特許第6806313号(P6806313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6806313アルロースを含むフルーツジャム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806313
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】アルロースを含むフルーツジャム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/12 20160101AFI20201221BHJP
【FI】
   A23L21/12
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-511770(P2019-511770)
(86)(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公表番号】特表2019-526259(P2019-526259A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】KR2017008489
(87)【国際公開番号】WO2018043935
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年2月27日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0112501
(32)【優先日】2016年9月1日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ス−ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, スン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】バク, ユン−キョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジョン ギュウ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン, ソン ベ
(72)【発明者】
【氏名】シム, ドン ソク
(72)【発明者】
【氏名】リ, イン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ドン チョル
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/075473(WO,A1)
【文献】 特開2014−113059(JP,A)
【文献】 特開2012−070708(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/140634(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0041349(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 21/00−51/25;29/20−29/206;29/231−29/30
A23L 5/00− 5/30;29/00−29/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実及びアルロース(allulose)を含有する糖を含む、フルーツジャムであって、
前記アルロースは、前記果実100重量部に対して200から300重量部で含まれ、
前記フルーツジャムは、硬度が16.2から21.9gfであり、展延性が0.8から1.1△g/△secである、フルーツジャム。
【請求項2】
前記アルロースは、前記糖100重量部に対して50重量部から100重量部で含まれるものである、請求項1に記載のフルーツジャム。
【請求項3】
前記フルーツジャムは、砂糖を含まないものである、請求項1に記載のフルーツジャム。
【請求項4】
(a)果実にアルロースを含有する糖を接触させるステップと、
(b)ステップ(a)の結果物を加熱するステップと
を含む、フルーツジャムの製造方法であって、
(a)ステップにおいて、前記アルロースは、前記果実100重量部に対して200から300重量部添加され、
前記フルーツジャムは、硬度が16.2から21.9gfであり、展延性が0.8から1.1△g/△secである、フルーツジャムの製造方法。
【請求項5】
前記製造方法は、果実に砂糖を接触させるステップを含まないことである、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
(a)果実にアルロースを含有する糖を接触させるステップと、(b)ステップ(a)の結果物を加熱するステップとを含む、フルーツジャムの気泡を減少させる方法であって、
(a)ステップにおいて、前記アルロースは、前記果実100重量部に対して200から300重量部添加され、
