【氏名又は名称】ブンデスリパブリック ドイチュラント、バートリィトン ドエヒ デン ブンデスミニスター ファ ヴィルトシャフト ウント エネルジー、ディザ バートリィトン ドエヒ デン プレジデンテン デァ ブンデスアンスタルツ ファ マトリアルフォシュン ウント−プロフン (ビーエーエム)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリビニルピロリドンを前記ポリマーコアの表面に共有結合することは、前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量を選択することを含み、前記ポリビニルピロリドンの選択された前記重量平均分子量は、前記シェルの前記外表面の前記RF値が円滑な閉鎖型の二酸化ケイ素層に対して1から1.5の範囲で調整可能であるように、10000ドルトン、および/または、7000ドルトンから11000ドルトンの間にある、請求項1に記載の方法。
前記調製は、有機溶媒もしくは水性溶媒を用いて、または、溶媒混合液を用いて、前記ポリマーコアを洗浄することを含み、および/または、前記被覆および前記官能基化は、アルコキシシランおよび/もしくは有機クロロシラン誘導体、もしくは、アルコキシシラン誘導体を用いて、アルコール/水混合物において行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
前記被覆は、塩基性の、有機物の、または、無機物の触媒の存在下で、アルコキシシランおよび/または有機クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体から選択される出発物質を使用して、水の割合が0vol%から80vol%までであるアルコールにおいて行われ、前記触媒は、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび/または有機アミンから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
前記官能基化は、アミノ基以外の官能基の付加を含み、および/または、塩基性もしくは酸性の触媒と共に有機クロロシランもしくはアルコキシシラン誘導体を使用して行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、分子量が同一であるPVP分子の単分散混合物、もしくは、分子量に関して実質的に均質な混合物から、または、分子量が互いに異なるPVP分子を含む不均一混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
前記球状ハイブリッド微粒子は、アミン修飾表面を有し、前記有機クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体は、表面上に、少なくとも部分的に、閉鎖型の単分子層、または、架橋された多分子層を形成する、請求項7に記載の方法。
前記ポリマーコアの前記調製は、スチレン、スチレン誘導体および/またはポリスチレン誘導体のラジカル重合のための開始剤として前記4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)を使用することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【0002】
粒子を利用した分析的用途では、球状ポリマー粒子または二酸化ケイ素粒子のいずれかを使用することが好ましい。好適な粒子は、一般的には、数マイクロメートルのサイズ、例えば、5〜7μm(製造業者:BD(登録商標)サイトメトリックビーズアレイ、または、Luminex xMAP(登録商標))、または、3μm(製造業者:イルミナ)であり、非常に狭い粒度分布を有する(NIST単分散性:典型的には、粒子の90%は、中央値からの偏差が5%以内である)。典型的な用途の観点から、好ましいサイズ範囲は、約0.5μmから10μmの平均粒子直径である。この範囲は、典型的には用いられる場合に水溶液中に分散する粒子の、沈殿および光散乱を含む挙動によって、および、利用される特定の測定方法によって決定される。500nmまでの比較的小さい直径を有する粒子は、撮像法、および、散乱光を利用した方法において検出することが困難である。より大きい粒子(10μmより大きい)は、速い沈殿のプロセスの影響をますます受けやすくなるので、従って、流体の高スループットの方法には適さない。
【0003】
本明細書で使用される文脈において、「約」、「概ね」および「実質的に」という表現は、特定のパラメータにおける、定められた値の±10%より大きくない(典型的には±5%)偏差を意味し、従って、対象のパラメータの特定の技術的効果の結果に対して、影響を与えないか、または、無視できる程度の小さい影響だけを与える、対象のパラメータの起こり得る変動、または、実際の変動と同一である。
【0004】
0.5μmと10μmとの間の範囲は、粒子を利用した用途に好ましい。この場合、粒子の沈殿に常に注意する必要がある。沈殿は遅すぎても速すぎてもいけない。遅すぎると、例えば、遠心分離する場合に、大変な分離および/または洗浄の工程が生じる可能性があり、速すぎると、粒子の集合を測定するとき、または、個々の粒子を順次測定するとき(例えば、散乱光を利用した方法、高スループットの方法を用いる、粒子の特性評価または用途)、時間が経過しても粒子が沈殿を起こさないので、測定信号が歪む。
【0005】
球状ポリマー粒子、特に、ポリスチレン粒子は、以下において、ポリマーコアとも呼ばれ、対象のサイズ範囲内で、数グラム単位までの比較的大きい規模で容易に製造でき、各々の場合において、狭い粒度分布を示す。しかしながら、ポリマー粒子は、後続の化学的表面修飾の受けやすさが限定されている。特に、既存の基の化学反応について、後続の修飾は限定されており、このことは、各々の場合において必要な官能基が、粒子合成に使用される反応混合物において、コモノマーの形態で既に存在する必要があることを意味する。同様に、ポリスチレン粒子は、約1.05g/mlという低い物理密度を特徴とし、そのため、水溶液中においてコロイド状に安定である間であっても、例えば遠心分離による分離のために、長い時間、または、非常に高い回転速度のいずれかを必要とする。従って、ポリスチレン粒子は通常、3μmより大きい、比較的大きい直径のものが使用される。
【0006】
これと対照的に、二酸化ケイ素粒子(以降、ケイ酸塩微粒子と呼ぶ)は、有機クロロシラン誘導体またはアルコキシシラン誘導体を用いて、容易に後に官能基化することができる。しかしながら、約2.0±0.2g/mlという高い物理密度に起因して、水性媒体において、速い沈殿を起こす。更に、従来の「ストーバー範囲」を超えるケイ酸塩微粒子の合成(すなわち、平均粒子直径が1μmより大きい)では、高価で不便な多段方法が必要になる。
【0007】
用途の観点から重要である、更なる物理特性は、屈折率を介して厳密に決定されるような、個々の粒子による光散乱である。散乱光を利用した方法において、効率的光散乱は、重要な要件である。この点において、ポリスチレン粒子などのポリマー粒子は、例えば、n=1.59(励起波長が589nmである場合)の好適な高い屈折率について、注目に値する。これに対して、ケイ酸塩微粒子は、n=1.46(励起波長が589nmである場合)という、より低い値を示す。この結果、所与のサイズおよび励起波長で、例えばポリスチレン微粒子と比較すると、フローサイトメトリーにおける個々のケイ酸塩微粒子の散乱光強度が低くなる。
【0008】
光学的用途において、得られる粒子は、好ましくは、ポリスチレンコアに少なくとも匹敵する、または、それより上に位置する散乱光強度を有する。同様に、屈折率は、純粋なポリスチレンコアに少なくとも匹敵すると想定される。粒子を利用した分析的用途における、粒子の好ましい使用によれば、散乱光強度は、純粋なポリマーコアを参照として使用して、フローサイトメトリーによって、180度における前方散乱(略称:FSC)、および、488nmの励起波長に基づいて決定される。
【0009】
用途の観点から重要な更なる物理特性は、支持体の構造および関連する表面積に対する制御である。現在の市販の解決策は、この点を考慮せず、ここでは現在に至るまで、純粋なポリマー微粒子および/またはケイ酸塩微粒子を用いて操作することが好ましかった。それらの構造に関して、これらの微粒子は常に、円滑な表面を有する理想的な球として扱われる。このことは、粒子あたりの表面積が増加する可能性を無視しているか、または、構造と反応性との関係を最前面に置いている。
【0010】
この背景に対して、水溶液においてρ=1.05g/cm
3からρ=1.8g/cm
3の間、好ましくは、ρ=1.09g/cm
3からρ=1.53g/cm
3の間で調整可能な密度を介して決定可能である、十分に効率的な光散乱性および好適な沈殿特性を有するシリカ表面を備えた、サイズ範囲が0.5μmから10.0μmの間である理想的な単分散の球状微粒子の必要性が存在する。好適な微粒子の調製に対する実践可能な手法として、本明細書において追及される手法は、制御された構造を有する二酸化ケイ素のシェルが、狭い粒度分布の球状ポリマーコアに適用されるハイブリッドコアシェル粒子の合成である。これらの種類の粒子は、本明細書において、ハイブリッド微粒子と呼ばれる。そのような粒子の密度は、ポリマーコアの質量分率に密度(ρ=1.05g/cm
3)を乗算したものと、ケイ酸塩シェルの質量分率に密度(ρ=2.00g/cm
3)を乗算したものとの合計和から計算される。ハイブリッド粒子アセンブリにおけるポリスチレンまたはケイ酸塩の質量分率はそれぞれ、熱重量分析により決定できる。ハイブリッド微粒子の密度におけるケイ酸塩シェルの割合は、本明細書では好ましくは、5%から50%の間である。従って、結果として生じる、ハイブリッド微粒子の密度は概ね、
【数1】
と、
【数2】
との間である。
【0011】
この背景に対して、請求項1に記載のハイブリッド微粒子、請求項11に記載の、そのような微粒子を製造するための方法、請求項22に記載の、ラジカル重合の開始剤としての4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)の使用、請求項23に記載のクロマトグラフィ支持体、請求項24に記載の、粒子を利用したアッセイのための支持粒子が提案されている。以降の説明および図面から、また、添付の特許請求の範囲から、更なる実施形態、修正および改善が明らかになるであろう。
【0012】
第1の実施形態によれば、ポリマーコアと、ポリマーコアを少なくとも部分的に囲み、二酸化ケイ素層を含むシェルとを備える微粒子が提案される。本発明によれば、これらのハイブリッド微粒子は、窒素の吸着を受ける(従って、等温線を用いる普通の方法により決定可能な)比外表面積と、理想的な球状形態を仮定した、ハイブリッド微粒子の算術平均直径から計算可能な表面積との比率に基づいて特徴付けられる。窒素吸着によって決定される比表面積と、理想的な球とみなされるハイブリッド微粒子の算術平均粒子直径から計算される表面積とのこの比率は、以下では粗度係数、または、RF値と呼ばれる。
