(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
図14は、ゲート端子に供給するゲートバイアス電圧を制御するための従来のバイアス回路の一例を示す図である。
図14中、バイアス回路100は、RF(Radio Frequency)信号を増幅するための増幅器101にゲートバイアス電圧を供給する回路であり、増幅器101に直列に接続された第1電源102と、増幅器101に直列に接続された第2電源103と、スイッチ104と、第1抵抗器105と、第2抵抗器106と、増幅器101のRF信号がバイアス回路100に入り込むのを遮断するコイル107とを備えている。
【0010】
増幅器101は、ゲート−ソース間電圧がピンチオフ電圧よりも高い電圧Vonである場合、オン状態となり、ゲート−ソース間電圧がピンチオフ電圧よりも低い電圧Voffである場合、オフ状態となる。
スイッチ104は、第1電源102と増幅器101との間に接続されており、増幅器101のオンオフ制御のための制御信号に応じて第1電源102と増幅器101との間を短絡又は開放する。
【0011】
第1電源102と増幅器101との間を短絡する場合、増幅器101には、第1電源102と、第2電源103の両方が接続されゲートバイアス電圧が供給される。このとき、供給されるゲートバイアス電圧は、増幅器101のゲート−ソース間電圧をピンチオフ電圧よりも高い電圧Vonにし得る電圧に設定されている。
【0012】
また、第1電源102と増幅器101との間を開放する場合、増幅器101には、第2電源103のみが接続されゲートバイアス電圧が供給される。このとき、供給されるゲートバイアス電圧は、ゲート−ソース間電圧をピンチオフ電圧よりも低い電圧Voffにし得る電圧に設定されている。
第1抵抗器105、及び第2抵抗器106は、両電源を保護するとともに、増幅器101に供給されるゲートバイアス電圧が適切な値となるように抵抗値が設定されている。
【0013】
スイッチ104が開放状態の場合、ゲート−ソース間電圧が電圧Voffとなり、増幅器101はオフ状態となる。
一方、スイッチ104が短絡状態の場合、ゲート−ソース間電圧が電圧Vonとなり、増幅器101はオン状態となる。
このように、バイアス回路100は、スイッチ104を切り替えることで増幅器101をオンオフ制御する。
【0014】
ここで、オンオフ制御しつつ継続的に増幅器101を動作させた場合、増幅器101の内部温度が上昇し、ゲート電流が増加する場合がある。
ゲート電流が増加すると、互いに直列に接続されている増幅器101と、抵抗器105(抵抗器106)との間で分圧が生じ、ゲート−ソース間電圧が予め設定された電圧Von,Voffに対して変動してしまうことがあった。
【0015】
ゲート−ソース間電圧に変動が生じると、スイッチ104が開放状態であっても増幅器101がオフ状態にならなかったり、スイッチ104が短絡状態の場合にはドレイン−ソース間に過大な電流が流れてしまったりし、増幅器101を適切にオンオフ制御することができないおそれが生じる。
【0016】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、増幅器を適切にオンオフ制御することができるバイアス回路を提供することを目的とする。
【0017】
[本開示の効果]
本開示に係るバイアス回路によれば、適切に増幅器をオンオフ制御することができる。
【0018】
[実施形態の説明]
まず最初に実施形態の内容を列記して説明する。
(1)一実施形態であるバイアス回路は、増幅器をオンオフ制御するためのゲートバイアス電圧を前記増幅器に供給するバイアス回路であって、前記増幅器のゲート端子に直列接続(RF信号がバイアス回路に入り込むことがないように遮断するコイルを介して)され、前記増幅器をオン状態とするための第1ゲートバイアス電圧に必要な電圧を出力する第1電源と、前記増幅器のゲート端子に直列接続(RF信号がバイアス回路に入り込むことがないように遮断するコイルを介して)され、前記増幅器をオフ状態とするための第2ゲートバイアス電圧に必要な電圧を出力する第2電源と、前記第1電源と前記増幅器との間に接続され、前記増幅器のオンオフ制御に関する制御信号に基づいて前記第1電源と前記増幅器との間を開放状態又は短絡状態のいずれかに切り替わることで、前記第1ゲートバイアス電圧又は前記第2ゲートバイアス電圧のいずれか一方を前記増幅器へ供給する切替スイッチと、前記第2電源と前記増幅器との間に接続され、抵抗値が可変とされている抵抗値可変部と、を備えている。
【0019】
(2)また、他の実施形態であるバイアス回路は、増幅器をオンオフ制御するためのゲートバイアス電圧を前記増幅器に供給するバイアス回路であって、前記増幅器のゲート端子に直列接続され、前記増幅器をオン状態とするための第1ゲートバイアス電圧に必要な電圧を出力する第1電源と、前記増幅器のゲート端子に直列接続され、前記増幅器をオフ状態とするための第2ゲートバイアス電圧に必要な電圧を出力する第2電源と、前記前記第2電源と前記増幅器との間に接続され、前記増幅器のオンオフ制御に関する制御信号に基づいて前記第2電源と前記増幅器との間を開放状態又は短絡状態のいずれかに切り替わることで、前記第1ゲートバイアス電圧又は前記第2ゲートバイアス電圧のいずれか一方を前記増幅器へ供給する切替スイッチと、前記第1電源と、前記増幅器との間に接続され、抵抗値が可変とされている抵抗値可変部と、を備えている。
