向における前記針状部の高さHは、50μm以上1000μm以下であり、前記第1面と直交する方向における前記基板部の厚さT1は、50μm以上300μm以下であり、前記第1面における前記針状部との接続面の最大径φと前記針状部の高さHとのアスペクト比(H/φ)は、0.7以上10以下である。
【0016】
本発明に係る熱可塑性樹脂で構成された基板部の第1面に針状部を備える針状体の製造方法は、前記針状部の形状に対応した凹部を備える複製版に前記熱可塑性樹脂を充填して前記針状体を形成する工程と、前記針状体を構成する材料とは異なる材料で構成されているサポート部材を、前記基板部の前記第1面とは逆側の第2面に配置する工程と、前記針状体と前記サポート部材を一体として前記複製版から剥離する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱可塑性樹脂で針状体を製造する場合であっても、基板部の薄い針状体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る針状体を説明するために示した斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る針状体を説明するために示した断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る針状体の製造方法を説明するために示した図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る針状体の構造を説明するために示した図である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る針状体の構造を説明するために示した図である。
図6】本発明の第4の実施の形態に係る針状体の製造方法を説明するために示した図である。
図7】本発明の第5の実施の形態に係る針状体を説明するために示した断面図である。
図8】本発明の第5の実施の形態に係る針状体の変形例を説明するために示した断面図である。
図9】本発明の第5の実施の形態に係る針状体の製造方法を説明するために示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る針状体の構造及び針状体の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図は各実施の形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の要素と異なる個所があるが、適宜、設計変更することができるものとする。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る針状体1の一例を示す斜視図である。針状体1は、皮膚内に薬剤を投与するのに用いられる。針状体1は、熱可塑性樹脂で構成されている。
【0021】
針状体1は、基板部11及び複数の針状部12を備えている。針状体1は、例えば針状部12に薬剤が塗布されている塗布型のマイクロニードルである。基板部11は、第1面(針状部形成面ともいう)111、及び第1面111とは逆側の第2面(針状部非形成面ともいう)112を備えている。第1面111及び第2面112は、平面であり、平行である。第1面111及び第2面112は、同形状であり、正方形である。なお、第1面111及び第2面112の形状は、円形であっても、他の形状であってもよい。第1の実施の形態では、第1面111及び第2面112と直交する方向を第1方向というものとする。基板部11の厚み(第1方向における幅)は、例えば約100μmと薄い構成である。なお、この厚みは一例である。
【0022】
針状部12は、基板部11の第1面111に形成されている。針状部12は、基板部11の第1面111に16本形成されている。なお、針状部12は何本であってもよい。針状部12は、基板部11の第1面111から第1方向に延在するように林立している。針状部12は、図1に示す例では円錐形状である。なお、針状部12は、角錐形状であっても、他の形状であってもよい。針状部12は、正方格子状に配置されている。なお、針状部12の配置は、正方格子状以外の配置であってもよい。
【0023】
図2は、図1に示す針状体1のA−A´断面図である。図2を参照して、第1の実施の形態に係る針状体1の一例となる寸法を説明する。
第1方向における針状部12の高さをHとする。高さHは、50μm以上1000μm以下である。高さHをこのような範囲内とするのは、針状部12で皮膚を穿刺または穿孔するのに必要な高さを確保するためである。
【0024】
第1方向における基板部11の厚さをT1とする。厚さT1は、50μm以上300μm以下である。基板部11の厚さT1が50μmに満たない場合、基板部11の針状部12側表面を覆うことが困難になる場合がある。基板部11の厚さT1が300μmを超える場合、針状体1の製造に際して、後述するサポート部材5が不要となる虞がある。そのため、基板部11の厚さT1は、50μm以上300μm以下であることが望ましい。
【0025】
第1面111における針状部12との接続面(仮想平面)の最大径をφとする。最大径φと針状部12の高さHとのアスペクト比(H/φ)は、0.7以上10以下である。アスペクト比(H/φ)をこのような範囲内とするのは、針状部12で皮膚を穿刺または穿孔するのに必要なアスペクト比を確保するためである。
