(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。以下の説明においては、
図1の中心軸Jの延びる方向を上下方向とする。
図1における中心軸Jの軸方向の上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0013】
本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0014】
図1に示す本実施形態のモータ10は、アキシャルギャップ型のモータである。モータ10は、ハウジング11と、シャフト20と、ロータ31,32と、ステータ40と、上側ベアリング51と、下側ベアリング52と、を備える。シャフト20は、中心軸Jを中心として配置される。シャフト20は、ロータ31,32を回転可能に支持する。ロータ31,32は、上下方向に延びる中心軸Jを中心として回転する。ロータ31,32は、ステータ40と隙間を介して軸方向に対向する。ロータ31,32は、ステータ40と軸方向に対向するロータマグネット33,35を有する。なお、ロータ31,32は、いずれか一方のみが設けられてもよい。
【0015】
ステータ40は、ロータ31とロータ32との軸方向の間に位置する。ステータ40は、ロータ31,32と隙間を介して軸方向に対向する。
図1および
図2に示すように、ステータ40は、複数のステータコア41と、複数のコイル42と、インシュレータ43と、樹脂部46と、ベアリングホルダ44と、カバー45と、を備える。なお、ステータ40は、ロータ31,32のいずれかと軸方向に対向して設けられればよい。
【0016】
図2に示すように、複数のステータコア41は、周方向に沿って配置される。ステータコア41の数は、特に限定されない。
図2では、ステータコア41は、12個設けられる。ステータコア41は、軸方向に視て、径方向内側から径方向外側に向かって周方向に拡がる略扇形状である。
【0017】
図3に示すように、ステータコア41は、複数の電磁鋼板41aが径方向に積層される構成である。電磁鋼板41aは、径方向に視て、略H形の平板である。電磁鋼板41aの径方向端面は、軸方向に視てステータコア41の周方向の中心を通る径方向と略直交する。電磁鋼板41aの周方向両端面は、電磁鋼板41aの周方向の中心を通る径方向と略平行である。
【0018】
電磁鋼板41aは、径方向と直交する方向に窪むステータコア凹部41eを有する。
図3では、ステータコア凹部41eは、軸方向に窪む。ステータコア凹部41eは、電磁鋼板41aの軸方向両端に設けられる。ステータコア凹部41eの内部の形状は、径方向に視て、矩形状である。なお、ステータコア凹部41eは、径方向と直交する方向であれば、いずれの方向に窪んでもよい。また、ステータコア凹部41eは、周方向に窪んでもよい。
【0019】
ステータコア41は、軸方向に延びコイル42が巻き回されるコア柱状部41bと、コア柱状部41bの軸方向端部に接続され周方向に延びる板状のフランジ部41cと、を有する。フランジ部41cは、コア柱状部41bの軸方向端部から周方向両側に延びる。フランジ部41cは、コア柱状部41bの軸方向両端にそれぞれ設けられる。
【0020】
図3および
図4に示すように、フランジ部41cは、拡大部47bと、等幅部47aと、を有する。拡大部47bは、周方向幅が径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなる部分である。すなわち、拡大部47bを構成する複数の電磁鋼板41aにおいて、径方向内側に位置する電磁鋼板41aよりも径方向外側に位置する電磁鋼板41aの方が、フランジ部41cにおいて周方向幅が大きい。上述したように、電磁鋼板41aの周方向両端は、電磁鋼板41aの周方向の中心を通る径方向と平行である。そのため、フランジ部41cにおいて周方向幅が異なる電磁鋼板41aが径方向に積層されることで、拡大部47bの周方向両端は階段状となる。
【0021】
なお、本明細書において、「周方向幅」とは、軸方向に視て、径方向と直交する方向の寸法である。また、「径方向と直交する方向」とは、ある対象の周方向の中心を通る径方向と直交する方向を含む。一例として、ステータコア41の周方向幅は、軸方向に視てステータコア41の周方向の中心を通る径方向と直交する方向におけるステータコア41の寸法を含む。
【0022】