【0020】
上記構成のバイアス回路によれば、抵抗値可変部の抵抗値が可変とされているので、切替スイッチが開放状態のときに増幅器のゲート電流が増加したとしても、抵抗値可変部の抵抗値を小さくすることができ、上記従来例のように電源保護のための抵抗器に起因して分圧が生じるのを抑制することができる。この結果、ゲートバイアス電圧を供給したときのゲート−ソース間電圧に変動が生じるのを抑制することができる。これにより、適切に増幅器をオンオフ制御することができる。
【0021】
(3)よって、上記バイアス回路において、前記抵抗値可変部の抵抗値は、前記切替スイッチが開放状態の場合の方が、前記切替スイッチが短絡状態の場合よりも小さくなることが好ましい。
【0022】
(4)上記バイアス回路において、前記抵抗値可変部は、前記第1電源又は前記第2電源と前記増幅器との間に接続された抵抗器と、前記制御信号に基づいて前記抵抗器の両端を短絡又は開放する断続スイッチと、を備えていることが好ましい。
【0023】
この場合、断続スイッチによって、切替スイッチが開放状態の場合と、短絡状態の場合とで、抵抗値可変部の抵抗値を異なるように切り替えることができる。
よって、切替スイッチが開放状態の場合における抵抗値可変部の抵抗値を、切替スイッチが短絡状態の場合における抵抗値可変部の抵抗値よりも小さくすることができる。つまり、切替スイッチが開放状態の場合においては、断続スイッチが抵抗器の両端を短絡することで、増幅器のゲート電流が増加したとしても、増幅器と、抵抗器との間で分圧が生じるのを抑制することができる。この結果、ゲートバイアス電圧を供給したときのゲート−ソース間電圧に変動が生じるのを抑制することができる。
【0024】
(5)また、上記バイアス回路において、前記抵抗値可変部は、前記第1電源又は前記第2電源と前記増幅器との間に接続された可変抵抗器と、前記可変抵抗器に並列に接続された抵抗器と、を備え、前記可変抵抗器は、感温抵抗器であってもよい。
この場合、増幅器の内部温度が上昇し、増幅器のゲート電流が増加したとしても、感温抵抗器の抵抗値を内部温度の上昇に応じて低下させれば、増幅器と、抵抗器との間で分圧が生じるのを抑制することができ、ゲート−ソース間電圧に変動が生じるのを抑制することができる。
【0025】
(6)上記(1)から(4)のバイアス回路において、前記制御信号に基づいて前記切替スイッチ及び前記抵抗値可変部を制御する制御部をさらに備えていてもよい。
この場合、可変抵抗器の抵抗値を適切に制御することで、ゲート−ソース間電圧に変動が生じるのを抑制することができる。
【0026】
(7)上記(5)のバイアス回路において、前記制御信号に基づいて前記切替スイッチを制御する制御部をさらに備えていてもよい。
【0027】
(8)上記バイアス回路において、前記第1電源及び前記第2電源は、オペアンプ又はデジタルアナログ変換器によって構成されていてもよい。
【0028】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0029】
〔バイアス回路の構成〕
図1は、第1実施形態に係るバイアス回路を示す回路図である。
このバイアス回路1は、移動体通信システムにおける基地局装置などの無線通信装置に用いられる回路であり、電力増幅器2を制御するための制御電圧の供給を行う。
【0030】
電力増幅器2は、無線周波数の送信信号(RF信号)が与えられ、与えられたRF信号を増幅して出力する。
【0031】
バイアス回路1は、電力増幅器2のゲート端子gに接続されており、電力増幅器2をオンオフ制御するためのゲートバイアス電圧を電力増幅器2へ供給する。
バイアス回路1は、第1電源3と、第2電源4と、切替スイッチ5とを備えている。
第1電源3は、電力増幅器2のゲート端子gに直列に接続されている。第2電源4も、第1電源3と同様、ゲート端子gに直列に接続されている。
【0032】
第1電源3は、電力増幅器2のゲート端子gから延びている線路17と、線路17の端部から分岐している第1分岐線路18とを介して電力増幅器2のゲート端子gに接続されている。
第2電源4は、電力増幅器2のゲート端子gから延びている線路17と、線路17の端部から分岐している第2分岐線路19とを介して電力増幅器2のゲート端子gに接続されている。
第1電源3及び第2電源4は、それぞれ、マイナス端子が電力増幅器2のゲート端子gに接続され、プラス端子が接地されている。
【0033】
第1電源3と電力増幅器2との接続、及び第2電源4と電力増幅器2との接続の両方で共用されている線路17には、電力増幅器2に与えられるRF信号がバイアス回路1に入り込むことがないように当該RF信号を遮断するコイル14が接続されている。
【0034】
切替スイッチ5は、第1電源3と、電力増幅器2との間に接続されている。
切替スイッチ5は、短絡状態又は開放状態のいずれかに切り替え可能に構成されている。切替スイッチ5は、短絡状態で第1電源3と、電力増幅器2との間を短絡し、開放状態で第1電源3と、電力増幅器2との間を開放する。
【0035】
切替スイッチ5が短絡状態の場合、バイアス回路1は、第1電源3及び第2電源4の両方を電力増幅器2に接続した状態で、電力増幅器2をオン状態とするための第1電圧V1をゲートバイアス電圧(第1ゲートバイアス電圧)として電力増幅器2へ供給する。
また、切替スイッチ5が開放状態の場合、バイアス回路1は、第2電源4を電力増幅器2に接続し、電力増幅器2をオフ状態とするための第2電圧V2をゲートバイアス電圧(第2ゲートバイアス電圧)として電力増幅器2へ供給する。
