特許第6806301号(P6806301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806301
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】チップソーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 61/04 20060101AFI20201221BHJP
   B24B 3/36 20060101ALI20201221BHJP
   B23D 65/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B23D61/04
   B24B3/36 E
   B23D65/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-257764(P2015-257764)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2017-104966(P2017-104966A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】598000264
【氏名又は名称】株式会社トリガー
(72)【発明者】
【氏名】浅田 仁彦
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−040102(JP,U)
【文献】 特開2008−178925(JP,A)
【文献】 特開昭51−142786(JP,A)
【文献】 実開平03−107129(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3012075(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3053977(JP,U)
【文献】 特開平09−029541(JP,A)
【文献】 特開2000−084731(JP,A)
【文献】 特開2000−218431(JP,A)
【文献】 特開2002−079442(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0221534(US,A1)
【文献】 特開2004−122300(JP,A)
【文献】 特開2007−144608(JP,A)
【文献】 特開2008−062635(JP,A)
【文献】 特開2013−136138(JP,A)
【文献】 特開2015−020271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/00−65/04
B24B 3/00−3/60
B23B 21/00−39/06
B27B 1/00−23/00
B27G 1/00−23/00
B28D 1/00−7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の台金の外周縁に設けたチップ固着部に固着されたチップと、前記チップ固着部の回転方向後方側の台金に設けられ前記チップによる被切削材の切り込みを制限する制限刃とを備えるチップソーの製造方法であって、
前記台金の成形時に前記制限刃の外周面を、前記チップ固着部に固着されるチップの先端面より外周側に突出させ、前記チップをチップ固着部に固着した後に、前記チップの先端面と前記制限刃の外周面を同時に研磨する制限刃研磨を行い、該制限刃研磨後に前記チップの先端面のみを研磨する刃先研磨を行うことを特徴とするチップソーの製造方法
【請求項2】
前記制限刃研磨と刃先研磨は、回転可能で前記台金の半径方向に移動可能なダイヤモンドホィールで行われることを特徴とする請求項1に記載のチップソーの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状の台金の外周縁にサーメット等からなるチップがロー付けされると共に、このチップの回転方向後方側の台金にチップによる被切削材の切り込みを制限する制限刃が設けられたチップソー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガルバリウム波板鋼板等の波板鉄板を板金用のチップソーで切断する場合、波板鉄板の変形を伴わない切断作業が求められている。しかし実際の切断では、波板鉄板の切り落とし側を固定しない場合が多く、切断時に波板鉄板に撓みが出てチップソーの刃先(チップ)の締付けが起き、チップソーの回転数が極端に落ちて停止する場合もある。この場合、チップ(サーメット)が固く脆い材料であるため、大きな衝撃を受けると簡単に欠損してしまい、特に、切断時に波板鉄板を大きく跳ね上げるとチップも大きく欠損してしまう等、チップソーの寿命を短くする。
