特許第6806243号(P6806243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806243
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20201221BHJP
   F04D 17/10 20060101ALI20201221BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   F04D29/44 P
   F04D29/44 X
   F04D17/10
   F04D29/66 N
   F04D29/66 H
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-514379(P2019-514379)
(86)(22)【出願日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】JP2018015443
(87)【国際公開番号】WO2018198808
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-86556(P2017-86556)
(32)【優先日】2017年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 貴大
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−127108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 17/10
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと、
前記インペラが配され、前記インペラの回転軸方向に延在する主流路と、
前記主流路より前記インペラの径方向外側に形成された副流路と、
前記副流路と前記主流路とを連通させる上流連通路と、
前記上流連通路よりも前記インペラ側で前記副流路と前記主流路とを連通させる下流連通路と、
記副流路を周方向に離隔する複数の流路に仕切る仕切部と、
を備え
前記仕切部は、
前記下流連通路側に設けられた第1仕切部と、
前記第1仕切部に対し、前記下流連通路の流路幅よりも長い隙間を空けて前記上流連通路側に設けられた第2仕切部と、
を含み、
前記下流連通路は、前記周方向に離隔する複数の前記第1仕切部の間に開口する遠心圧縮機。
【請求項2】
前記隙間の少なくとも一部は、前記副流路のうち、前記回転軸方向の中央よりも前記下流連通路側に位置する請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記隙間の前記回転軸方向の長さは、前記副流路の前記回転軸方向の長さの40%以上である請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主流路より径方向外側に副流路が形成された遠心圧縮機に関する。本出願は、2017年4月25日に提出された日本特許出願第2017−086556号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機においては、主流路の径方向外側に副流路が形成される場合がある。主流路には、コンプレッサインペラが配される。主流路と副流路は、上流連通路および下流連通路によって連通する。流量が小さい領域では、コンプレッサインペラで圧縮された高圧の空気は、下流連通路および副流路を逆流して上流連通路から主流路に還流する。こうして、見かけ上の流量が増加するため、小流量側の作動領域が拡大する。
【0003】
特許文献1に記載された遠心圧縮機では、副流路に仕切部が設けられる。仕切部は、コンプレッサインペラの回転軸方向に延在する。仕切部は、副流路を周方向に仕切る。副流路を逆流する空気は、コンプレッサインペラの回転方向に旋回する。仕切部を設けることで、空気の旋回速度成分が抑制される。その結果、コンプレッサインペラの吸気側の圧力が上昇し、小流量側の作動領域がさらに拡大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5479021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、副流路が周方向に仕切られる場合、小流量側において騒音が生じ易くなってしまうおそれがあった。
【0006】