【0036】
よって、第1電源3は、電力増幅器2をオン状態とするための第1電圧V1を電力増幅器2へ供給するために必要な電圧(第1電圧V1に必要な電圧)を出力する。
また、第2電源4は、電力増幅器2をオン状態とするための第1電圧V1及び電力増幅器2をオフ状態とするための第2電圧V2を電力増幅器2へ供給するために必要な電圧(第2電圧V2に必要な電圧)を出力する。
【0037】
図2は、電力増幅器2における、ゲート−ソース間電圧と、ドレイン−ソース間電流との関係の一例を示すグラフである。
図2に示すように、電力増幅器2は、ドレイン−ソース間電流が0となるピンチオフ電圧よりも高いゲート−ソース間電圧の範囲でオン状態となり、ピンチオフ電圧よりも低いゲート−ソース間電圧の範囲でオフ状態となる。
電力増幅器2は、オン状態においては、与えられたRF信号を増幅し出力する一方、オフ状態においては、信号を出力せずに停止状態となる。
【0038】
本実施形態において、第1電圧V1がゲートバイアス電圧として電力増幅器2へ供給されると、電力増幅器2のゲート−ソース間電圧は、ピンチオフ電圧よりも高い電圧Vonとなる。また、第2電圧V2がゲートバイアス電圧として電力増幅器2へ供給されると、電力増幅器2のゲート−ソース間電圧は、ピンチオフ電圧よりも低い電圧Voffとなる。
【0039】
バイアス回路1は、電力増幅器2へ供給するゲートバイアス電圧を、切替スイッチ5によって、第1電圧V1及び第2電圧V2のいずれかに切り替えることで、電力増幅器2のゲート−ソース間電圧を電圧Von又は電圧Voffのいずれかに切り替え、電力増幅器2をオン状態又はオフ状態のいずれかに切り替える。
【0040】
図1に示すように、切替スイッチ5と、第1電源3とは、抵抗器等を介することなく接続されている。
一方、第2電源4と、電力増幅器2との間には、抵抗値可変部15が接続されている。
抵抗値可変部15は、第2分岐線路19に接続されており、第2抵抗器8と、第2バイパススイッチ9とを備えている。
【0041】
第2抵抗器8は、第2電源4と、電力増幅器2との間に直列に接続されている。
第2バイパススイッチ9は、第2抵抗器8の両端をバイパスするバイパス経路に接続されており、第2抵抗器8に並列に接続されている。
第2バイパススイッチ9は、短絡状態又は開放状態のいずれかに切り替え可能に構成されている。第2バイパススイッチ9は、短絡状態で第2抵抗器8の両端を短絡し、開放状態で第2抵抗器8の両端を開放する。
第2バイパススイッチ9が第2抵抗器8の両端を開放する場合、第2電源4と電力増幅器2とが第2抵抗器8を介して接続される。また、第2バイパススイッチ9が第2抵抗器8の両端を短絡する場合、第2電源4と電力増幅器2とが第2抵抗器8を介することなく接続される。
【0042】
切替スイッチ5、及び第2バイパススイッチ9は、入力端子11へ与えられる電力増幅器2のオンオフ制御に関する制御信号に基づいて短絡状態又は開閉状態のいずれかに切り替わるように構成されている。
【0043】
本実施形態のバイアス回路1が用いられる無線通信装置は、TDD方式が採用されている。TDD方式では、無線通信装置が無線信号を送信する送信時間と、他の通信装置からの無線信号を受信する受信時間とを時分割で交互に切り替える。
入力端子11に与えられる制御信号は、無線通信装置の送信時間及び受信時間を示す矩形波の信号であり、ハイレベル(Hレベル)の期間が送信時間、ローレベル(Lレベル)の期間が受信時間を示している。
【0044】
制御信号は、入力端子11から延びている信号線路12を通じて、切替スイッチ5、及び第2バイパススイッチ9に与えられる。
また、信号線路12において切替スイッチ5へ繋がる分岐点と、第2バイパススイッチ9との間には、反転器13が接続されている。よって、切替スイッチ5に対しては制御信号が与えられる一方、第2バイパススイッチ9に対しては制御信号を反転した反転信号が与えられる。
【0045】
切替スイッチ5、及び第2バイパススイッチ9は、切替スイッチ5、及び第2バイパススイッチ9それぞれに与えられる制御信号がLレベルの場合、開放状態となり、Hレベルの場合短絡状態となる。よって、LレベルからHレベルへ切り替わると開放状態から短絡状態へ切り替わり、HレベルからLレベルへ切り替わると短絡状態から開放状態へ切り替わる。
よって、制御信号が入力端子11においてLレベルの場合、切替スイッチ5は開放状態であり、第2バイパススイッチ9に対しては反転信号が与えられ、第2バイパススイッチ9は短絡状態となる。
逆に、制御信号が入力端子11においてHレベルの場合、切替スイッチ5は短絡状態であり、第2バイパススイッチ9は開放状態となる。
【0046】
このように、信号線路12及び反転器13は、切替スイッチ5、及び第2バイパススイッチ9に制御信号を与え、切替スイッチ5、及び第2バイパススイッチ9の切替動作を制御する制御部を構成している。
【0047】
〔バイアス回路の動作について〕
次に、制御信号に応じたバイアス回路1の動作について説明する。
バイアス回路1に与えられる制御信号が入力端子11においてLレベルからHレベルへ切り替わると、切替スイッチ5は開放状態から短絡状態へ切り替わり、第2バイパススイッチ9は短絡状態から開放状態へ切り替わる。
このとき、第1電源3及び第2電源4の両方を電力増幅器2に接続した状態で、第1電圧V1がゲートバイアス電圧として電力増幅器2へ供給される。
