(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可撓性のシート状フィルムを基材として、当該基材面上にコンデンサおよびコイル導体とが形成されると共に、隣接して配置された前記コンデンサとコイル導体との間において両者を接続する2本の配線が、前記基材面上に前記コンデンサとコイル導体と共に、導電性インキを用いて塗布もしくは印刷により施されることで共振回路が形成され、
前記2本の配線のうちの一方が、前記コンデンサを形成する第1電極と、渦巻状に形成されたコイル導体の一方の端部を接続する引き回し配線であり、
前記2本の配線のうちの他方が、前記コンデンサを形成する第2電極と、前記コイル導体の他方の端部を接続するバイパス線であり、
前記引き回し配線の基板面上における長さ寸法が、長方形コイル導体の長辺の長さ寸法もしくは円形状コイル導体の直径よりも大きく成形され、
かつ前記基材と前記引き回し配線との間には、水分を含んで膨張することで、もしくは水分を含んで溶解することで、前記引き回し配線を切断する配線破壊層が配置されると共に、前記フィルム基材には前記コンデンサとコイル導体および引き回し配線の配置位置を避けて多数の貫通孔が穿設され、
前記引き回し配線は、折り返し先端部において往路配線と復路配線とを接続した一本の導体配線により形成され、前記往路配線と復路配線が、前記基材面上において隣接した状態で配置されていることを特徴とするおむつ用液体検知センサ。
水分を含んで膨張もしくは溶解する前記配線破壊層が、前記引き回し配線の長手方向に沿った複数か所において、前記引き回し配線の長手方向に交差するようにして配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のおむつ用液体検知センサ。
水分を含んで膨張する前記配線破壊層にポリアクリル酸ナトリウムが用いられ、水分を含んで溶解する前記配線破壊層に低重合度のポリアクリル酸、あるいはポリビニルアルコールが用いられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のおむつ用液体検知センサ。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化の進展に伴い、おむつを必要とする被介護者が増大している。特に認知症などの発症に伴い、被介護者が介護者との間で満足な意思疎通が図れないなどの理由により、尿意を介護者に伝えられない状況も増大している。このような状況下おいては、予め定められた時刻もしくは一定時間ごとに、おむつを交換する必要がある。
しかしながら、おむつの交換直後において被介護者が失禁をする場合もあり、この状態のまま時間が経過すると排尿等による匂いが充満したり、これが重なるうちに被介護者に、いわゆるおむつかぶれを発症させる場合も生ずる。
【0003】
また、介護者にとっても、おむつを開けなれば状態を把握することができないので、失禁をしていない被介護者のおむつを開けて、また付け直すことが発生することになる。
したがって介護者に不要な労力が発生し、さらに被介護者の睡眠等を妨害することにもなる。このために、介護者がおむつを開けなくても、失禁を検知することができる失禁検知センサが提案されている。
【0004】
従来の失禁検知センサとしては、例えば特許文献1に開示されているように、コイルとコンデンサの組み合わせにより特定の周波数に対して共振特性を有する共振回路を用いたものが提案されている。
この共振回路としては、銅もしくはアルミニウムなどの金属をエッチング処理により作成したものが用いられており、前記コンデンサを形成する一対の電極間に配置された誘電体が、例えば尿を吸水したか否かを検知するように構成されている。
【0005】
すなわち、前記誘電体が尿を吸水したことによる比誘電率の増大により、共振周波数が低下するのを検知装置(リーダ)側で検知する構成が採用されている。
そして、前記した失禁検知センサは、水洗いして乾燥させることにより、再利用が可能であることを、特許文献1において特徴点として挙げている。
【0006】
また従来の失禁検知センサとして、パッシブ型のRFIDタグを用いたものが、特許文献2に開示されている。このRFIDタグにはICチップが搭載され、RFIDタグに例えば尿が付着することで、タグのアンテナコイルにおけるインダクタンスが変動するのを検知装置(リーダ)側で検知する構成が採用されている。
【0007】
加えて特許文献2には、このRFIDタグを利用して、被介護者の複数回の失禁を時間経過と共に監視できるようにするために、一度RFIDタグに浸透して付着した尿を、タグから直ちに排出できるように工夫したRFIDタグを包むパッケージの形態も開示している。
【0008】