本開示の目的は、流量が小さい領域において、騒音を抑制することが可能な遠心圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る遠心圧縮機は、インペラと、インペラが配され、インペラの回転軸方向に延在する主流路と、主流路よりインペラの径方向外側に形成された副流路と、副流路と主流路とを連通させる上流連通路と、上流連通路よりもインペラ側で副流路と主流路とを連通させる下流連通路と、副流路を周方向に仕切る仕切部と、を備え、仕切部は、下流連通路側に設けられた第1仕切部と、第1仕切部に対し、下流連通路の流路幅よりも長い隙間を空けて上流連通路側に設けられた第2仕切部と、を含み、下流連通路は、周方向に離隔する複数の第1仕切部の間に開口する。
【0008】
隙間の少なくとも一部は、副流路のうち、回転軸方向の中央よりも下流連通路側に位置してもよい。
【0009】
隙間の回転軸方向の長さは、副流路の回転軸方向の長さの40%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、流量が小さい領域において、騒音を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】過給機の概略断面図である。
図2図1の破線部分の抽出図である。
図3】主流路の流量と副流路の流量との関係を説明するための図である。
図4】フィンとリブとの隙間の長さの影響を説明するための図である。
図5】変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、過給機Cの概略断面図である。図1に示す矢印L方向を過給機Cの左側として説明する。図1に示す矢印R方向を過給機Cの右側として説明する。過給機Cのうち、後述するコンプレッサインペラ10(インペラ)側は、遠心圧縮機として機能する。以下では、遠心圧縮機の一例として、過給機Cについて説明する。ただし、遠心圧縮機は、過給機Cに限られない。遠心圧縮機は、過給機C以外の装置に組み込まれてもよいし、単体であってもよい。
【0016】
図1に示すように、過給機Cは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング2を備える。ベアリングハウジング2の左側には、締結ボルト3によってタービンハウジング4が連結される。ベアリングハウジング2の右側には、締結ボルト5によってコンプレッサハウジング6が連結される。
【0017】
ベアリングハウジング2には、軸受孔2aが形成されている。軸受孔2aは、過給機Cの左右方向に貫通する。軸受孔2aに軸受7が設けられる。図1では、軸受7の一例としてフルフローティング軸受を示す。ただし、軸受7は、セミフローティング軸受や転がり軸受など、他のラジアル軸受であってもよい。軸受7によって、シャフト8が回転自在に軸支されている。シャフト8の左端部にはタービンインペラ9が設けられる。タービンインペラ9がタービンハウジング4内に回転自在に収容されている。また、シャフト8の右端部にはコンプレッサインペラ10が設けられる。コンプレッサインペラ10がコンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
【0018】
コンプレッサハウジング6には、ハウジング穴6aが形成される。ハウジング穴6aは、過給機Cの右側に開口する。ハウジング穴6aには取付部材11が配される。コンプレッサハウジング6および取付部材11によって主流路12が形成される。主流路12は、過給機Cの右側に開口する。主流路12は、コンプレッサインペラ10の回転軸方向(以下、単に回転軸方向と称す)に延在する。主流路12は、不図示のエアクリーナに接続される。コンプレッサインペラ10は、主流路12に配される。
【0019】
上記のように、締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6が連結された状態では、ディフューザ流路13が形成される。ディフューザ流路13は、ベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6の対向面によって形成される。ディフューザ流路13は、空気を昇圧する。ディフューザ流路13は、シャフト8の径方向内側から外側に向けて環状に形成されている。ディフューザ流路13は、上記の径方向内側において主流路12に連通している。
【0020】