前記フルーツジャムは、硬度が16.2から21.9gfであり、展延性が0.8から1.1△g/△secである、フルーツジャムの気泡を減少させる方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アルロースを含むフルーツジャム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャムは、通常、果実または野菜に多量の砂糖を添加した後、煮詰めて粘性の強いゲル状を有するように製造したものである。したがって、ジャムは、多量の砂糖の含有によって微生物の生長を抑制するので保存性がよくなるが、摂取の際に過量の砂糖を取ることになるので、虫歯、急激な血糖の変化、及び肥満などの発生の可能性が高い。また、ジャムは、保管期間の経過につれてゲルに含有された分散媒である水が分離され、微生物安定性が減少する。併せて、従来のジャムの製造方法は、砂糖を高温で長時間煮詰めるため、煮こぼれ現象が発生し、これから発生した気泡が冷却後にも残存して官能が低下する。煮こぼれの防止のために多数の温度調節をする場合、労動力及びジャムの製造に要する時間が増加し、果実の栄養素の破壊及び食感の低下を来す。
【0003】
アルロース(allulose)は、D−フルクトースのC−3エピマーであって、干しぶどう、いちじく、小麦などに極めて微量で存在する天然糖の成分であり、砂糖に比べて70%の甘味度を有するが、g当たりのカロリーが0kcalで砂糖(g当たり 4kcal)の5%に過ぎないため、砂糖を代替することができる甘味料の原料として注目されている。ところが、ジャムに対するアルロースの適用は報告されたところがない。
【0004】
このような背景の下、本発明者達は、前述した従来のジャムの欠点を解決するために鋭意努力した。その結果、アルロースを利用してジャムを製造することにより、ジャムの製造時の煮こぼれ、官能品質及び保管安定性が改善されることを確認するに至って、本出願を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】KR10−0735865 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の目的は、アルロースを含むフルーツジャム、及びそれを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の目的を達成するため、本出願は、一態様として、果実及びアルロース(allulose)を含有する糖を含むフルーツジャムを提供する。
【0008】
本出願の用語『果実』は、人間が食べることができる木本性植物の実を意味し、ジャムの製造が可能な果実または野菜果実であれば、制限なく含まれてよい。野菜果実(例えば、いちご、すいか及びメロンなど)は、人間が食べることができる草本性栽培植物であるが、消費者の通念上、果実に取り扱われるので、本出願の果実に含まれるものと定義する。具体的に、本出願の果実は、オレンジ、蜜柑、レモン、グレープフルーツ、桃、杏、ぶどう、梨、リンゴ、パイナップル、いちご、クランベリー、ブルーベリー、アサイーベリー、ザクロ、バナナ、マンゴー、グアバ、すいか、メロン、梅、キウイ、またはこれらの混合物が含まれるが、これらに制限されない。
【0009】
本出願の果実は、天然果実から非可食部位が除去された原物に限定されるものではなく、その濃縮液または粉末が含まれてよい。また、本出願で用いられる果実は、果実原物、本出願のフルーツジャムの製造過程(例えば、加熱過程)において、前記果実原物が物理的に変化した場合、または果実原物内に含まれている成分が化学的変化を起こして果実原物と相違する成分を持つことになった場合を全て含み得る。
【0010】
本出願のアルロースは、天然物から直接抽出されたものであってよく、化学的合成、または生物学的方法で製造されたものであってよいが、これらに限定されない。
【0011】
本出願のアルロースは、果実100重量部に対して50から300重量部で含まれてよい。具体的に、本出願のアルロースは、果実100重量部に対して50−300、50−250、50−200、50−150、50−125、50−100、75−300、75−250、75−200、75−150、75−125、75−100、100−300、100−250、100−200、100−150、100−125、125−300、125−250、125−200、125−150、150−300、150−250、150−200、200−300、200−250または250−300重量部でフルーツジャムに含まれてよい。
【0012】
本出願のフルーツジャムは、糖成分として、砂糖を除いた甘味料1種以上を追加的に含み得る。前記甘味料は、公知の甘味料(例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール及び高甘味度甘味料)を含むが、これに制限されない。具体的に、前記単糖類は、例えば、アラビノース、キシロース、果糖、タガトース、アロース、葡萄糖またはガラクトースであってよく、前記二糖類は、二つの単糖が結合した糖であって、例えば、乳糖、麦芽糖、トレハロース、ツラノースまたはセロビオースであってよい。
【0013】
