(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1取得処理部は、前記第1測域センサが出力する前記距離データから人の高さを算出し、当該人の高さが第1閾値以上であるか否かを判断することを以て、前記第1地点での人の検出状態が前記オン状態及び前記オフ状態の何れであるのかを判断し、
前記第2取得処理部は、前記第2測域センサが出力する前記距離データから人の高さを算出し、当該人の高さが第2閾値以上であるか否かを判断することを以て、前記第2地点での人の検出状態が前記オン状態及び前記オフ状態の何れであるのかを判断する、請求項1に記載のエスカレータの混雑検知システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の技術は、降り場では、1つの地点だけで利用者を検出しているに過ぎない。このため、その地点に、混雑とは関係なく人が単に立ち止まっているだけであっても、その人が検出されることで、混雑が生じていると誤って判定されてしまう虞がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、エスカレータの降り場に生じた混雑を精度良く検知できる混雑検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエスカレータの混雑検知システムは、検出装置と、制御装置と、を備える。検出装置は、エスカレータの降り場において、進行方向における前後に位置する第1地点及び第2地点で人を検出する。制御装置は、検出装置の検出結果に基づいて、降り場に混雑が生じているか否かを判断する。具体的には、制御装置は、第1取得処理部と、第2取得処理部と、判断処理部と、を含む。第1取得処理部は、第1地点で検出装置が同じ人を検出した状態のまま経過した第1経過時間を取得する。第2取得処理部は、第2地点で検出装置が別の同じ人を検出した状態のまま経過した第2経過時間を取得する。そして、判断処理部は、降り場に混雑が生じているか否かを判断する時点において、その時点での第1経過時間及び第2経過時間が何れも所定時間以上であるか否かを判断し、何れも所定時間以上であると判断したことを以て、降り場に混雑が生じていると判断する。
【0008】
降り場において、進行方向における前後に位置する2つの地点の何れか一方にだけ人が立ち止まっている場合には、混雑とは関係なく人が単に立ち止まっているだけである可能性が高い。一方、上記2つの地点の何れにも人が立ち止まっている場合には、降り場に生じた混雑が原因で人が立ち止まっている可能性が高い。そして、上記混雑検知システムによれば、上記2つの地点(第1地点及び第2地点)の何れにも人が立ち止まっているか否かを、2つの経過時間(第1経過時間及び第2経過時間)と所定時間との比較によって判断できる。
【0009】
上記混雑検知システムにおいて、検出装置は、第1測域センサと、第2測域センサと、を含んでいてもよい。第1測域センサは、第1地点を横方向に走査し、走査経路上の複数点で距離を測定して得た距離データを出力する。第2測域センサは、第2地点を横方向に走査し、走査経路上の複数点で距離を測定して得た距離データを出力する。
【0010】
この構成において、第1取得処理部は、第1測域センサが出力する距離データに基づいて、第1地点での人の検出状態が、人を検出しているオン状態であるか、或いは人を検出していないオフ状態であるかを判断し、その判断によって得られる検出状態の時間変化に基づいて、オフ状態からオン状態へ移行した時点から当該オン状態のまま経過した時間を第1経過時間として取得してもよい。又、第2取得処理部は、第2測域センサが出力する距離データに基づいて、第2地点での人の検出状態が、人を検出しているオン状態であるか、或いは人を検出していないオフ状態であるかを判断し、その判断によって得られる検出状態の時間変化に基づいて、オフ状態からオン状態へ移行した時点から当該オン状態のまま経過した時間を第2経過時間として取得してもよい。そして、判断処理部は、降り場に混雑が生じているか否かを判断する時点において、その時点での第1経過時間及び第2経過時間をそれぞれ第1取得処理部及び第2取得処理部から取得し、それらの経過時間が何れも所定時間以上であるか否かを判断してもよい。