前記した特許文献1に開示された失禁検知センサは、誘電体の水分による誘電率変化を用いるので周波数変化の安定性が悪いという技術的な課題がある。また、特許文献2に開示された失禁検知センサは、いずれも再利用が可能となるようにするため、ICチップを装着しセンサとしての単価は高価なものとなる。そのために、センサをその都度使い捨てにすることはできず、必然的に再利用せざるを得ないものとなる。
【0009】
そこで本件出願人は、昨今において注目されているプリンテッドエレクトロニクス製造技術を応用し、可撓性のフィルム上に、導電性インキを用いて塗布もしくは印刷によりコイルならびにコンデンサを含む共振回路を搭載した液体検知センサについて、先に提案をしており、これは特許文献3に開示されている。
これによると、ICチップを搭載したセンサに比較して、格段に安価な液体検知センサを提供することができ、この液体検知センサをおむつに装着することで、失禁検知センサとして好適に利用することができ、しかもその都度使い捨てとする運用形態を採用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、本件出願人が先に特許出願をした特許文献3に開示された液体検知センサは、これをおむつに装着することで、失禁による尿等の水分を受けて、印刷されたコンデンサおよびコイル導体による共振回路が壊されることに着目している。すなわち、センサの前記共振回路が動作不能になされることで、失禁の状態を検知するものである。
【0012】
しかしながら前記した共振回路は、フィルム基材上において比較的小さな面積において形成することができるので、この液体検知センサをおむつに装着した場合に、必ずしもセンサの主要部分に尿等の水分が触れるとは限らない。またおむつの濡れる場所に男女差があるなど、実用面においてセンサとしての信頼性に欠ける問題が浮上している。
【0013】
そこで、失禁の検知精度を上げるために、前記共振回路における例えばコイルの導体部分の面積を大きく形成することが考えられる。しかしこの場合には、おむつへの装着時におけるアンテナ(コイル導体部分)が曲がりなどの影響を大きく受けて共振周波数にずれが発生し、センサからの情報を取得するリーダ側の検知機能(情報の読み取り機能)が低下するという別の問題が招来されることになる。
【0014】
一方、この種の液体検知センサは、おむつに装着した場合において、違和感を覚えることのないように構成されることは極めて重要であり、おむつへの装着時において違和感を持たれるようであれば、商品としての価値は半減し普及は見込めない。
また、この種の液体検知センサは、この検知センサの基材となるフィルムシートは通気性を疎外するために、おむつに装着することにより、おむつの蒸れの発生要因となる。したがって、液体検知センサに、おむつの蒸れを防止させる工夫を施すことも実用上において重要な課題となる。
【0015】
この発明は、前記した技術的な観点、ならびに実用上において要求される前記した課題を解決するためになされたものであり、失禁の検知機能を向上させるために、広い面積をカバーすることができる引き回し配線を備えることで、センサとしての信頼性を向上させたおむつ用液体検知センサを提供しようとするものである。
また、違和感なく装着でき、LC回路による2つのディップの検出が可能であり、尿漏れを検出できることが、回路が形成された可撓性のシート状フィルムに貫通孔を形成し、しかもおむつパッドまたはおむつ内部に固定することで可能になる。
一方、おむつ用液体検知センサからの情報を取得するリーダにおいては、例えばベッド上の被介護者の存在(おむつの存在)および失禁状態か否かの検証も行うことが可能であり、介護者および被介護者の双方において、その扱いに負担の少ない液体検知装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記した課題を達成するためになされたこの発明に係るおむつ用液体検知センサの基本構成は、可撓性のシート状フィルムを基材として、当該基材面上にコンデンサおよびコイル導体とが形成されると共に、隣接して配置された前記コンデンサとコイル導体との間において両者を接続する配線が、前記基材面上に導電性インキを用いて塗布もしくは印刷により長く引き回された共振回路が形成され、かつ前記基材と前記引き回し配線との間には、水分を含んで膨張することで、もしくは水分を含んで溶解することで、前記引き回し配線を切断する配線破壊層が配置されると共に、前記フィルム基材には前記コンデンサとコイル導体および引き回し配線の配置位置を避けて多数の貫通孔が穿設される。
【0017】
そして、この発明に係るおむつ用液体検知センサのより好ましい構成によると、可撓性のシート状フィルムを基材として、当該基材面上にコンデンサおよびコイル導体とが形成されると共に、隣接して配置された前記コンデンサとコイル導体との間において両者を接続する
2本の配線が、前記基材面上に
前記コンデンサとコイル導体と共に、導電性インキを用いて塗布もしくは印刷により