【0013】
外表面積は、好ましくは、77Kにおける窒素の吸着および脱着イベントを示すBET等温線を使用する可能性に基づいて、窒素吸着によって決定されるか、または、代替的に、閉鎖型のシェルの場合には、ケイ酸塩シェルを含むケイ酸塩ナノ粒子の数、および、それらの膨張、または、開放型のケイ酸塩シェルの場合は、それらのサイズおよび数から推定される。
【0014】
粒子の窒素吸着についての何らかのデータが何も無い場合、開放型のシェルについての外表面積の値が、コアサイズから、ならびに、二酸化ケイ素層を含むケイ酸塩ナノ粒子のサイズおよび数から計算される。すなわち、粒子の数と、理想的な球を仮定した、サイズを介して決定可能な粒子の表面積とを乗算する。一方、ケイ酸塩ナノ粒子の数は、平均密度が約2.0g/mlであると仮定して、熱重量分析(TGA)により決定可能なハイブリッド粒子アセンブリにおけるケイ酸塩の質量分率から計算される。窒素吸着データが無い閉鎖型の粒子については、RF値は、粒子の電子顕微鏡写真から推定される。閉鎖型のシェル(円滑または丘状)の場合、大部分は互いに融合している、シリカシェルを含むケイ酸塩ナノ粒子の平均膨張量がそれぞれ評価され、その表面積が計算される。これにより、最大で直径の半分まで膨張したケイ酸塩ナノ粒子を仮定して、1から2の間の、理論上可能なRF値が得られる。表面積の増大を決定するものは膨張量だけなので、ケイ酸塩ナノ粒子のサイズは、ここでは関係ない。実際の状況において、丘状ハイブリッド微粒子について得られたRF値は、いくつかの場合において、2から3の間である。これは、いくつかの場合において、ケイ酸塩シェルに接着し、および/または、それに融合した、平均粒子半径を超えて膨張した追加のケイ酸塩ナノ粒子によって生成される。
【0015】
この実施形態の利点は、PVPによって調整可能である、ケイ酸塩シェルの構造、ひいては、故に比表面積を通して、官能基を有する、または、配位子および/もしくは蛍光色素分子を有する粒子あたりの調整可能な占有密度を達成することが可能であるという事実から生じる。更に、ケイ酸塩シェルの構造および厚さを介して、ハイブリッド微粒子についての結果として得られる密度を1.05g/cm
3から1.8g/cm
3の間、好ましくは、1.09g/cm
3から1.53g/cm
3の間で調整することが可能である。更に、ポリマーコアのラジカル重合のための開始剤として、現在まで、AIBN(2,2'‐アゾビスイソブチロニトリル)を使用することが一般的であったが、これは環境に有害であり(H412)、有毒である(H302、H332)。更に、AIBNでは、平均分子量が25000ドルトンより小さいPVPを使用して、狭い粒度分布の粒子を製造することが困難である。なぜなら、非極性の開始剤は、合成中に粒子を安定化するために十分な電荷を表面上に生じさせないからである。
【0016】
提案されている実施形態は更に、シェルの表面構造が、円滑(この場合、RF値は1から1.5の間)、丘状(この場合、シェルのRF値は1.51から3の間)、または、開放(この場合、ハイブリッド構造は、3.01より高い粗度係数を有する)から選択されるという点で特徴付けられる。
【0017】
これらの特徴の利点は、ハイブリッド微粒子の表面積、および、そのRF値が、その製造において使用されるポリマーを通して調整できるという事実から生じる。従って、理想的な球と比較すると、シェルが円滑で、RF値が1から1.5の間である場合、対応する表面積の増分は50%まで可能であり、シェルが丘状で、RF値が1.51から3.0の間である場合、200%までの増分が達成可能であり、シェルが裂けていて、RF値が3.01より高い場合、200%より遥かに高い増分が達成可能である。
【0018】
更なる実施形態によれば、シェルの構造は更に、開放型および閉鎖型から選択され、開放型では、シェルに含まれる細孔の孔径は、50nmより上であり(マクロ細孔)、および/または、50nmより下であり(メソ細孔およびマイクロ細孔)、閉鎖型では、天然のケイ酸塩シェルには、細孔が無く、より具体的には、マイクロ細孔(直径が2nmより小さい)が無く、メソ細孔(直径が2nmから50nmの間)が無く、マクロ細孔(直径が50nmより大きい)が無い。
【0019】
一方、ここでは、細孔の存在は、粒子(メソ細孔およびマクロ細孔)の走査電子顕微鏡写真の視覚的評価に基づいて結論付けられるか、または、代替的には(好ましくは)、BET等温線に従う吸着のカーブフィッティング、および、結果として生じるC値に基づいて(マイクロ細孔)、または、粒子試料上の窒素の脱着プロファイルの記述可能性に基づいて(メソ細孔)判断される。
【0020】
「2nmより小さい」という表現に下限は無く、シェル内の、ナノメートルより小さいサイズの細孔も、結果としてあり得る。代替的に、本発明によれば、C値は、寸法のための基礎として使用され、この場合、範囲はまた、200より小さいCに拡大され、これにより、マイクロ細孔が最低限に存在することを除外しない。つまり、このように称されるシェルは、実際にはマイクロ細孔も含み得ることを意味する。以下でより詳細に記載される、C値の使用は、ケイ酸塩シェルに実際存在する多孔性の間接的な説明を提供するために好適であるように思われる。
【0021】
この実施形態の利点は、シェル構造が、異なる立体遮蔽をもたらし、従って、閉鎖型のシェルの表面(RF値が1から3の間)は、例えば生体分子(DNA、タンパク質、または、他の生体高分子)などの、より大きい分子(1nmより大きい)がよりアクセス可能であり、これに対して、開放型のシェル(RF値が3.01より大きい)の場合、表面積全体が、大きい分子の共有結合または吸着結合に利用できないという事実から生じる。一方、より小さい分子は、開放型のシェルに容易に結合でき、従って、この場合、粒子あたり、特に高い密度の小さい分子が結合することを可能にする。
【0022】
更なる実施形態によれば、微粒子のポリマーコアは、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体および/またはコモノマーから選択されるポリマー成分を含む。選択されたポリマー成分の分子の各々は、少なくとも1つの重合性二重結合を有するので、ポリマーコアは、交互になった共重合体およびブロック共重合体、または、ポリマーおよび共重合体の混合物のいずれかから成り得る。
【0023】
この実施形態の利点は、例えば、ポリマーコアの機能性(異なるスチレン誘導体による、色、蛍光、架橋の程度、ラマンコーディング)を決定するべく、二重結合を有する色素、重合性二重結合で官能基化された有機もしくは無機ナノ粒子、または、他のコモノマーをコアの中に組み込むことができるという事実から生じる。
【0024】
更なる実施形態によれば、微粒子のポリマーコアには、ポリビニルピロリドン(以降では省略してPVPとも呼ぶ)が付加され、PVPは、7000ドルトンから360000ドルトンの範囲の平均分子量を有する。
【0025】
この実施形態の利点は、PVPにより、ハイブリッド微粒子のケイ酸塩シェルの比表面積および/または構造の目標とする調整を実行することが可能になるという事実から生じる。利点は、分子量に関して標準化された商業的グレードを有するPVPが商業的に利用可能になることである(例えば、BASF(登録商標)のコリドン(登録商標)もしくはルビスコール(登録商標)、または、シグマアルドリッチ(登録商標)のPVP10(登録商標)、PVP40(登録商標)、PVP K−60(登録商標)もしくはPVP360(登録商標)CAS:9003−39−8)。
【0026】
更なる実施形態によれば、PVPは、ポリマーコアの外表面上に共有結合する。なぜなら、コア重合中に形成される、ポリスチレンオリゴマーとのPVP鎖の架橋が想定できるからである。
【0027】
この実施形態の利点は、コアを別の方式で修飾しなくても、重合中およびその後(例えば、洗浄工程中)の粒子の安定性、ならびに、合成後にケイ酸塩シェルがポリマーコアへ成長する可能性が増加することを含む。
【0028】
更なる実施形態によれば、本明細書に記載されている、天然形態のハイブリッド微粒子、換言すれば、以降で詳細に説明される湿式化学合成により調製可能なハイブリッド微粒子は、コアにあるPVPの層を含み、PVPの層は、P1の場合、二酸化ケイ素シェルの下にあり、P2の場合、シェルに部分的に組み込まれ、P3の場合、シェルのメソ細孔および/またはマクロ細孔の中にある。これは、特に、ポリマーコア上でのケイ酸塩シェルの形成に寄与する主な力に基づいて決定される。例えば、25000Daより下の分子量では、ケイ酸塩シェルは主に、被覆操作中に生じるケイ酸塩ナノ粒子およびシリカ中間体と、開始剤の結果として表面に存在するカルボン酸との間の静電気、および、酸塩基相互作用によって、コア粒子上に直接形成される。対照的に、PVPの分子量が58000Daより大きい場合、PVP鎖上にケイ酸塩ナノ粒子が吸着することが主に想定される。なぜなら、カルボン酸は、より長いPVP鎖によって遮蔽されるからである。分子量が25000Daから58000Daの間であるPVPの場合、混合された力を想定できる。より長いPVP鎖長の場合、コア表面の外側に、より多くの吸着部位が提供され、ケイ酸塩ナノ粒子は開放構造を形成するべくそこに付着できる。その結果、円滑な閉鎖型のシェルの場合、PVP鎖はケイ酸塩シェルの下にあり、丘状の閉鎖型のシェルの場合、それらは部分的にシェル内にあり、開放型のシェルの場合、それらはケイ酸塩ナノ粒子の間にある。
【0029】
この実施形態の利点は、P1の場合、閉鎖型のシェルが内部ポリマーコアを保護するので、熱エネルギーに関してシェルの安定性が増加するという可能性を含む。コアが分解を起こすとき、シェルは最終的に壊れ、組成生成物を流出させる。これは、熱重量分析により示すことができる。なぜなら、その場合、ポリマーコアの大部分は、500℃より高い温度のみで燃焼するからである(
図2を参照)。
【0030】
実際的な実施例P2によれば、対照的に、一定期間、例えば5時間にわたる、50〜200℃、好ましくは、80〜120℃の熱処理中、PVP鎖をシェルから除去することができ、従って、シェルにおける官能基化のために、マイクロ細孔を生成できる。同時に、メソ細孔が最初から存在する実際的な実施例P3と同様に、コアの熱分解は、概ね200℃より高い温度で、妨げられることなく引き起こすことができるので、その後に存在する中空ケイ酸塩球(
図5を参照)は無傷である。
【0031】