【0011】
上記構成によれば、第1地点での人の検出状態がオン状態のまま時間が経過している場合には、その間、第1地点には同じ人が立ち止まっていると判断できる。又、第2地点での人の検出状態がオン状態のまま時間が経過している場合には、その間、第2地点には別の同じ人が立ち止まっていると判断できる。そして、このような検出状態の時間変化が、測域センサを用いることで簡単に得られる。
【0012】
上記混雑検知システムにおいて、第1取得処理部は、第1測域センサが出力する距離データから人の高さを算出し、当該人の高さが第1閾値以上であるか否かを判断することを以て、第1地点での人の検出状態がオン状態及びオフ状態の何れであるのかを判断してもよい。又、第2取得処理部は、第2測域センサが出力する距離データから人の高さを算出し、当該人の高さが第2閾値以上であるか否かを判断することを以て、第2地点での人の検出状態がオン状態及びオフ状態の何れであるのかを判断してもよい。この構成によれば、第1閾値及び第2閾値として人の平均的な背丈に対応した値を用い、その値を、算出した人の高さと比較することにより、第1地点及び第2地点での人の検出状態を精度良く判断することが可能になる。
【0013】
上記混雑検知システムにおいて、第1取得処理部は、第1地点での横方向において検出装置が同じ2人を検出した状態のまま経過した時間を第1経過時間として取得してもよい。又、第2取得処理部は、第2地点での横方向において検出装置が別の同じ2人を検出した状態のまま経過した時間を第2経過時間として取得してもよい。この混雑検知システムは、1つのステップに2人の利用者が乗ることが想定されたエスカレータに適用できる。
【0014】
降り場において、左右2つのレーン(右側通路と左側通路)のうちの何れか一方のレーンで人が立ち止まっていたとしても、残りのレーンが空いている場合には、利用者は、そのレーンを使ってエスカレータから降りることができるため、転倒などの危険に晒される可能性が低い。一方、2つのレーンの何れにおいても、進行方向における前後に位置する2つの地点(第1地点及び第2地点)に人が立ち止まっている場合には、利用者は、エスカレータから降りることができないため、転倒などの危険に晒される可能性が高い。そして、上記構成によれば、2つのレーンの何れにおいても第1地点及び第2地点の両方で人が立ち止まっているか否かを、2つの経過時間(第1経過時間及び第2経過時間)と所定時間との比較によって判断できる。これにより、片側のレーンだけに人が立ち止まっている場合と区別して、降り場に生じた混雑を精度良く検知できる。
【0015】
本発明に係る他の混雑検知システムは、検出装置と、制御装置と、を備える。検出装置は、エスカレータの降り場において、進行方向における前後に位置する第1地点及び第2地点で人を検出する。制御装置は、検出装置の検出結果に基づいて、降り場に混雑が生じているか否かを判断する。具体的には、制御装置は、取得処理部と、判断処理部と、を含む。取得処理部は、第1地点で検出装置が同じ人を検出し、且つ第2地点で検出装置が別の同じ人を検出した状態のまま経過した経過時間を取得する。そして、判断処理部は、降り場に混雑が生じているか否かを判断する時点において、その時点での経過時間が所定時間以上であるか否かを判断し、所定時間以上であると判断したことを以て、降り場に混雑が生じていると判断する。
【0016】
上記混雑検知システムによれば、進行方向における前後に位置する2つの地点(第1地点及び第2地点)の何れにも人が立ち止まっているか否かを、1つの経過時間と所定時間との比較によって判断できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エスカレータの降り場に生じた混雑を精度良く検知できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1]混雑検知システムの構成
本発明の混雑検知システムを、1つのステップに1人の利用者が乗ることが想定されたエスカレータに適用した実施形態について説明する。尚、本発明の混雑検知システムは、1つのステップに2人以上の利用者が乗ることが想定されたエスカレータにも適用でき、その形態については、変形例として後述する。
【0020】