等幅部47aは、ステータコア41における周方向幅が略同じであり径方向に延びる部分である。等幅部47aは、拡大部47bの径方向外端から径方向外側に延びる。等幅部47aは、フランジ部41cにおいて周方向幅が略同じである複数の電磁鋼板41aが径方向に積層される構成である。等幅部47aは、拡大部47bよりも径方向外側に位置する。そのため、等幅部47aがフランジ部41cの径方向の中央に設けられる場合に比べて、ステータコア41の形状を磁気特性に優れた形状としやすい。
【0023】
等幅部47aの周方向幅は、拡大部47bの径方向外端に位置する電磁鋼板41aの周方向幅よりも大きい。等幅部47aの周方向幅と拡大部47bの径方向外端に位置する電磁鋼板41aの周方向幅との差は、拡大部47bにおいて径方向に隣り合う電磁鋼板41a同士の周方向幅の差と同程度である。
【0024】
図3および
図4では、等幅部47aを構成する電磁鋼板41aの枚数は、3枚である。等幅部47aを構成する電磁鋼板41aの枚数は、2枚であってもよいし、4枚以上であってもよい。等幅部47aを構成する複数の電磁鋼板41aの形状は、互いに同じである。なお、等幅部47aを構成する複数の電磁鋼板41aの形状は、互いに異なっていてもよい。この場合、コア柱状部41bにおいて複数の電磁鋼板41aの周方向幅が互いに異なってもよい。等幅部47aの周方向端面は、複数の電磁鋼板41aの周方向端面が連続して構成される略平坦な面である。
【0025】
図3に示すように、フランジ部41cにおいてロータ31,32と対向する面であるフランジ面41hは、本体面41gと、段差面41fと、を含む。フランジ面41hは、ステータコア41の軸方向端面である。段差面41fは、本体面41gよりも軸方向のコア柱状部41b側に窪む。すなわち、ステータコア41の軸方向端面は、軸方向においてコイル42側(コア柱状部41b側)に窪む段差面41fを有する。
【0026】
段差面41fは、本体面41gの周方向両側に設けられる。段差面41fは、フランジ面41hの周方向両端に位置する。そのため、ロータ31,32の回転に伴ってロータマグネット33,35が対向する面は、1つのステータコア41において、段差面41f、本体面41g、段差面41fの順に変化する。これにより、ロータマグネット33,35とフランジ面41hとの軸方向距離が、段差面41fから本体面41gに移り変わることで小さくなり、本体面41gから段差面41fに移り変わることで大きくなる。ロータマグネット33,35とフランジ面41hとの軸方向距離がこのように変化することで、モータ10に生じる逆起電圧の波形を正弦波に近づけることができる。また、モータ10のコギングトルクを低減することができる。これにより、モータ10の磁気特性を向上させることができる。
【0027】
段差面41fは、フランジ面41hの径方向内端から径方向外端まで延びる。段差面41fは、複数の電磁鋼板41aの軸方向端面が連続して構成される略平坦な面である。段差面41fの周方向幅は、径方向の全体に亘って略同じである。
【0028】
本体面41gは、フランジ面41hの周方向の中央に位置する。
図2および
図5に示すように、軸方向両側の本体面41gは、それぞれ樹脂部46からステータ40の外部に露出する。これにより、金型Dを用いて樹脂部46を形成する際に、金型Dの底面Daに本体面41gを接触させた状態でステータコア41を金型D内に配置できる。したがって、ステータコア41を軸方向に精度よく配置することができる。なお、本体面41gは、ステータ40の外部に露出しなくてもよい。この場合においては、本体面41gは樹脂部46の一部に覆われてもよい。
【0029】
本体面41gのうち拡大部47bに位置する部分の周方向幅は、径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなる。本体面41gのうち等幅部47aに位置する部分は、周方向幅が径方向の全体に亘って略同じであり、径方向に延びる。このように、本体面41gの周方向幅は、径方向に沿って、フランジ部41cの周方向幅と同様に変化する。これにより、ステータコア41の磁気特性を径方向位置に応じて好適にすることができる。この構成は、段差面41fの周方向幅を径方向の全体に亘って略同じとすることで採用できる。
【0030】