また、コンプレッサハウジング6には、コンプレッサスクロール流路14が設けられている。コンプレッサスクロール流路14は、環状である。コンプレッサスクロール流路14は、例えばディフューザ流路13よりもシャフト8の径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路14は、不図示のエンジンの吸気口と連通する。コンプレッサスクロール流路14は、ディフューザ流路13にも連通している。コンプレッサインペラ10が回転すると、主流路12からコンプレッサハウジング6内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ10の翼間を流通する過程において、加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路13およびコンプレッサスクロール流路14で昇圧される。昇圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
【0021】
タービンハウジング4には、吐出口15が形成されている。吐出口15は、過給機Cの左側に開口する。吐出口15は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。また、タービンハウジング4には、流路16と、タービンスクロール流路17とが設けられている。タービンスクロール流路17は環状である。タービンスクロール流路17は、例えば流路16よりもタービンインペラ9の径方向外側に位置する。タービンスクロール流路17は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。ガス流入口は、上記の流路16にも連通している。ガス流入口からタービンスクロール流路17に導かれた排気ガスは、流路16およびタービンインペラ9の翼間を介して吐出口15に導かれる。吐出口15に導かれた排気ガスは、その流通過程においてタービンインペラ9を回転させる。
【0022】
そして、上記のタービンインペラ9の回転力は、シャフト8を介してコンプレッサインペラ10に伝達される。上記のとおりに、空気は、コンプレッサインペラ10の回転力によって昇圧されて、エンジンの吸気口に導かれる。
【0023】
図2は、図1の破線部分の抽出図である。図2に示すように、ハウジング穴6aには、隔壁部6bが形成される。隔壁部6bは、環状である。隔壁部6bは、回転軸方向に延在する。隔壁部6bは、ハウジング穴6aの内周面から径方向内側に離隔する。ハウジング穴6aの内周面および隔壁部6bの外周面は、回転軸方向に平行である。ただし、ハウジング穴6aの内周面および隔壁部6bの外周面は、回転軸方向に対して傾斜していてもよいし、互いに平行でなくともよい。
【0024】
ハウジング穴6aの底面6cには、突出部6dが形成される。突出部6dは、環状である。突出部6dは、回転軸方向に延在する。突出部6dは、ハウジング穴6aの内周面から径方向内側に離隔する。突出部6dの外周面は、回転軸方向に平行である。ただし、突出部6dの外周面は、回転軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0025】
隔壁部6bの外周面および突出部6dの外周面は面一である。ただし、隔壁部6bの外径は、突出部6dの外径より大きくてもよいし、小さくてもよい。隔壁部6bのうち、図2中、左側(突出部6d側)の端面6eと、突出部6dのうち、図2中、右側(隔壁部6b側)の端面6fとは、回転軸方向に離隔している。隔壁部6bの端面6eと、突出部6dの端面6fとの間にスリット(後述する下流連通路22)が形成される。
【0026】
ハウジング穴6aには、リブ6g(第1仕切部)が形成される。リブ6gは、隔壁部6bの周方向(コンプレッサインペラ10の回転方向)に離隔して複数配される。図2では、理解を容易とするため、リブ6gをクロスハッチングで示す。リブ6gは、ハウジング穴6aの底面6cに一体成型される。リブ6gは、底面6cから、図2中、右側(後述するフィン側)に突出する。リブ6gは、ハウジング穴6aの内周面、および、隔壁部6bの外周面にも一体成型される。すなわち、隔壁部6bは、コンプレッサハウジング6に一体成型される。隔壁部6bは、リブ6gによって、ハウジング穴6aとの間に間隙を維持した状態で保持されている。ただし、隔壁部6bは、コンプレッサハウジング6と別体で形成されて、コンプレッサハウジング6に取り付けられてもよい。
【0027】