【0003】
そこで、これを改善するため、従来、図8(a)に示すように、チップ23の回転方向イ後方側(チップ23の回転方向イ前方側の刃室の前端)の台金22に制限刃24を設けて、チップ23の波板鉄板への過剰な食い込みをなくすようにしている。すなわち、チップ23の先端に対して制限量sが0.48mmの制限刃24を設けたときには、、図8(b)のA部に示すように、台金22の生材をプレス成形してチップ固着部25と外周面24a−1を有する制限刃24を形成し、この台金22を熱処理した後に、同図(b)のB部に示すように、制限刃24の外周面24a−1を砥石で研削(研磨)することで、所定の外周面24aとして制限量sを確保するようにしている。なお、制限刃を有するチップソーは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−84731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなチップソーにあっては、台金22に予め制限刃24をプレスで成形し、台金22の熱処理後に各制限刃24の外周面24a−1を砥石でそれぞれ研削して制限量sを確保しているため、台金22の中心穴の誤差やチップ23の形状誤差及びその先端研磨誤差等により、制限刃24の研削作業をいかに上手く行ったとしても、各刃の制限量sがばらついてしまう。その結果、制限量sのばらつきにより制限刃24で各チップ23を確実に保護することが困難で、チップ23が欠損し易くチップソーの寿命を十分に延ばすことが難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、チップの先端面研磨と同時に制限刃の外周面を研磨することで各刃の制限量のばらつきを押さえ、寿命を十分に延ばすことが可能なチップソー製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、円板状の台金の外周縁に設けたチップ固着部に固着されたチップと、前記チップ固着部の回転方向後方側の台金に設けられ前記チップによる被切削材の切り込みを制限する制限刃とを備えるチップソーの製造方法であって、前記台金の成形時に前記制限刃の外周面を、前記チップ固着部に固着されるチップの先端面より外周側に突出させ、前記チップをチップ固着部に固着した後に、前記チップの先端面と前記制限刃の外周面を同時に研磨する制限刃研磨を行い、該制限刃研磨後に前記チップの先端面のみを研磨する刃先研磨を行うことを特徴とする
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記制限刃研磨と刃先研磨が、回転可能で前記台金の半径方向に移動可能なダイヤモンドホィールで行われることを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、台金の成形時に制限刃の外周面をチップ固着部に固着されるチップの先端面より外周側に突出させ、チップをチップ固着部に固着した後に、チップの先端面と制限刃の外周面を同時に研磨する制限刃研磨を行い、この制限刃研磨後にチップの先端面のみを研磨する刃先研磨を行うため、チップの先端面と制限刃の外周面を同時に研磨することで、各チップの先端面とこれに対応する各制限刃の外周面との間に所定の制限量を均一かつ容易に確保できて、各刃先の制限量のばらつきによるチップの欠損等を抑えて、チップソーの寿命を十分に延ばすことができる
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、制限刃研磨と刃先研磨が、回転可能で台金の半径方向に移動可能なダイヤモンドホィールで行われるため、各刃先に均一な制限量を容易に確保できると共に、刃先研磨でチップ先端のアール部分等を研磨できて、各チップに高精度な先端面を容易に得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】 本発明に係わるチップソーの一実施形態を示す平面図
図2】 同その要部の側面図
図3】 同要部を拡大した平面図
図4】 同その説明図
図5】 同研磨方法を示す説明図
図6】 同波板鉄板の切断状態の説明図
図7】 同他の説明図