よって、制御信号がHレベルに切り替わると、バイアス回路1は、電力増幅器2をオン状態に制御する。
また、第2電源4は、第2抵抗器8を介して電力増幅器2に接続される。なお、第2抵抗器8は、電力増幅器2に供給されるゲートバイアス電圧が第1電圧V1となるように、抵抗値が設定されている。
【0048】
一方、制御信号が入力端子11においてHレベルからLレベルへ切り替わると、切替スイッチ5は短絡状態から開放状態へ切り替わり、第2バイパススイッチ9は開放状態から短絡状態へ切り替わる。すなわち、各スイッチの状態が
図1に示す状態となる。
このとき、第1電源3と、電力増幅器2との間は開放され、第2電源4と、電力増幅器2とが第2抵抗器8を介することなく接続される。この場合、電力増幅器2には、第2電圧V2が供給される。
よって、制御信号がLレベルに切り替わると、バイアス回路1は、電力増幅器2をオフ状態に制御する。
【0049】
以上のように、バイアス回路1は、制御信号がHレベル(送信時間)のときに、切替スイッチ5を短絡状態へ切り替え、電力増幅器2をオン状態にする。また、バイアス回路1は、制御信号がLレベル(受信時間)のときに、切替スイッチ5を開放状態へ切り替え、電力増幅器2をオフ状態にする。
【0050】
また、本実施形態において、切替スイッチ5が短絡状態の場合、第2電源4と、電力増幅器2との間は、第2抵抗器8を介して接続される。
また、切替スイッチ5が開放状態の場合、第2電源4と、電力増幅器2との間は、第2抵抗器8を介することなく接続される。
【0051】
つまり、抵抗値可変部15の両端の抵抗値R1は、第2バイパススイッチ9が切り替えられることにより、切替スイッチ5が開放状態の場合と、短絡状態の場合とで異なるように切り替えることができる。
このように、抵抗値可変部15は、切替スイッチ5が開放状態の場合と、短絡状態の場合とで抵抗値R1が異なっている。
【0052】
本実施形態のバイアス回路1において、切替スイッチ5が開放状態の場合の抵抗値R1は、第2抵抗器8が第2バイパススイッチ9によってバイパスされるため、切替スイッチ5が短絡状態の場合の抵抗値R1よりも小さくなるように設定されている。
【0053】
これにより、切替スイッチ5が開放状態の場合においては、第2抵抗器8が第2バイパススイッチ9(断続スイッチ)によってバイパスされるので、電力増幅器2の内部温度が上昇し、電力増幅器2のゲート電流が増加したとしても、電力増幅器2と第2抵抗器8との間で分圧が生じるのを抑制することができる。よって、ゲートバイアス電圧を供給したときのゲート−ソース間電圧である電圧Voffに対して変動が生じるのを抑制することができる。
【0054】
また、同様に、切替スイッチ5が短絡状態の場合においては、第1電源3が抵抗器等を介することなく電力増幅器2に接続されるので、電力増幅器2のゲート電流が増加したとしても、上記従来例のように電力増幅器2と抵抗器との間で分圧が生じるのを抑制することができゲートバイアス電圧を供給したときのゲート−ソース間電圧である電圧Vonに対して変動が生じるのを抑制することができる。
【0055】
図3は、制御信号に基づいて電力増幅器2をオンオフ制御したときの電力増幅器2の各部の数値変化の一例を示した図である。
図3中、横軸は時間であり、各線図はそれぞれ横軸方向に対応付けて示している。
図3中、線
図L1は制御信号の電圧変化を示している。線
図L2はバイアス回路1によるゲートバイアス電圧の変化、線
図L3は理想的なゲート電流の絶対値|Ig|の変化、線
図L4は理想的なゲート−ソース間電圧Vgsの変化、線
図L5は理想的なドレイン−ソース間電流Idsの変化、線
図L6は電力増幅器2の内部温度の変化、線
図L7は実際のゲート電流の絶対値|Ig|の変化を示している。
【0056】
本実施形態において、制御信号は、上述したように、電圧レベルがHレベルとLレベルとで切り替わる矩形波であり、Hレベルの期間は送信時間を示し、Lレベルの期間は受信時間を示している。
ゲート端子に流れる電流であるゲート電流の絶対値|Ig|が、線
図L3に示すように制御信号の電圧変化に対応して理想的に変化する場合、ゲート−ソース間電圧Vgs及びドレイン−ソース間電流Idsは、線
図L4及び線
図L5に示すように制御信号に対応して矩形波状に理想的に変化する。
【0057】
ゲート−ソース間電圧Vgsは、線
図L4に示すように制御信号に応じて電圧Von及び電圧Voffに交互に切り替えられる。ドレイン−ソース間電流Idsは、ゲート−ソース間電圧Vgsに応じて、出力と停止を繰り返しており、電力増幅器2が、制御信号のHレベル及びLレベルに応じてオン状態と、オフ状態とに適切に切り替えられている。
【0058】
ここで、電力増幅器2は、オン状態ではドレイン−ソース間電流Idsが流れることで内部温度が上昇し、また、オフ状態では増幅を停止するので内部温度が降下する。このため、電力増幅器2の内部温度は、線
図L6に示すように、オフ状態からオン状態に切り替わると上昇し、オン状態からオフ状態に切り替わると降下する。電力増幅器2の内部温度は、制御信号の電圧変化に応じて上昇、降下を繰り返す。
【0059】
また、電力増幅器2は、内部温度が変化すると、ゲート電流Igに変化が生じる。
図4は、電力増幅器2の内部温度に対するゲート電流Igの変化を示したグラフである。
図4中、横軸はゲート−ソース間電圧Vgs、縦軸はゲート電流の絶対値|Ig|を示している。
また、線