図1は、実施形態に係る混雑検知システム100の構成を示し、且つ、その混雑検知システム100が適用されたエスカレータの降り場101を進行方向Dgから見て示した概念図である。又、
図2は、当該エスカレータの降り場101を横方向Dhから見て示した概念図である。ここで、進行方向Dgは、利用者がエスカレータから降りる際に進む方向である。又、横方向Dhは、水平方向であって進行方向Dgに垂直な方向(即ち、エスカレータの幅方向)である。
【0021】
図1に示されるように、混雑検知システム100は、検出装置1と、制御装置2と、を備える。本実施形態では、混雑検知システム100は、下階から上階へ利用者を輸送するエスカレータに適用されており、降り場101である上階に生じた混雑を検知する。尚、以下に説明する混雑検知システム100は、上階から下階へ利用者を輸送するエスカレータにおいて降り場101である下階に生じた混雑を検知する場合にも適用できる。
【0022】
検出装置1は、降り場101において、進行方向Dgにおける前後に位置する第1地点P1及び第2地点P2(
図2参照)で人を検出する。具体的には、検出装置1は、降り場101の上方位置(人の背丈よりも高い位置)に配置される第1測域センサ11及び第2測域センサ12を含む。そして、第1測域センサ11は、第1地点P1を横方向Dhに走査する1軸走査型の測域センサであり、走査経路上の複数点で距離を測定して得た距離データd1を出力する。第2測域センサ12は、第2地点P2を横方向Dhに走査する1軸走査型の測域センサであり、走査経路上の複数点で距離を測定して得た距離データd2を出力する。
【0023】
本実施形態では、第1測域センサ11及び第2測域センサ12は、ポール102Aから横方向Dhに延びた水平バー102Bに設けられることで、横方向Dhにずれた位置に配置されている(
図1参照)。尚、第1測域センサ11及び第2測域センサ12は、降り場101の天井などに設けられてもよい。又、第1測域センサ11及び第2測域センサ12は、横方向Dhにずれた位置に配置される場合に限らず、進行方向Dgにずれた位置に配置されてもよい。何れの場合でも、第1測域センサ11は、第1地点P1を横方向Dhに走査できるように第1地点P1に向けて配置され、第2測域センサ12は、第2地点P2を横方向Dhに走査できるように第2地点P2に向けて配置される(
図2参照)。
【0024】
制御装置2は、検出装置1の検出結果に基づいて、降り場101に混雑が生じているか否かを判断する(混雑検知処理)。ここで、制御装置2は、エスカレータの駆動を制御する制御装置であってもよいし、当該制御装置とは別の制御装置であってもよい。
【0025】
具体的には、制御装置2は、混雑検知処理を実行するための構成として、第1取得処理部21と、第2取得処理部22と、判断処理部24と、を含む(
図1参照)。これらの処理部は、制御装置2内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよいし、制御装置2が備えるCPU(Central Processing Unit)やマイクロコンピュータ等の処理装置にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成されてもよい。そして、そのようなプログラムは、読取り可能な状態で記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に記憶されてもよいし、混雑検知システム100が備える記憶装置(不図示)に記憶されてもよい。
【0026】
第1取得処理部21は、第1地点P1で検出装置1(本実施形態では、第1測域センサ11)が同じ人を検出した状態のまま経過した第1経過時間T1を取得する(第1取得処理)。第2取得処理部22は、第2地点P2で検出装置1(本実施形態では、第2測域センサ12)が別の同じ人を検出した状態のまま経過した第2経過時間T2を取得する(第2取得処理)。そして、判断処理部24は、降り場101に混雑が生じているか否かを判断する時点Tjにおいて、その時点Tjでの第1経過時間T1及び第2経過時間T2が何れも所定時間Ts以上であるか否かを判断し、何れも所定時間Ts以上であると判断したことを以て、降り場101に混雑が生じていると判断する(判断処理)。所定時間Tsは、例えば、次のように決められる。降り場101に混雑が生じたときに同じ地点に人が立ち止まる時間を推定し、その時間に基づいて(例えば、その時間以上となるように)所定時間Tsが決められる。以下、これらの処理の詳細について、具体的に説明する。