前記オリゴ糖類は、単糖が3分子以上結合された糖であって、例えば、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、マルトオリゴ糖またはガラクトオリゴ糖であってよく、前記糖アルコールは、糖類のカルボニル基を還元して生じた物質であって、例えば、エリトリトール、キシリトール、アラビトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトールまたはラクチトールであってよく、前記高甘味度甘味料は、砂糖に比べて10倍以上の甘味を有する物質であって、例えば、アスパルテーム、アセスルファムK、レバウジオシドAまたはスクラロースであってよいが、これらに制限されない。
【0014】
前記フルーツジャムは、ペクチン、有機酸またはその組み合わせをさらに含み得る。具体的に、本出願のフルーツジャムは、pH 2.0から5.0、pH 2.5から4.5、またはpH 3.0から4.0の酸度を有し、0.1から2.0%、0.2から1.5%、または0.2から1.0%の酸度を有し得る。本出願のフルーツジャムは、pHまたは酸度の調節のため、必要に応じて、有機酸(例えば、クエン酸、りんご酸、酒石酸、シュウ酸または酢酸)をさらに含み得る。
【0015】
また、本出願のフルーツジャムは、増粘剤(例えば、ペクチン、ゼラチン及びガム類などの多糖体)をさらに含み得る。
【0016】
本出願のフルーツジャムは、前述した成分以外にも、その他食飲用組成物に添加可能な多様な他の成分を含有してもよい。
【0017】
本出願のフルーツジャムは、砂糖を含まなくてよい。前記砂糖は、果実内に含まれている砂糖、またはフルーツジャムの製造過程で果実から生成される砂糖を除いた、外部から添加する砂糖を意味する。
【0018】
本出願のフルーツジャムは、10から80gfの硬度を有し、10から70gf、10から50gf、15から80gf、15から70gf、または15から50gfの硬度を有し得る。
【0019】
本出願のフルーツジャムは、0.5から3.0△g/△secの展延性を有し、0.5から2.8△g/△sec、0.5から2.0△g/△sec、または0.8から2.0△g/△secの展延性を有し得る。
【0020】
本出願は、他の態様として、(a)果実にアルロースを含有する糖を接触させるステップ;及び、(b)ステップ(a)の結果物を加熱するステップを含むフルーツジャムの製造方法を提供する。
【0021】
本出願の製造方法は、果実に砂糖を接触させるステップを含まなくてよい。下記実施例で立証したところのように、本出願の製造方法により、アルロースで砂糖を代替してフルーツジャムを製造することができ、本出願の製造方法によって製造されたフルーツジャムは、砂糖を利用して製造した従来のジャムと官能が類似しながらも、煮こぼれ及び離漿現象(synerisis effert)が減少するという効果がある。
【0022】
本出願のフルーツジャムの製造過程を詳しく説明する。
【0023】
まず、特定の果実を選択して水洗し、非可食部位(例えば、へた、皮または種)を除去した後、破砕する。破砕した果実の重量比に対して特定の重量比でアルロースを含有する糖を添加した後、混合して一定時間の間加熱し、室温で冷却させてフルーツジャムを製造することができる。
【0024】
本出願の加熱は、公知の全ての加熱方法によって実施することができ、非制限的な例として、500から1000Wの電子レンジを利用して1から10分間加熱してよく、または、ガスレンジを利用して5から30分間加熱してよい。
【0025】
本出願は、また他の態様として、(a)果実にアルロースを含有する糖を接触させるステップ;及び、(b)ステップ(a)の結果物を加熱するステップを含む、フルーツジャムの気泡を減少させる方法を提供する。
【0026】
本出願のフルーツジャムの製造方法、及びフルーツジャムの気泡を減少させる方法は、前記フルーツジャムと関連して記載された内容をそのまま利用することができるので、この両方の間に共通された内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるため、その記載を省略する。
【0027】
本発明は、砂糖を入れた従来のフルーツジャムや、砂糖の代りに糖アルコールを利用した砂糖無しフルーツジャムと比べる場合、単に砂糖や糖アルコールをアルロースで代替したものではない。通常の技術者は、天然果実にアルロースを混合するとしても、製造の過程において、果実に含まれている成分の変化でアルロースフルーツジャムの物性(pH、酸度、粘度、流れ性及び展延性)が如何に変わるのか容易に推測することができず、特に、アルロースを利用してフルーツジャムを製造する時、煮こぼれの程度及び保管安定性が如何に変わるのかを容易に推測することができないはずである。
【0028】
本発明は、天然果実にアルロースを多様な割合で混合し、過度なほどの繰り返し実験を介して、砂糖を利用して製造した従来のフルーツジャムと類似水準の物性を維持し、果実の栄養素の破壊及び食感の低下を来すことなく、煮こぼれ及び離漿現象を最少化したアルロースフルーツジャムを完成した。
【発明の効果】
【0029】