隔壁部6bには、隔壁孔6hが形成される。隔壁孔6hは、隔壁部6bを回転軸方向に貫通する。隔壁孔6hには、大径部6k、縮径部6m、小径部6nが形成される。大径部6kは、隔壁部6bのうち、図2中、右側(突出部6dと反対側)の端面6pに開口する。大径部6kに対し、図2中、左側(突出部6d側)に縮径部6mが連続する。縮径部6mは、図2中、左側(突出部6d側)に向って、内径が小さくなる。小径部6nの内径は、大径部6kの内径より小さい。縮径部6mに対し、図2中、左側(突出部6d側)に小径部6nが連続する。ここでは、大径部6k、縮径部6m、小径部6nが形成される場合について説明した。ただし、隔壁孔6hが形成されていれば、その形状は問わない。
【0028】
コンプレッサハウジング6には、突出孔6qが形成される。突出孔6qは、突出部6dを回転軸方向に貫通する。突出孔6qは、隔壁孔6hと対向する。突出孔6qおよび隔壁孔6hには、コンプレッサインペラ10の一部が配される。突出孔6qの内周面は、コンプレッサインペラ10の外形に沿う。突出孔6qは、図2中、右側(隔壁孔6h側)ほど、内径が小さくなる。隔壁孔6hおよび突出孔6qは、上記の主流路12の一部を形成する。
【0029】
コンプレッサハウジング6のうち、図2中、右側(タービンインペラ9と反対側)の端面6rには、ハウジング穴6aが開口する。上記のように、ハウジング穴6aには、取付部材11が配される。取付部材11の本体部11aは、例えば、環状である。本体部11aは、環状に限らず、例えば、周方向の一部が切り欠かれていてもよい。
【0030】
本体部11aは、例えば、ハウジング穴6aに圧入される。こうして、取付部材11がコンプレッサハウジング6に取り付けられる。ただし、取付部材11は、ボルトなどの締結部材でコンプレッサハウジング6に取り付けられてもよい。取付部材11は、コンプレッサハウジング6に接合されてもよい。
【0031】
本体部11aには、取付孔11bが形成される。取付孔11bは、本体部11aを回転軸方向に貫通する。取付孔11bは、隔壁孔6hと回転軸方向に連続する。取付孔11bには、縮径部11cおよび平行部11dが形成される。縮径部11cは、図2中、左側(コンプレッサインペラ10側)に向って、内径が小さくなる。平行部11dは、縮径部11cよりも、図2中、左側(コンプレッサインペラ10側)に位置する。平行部11dは、回転軸方向に亘って内径が大凡一定である。取付孔11bの平行部11dの内径は、隔壁孔6hの大径部6kの内径と大凡等しい。ここでは、縮径部11c、平行部11dが形成される場合について説明した。ただし、取付孔11bが形成されていれば、その形状は問わない。
【0032】
取付部材11の端面11eには、取付孔11bが開口する。コンプレッサハウジング6の端面6rと、取付部材11の端面11eとは、例えば、面一である。ただし、コンプレッサハウジング6の端面6rは、取付部材11の端面11eよりも、図2中、左側(コンプレッサインペラ10側)に位置してもよい。すなわち、取付部材11は、ハウジング穴6aから、図2中、右側(コンプレッサインペラ10から離隔する側)に突出してもよい。また、取付部材11の端面11eは、コンプレッサハウジング6の端面6rよりも、図2中、左側(コンプレッサインペラ10側)に位置してもよい。
【0033】
取付部材11の本体部11aのうち、図2中、左側(コンプレッサインペラ10側)の端面11fは、テーパ面となっている。端面11fは、径方向内側に向うほど、図2中、左側(コンプレッサインペラ10側)に位置する。取付部材11の端面11fと、隔壁部6bの端面6pとは、回転軸方向に離隔する。端面11fのうち、径方向内側の一部は、隔壁部6bの端面6pに回転軸方向に対向する。隔壁部6bの端面6pと、取付部材11の端面11fとの間に空隙(後述する上流連通路23)が形成される。
【0034】
端面11fには、フィン20(第2仕切部)が形成される。フィン20は、本体部11aの周方向(コンプレッサインペラ10の回転方向)に離隔して複数配される。図2では、理解を容易とするため、フィン20をリブ6gよりも目の粗いクロスハッチングで示す。フィン20は、例えば、取付部材11に一体成型される。ただし、フィン20は、取付部材11と別体に形成され、取付部材11に取り付けられてもよい。
【0035】
フィン20は、内周部20aおよび外周部20bを有する。外周部20bは、内周部20aより、径方向外側に位置する。内周部20aは、外周部20bに対して径方向に連続する。内周部20aは、フィン20のうち、隔壁部6bの端面6pに面する部位である。内周部20aは、端面11fから、隔壁部6bの端面6pまで延在する。内周部20aの内周端20cは、取付部材11の平行部11dの内周面、および、隔壁部6bの大径部6kの内周面と、大凡面一である。ただし、内周部20aの内周端20cは、取付部材11の平行部11dの内周面、および、隔壁部6bの大径部6kの内周面より、径方向外側に位置してもよい。外周部20bは、内周部20aよりも、図2中、左側(コンプレッサインペラ10側)まで延在する。外周部20bは、隔壁部6bの外周面とハウジング穴6aの内周面との間隙に突出する。