図L11は電力増幅器2の内部温度が200℃のときの関係を示している。同様に、線
図L12は内部温度が150℃のときの関係、線
図L12は内部温度が150℃のときの関係、線
図L13は内部温度が100℃のときの関係、線
図L14は内部温度が50℃のときの関係、線
図L15は内部温度が25℃のときの関係、線
図L16は内部温度が0℃のときの関係、線
図L17は内部温度が−30℃のときの関係を示している。
【0060】
図4に示すように、電力増幅器2のゲート電流の絶対値|Ig|は、ゲート−ソース間電圧Vgsが同じ値であっても、電力増幅器2の内部温度の上昇に伴って大きくなることが判る。
【0061】
従って、
図3中の線
図L7に示すように、実際の電力増幅器2のゲート電流の絶対値|Ig|は、制御信号がLレベルからHレベルに切り替わり、切替スイッチ5が開放状態から短絡状態へ切り替わった直後から電力増幅器2の内部温度の上昇に伴って漸次増加する。
また、制御信号がHレベルからLレベルに切り替わると、実際の電力増幅器2のゲート電流の絶対値|Ig|は、Hレベルのときの増加分が内部温度の降下によって漸次減少する。
つまり、
図3に示すように、ゲート電流Igの絶対値|Ig|は、電力増幅器2の内部温度の上昇による増加分が増加と減少を繰り返すことで変動していることが判る。
【0062】
図5は、本実施形態のバイアス回路1及び従来のバイアス回路それぞれによって電力増幅器2をオンオフ制御したときのゲート−ソース間電圧Vgs及びドレイン−ソース間電流Idsの変化を示した図である。
【0063】
図5中、線
図L20は制御信号、線
図L21は実際のゲート電流の絶対値|Ig|の変化を示しており、
図3中の線
図L1及び線
図L7と同じ線図である。
線
図L22は
図14に示した従来のバイアス回路によって電力増幅器をオンオフ制御したときのゲート−ソース間電圧Vgsの変化、線
図L23は従来のバイアス回路によって電力増幅器をオンオフ制御したときのドレイン−ソース間電流Idsの変化を示している。
【0064】
従来のバイアス回路において、電力増幅器の内部温度の上昇によって、線
図L21のようにゲート電流Igの絶対値|Ig|が増加すると、直列に接続されている増幅器101と、抵抗器105(抵抗器106)との間で分圧が生じ(
図14)、ゲートバイアス電圧によって電圧Von又は電圧Voffとなるように制御されるゲート−ソース間電圧Vgsが変動してしまう。
【0065】
図5中の線
図L22に示すように、ゲート−ソース間電圧Vgsは、制御信号がLレベルからHレベルに切り替わった直後(切替スイッチ5が開放状態から短絡状態へ切り替わった直後)からゲート電流の絶対値|Ig|の増加に応じて漸次増加し、電圧Vonよりも高い値となっている。
また、制御信号がHレベルからLレベルに切り替わり、切替スイッチ5が短絡状態から開放状態へ切り替わると、ゲート−ソース間電圧Vgsは、すぐに電圧Voffに切り替わらずに、電圧Vonから電圧Voffに向かって漸次減少している。これは、制御信号がHレベルからLレベルに切り替わっても、Hレベルのときのゲート電流の絶対値|Ig|の増加分が漸次減少することに起因している。
【0066】
このように、電力増幅器101(
図14)は内部温度の上昇によってゲート電流Igの絶対値|Ig|が増加すると、従来のバイアス回路では、ゲート−ソース間電圧Vgsが電圧Von及び電圧Voffに対して変動してしまう。
より具体的には、切替スイッチ104(
図14)が開放状態に切り替えられているときに、電圧Voffよりも高いゲート−ソース間電圧Vgsが供給されたり、切替スイッチ5が短絡状態に切り替えられているときに、予め設定した電圧Vonよりも高いゲート−ソース間電圧Vgsが供給されてしまうことがある。
【0067】
この結果、
図5中の線
図L23に示すように、制御信号がLレベルの場合には、本来オフ状態に制御されるにも関わらず電力増幅器101が信号を出力してしまったり、制御信号がHレベルの場合には、過大な電流がドレイン−ソース間に流れてしまうことがあった。
【0068】
これに対して、本実施形態のバイアス回路1によれば、切替スイッチ5が開放状態である場合においては、第2抵抗器8がバイパスされるので、電力増幅器2の内部温度が上昇し、電力増幅器2のゲート電流Igが増加したとしても、電力増幅器2と第2抵抗器8との間で分圧が生じるのを抑制することができ、ゲートバイアス電圧を供給したときのゲート−ソース間電圧Vgsが増加し変動するのを抑制することができる。
【0069】
また、同様に、切替スイッチ5が短絡状態である場合においては、第1電源3が抵抗器等を介することなく電力増幅器2に接続されるので、電力増幅器2の内部温度が上昇し、電力増幅器2のゲート電流Igが増加したとしても、上記従来例のように電力増幅器2と抵抗器との間で分圧が生じるのを抑制することができ、ゲートバイアス電圧を供給したときのゲート−ソース間電圧Vgsが増加し変動するのを抑制することができる。
【0070】
つまり、本実施形態のバイアス回路1は、抵抗値可変部15の両端の抵抗値R1が可変とされているので、切替スイッチ5が開放状態のときに電力増幅器2のゲート電流Igが増加したとしても、抵抗値R1を小さくすることができ、上記従来例のように電源保護のための抵抗器に起因して分圧が生じるのを抑制することができる。この結果、ゲートバイアス電圧を供給したときのゲート−ソース間電圧Vgsに変動が生じるのを抑制でき、ゲート−ソース間電圧Vgsを電圧Voffに近い値に設定することができる。