本出願のアルロースを利用して製造したフルーツジャムは、砂糖で製造した従来のフルーツジャムに比べ、製造中の煮こぼれ現象及び気泡の発生が最小限に抑えられて製造が便利である。さらに進んで、官能品質が改善され、水分含量の変化が減少して保管安定性を増加させることにより、賞味期限が延長されるという利点がある。また、熱量が非常に低く、展延性が良好であり、柔らかくてしっとりした食感が維持されるため、官能品質に優れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本出願のフルーツジャムの物性として、硬度と展延性を示すグラフである。
図2】砂糖のみを含む場合、本出願のフルーツジャムの硬度と展延性を示すグラフである。
図3】砂糖の代りにアルロースを含む場合、本出願のフルーツジャムの硬度と展延性を示すグラフである。
図4】本出願のフルーツジャムの保管安定性を示すための、保管期間(0日、3日、7日、16日及び30日)による水分残存率に対するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の理解を深めるため、実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は幾多の異なる形態に変形されてよく、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0032】
実施例1.フルーツジャムの製造
果実としていちごを準備して水洗し、非可食部位(へたなど)を除去した後、家庭用ミキサー(Vitamix corp.、VM0127)を利用して破砕した。破砕したいちごに砂糖またはアルロースを下記表1の通りの配合比で添加した後、500mlのガラス瓶に入れて混合し、700W電子レンジ(LG、MM−M301)を利用して5.5分間加熱した後、室温で12時間冷却させていちごジャムを製造した。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例2.ジャム製造時の煮こぼれの測定
前記実施例1のジャム製造の過程上で煮こぼれ現象を観察し、発生する気泡の高さ及び気泡量を測定した。前記気泡の高さは、気泡の最大高さから、容器に入れられた加熱前のジャムの高さを引算した値を意味する。
【0035】
その結果、いちごの重量に対してアルロースの添加量が増加するほど、気泡の高さ及び気泡量が減少することを確認した。また、比較例1の砂糖と同量のアルロースを添加した場合である実験例3は、比較例1より約10%の気泡発生低減の効果を示したところ、アルロースを添加してジャムを製造する場合、砂糖を利用してジャムを製造する場合より気泡の発生が減少することを確認した(表2)。したがって、ジャムを製造する時、砂糖の代わりにアルロースを用いることにより、気泡の発生を低減させてジャムの製造が容易になり、冷却後の気泡による空隙の発生も低減し得ることが分かった。
【0036】
【表2】
【0037】
実施例3.アルロースジャムの物性(pH、酸度及び展延性)の測定
3−1.pHの測定
比較例1及び実験例1から5を10gずつ取ってビーカーに入れた後、蒸留水を添加して10%(w/w)の水溶液を製造した。前記水溶液をろ過紙(Whatman)を利用してろ過した後、ろ過された液のpHをデジタルpH測定器(METTLER TOLEDO、SEVEN COMPACT with InLab No.1、150mm x 10)を利用して測定した。
【0038】
その結果、比較例と実験例のpHに有意差がなく、通常の流通されるジャムと同様にpH 3から4の水準を維持した(表3)。
【0039】
【表3】
【0040】
3−2.酸度の測定
酸度の測定は、アルカリ滴定法を利用して測定した。比較例1及び実験例1から5を1gずつ取ってビーカーに入れた後、蒸留水を添加して100倍希釈された水溶液%(w/w)を製造した。製造された水溶液に0.1N NaOH(大井化金(株)から購入)を添加してpHが8.2〜8.3に達するまで滴定しながら、費やされた0.1N NaOHの量を測定した。測定された値を利用し、下記式1によって、クエン酸の量に基づき各試料の酸度を下記式(1)で表した。
【0041】
酸度(%) = V x F x A x D x 1/S x 100[式(1)]
前記式で、各変数は次の通りである:
V:0.1N NaOHの消費量(mL)、F:0.1N NaOHの力価、
A:クエン酸係数 0.0064、D:希釈倍数、S:試料の採取量(mL)
【0042】
その結果、アルロースを用いて製造したジャムの酸度は、砂糖を用いて製造したジャムの酸度と有意差がなく、通常の流通されるジャムと同様に2%以下の酸度を維持した(表4)。
【0043】
【表4】
【0044】
3−3.硬度及び展延性
食感分析器(STABLE MICRO SYSTEMS、TAXT plus)を利用し、比較例1及び実験例1から5の硬度及び展延性を測定した。食感分析器の分析条件は、下表5に示した。
【0045】