【0036】
主流路12は、取付孔11b、隔壁孔6h、突出孔6qを含んで構成される。副流路21は、主流路12の径方向外側に形成される。副流路21は、突出部6dの外周面および隔壁部6bの外周面と、ハウジング穴6aの内周面との間隙を含んで構成される。副流路21は、環状に延在する。下流連通路22は、隔壁部6bの端面6eと、突出部6dの端面6fによって形成される。上流連通路23は、隔壁部6bの端面6pと、取付部材11の端面11fと、周方向に隣り合うフィン20(内周部20a)によって形成される。したがって、上流連通路23は、周方向に離隔して複数形成される。
【0037】
上流連通路23は、主流路12と副流路21とを連通させる。下流連通路22は、上流連通路23よりも、図2中、左側(コンプレッサインペラ10側、主流路12の流れ方向の下流側)で、主流路12と副流路21とを連通させる。
【0038】
リブ6gは、副流路21のうち、下流連通路22側に設けられる。下流連通路22は、周方向に離隔する複数のリブ6gの間に開口する。下流連通路22のうち、径方向外側の端部は、複数のリブ6gの間に開口する。下流連通路22は、コンプレッサインペラ10に対向する。下流連通路22のうち、径方向内側の端部は、コンプレッサハウジング6のうち、コンプレッサインペラ10に径方向に対向する内周面に開口する。
【0039】
下流連通路22は、例えば、径方向に平行に延在する。ただし、下流連通路22は、径方向に対して傾斜してもよい。下流連通路22は、径方向外側に向うにしたがって、図2中、右側(上流連通路23側)となる向きに傾斜してもよい。下流連通路22は、径方向外側に向うにしたがって、図2中、左側(上流連通路23と反対側)となる向きに傾斜してもよい。
【0040】
フィン20は、副流路21のうち、上流連通路23側に設けられる。フィン20のうち、外周部20bは、副流路21内に位置する。内周部20aは、上流連通路23に位置する。
【0041】
副流路21は、リブ6gおよびフィン20によって、周方向に仕切られる。詳細には、リブ6gおよびフィン20が配された領域では、副流路21は、周方向に離隔する複数の流路に区画される。
【0042】
フィン20は、リブ6gに対して回転軸方向に隙間Saを空けて配される。すなわち、フィン20とリブ6gは、回転軸方向に離隔している。フィン20およびリブ6gは、隙間Saを副流路21内に維持して、副流路21を周方向に仕切る。
【0043】
フィン20とリブ6gとの隙間Saは、下流連通路22の流路幅よりも長い。下流連通路22の流路幅は、例えば、回転軸方向の幅である。下流連通路22が径方向に対して傾斜していたり、径方向の位置によって幅が変化したりする場合、例えば、回転軸を含む断面において、最小となる幅を下流連通路22の流路幅とする。すなわち、隔壁部6bの端面6eと、突出部6dの端面6fとの最小距離を、下流連通路22の流路幅(流路スロート)と考えることができる。ここでは、隔壁部6bの端面6eと、突出部6dの端面6fとの距離が一定である。したがって、フィン20とリブ6gとの隙間Saは、下流連通路22の最大流路幅よりも長い。また、例えば、回転軸を含む断面において、最小流路幅となる径方向位置が周方向に異なる場合もある。この場合、径方向長さの違いを考慮した加重平均した流路幅の値を、下流連通路22の流路幅と考えてもよい。
【0044】
図3は、主流路12の流量と副流路21の流量との関係を説明するための図である。図3に示すように、主流路12の流量が多い領域では、空気は副流路21を順流する(空気は主流路12と同じ方向に流れる。空気は上流連通路23側から下流連通路22側に流れる)。主流路12の流量が多いほど、副流路21を順流する流量が多くなる。
【0045】
主流路12の流量が小さい領域では、コンプレッサインペラ10で圧縮された高圧の空気は、副流路21を逆流する(空気は主流路12の流れ方向に対して逆方向に流れる。空気は下流連通路22側から上流連通路23側に流れる)。主流路12の流量が小さいほど、副流路21を逆流する流量が多くなる。副流路21を逆流した空気は、上流連通路23から主流路12に還流する。これにより、見かけ上の流量が増加するため、小流量側の作動領域が拡大する。
