(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806322
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】アクティブコア電動モータ用の取り外し可能な差動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 48/40 20120101AFI20201221BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20201221BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
F16H48/40
F16H48/08
H02K7/116
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-184785(P2019-184785)
(22)【出願日】2019年10月7日
(65)【公開番号】特開2020-67183(P2020-67183A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】62/766,523
(32)【優先日】2018年10月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16/181,612
(32)【優先日】2018年11月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16/182,755
(32)【優先日】2018年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515301041
【氏名又は名称】アティエヴァ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュン−チェン フン
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー メイヤー
(72)【発明者】
【氏名】バラズス パルファイ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル デイヴィッド ケネディ
【審査官】
鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04467230(US,A)
【文献】
特開2014−019336(JP,A)
【文献】
特開2010−263761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/40
F16H 48/08
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータの中空ロータ内に統合するように構成されるギアアセンブリであって、
中空クロス部材であって、前記中空クロス部材が、
中央本体部分と、
前記中央本体部分内の中央本体貫通孔と、
複数の中空延在部材であって、前記複数の中空延在部材が、前記中央本体部分から外向きに延在し、前記複数の中空延在部材の各中空延在部材が、前記中央本体貫通孔と流体連通している、複数の中空延在部材とを含む、中空クロス部材と、
前記複数の中空延在部材に取り付けられた複数のギアと、
複数のピンであって、前記複数のピンのそれぞれが、前記複数の中空延在部材の対応する中空延在部材内でスライドするように構成され、前記複数のピンのそれぞれが、第1の位置と第2の位置との間で位置決め可能であり、前記第1の位置にある前記複数のピンは前記中空クロス部材に引き込まれ、前記第2の位置にある前記複数のピンは延出し、前記複数のピンが前記第2の位置あるとき、前記複数のピンの各ピンの第1の端部が、前記中空ロータの対応する開口部内に嵌合し、前記複数のピンが、前記第1の位置にあるとき、前記中空クロス部材が、前記中空ロータに妨げられずに嵌合する、複数のピンとを備える、
ギアアセンブリ。
【請求項2】
前記中央本体貫通孔が、前記中央本体部分内の中央に位置し、かつ、前記中央本体貫通孔が、前記複数のピンが前記第2の位置にあるときにロータ軸と同軸に位置合わせされる、請求項1に記載のギアアセンブリ。
【請求項3】
前記複数のピンが前記第2の位置に配置されているときに、前記中央本体貫通孔内に嵌合するように構成されるプラグ部材をさらに備える、請求項1に記載のギアアセンブリ。
【請求項4】
前記プラグ部材が、プラグ貫通孔をさらに備える、請求項3に記載のギアアセンブリ。
【請求項5】
前記複数のピンが前記第2の位置にあるとき、前記プラグ貫通孔が、ロータ軸と同軸に位置合わせされ、前記プラグ部材が、前記中央本体部分の前記中央本体貫通孔内に取り付けられる、請求項4に記載のギアアセンブリ。
【請求項6】
前記複数の中空延在部材が、前記中空クロス部材の前記中央本体部分の周りに均一に間隔を置いて配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のギアアセンブリ。
【請求項7】
前記複数の中空延在部材が、4つの中空延在部材を含む、請求項6に記載のギアアセンブリ。
【請求項8】
前記複数のピンの各ピンの第2の端部がテーパ形状になっており、前記複数のピンの各ピンの前記第2の端部が、前記中空クロス部材の前記中央本体部分の前記中央本体貫通孔に向かって内側に向けられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のギアアセンブリ。