施されることで共振回路が形成され、
前記2本の配線のうちの一方が、前記コンデンサを形成する第1電極と、渦巻状に形成されたコイル導体の一方の端部を接続する引き回し配線であり、前記2本の配線のうちの他方が、前記コンデンサを形成する第2電極と、前記コイル導体の他方の端部を接続するバイパス線であり、前記引き回し配線の基板面上における長さ寸法が、長方形コイル導体の長辺の長さ寸法もしくは円形状コイル導体の直径よりも大きく成形され、かつ前記基材と前記引き回し配線との間には、水分を含んで膨張することで、もしくは水分を含んで溶解することで、前記引き回し配線を切断する配線破壊層が配置されると共に、前記フィルム基材には前記コンデンサとコイル導体および引き回し配線の配置位置を避けて多数の貫通孔が穿設され
、前記引き回し配線は、折り返し先端部において往路配線と復路配線とを接続した一本の導体配線により形成され、前記往路配線と復路配線が、前記基材面上において隣接した状態で配置される。
【0018】
この場合、好ましくは前記フィルム基材における前記コンデンサ、コイル導体および引き回し配線が配置された面とは反対面に、接着層を備えた構成が採用される。
【0020】
そして、この発明に係るおむつ用液体検知センサの一つの好ましい形態においては、水分を含んで膨張もしくは溶解する前記配線破壊層が、前記引き回し配線の長手方向に沿った複数か所において、前記引き回し配線の長手方向に交差するようにして配置される。
【0021】
さらに、水分を含んで膨張する前記配線破壊層には,好ましくはポリアクリル酸ナトリウムが用いられ、水分を含んで溶解する前記配線破壊層には、好ましくは低重合度のポリアクリル酸、あるいはポリビニルアルコールが用いられる。
【0022】
そして、前記した構成のおむつ用液体検知センサが、おむつパッドあるいはおむつカバーの内部に固定され、フィルム基材は接着剤で不織布に固定され、前記引き回し配線は、おむつパッドあるいはおむつカバー内部の吸水層と接した構成とすることでセンサ付おむつが提供される。
【0023】
一方、前記した課題を達成するためになされたこの発明に係る液体検知装置の一つの好ましい形態は、おむつ用液体検知センサをおむつに取り付けた状態で、
前記おむつ用液体検知センサの状態を非接触で検知する液体検知装置、もしくは前記センサ付おむつに装着されたおむつ用液体検知センサの状態を非接触で検知する液体検知装置であって、
前記おむつ用液体検知センサと、前記おむつ用液体検知センサに対して、検知電波の周波数をスイープさせて出射する検知電波出射手段と、前記液体検知センサの共振周波数に一致した時の前記検知電波出射手段における送信側電流の変化を検知することで、前記おむつの濡れもしくは乾燥状態を判別する判別手段
とが備えられる。
【0024】
また、この発明に係る液体検知装置の他の一つの好ましい形態は、前記したおむつ用液体検知センサを第1液体検知センサとしておむつに取り付け、前記第1液体検知センサの共振周波数とは異なる共振周波数を有する共振回路を備えると共に、水分によって共振回路が破壊されない第2液体検知センサを
前記第1液体検知センサと共に前記おむつにさらに取り付けた状態で、前記第1液体検知センサ
の状態および第2液体検知センサの状態を
それぞれ非接触で検知する液体検知装置であって、
前記第1液体検知センサと、前記第2液体検知センサと、前記第1液体検知センサおよび第2液体検知センサに対して、検知電波の周波数をスイープさせて出射する検知電波出射手段と、前記第1液体検知センサおよび第2液体検知センサの共振周波数に一致した時の前記検知電波出射手段における送信側電流の変化をそれぞれ検知することで、前記おむつ
の装着者の存在および前記おむつの濡れもしくは乾燥状態を判別する判別手段
とが備えられる。
【0025】
そして、少なくとも第1液体検知センサはおむつパッドあるいはおむつの内部にあり、不織布に固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
前記したこの発明に係るおむつ用液体検知センサによると、シート状フィルム基材にコンデンサおよびコイル導体が形成され、前記コンデンサとコイル導体の両者を接続する引き回し配線が、導電性インキにより前記フィルム基材上に長く引き回された共振回路が形成される。そして、前記基材と引き回し配線との間には、水分を含んで膨張もしくは溶解する配線破壊層を配置した構成が採用される。
この構成によると、広い面積をカバーする引き回し配線を備えることができるので、共振周波数にずれを生じさせることなく、液体検知の信頼性を向上させたおむつ用液体検知センサを提供することができる。
【0027】