【0026】
図3は、第1の実施の形態に係る針状体1の製造方法を示す図である。図3の(g)に示す針状体1の図は、図1に示す針状体1のA−A´断面図である。以下に一例となる具体的な製造手順を説明する。
【0027】
図3の(a)に示す工程は、針状体1を作製するための原型2を用意する工程である。
原型2は、同一形状の針状体1を大量に作製するための複製版3の作製に用いられる。原型2は、基板部21及び複数の針状部22を備えている。
基板部21は、第1面211、及び第1面211とは逆側の第2面212を備えている。第1面211及び第2面212は、平面であり、平行である。第1面211及び第2面212は、同形状である。第1面211及び第2面212の形状は、針状体1の第1面111及び第2面112それぞれの形状に対応している。基板部21の厚みは、針状体1の基板部11の厚みよりも厚い。
【0028】
針状部22は、基板部21の第1面211に形成されている。針状部22は、基板部21の第1面211と直交する方向に延在するように林立している。針状部22の数、形状及び配置などは、製造する針状体1の針状部12の数、形状及び配置などに対応している。以上のように、原型2は、針状体1の基板部11の厚みを厚くした形状に相当している。原型2は、例えばシリコンで構成されているが、他の材料で構成されていてもよい。
【0029】
図3の(b)に示す工程は、複製版3を作製する工程である。複製版3は、複製版3を構成する材料を原型2に対して施すことで作製される。複製版3は、原型2または製造する針状体1の凹凸反転した形状である。
【0030】
つまり、複製版3は、原型2の第1面211または製造する針状体1の第1面111と同じ形状である第1面31を備えている。第1面31は平面である。複製版3は、第1面31に形成されている複数の凹部32を備える。凹部32は、第1面31と直交する方向に形成されている。凹部32は、原型2の針状部22または製造する針状体1の針状部12の形状に対応している。複製版3は、例えばニッケル(Ni)などの金属や、シリコーンゴムなどの樹脂などで構成されているが、その他の材料で構成されていてもよい。
【0031】
図3の(c)に示す工程は、複製版3から原型2を除去する工程である。複製版3から原型2を除去する手法は、例えば熱アルカリによる手法であるが、他の手法であってもよい。この原型2を除去する工程により、製造する針状体1の型となる複製版3を準備することができる。なお、図3の(c)において、複製版3は、図3(b)に対して反転して描かれている。
【0032】
図3の(d)に示す工程は、複製版3に熱可塑性樹脂4を充填して針状体1を形成する工程である。この工程の一例を説明する。はじめに、複製版3の第1面31に熱可塑性樹脂4を載せる。次に、第1面31に載せた熱可塑性樹脂4を溶融させる。次に、加圧しながら熱可塑性樹脂4を複製版3の凹部32に押し込み、熱可塑性樹脂4を凹部32に充填する。熱可塑性樹脂4は、複製版3によって成形される。複製版3に入れる熱可塑性樹脂4の量は、最終的な目的物である針状体1の基板部11の厚みが所定の厚みとなるように調整されていてもよい。熱可塑性樹脂4の量は、複製版3への供給量を制限したり、余剰分を複製版3の枠外に配置するなどしたりして再利用してもよい。これにより、基板部11の厚みを一定の厚さに保ちつつ、基板部11の作製の大幅なコストアップを抑制できる。複製版3で成形される熱可塑性樹脂4は、針状体1を構成する。
【0033】
次に、熱可塑性樹脂4の材料について説明する。
本発明の針状体1は針状部12で皮膚を穿刺または穿孔する。そのため、熱可塑性樹脂4は、生体適合性を備える。生体適合性を有する熱可塑性樹脂で構成されている針状体1は、安全に生体に対して使用することができる。
熱可塑性樹脂4は、例えば、ポリグリコール酸(以下、PGA(Polyglycolic Acid)という)、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリカプロラクトン、アクリル、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートおよび、エポキシ樹脂等を使用することができる。中でも、生体適合ポリグリコール酸(以下、PGA(Polyglycolic Acid)という)、ポリ乳酸といった生体適合性を有する医療用樹脂を好ましく使用することができる。なお、熱可塑性樹脂4は、熱可塑性を有していれば、上記以外の樹脂であってもよい。
【0034】
熱可塑性樹脂4は、融点の低い材料でもよい。後述するように、サポート部材5を針状体1の第2面112に配置する際に、針状体1を溶融させることがある。サポート部材5は、溶融した針状体1の第2面112に載せられ、加圧される。これにより、サポート部材5は針状体1に密着する。そのため、サポート部材5を構成する材料の融点は、熱可塑性樹脂4の融点よりも高い方が望ましい。熱可塑性樹脂4の融点が低くなればなるほど、サポート部材5を構成する材料の選択の幅は広がる。
【0035】
図3の(e)に示す工程は、サポート部材5を針状体1の第2面112に配置する工程である。この工程により、サポート部材5は針状体1の第2面112に貼付される。サポート部材5は、針状体1の基板部11に積層されるので基板部11の強度を補うことができる。サポート部材5は、針状体1を複製版3から剥離しやすくすることに寄与する。