別の実施形態によれば、一方でポリマーコア上で共有結合されるPVPは、同時に、PVPのカルボニル基とケイ酸塩シェルのシラノール基との間の水素結合を介してシェルに非共有結合し、シェルは、二酸化ケイ素、より具体的には、Si−O−Si結合を介して互い共有結合することによって架橋された多様なケイ酸塩ナノ粒子を含む。得られた構造とは対照的に、ここでは、P1およびP2の場合における、大部分が融合した、ケイ酸塩ナノ粒子の構造を想定する。従って、開放型のシェル構造を形成する、一体化したケイ酸塩ナノ粒子の層が無い。代わりに、粗度係数が1.0から1.5の間、または、1.51から3の間である、閉鎖型のシェル構造がある。例えばUS6103379AまたはUS6479146B1に記載されているように、実施例P3において得られる構造と同様に(US6103379Aの場合、360000ドルトンで使用されるPVPと同様に)、ケイ酸塩ナノ粒子が緩いアセンブリに存在する結果、粗度係数が3.01より大きくなる。粗度係数の決定のために、外表面積は、ケイ酸塩ナノ粒子の数と、それらの表面積とを乗算することによって計算される。表面積は、理想的な球を想定して、平均サイズによって決定される。一方、ケイ酸塩ナノ粒子の数は、2.0g/mlの平均密度、および、ケイ酸塩ナノ粒子の平均サイズを考慮して、ハイブリッド粒子アセンブリにおけるケイ酸塩シェルの質量分率(熱重量分析によって確認される)を介して決定できる。従って、US6103379Aに係る粗度係数は、3.66、5.92、8.15である。これは、コアサイズが1.8μm、平均ケイ酸塩ナノ粒子サイズが30nmである、判明したTGA値の7.8%、13.5%、18.5%と同様である。
【0032】
驚くべきことに、ケイ酸塩シェルの厚さは、PVPの選択により、厳密に制御できることが判明した。従って、シェルは、実施例P1に係る微粒子の場合、10〜30nmの間の厚さであり、P2の場合、30〜45nmの間の厚さであり、P3の場合、40〜70nm間の厚さである。ここで、各々の場合において選択される、使用されるTEOSの体積と、使用されるポリマーコアの質量との比率は3:1であり、例えば、使用されるTEOSが3ml、コア粒子が1gである。更に、厚さまたは構造において、もはや何らかの確実な変化は無い。ここでは、工程において、TEOSの量は9:1の比率まで試験された。それより下、換言すると、例えば1:2または1:1の比率において、より小さいケイ酸塩ナノ粒子は、各々の場合において、単一の層(単分子層)内に付着でき、それにより、比較的低いPVP鎖長でも、開放構造を形成する。ハイブリッド微粒子について最初に言及した用途の観点から、閉鎖型のシェルが望ましい。なぜなら、開放型のシェルは時折、あまり安定的でないからである。ケイ酸塩ナノ粒子は、例えば剥がれ落ちることがあり得て、ここで、および、他でも説明されるように、より大きい生体分子の場合、比較的弱い解析信号が得られる。粒子を利用したアッセイにおける分析用途の観点から、表面積の増加による利点は、おそらくP3に係る粒子の場合のみ、特に、ハイブリッド微粒子への付着のためにより小さい分子が好ましい場合、または、比較的小さい分析物がアッセイにおいて試験されている場合に、上述の短所を上回る。
【0033】
この実施形態の利点は、3:1の最小限の量のTEOSが使用される場合、製造方法の再現性が高いという事実から生じる。なぜなら、シェルの厚さおよび構造は、何らかの確実な変化をそれ以上起こさないからである。
【0034】
更なる実施形態によれば、提案されるハイブリッドマイクロ粒子は、上記の円滑な閉鎖型のシェル構造、および/または、上記の丘状の閉鎖型のシェル構造を含み、窒素吸着によって決定されたC値を介して検出可能な何らかのマイクロ細孔を含まない。従って、対象の微粒子の天然ケイ酸塩シェルには、マイクロ細孔、メソ細孔、マクロ細孔が無い。
【0035】
この実施形態の利点は、開放型のシェルと対照的に、異なるサイズの分子について、解析またはクロマトグラフィの用途のための表面の利用可能性が増加するという事実から生じる。例えば、閉鎖構造の場合より、開放構造の場合の方が、比較的少ないより大きい生体分子(1nmより大きい)が、存在する領域に結合することがあり得る。
【0036】
更なる実施形態によれば、ポリマーコアの代わりに空洞を有する微粒子が提案される。この結果、元々はポリマーコアを囲んでいた二酸化ケイ素シェルは、現在では空洞を囲んでいる。二酸化ケイ素シェルは、無傷かつ閉鎖型、または、無傷かつ開放型のいずれかであり得る。この場合、微粒子は、より狭い意味で、二酸化ケイ素を含む中空球であり得る。
【0037】
利点は、ハイブリッド微粒子の構造を制御することが可能であることから直接生じる。なぜなら、コアの熱分解の結果、ケイ酸塩シェルの構造における確実な変化が無いからである。従って、次に、円滑な丘状かつ裂けた中空球を製造することができる。しかしながら、この場合、粒子が閉鎖型か、または、開放型かについての何らかの定義はもはや存在しない。なぜなら、PVPの燃焼は、細孔構造において、確実な変化を引き起こし得るからである。
【0038】
構造的に制御された中空ケイ酸塩球は、対応する測定および試験法において、生物学的または人工的な小胞またはリポソームのために、比較的不活性で、頑丈で、単分散の模倣物または基準材料として使用できるマイクロスケールの物体の製造に特に好適である。
【0039】
更なる実施形態によれば、円滑または丘状シェル構造(粒子P1およびP2)を有し、実質的に細孔が無い表面を有する、上記の粒子は、RF値の増加と共にますます増大する比表面積を有する。
【0040】
この実施形態の利点は、官能基化のためにこの表面積が利用可能であり、純粋なポリマー粒子と比較して、より高い密度の官能基を1つの粒子上に生成可能であるという事実から生じる。
【0041】
更なる実施形態によれば、ポリマーコアおよびシェルを含む球状微粒子を製造するための方法が提案され、シェルは二酸化ケイ素を含み、ケイ酸塩シェルの構造は、1から1.5の範囲のRF値(実施例P1に係る、円滑な閉鎖型のシェル構造)、1.51から3の範囲のRF値(実施例P2に係る、丘状の閉鎖型のシェル構造)、または、3.01より大きいRF値(実施例P3に係る、裂けた開放型のシェル構造に対応する)を有する。
【0042】
本発明の粒子の特性評価または区別に使用されるRF値は、本明細書において、Lippens and de Boerに係るtメソッドを使用して、ハイブリッド微粒子の外表面積(A
hybrid microparticle,external)から、存在する任意のマイクロ細孔の表面積を減算した値を最初に決定することによって決定できる。追加的に、すべての粒子についての理想的な球状形態は粒子の電子顕微鏡写真の画像解析によって決定できるという仮定に基づいて、ハイブリッド微粒子の理想的な表面積の平均(A
hybrid microparticle, ideal)は、粒子直径の算術平均から計算される。次に、この外表面積と、ハイブリッド微粒子の理想的な表面積の平均との比率が形成される。得られる比率は、ここではRF値と呼ばれる。
【数3】
【0043】
代替的に表すと、RF値は、窒素の吸着を受けるハイブリッド微粒子の外表面積と、ハイブリッド微粒子の算術平均直径に等しい直径を有する球体の表面積との比率として計算できる。この場合、ハイブリッド微粒子の各々は、理想的な球とみなされる。
【0044】
利用可能な窒素吸着データが無い場合、RF値は、電子顕微鏡写真から推定できる。この場合、閉鎖型のシェル(円滑または丘状)について、ケイ酸塩シェルを含む、大部分が共に融合したケイ酸塩ナノ粒子の平均的な膨張の各々の場合において評価が行われ、その表面積が計算される。これにより、最大でその直径の半分まで膨張するケイ酸塩ナノ粒子を仮定して、1から2の間の理論上あり得るRF値が得られる。ケイ酸塩ナノ粒子のサイズは、この場合には関係ない。なぜなら、表面の増大を決定するのは膨張だけだからである。丘状ハイブリッド微粒子について得られるRF値は、いくつかの場合、窒素吸着によって決定可能であるように、実質的に2から3の間に位置する。この理由は、いくつかの場合にその半径を超えて膨張した追加のケイ酸塩ナノ粒子であり、これは、ケイ酸塩シェルに接着し、および/または、このシェルおよび/または他のナノ粒子と融合する。
【0045】
本明細書において提案される製造方法は、ラジカル重合反応によるポリマーコアの調製、ゾルゲル処理を使用する、ケイ酸塩シェルによるポリマーコアの被覆、有機クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体によるケイ酸塩シェルの外表面の官能基化の工程を少なくとも含み、調製は、ACVA、または、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)から選択される、ホモリシス開裂可能な開始剤の使用を含む。
【0046】
この方法の利点は、既に上述したように、得られるハイブリッド粒子の優位性を含む。ACVA(4,4‐アゾビスシアノ吉草酸、CAS:2638−94−0)をポリマーコア合成のためのラジカル開始剤として使用することの特定の利点は、安定保存物質であるACVAは、CLP規制の下の何らかの並外れた予防措置を必要としないという事実から生じる。そのような測定は、研究所での取扱い、また、物質の輸送についての保護措置を含む。更に、ACVAを使用するとき、粒子の表面上にカルボン酸基が形成される。これらの基は、粒子の追加の静電気的安定性を保証し、このことは、比較的低い分子量(25000Daより小さい)のPVPを有する粒子でも、狭い粒度分布で調製できることを意味する。更に、これは、後のケイ酸塩シェルの被覆のために、直接的に表面上にある追加の結合部位を保証する。なぜなら、シリカ中間体および/またはケイ酸塩ナノ粒子は、酸塩基相互作用により、被覆操作中にこれらに接着できるからである。
【0047】
更なる実施形態によれば、ハイブリッド微粒子のケイ酸塩シェルの構造は、使用される特定のPVPの平均分子量を通して調整できる。従って、RF値が1から1.5の範囲にあり、実質的に円滑な外表面を有する閉鎖型のシェル構造(P1に係る、
図1のaを参照)を取得するべく、約10000ドルトン、換言すれば、7000から11000ドルトンの平均分子量を有するPVPが、ポリマーコアの外表面上に共有結合する。一方、RF値が1.51から3の範囲にあり、実質的に丘状の外表面を有する閉鎖型のシェル構造(P2に係る、
図1のbを参照)を取得するべく、10000ドルトンより大きく、約58000ドルトンまで、より好ましくは、25000ドルトンから58000ドルトンの間にある平均分子量を有するPVPが、ポリマーコアの外表面上に共有結合された形態で存在する。実質的に開放型であるシェル構造(P3に係る、
図1のcを参照)を取得するべく、本発明によれば、58000ドルトンより大きい平均分子量を有するPVPの共有結合性連結が提案され、この場合、ケイ酸塩シェルの好ましい裂けた構造は、種々の数の高密度の層における、異なるが実質的に均一のサイズの個々のケイ酸塩ナノ粒子の累積から実質的に成る。この場合、3.01より上のRF値を確立することがあり得る。
【0048】
この実施形態の利点は、コア粒子合成中、PVP安定剤の選択によって、コア粒子上に堆積するケイ酸塩シェルの構造を直接決定することが可能であるという事実から生じる。ここでは、異なるサイズのコア粒子について、形成されるシェル構造は、各々の場合において同一である。すなわち、PVP鎖長とコア粒子のサイズとの間には、依存関係が無い。