また、前記フィルム基材には、コンデンサとコイル導体および引き回し配線の配置位置を避けて多数の貫通孔が穿設されているので、前記貫通孔が配線破壊層に対して、おむつに含まれる水分をおむつパッドあるいはおむつの吸水層に誘導する作用とともに装着時の蒸れ防止効果をもたらすことができる。これにより広い面積をカバーする引き回し配線を備えることによりフィルム基材の面積が増大しても、装着時に違和感を覚えない液体検知センサとしての検知感度を低下させることのないおむつ用液体検知センサを提供することができる。
【0028】
一方、前記したおむつ用液体検知センサと共に利用される液体検知装置の好ましい第1の形態によれば、おむつに取り付けた液体検知センサに対して検知電波を送信する送信側の電流変化の有無によって、おむつが乾燥状態にあるか濡れ状態であるかを確実に判別することができる。
【0029】
また、液体検知装置の好ましい第2の形態によれば、液体によって引き回し配線が破壊される前記したおむつ用液体検知センサを第1液体検知センサとしておむつに取り付け、第1液体検知センサとは異なる共振周波数の共振回路を備え、水分によって共振回路が破壊されない第2液体検知センサをさらにおむつに取り付けることにより、検査対象としてのおむつの有無(被介護者がベッド上に居るか否かの判断)およびおむつが乾燥状態にあるか濡れ状態であるかを確実に判別することができる。
この場合、前記第2センサは必ずしもおむつ内部にある必要はなく、おむつパッドまたはおむつの外側にあってもよいし、またはおむつカバーなどに装着されて使いまわしとして利用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この発明に係るおむつ用液体検知センサおよび液体検知装置について、これを介護施設において利用した場合を例にして説明する。
図1に示すように、介護施設における被介護者のベッド1には、リーダ11がベッドごとに個別に設置され、このリーダ11から伸びるアンテナ12が、例えばベッド1とベッド上の敷き布団との間、もしくはベッド1の裏面側に取り付けられる。
【0032】
図2に示すようにベッド1上の被介護者2にはおむつ3が装着され、このおむつ3内にはおむつ用液体検知センサ21(以下、単に検知センサとも言う。)が収容されている。
この検知センサ21には、後で詳細に説明するが、コンデンサC1およびコイルL1とにより形成された共振回路が搭載されている。そして、この共振回路が前記リーダ11に接続されたアンテナ12から出射される検知電波に応答するか否かにより、被介護者2のおむつ3の状態、すなわち乾燥状態かもしくは濡れた状態かを前記リーダ11において検知するように作用する。
【0033】
前記リーダ11において、被介護者2のおむつ3が濡れた状態であることを検知した場合には、
図1に示すように前記リーダ11より、介護施設の監視センターに設置されたホストコンピュータ5に対して、例えば無線LANを利用してその情報がベッドのアドレスコードと共に伝送される。なお
図1に示す符号6は、監視センター側に設置された無線LANの送受信装置を示している。
また、ホストコンピュータ5は、設定されたプログラムにしたがって、介護者7が所持する携帯型受信装置8に対して、無線LANの送受信装置6を利用して情報を伝達するように動作する。
【0034】
図3は、おむつ用検知センサ21とリーダ11とを含む失禁検知装置16の全体構成を示したブロック図である。
被介護者に装着されたおむつ3内には、前記した検知センサ21が装着されており、被介護者のベッドには前記したとおり、リーダ11に接続されたアンテナ12が配置されている。なお、リーダ11には前記アンテナ12に対して検知電波を送信するための検知電波送信装置13と、検知電波送信装置13に接続された判別装置14とが備えられている。前記判別装置14は検知電波送信装置13における送信側電流の変化を検知することでおむつ3に装着された検知センサ21の状態を判別するものであり、その詳細な説明は後述する。
【0035】
図4および
図5は、この発明に利用されるおむつ用液体検知センサ21の第1の例を説明するものである。
このおむつ用液体検知センサ21は、可撓性のシート状フィルムを基材として、当該基材上に導電性インキを用いて、コンデンサC1とコイルL1、およびその両者を接続して共振回路を形成する引き回し配線とが形成される。
またこの実施の形態においては、導体を形成する導電性インキと共に、コンデンサC1には誘電体、また引き回し配線に交差するようにして水分を含んで膨張することで、もしくは水分を含んで溶解することで、引き回し配線を切断する配線破壊層が成膜される。
【0036】
そして前記した導電性インキ、誘電体層、配線破壊層の成膜材料は適当な溶剤に溶かすことにより、またゲル化させるなどで液体状にすることにより、塗布法やスクリーン印刷もしくはインクジェットなどの印刷手法を利用して、基材上に任意の形状に成膜することができる。
また異種の材料を積層して構成することができるので、これから説明するLC共振回路以外に、各種のデバイスを平面的にまたは厚さ方向に形成することも可能となる。