【0036】
サポート部材5を構成する材料について説明する。サポート部材5は、針状体1を構成する材料とは異なる材料で構成されている。その一つの理由は、最終的にサポート部材5は針状体1から除去されるからである。サポート部材5を構成する材料は、針状体1を構成する材料のような高価な材料である必要はなく、安価な材料でよい。
【0037】
サポート部材5は、特定溶媒に可溶な材料で構成されていてもよい。特定溶媒に可溶な材料は、特定溶媒に対して、針状体1を構成する材料に比べ選択的に溶解する材料である。特定溶媒に可溶な材料は、例えば、水溶性の材料である。水溶性の材料は、安価で安全な水を溶媒として用いることができる。水溶性の材料は、例えば、ポリビニルアルコール(以下、PVA(Polyvinyl Alcohol)という)、セルロース及びセルロース誘導体、キトサン及びキトサン誘導体、ポリアクリル酸系ポリマー,ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシドである。なお、サポート部材に用いる特定溶媒に可溶な材料は、上記以外の樹脂であってもよい。
【0038】
サポート部材5は、外部刺激により粘着性が変化する材料で構成されていてもよい。外部刺激は、例えば、紫外線(UV(Ultraviolet))、電子線(EB(electron beam))、赤外線あるいは熱であるが、これら以外であってもよい。紫外線により粘着性が変化する材料は、例えば、ダイシング用テープとして用いられる材料を例示することができる。赤外線あるいは熱により粘着性が変化する材料としては、感温性粘着シートを使用することができる。感温性粘着シートとしては、クールオフタイプとウォームオフタイプの両方を用いることができる。
【0039】
図3の(e)に示すサポート部材5の配置工程のいくつかの例を説明する。
はじめに、針状体1の基板部11の第2面112側を構成している熱可塑性樹脂4を溶融させる。次に、サポート部材5を針状体1の第2面112上に載せる。次に、サポート部材5を加圧する。サポート部材5は針状体1に密着し、針状体1に貼付される。
【0040】
外部刺激により粘着性が変化する材料で構成されている場合における図3の(e)に示す工程の一例を説明する。図3の(e)に示すサポート部材5を基板部11の第2面112に配置する工程は、外部刺激により粘着性が変化する材料で構成されているサポート部材5を基板部11の前記第2面112に貼付する工程である。この工程では、はじめに、サポート部材5を針状体1の第2面112上に載せる。次に、サポート部材5に外部刺激を与える。サポート部材5は粘着性が変化する。例えば、サポート部材5は軟化する。サポート部材5の粘着性により、サポート部材5は針状体1に密着し、針状体1に貼付される。
【0041】
なお、サポート部材5の材料の粘着性によらず、上述の外部刺激により粘着性が変化する接着剤を用いてもよい。この場合、図3の(e)に示すサポート部材5を基板部11の第2面112に配置する工程は、外部刺激により粘着性が変化する接着剤を用いてサポート部材5を基板部11の第2面112に貼付する工程である。
【0042】
なお、サポート部材5は、熱可塑性樹脂4を針状体1に加工するのと同時に成形してもよい。例えば、図3の(d)に示す工程において、複製版3の第1面31に熱可塑性樹脂4を載せ、その上にサポート部材5を載せ、サポート部材5を加圧しながら熱可塑性樹脂4を凹部32に充填する。これにより、針状体1が形成されるとともに、サポート部材5が針状体1の第2面112に配置される。このような成形手法は、針状体1を製造するための工程数を少なくすることができる。
【0043】
図3の(f)に示す工程は、針状体1とサポート部材5を一体として複製版3から剥離する工程である。この工程により、サポート部材5が一体となった針状体1を得ることができる。この工程で用いられる一例となる離型手法は、針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面とは逆の面側からバキュームする手法である。別の例となる離型手法は、エジェクターピンを用いて針状体1とサポート部材5を一体として複製版3から押し出す手法である。離型手法は上述の手法以外の手法であってもよい。
【0044】
サポート部材5と針状体1を一体としてみた場合、サポート部材5の厚みと針状体1の基板部11の厚みを合わせた厚みは、針状体1の基板部11単体の厚みよりも厚くなる。サポート部材5が一体となった針状体1の基板部11の強度は、単体の針状体1の基板部11の強度よりも高くなる。そのため、サポート部材5と一体となった針状体1の複製版3からの離型は容易にできるようになる。さらに、針状体1の基板部11には、離型に伴う破損は生じない。ここで、比較例として、針状体1単体の離型を考える。針状体1の基板部11の厚みは約100μmであるとする。エジェクターピンを用いて針状体1を離型しようとしても、基板部11の強度不足により、針状体1を離型できない。針状体1を離型できたとしても、針状体1は破損する恐れがある。
【0045】
図3の(g)の工程は、針状体1からサポート部材5を除去する工程である。この工程のいくつかの例を説明する。
【0046】