【0049】
更なる実施形態によれば、「ポリマーコアの調製」の上述の工程(
図6の1を参照)において、ポリマーコアは、水の割合が0vol%から80%までである有機溶媒において合成され、使用されるモノマーは、各々の場合において、少なくとも1種類の重合性二重結合を有するスチレン、スチレン誘導体および/またはコモノマーであり、ポリビニルピロリドンはポリマーコアを安定化させるように働き、ACVAは開始剤として働く。ここで、重合性二重結合は、開始剤の存在下でラジカルを形成し、そのため、モノマー成分の架橋、および、ポリマーの形成を可能にする二重結合である。
【0050】
この実施形態の利点は、有機溶媒および水の割合の選択を通して、粒子のサイズに影響を与えることが可能であるという事実から生じる。ここでの規則は、極性溶媒(例えば、水の割合がより高い)の場合には、より小さい粒子が生成され、極性がより小さい極性溶媒(高級アルカン、トルエン、ヘキサンなど)の場合には、より大きい粒子が生成される。
【0051】
更なる実施形態によれば、上述の「ポリマーコアの調製」工程は、有機もしくは水性溶媒を用いて、または、有機および/もしくは水性溶媒の溶媒混合液を用いて、結果として生じるポリマーコアを洗浄することを含む(
図6の1‐5を参照)。ここで、および、下で使用される、ハイフンで接続された連続する番号の表記法は、スキームにおいてそれぞれの番号によって識別される、工程の順番、または、合成経路を意味する。代替的に(すなわち、洗浄の代わりに)、ケイ酸塩シェルを用いて被覆すること、および、同時に(
図6の1‐2を参照)、または、後に(
図6の1‐3‐4を参照)、直接に重合混合物中において、アルコキシシランおよび/もしくは有機クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体を用いて官能基化することがある。換言すると、次に、ケイ酸塩シェル、または、その官能基化された派生物は直接に、溶媒および水の混合物を含む重合媒体において成長する。この合成経路は、
図6のスキームによれば、シーケンス1‐2または1‐3‐4によって記載できる。既に知られている方法によれば、粒子は典型的には、被覆が実行される前に、まず洗浄される。本発明によれば、中間体の洗浄工程は省略される。その場合、合成経路1‐2、1‐3‐4、また、必要な場合、1‐5(簡易な洗浄)が含まれる。シェルは、有利なことに、官能基を含み得る。
【0052】
この実施形態の利点は、いくつかの合成工程が、本明細書に記載されるような、ハイブリッド微粒子の調製をもたらすという事実から生じる。上述の工程は、選択された特定の反応混合物の全体積と無関係であるので、実践に関連する量で、換言すれば、ミリグラムからグラムの規模で微粒子を提供できる。同様に、関連するモノマーの選択を通して、ポリマーコアの表面に存在する反応基の制御された適合が問題なく保証される。
【0053】
別の実施形態によれば、「ポリマーコアの被覆」という上述の工程(
図6、1‐5‐6、1‐5‐7を参照)は、アルコール溶媒および水の混合物の使用を含み、一方、アルコールの水の割合は、代替的に、0vol%から80vol%までの間である。被覆に使用される出発物質は、アルコキシシラン(
図6、1‐5‐7を参照)、および/または、有機クロロシランもしくはアルコキシシラン誘導体(
図6、1‐5‐6を参照)から選択され、被覆は、塩基、有機触媒、または、無機触媒の存在下で起きる。この触媒は、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび/または有機アミンから選択され、従って、上述の化合物のうちの1つ、2つだけ、または、3つすべてを含み得る。ここで、アルコキシシランと、有機クロロシランもしくはアルコキシシラン誘導体とを並べる上述の「または」によれば、アルコキシシランと、有機クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体とは、被覆工程において同時に使用され、官能基は次に、統計的分布において、シェルに組み込まれ、連続する層として連続的に成長しない。これにより、異なる配位子を異なる官能基に結合させた後に、異なる分析物について、粒子の特異性および感受性を制御することについての利点が生じる。
【0054】
この実施形態の利点は、異なる水の割合により、ゾルゲル処理が影響を受け、その結果、異なるサイズのケイ酸塩ナノ粒子が、異なる反応速度で形成され、次に融合してケイ酸塩シェルを形成するという事実から生じる。その結果、サイズが異なるが概して均一のサイズを有するケイ酸塩ナノ粒子の融合に従って、ケイ酸塩シェルの構造の細かい調整が可能になることがあり得る。追加的に、クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体を混ぜることにより(
図6、1‐5‐6を参照)、ここでは、官能基もシェルに直接組み込むことが可能になる。代替的に、反応の後に、クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体を混ぜることにより(
図6、1‐5‐7‐8を参照)、機能的な第2層が粒子上で成長する。従って、この実施形態は、スキームに示されるように、合成経路1−5−6および1−5−7を含み、場合によっては、この後続の経路を含む。
【0055】
ゾルゲル処理は、エタノールおよび水の混合物における無機物の重合を含み、出発物質、ならびに、結果として生じるシリカ中間体およびケイ酸塩ナノ粒子の加水分解および凝縮反応のプロセスを含む。最初に、短鎖オリゴマーが形成され、これは、反応の過程において成長して、より長い鎖を形成する。反応パラメータ(触媒、ならびに、出発物質(アルコキシシラン、有機クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体、および、それらの混合物から選択)の溶媒(混合物)、種類および濃度)によって決定できるある時点から、ケイ酸塩ナノ粒子は、反応媒体において、および/または、ポリマーコア上で、核生成を起こす。コア上、および/または、反応溶液におけるケイ酸塩ナノ粒子の成長は、とりわけ、ケイ酸塩シェルの形成に効果をもたらす。
【0056】
この実施形態の利点は、比較的低い分子量のPVPを使用して調製されるポリマーコアの場合に、カルボン酸が、シリカ中間体および/またはケイ酸塩ナノ粒子との相互作用について、自由に利用可能であるという事実から生じる。その結果、直接にポリマーコア表面上でケイ酸塩シェルを融合させることが好ましく、最終的に、円滑な閉鎖型のシェルが生じる。更に、結果として生じるケイ酸塩ナノ粒子と、表面に位置するPVPポリマーとの吸着がある。その結果、PVPの分子量が中等度である場合、丘状の閉鎖型のケイ酸塩シェルが形成される。なぜなら、ケイ酸塩ナノ粒子が、ポリマーコア表面からより遠い距離で吸着を起こすからである。この場合、表面上に直接形成されることが減少すると想定される。なぜなら、カルボン酸はより長いPVP鎖によって遮蔽されるからである。高い分子量では、最後に、ケイ酸塩ナノ粒子がポリマーコア表面からより遠い距離で吸着を起こし、裂けた開放構造のケイ酸塩シェルの形成につながる。
【0057】
別の実施形態によれば、上述の「ケイ酸塩シェルによるポリマーコアの被覆」の工程は、有機溶媒もしくは水性溶媒を用いて、または、混合物もしくは有機および/もしくは水性溶媒を用いて、結果として生じるハイブリッド微粒子を洗浄することを含む(
図6、1‐5‐7‐9を参照)。
【0058】
更なる実施形態によれば、官能基化は、有機溶媒、または、水性溶媒、または、混合物もしくは有機および/または水性溶媒から選択された中性反応媒体において、追加の触媒なしで、アミノ基修飾有機クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、APTESなど)により、二酸化ケイ素層の外表面にアミノ基を付加させることを含む(
図6、1‐5‐7‐9‐10を参照)。APTESは触媒として機能するので、例えば、APTESが、溶液中で、または、表面上で、他のシランの反応を触媒する場合、表面上での他のシランの共縮合もあり得る。
【0059】
この実施形態の利点は、このようにして、ケイ酸塩シェル上で多機能表面を形成することが容易であるという事実から生じる。従って、例えば、2つ(2価)、3つ(3価)、または、より多くのシランを表面に同時に適用できる。そして、混合比率および合計量は、さらなる最適化の対象になる。この目的で、例えば、混合比率1:1のAPTESおよびポリエチレングリコール修飾アルコキシシランが提案されている。有利なことに、ハイブリッド粒子上での生体分子の非特異的吸着は、大きく減少する。
【0060】
別の実施形態によれば、官能基化は、有機溶媒もしくは水性溶媒、または、有機および/もしくは水性溶媒の溶媒混合液から選択された反応媒体において、塩基性または酸性触媒を使用して、アミノ基で、または追加的に、アミノ基以外の官能基で付加することを含む(
図6、1‐5‐7‐9‐11を参照)。
【0061】
この実施形態の利点は、このようにして、ケイ酸塩シェル上で多機能表面を形成することが容易であるという事実から生じる。従って、例えば、2つ(2価)、3つ(3価)、または、より多くのシランを表面に同時に適用できる。そして、混合比率および合計量は、さらなる最適化の対象になる。この目的で、例えば、混合比率1:1のAPTESおよびPEG‐シランが提案されている。これにより、ハイブリッド粒子上での生体分子の非特異的吸着を大きく減少させることが可能になる。有利なことに、APTESを触媒として使用するとき、追加の塩基または酸なしで、純粋なエタノール、水性媒体または溶媒混合液において操作することが可能である。
【0062】
この反応において追加の触媒を使用する場合、機能性シランの堆積がますます多層化することが想定される。
【0063】
更なる実施形態によれば、使用されるPVPの平均分子量は、分子量が同一であるPVP分子の単分散混合物(または、分子量に関連して、実質的に均質な混合物)から選択される。代替的に、反応混合物は、定義されているが異なる平均分子量を有するPVP分子の不均一混合物を含む。定義された平均分子量(平均鎖長)を各々が有する市販のポリビニルピロリドン(とりわけ、コリドン(登録商標)およびルビスコール(登録商標)という商品名を有する製品を含む)が有利である。既に説明されたように、本発明によれば、二酸化ケイ素シェルの構造および表面積(これらは、比較の目的で、説明されたように決定されるRF値により定義できる)は、鎖長および/または分子量に関連してPVPを選択することによって調整される。
【0064】
この実施形態の利点は、分子量にまったく注意することなく、任意の分子量を有する定義された組からのPVPを使用するという既存の慣行と対照的に、本発明に係るPVPの分子量は特に、ポリマーコア上に構築されたケイ酸塩シェルの定義された構造をもたらすべく選択されるという事実から生じる。
【0065】