【0037】
図4(A)は、フィルム基材22上に、導電性インキを用いてコンデンサC1の第1電極(下部電極)23を印刷により成膜した例を示している。この例においてはコンデンサC1の下部電極23は櫛歯状に形成されている。そして櫛歯状の下部電極23を接続する導体が、フィルム基材22の中央方向に向かって伸ばされており、その導体端部23aが後述する引き回し配線に接続される。
また前記第1電極(下部電極)23の成膜と同時に、バイパス線24も導電性インキによって印刷により成膜される。このバイパス線24はコンデンサC1の後述する上部電極とコイルL1の内側端部を接続する機能を果たす。
【0038】
図4(B)は、前記したコンデンサC1の第1電極(下部電極)23の上に重ねて印刷されるコンデンサC1の誘電体層25および配線破壊層26等のパターンを示すものである。なお
図4(B)においては図面が繁雑になるために、先に印刷したコンデンサC1の下部電極23およびバイパス線24は、図示を省略している。
【0039】
水分を含んで膨張もしくは溶解する配線破壊層26は、それぞれ短冊状に成膜されてフィルム基材22の上半部における広い面積を占めるようにして矩形状に配列されている。
これらの短冊状に成膜された各配線破壊層26は、この配線破壊層26の上に重ねて成膜される後述する引き回し配線と交差するように配置される。
また絶縁層27が、前記したバイパス線24の一部を覆うようにして成膜される。この絶縁層27は前記バイパス線24と、後述するコイル導体とが短絡するのを防止する機能を果たす。
なお、前記した誘電体層25と配線破壊層26および絶縁層27は、同一材料を1回の印刷で形成しても良く、また別の材料を2回以上に別けて印刷しても良い。
【0040】
図4(C)は、前記した誘電体層25の上面に成膜されるコンデンサC1の第2電極(上部電極)28、この上部電極28に前記したバイパス線24を介して接続される渦巻状のコイル導体29、および前記コイル導体29に直列に接続されて、短冊状に配列された前記配線破壊層26を横切るようにして、その上面に成膜される引き回し配線30のパターンを示している。
【0041】
図4(C)に示したコンデンサC1の第2電極(上部電極)28、渦巻状のコイル導体29、引き回し配線30のパターンを、導電性インキの印刷により成膜することで、前記した下部電極23と上部電極28との間に誘電体層25が挿入されてコンデンサC1が形成される。さらにコンデンサC1と前記コイル導体29とは引き回し配線30により接続されて直列共振回路が形成される。これにより、
図5に透視図で示した構成のおむつ用液体検知センサ21を得ることができる。
【0042】
図5に示したように、この液体検知センサ21においては、前記引き回し配線30は、矩形状に形成されたループと、このループを前記コンデンサC1とコイルL1に接続する互いに平行に配列された接続線30a,30bより構成している。
そして、前記引き回し配線30の基材22面上における長さ寸法、すなわち
図5に示す例においては、前記引き回し配線30の矩形状に形成されたループと、接続線30a,30bを含む引き回し配線30の全体の長さ寸法は、長方形状のコイル導体29の長辺の長さ寸法よりも大きく成形される。なお
図5に示したコイル導体29はほぼ正方形に形成されており、この場合においては、前記したコイル導体29の長辺の長さ寸法は、正方形の一辺の長さ寸法ということになる。
【0043】
このように、引き回し配線30の長さ寸法を大きくとることで、実質的に液体検知面積を拡大することができ、これによりおむつ用液体検知センサとしての検知範囲が広がることになる。それ故、おむつ用液体検知センサとしての信頼性の向上に寄与することができる。しかも、引き回し配線30の長さは、後述する共振回路のQ値の低下に多少の影響を与えるものの、共振周波数の変化に影響を与えるものではない。
なお、
図5に示したコイル導体29は、前記したとおりほぼ正方形に形成されているが、このコイル導体29の外形形状は、例えば円形状に形成することもできる。この場合には、引き回し配線の長さ寸法は、円形状コイル導体の直径よりも大きく成形されることが望ましい。
【0044】
前記したコンデンサC1とコイルL1を接続する引き回し配線30を備えた検知センサ21は、フィルム基材22と引き回し配線30との間に、配線破壊層26が引き回し配線30と交差するようにして成膜されている。
そして好ましい1つの形態においては、前記配線破壊層26として、水分を含んで膨張する膨張材料層が利用される。この膨張材料層を用いた検知センサ21によると、検知センサ21に水分が侵入した場合には、配線破壊層26としての膨張材料層は水分を含んで膨張し、この膨張作用により配線破壊層(膨張材料層)26に重ねて成膜された前記引き回し配線30を切断するように作用する。