【請求項9】
前記複数のピンが前記第2の位置にあるとき、前記中空クロス部材が、前記中空ロータ内にロックされる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のギアアセンブリ。
【請求項10】
前記複数のピンが前記第2の位置に配置されているときに、前記中央本体貫通孔内に嵌合するように構成されるプラグ部材をさらに備え、前記プラグ部材が前記中空クロス部材の前記中央本体部分の前記中央本体貫通孔に嵌合されるときに、前記プラグ部材が前記複数のピンを前記第2の位置にロックし、かつ、前記中空ロータ内に前記中空クロス部材をロックする、請求項1に記載のギアアセンブリ。
【請求項11】
複数のばね部材をさらに備え、前記複数のばね部材の各ばね部材が、前記複数のギアの対応するギアと、前記中空クロス部材の前記中央本体部分の対応する面との間に介在させられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のギアアセンブリ。
【請求項12】
前記複数のばね部材が、複数のベベルばねを含む、請求項11に記載のギアアセンブリ。
【請求項13】
複数のワッシャをさらに備え、前記複数のワッシャの各ワッシャが、前記複数の中空延在部材の対応する中空延在部材の端部に取り付けられ、前記複数のギアの各ギアが、前記複数のワッシャの対応するワッシャと、前記中空クロス部材の前記中央本体部分との間に介在させられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のギアアセンブリ。
【請求項14】
前記複数のワッシャが複数の摩擦ワッシャを含む、請求項13に記載のギアアセンブリ。
【請求項15】
前記複数の中空延在部材の各端部が、少なくとも1つの回転防止タブを含み、前記少なくとも1つの回転防止タブが、前記複数のワッシャの対応するワッシャの相補的な特徴部に嵌合し、前記少なくとも1つの回転防止タブが、前記複数のワッシャの前記対応するワッシャの回転を防止する、請求項13に記載のギアアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電気モータに関し、より具体的には、アクティブコア電気モータで使用するための取り外し可能な差動装置アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
高騰し続ける燃料価格および地球温暖化の悲惨な結果の両方に駆り立てられる消費者の要求に応えて、自動車産業は超低排出、高効率の自動車の必要性を徐々に受け入れ始めている。業界内の一部では、より効率的な内燃機関を設計することによって、これらの目標の達成を試行したり、その他では、ハイブリッドまたは全電気駆動系を自動車ラインアップに組み入れたりしている。しかし、消費者の期待に応えるために、自動車産業は、単に環境に優しい駆動系を実現するだけでなく、性能、走行距離、信頼性、安全性、およびコストの合理的な水準を維持しながら、実現しなければならない。
【0003】
低排出、高効率の自動車を実現するための最も一般的な手法は、内燃機関(ICE)を1つまたは複数の電気モータと組み合わせるハイブリッド駆動系を使用することである。ハイブリッド車により、従来のICEベースの自動車よりも改善された燃費および少ない自動車の排気量が実現されるが、内燃機関を搭載しているため、従来の自動車と比較して低減された水準ではあるが、有害な汚染物質を依然として排出している。さらに、内燃機関および電気モータとそれに付随するバッテリパックの両方が含まれていることに起因して、ハイブリッド車の駆動系は通常、従来のICEベースの自動車または電気自動車の駆動系よりも複雑であるため、コストおよび重量が増加する。したがって、いくつかの自動車メーカは、電気モータのみを使用する自動車を設計することにより、駆動系の複雑さを大幅に削減しながら、汚染源の1つを排除している。
【0004】
様々なハイブリッド車および、すべての電気自動車が周知されている一方で、乗員、貨物、およびその他の自動車部品/アクセサリの利用可能な空間を増やすために、縮小されたエンベロープ内に嵌合する高出力密度の動力伝達系が望まれる。縮小された動力伝達系エンベロープを実現する1つの方法は、遊星−差動装置−遊星構成を使用して、トラクションモータを駆動輪軸と同軸に位置合わせさせることである。そのような設計では、差動装置は電気モータのロータ内に統合し得て、この構成は一般にアクティブコアモータと呼ばれる。この手法により、小型の動力伝達系アセンブリを実現できるが、内部に取り付けられた差動装置の耐久性および保守性は、そのようなアセンブリを使用する電気自動車(EV)の性能と信頼性の両方に影響し得る。したがって、本発明は、耐久性があり、容易にアクセス可能/修理可能なアクティブコアモータ用の差動装置アセンブリを提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、電気モータの中空ロータ内に統合するように構成されるギアアセンブリを提供する。ギアアセンブリは、中空クロス部材、複数のギア、および複数のピンを含む。アセンブリの中空クロス部材は、中央本体部分、中央本体部分内の中央本体貫通孔、および中央本体部分から外向きに延在する複数の中空延在部材を含み、各中空延在部材は、中央に位置する貫通孔と流体連通している。好ましくは、中空延在部材が、中空クロス部材の中央本体部分の周りに均一に間隔を置いて配置されている4つの中空延在部材から構成される。複数のギアは、複数の中空延在部材に取り付けられるように構成される。複数のピンのそれぞれは、対応する中空延在部材内でスライドするように構成され、第1の引き込まれた位置と第2の延出された位置との間で位置決め可能である。ピンが延出されると、各ピンの第1の端部が中空ロータの対応する開口部内に嵌合し、中央に位置する貫通孔がロータ軸と同軸に位置合わせされる。ピンが引き込まれると、中空クロス部材が中空ロータに妨げられずに嵌合する。プラグ部材は、各ピンが第2の延在位置にあるときに、中央本体貫通孔内に嵌合するように構成され得る。プラグ部材は貫通孔を含み得て、プラグ部材が中空クロス部材の中央本体部分の中央本体貫通孔内に取り付けられるとき、プラグ部材貫通孔はロータ軸と同軸に位置合わせされ得る。