【0027】
[2]混雑検知システムで実行される制御処理(混雑検知処理)
[2−1]第1取得処理及び第2取得処理
<第1取得処理>
第1取得処理部21は、第1測域センサ11が出力する距離データd1に基づいて、第1地点P1での人の検出状態が、人を検出しているオン状態であるか、或いは人を検出していないオフ状態であるかを判断する。具体的には、第1取得処理部21は、距離データd1から、第1地点P1での横方向Dhの位置ごとに人の高さh1(頭や肩などの高さを含む)を算出し、横方向Dhの各位置において、当該人の高さh1が第1閾値hs1以上であるか否かを判断する。
【0028】
そして、第1取得処理部21は、「第1閾値hs1以上である(Yes)」と判断した場合、その判断を以て、人の検出状態はオン状態であると判断する。一方、第1取得処理部21は、「第1閾値hs1以上でない(No)」と判断した場合、その判断を以て、人の検出状態はオフ状態であると判断する。このとき、第1閾値hs1として人の平均的な背丈に対応した値を用い、その値を、算出した人の高さh1と比較することにより、第1地点P1での人の検出状態を精度良く判断することが可能になる。
【0029】
第1取得処理部21は、上記判断を短い周期で繰り返し実行することにより、第1地点P1での人の検出状態についての時間変化を得ることができる。
図3〜
図5は、降り場101の状況ごとに検出状態の時間変化を示した概念図であり、オン状態と判断された箇所がハッチングで示されている。ここで、
図3は、エスカレータから降りた利用者が順調に降り場101を通過しているときの検出状態の時間変化を示す。
図4は、降り場101に混雑が生じているときの検出状態の時間変化を示す。
図5は、第1地点P1に人が単に立ち止まっているときの検出状態の時間変化を示す。尚、
図3〜
図5には、後述する第2地点P2での人の検出状態についての時間変化も示されている。
【0030】
図3に示されるように、利用者が順調に降り場101を通過しているときには、同じ人を検出している時間が短くなるため、オン状態と判断される箇所が断続的に現れる。一方、
図4及び
図5に示されるように、第1地点P1に人が立ち止まっているときには、同じ人を検出している時間が長くなるため、オン状態と判断される箇所が長期に亘って連続的に現れる。従って、第1地点P1での人の検出状態がオン状態のまま時間が経過している場合には、その間、第1地点P1には同じ人が立ち止まっていると判断できる。そして、この様な検出状態の時間変化が、第1測域センサ11を用いることで簡単に得られる。後述する第2地点P2での人の検出状態についても同様のことが言える。
【0031】
そして、第1取得処理部21は、検出状態の時間変化を得つつ、その時間変化に基づいて、検出状態がオフ状態からオン状態へ移行した時点Ta1から当該オン状態のまま経過した時間を第1経過時間T1として取得する(
図4又は
図5参照)。一方、検出状態がオフ状態であると判断した時点で第1取得処理部21が取得する第1経過時間T1は、所定時間Tsより小さい時間(例えば、ゼロ)に設定される。
【0032】
<第2取得処理>
第2取得処理部22は、第2測域センサ12が出力する距離データd2に基づいて、第2地点P2での人の検出状態が、人を検出しているオン状態であるか、或いは人を検出していないオフ状態であるかを判断する。具体的には、第2取得処理部22は、距離データd2から、第2地点P2での横方向Dhの位置ごとに人の高さh2(頭や肩などの高さを含む)を算出し、横方向Dhの各位置において、当該人の高さh2が第2閾値hs2以上であるか否かを判断する。ここで、第2閾値hs2は、第1閾値hs1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0033】