サポート部材5が特定溶媒に可溶な材料で構成されている場合における図3の(g)に示す工程の一例を説明する。図3の(g)に示す針状体1からサポート部材5を除去する工程は、サポート部材5を構成する材料が可溶な溶媒を用いて針状体1からサポート部材5を除去する工程である。この工程では、サポート部材5が一体となった針状体1を特定溶媒に浸漬する。特定溶媒は、サポート部材5が構成されている材料が可溶な溶媒である。サポート部材5は特定溶媒により溶解する。特定溶媒を用いることで、サポート部材5に外力を加えることなく容易に針状体1からサポート部材5を除去することができる。その結果、熱可塑性樹脂4のみで構成されている単体の針状体1を得ることができる。
【0047】
サポート部材5が外部刺激により粘着性が変化する材料で構成されている場合における図3の(g)に示す工程の一例を説明する。この工程では、サポート部材5に外部刺激を与える。外部刺激は、針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面とは逆の面側から与えられる。サポート部材5は外部刺激により粘着性が変化する。サポート部材5の粘着性が低下するため、サポート部材5と針状体1との密着度も低下する。そのため、サポート部材5を針状体1から取ることができる。外部刺激をサポート部材5に与えることで、サポート部材5に強い外力を加えることなく針状体1からサポート部材5を容易に除去することができる。その結果、熱可塑性樹脂4のみで構成されている単体の針状体1を得ることができる。
【0048】
外部刺激により粘着性が変化する接着剤を用いてサポート部材5を針状体1に貼付した場合における図3の(g)に示す工程の一例を説明する。図3の(g)に示す針状体1からサポート部材5を除去する工程は、外部刺激を与えることにより針状体1からサポート部材5を除去する工程である。この工程では、接着剤に外部刺激を与える。外部刺激は、針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面とは逆の面側から与えられる。接着剤は外部刺激により粘着性が変化する。接着材の粘着性が低下するため、サポート部材5と針状体1との密着度も低下する。そのため、サポート部材5を針状体1から取ることができる。外部刺激を接着剤に与えることで、サポート部材5に強い外力を加えることなく針状体1からサポート部材5を容易に除去することができる。その結果、熱可塑性樹脂4のみで構成されている単体の針状体1を得ることができる。
【0049】
なお、図3の(g)に示す工程では、剥離剤を用いて針状体1からサポート部材5を除去してもよい。剥離剤を用いることで、サポート部材5に強い外力を加えることなく針状体1からサポート部材5を除去することができる。その結果、熱可塑性樹脂4のみで構成されている単体の針状体1を得ることができる。
【0050】
第1の実施の形態に係る針状体1の製造方法によれば、熱可塑性樹脂4で針状体1を製造する場合であっても、基板部11の薄い針状体1を容易に作製することができる。また、針状体1は、皮膚を穿刺または穿孔するため、コストの高い生体適合性を有する医療用の熱可塑性樹脂4を用いる必要があるが、針状体1の基板部11は薄く構成されているので、熱可塑性樹脂4の使用量は削減される。また、針状体1は、複製版3から容易に剥離することができるサイズで構成されているので、製造コストは抑えられる。
また、サポート部材5を除去した基板部11の薄い針状体1は可撓性を備えるため、皮膚に追従させ湾曲することができる。そのため、サポート部材5を除去した基板部11の薄い針状体1は、針状部12の皮膚への穿刺及び穿孔の度合いを十分なものとすることができる。
【0051】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態と同様であってもよい部分は、同一の符号を付し、説明を省略する。
図4は、第2の実施の形態に係る針状体1の構造を示す図である。図4は、図1に示す針状体1のA−A´断面図である。
【0052】
図4の(a)は、第2の実施の形態に係る針状体1の一例を示す。針状体1の第2面112には、複数の凹部(ディンプル構造ともいう)112aが形成されている。凹部112aの形状は、半球形状である。なお、凹部112aの形状は、矩形状であってもよく、他の形状であってもよい。凹部112aの配置は、正方格子状であっても、正方格子状以外の配置であってもよい。凹部112aは、図3の(e)に示す工程においてサポート部材5によって転写される。針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面には、凹部112aに対応する凸部が形成されている。凹部112aは、針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面に形成されている凸部に対応する形状の転写によって形成される。
【0053】
図4の(b)は、第2の実施の形態に係る針状体1の一例を示す。針状体1の第2面112には、複数の凸部(エンボス構造ともいう)112bが形成されている。凸部112bの形状は、半球形状である。なお、凸部112bの形状は、他の形状であってもよい。凸部112bの配置は、正方格子状であっても、正方格子状以外の配置であってもよい。凸部112bは、図3の(e)に示す工程においてサポート部材5によって転写される。針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面には、凸部112bに対応する凹部が形成されている。凸部112bは、針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面に形成されている凹部に対応する形状の転写によって形成される。