上述の方法の更なる利点は、利用される特定のポリマーコアの直径と無関係に構造(条件によれば、円滑な閉鎖型のRF値は1から1.5の間にあり、丘状の閉鎖型のRF値は1.51から3の間にあり、または、裂けた開放型のRF値は3.01より高い)を達成できるという事実から生じる。
【0066】
記載された製造方法では、このようにして、異なるが常に均一のサイズを有する、かつ、異なるが常に均一の調整可能な(結果として生じる)密度を有し、従って、同一の沈殿挙動を有する幅広い範囲のハイブリッド微粒子がアクセス可能であるという点で、ならびに、異なるが常に均一の調整可能な(結果として生じる)構造およびそれに関連する表面積を利用可能であるという点で有利である。
【0067】
別の実施形態によれば、製造される微粒子は、官能基化された表面を有し、官能基は、架橋によってケイ酸塩シェルの中に組み込まれているか(
図6、1‐2、または、1‐5‐6を参照)、または、官能基は、少なくとも部分的に、第1のケイ酸塩シェル上の有機クロロシランもしくはアルコキシシラン誘導体の閉鎖型の単分子層もしくは架橋された多分子層を構成するか(
図6、1‐3‐4、1‐5‐7‐8、1‐5‐7‐9‐10、または、1‐5‐7‐9‐11を参照)のいずれかである。
【0068】
この実施形態の利点は、ケイ酸塩シェルでは追加的に、有機クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体を含む第2のケイ素含有層を堆積させることが可能であるという事実から生じる(
図6、1‐3‐4、1‐5‐7‐8、1‐5‐7‐9‐10、または、1‐5‐7‐9‐11を参照)。この第2層は、任意選択で、見えないほど、または、高度な測定方法によって(例えば、ゼータ電位の測定によって)のみ検出可能であるほど薄いことがあり得る。
【0069】
別の実施形態によれば、導入されるアミノ基、および/または、導入される任意の他の官能基は、被覆反応においてクロロシランまたはアルコキシシラン誘導体と共に使用されるならば、ケイ酸塩シェルに共有結合的に組み込まれ、その中で統計的分布を示す(
図7、1‐2、または、1‐5‐6を参照)。
【0070】
この実施形態の利点は、官能基は、わずか2段階または3段階のプロセスでシェルに組み込むことができるという事実から生じる。
【0071】
更なる実施形態によれば、微粒子を製造するための方法は更に、200℃より高い温度でポリマーコアを燃焼し、中空球として、二酸化ケイ素を含むケイ酸塩シェルを残すことを含む。
【0072】
この実施形態の利点は、好適な温度状況(合成空気を含む燃焼雰囲気において、例えば、5K/分の加熱率で、500℃の期間を少なくとも10分間続け、好ましくは少なくとも20分間続け、より具体的には30分間続け、その後、5K/分の加熱率で、温度を800℃まで更に上昇させる)では、ポリマーコアを完全に燃焼させること、および、ポリマーコアを燃焼させるときに形成される気体が自由に流出することが可能になるという事実から生じる。提案される熱処理の結果、中空ケイ酸塩球が形成され、これらの中空ケイ酸塩球の表面の構造は、天然のハイブリッド微粒子のケイ酸塩シェルに対応する。特に、説明のようにハイブリッド微粒子の熱処理が実行された後、実施例P2およびP3によれば、結果として生じる中空ケイ酸塩球は完全に無傷である。
【0073】
別の実施形態によれば、スチレン、スチレン誘導体および/またはポリスチレン誘導体のラジカル重合のための開始剤として、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)の使用が提案される。
【0074】
この実施形態の利点は、ポリマーコアはその表面にカルボン酸基を有し、それがまず第一に、粒子の更なる静電安定性を保証し、PVP分子量が比較的低い(25000ドルトンより小さい)場合でも、単分散粒子を得ることを可能にするという事実から生じる。一方、これらの粒子は、カルボン酸とシリカ中間体および/またはケイ酸塩ナノ粒子との間の静電気および酸塩基相互作用を通して、ケイ酸塩シェルの堆積および融合が表面上で直接起こり、それにより、円滑な閉鎖型のシェルの形成を可能にすることを意図する。
【0075】
更なる実施形態によれば、説明されたように得られる微粒子を、クロマトグラフィ、より具体的には、浸透クロマトグラフィまたは親和クロマトグラフィの方法のための支持材料として使用することが提案される。提案されるクロマトグラフィ材料は、以下の観点による明白な分類によって特徴付けられる。
‐平均直径、もしくは、平均直径の範囲、および/または、
‐比表面積、もしくは、比表面積の範囲(比表面積は、m
2/gに変換できる単位で表される)、および/または、
‐RF値として再現される外側構造
‐シェル上に存在する官能基、もしくは、混合官能基の性質、または、それに結合した1もしくは複数の配位子の性質
【0076】
ここでは、平均直径は、対象の粒子の直径の算術平均を指す。この実施形態の利点は、階層的な細孔の寸法を構築することが可能であるという事実から生じる。なぜなら、一方でポリマーコアのサイズは一次として制御でき、または、シリカシェルを含むSiO
2ナノ粒子のサイズは二次として制御できるからである。追加的に、官能基化を通して、階層的に構築されたクロマトグラフィ材料の意図的な修飾が可能である。
【0077】
更なる実施形態によれば、ポリマーコアと、ポリマーコアを少なくとも部分的に囲むケイ酸塩シェルとを含む、説明のように製造されるハイブリッド微粒子を、粒子を利用したアッセイのための支持粒子として使用することが提案される。従って、粒子を利用したアッセイは、説明されたハイブリッド微粒子のうちの少なくとも1つを含み、ハイブリッド微粒子は、以下の列挙される特性のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。
‐サイズに基づく粒子の識別として利用できる、平均直径、または、平均直径の範囲
‐比表面積、または、比表面積の範囲
‐外表面、より具体的には、ポリマーコアを囲むケイ酸塩シェルの外表面の形態的構造(構造にはRF値を割り当てることができ、RF値は、1から3より大きいか、好ましくは、1から3の間の範囲であり、本明細書に記載の方法に従って決定できる)
‐ポリマーコアを形成するポリマーの密度(ポリスチレンの場合、1.05±0.1g/ml)の比率と、2.0±0.2g/mlである二酸化ケイ素層(ここでは、ケイ酸塩シェルとも呼ばれる)を含むシェルの密度の値との間で調整可能できる、ハイブリッド微粒子の密度
‐ケイ酸塩シェル上に存在する官能基、もしくは、混合官能基の性質、または、これらに結合した1もしくは複数の配位子の性質
‐担体粒子上に結合した人工または生物の受容体と、アッセイによって検出される分析物との特異的相互作用の結果として捕捉できる分析的に分析可能な信号(アッセイの分析的に分析可能な信号は、蛍光特性を含む)
【0078】
ハイブリッド微粒子の構造に基づく上記の分類に代わって、および、説明された実施例と同様に、分類は、RF値が1から1.5の間にある閉鎖型(円滑)、RF値が1.51から3の間にある丘状、および、RF値が3.01より大きい開放型(開放)の間のいずれかである範囲にあるRF値に微粒子を割り当てることを含み得る。
【0079】
この実施形態の利点は、粒子は、それらのサイズを介してコード化できる、すなわち、フローサイトメトリーまたは顕微鏡分析により、サイズに基づいて区別できるという事実から生じる。異なる分析物の検出のために、異なるサイズの粒子を互いに一緒に使用できる。同様に、用途分野に従って、好ましい特定の構造および比表面積の関連するサイズを適合できる。例えば、開放型のシェルは、小さい分子によって、より容易にアクセス可能であり、従って、ここでは、粒子あたりのより大きい密度を達成することが可能になる。これに対して、円滑な閉鎖型のシェルおよび丘状シェルの場合、より大きい生体分子と比較すると、立体遮蔽が減少し、この場合、これらは、より良い結合および/または吸着特性を有する。更に、粒子の密度が調整可能であるという事実は、特性評価および/または使用の前、間、また、後の取り扱いおよびコロイド特性に適合させるために利用できる。更に、ハイブリッド微粒子の光散乱は、ポリマーコアによって厳密に決定される。フローサイトメトリーにより決定できる散乱効率は、ケイ酸塩シェルの画分に応じて、少なくともポリマーコアと同じくらい大きいか、または、それより上である。
【0080】
更なる実施形態によれば、蛍光を利用した測定方法において、そのような支持粒子を使用することが提案され、ここで、測定方法は、フローサイトメトリー、または、蛍光顕微鏡検査法の方法、換言すれば、例えば、蛍光強度、蛍光量子収率、蛍光減衰時間、蛍光退色、または、蛍光回復(特に、先に蛍光が退色した後に、予め定められた閾値まで蛍光が増加する時間の測定)の蛍光光学測定を含む方法のうちから選択される。更に、マイクロ流体構造物における、または、平面支持体(チップ)上におけるフローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡検査法の小型版を含む測定方法においてハイブリッド微粒子を使用することが提案される。この場合、個々の粒子、および、粒子の集合は両方とも、個々のアッセイのためのプラットフォームとして利用できる。
【0081】
この実施形態の利点は、例えば、亀裂の結果として増加する外表面積(このようにして増加する表面積は、小さい分析物分子または蛍光色素分子の共有結合のために使用することに適している)の存在を通して、例えば、分析物感受性分子を有する微粒子(支持粒子)のロードの密度を介して、蛍光信号を指定できるという事実から生じる。別の例において、有利なことに、円滑および丘状ハイブリッド微粒子における支持粒子の密度を調整し、遠心分離によって、粒子を分散媒体から迅速に分離することを可能にすることがあり得る。このことは、洗浄工程にとって重要であり、例えば、0.5〜3μmのサイズ範囲の純粋なポリマー粒子と比較すると、遠心分離に必要な時間を少なくとも10倍節約することを達成することを可能にする。対応して増加した表面積(円滑なケイ酸塩シェルの場合は50%まで、丘状のケイ酸塩シェルの場合は200%まで)を有するケイ酸塩シェルは、依然として更なる簡易な官能基化のために利用可能である。更に、これらのケイ酸塩シェルはまた、比較的大きい生体分子によってアクセス可能である。
【0082】
説明されている実施形態は、互いに任意の方式で組み合わせることができる。
【0083】
本発明によれば、上記の実施形態は、ハイブリッド微粒子を形成するポリマーコア材料、および、二酸化ケイ素シェル材料の質量分率の比率を介して、結果として生じるハイブリッド粒子において、特定の用途に合わせた実効密度および実効散乱光挙動(前方散乱の観点から、全体的に少なくともポリマーコアのそれに対応する)を設定することを可能にする。提案される合成方法によれば、特定の用途に理想的に適合される特性を有する微粒子が提供される。
【0084】