【0046】
下流連通路22から副流路21に逆流する空気は、コンプレッサインペラ10の回転の影響を受け、旋回流となっている。旋回流は、コンプレッサインペラ10の回転方向と同方向の流れである。リブ6gおよびフィン20によって、副流路21が仕切られると、上流連通路23から主流路12に還流する空気の旋回速度成分が抑制される。その結果、コンプレッサインペラ10の吸気側の圧力が上昇し、小流量側の作動領域がさらに拡大する。
【0047】
下流連通路22から副流路21に逆流する空気の流量が大きくなるほど(主流路12の流量が小さくなるほど)、逆流する空気の回転軸方向の流速が高まる。その結果、逆流する空気の流量が大きくなるほど、流れ方向に対する旋回速度成分の影響が小さくなる。一方、下流連通路22から副流路21に逆流する空気の流量が小さくなるほど、逆流する空気の回転軸方向の流速が低くなる。その結果、逆流する空気の流量が小さくなるほど、流れ方向に対する旋回速度成分の影響が大きくなる。
【0048】
ここで、フィン20とリブ6gとの隙間Saを長くすると、隙間Saでは空気の旋回流が妨げられないため、空気の旋回速度成分の抑制作用が減少する。そのため、逆流する空気の流量が小さい領域では、逆流する空気は、隙間Saによって旋回速度成分がある程度残ったまま、主流路12に還流する。その結果、コンプレッサインペラ10の翼(羽根)へ流入する空気の流れ角(回転するコンプレッサインペラ10に対する空気の相対流入角度)が小さくなる。
【0049】
図4は、フィン20とリブ6gとの隙間Saの長さの影響を説明するための図である。図4において、横軸は体積流量を示す。図4において、縦軸は圧力比を示す。圧力比は、吐出される空気の圧力を、吸入される空気の圧力で除算した値である。
【0050】
図4において、実線および破線は、圧力比のピークを結んだ線である。圧力比のピークは、シャフト8の回転数を一定とした条件下において流量を変化させたときに、圧力比が最も高くなる点である。シャフト8の所定回転数ごとにプロットされた圧力比のピークが結ばれて、実線および破線となる。実線は、本実施形態の構成の場合を示す。破線は、フィン20とリブ6gの隙間Saがほとんど設けられていない比較例の構成の場合を示す。二点鎖線は、本実施形態の構成と、比較例の構成の双方における作動限界を示す。また、図4において、実線および破線は、右上に行くにしたがって、シャフト8の回転数が高い運転条件での圧力比のピークを示す。
【0051】
本実施形態では、比較例に比べて、フィン20とリブ6gの隙間Saが長い。上記のように、逆流する空気は、隙間Saによって旋回速度成分が残ったまま、主流路12に還流する。コンプレッサインペラ10の翼(羽根)へ流入する空気の流れ角が小さくなる。すなわち、コンプレッサインペラ10に沿って空気が流れ込み易い。そのため、コンプレッサインペラ10の失速が発生する流量が小さくなるか、もしくは、コンプレッサインペラ10の失速が発生せずに作動限界となる。図4に白抜き矢印で示すように、逆流する空気の流量が小さい領域において、破線の比較例より実線の本実施形態の方が、圧力比のピークが小流量側になる。遠心圧縮機の圧力流量特性から、圧力比のピークより小流量側では、圧力変動が大きく騒音が生じ易い。本実施形態では、圧力比のピークが小流量側に移動することで、安定作動領域が拡大し、騒音が抑制される。
【0052】
また、上記のように、下流連通路22から副流路21に逆流する空気の流量が多くなるほど、逆流する空気の回転軸方向の流速が高まる。逆流する空気の流れ方向に対して、旋回速度成分の影響が小さくなる。そのため、図4中、二点鎖線で示すように、作動限界は、本実施形態の構成と、比較例の構成とでほとんど差が生じない。このように、本実施形態では、比較例に対して作動限界をほとんど変えずに、騒音の抑制が可能となる。
【0053】
また、図3中、一点鎖線で示すように、主流路12の流量が同じ場合において、下流連通路22の流路幅を大きくすると、逆流する空気の流量が増加する。逆流する空気の流れ方向に対して、旋回速度成分の影響が小さくなる。このように、副流路21を逆流する空気の流量は、下流連通路22の流路幅と相関がある。本実施形態では、フィン20とリブ6gとの隙間Saは、下流連通路22の流路幅よりも長く(広く)設定される。その結果、騒音の抑制が可能となる。ここで、例えば、隙間Saが狭くなり、フィン20とリブ6gの位置が軸方向に最も近い位置にあるとする。また、説明の便宜上、設置されている周方向の角度位相が同じとする。隙間Saを通過する空気は、大きく加速される。周方向速度は、流路外径に依存するため、回転軸方向速度とともに周方向速度も加速される。この場合、逆流する空気の旋回速度成分の影響が維持され、圧力比のピークは小流量側に移動するが、作動限界は悪化する可能性がある。これに対して、逆流する空気の流れは、下流連通路22を通過した後に、フィン20とリブ6gとの隙間Saに流入する。そのため、下流連通路22の流路幅より隙間Saが広くなっていると、隙間Saの狭さに起因する周方向速度成分の増加が抑制される。その結果、安定して、作動限界を悪化させずに、圧力比のピークを小流量側に移動することが可能となる。