そして、第2取得処理部22は、「第2閾値hs2以上である(Yes)」と判断した場合、その判断を以て、人の検出状態はオン状態であると判断する。一方、第2取得処理部22は、「第2閾値hs2以上でない(No)」と判断した場合、その判断を以て、人の検出状態はオフ状態であると判断する。このとき、第2閾値hs2として人の平均的な背丈に対応した値を用い、その値を、算出した人の高さh2と比較することにより、第2地点P2での人の検出状態を精度良く判断することが可能になる。
【0034】
第2取得処理部22は、上記判断を短い周期で繰り返し実行することにより、第2地点P2での人の検出状態についての時間変化を得ることができる(
図3〜
図5参照)。そして、第2取得処理部22は、検出状態の時間変化を得つつ、その時間変化に基づいて、検出状態がオフ状態からオン状態へ移行した時点Ta2から当該オン状態のまま経過した時間を第2経過時間T2として取得する(
図4参照)。一方、検出状態がオフ状態であると判断した時点で第2取得処理部22が取得する第2経過時間T2は、所定時間Tsより小さい時間(例えば、ゼロ)に設定される。
【0035】
[2−2]判断処理
判断処理部24は、第1取得処理部21及び第2取得処理部22がそれぞれ取得した第1経過時間T1及び第2経過時間T2を用いて、降り場101に混雑が生じているか否かを判断する。
【0036】
図6は、判断処理を示したフローチャートである。判断処理は、例えば、エスカレータが停止状態(待機状態を含む)から運行状態へ移行することにより開始される。判断処理が開始されると、先ず、判断処理部24は、降り場101に混雑が生じているか否かを判断する時点Tjにおいて、その時点Tjでの第1経過時間T1及び第2経過時間T2をそれぞれ第1取得処理部21及び第2取得処理部22から取得する(
図6のステップS11)。
【0037】
その後、判断処理部24は、第1経過時間T1が所定時間Ts以上であるか否かを判断し(
図6のステップS12)、「所定時間Ts以上である(Yes)」と判断した場合には、更に第2経過時間T2も所定時間Ts以上であるか否かを判断する(
図6のステップS13)。そして、判断処理部24は、ステップS13にて「所定時間Ts以上である(Yes)」と判断した場合、この判断を以て、降り場101に混雑が生じていると判断する。一方、判断処理部24は、ステップS12又はS13にて「所定時間Ts以上でない(No)」と判断した場合、ステップS15へ移行する。
【0038】
ステップS15では、判断処理部24は、判断処理を終了すべきか否かを判断する。そして、判断処理部24は、ステップS15にて「終了すべき(Yes)」と判断できるまで、ステップS11からの処理(降り場101に混雑が生じているか否かの判断)を繰り返し実行する。その過程で、例えばエスカレータが運行状態から停止状態へ移行した場合、判断処理部24は、ステップS15にて「終了すべき(Yes)」と判断して判断処理を終了する。
【0039】
降り場101において、進行方向Dgにおける前後に位置する2つの地点(第1地点P1及び第2地点P2)の何れか一方にだけ人が立ち止まっている場合には、混雑とは関係なく人が単に立ち止まっているだけである可能性が高い。一方、上記2つの地点の何れにも人が立ち止まっている場合には、降り場101に生じた混雑が原因で人が立ち止まっている可能性が高い。
【0040】
そこで、ステップS12及びS13では、判断処理部24は、第1経過時間T1及び第2経過時間T2が何れも所定時間Ts以上であるか否かを判断し、何れも所定時間Ts以上であると判断したことを以て、降り場101に混雑が生じていると判断する。これにより、判断処理部24は、第1地点P1及び第2地点P2の何れにも人が立ち止まっているか否かを、2つの経過時間(第1経過時間T1及び第2経過時間T2)と所定時間Tsとの比較によって判断できる。具体的には、
図4に示されるように、降り場101に混雑が生じて第1地点P1及び第2地点P2の何れにおいてもオン状態と判断される箇所が長期に亘って連続的に現れている場合(即ち、同じ人を検出している時間が長くなっている場合)にだけ、判断処理部24は、降り場101に混雑が生じていると判断する。これにより、降り場101に生じた混雑が検知される。
【0041】
一方、
図3や