添付の図面は、実施形態を図示し、説明と併せて、本発明の原理を明らかにすることに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0086】
特に、
図1は、各々の場合において、インレンズ二次電子検出器を使用して、走査電子顕微鏡検査により撮像されたときの典型的な粒子を示す。上の写真は、平均分子量が10000ドルトンであるPVPを使用して製造された、ケイ酸塩シェルのRF値が1から1.5の間にある、円滑な外観を有する粒子(実施例P1)を示す。中央の写真は、シリカシェルが丘状の構造(実施例P2)を有し、粗度係数が実質的に1.51から3の間の範囲にある微粒子を示す。そのような粒子は、平均分子量が40000ドルトンであるPVPを使用することによって製造された。下の写真は、撮像技法によりメソ細孔およびマクロ細孔を見ることができる、開放型のケイ酸塩シェル(実施例P3)を有する粒子を示す。これらの粒子は、以下でより詳細に説明されるように、平均分子量が360000ドルトンのPVPを使用して調製された。異なるサイズのケイ酸塩ナノ粒子の凝固によって形成された、粒子のケイ酸塩シェルは、上から下まで著しく変化する構造を特徴とする。3つの顕微鏡写真は専ら、天然粒子、すなわち、以下で詳細に説明される追加の熱処理を受けていない粒子を示す。
図2に係る熱重量分析は、5K/分の加熱率で、合成空気において粒子を熱に曝すことを含む。P2およびP3の両方の場合において、ケイ酸塩ナノ粒子の間にPVPがインターカレートされると想定する。PVPが熱的に除去される場合、対応する細孔を形成できる。特にP1の場合に、500℃、および、それより高い温度だけで、コアの一部が測定可能な流出を起こすように、シェルによってコアが熱分解および流出から保護されていることがTGAプロット図から分かる。
【0087】
図3は、ASAP2010(Micromeritics Instrument Corp.、アメリカ合衆国ジョージア州ノークロス)を使用して記録された、77ケルビンにおける、窒素のBrunauer‐Emmet‐Teller(BET)法による吸着および脱着等温線を示す。試料は、初期質量が少なくとも400mgであり、測定前に高真空において60℃で5秒間乾燥させた。ハイブリッド微粒子の外表面積は、tメソッドを使用して計算される。そのために、オングストローム単位の吸着層の厚さへの(p/p0)の必要な変換は、Harkins and Juraの概算
【数4】
を用いて行った(Harkins WD, Jura G, (1944)を参照)。次に、吸着データが層の厚さに対してプロットされる。次に、結果として生じる、3.5Åから5Åの間の吸着プロット図の点を通るベストフィットの直線の傾きと、A
external=傾き×15468の数式とに基づいて、粒子P1、P2およびP3のグラムあたりの外表面積を計算した。粒子あたりの表面積を決定するべく、理想的な球を仮定して、1グラム内の粒子の数が、1.05g/mlの平均密度を有する、それに含まれるポリマーコアの質量(熱重量分析によって得られる値から決定される)から計算される。次に、結果として生じる、グラムあたりの外表面積を、グラムあたりのハイブリッド微粒子の数で除算する。得られた数字は、A
hybrid microparticle,externalという略称の形式で示される。
【0088】
ハイブリッド微粒子の平均直径から開始して、すべてのハイブリッド微粒子について、理想的な球状の形態を仮定して計算できる表面積(以降、A
hybrid microparticle,idealと呼ぶ)は、以下のように決定される。透過型電子顕微鏡のために、100より多いハイブリッド微粒子を含む粒子試料が、炭素試料支持フィルム上で、室温で乾燥される。その後、試料支持体が、乾燥した粒子試料と共に、走査電子顕微鏡検査(15000倍の倍率、20kV、透過モード)により撮像される。この目的のために試料をスパッタする必要が無いので、微粒子のサイズは歪まない。100より多くの粒子の組について、透過光モードにおける検知において得られた、ある面の顕微鏡写真が、好適な画像解析ソフトウェア、例えば、ImageJ(登録商標)を用いて単色の顕微鏡写真(ビット深度:1ビット)として表され、白色の背景に対して黒色に見える粒子の面積が確認される。すべての粒子が理想的な球であると仮定して、撮像された粒子から確認された面積から、粒子直径が計算され、測定されたすべての粒子から、直径の算術平均値が決定される。この算術平均の粒子直径は、A
hybrid microparticle,ideal=π・d
2に従って、ハイブリッド微粒子の理想的な表面積を計算するために使用される。
【0089】
ここで最終的に、上で説明したように、実施例P1の粒子については1.33のRF値が得られ、実施例P2に係る粒子については1.72のRF値が得られ、実施例P3に係る粒子については4.84のRF値が得られた。
【0090】
図4は、典型的な粒子のケイ酸塩シェルの表面の走査電子顕微鏡写真(SE検出器)を示す。
【0091】
図5は、上下方向に、熱処理した微粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。一番上の画像は、実施例P1−Hに係る、円滑な外観を有する粒子を示し、そのRF値は、天然状態、すなわち、熱処理の前において、1.3前後の範囲にある。中央の写真は、平均分子量が40000ドルトンであるPVPを使用して、実施例P2に従って製造された天然粒子の熱処理後に存在する形態である、実施例P2−Hの粒子を示す。このような粒子は熱処理の前に、平均RF値が1.7である丘状表面を有する。下の写真は、熱処理前の天然状態において、ここでは裂けた開放型と呼ばれる、RF値が約4.84であるケイ酸塩シェルを有する、実施例P3−Hに係る粒子を示す。粒子P3は、PVP K360(平均分子量が360000ドルトンであるPVP)を使用して調製され、次に、熱処理された。熱処理は、3つの粒子クラスすべてについて同一であり、合成空気において、加熱率5K/分で、800℃までポリマーコアを段階的に燃焼し、その後、800℃で1時間にわたって一定の燃焼を行うことを含む。
【0092】
図7は、フローサイトメータにおける、それぞれのポリマーコアと比較した、微粒子(ポリマーコアおよびケイ酸塩シェルを含む)の前方散乱光(FSC)の散乱光信号を示す。試料を比較すると、散乱光強度は、一定の分布で増加していること、および、従って、少なくとも純粋なポリマーコアより上であることが明らかになる。
【0093】
ハイブリッド粒子は、米国公報6103379号、および、Bamnolker,Nitzan et al.1997から知られている。しかしながら、説明されているのは専ら、ケイ酸塩シェルの裂けた開放構造を有するハイブリッド微粒子の形成につながる、長鎖PVP(360000ドルトン)の使用である。TGAデータより、ハイブリッド微粒子の平均表面積を決定するための基準値として本明細書において利用される、ケイ酸塩ナノ粒子およびポリマーコアの平均サイズから、3.66、5.92、8.15のRF値を計算することが可能である。著者Hong, Han et al.(2008)は、環境に有害な毒性のAIBNを使用して、ポリマーコアを直接的に被覆するための、平均分子量40000ドルトンのPVPの使用を説明している。短鎖PVP(分子量が40000ドルトンより小さい)を用いて製造されるコアシェル粒子は知られていない。上記の公報のいずれも、PVPによる、ケイ酸塩シェルの構造に対する影響の示唆を何も提供していない。PVPは専らコア粒子を安定化するために使用される。そして、使用されるPVPの分子量による、シェルの微細構造に対する何らかの影響の示唆が明らかに無い。むしろ、PVPは単に安定剤として使用される。ケイ酸塩の被覆中に生じるプロセスに対する安定剤の影響は分かっていない。
【0094】
得られるハイブリッド微粒子の利用に関しては、考えられる用途は、表面被覆、または、コロイド結晶の生成のための、これまでの典型的な用途である。ハイブリッド微粒子が、個々の粒子に基づく分析用途に使用されることは、遥かに少なかった。この場合の例は、より良い官能基化のためのケイ酸塩シェルを備える、ランタノイドを添加したポリマービーズである(Abdelrahman 2011)。ここで、ポリマーコアは、疎水性の開始剤、PVP(分子量は約54000ドルトン)、および、追加の共安定剤を用いて調製され、約150nmより大きい厚さを有するケイ酸塩シェルを特徴とする。他の例は、量子ドット官能基化ビーズ(Cao,Huang et al.2006)またはラマン符号化ビーズ(Jun,Kim et al.2007)であり、これらは、ケイ酸塩シェルを用いて被覆され、次に、解析アッセイにおいて使用される。ここでは、ポリマーコアの合成において、PVPは使用されず、被覆は、ポリマーコアのスルホン化の後に行われ、ハイブリッド微粒子の構造、密度、または散乱光の質は制御されない。
【0095】
上記の手法は、フローサイトメトリー法または関連する小型版におけるハイブリッド微粒子の用途のための、狭い粒度分布、構造、密度、および、散乱光特性を有する、0.5μmから10μmの間の関連範囲内においてサイズを調整可能な天然のハイブリッド微粒子の制御された調製について、一般妥当性を有する何らかの合成経路を提供しない。ポリマーコアのラジカル重合のために通常使用される開始剤は、環境に負荷を与える毒性のAIBN(2,2'‐アゾビスイソブチロニトリル)である。更に、ここでは、PVP(25000ドルトンより小さい)を用いて単分散粒子を製造することが可能でないが、これは、円滑な閉鎖型の表面を調製するために、および、従って、RF値が1から3より大きい値の間、例えば、1から10までの間の構造範囲全体の獲得のために必要である。
【0096】
本発明によれば、ポリマーコアと、ポリマーコアを少なくとも部分的に囲む二酸化ケイ素シェル(ここではケイ酸塩シェルとも呼ばれる)とを含むハイブリッド微粒子を提供することにより、材料のアセンブリにおいて、コアの有機ポリマーの利点と、シェルの二酸化ケイ素の利点とを組み合わせることを提案する。目的は以下の通りである。
(a)ACVAを用いる、ラジカル重合におけるポリマーコア合成の利点を利用して、十分に狭い粒度分布を有し、0.5μmから10μmの間の異なるサイズを有する粒子を調製する。
(b)ポリマーコアおよびケイ酸塩シェルの質量分率により厳密に決定され、1.05から1.8の間である、好ましくは1.09から1.53の間である、ハイブリッド微粒子の実効密度を制御する。
(c)ポリスチレンと比較して、少なくとも粒子の散乱光強度を維持するが、更に、質量分率に従って、ケイ酸塩シェルが成長した追加分、強度を増加させる。
(d)PVPの平均分子量の選択に基づいて、円滑および丘状の閉鎖型(1から3の間の微粒子のRF値に対応)から、裂けた開放型(3.01より大きいRF値に対応)までの間の範囲で、ケイ酸塩シェルの構造に、流動的な調整をもたらすことができる。