図8】 従来のチップソーを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1図7は、本発明に係わるチップソーの一実施形態を示している。図1図3に示すように、チップソー1は、円板状で複数の制振制音樹脂スリット3が形成された台金2を有し、この台金2の中心位置には、図示しない切断機への取付用の中心穴4が形成されている。
【0013】
また、台金2の外周縁2aには、台金2の中心穴4方向に窪んだ刃室(ガレット)5が一定間隔で多数形成され、この刃室5間にチップ6がそれぞれロー付けされると共に、このチップ6の回転方向イの後方側(チップ6の回転方向イの前方側の刃室5の前端)の台金2に制限刃7がそれぞれ設けられている。
【0014】
すなわち、チップ6は、図3に示すように、掬い面6aと、この掬い面6aの先端に前記回転方向イの後方側に向けて所定角度傾斜して設けられた先端面6bと、この先端面6bの後端部に連設された背面6cと、この背面6cの下端と掬い面6aの下端との間に連設された底面6d等を有している。そして、背面6cと底面6dが、前記刃室5に連続する状態で例えば段差状に形成されたチップ固着部8にロー付けされている。なお、チップ固着部8にロー付け(固着)されたチップ6は、図7に示すように片側0.05mmの側面あさりtが設けられている。
【0015】
また、前記制限刃7は、後述する如く台金2自体で形成され、図2図3に示すように、その外周面7aがチップ6の平坦な先端面6bに対して略平行で所定の制限量sを有する平坦面で形成されている。そして、前記チップ6と制限刃7は、図4に示すように、前記チップ6の掬い面6aと先端面6bが交差する刃先6eと刃室5との幅W1が2mmで、前記制限刃7の先端7bとチップ6の刃先6eとの間隔W2が2.77mmに設定され、また、チップ6の先端面6bの研磨角度と制限刃7の外周面7aの研磨角度が共に8度に設定されている。
【0016】
このように構成されたチップソー1は、例えば次のようにして製造される。すなわち、先ず、素材(炭素鋼板等の生材)のプレスにより、前記中心穴4、刃室5、チップ固着部8等を有する台金2を成形する。このとき制限刃7は、図5(a)に示すように、チップ固着部8に固着されるチップ6の先端面6bより所定寸法外周側に突出した形状に設定される。
【0017】
そして、この台金2を例えば高周波の誘導加熱を利用して焼入れ・焼き鈍し等の熱処理を行い、各チップ固着部8にチップ6を高周波の誘導加熱を利用してそれぞれロー付けする。この各チップ6のロー付け後に、台金2を垂直状態で研磨機にセットし、図5(b)に示すように、研磨機のダイヤモンドホィール9の研磨面9aを、最上位に位置するチップ6の先端面6bとこれに対応する制限刃7の外周面7aに当接もしくは近接させる。
【0018】
そして、ダイヤモンドホィール9を回転させつつ台金2の半径方向に所定量移動させて(送って)、その研磨面9aでチップ9の先端面6bと制限刃7の外周面7aを同時に研磨する「制限刃研磨」を行う。この制限刃研磨で、チップ6の先端面6bが粗取り研磨されると共に、チップ6の先端面6bより所定寸法外側に突出していた制限刃7の外周面7aも研磨される。これにより、チップ6の先端面6bと制限刃7の外周面7aが、ダイヤモンドホィール9の研磨面9aに対応した面一状態となる。
【0019】
制限刃研磨が終了したら、図5(c)に示すように、台金2を矢印ロ方向に所定量回転させて、研磨された制限刃7上からダイヤモンドホィール9の研磨面9aを退避させ、その研磨面9aをチップ6の先端面6bのみに当接させる。この状態でダイヤモンドホィール9を回転させつつ台金2の半径方向に所定量(例えば0.2mm)送って、先端面6bを研磨する「刃先研磨」を行う。この刃先研磨でチップ6の先端面6b(刃先6e)が研磨されることになる。
【0020】
このときチップ6の先端面6bと制限刃7の外周面7aは、研磨代としての0.2mmを有して略平行な平坦面になると共に、図3に示すように、チップ6の刃先6eを半径とする円周線L1が、制限刃7の外周面7aの先端7bを半径とする円周線L2より所定寸法外周側に位置して、この所定寸法が前記制限量sとなっている。
【0021】
そして、刃先研磨が終了したら、研磨機にセットされている台金2を図5(c)の矢印ロ方向に一刃分回転させ、次のチップ6と制限刃7の「制限刃研磨」を行い、その後チップ6の「刃先研磨」を行う。この作業を台金2の全てのチップ6と制限刃7で行うことにより、研磨作業が終了する。この研磨作業時に、研磨機のダイヤモンドホィール9の制限刃研磨位置や刃先研磨位置を所定位置(台金2に対して一定位置)に設定して行うことにより、全てのチップ6と制限刃7の制限量s等が中心穴4の誤差等でばらつくこともなく、各チップ6に均一な制限量s等が得られることになる。