ステータコア41は、複数のステータコア凹部41eによって構成され径方向に延びる溝部47cを有する。そのため、電磁鋼板41aをステータコア凹部41eによって位置決めしつつ、複数の電磁鋼板41aを径方向に積層する方法を採用できる。これにより、電磁鋼板41aを精度よく積層することができ、ステータコア41を精度よく製造することができる。したがって、等幅部47aの周方向端面を精度よく構成することができ、後述するステータ40の製造方法を用いた際に、ステータコア41の配置精度をより向上できる。
【0031】
溝部47cは、フランジ部41cの径方向内端から径方向外端まで延びる。溝部47cは、ステータコア41の軸方向端面から軸方向に窪む。より詳細には、溝部47cは、本体面41gから、コア柱状部41b側に窪む。本実施形態においては、ステータコア凹部41eが電磁鋼板41aの軸方向両端面に設けられるため、溝部47cは、ステータコア41の軸方向両端面に設けられる。溝部47cは、周方向において、フランジ部41cの中心に位置する。
【0032】
なお、溝部47cは、コア柱状部41bに設けられてもよい。この場合、溝部47cは、コア柱状部41bの周方向端面から周方向に窪む。また、溝部47cを構成するステータコア凹部41eは、周方向に窪み、電磁鋼板41aにおけるコア柱状部41bを構成する部分に設けられる。
【0033】
図4に示すように、コア柱状部41bの周方向幅はフランジ部41cの周方向幅と同様に変化する。すなわち、コア柱状部41bは、周方向幅が径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなる拡大柱状部49bと、周方向幅が略同じであり径方向に延びる等幅柱状部49aと、を有する。拡大柱状部49bの径方向位置は、拡大部47bの径方向位置と同じである。等幅柱状部49aの径方向位置は、等幅部47aの径方向位置と同じである。この構成により、ステータコア41の磁気特性を径方向位置に応じて好適にすることができる。
【0034】
なお、拡大柱状部49bの径方向位置と拡大部47bの径方向位置とは、径方向にずれていてもよい。等幅柱状部49aの径方向位置と等幅部47aの径方向位置とは、径方向にずれていてもよい。また、コア柱状部41bの周方向幅の変化は、フランジ部41cの周方向幅の変化と異なってもよい。コア柱状部41bの周方向幅は、径方向全体に亘って略同じであってもよいし、径方向全体に亘って径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなってもよい。
【0035】
図1に示すように、コイル42は、ステータコア41に巻き回される。より詳細には、コイル42は、インシュレータ43を介してコア柱状部41bに巻き回される。すなわち、インシュレータ43の少なくとも一部は、ステータコア41とコイル42との間に位置する。
【0036】
図1および
図2に示すように、ベアリングホルダ44は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。ベアリングホルダ44の径方向内側には、上側ベアリング51が保持される。カバー45は、複数のステータコア41の径方向外側を囲む環状である。
【0037】
図2に示すように、樹脂部46は、少なくとも一部が周方向に隣り合うステータコア41同士の間に位置する。樹脂部46は、複数のステータコア41とベアリングホルダ44とカバー45とを連結する。樹脂部46は、内側環状部46bと、外側環状部46cと、樹脂本体部46aと、を有する。内側環状部46bは、樹脂部46におけるベアリングホルダ44とステータコア41との径方向の間に位置する環状の部分である。外側環状部46cは、樹脂部46におけるステータコア41の径方向外側に位置する環状の部分である。
【0038】
図5および
図6に示すように、樹脂本体部46aは、樹脂部46における周方向に隣り合うステータコア41同士の間に位置する部分である。また、樹脂本体部46aの少なくとも一部は、周方向に隣り合うフランジ部41c同士の間に位置する。
図5に示すように、樹脂本体部46aの径方向内端は、内側環状部46bに接続される。樹脂本体部46aの径方向外端は、外側環状部46cに接続される。
図6に示すように、樹脂本体部46aは、周方向に隣り合うフランジ部41c同士の間に位置する部分と、周方向に隣り合うコア柱状部41b同士の間に位置する部分と、を含む。樹脂本体部46aの軸方向端面である本体部端面46dは、本体面41gと軸方向において同じ位置にある。
【0039】