(e)ケイ酸塩シェルの構造および関連する表面積を通して、分析物になり得るものによってアクセス可能な外表面積と、リンカを介して外面に連結された、または、外面に直接存在する、ハイブリッド微粒子の官能基とを厳密に決定する。この文脈における「厳密に」という単語はまた、外からアクセス可能な表面積を有する、コアを少なくとも部分的に囲む二酸化ケイ素シェルに加えて、自由にアクセス可能なポリマーコアの表面の画分も存在するというオプションを説明する。ポリマーコアの表面の自由にアクセス可能な画分は、それぞれのポリマーについて知られている方法に従って、化学的に修飾でき、必要に応じて、および、必要なとき、少なくとも1種類、または、2もしくはより多くの種類の配位子、もしくはその混合物を付加され得る。配位子は、生物の受容体(抗体、抗体の断片もしくはペプチド、反応性タンパク質、DNAもしくはDNAベースの生体高分子、多糖、または、それらの混合複合体)、分析物選択グループ、分析物感受性グループ、または、分析物親和性を有するグループ、蛍光色素、分子プローブ、原子クラスタ、量子ドット、有機もしくは更に無機ナノ粒子(例えば、金属ナノ粒子または金属酸化物ナノ粒子など)を含むものと理解される。
(f)二酸化ケイ素シェルによる少なくとも部分的な包囲の結果として、純粋なポリマーコアと比較して、粒子の化学的および物理的安定性を高める。
(g)アクセス可能なケイ酸塩の外表面、および、リンカを介してこれに連結された、または、それに直接結合されて存在する官能基に、必要に応じて、および、必要なとき、少なくとも1種類の、または、2もしくはより多くの種類の配位子、または、それらの混合物を付加する。配位子は、生物の受容体(抗体、抗体の断片もしくはペプチド、反応性タンパク質、DNAもしくはDNAベースの生体高分子、多糖、または、それらの混合複合体)、分析物選択グループ、分析物感受性グループ、または、分析物親和性を有するグループ、蛍光色素、分子プローブ、原子クラスタ、量子ドット、有機もしくは更には無機ナノ粒子(例えば、量子ドット、金属ナノ粒子または金属酸化物ナノ粒子など)を含むものと理解される。更に、例えば、分子インプリントポリマー層(MIP)の成長など、ケイ酸塩シェル上における更なるポリマー層の成長の追加が提案される。
【0097】
提案される方法は、ケイ酸塩表面としての物理的性質に基づいて、表面が、有機クロロシランまたはアルコキシシラン誘導体による、それぞれの望ましい化学修飾を容易に受ける、球状ハイブリッド微粒子を提供し、水に対する屈折率の十分に高い差、水溶液における沈殿の最適化された傾向、および、狭い粒度分布を示す。
【0098】
有利なことに、ハイブリッド微粒子の提案された概念は、開始剤ACVAの使用を含む提案された方法に従う、より容易に管理可能な合成を可能にする。なぜなら、当該開始剤は、AIBNと比較すると、環境に対する負荷および毒性が小さいからである。更に、輸送の場合に、AIBNの場合には生じる、危険な商品の移送のための追加の費用が生じない。ここで提示される合成は、ケイ酸塩シェルの微細構造に対する正確な制御を可能にする。特に、円滑な閉鎖型(RF値は1から1.5の間)から、丘状の閉鎖型(RF値は1.51から3の間)、開放型(RF値は3.01より大きい)まで、外側の粒子の表面積の表面を確立することが可能である。同様に、ケイ酸塩ナノ粒子の不完全な単分子層が、平均分子量が10000DaであるPVP、または、平均分子量が40000DaであるPVPを使用して製造されたポリマーコアに適用されるならば、ここで提案される製造方法を用いることで、3より小さい、より低いRF値を有する、開放構造を製造することも可能である。さもなければ、完全な単分子層が存在する場合、RF値はまた、3より大きいが、4より大きくないことがあり得る。これは、比較的小さい量のTEOSを用いることによって可能になる(TEOSと、使用されるPSの量との比率は、3:1より小さい)。しかしながら、これらの構造は、分析用途には、あまり好適でない。なぜなら、閉鎖型のシェルを形成するように融合していないケイ酸塩ナノ粒子は、コアから離れる傾向があるからである。最後に、そのような単分子層はまた、円滑と呼ばれないことがあり得て、P3と同様に、大きい分子によるアクセスのしやすさが減少するという問題がある。
【0099】
実際的な実施例によれば、コア粒子は、エタノール(96%)における分散重合において調製される。この目的のために、最初に、1.7gのPVP(異なる分子量を有するPVPの場合、等しい量)が、長円形の磁気攪拌機を備えた250mlの三つ口フラスコにおける100mlのエタノールに溶解され、75°で250rpmで撹拌した。同時に、50mlガラス製ビーカーにおいて、5mlのスチレン(代替的に、より大きい粒子の調製の場合、使用されるエタノールの量と比較して、4%から42%の体積分率に対応する、5mlから50mlの間の他の量のスチレン)、および95.4mgのACVA(使用されるスチレンの量に対して、2.1%の重量)が20mlのエタノールに溶解される。次に、2つの溶液は、アルゴンを用いて同時に30分間洗浄される。続いて、ACVAスチレン溶液が、予め加熱されたPVP溶液に加えられる。重合は、250rpmの撹拌速度で、75℃で、24時間にわたって実行される。次に反応混合物を30分間放置して冷却し、その後、得られた粒子は、遠心分離によって反応媒体から分離される。ここで、反応混合物は、50mlの遠心分離容器ごとに分割され、4000RCF(相対遠心力)で10分間にわたって遠心分離される。各遠心容器において、上清が除去され、粒子が30mlのメタノールに再分散される。続いて、各々の場合において、粒子を不純物から分離するべく、メタノールは2回置き換えられる。続いて、ポリマーコアは、真空オーブンにおいて12時間乾燥される。
【0100】
円滑な閉鎖型のハイブリッド粒子の調製のために、平均分子量10000ドルトンのPVPがポリマーコア合成において使用される。丘状の閉鎖型のハイブリッド粒子の調製のために、平均分子量40000ドルトンのPVPがポリマーコア合成において使用される。裂けた開放型のハイブリッド粒子の調製のために、平均分子量360000ドルトンのPVPがポリマーコア合成において使用される。
【0101】
実際的な実施例によれば、コア粒子は、ストーバー的条件(エタノール‐水混合物、および、触媒であるアンモニア)の下で、ゾルゲル処理において、ケイ酸塩シェルで被覆される。この目的のために、50mgのポリマーコアが、容量15〜20mlのガラスビーカーにおいて、5mlのエタノールおよび0.1mlの水に分散される。次に、150μlのTEOS(使用されるポリマーコアの量に対して3:1の比率)および150μlのアンモニア(濃縮、32%)が追加される。被覆反応は、磁気攪拌機を使用して、500rpmで撹拌によって実行される。18時間後、得られたハイブリッドコア粒子は、スナップ固定式の蓋を有する5mlの容器(エッペンドルフ)に移され、4000RCFで5分間遠心分離することによって、反応媒体から分離される。粒子は、遠心分離(4000RCF、5分間)することによって、3mlの水で2回、3mlのエタノール(96%)で1回洗浄され、洗浄媒体に再分散される。遠心分離およびエタノールからの分離の後に、粒子は最後に、室温で4時間、真空オーブンにおいて乾燥される。
【0102】
段落0042において上述された実際的な実施例P1、P2およびP3によれば、異なる粒子P1、P2またはP3が得られ、これに従って、被覆反応においてポリマーコアが使用された。
【表1】
より詳細な微粒子の分類が、例えば窒素吸着によって観察および検証されるマイクロ細孔、メソ細孔およびマクロ細孔に従って行われ得る(表2を参照)。
【表2】
【0103】
C値は窒素吸着によって決定され、マイクロ細孔が存在すること(C=50からC=150の間の値のみで、B.E.T吸着等温線によって高い信頼性で説明できる窒素吸着を想定できるため(Rouquerol et al.,1999))、および、マイクロ細孔が無いことについての情報を提供する。
【0104】
実施例P1およびP2について決定される値は、これのすぐ上である。従って、最小限の細孔が存在し得る。なぜなら、各々の場合において、ここでのC値は、150を少し超えているからである(表2を参照)。従って、200の値まで、マイクロ細孔が無い閉鎖型の粒子が定義される。P3は、増加した微細孔性、また、それと無関係に、撮像法により検出可能なメソ/マクロ細孔の増加を示し(
図4のfを参照)、その結果、粒子は開放型として分類される。
【0105】
また、マイクロ細孔は、窒素によってもアクセス可能である。ここでの重要な要素は、表面積は、窒素吸着によって(ただし、この場合、外表面積の割合を決定するためにtメソッドが用いられる)、または、撮像分析により表面積を評価することによって特性評価されるということである。ここでは、閉鎖型のシェルの間で区別が行われ、ケイ酸塩ナノ粒子の膨張のみが評価される、または、開放型のシェルの間で区別が行われ、個々のケイ酸塩ナノ粒子の表面積を合計することによって外表面積が提供される。以下で説明するように、ここでは、同等の結果が達成される。このようにして、他の特許および公報において記載される粒子について、客観的な評価および分類も可能である。
【0106】
しかしながら、脱着等温線(
図3を参照)に基づくと、メソ細孔自体は測定可能でない。なぜなら、さもなければ、IV型の等温線が予想されるからである。それにもかかわらず、50nmより小さいサイズの細孔は、撮像法(
図4のfを参照)により見ることができる。従って、ケイ酸塩シェルを囲む、ケイ酸塩ナノ粒子の開放型のアセンブリを想定できる。
【0107】
図3に示されるように、ハイブリッド粒子では、測定可能な比表面積が増加する。ここでは、表面積は、マイクロ細孔から生じる表面から外面を区別するtメソッドに基づいて決定された。この目的のために、Harkins−Juraの概算を使用して、相対的な圧力が、吸着した窒素分子の層の厚さに変換される。窒素吸着によって得られたデータは次に、計算された層の厚さに対してプロットされる。単分子層の形成と、毛管凝縮の開始との間の範囲に対応する、3.5Åから5Åの間のデータ点の線形回帰によって得られる傾きに基づいて、外表面積が計算される。粒子あたりの表面積を決定するべく、理想的な球の仮定に基づいて、1グラム中の粒子の数がそれに含まれるポリマーコアの質量(TGA値によって決定される)から計算される。次に、グラムあたりの外表面積が、グラムあたりのハイブリッド微粒子の数によって除算され、粒子あたりの外表面積が得られる。
【0108】
ここでは円滑な閉鎖型として識別される、P1に係るハイブリッド微粒子の表面積は、純粋なポリマーコアに対して(RF値1.33によれば)33%増加する。P2に係る、丘状の閉鎖型のハイブリッド微粒子の表面積は、(RF値1.72によれば)約72%増加する。融合して丘状の閉鎖型のケイ酸塩シェルを形成し、それらの直径の半分までの膨張を起こしたケイ酸塩ナノ粒子を有するポリマーコアの理想的な占有の場合において、予想される最大RF値は2である。直径の半分より大きいケイ酸塩ナノ粒子が、閉鎖型のシェルから分離して突出する場合、2より高く、3より低い、丘状の閉鎖構造のケイ酸塩シェルについてのRF値が得られる。