具体的に、前記食感分析器の試料ホルダー(holder)に、比較例1及び実験例1から5の試料を同一の体積で空の空間がないように入れた。その後、前記試料ホルダーに入れられた比較例1及び実験例1から5それぞれの試料の表面から同一の高さ(30mm)に位置したプロブ(Probe;TTC SPREADABILITY RIG)が一定の力と速度(Test Speed及びPost Test Speed 1.0mm/sec)で動き、前記試料の表面に触れ合った時点から70%の深みまで圧力をかけるようにした。このとき、プロブが試料を押す力の最大強度を硬度(force)とし、これは、図1で、最大ピーク(peak)の高さで表れる。また、前記試料に継続的に圧力をかける時に発生する抵抗値の割合を展延性と定義し、これは、図1で、ピークの勾配(Δg/Δsec)で表れる。硬度値(gf)は数値が高いほど硬く、展延性[Gradient(g/sec)]は、値が小さいほど抵抗が低くて展延性に優れることを表す。
【0046】
【表5】
【0047】
その結果、比較例1のジャムと同量のアルロースを用いて製造したジャムである実験例3は、比較例1に比べて硬度及び展延性の数値が低く、実施例3から5は、市販の製品(市販品1:いちごジャム、(株)オットゥギ;市販品2:いちごジャム、ボクムジャリ)と比べる場合も、同等優位の硬度及び展延性を示すことを確認した(表6、図2及び3)。
【0048】
具体的に、比較例1は、図2のピークの最大値、すなわち、硬度が59.6を示した反面、実験例3は、図3のピークの最大値が38.0と確認され、砂糖を用いて製造した従来のフルーツジャムの砂糖と同量のアルロースを用いて製造したフルーツジャムの硬度が比較的に低く、柔らかい食感を有することを確認した。また、比較例1は、図2のピーク勾配、すなわち、展延性が2.9である反面、実験例3は、図3のピーク勾配が1.8と確認され、砂糖を用いて製造した従来のフルーツジャムの砂糖と同量のアルロースを用いて製造したフルーツジャムの抵抗値が低くて展延性が増進されたことを確認した。
【0049】
【表6】
【0050】
実施例4.官能の評価
アルロース及び砂糖が同量で添加された実験例3及び比較例1のジャム試料を、製造完了時点から24時間が経過した後、20代から50代の訓練された男女パネル16人を対象に項目別に評価して官能品質を比べた。
【0051】
具体的に、各パネルは、食パン(市販する製品)に各ジャムを自由に塗って摂取した後、与えられた属性(展延性、べたつき、口当たりの好み度、全般の好み度)を9点尺度法で表現した。定量化された各属性別の点数は、再度5点尺度(強度;1点−非常に弱い〜5点−非常に強い、好み度;1点−非常によくない〜5点−非常によい)に換算し、各属性に対する点数は、二つの試料の間のT−testに準じて分析した後、統計的有意差を表示した(p<0.05)。
【0052】
その結果、実験例3は、展延性に優れべたつく程度が低いため、食感分析器を利用して分析した展延性の結果と同一の傾向性を見せることを確認した。口当たりの好み度もまた実験例3が比較的に優れた傾向(p<0.1)を見せ、全般の好み度は比較例と有意差がなかった(表7)。
【0053】
【表7】
【0054】
実施例5.保管安定性
製造されたジャムの保管安定性は、保存期間内の水分の変化で確認した。ジャムのようにゲルの網状構造を有する食品は、保管と流通の途中、ゲルに含有されている分散媒(主に水)がゲルの外に分離され、分離された分散媒によって微生物の汚染及び増殖が促進されるため、品質が低下するか、人体危害性が増加する。したがって、水分の変化を低減させれば、保存安定性を増進することができる。
【0055】
具体的に、保管中の水分の変化は、ジャムの製造直後の水分の含量を測定し、脱湿条件で保管する過程で発生する水分含量の変化で確認した。すなわち、実施例1から5及び比較例1のジャム試料を20、RH(Relative Humidity、相対湿度)20%の条件で開封された状態で保管し、3日、7日、16日及び30日が経過した後に試料中の一部を取った。水分の含量は、常圧加熱乾燥法を利用して測定し、採取された試料の各5gを含量が確認された容器に広く塗布した後、100から103で常圧乾燥させ、その減少する量を測定した。
【0056】
その結果、比較例1は、保管中に継続的に水分を消失し、30日経過した時に初期値に対して52.1%の水分が残存した反面、実験例1から5は、64.5%から94.5%の水分が残存し、水分残存率が比較例より有意に高いことを確認した(表8、図4)。比較例1と同量のアルロースを添加して製造した実験例3は、30日経過した後の水分残存率が76%で、比較例1に比べて水分の保有力が約1.46倍以上優秀であり、アルロースの添加量が増加した実験例4から5の場合、30日経過した後にも約94%から97%以上の水分が残存したので、アルロースの添加がジャムの水分の変化を低減させることを確認した。
【0057】
【表8】
【0058】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の他の当業者は、本発明が、その技術的思想や必須の特徴を変更しなくとも、他の具体的な形態で実施され得るということを理解できるはずである。これと関連し、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものとして理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出される全ての変更または変更された形態が、本発明の範囲に含まれるものとして解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4