図5に示すように、樹脂部46は、第1凹部48aと、第2凹部48bと、を有する。本実施形態において第1凹部48aおよび第2凹部48bは、ステータ40の下面40bに設けられる。
図6に示すように、第1凹部48aは、本体部端面46dよりも軸方向に窪む。より詳細には、第1凹部48aは、本体部端面46dよりも上側に窪む。
図5および
図6に示すように、第1凹部48aは、周方向に隣り合うステータコア41の等幅部47a同士の間に位置する。そのため、後述する本実施形態のステータ40の製造方法を採用して、ステータコア41を周方向に精度よく配置できる。
【0040】
図5に示すように、第1凹部48aは、周方向に隣り合うステータコア41の等幅部47a同士の間ごとにそれぞれ設けられる。複数の第1凹部48aは、周方向に沿って均等に配置される。
【0041】
第1凹部48aの軸方向に視た外形は、特に限定されず、多角形状であっても、円形状であってもよい。
図5では、第1凹部48aの軸方向に視た外形は、台形状である。第1凹部48aの周方向幅は、径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなる。第1凹部48aの内側面のうち周方向一方側(+θ側)の面は、第1凹部48aの周方向一方側(+θ側)に位置するステータコア41の等幅部47aと略平行である。第1凹部48aの内側面のうち周方向他方側(−θ側)の面は、第1凹部48aの周方向他方側(−θ側)に位置するステータコア41の等幅部47aと略平行である。
【0042】
等幅部47aの少なくとも一部は、第1凹部48a内に露出する。より詳細には、等幅部47aの周方向端面の少なくとも一部は、第1凹部48a内に露出する。なお、等幅部47aは、第1凹部48a内に露出しなくてもよい。この場合、等幅部47aの周方向端面は、樹脂部46の一部に覆われる。
【0043】
図6に示すように、第1凹部48aの底面は、軸方向において、コイル42が配置される領域よりも浅い位置にある。そのため、第1凹部48aがコイル42に到達せず、コイル42が第1凹部48a内に露出することを抑制できる。第1凹部48aの底面は、下側のフランジ部41cにおけるコア柱状部41b側(上側)の軸方向端面よりも浅い位置にある。すなわち、第1凹部48aの底面の軸方向における高さ位置は、下側のフランジ部41cの軸方向上面よりも、下側に位置する。
【0044】
図5に示すように、第2凹部48bは、本体部端面46dよりも軸方向に窪む。第2凹部48bは、内側環状部46bに位置する。第2凹部48bの少なくとも一部は、ステータコア41の径方向内端の径方向内側に位置する。
図5では、第2凹部48bの全体が、ステータコア41の径方向内端の径方向内側に位置する。そのため、後述する本実施形態のステータ40の製造方法を採用して、ステータコア41を径方向に精度よく配置できる。ステータコア41の径方向内端は、フランジ部41cの径方向内端である。
【0045】
第2凹部48bは、ステータコア41が配置されるごとにそれぞれ設けられる。複数の第2凹部48bは、周方向に均等に配置される。第2凹部48bは、第1凹部48aよりも径方向内側に位置する。第2凹部48bの周方向位置は、周方向に隣り合う第1凹部48a同士の間である。なお、
図5では、第2凹部48bは、ステータコア41が配置されるごとに1つずつ設けられているが、これに限られない。第2凹部48bは、ステータコア41が配置されるごとに、2つ以上ずつ設けられてもよい。
【0046】
第2凹部48bの軸方向に視た外形は、特に限定されず、多角形状であっても、円形状であってもよい。
図5では、第2凹部48bの軸方向に視た形状は、円形状である。図示は省略するが、ステータコア41の径方向内端の少なくとも一部は、第2凹部48b内に露出する。より詳細には、フランジ部41cの径方向内端面の少なくとも一部が、第2凹部48b内に露出する。なお、ステータコア41の径方向内端の少なくとも一部は、第2凹部48b内に露出しなくてもよい。この場合、フランジ部41cの径方向内端面は、樹脂部46の一部に覆われる。
【0047】
図6に示すように、樹脂部46の一部は、ステータコア41の軸方向端面に配置される。具体的には、段差面41fには、樹脂部46の一部が配置される。そのため、樹脂部46の一部によってステータコア41が軸方向両側から押さえられる。したがって、ステータコア41が樹脂部46に対して軸方向に移動することを抑制できる。これにより、ステータコア41と樹脂部46とをより強固に固定できる。