【0054】
図4の(c)は、第2の実施の形態に係る針状体1の一例を示す。針状体1の第2面112には、複数の凸部(エンボス構造ともいう)112cが形成されている。凸部112cの形状は、矩形状である。なお、凸部112cの形状は、他の形状であってもよい。凸部112cの配置は、正方格子状であっても、正方格子状以外の配置であってもよい。凸部112cは、図3の(e)に示す工程においてサポート部材5によって転写される。針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面には、凸部112cに対応する凹部が形成されている。凸部112cは、針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面に形成されている凹部に対応する形状の転写によって形成される。
【0055】
なお、針状体1の第2面112には、図4に示した例以外に、梨地などの凹部または凸部またはこれらを組み合わせた構造が形成されていてもよい。
【0056】
上述のように針状体1とサポート部材5との接触面が形成されていることにより、図3の(e)に示す工程において、針状体1とサポート部材5は互いに噛み合う。例えば、針状体1の第2面112形成されている凹部112aは、凹部112aを形成するためにサポート部材5に形成されている凸部と噛み合う。針状体1の第2面112形成されている凸部112bまたは凸部112cは、凸部112bまたは凸部112cを形成するためにサポート部材5に形成されている凹部と噛み合う。
【0057】
一般的に、異なる材質からなる2つの物体の平面同士を密着させることは難しい。上述のように針状体1とサポート部材5が互いに噛み合うように構成することで、サポート部材5と針状体1との密着度は上がる。
【0058】
第2の実施形態によれば、サポート部材5を針状体1の第2面112に配置する工程において、サポート部材5と針状体1との密着度を上げることができる。針状体1とサポート部材5を一体として複製版3から剥離する工程等において、サポート部材5が一体となった針状体1を容易に取り扱うことができる。
【0059】
なお、上述の凹部112a、凸部112bまたは凸部112c以外にも、サポート部材5の表面構造に対応した構造を針状体1の第2面112に設けてもよい。例えば、針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面にロット番号等や製品番号が形成されていてもよい。針状体1の第2面112には、サポート部材5の表面構造に対応した構造が転写される。
【0060】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態について説明する。第1の実施の形態または第2の実施の形態と同様であってもよい部分は、同一の符号を付し、説明を省略する。
図5は、第3の実施の形態に係る針状体1の構造を説明するために示した図である。
【0061】
補強層6は、所定の曲率で湾曲している凸型の湾曲面61を備えている。補強層6は、例えば金属で構成されているが、その他の材料で構成されていてもよい。針状体1の第2面112は、補強層6が備えている凸型の湾曲面61に貼付されている。針状体1の第2面112は、例えば接着剤で湾曲面61に接着されている。針状体1は、補強層6の形状に沿った凸型に湾曲した基板部11を備えることができる。
【0062】
基板部11を湾曲させることができるのは、第1の実施の形態で説明したように基板部11の薄い針状体1を作製することができるからである。基板部11を湾曲させたとしても、基板部11には破損が生じない。比較例として、例えば、基板部11の厚みが約1000μmの針状体1を考える。このような厚みの基板部11は、フレキシブルに曲げることができない。この基板部11を湾曲させると、基板部11には破損が生じる。
【0063】
なお、第1の実施の形態で説明した針状体1の製造方法に、サポート部材5が除去された後の基板部11の第2面112を、補強層6が備えている凸型の湾曲面61に貼付する工程を含めてもよい。
【0064】
第3の実施形態によれば、平板状の基板部11を備えている針状体1よりも皮膚に穿孔しやすい形状の針状体1を作製することができる。
【0065】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態について説明する。第1の実施の形態、第2の実施の形態または第3の実施の形態と同様であってもよい部分は、同一の符号を付し、説明を省略する。
図6は、第4の実施の形態に係る針状体の製造方法を示すものである。図6の(g)は、図1に示す針状体1のA−A´断面図である。以下に一例となる具体的な製造手順を説明する。図6は、第2の実施の形態で説明した図4の(a)に示す凹部112aが形成されている針状体1の製造方法を示している。なお、図4の(b)に示す凸部112bが形成されている針状体1の製造方法は以下で説明する製造方法と同様であってもよく、その説明を省略する。同様に、図4の(c)に示す凸部112cが形成されている針状体1の製造方法も以下で説明する製造方法と同様であってもよく、その説明を省略する。