図5に示されるように、第1地点P1及び第2地点P2の少なくとも何れか一方でオン状態が断続的に現れている場合やオフ状態になっている場合(即ち、利用者が順調に降り場101を通過している場合や、第1地点P1に人が単に立ち止まっている場合)には、判断処理部24は、降り場101に混雑は生じていないと判断する。即ち、第1地点P1に人が単に立ち止まっていたとしても、混雑が誤って検知されることがない。
【0042】
このように、第1地点P1及び第2地点P2の何れにも人が立ち止まっているか否かを、2つの経過時間(第1経過時間T1及び第2経過時間T2)と所定時間Tsとの比較によって判断することにより、降り場101に生じた混雑を精度良く検知できる。
【0043】
判断処理部24は、ステップS13にて「所定時間Ts以上である(Yes)」と判断した場合(即ち、降り場101に混雑が生じていると判断した場合)、混雑に対応するための対応処理を実行し(
図6のステップS14)、その後、ステップS15へ移行する。対応処理には、エスカレータを減速させる処理や、エスカレータを減速後に停止させる処理、更には混雑を解消するための処理(例えば、降り場101にいる人に移動を促すための警告処理や報知処理)などが含まれる。更に、対応処理として、エスカレータの乗り口に規制装置を設け、この規制装置でエスカレータへの乗込みを禁止する処理を行ってもよい。このように、降り場101に生じた混雑が検知されたときに対応処理が実行されることにより、エスカレータの安全性を向上させることができる。
【0044】
[3]変形例
[3−1]第1変形例
図7は、第1変形例に係る混雑検知システム100の構成を示した概念図である。
図7に示されるように、制御装置2は、制御装置2は、第1取得処理部21及び第2取得処理部22に代えて、以下のような取得処理を行う1つの取得処理部23を含んでいてもよい。
【0045】
取得処理部23は、距離データd1から得られる第1地点P1での検出状態の時間変化と、距離データd2から得られる第2地点P2での検出状態の時間変化と、に基づいて、第1地点P1及び第2地点P2の両方で検出状態がオフ状態からオン状態へ移行した時点Tc(
図4参照)から当該オン状態のまま経過した時間を経過時間T3として取得する。即ち、取得処理部23は、第1地点P1で検出装置1(本変形例では、第1測域センサ11)が同じ人を検出し、且つ第2地点P2で検出装置1(本変形例では、第2測域センサ12)が別の同じ人を検出した状態のまま経過した時間を経過時間T3として取得する。一方、第1地点P1及び第2地点P2の少なくとも何れか一方で検出状態がオフ状態であると取得処理部23が判断した場合には、その判断時点で取得処理部23が取得する経過時間T3は、所定時間Tsより小さい時間(例えば、ゼロ)に設定される。
【0046】
判断処理部24は、取得処理部23が取得した経過時間T3を用いて、降り場101に混雑が生じているか否かを判断する。
【0047】
図8は、第1変形例での判断処理を示したフローチャートである。判断処理が開始されると、先ず、判断処理部24は、降り場101に混雑が生じているか否かを判断する時点Tjにおいて、その時点Tjでの経過時間T3を取得処理部23から取得する(
図8のステップS21)。
【0048】
その後、判断処理部24は、経過時間T3が所定時間Ts以上であるか否かを判断する(
図8のステップS22)。そして、判断処理部24は、ステップS22にて「所定時間Ts以上である(Yes)」と判断した場合、この判断を以て、降り場101に混雑が生じていると判断する。一方、判断処理部24は、ステップS22にて「所定時間Ts以上でない(No)」と判断した場合、ステップS24へ移行する。
【0049】
ステップS24では、判断処理部24は、判断処理を終了すべきか否かを判断する。そして、判断処理部24は、ステップS24にて「終了すべき(Yes)」と判断できるまで、ステップS21からの処理(降り場101に混雑が生じているか否かの判断)を繰り返し実行する。その過程で、例えばエスカレータが運行状態から停止状態へ移行した場合、判断処理部24は、ステップS24にて「終了すべき(Yes)」と判断して判断処理を終了する。
【0050】
これにより、判断処理部24は、第1地点P1及び第2地点P2の何れにも人が立ち止まっているか否かを、1つの経過時間T3と所定時間Tsとの比較によって判断できる。その結果として、降り場101に生じた混雑を精度良く検知できる。
【0051】