【0048】
本実施形態においては、段差面41fが設けられることで、段差面41fに樹脂部46の一部を配置しつつ、本体面41gを露出させることができる。これにより、ステータコア41と樹脂部46との固定を強固にしつつ、ステータコア41を軸方向に精度よく配置できる。
【0049】
樹脂部46の一部は、溝部47c内に配置される。本実施形態においては、溝部47c内全体に樹脂部46の一部が充填される。
【0050】
図7に示すように、本実施形態のステータ40の製造方法は、ステータコア形成工程S1と、コイル装着工程S2と、配置工程S3と、樹脂成型工程S4と、を含む。ステータコア形成工程S1は、複数の電磁鋼板41aを径方向に積層して複数のステータコア41を形成する工程である。帯状の電磁鋼板の一部をプレス加工によって打ち抜いて、複数の電磁鋼板41aを形成する。ステータコア凹部41eに治具を嵌め合わせる等によって電磁鋼板41aの位置を合わせつつ、電磁鋼板41aを積層する。そのため、複数の電磁鋼板41aを精度よく積層できる。電磁鋼板41a同士の固定方法は特に限定されない。
【0051】
コイル装着工程S2は、ステータコア41にコイル42を装着する工程である。コア柱状部41bにインシュレータ43を装着した後、インシュレータ43の上からコア柱状部41bの周囲に導電線を巻き付け、コイル42を形成する。
【0052】
図8に示すように、配置工程S3は、金型D内に複数のステータコア41を周方向に沿って配置する工程である。金型Dは、例えば、円筒状である。金型D内には、第1位置決め部材P1と、第2位置決め部材P2と、が配置される。第1位置決め部材P1および第2位置決め部材P2は、金型Dの底面Daに固定される。第1位置決め部材P1は、周方向に沿って複数設けられる。第2位置決め部材P2は、周方向に沿って複数設けられる。第2位置決め部材P2は、第1位置決め部材P1よりも径方向内側に位置する。第2位置決め部材P2の周方向位置は、周方向に隣り合う第1位置決め部材P1同士の間である。第1位置決め部材P1の軸方向に視た形状は、台形状である。第2位置決め部材P2の軸方向に視た形状は、円形状である。
【0053】
ステータコア41は、下側のフランジ部41cの本体面41gが底面Daと接触した状態で、金型D内に配置される。配置工程S3においては、金型D内に配置された第1位置決め部材P1に等幅部47aを接触させて、ステータコア41を周方向に位置決めする。
【0054】
フランジ部が拡大部のみで構成される場合、例えば拡大部を位置決め部材に接触させて位置決めする。しかし、拡大部の周方向端部は階段状であるため、ステータコアを精度よく位置決めすることが難しい。また、位置決め部材とステータコアとの接触が不安定となりやすく、金型に樹脂が流し込まれた際に、樹脂の圧力でステータコアが移動する場合がある。そのため、ステータコアを精度よく配置することが困難であった。この問題に対して、インシュレータに位置決めを行う構造を設けることが考えられるが、その場合にはインシュレータが大型化しやすく、ステータが大型化する問題があった。
【0055】
これらの問題に対して、等幅部47aは、周方向幅が略同じである複数の電磁鋼板41aが積層される構成であるため、上述したように等幅部47aの周方向端面は、略平坦な面である。これにより、等幅部47aを第1位置決め部材P1に接触させることで、ステータコア41を周方向に精度よく位置決めできる。また、第1位置決め部材P1とステータコア41とを安定して接触させることができるため、ステータコア41が樹脂の圧力によって動くことを抑制できる。したがって、ステータコア41に等幅部47aを設けることによって、電磁鋼板41aが径方向に積層された構成であるステータコア41を周方向に精度よく配置することができる。また、位置決めを行うための追加の構造が生じないため、ステータ40の大型化を抑制することができる。
【0056】
また、フランジ部が拡大部のみで構成される場合、ステータコアを構成する電磁鋼板の形状をすべて異ならせる必要がある。そのため、例えば電磁鋼板ごとにプレス加工で打ち抜く型を用意する必要があり、ステータコアの製造コストが高くなりやすい。これに対して、等幅部47aを構成する複数の電磁鋼板41aは、互いに同一の形状とすることが可能である。そのため、等幅部47aを構成する複数の電磁鋼板41aを、同一の型によってプレス加工で打ち抜いて製造することができる。これにより、フランジ部41cが等幅部47aを有することで、電磁鋼板41aを打ち抜く型の数を少なくすることができ、ステータコア41の製造コストを小さくできる。