【0066】
図6の(a)〜(d)に示す工程は、それぞれ、図3の(a)〜(d)を参照して説明した上述の工程と同様であってもよく、その説明を省略する。
【0067】
図6の(e)に示す工程は、第1の実施の形態と形状の異なるサポート部材5を用いる点を除いて図3の(e)を参照して説明した上述の工程と同様である。ここでは、第1の実施の形態と異なる点を説明する。
【0068】
第4の実施の形態では、針状体1の第2面112と接するサポート部材5の面51には、複数の凸部(エンボス構造ともいう)511が形成されている。図6の(e)に示す工程において、サポート部材5を針状体1の第2面112上に配置すると、針状体1の第2面112には、凸部511に対応する形状が転写される。針状体1の第2面112には、凸部511に対応する形状の凹部112aが形成される。針状体1の第2面112に形成されている凹部112aは、サポート部材5に形成されている凸部511と噛み合う。そのため、サポート部材5と針状体1との密着度は上がる。
【0069】
図6の(f)に示す工程は、図3の(f)を参照して説明した上述の工程と同様であってもよく、その説明を省略する。なお、上述のようにサポート部材5と針状体1との密着度が上がっているので、サポート部材5が一体となった針状体1の離型は容易になる。
【0070】
図6の(g)に示す工程は、図3の(g)を参照して説明した上述の工程と同様であるため、その説明を省略する。なお、この工程により、熱可塑性樹脂4のみで構成されている凹部112aが形成された単体の針状体1を得ることができる。
【0071】
図6の(h)は、サポート部材5が除去された後の基板部11の第2面112を、補強層6が備えている凸型の湾曲面61に貼付する工程である。この工程では、例えば、針状体1の第2面112を接着剤で湾曲面61に接着する。この工程により、補強層6の形状に沿った凸型に湾曲した基板部11を備えている針状体1を得ることができる。
【0072】
なお、上述の第4の実施の形態に係る針状体1の製造方法は、図6の(h)に示す工程を含んでいなくてもよい。
【0073】
第4の実施の形態によれば、第1〜第3の実施の形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態について説明する。第1〜4の実施の形態と同様であってもよい部分は、同一の符号を付し、説明を省略する。
図7は、第5の実施の形態に係る針状体101の断面図である。針状体101は、針状体本体10及びサポート部材5を備えている。針状体本体10は、基板部11及び複数の針状部12を備えている。針状体本体10は、第1の実施の形態で説明した針状体1に相当する。
サポート部材5は、基板部11の第2面112に配置されている。なお、サポート部材5を構成する材料は、第1の実施の形態で説明した材料に限られない。サポート部材5は、一般的な樹脂フィルム(シート)で構成されていてもよい。
たとえば、サポート部材5を構成する樹脂フィルムとしては、例えば、ポリグリコール酸(以下、PGA(Polyglycolic Acid)という)、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリカプロラクトン、アクリル、ウレタン樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートおよび、エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを使用することができる。このとき、サポート部材を構成する樹脂フィルムとしては、生体適合性を備えない熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、サポート部材に用いる樹脂フィルムは、上記以外の樹脂であってもよい。
たとえば、針状体1に用いる熱可塑性樹脂4とサポート部材5に用いる熱可塑性樹脂として同種の材料を用いることもできる。針状体1に用いる熱可塑性樹脂4を高価な生体適合性を有するグレードの樹脂を用い、サポート部材5に用いる熱可塑性樹脂を安価な一般グレードの樹脂を用いることができる。
【0075】
第1方向におけるサポート部材5の厚さをT2とする。基板部11の厚さT1と、サポート部材5の厚さT2の合計は、400μm以上1500μm以下である。T1+T2の合計が400μmに満たない場合、針状体1の製造に際して、複製版から針状体1を容易に剥離することが困難となる場合がある。T1+T2の合計が1500μmを超える場合、製造コストが嵩む。そのため、T1+T2の合計は、400μm以上1500μm以下であることが好ましい。
【0076】
図8は、第5の実施の形態に係る針状体101の変形例を説明するために示した断面図である。
図8に示す針状体101は、針状体本体10とサポート部材5との間に接着剤層7を備えている。
接着剤層7は針状体本体10とサポート部材5とを接着できればよく、接着剤層7の材料は特に限定されない。
【0077】
次に、針状体101の製造方法について説明する。
図9は、針状体101の製造方法の一例を説明するために示した図である。図9に示す製造方法は、射出成形(フィルムインサート成形)を用いている。
【0078】
図9の(a)に示す工程は、第1の複製版300内にサポート部材5を配置する工程である。第1の複製版300は、製造する針状体101のサポート部材5側を凹凸反転した形状である。第1の複製版300は、凹版または金型ともいう。