判断処理部24は、ステップS22にて「所定時間Ts以上である(Yes)」と判断した場合(即ち、降り場101に混雑が生じていると判断した場合)、混雑に対応するための対応処理を実行する(
図6のステップS23)。ステップS23では、
図6のステップS14で行う対応処理と同様の処理を行うことができる。これにより、エスカレータの安全性を向上させることができる。
【0052】
[3−2]第2変形例
上記混雑検知システム100は、以下のように変形することで、1つのステップに2人の利用者が乗ることが想定されたエスカレータにも適用できる。尚、以下に説明する混雑検知システム100の構成は、1つのステップに3人以上の利用者が乗ることが想定されたエスカレータにも適用できる。
【0053】
<混雑検知システムの構成>
図9は、第2変形例に係る混雑検知システム100が適用されたエスカレータの降り場101を進行方向Dgから見て示した概念図である。
図9に示されるように、第1測域センサ11は、第1地点P1において、左右2つのレーン(右側通路と左側通路)の何れをも横切るように横方向Dhに走査する。第2測域センサ12は、第2地点P2において、左右2つのレーン(右側通路と左側通路)の何れをも横切るように横方向Dhに走査する。
【0054】
そして、第1取得処理部21は、第1地点P1での横方向Dhにおいて検出装置1(本変形例では、第1測域センサ11)が同じ2人を検出した状態のまま経過した時間を第1経過時間T1として取得する。第2取得処理部22は、第2地点P2での横方向Dhにおいて検出装置1(本変形例では、第2測域センサ12)が別の同じ2人を検出した状態のまま経過した時間を第2経過時間T2として取得する。以下、具体的に説明する。
【0055】
<混雑検知システムで実行される制御処理>
(第1取得処理)
第1取得処理部21は、上記実施形態と同様、第1測域センサ11が出力する距離データd1に基づいて、第1地点P1での人の検出状態についての時間変化を得ることができる。
図10及び
図11は、降り場101の状況ごとに検出状態の時間変化を示した概念図であり、オン状態と判断された箇所がハッチングで示されている。ここで、
図10は、降り場101に混雑が生じているときの検出状態の時間変化を示す。
図11は、第1地点P1において一方のレーンに人が立ち止まっているときの検出状態の時間変化を示す。尚、
図10及び
図11には、後述する第2地点P2での人の検出状態についての時間変化も示されている。
【0056】
そして、第1取得処理部21は、検出状態の時間変化を得つつ、その時間変化に基づいて、横方向Dhにおける分離した2箇所で検出状態がオフ状態からオン状態へ移行した時点Tb1から当該オン状態のまま経過した時間を第1経過時間T1として取得する(
図10参照)。一方、横方向Dhにおける何れの箇所でも検出状態がオフ状態であると判断した場合、又は横方向Dhにおける1箇所でのみ検出状態がオン状態であると判断した場合には、その判断時点で第1取得処理部21が取得する第1経過時間T1は、所定時間Tsより小さい時間(例えば、ゼロ)に設定される。
【0057】
(第2取得処理)
第2取得処理部22は、上記実施形態と同様、第2測域センサ12が出力する距離データd2に基づいて、第2地点P2での人の検出状態についての時間変化を得ることができる(
図10及び
図11参照)。そして、第2取得処理部22は、検出状態の時間変化を得つつ、その時間変化に基づいて、横方向Dhにおける分離した2箇所で検出状態がオフ状態からオン状態へ移行した時点Tb2から当該オン状態のまま経過した時間を第2経過時間T2として取得する(
図10参照)。一方、横方向Dhにおける何れの箇所でも検出状態がオフ状態であると判断した場合、又は横方向Dhにおける1箇所でのみ検出状態がオン状態であると判断した場合には、その判断時点で第2取得処理部22が取得する第2経過時間T2は、所定時間Tsより小さい時間(例えば、ゼロ)に設定される。
【0058】
(判断処理)
判断処理部24は、
図6のフローチャートに従って、降り場101に混雑が生じているか否かを判断する。
【0059】