【0045】
また、好ましい他の1つの形態においては、前記配線破壊層26として、水分を含んで溶解する溶解材料層が利用される。この溶解材料層を用いた検知センサ21によると、検知センサ21に水分が侵入した場合には、配線破壊層26としての溶解材料層は水分を含んで溶解する。これにより配線破壊層(溶解材料層)26に重ねて成膜された前記引き回し配線30は、溶解材料層の溶解により効果的に切断される。
前記した水分により膨張もしくは溶解する配線破壊層26を利用することにより、検知センサ21のLC共振回路は機能を停止して、前記したリーダ11から投射される検知電波には反応しなくなる。
なお、ここではすべてを印刷で作製した例を示しているが、コイルとコンデンサは従来のアルミのエッチングなどの手法を用いて作製し、引き回し部分の壊れる構造を印刷で作製してもよい。
【0046】
前記した液体検知センサ21を構成するフィルム基材22としては、好ましくは25〜50μmの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)が用いられている。このPETは導電性インキの密着性に優れ、低コストで入手し易く、さらに比較的成形性が良好であるという理由で好適に利用することができる。
また、前記導電性インキとしては、低温で導電性を有する銀ペースト、銀銅ナノペースト等が用いられる。
【0047】
また、この実施の形態においては、コンデンサC1を構成する誘電体層25と配線破壊層26および絶縁層27とは、同一の素材を利用することができ、これらに前記した膨張材料を利用する場合には、例えばポリアクリル酸ナトリウムを好適に用いることができる。このポリアクリル酸ナトリウムを用いた高吸水性ポリマーによると、吸水により自重の数十倍に膨張する性質を有しており、したがって吸水により、導電性インキで成膜された前記引き回し配線30を確実に破断し、LC共振回路の機能を停止させることができる。
【0048】
また、配線破壊層26に前記した溶解材料を利用する場合には、低重合のポリアクリル酸、例えば分子量5000、あるいは25000 のポリアクリル酸、またはPVA(ポリビニルアルコール)、でんぷんなども利用することができる。これらは、水に溶けやすく、したがって吸水により、導電性インキで成膜された引き回し配線30を確実に破断し、LC共振回路の機能を停止させることができる。
【0049】
なおこの実施の形態においては、
図4に(A)〜(C)で示した各層の成膜工程の終了後に、
図5に示したように前記コンデンサC1とコイルL1および引き回し配線30の配置位置を避けて、フィルム基材22に多数の貫通孔32が穿設される。そして、前記フィルム基材22における前記コンデンサC1、コイルL1および引き回し配線30が配置された表面とは反対側の裏面に、接着層が塗布されてこの接着層を覆う図示せぬ剥離紙が貼着されて、おむつ用液体検知センサ21として提供される。
そして、おむつ用液体検知センサ21は、おむつパッドあるいはおむつの不織布に固定される(
図7)。
【0050】
前記フィルム基材22に穿設された多数の貫通孔32は排尿による水分の通り道になり、おむつ内部の吸水層に引き渡すとともに、その水分で回路が破壊される。また、通常の装着時には湿度の通り道になり装着時の蒸れが防止される。これにより広い面積をカバーする引き回し配線30を備えることによりフィルム基材22の面積が増大しても、液体検知センサとしての検知感度を低下させることのないおむつ用液体検知センサを提供することができる。
フィルム基材22に穿設される多数の貫通孔32については、
図5に示す例においてはほぼ同一径のものを規則的に配列しているが、これら貫通孔32の大きさは任意になされ、不規則に配列されていても、その作用は同様である。
なお、前記フィルム基材22の裏面に備えられた前記接着層については、
図7に示す断面図に基づいて後で説明する。
【0051】
図6は、この発明に利用されるおむつ用液体検知センサ21の第2の例を透視図で示している。この液体検知センサ21においても、その成膜順序は
図4に示した例と同様であるが、
図6に示す例はコンデンサC1およびコイルL1を接続する引き回し配線として、折り返し先端部30eにおいて往路配線30cと復路配線30dを形成する一本の導体配線により形成されている。そして、前記往路配線30cと復路配線30dが、前記基材22面上において互いに平行に隣接した状態で配置されている。
【0052】
このように往路配線30cと復路配線30dを互いに平行に隣接(近接)させた状態で配置させると、同一か所で行き返り2本のいずれかで断線すればよいので、検出能力がより向上する。このような引き回し配線の配列形態を採用することで、リーダ11側における検知能力を高い状態に保つことができる。
この