【0006】
一態様では、各ピンの第2の端部は、中空クロス部材の中央本体部分の中央本体貫通孔に向かって内側に向けられ、テーパ形状にされ得る。
【0007】
別の態様では、ギアアセンブリは、複数のばね部材(例えば、ベベルばね)を含み得る。これらのばね部材は、ギアの各々と中空クロス部材の中央本体部分の対応する面との間に介在させられる。
【0008】
別の態様では、ギアアセンブリは、複数のワッシャ(例えば、摩擦ワッシャ)を含み得て、各ワッシャは、対応する中空延在部材の端部に取り付けられる。その結果、ギアが中空クロス部材に取り付けられたとき、各ギアはワッシャの1つと中空クロス部材の中央本体部分との間に介在させられる。中空延在部材の各端部は、対応するワッシャの相補的な特徴部内に嵌合する少なくとも1つの回転防止タブを含み得て、回転防止タブはワッシャの回転を防止する。
【0009】
本発明の性質および利点のさらなる理解は、明細書および図面の残りの部分を参照することにより実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面は、発明の範囲を限定するものではなく、例示することのみを意図しており、縮尺通りであると見なされるべきではないことを理解されたい。さらに、異なる図面上の同じ参照符号は、同じ構成要素または同様の機能の構成要素を指すものと理解されるべきである。
【0011】
【
図1】本発明の差動装置アセンブリを組み込んだ動力伝達系アセンブリの断面図を提供する。
【0012】
【
図2】中空ロータシャフト内に取り付けられた本発明の差動ギアアセンブリの詳細な断面図を提供する。
【0013】
【
図3】
図2に示されるアセンブリの斜視断面図を提供する。
【0014】
【
図4】
図1〜
図3に示される差動ギアアセンブリの一部の正面斜視図を提供する図であり、この図は、ギアのうちの2つおよびラジアルピンのうちの3つのみを所定の位置に示す。
【0015】
【
図5】
図1〜
図3に示される差動ギアアセンブリの一部の背面斜視図を提供する図であり、この図は、ギアのうちの2つおよびラジアルピンのうちの3つのみを所定の位置に示す。
【0016】
【
図6】
図5に示されるアセンブリの断面図を提供する図であり、この図は、
図2に示される断面図と直交する。
【0017】
【
図7】
図1〜
図6に示される差動ギアアセンブリの斜視断面図を提供する図であり、この図は、4つのギアのすべてを所定の位置に示し、4つのラジアルピンのすべては取り外されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそれ以外を示さない限り、複数形も同様に含むことが意図される。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、および/または「含んでいる(including)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されるであろう。本明細書で使用される場合、用語「および/または」および記号「/」は、関連する列挙された項目の1つまたは複数の任意およびすべての組み合わせを含むことを意味する。さらに、第1、第2などの用語は、様々なステップまたは計算を説明するために本明細書で使用され得るが、これらのステップまたは計算は、これらの用語によって制限されるべきではなく、これらの用語は、あるステップまたは計算を、別のステップまたは計算と区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から全く逸脱することなく、第1の計算は第2の計算と呼ぶことができ、同様に、第1のステップは第2のステップと呼ぶことができ、同様に、第1の構成要素は第2の構成要素と呼ぶこともできる。
【0019】
図1は、差動ギアアセンブリ101は本発明に従って設計され、中空ロータシャフト103内に差動ギアアセンブリ101を組み込んだ動力伝達系アセンブリ100の断面図を提供する。アクティブコア構成を利用して、動力伝達系アセンブリ100は、遊星アセンブリ105、差動ギアアセンブリ101、および遊星アセンブリ107が同軸に位置合わせされるように配置されるため、比較的短い幅109の動力伝達系が作成され、幅109は、2つの等速(すなわち、CV)ジョイントハウジング部材の底面111の間で測定される。
【0020】
本発明に必須ではないが、図示されるアセンブリでは、中空ロータシャフト103が、ロータ積層スタックに直接接続されているため、電気自動車(EV)での使用に適した高速モータ比率構成を実現する。図示の実施形態では、積層スタックは、4つの積層パック層113A〜113Dから構成される。この積層スタック構成は、本発明に必須ではないことを理解されたい。ロータ積層スタックの周囲には、ステータ115がある。この図では、ステータの両方の端部から延在するステータ巻き線117が示されている。