【0071】
一方、切替スイッチ5が短絡状態である場合、第1電源3が電力増幅器2に接続されるとともに第2電源4が第2抵抗器8を介して電力増幅器2に接続されることになる。このとき、第2抵抗器8の抵抗値は、ゲート−ソース間電圧Vgsが電圧Vonになるように適切に設定される。
【0072】
このため、本実施形態のゲート−ソース間電圧Vgs及びドレイン−ソース間電流Idsは、
図5中の線
図L24及び線
図L25に示すように、制御信号に対応してほぼ矩形波状に変化する。つまり、電力増幅器2は、制御信号のHレベル及びLレベルに応じてオン状態と、オフ状態とに適切に切り替えられている。
このように、本実施形態のバイアス回路1によれば、適切に電力増幅器2をオンオフ制御することができる。
【0073】
〔他の実施形態について〕
図6は、第2実施形態に係るバイアス回路1を示す回路図である。
本実施形態は、切替スイッチ5が第2電源4と、電力増幅器2との間に接続されている点、及び抵抗値可変部16が第1電源3と、電力増幅器2との間に接続されている点において第1実施形態と相違している。
【0074】
図6に示すように、切替スイッチ5と、第2電源4とは、抵抗器等を介することなく接続されている。
一方、第1電源3と、電力増幅器2との間には、抵抗値可変部16が接続されている。
抵抗値可変部16は、第1分岐線路18に接続されており、第1抵抗器6と、第1バイパススイッチ7とを備えている。
【0075】
第1抵抗器6は、第1電源3と、電力増幅器2との間に直列に接続されている。
第1バイパススイッチ7は、第1抵抗器6の両端をバイパスするバイパス経路に接続されており、第1抵抗器6に並列に接続されている。
第1バイパススイッチ7は、短絡状態又は開放状態のいずれかに切り替え可能に構成されている。第1バイパススイッチ7は、短絡状態で第1抵抗器6の両端を短絡し、開放状態で第1抵抗器6の両端を開放する。
第1バイパススイッチ7が第1抵抗器6の両端を開放する場合、第1電源3と電力増幅器2とが第1抵抗器6を介して接続される。また、第1バイパススイッチ7が第1抵抗器6の両端を短絡する場合、第1電源3と電力増幅器2とが第1抵抗器6を介することなく接続される。
【0076】
第1バイパススイッチ7は、切替スイッチ5や第2バイパススイッチ9と同様、当該第1バイパススイッチ7に与えられる制御信号がLレベルの場合、開放状態となり、Hレベルの場合短絡状態となる。
反転器13は、信号線路12において抵抗値可変部16(第1バイパススイッチ7)へ繋がる分岐点と、切替スイッチ5との間に接続されている。これにより、抵抗値可変部16に対しては制御信号が与えられる一方、切替スイッチ5に対しては制御信号を反転した反転信号が与えられる。
【0077】
よって、本実施形態のバイアス回路1に与えられる制御信号が入力端子11においてHレベルからLレベルへ切り替わると、切替スイッチ5は開放状態から短絡状態へ切り替わり、第1バイパススイッチ7は短絡状態から開放状態へ切り替わる。すなわち、各スイッチの状態が
図6に示す状態となる。
このとき、第1電源3及び第2電源4の両方を電力増幅器2に接続した状態で、第2電圧V2がゲートバイアス電圧として電力増幅器2へ供給される。よって、バイアス回路1は、電力増幅器2をオフ状態に制御する。
また、第1電源3は、第1抵抗器6を介して電力増幅器2に接続される。なお、第1抵抗器6は、電力増幅器2に供給されるゲートバイアス電圧が第2電圧V2となるように、抵抗値が設定されている。
【0078】
一方、制御信号が入力端子11においてLレベルからHレベルへ切り替わると、切替スイッチ5は短絡状態から開放状態へ切り替わり、第1バイパススイッチ7は開放状態から短絡状態へ切り替わる。
このとき、第2電源4と、電力増幅器2との間は開放され、第1電源3と、電力増幅器2とが第1抵抗器6を介することなく接続される。この場合、電力増幅器2には、第1電圧V1が供給される。よって、バイアス回路1は、電力増幅器2をオン状態に制御する。
【0079】
よって、本実施形態において、第1電源3は、電力増幅器2をオン状態とするための第1電圧V1及び電力増幅器2をオフ状態とするための第2電圧V2を電力増幅器2へ供給するために必要な電圧(第1電圧V1に必要な電圧)を出力する。
また、第2電源4は、電力増幅器2をオフ状態とするための第2電圧V2を電力増幅器2へ供給するために必要な電圧(第2電圧V2に必要な電圧)を出力する。
【0080】
本実施形態のバイアス回路1において、抵抗値可変部16の両端の抵抗値R2は、第1バイパススイッチ7が切り替えられることにより、切替スイッチ5が開放状態の場合と、短絡状態の場合とで異なるように切り替えることができる。
【0081】
このように、抵抗値可変部16は、切替スイッチ5が開放状態の場合と、短絡状態の場合とで抵抗値R2が異なっている。
本実施形態のバイアス回路1において、切替スイッチ5が開放状態の場合の抵抗値R2は、第1抵抗器6が第1バイパススイッチ7(断続スイッチ)によってバイパスされるため、切替スイッチ5が短絡状態の場合の抵抗値R2よりも小さくなるように設定されている。
【0082】
本実施形態のバイアス回路1においても、抵抗値可変部16の両端の抵抗値R2が可変とされているので、切替スイッチ5が開放状態である場合に電力増幅器2のゲート電流Igが増加したとしても、抵抗値R2を小さくすることができ、上記従来例のように電源保護のための抵抗器に起因して分圧が生じるのを抑制することができる。この結果、ゲートバイアス電圧を供給したときのゲート−ソース間電圧Vgsに変動が生じるのを抑制することができ、適切に電力増幅器2をオンオフ制御することができる。