【0057】
図8では、等幅部47aの周方向両端が、等幅部47aの周方向両側にそれぞれ位置する第1位置決め部材P1と接触する。これにより、2つの第1位置決め部材P1がステータコア41を挟持することによって、ステータコア41を周方向に位置決めできる。したがって、ステータコア41が周方向に移動することを抑制できる。また、本実施形態では等幅部47aは拡大部47bよりも径方向外側に位置するため、等幅部47aの周方向幅を大きくしやすい。これにより、フランジ部41cにおける第1位置決め部材P1によって挟持される部分の周方向幅が大きくなる。したがって、本実施形態は、第1位置決め部材P1によってステータコア41をより安定して挟持することができるため、ステータコア41が周方向に移動することをより抑制できる。第1位置決め部材P1の周方向両端は、それぞれ隣り合うステータコア41の等幅部47aと接触する。
【0058】
配置工程S3においては、金型D内に配置された第2位置決め部材P2がステータコア41の径方向内端に接触する。そのため、金型D内において、ステータコア41は径方向に位置決めされる。より詳細には、フランジ部41cの径方向内端が第2位置決め部材P2に接触し、ステータコア41が径方向に位置決めされる。配置工程S3においては、ベアリングホルダ44およびカバー45も金型D内に配置する。なお、配置工程S3においては、ステータコア41の径方向外端と接触する位置決め部材を、第1位置決め部材P1および第2位置決め部材P2とは別に設けてもよい。
【0059】
樹脂成型工程S4は、金型D内に溶融した樹脂を流し込み、少なくとも一部が周方向に隣り合うステータコア41同士の間に位置する樹脂部46を形成する工程である。樹脂成型工程S4においては、金型D内に配置された第1位置決め部材P1によって、第1凹部48aが形成される。そのため、第1凹部48aの軸方向に視た外形は、第1位置決め部材P1の軸方向に視た外形と同じである。このように、本実施形態のステータ40は、第1凹部48aを有する樹脂部46を備えるため、配置工程S3において、ステータコア41を、第1位置決め部材P1を用いて位置決めする上述の製造方法を採用できる。したがって、ステータコア41が周方向に沿って精度よく配置されたステータ40が得られる。
【0060】
また、第1凹部48aの周方向幅は径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなるため、配置工程S3において用いる第1位置決め部材P1の形状が径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなる形状となる。これにより、1つの第1位置決め部材P1の周方向両端に、それぞれ周方向に隣り合うステータコア41の等幅部47aを接触させる製造方法を採用できる。したがって、配置工程S3において用いる第1位置決め部材P1の数を少なくすることができ、ステータ40の製造コストを小さくできる。
【0061】
配置工程S3において、第1位置決め部材P1と等幅部47aとが精度よく接触する場合、第1位置決め部材P1と等幅部47aとの間には樹脂が入り込まない。そのため、樹脂成型工程S4において形成された第1凹部48a内には、等幅部47aにおける第1位置決め部材P1と接触していた部分が露出する。このように、第1凹部48a内に等幅部47aの少なくとも一部が露出する構成の場合、配置工程S3において第1位置決め部材P1と等幅部47aとを精度よく接触させる製造方法を採用できる。そのため、ステータコア41の配置精度がより優れたステータ40が得られる。
【0062】
なお、第1位置決め部材P1と等幅部47aとの接触する精度が比較的低い場合、第1位置決め部材P1と等幅部47aとの間には、わずかに樹脂が入り込む場合がある。この場合、第1凹部48a内には等幅部47aが露出しない場合がある。しかし、この場合であっても、本実施形態は、第1位置決め部材P1によって、ステータコア41を十分に精度よく位置決めすることができる。
【0063】