【0022】
次に、制限刃7の外周面7aとチップ6の先端面6bの研磨が終了したら、チップ6の掬い面6aを研磨すると共に、チップ6の側面を研磨して前記側面あさりtを形成する。この研磨の後に、仕上げ処理することでチップソー1が製造される。なお、前記「制限刃研磨」と「刃先研磨」以外の研磨の手順等は、前記例に限定されず、適宜に変更することができる。
【0023】
ところで、前記チップソー1のチップ6に使用されるサーメットは、焼き物で僅かながら個々に収縮率が違いサイズにばらつきがあり、台金2の台座としてのチップ固着部8の研磨精度及びロー付けによるばらつきが相乗して、チップ6のロー付け後の台金2の外周部(チップ6の先端面6bの位置や制限刃7の外周面7aの位置)は従来の構造では大きくばらついているのが一般的である。また、サーメットの研磨代が多いと先端精度の維持が難しくなることから、一般的にチップ6の研磨は粗取り研磨を行い次に仕上げ研磨を行うようにしている。
【0024】
そこで、前記チップソー1の場合、チップ6の粗取り研磨の時点で制限刃7の突起部分を同時に研磨する「制限刃研磨」を行い、チップ6の先端面6bと制限刃7の外周面7aを面一状態とし、その後、チップ6の先端面6bを所定寸法に研磨する「刃先研磨」を行うようにしている。このとき、焼き物であるチップ6は、その各面の交差部分のアール形状により0.2mm程度の研磨代が必要であることから、「制限刃研磨」で全体の先端が揃ったところで、更にチップ6の先端面6bのみを0.2mm研磨する「刃先研磨」を行っている。
【0025】
また、前記チップソー1においては、制限刃7の位置が、作用刃先であるチップ6の刃先6eから2.77mmの位置で、刃先6e先端より0.22mm低くなるように設定されている。この形状の特徴は、制限刃7の形状が切断進行方向よりか高くなることであり、その延長線上での刃先6eは、後述する切断条件の場合、1刃当たり0.235mmの切り込み深さで制限されることになる。それゆえに、切断機の回転数が半分以下に落ちるような過負荷が掛かった時でも、過剰食い込みによるチップ6の欠損が防止されることになる。
【0026】
なお、従来の台金の加工では、制限量sは中心穴の同心円状に形成されていることから、プレスやレーザー切断のままで制限刃としているものは、その精度から制限量sが0.5mm以上で効果としては疑問である。また、外径125mm、刃数50枚刃のチップソーで、波板鉄板0.5mm、切断距離90cmを、切断機実用回転2500rpmで4秒で切断する切断条件の場合、1刃当たりの被切削材に貫入する切り込み深さは0.108mmとなる。
【0027】
また、チップソーで波板鉄板(日本工業規格による名称:G3321、溶融55%アルミニウム−亜鉛メッキ鋼板及び鋼帯、記号SGLHC、SGLCC、SGLH400、SGLCD、SGLC400、他)を切断する上での問題は、波板鉄板の形状と切断時の波板鉄板の固定にある。波板鉄板の組成の大半を占めるアルミニウムは、回転が遅くなると過剰食い込みが出やすい金属であるだけに、制限刃の効果は一層大きくなる。
【0028】
このような波板鉄板を、前述した切断条件で前記チップソー1を使用して切断する場合の動作を、図6及び図7に基づいて説明する。図6に示すような波板鉄板10の場合、その形状からマニュアル切断作業は、作用刃数が多くなり切断抵抗が増す上り勾配Uの切断と、作用刃数が少なく軽負荷の下り勾配Dの切断の繰り返しで安定した送りができ難い。そのため、どうしても切り終わり時に、図7に示す切り落とし側10aの波板鉄板10の撓みによる変形で、チップ5の側面あさりtにより掻き揚げて波板鉄板10を変形させてしまう。
【0029】
また、下り勾配Dの切断時に制限量が多くなると、その分1刃当たりの切り込み量が多くなり、比較的柔らかい波板鋼板10では、刃の抜け側にバリを発生させ、このバリは、カミソリのようなバリとなる。この現象を少なくするためには、側面あさりtが極力少なくなることが望ましいことから、前記チップソー1の側面あさりtは片側0.05mmとなっている。これらにより、前記チップソー1の場合は、波板鋼板10を変形させることなく、かつバリの発生を抑えて滑らかに切断することができる訳である。
【0030】
このように、前記チップソー1によれば、チップ6の先端面6bと制限刃7の外周面7aとが所定の制限量sを有した略平行な平坦面で形成されているため、同一のダイヤモンドホィール9で研磨することで、各チップ6の先端面6bと対応する制限刃7の外周面7aとの間に所定の制限量sを均一かつ容易に確保できて、各刃の制限量sのばらつきによるチップ6の欠損等を抑えて、チップソー1の寿命を十分に延ばすことができる。