図9の(b)に示す工程は、第1の複製版300と第2の複製版301とを合わせる工程である。第2の複製版301は、製造する針状体101の針状体本体10側を凹凸反転した形状である。第2の複製版301は、製造する針状体101の針状部12の形状に対応する凹部を備える。第2の複製版301は、凹版または金型ともいう。
【0079】
図9の(c)に示す工程は、第1の複製版300と第2の複製版301とで形成される内部空間に熱可塑性樹脂4を射出して針状体101を形成する工程である。熱可塑性樹脂4は、サポート部材5上において、サポート部材5と一体となるように形成される。熱可塑性樹脂4は、第1の複製版300と第2の複製版301によって針状体本体10となる。
図9の(d)に示す工程は、針状体本体10とサポート部材5を一体として第1の複製版300及び第2の複製版301から剥離する工程である。この工程により、針状体101は、第1の複製版300及び第2の複製版301から取り出される。
【0080】
次に、針状体101の別の製造方法について説明する。
針状体101は、第1の実施の形態に係る針状体1の製造方法で説明した図3の(a)〜(f)の工程によって製造することができる。
つまり、針状体101の製造方法は、針状体1を作製するための原型2を用意する工程を備えている。針状体101の製造方法は、複製版3を作製する工程を備えている。針状体101の製造方法は、複製版3から原型2を除去する工程を備えている。針状体101の製造方法は、複製版3に熱可塑性樹脂4を充填して針状体1に相当する針状体本体10を形成する工程を備えている。針状体101の製造方法は、サポート部材5を針状体本体10の第2面112に配置する工程を備えている。針状体101の製造方法は、針状体本体10とサポート部材5を一体として複製版3から剥離する工程を備えている。
【0081】
第5の実施の形態によれば、針状体1及び針状体1の製造方法は、第1〜第4の実施の形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0082】
以下、針状体の製造方法について、具体的な実施例を挙げて説明する。当然のことながら、針状体の製造方法は下記いくつかの実施例に限定されず、各工程において当業者が類推できる他の製造方法をも含むものとする。
【0083】
(実施例1)
実施例1で作製する針状体1の形状を説明する。針状体1は、PGAで構成されている。針状部12は、高さが800μmである。針状部12の根元寸法は300μmである。針状部12は、4列×4列の計16本で正方格子状に配置されている。針状部12間のピッチは800μmである。基板部11の外形は5mmの正方形である。基板部11の厚みは100μmである。
【0084】
再び図3を参照して、第1の実施の形態に沿った針状体1の具体的な製造方法を説明する。
図3の(a)に示す工程では、5軸加工機で作製した原型2を用意した。原型2の素材としてはシリコンを使用した。
図3の(b)に示す工程では、原型2に対してNi電鋳を施し複製版3を作製した。
図3の(c)に示す工程では、熱アルカリにより複製版3からシリコン製の原型2を除去した。
上記工程により、針状体1の型となる複製版3を準備した。複製版3は、シリコンを除去した後に残る電鋳にて作製したNi製の版である。
【0085】
図3の(d)に示す工程では、複製版3に医療用の生分解性樹脂の一つであるPGAを充填して針状体1を形成した。具体的には、複製版3上にPGAを載せた。この時、基板部11の厚みが最終的な目的の厚みとなるように、複製版3に入れるPGAの量を調整した。次に、複製版3上に載せたPGAを250℃に加熱し溶融させた。次に、上部よりシリコンゴム製のローラーでPGAを加圧し、複製版3の凹部32にPGAを押し込んだ。
【0086】
図3の(e)に示す工程では、溶融したPGA上にPVA製のシートを載せた。PVA製のシートの厚みは400μmである。このPVA製のシートは、サポート部材5を構成するものである、次に、シリコンゴム製のローラーでPVA製のシートの背面(PGAと接していない面)を加圧した。
【0087】
図3の(f)に示す工程では、複製版3を表裏より冷却し、室温付近まで複製版3の温度が低下してから、PVA製のシートの背面にバキュームピンセットを装着し、複製版3に対し垂直に引き剥がした。この結果、基板部11及び針状部12がPGAで構成された針状体1と、基板部11の第2面112に貼付されたPVA製のシートを一体として得た。
【0088】
図3の(g)に示す工程では、PVA製のシートが一体となった針状体1全体を25℃の蒸留水中に5分間浸漬したところ、PVA製のシートは完全に溶解した。この結果、上述のような針状部12の高さが800μm、根元寸法が300μm、計16本の針状部12が林立し、基板部11の厚みが100μmの針状体1を得た。
【0089】
(実施例2)
再び図6を参照して、第2の実施の形態に沿った針状体1の具体的な製造方法を説明する。実施例2では、サポート部材5の片面にエンボス構造511を設けた。
図6の(a)〜(c)の工程により、実施例1と同様の針状体1の型となる複製版3を作製した。
【0090】