【0083】
図7は、第3実施形態に係るバイアス回路1を示す回路図である。
第3実施形態に係るバイアス回路1は、第2電源4に代えてオペアンプ20が切替スイッチ5に接続されている点において第2実施形態と相違している。その他の点については第2実施形態と同様である。
本実施形態において、オペアンプ20は、第2実施形態における第2電源4と同様の電圧を出力するように設定されている。
【0084】
これら構成においても、第2実施形態と同様、適切に電力増幅器2をオンオフ制御することができる。
【0085】
図8は、第4実施形態に係るバイアス回路1を示す回路図である。
第4実施形態に係るバイアス回路1は、第1電源3に代えてオペアンプ21が切替スイッチ5に接続されている点において第1実施形態と相違している。その他の点については第1実施形態と同様である。
本実施形態において、オペアンプ21は、第1実施形態における第1電源と同様の電圧を出力するように設定されている。
【0086】
これら構成においても、第1実施形態と同様、適切に電力増幅器2をオンオフ制御することができる。
なお、第3実施形態及び第4実施形態において用いたオペアンプ20、21は、一定の電圧を出力することができればよく、例えば、デジタルアナログコンバータを用いてもよい。
【0087】
図9は、第5実施形態に係るバイアス回路1を示す回路図である。
第5実施形態は、第1実施形態のバイアス回路1における切替スイッチ5と第1電源3との間に、第2実施形態において示した抵抗値可変部16を接続した点において第1実施形態と相違している。その他の点については、第1実施形態と同様である。
【0088】
抵抗値可変部16の第1バイパススイッチ7には、入力端子11に与えられる制御信号が反転されることなくそのまま与えられる。よって、第1バイパススイッチ7は、切替スイッチ5が短絡状態であれば短絡状態となり、切替スイッチ5が開放状態であれば開放状態となる。
【0089】
本実施形態において、切替スイッチ5が短絡状態であれば第1バイパススイッチ7も短絡状態となるため、第1電源3による電圧が電力増幅器2へ供給される場合、第1抵抗器6は常にバイパスされることになる。
この場合、抵抗値可変部16の第1抵抗器6は、何らかの原因によって第1電源3に大きな電流が流れるような事態が生じたときに第1電源3を保護するための保護用の抵抗器として機能させることができる。
【0090】
この構成においても、第1実施形態と同様、適切に電力増幅器2をオンオフ制御することができる。
なお、本実施形態では、切替スイッチ5と、第1電源3との間に第1抵抗器6と、第1バイパススイッチ7とを接続した場合を示したが、第1バイパススイッチ7を省略し、第1抵抗器6及び第1抵抗器6の両端をバイパスするバイパス経路を介して切替スイッチ5と、第1電源3とを接続する構成としてもよい。
【0091】
図10は、第6実施形態に係るバイアス回路1を示す回路図である。
第6実施形態は、第2実施形態のバイアス回路1における切替スイッチ5と第2電源4との間に、第1実施形態において示した抵抗値可変部15を接続した点において第2実施形態と相違している。その他の点については、第2実施形態と同様である。
【0092】
抵抗値可変部15の第2バイパススイッチ9には、入力端子11に与えられる制御信号が反転された反転信号が与えられる。よって、第2バイパススイッチ9は、切替スイッチ5が短絡状態であれば短絡状態となり、切替スイッチ5が開放状態であれば開放状態となる。
【0093】
本実施形態において、切替スイッチ5が短絡状態であれば第2バイパススイッチ9も短絡状態となるため、第2電源4による電圧が電力増幅器2へ供給される場合、第2抵抗器8は常にバイパスされることになる。
この場合、抵抗値可変部15の第2抵抗器8は、何らかの原因によって第2電源4に大きな電流が流れるような事態が生じたときに第2電源4を保護するための保護用の抵抗器として機能させることができる。
【0094】
この構成においても、第2実施形態と同様、適切に電力増幅器2をオンオフ制御することができる。
なお、本実施形態では、切替スイッチ5と、第2電源4との間に第2抵抗器8と、第2バイパススイッチ9とを接続した場合を示したが、第2バイパススイッチ9を省略し、第2抵抗器8及び第2抵抗器8の両端をバイパスするバイパス経路を介して切替スイッチ5と、第2電源4とを接続する構成としてもよい。
【0095】
図11は、第7実施形態に係るバイアス回路1を示す回路図である。
第7実施形態は、第5実施形態のバイアス回路1における抵抗値可変部16が第1バイパススイッチ7に代えて第1感温抵抗器25を備えるとともに、抵抗値可変部15が第2バイパススイッチ9に代えて第2感温抵抗器26を備えている点において第5実施形態と相違している。
【0096】
抵抗値可変部16は、互いに並列に接続された第2抵抗器8及び第2感温抵抗器26を含んでいる。また、抵抗値可変部15は、互いに並列に接続された第1抵抗器6及び第1感温抵抗器25を含んでいる。
【0097】
第1感温抵抗器25及び第2感温抵抗器26は、温度の上昇に応じて抵抗値が低下する特性を有している。
第1感温抵抗器25及び第2感温抵抗器26は、例えば常温における抵抗値が第1抵抗器6及び第2抵抗器8とほぼ同じであり、電力増幅器2の内部温度が上昇すると、内部温度の上昇に応じて抵抗値が低下する。