【0054】
また、図2に示すように、フィン20とリブ6gとの隙間Saの少なくとも一部は、副流路21のうち、回転軸方向の中央CEよりも下流連通路22側(コンプレッサインペラ10側)に位置する。ここで、副流路21の回転軸方向の一端は、例えば、底面6cであり、他端は、例えば、隔壁部6bの端面6pの径方向外側に位置する。副流路21の中央CEは、リブ6gを基準として、図2中、右側(フィン20側、取付部材11側)に位置する。そのため、下流連通路22から副流路21に流入した空気は、旋回速度成分を失う前に、隙間Saに到達し易くなる。その結果、小流量側で旋回速度成分が残り易くなり、騒音の抑制効果が向上する。なお、フィン20とリブ6gとの隙間Saの全領域が、副流路21のうち、回転軸方向の中央CEよりも上流連通路23側(取付部材11側)に位置してもよい。
【0055】
副流路21の回転軸方向の長さは、ハウジング穴6aの底面6cから、隔壁部6bの端面6pまでの回転軸方向の長さとする。このとき、フィン20とリブ6gとの隙間Saの回転軸方向の長さは、副流路21の回転軸方向の長さの40%以上である。そのため、フィン20とリブ6gとの隙間Saの回転軸方向の長さが、副流路21の回転軸方向の長さの40%未満である場合に比べ、騒音の抑制効果が向上する。
【0056】
また、上記のように、下流連通路22は、周方向に離隔する複数のリブ6gの間に開口する。リブ6gによる旋回速度成分の抑制作用が大きい。そのため、フィン20とリブ6gとの隙間Saを下流連通路22の流路幅より大きくすることで、旋回速度成分の抑制作用が減少し易い。ただし、下流連通路22は、周方向に離隔する複数のリブ6gの間に開口しなくてもよい。リブ6gは、下流連通路22より上流連通路23側にのみ形成されてもよい。
【0057】
図5は、変形例を説明するための図である。図5では、変形例における図2に対応する部位を示す。上述した実施形態では、隔壁部6bは、リブ6gを介してコンプレッサハウジング6と一体成型される場合について説明した。図5に示すように、変形例では、リブ6gが設けられていない。フィン20は、隔壁部106bの外周面に一体成型される。すなわち、隔壁部106bは、取付部材11に一体成型される。ただし、隔壁部106bは、取付部材11と別体に成型されて、取付部材11に取り付けられてもよい。
【0058】
隔壁部106bは、フィン20を介して取付部材11に取り付けられること以外は、隔壁部6bと実質的に等しい構成となっている。ここでは、隔壁部106bについて、隔壁部6bと重複する説明は省略する。
【0059】
フィン20の外周部120bは、上述した実施形態の外周部20bよりも、突出部6d側に長く延在している。
【0060】
フィン20は、下流連通路22の流路幅よりも長い隙間Sbを副流路21内に維持して、副流路21を周方向に仕切る。変形例において、隙間Sbは、フィン20の外周部120bと、ハウジング穴6aの底面6cとの間に形成される。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
例えば、上述した実施形態では、フィン20およびリブ6gの双方が設けられる場合について説明した。また、変形例では、リブ6gが設けられずに、フィン20が設けられる場合について説明した。ただし、フィン20が設けられずに、リブ6gが設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示は、主流路より径方向外側に副流路が形成された遠心圧縮機に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
C:過給機(遠心圧縮機) Sa:隙間 Sb:隙間 6g:リブ(第1仕切部) 10:コンプレッサインペラ(インペラ) 12:主流路 20:フィン(第2仕切部) 21:副流路 22:下流連通路 23:上流連通路
図1
図2
図3
図4
図5