図6の(d)に示す工程では、複製版3に医療用の生分解性樹脂の一つであるPGAを充填して針状体1を形成した。具体的には、複製版3上にPGAを載せた。この時、基板部11の厚みが最終的な目的の厚みとなるように、複製版3に入れるPGAの量を調整した。次に、複製版3上に載せたPGAを250℃に加熱し溶融させた。次に、上部よりシリコンゴム製のローラーでPGAを加圧し、複製版3の凹部32にPGAを押し込んだ。
【0091】
図6の(e)に示す工程では、溶融したPGA上にPVA製のシートを載せた。PVA製のシートの片面(PGAと接する面)には半径5μmのエンボス構造511が設けられている。PVA製のシートの厚みは400μmである。次に、シリコンゴム製のローラーでPVA製のシートの背面(PGAと接していない面)を加圧した。
【0092】
図6の(f)に示す工程では、複製版3を表裏より冷却し、室温付近まで複製版3の温度が低下してから、PVA製のシート背面にバキュームピンセットを装着し、複製版3に対し垂直に引き剥がした。この結果、基板部11及び針状部12がPGAで構成された針状体1と、基板部11の第2面112に貼付されたPVA製のシートを一体として得た。基板部11の第2面112には、PVA製のシートのエンボス構造511の形状に対応したディンプル構造112aが形成されている。
【0093】
図6の(g)に示す工程では、PVA製のシートが一体となった針状体1全体を25℃の蒸留水中に5分間浸漬したところ、PVA製のシートは完全に溶解した。この結果、上述のような針状部12の高さが800μm、根元寸法が300μm、計16本の針状部12が林立し、基板部11の厚みが100μmの針状体1を得た。
【0094】
図6の(f)に示す工程では、PGA製の針状体1を、曲率50mmに加工したステンレス鋼(例えば、SUS304)製の補強層6に貼付した。その結果、針状部12の高さが800μm、根元寸法が300μm、計16本の針状部12が林立し、基板部11が曲率50mmに湾曲した針状体1を得た。
【0095】
(実施例3)
第5の実施の形態に沿った針状体101の具体的な製造方法を説明する。
図7に示した、実施例5で作製する針状体101の形状を説明する。針状体101の針状部12は、実施例1の針状部12と同一の形状であり、高さが800μmであり、針状部12の根元寸法は300μmである。針状部12は、4列×4列の計16本で正方格子状に配置されている。針状部12間のピッチは800μmである。基板部11の外形は5mmの正方形である。基板部11の厚みは100μmである。
【0096】
再び図3を参照して、第5の実施の形態に沿った針状体1の具体的な製造方法を説明する。
図3の(a)に示す工程では、5軸加工機で作製した原型2を用意した。原型2の素材としてはシリコンを使用した。
図3の(b)に示す工程では、原型2に対してNi電鋳を施し複製版3を作製した。
図3の(c)に示す工程では、熱アルカリにより複製版3からシリコン製の原型2を除去した。
上記工程により、針状体1の型となる複製版3を準備した。複製版3は、シリコンを除去した後に残る電鋳にて作製したNi製の版である。
【0097】
図3の(d)に示す工程では、複製版3に医療用の生分解性樹脂の一つであるPGAを充填して針状体を形成した。具体的には、複製版3上にPGAを載せた。この時、基板部11の厚みが最終的な目的の厚みとなるように、複製版3に入れるPGAの量を調整した。次に、複製版3上に載せたPGAを250℃に加熱し溶融させた。次に、上部よりシリコンゴム製のローラーでPGAを加圧し、複製版3の凹部32にPGAを押し込んだ。
【0098】
図3の(e)に示す工程では、溶融したPGA上に生体適合性を有さない一般グレードのPGA製のシートを載せた。PVA製のシートの厚みは400μmであり、針状体に用いた医療用の生PGAよりも安価である。このPGA製のシートは、サポート部材5を構成するものである。次に、シリコンゴム製のローラーでPGA製のシートの背面を加圧した。
【0099】
図3の(f)に示す工程では、複製版3を表裏より冷却し、室温付近まで複製版3の温度が低下してから、PVA製のシートの背面にバキュームピンセットを装着し、複製版3に対し垂直に引き剥がした。この結果、基板部11及び針状部12がPGAで構成された針状体1と、基板部11の第2面112に貼付されたPGA製のシートを一体として得た。以上により、図7に示した針状体101を得た。
【0100】
本発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。
【0101】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0102】
1…針状体、2…原型、3…複製版、4…熱可塑性樹脂、5…サポート部材、6…補強層、7…接着剤層、10…針状体本体、11…針状体の基板部、12…針状体の針状部、21…原型の基板部、22…原型の針状部、31…複製版の第1面、32…複製版の凹部、51…サポート部材の面、61…湾曲面、101…針状体、111…針状体の第1面(針状部形成面)、112…針状体の第2面(針状部非形成面)、112a…凹部(ディンプル構造)、112b…凸部(エンボス構造)、112c…凸部(エンボス構造)、211…原型の第1面、212…原型の第2面、511…サポート部材の凸部(エンボス構造)、300…第1の複製版、301…第2の複製版。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9