樹脂成型工程S4においては、金型D内に配置された第2位置決め部材P2によって、第2凹部48bが形成される。第2凹部48bの軸方向に視た外形は、第2位置決め部材P2の軸方向に視た外形と同じである。このように、本実施形態のステータ40は、第2凹部48bを有する樹脂部46を備えるため、配置工程S3において、ステータコア41を、第2位置決め部材P2を用いて位置決めする上述の製造方法を採用できる。したがって、ステータコア41が径方向に精度よく位置決めされたステータ40が得られる。
【0064】
配置工程S3において、第2位置決め部材P2とステータコア41とが精度よく接触する場合、第2位置決め部材P2とステータコア41との間には樹脂が入り込まない。そのため、樹脂成型工程S4において形成された第2凹部48b内には、ステータコア41における第2位置決め部材P2と接触していた部分が露出する。このように、第2凹部48b内にステータコア41の径方向内端の少なくとも一部が露出する構成の場合、配置工程S3において第2位置決め部材P2とステータコア41の径方向内端とを精度よく接触させる製造方法を採用できる。そのため、ステータコア41の配置精度がより優れたステータ40が得られる。
【0065】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。以下の説明において上記説明と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0066】
ステータコア41は、
図9に示すステータコア141のような形状であってもよい。
図9に示すように、コア柱状部141bは、径方向外端において径方向内側から径方向外側に向かって周方向幅が小さくなる段差部149aを有する。段差部149aは、等幅柱状部49aよりも径方向外側に電磁鋼板141aが積層されることで構成される段差である。電磁鋼板141aにおけるコア柱状部141bの周方向幅は、等幅柱状部49aの周方向幅よりも小さい。例えば、コア柱状部にインシュレータを介してコイルの導電線を巻く際、段差部149aが設けられない構成では、コア柱状部の径方向外端の角部が干渉するため、導電線が巻き膨れして、コイルの外径が大きくなる問題がある。そのため、ステータが径方向に大型化する問題があった。これに対して、段差部149aが設けられることで、導電線がコア柱状部141bの外形に沿って巻き回され、導電線の巻き膨れを抑制できる。したがって、コイル42の外径が大きくなることを抑制でき、結果としてステータ40が径方向に大型化することを抑制できる。
【0067】
フランジ部141cは、径方向外端において径方向内側から径方向外側に向かって周方向幅が小さくなるフランジ段差部149bを有する。フランジ段差部149bは、等幅部47aよりも径方向外側に電磁鋼板141aが積層されることで構成される段差である。電磁鋼板141aにおけるフランジ部141cの周方向幅は、等幅部47aの周方向幅よりも小さい。このように、電磁鋼板141aの周方向幅は、コア柱状部141bおよびフランジ部141cの両方において、等幅部47aを構成する電磁鋼板41aよりも小さい。本実施形態は、電磁鋼板141aの形状を、拡大部47bを構成する電磁鋼板41aのうちのいずれかの形状と同一にできる。したがって、電磁鋼板141aをプレス加工で打ち抜くための型を別途用意する必要がなく、ステータコア141の製造コストが大きくなることを抑制できる。
【0068】
また、第1凹部48aおよび第2凹部48bは、ステータ40の上面40aに設けられてもよいし、上面40aおよび下面40bの両方に設けられてもよい。また、第2凹部48bは、中心軸Jを囲む環状であってもよい。この場合、配置工程S3においては環状の第2位置決め部材が1つのみ設けられ、各ステータコア41は、1つの第2位置決め部材によって径方向に位置決めされる。
【0069】
また、等幅部47aは、径方向において、フランジ部41cのいずれの位置に設けられてもよい。等幅部47aは、フランジ部41cの径方向内端に位置してもよいし、フランジ部41cの径方向の中央に位置してもよい。また、コア柱状部41bの周方向幅は、径方向の全体に亘って同じであってもよい。
【0070】
また、上述したモータ10は、シャフト20にロータ31,32が固定された軸回転型のモータとしたが、これに限られない。本発明が適用されるモータは、シャフトが固定される軸固定型のモータであってもよい。
【0071】
上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。