【0031】
また、一刃当たりの制限量sが0.2〜0.3mmであるため、被切削材の切り落とし時に制限量sが働き過剰に食い込んで、例えば波板鉄板10をチップ6で引っ掛けて曲げることもなく、波板鉄板10をきれいに切断することができて、チップソー1の寿命を一層延ばすことができると共に、切断作業の作業能率や安全性を高めることが可能になる。
【0032】
また、前記チップソー1が、台金2の成形時に制限刃7をチップ固着部8にロー付けされるチップ6の先端面6bより外周側に突出させ、チップ6をチップ固着部8に固着した後に、同一のダイヤモンドホィール9により、「制限刃研磨」でチップ6の先端面6bと制限刃7の外周面7aを同時に研磨すると共に、この研磨後にチップ6の先端面6bのみを研磨する「刃先研磨」を行うこと等で製造されるため、各刃先6eの制限量sのばらつきによるチップ6の欠損等を抑えて、寿命を十分に延ばすことができるチップソー1を容易に製造することが可能になる。
【0033】
このとき、研磨機がダイヤモンドホィール9を有し、このダイヤモンドホィール9による「制限刃研磨」後に、ダイヤモンドホィール9を台金2の半径方向に所定量移動させてチップ6の先端面6bのみを「刃先研磨」して制限刃7の外周面7aとチップ6の先端面6bとを略平行な平坦面にしているため、チップ6のアール部分等を確実に研磨できて、チップ6に高精度な刃先6eを容易に得ることができる等、切れ味に優れ寿命が長いチップソー1が得られて、各種被切削材の切断作業に効果的に使用することができる。
【0034】
特に、前記チップソー1によれば、被切削材としての波板鉄板10を切断する場合に、次のような効果を得ることができる。すなわち、波板鉄板10の切断時の切り落とし側10aは、切断が進むに従い波板鉄板10の剛性が失われて折れ曲がり、これは切り落とし側10aに支えがない限り防ぐことができない。このとき制限量sの多い刃先は、切断作業終了間隙2〜3mm残すあたりで切り落とし時に刃先が波板鉄板10に深く食い込んで波板鉄板10を跳ね上げる。この跳ね上げた波板鉄板10が戻ろうとしたときに、次の切れ刃に激しく当たり、制限量sの多い刃では、刃先であるチップ6が欠損を起こし波板鉄板10を強引に曲げてしまうことになる。
【0035】
ところが、前記チップソー1のように、制限量sを0.2mmに設定すると、切り落とし時に制限量sが働いて過剰食い込みすることなく、また波板鉄板10を刃先6eで引っ掛けて曲げることもなく、きれいに切断することが可能になり、チップ6の欠損等を抑制してチップソー1の寿命が延びることになる。また、波板鉄板10の切り落とし時の跳ね上げ音も、有効な制限量sをもった前記チップソー1の場合には、切り落とし時の音が緩和されることで、安心感を持って波板鉄板10の切断作業が行えることになる。
【0036】
また、前記チップソー1によれば、チップ6の先端面6bと制限刃7の外周面7aとが、同一のダイヤモンドホィール9で同時に研磨される「制限刃研磨」の後に、チップ6の先端面6bのみを「刃先研磨」することで所定の制限量sを得ることができるため、一旦「制限刃研磨」で得られた制限量sが少ない場合でも、「刃先研磨」で所定の制限量sを容易に確保できて、従来では各種誤差で不可能とされていた制限量sが0.25mm以下を持つ制限刃7であっても容易に製作することが可能になり、このチップソー1を使用することで、スムーズな切断が比較的難しい前述した波板鉄板10等であっても容易に切断できることになる。
【0037】
なお、前記実施形態における、チップ6や制限刃7の個数や形状、刃室5やチップ固着部8の形状等のチップソー1自体の形態、研磨機の構成等は、一例であって、本発明の各発明に係わる要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、円板状の台金の外周縁にチップと制限刃を有して波板鉄板等の被切削材の切断に使用される全てのチップソーの製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1・・・チップソー、2・・・台金、2a・・・外周縁、3・・・制振制音樹脂スリット、4・・・中心穴、5・・・刃室、6・・・チップ、6a・・・掬い面、6b・・・先端面、6e・・・刃先、7・・・制限刃、7a・・・外周面、7b・・・先端、8・・・チップ固着部、9・・・ダイヤモンドホィール、9a・・・研磨面、10・・・波板鉄板、10a・・・切り落とし側、t・・・側面あさり、s・・・制限量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8