降り場101において、左右2つのレーン(右側通路と左側通路)のうちの何れか一方のレーンで人が立ち止まっていたとしても、残りのレーンが空いている場合には、利用者は、そのレーンを使ってエスカレータから降りることができるため、転倒などの危険に晒される可能性が低い。一方、2つのレーンの何れにおいても、進行方向Dgにおける前後に位置する2つの地点(第1地点P1及び第2地点P2)に人が立ち止まっている場合には、利用者は、エスカレータから降りることができないため、転倒などの危険に晒される可能性が高い。
【0060】
そこで、第1取得処理部21及び第2取得処理部22は、横方向Dhにおける分離した2箇所で検出状態がオン状態のまま経過した時間を第1経過時間T1及び第2経過時間T2としてそれぞれ取得し、判断処理部24は、第1経過時間T1及び第2経過時間T2が何れも所定時間Ts以上であるか否かを判断し(
図6のステップS12及びS13)、何れも所定時間Ts以上であると判断したことを以て、降り場101に混雑が生じていると判断する。これにより、判断処理部24は、2つのレーンの何れにおいても第1地点P1及び第2地点P2の両方で人が立ち止まっているか否かを、2つの経過時間(第1経過時間T1及び第2経過時間T2)と所定時間Tsとの比較によって判断できる。その結果、片側のレーンだけに人が立ち止まっている場合と区別して、降り場101に生じた混雑を精度良く検知できる。
【0061】
[3−3]第3変形例
図12は、第3変形例に係る混雑検知システム100が適用されたエスカレータの降り場101を横方向Dhから見て示した概念図である。
図12に示されるように、検出装置1は、第1測域センサ11及び第2測域センサ12に代えて、進行方向Dgに走査する1軸走査型の測域センサ13を含んでいてもよい。測域センサ13は、降り場101の上方位置(人の背丈よりも高い位置)に配置され、進行方向Dgに走査することにより、第1地点P1及び第2地点P2を通る走査経路上の複数点で距離を測定して得た距離データd3を出力する。
【0062】
本変形例では、第1取得処理部21及び第2取得処理部22は、距離データd3に基づいて、それぞれ第1地点P1及び第2地点P2での人の検出状態についての時間変化を得ることができる。そして、第1取得処理部21及び第2取得処理部22は、検出状態の時間変化を得つつ、それぞれの時間変化に基づいて第1経過時間T1及び第2経過時間T2を取得する。この場合、判断処理部24は、
図6のフローチャートに従って、降り場101に混雑が生じているか否かを判断できる。
【0063】
尚、本変形例において、制御装置2は、第1取得処理部21及び第2取得処理部22に代えて、次のような取得処理を行う1つの取得処理部23を含んでいてもよい(
図7参照)。取得処理部23は、距離データd3から、横方向Dhの位置ごとに人の高さh3(頭や肩などの高さを含む)を算出し、進行方向Dgの各位置において、当該人の高さh3が閾値hs3以上であるか否かを判断する。そして、取得処理部23は、「閾値hs3以上である(Yes)」と判断した場合、その判断を以て、人の検出状態はオン状態であると判断する。一方、取得処理部23は、「閾値hs3以上でない(No)」と判断した場合、その判断を以て、人の検出状態はオフ状態であると判断する。このとき、閾値hs3には、人の平均的な背丈に対応した値が用いられる。
【0064】
取得処理部23は、上記判断を短い周期で繰り返し実行することにより、進行方向Dgの各位置での人の検出状態についての時間変化を得ることができる。そして、取得処理部23は、検出状態の時間変化を得つつ、その時間変化に基づいて、進行方向Dgにおける前後に位置する2つの地点(第1地点P1及び第2地点P2)で検出状態がオフ状態からオン状態へ移行した時点Tcから当該オン状態のまま経過した時間を経過時間T3として取得する。この場合、判断処理部24は、
図8のフローチャートに従って、降り場101に混雑が生じているか否かを判断できる。
【0065】
[3−4]他の変形例
検出装置1は、上述した第1測域センサ11や第2測域センサ12のように1軸走査型の測域センサで人を検出する場合に限らず、人が立ち止まっているか否かの判断に使用可能な検出結果を出力できるものであれば、2軸走査型の測域センサで人を検出しもよいし、他のセンサを用いて人を検出してもよい。
【0066】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。