【0098】
よって、抵抗値可変部16の両端の抵抗値R2は可変とされている。また、抵抗値可変部15の両端の抵抗値R1も可変とされている。
【0099】
本実施形態によれば、電力増幅器2の内部温度が上昇し、電力増幅器2のゲート電流Igが増加したとしても、抵抗値可変部16の第2感温抵抗器26によって抵抗値R2を低下させることができるので、上記従来例のように電源保護のための抵抗器に起因して分圧が生じるのを抑制することができ、ゲート−ソース間電圧Vgsに変動が生じるのを抑制することができる。
【0100】
なお、切替スイッチ5が開放状態である場合において、電力増幅器2の内部温度が低下したときは、電力増幅器2のゲート電流Igの増加も見られなくなる。よって、電力増幅器2の内部温度が低下し第2感温抵抗器26の抵抗値が高くなったとしても、そのまま第2電源4によってゲートバイアス電圧を供給すれば、電力増幅器2を適切に制御することができる。
【0101】
また、同様に、切替スイッチ5が短絡状態である場合においては、電力増幅器2のゲート電流Igが増加したとしても、第1感温抵抗器25によって抵抗値R1を低下させることができる。これによって、電源保護のための抵抗器に起因して分圧が生じるのを抑制することができ、ゲート−ソース間電圧Vgsに変動が生じるのを抑制することができる。
【0102】
図12は、本実施形態のバイアス回路1、及び従来のバイアス回路それぞれによって電力増幅器2をオンオフ制御したときのゲート−ソース間電圧Vgs及びドレイン−ソース間電流Idsの変化を示した図である。
【0103】
図12中、線
図L31は制御信号、線
図L32は実際のゲート電流の絶対値|Ig|の変化を示しており、
図3中の線
図L1及び線
図L7と同じ線図である。
また、
図12中、実線の線
図L33は本実施形態のゲート−ソース間電圧Vgsの変化を示している。また、線
図L33に重ねて示している破線の線
図L34は理想的なゲート−ソース間電圧Vgsの変化を示している。
線
図L33を見ると、理想的な変化に対してやや歪が見られるが、制御信号に対応してほぼ矩形波状に変化することが判る。
【0104】
図12中、実線の線
図L35は本実施形態のドレイン−ソース間電流Idsの変化を示している。また、線
図L35に重ねて示している破線の線
図L36は理想的なドレイン−ソース間電流Idsの変化を示している。
ドレイン−ソース間電流Idsについても、理想的な変化に対してやや歪が見られるが、制御信号に対応してほぼ矩形波状に変化することが判る。
このように、本実施形態のバイアス回路1においても、適切に電力増幅器2をオンオフ制御することができる。
【0105】
図13は、第8実施形態に係るバイアス回路1を示す回路図である。
第8実施形態は、第5実施形態のバイアス回路1における抵抗値可変部15として第1可変抵抗器31を備えるとともに、抵抗値可変部16として第2可変抵抗器32を備えている点において第5実施形態と相違している。
【0106】
本実施形態のバイアス回路1は、さらに第1可変抵抗器31及び第2可変抵抗器32を制御するための制御部33を備えている。
制御部33は、入力端子11に与えられる制御信号を受け付け、制御信号に基づいて第1可変抵抗器31及び第2可変抵抗器32を制御する。
このように、第2可変抵抗器32及び制御部33は、第2電源4と電力増幅器2との間に接続され抵抗値が可変とされている。
【0107】
制御部33は、切替スイッチ5が開放状態である場合においては、第2可変抵抗器32の抵抗値をほぼ0にまで低下させる。これにより、電力増幅器2の内部温度が上昇し、電力増幅器2のゲート電流Igが増加したとしても、上記従来例のように電源保護のための抵抗器に起因して分圧が生じるのを抑制することができ、ゲート−ソース間電圧Vgsに変動が生じるのを抑制することができる。
【0108】
また、制御部33は、切替スイッチ5が短絡状態である場合においては、第1可変抵抗器31の抵抗値をほぼ0にまで低下させるとともに、第2可変抵抗器32の抵抗値を第2電源4を適切に保護しうる値に上昇させる。これにより、電力増幅器2の内部温度が上昇し、電力増幅器2のゲート電流Igが増加したとしても、電源保護のための抵抗器に起因して分圧が生じるのを抑制することができ、ゲート−ソース間電圧Vgsに変動が生じるのを抑制することができる。
【0109】
このように、制御部33が制御信号に基づいて、第1可変抵抗器31及び第2可変抵抗器32を適切に制御することで、ゲート−ソース間電圧Vgsに変動が生じるのを抑制することができる。
【0110】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
本実施形態では、送信信号を増幅するための電力増幅器2を制御するバイアス回路1を例示したが、受信信号を増幅する電力増幅器についても本実施形態は適用可能である。
また、本実施形態では、制御信号がHレベルの期間において電力増幅器2をオン状態に制御しLレベルの期間において電力増幅器2をオフ状態に制御する場合を示したが、制御信号がHレベルの期間において電力増幅器2をオフ状態に制御し、Lレベルの期間において電力増幅器2をオン状態に制御する場合においても、同様の構成を採用することができる。
【0111】
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。