図6に示す例においては、前記往路配線30cと復路配線30dはL字状に形成されて、配線破壊層26の上面に沿って成膜されている。しかし、このような形状は失禁でおむつの濡れやすい部分に配置するようにデザインすればよい。
そして、
図6に示す例においても往路配線30cと復路配線30dによる引き回し配線の長さ寸法は、長方形状のコイル導体29の長辺の長さ寸法よりも大きく成形されている。
【0053】
このように、引き回し配線30の長さ寸法を大きくとることで、
図5に示した例と同様に実質的に液体検知面積が拡大され、液体検知センサとしての信頼性の向上に寄与することができる。
また、前記フィルム基材22における前記コンデンサC1、コイルL1および引き回し配線(30c,30d,30e)が配置された表面とは反対面の裏面に、接着層が形成されている点についても
図5に示した例と同様である。
さらに、前記コンデンサC1、コイルL1および引き回し配線30の配置位置を避けて、フィルム基材22に多数の貫通孔32が穿設されている点についても
図5に示した例と同様である。
なお、
図5および
図6に示したおむつ用液体検知センサにおいては、図には示されていないが、前記基材22とコイルL1を形成する渦巻き状導体29との間にも、配線破壊層26を成膜することで、コイルL1の形成領域にも液体検知面積を拡大させることができる。
【0054】
図7は、
図5および
図6に示したおむつ用液体検知センサ21を、おむつに内装させた一例を模式図(断面図)で示している。
この例に示すおむつ3は、防水シート41を外側にして、その内側に不織布42が配置されて、おむつカバーが形成されている。そして、おむつカバーの不織布42の内側に、比較的厚手の吸水層43が配置され、吸水層43の内側が装着者(被介護者)の腰回りに接する不織布44が重ねられており、吸水層43と不織布44によりおむつパッドが構成されている。
【0055】
図7に示す例においては、引き回し配線30等が成膜されたフィルム基材22の裏面に、前記した接着層33が形成されており、この接着層33を利用しておむつパッドの内側の不織布44と、吸水層43との間に検知センサ21が取り付けられる。
おむつ3に対する検知センサ21の前記した配置構成により、被介護者の失禁による排尿は、おむつ3の内側の不織布44から検知センサ21のフィルム基材22に施された貫通孔32等を介して、吸水層43側に吸収される。この時、検知センサ21に施された前記した配線破壊層26は水分を吸収し、すでに説明した作用により前記引き回し配線30は破壊される。
【0056】
図8は、
図7に示したようにおむつ3に装着された検知センサ21を利用して、リーダ11側において得られる検知センサの検知機能を説明するものである。
前記検知センサ21に形成されたLC共振回路は、例えば11MHz付近に共振特性を持たせたものが利用される。そして、
図3に示したリーダ11の検知電波送信装置13は、13.56MHzを中心にして±数MHzの範囲で周波数がスイープする検知電波をアンテナ12に供給する。
したがって、ベッド1上の被介護者2のおむつ3に装着された検知センサ21は、ベッド1に敷設された前記アンテナ12より、周波数がスイープする電磁波を受けることになる。
【0057】
図8に示すグラフにおいては、周波数がスイープする電磁波による交流磁界の周波数fGと、この時の検知電波送信装置13からアンテナ12に供給される供給電流IGとの関係が示されている。なお
図8における横軸は時間tを示している。
交流磁界の周波数fGがスイープし、検知センサ21のLC共振回路の共振周波数fR1に一致した場合(fG1=fR1)には、検知センサ21のLC共振回路が共鳴振動を発生する。これにより、アンテナ12は磁場に必要なエネルギーを供給するように作用し、アンテナ12への供給電流IGが増大する。
この状態は、リーダ11の検知電波送信装置13側における発振コイルの電圧の減少(dip)として捕らえることができ、
図3に示す判別装置14において、このdipを検知することができる。
【0058】
したがって、
図8に示すように前記dipが検出される場合においては、検知センサ21のLC共振回路は動作していることが確認され、これはベッド1上の被介護者2のおむつ3は、乾燥状態であると判断することができる。
また、被介護者2のおむつ3が濡れた状態においては、前記した引き回し配線30の少なくとも一部が破壊されて、LC共振回路は動作不能となるために、前記dipは検出されず、これにより被介護者2は失禁の状態であると判断することができる。
リーダ11が前記dipを検知しない場合には、
図1に示したとおりリーダ11より、介護施設のホストコンピュータ5に対して、例えば無線LANを利用してその情報がベッドのアドレスコードと共に伝送される。
【0059】
ところで、