【0109】
P3に係る、裂けた開放構造の表面積は、純粋なポリマーコアと比較して、(RF値4.84によれば)384%増加する。tメソッドを使用する窒素吸着によって決定される表面積は、ここでは、コアの表面積と、約35nmのサイズを有する約3520個のケイ酸塩ナノ粒子の付着物との和に概ね対応する。ケイ酸塩ナノ粒子の数は、平均直径893.5nmを有する28.7%のレベルの粒子について、TGAによって測定されるケイ酸塩の割合に基づいて計算された。tメソッドに基づく、または、撮像法による、RF値の決定は、従って、同等の結果をもたらし、従って、窒素吸着データまたは画像解析を使用する、ハイブリッドコアシェル粒子の客観的分類を可能にする。
【0110】
各々の場合において、調整可能に増加される表面積は解析用途のために利用でき、例えば、捕捉剤および/もしくは受容体として利用可能な、小さい、および、大きい分子の共有結合性の連結、または、高い密度/微粒子を有する、および/もしくは、定義された単位面積あたりの密度を有する更なるポリマー層の可能性がある。
【0111】
しかしながら、更に、各々の場合において特定の解析作業に適合される特性を有する粒子を提供するべく、特別に確立された粒子密度を利用することもできる。例えば、1.05より高い密度を有する粒子は、水中で、より速い沈殿を起こし、および/または、遠心分離中に、著しく速い沈殿挙動を示し、このことは、特に製造、官能基化、および使用中の洗浄工程について、時間を大幅に節約できることを意味し得る。
【0112】
最後に、ハイブリッド粒子の特徴として、その散乱光特性は、ポリスチレンコアによって厳密に影響を受け、従って、散乱光強度は少なくとも、ポリスチレンコアのそれに対応する。これは、フローサイトメトリーにより測定されるような散乱光強度分散に基づいて確認できる(
図7)。この場合、各事例において、散乱特性および散乱光分布が保持されたまま、散乱光強度の増加が測定される。ハイブリッド微粒子におけるケイ酸塩の質量分率は、散乱光強度の増加に相関すると想定できる。
【0113】
本発明によれば、スチレンから、ならびに/または、スチレンおよび他の重合可能なコモノマーの混合物から開始して、あり得る水の割合が0〜80%であるアルコール溶媒におけるラジカル重合によって、ポリマーコアがポリビニルピロリドン(PVP)の存在下において調製される。75℃で使用されるラジカル重合開始剤は、ホモリシス開裂開始剤、好ましくはACVA(ACVA=4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、または、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸))である。有利なことに、ACVAは、人間および環境に対する毒性が小さく、更に、カルボン酸基を備えるポリマーコアを備え、これにより、重合中に追加の安定性を保証し、この理由から、比較的低い分子量(25000Daより小さい)のPVPを有するポリマーコアを狭い粒度分布で製造することもできる。二酸化ケイ素の被覆は、純粋な形態のアルコキシシランとのアルコール/水混合物において、または、出発物質であるこれらと、アンモニア、水酸化ナトリウム、もしくは有機アミンなどのアルカリ性開始剤との混合物において、ゾルゲル処理中に、有機または水性溶媒でコア粒子を洗浄した後に起こる。
【0114】
驚くべきことに、重合中に安定剤として使用されるポリビニルピロリドンの分子量は、ケイ酸塩シェルの構造に厳密に影響を与えることが明らかになった。特に、PVPの平均分子量に応じて、選択的に、円滑または丘状の閉鎖型表面から開放型の表面へケイ酸塩シェルの表面を構成することが可能であり、この場合、短鎖(平均分子量10000ドルトン)は、円滑な閉鎖型のシェル構造をもたらし、中等度の鎖長(平均分子量40000ドルトン)は、丘状の閉鎖型のシェル構造をもたらし、長鎖(平均分子量360000ドルトン)は、裂けた開放型のシェル構造をもたらす(
図1のaから
図1のc、
図4のa、
図4のd、または、
図4のb、
図4のe、および、
図4のc、
図4のfを参照)。
【0115】
科学的および技術的観点からは、狭い粒度分布、正確に制御可能な密度、好適な散乱光特性、および、ケイ酸塩シェルの構造および表面と併せて、調整可能なサイズを有する、提案されるハイブリッド微粒子は、特に粒子を利用した分析的用途のための、改善された革新的な球状のプラットフォームとしての役割を果たす。
【0116】
ポリマーコアのサイズにより、様々な用途のために粒子をコード化することが可能である。また、蛍光コモノマーを使用することによって、発光特性をコード化に使用することができる。
【0117】
また、蛍光分子、または、蛍光有機および/もしくは無機ナノ粒子が、色素コード化のために、例えばスウェリング(swelling)技法によって、共有結合ではなく統計的にコア内に組み込まれ得る。これは、コア粒子合成の後のポストコード化の可能性をもたらす。
【0118】
密度の意図的な適合は、分析用途に従って、比較的低い密度でコロイド安定性を増加させるべく(例えば、1.05から1.25の間)、または、より高い密度の場合(例えば、1.1から1.5の間)、遠心分離を用いて、より速く粒子を分離させるべく、粒子の沈殿挙動を制御することを可能にする。
【0119】
ハイブリッド微粒子のフローサイトメトリーの用途における散乱光強度は、一体化したシェルの質量分率に応じて、少なくとも、純粋なポリスチレンのそれと同等であるか、または、更に高い。従って、純粋なケイ酸塩微粒子と比較すると、ハイブリッド微粒子は、所与のサイズについて、より高い散乱光強度を生じさせる。
【0120】
同時に、ハイブリッド微粒子は、in situで、または、その後に、修飾によって官能基化できるシリカ表面を提供する。その結果、ハイブリッド微粒子表面上に、個々の官能基だけでなく、意図的な混合表面を生成することも可能であり、これらは有利なことに、目下の解析上の課題のために、各々の場合において、最適化することができる。
【0121】
最後に、ケイ酸塩シェルの構造は、異なる分子量を有するPVPによって安定化されるポリマーコアの選択を通して、制御された方式で調整することができる。ここで、表面積の増加が200%までの場合、円滑な閉鎖型、および、丘状の閉鎖型の構造は、より大きい分子によるアクセス可能性がより高い。逆に、裂けた開放型のケイ酸塩シェルは、大きい分子によるアクセス可能性が小さいが、表面積の非常に大きい増加を示す。これにより、小さい分子の適合がここで有利になる。
【0122】
本発明では、実施例を参照しながら説明してきた。これらの実施例は決して、本発明に何らかの限定を課すものとして理解されてはならない。以降の特許請求の範囲は、発明を一般的に定義するための、第1の限定されない試みを表す。
【0123】
[参考文献]
Abdelrahman, A. I. (2011). Lanthanide-encoded polystyrene microspheres for mass cytometry-based bioassays. Doctor of philosophy, University of Toronto.
Bamnolker, H., B. Nitzan, et al. (1997). "New solid and hollow, magnetic and non-magnetic, organic-inorganic monodispersed hybrid microspheres: synthesis and characterization." Journal of Materials Science Letters 16(16): 1412-1415.
Cao, Y. C., Z. L. Huang, et al. (2006). "Preparation of silica encapsulated quantum dot encoded beads for multiplex assay and its properties." Analytical Biochemistry 351(2): 193-200.
Harkins, W. D., and Jura, G., J. Chem. Phys., 11, 430 (1943); J. Amer. Chem. Soc., 66, 1362 (1944).
Hong, J., H. Han, et al. (2008). "A Direct Preparation of Silica Shell on Polystyrene Microspheres Prepared by Dispersion Polymerization with Polyvinylpyrrolidone." Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 46(8): 2884 - 2890.
Jun, B.-H., J.-H. Kim, et al. (2007). "Surface-Enhanced Raman Spectroscopic-Encoded Beads for Multiplex Immunoassay." Journal of Combinatorial Chemistry 9(2): 237-244.
Lippens, B.C.; de Boer J.H. (1965) Studies on pore systems in catalysts: V. The t method. Journal of Catalysis 4(3) 319-323
Rouquerol, F.; Rouquerol, J.; Sing, K.: Adsorption by Powders and Porous Solids, Elsevier, 1999 (ISBN: 978-0-12-598920-6).
S. Lowell, Joan E. Shields, Martin A. Thomas, Matthias Thommes: Characterization of Porous Solids and Powders: Surface Area, Pore Size and Density, Particle Technology Series, Kluwer Academic Publishers (2004), p. 130 - 132; ISBN 1-4020-2302-2
US 6,479,146 B1 (Fabrication of multilayer-coated particles and hollow shells via electrostatic self-assembly of nanocomposite multilayers on decomposable colloidal templates);
US 6,103,379 A (Process for the preparation of microspheres and microspheres made thereby)