図8に基づいて説明した第1の実施の形態においては、被介護者2がベッド1から離れた場合などにおいては、前記dipを検出することはできず、したがって被介護者2のおむつ3が濡れているのか、被介護者2がベッド1から離れているのかを判別することができない。
そこで、第2の実施の形態においては、水分によって一部が壊れる前記した検知センサを第1検知センサとして利用すると共に、第1検知センサの共振周波数とは異なる共振周波数を有し、水分によって共振回路が破壊されない第2検知センサを備えた液体検知装置が提供される。
【0060】
すなわち、前記第1検知センサと第2検知センサとは、共におむつ3に装着されて、リーダ11は、それぞれの検知センサの共振周波数の有無を検知するように構成される。
この場合、前記第1検知センサと第2検知センサとは、1つのフィルム基材22上に構成されていてもよく、また単独に構成された2つの検知センサが個別におむつ3に装着されていてもよい。
【0061】
なお、第2検知センサは特に図示しないが、
図4(B)に示す配線破壊層26が成膜されない構成が採用される。加えて、誘電体層25においては、液体によって膨潤しない親水性の弱い素材、例えばウレタン樹脂を用いて印刷するようになされる。
また、第2検知センサとしては、第1検知センサと同様に構成し、かつセンサ上に樹脂コートして水分の影響を遮断したものを利用することもできる。
この場合、第2センサは必ずしもおむつ内部にある必要はなく、おむつパッドまたはおむつの外側にあってもよいし、またはおむつカバーなどに装着され使いまわしとして利用してもよい。
【0062】
図9は、第2の実施の形態において採用される検知特性を示しており、この
図9に示すグラフの縦軸および横軸は、すでに説明した
図8に示すグラフと同様である。
図9に示すグラフは、
図8に示すグラフの検知特性に加えて、第2検知センサによるdip(fG2=fR2)を検知するように構成される。
この場合、第2検知センサ21のLC共振回路の共振周波数fR2は、好ましくは14MHzに設定される。
【0063】
図10は、第2の実施の形態において、
図3に示すリーダ11における主に判別装置14によってなされる検知動作を説明するフローチャートである。以下、
図10に基づいて第2の実施の形態における検知動作について説明する。
【0064】
リーダ11は、ステップS1において検知電波を発信する。これにより
図9に示すように、アンテナ12の周囲に、周波数fGがスイープする交流磁界が形成される。
ステップS2において、リーダ11における判別装置14は、この状態における第1と第2の検知センサによる前記したdipの有無を検出する。
【0065】
続いてステップS3においては、前記dipがfR2付近に存在するか否かが検証される。このステップS3において、dipがfR2付近に存在しない(No)と判定された場合には、ステップS4に示されたように被介護者2はベッド1に不在であると判断する。またステップS3において、dipがfR2付近に存在する(Yes)と判定された場合には、ステップS5において、dipがfR1付近に存在するか否かが検証される。
【0066】
ステップS5において、dipがfR1付近に存在する(Yes)と判定された場合には、ステップS6に示されたように、被介護者2はベッド1に存在し、おむつ3は乾燥状態であると判断する。
また、ステップS5において、dipがfR1付近に存在しない(No)と判定された場合には、ステップS7に示されたように、被介護者2はベッド1に存在し、おむつ3は濡れた状態であると判断する。
【0067】
前記各ステップS4、S6、S7によるいずれかの判定結果は、前記したとおりリーダ11より、介護施設のホストコンピュータ5に対して、例えば無線LANを利用してベッド1のアドレスコードと共に送信される。
なお、
図10に示す動作フローにおいては、前記したステップS1〜S8の動作が繰り返されて、リアルタイムに検知動作がなされるが、その一巡の最終ステップには、ステップS9で示す所定の待ち時間の処理が挿入され、処理動作のタイミングが調整される。
【0068】
なお、前記した第2の実施の形態においては、例えば施設の出入口や通用口にも、リーダ11およびアンテナ12を設置し、前記したfR2付近のdipを監視することで、おむつ3を装着した被介護者2が無断で外出するような行動を検知することができる。
【0069】
以上説明したこの発明に係るおむつ用液体検知センサおよび液体検知装置によると、安価な液体検知センサを提供することができると共に、被介護者が装着するおむつの状態を確実に検知することができるなど、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
なお、この発明に係る液体検知装置は、基本的には検知センサ21とリーダ11との組み合わせにより構成することができるので、前記した介護施設において利用できるだけでなく、在宅介護などにおいても、充分にその機能を発揮することができる。