【0021】
以下に詳細に説明するように、本発明は、電気モータのロータ内に取り付けられるように構成される取り外し可能な差動ギアアセンブリ101を提供する。出力駆動シャフト119は、ギア121を使用して差動装置アセンブリ101に連結される。
【0022】
図2は、ロータシャフト103内に取り付けられた差動ギアアセンブリ101の詳細な断面図を提供する。
図3は、
図2に示されるアセンブリの斜視断面図を提供する。
図4および
図5は、ギアアセンブリ101の一部のそれぞれ正面および背面の透視図を提供し、これらの図は、ギアのうちの2つおよびラジアルピンのうちの3つのみを所定の位置に示す。
図6は、
図5に示されるアセンブリの断面図である。
図6に示される断面図は、
図2に示される断面図と直交していることに留意されたい。
図7は、4つのギアがすべて所定の位置にあり、4つのラジアルピンがすべて取り外されたアセンブリ101の斜視断面図を提供する。
【0023】
アセンブリ101の主要な構成要素は、
図6および
図7に最もよく示されている中空クロス部材601である。クロス部材601の中央本体は、貫通孔603を含む。好ましくは、貫通孔603は円筒形状であり、より好ましくは、貫通孔603は円筒形状であり、かつ、図示のようにロータ軸201と同軸である。好ましい実施形態では、貫通孔603の形状と相補的な形状を有するプラグ203は、クロス部材601の貫通孔603内に嵌合するように構成される。好ましくは、プラグ203は貫通孔205を含む。ロータ軸201ならびにプラグ203の円筒軸と同軸であることが好ましい貫通孔205は、流体が、差動装置アセンブリの一方の側から他方の側へ、例えば、出力駆動シャフト119の間で容易に流れることを可能にする。典型的には、適切なギアオイルが貫通孔205を通って流れ、このオイルが、差動装置アセンブリならびに動力伝達系内の他の構成要素を潤滑にする。
【0024】
複数の中空延在部207は、クロス部材601の本体から外向きに延在する。各中空延在部207内の貫通孔605は、クロス部材601の中央開口部603内に延在し、かつ、流体連通している。各クロス部材延在部207の長さ607は、差動装置の統合中にクロス部材601が妨げられずに中空ロータ103内で確実にスライドできるように選択される。好ましい実施形態では、クロス部材601の本体の周りに均一に間隔を置いて配置される4つのクロス部材延在部207がある。しかし、他の構成が発明者らによって想定されることを理解されたい。例えば、アセンブリは、クロス部材601の本体の周りに均一に間隔を置いて配置される3つの中空延在部207を利用できる。同様に、アセンブリは、不均一な間隔、例えば、89度、91度、89度、および91度の間隔を置いて配置される4つの中空延在部207を利用できる。
【0025】
クロス部材をロータシャフト103に設置する前に、ギア209とギアベアリング617を、各クロス部材延在部207に設置する。好ましくは、ギア209は、サイズ、形状、および歯数が同一である。示されるように、ギア209は、隣接するギア間に空間609があるように選択され、したがって、動作中にギアが互いに干渉しないことを保証する。好ましい実施形態では、ワッシャ(例えば、摩擦ワッシャ)611は、ギアアセンブリの後で、各クロス部材延在部207の端部に配置される。各クロス部材延在部207の端面の一部から延在するタブ613は、ワッシャ611の相補的な開口部614内に嵌合することにより、対応するギアが回転するときに、ワッシャ611が回転することを防止する。少なくとも1つの実施形態では、ばね部材211(例えば、ベベルばねまたはブッシング)は、各ギア209とクロス部材601の対応する面616との間に配置される。
【0026】
4本のピン213は、中空ロータシャフト103の内側に差動装置アセンブリを保持する。ピン213は、図示のように、クロス部材とロータの対応する貫通孔215との間に延出しクロス部材延在部207内に嵌合する。その結果、クロス部材アセンブリはロータにロックされる。好ましくは、各ピン213の端部615はテーパ形状であり、したがって、アセンブリおよび分解プロセスを簡素化する。
【0027】
差動装置アセンブリをロータに挿入してから、それを所定の位置にロックするために、複数の方法があることが理解されるであろう。1つの手法では、(ばね部材211の有無にかかわらず、構成に応じて)ギア209およびベアリング617をクロス部材延在部207に取り付けた後、ピン213がクロス部材延在部207内に配置される。次に、ワッシャ611が設置される。アセンブリのこの段階では、プラグ203はクロス部材開口部603内に配置されていないことにより、ピン213が部材601に完全に挿入されることを可能にする。完全に挿入されると、ピン213の端部は延在部207の端面を越えて延出しない。この状態で、差動装置アセンブリは中空ロータシャフト103に挿入できる。ひとたび差動装置アセンブリがロータ103に挿入されると、ピン213はロータの対応する貫通孔215と位置合わせされる。ひとたび位置合わせされると、ピン213はロータ貫通孔215の中へ外向きに押される。特別な工具をクロス部材貫通孔603に挿入して、ピン213を対応するロータ貫通孔215の中へ外向きに押し得る。例示的な工具は、ピンを外向き方向に緩やかに押し進めるように構成されるテーパ形状の先端面を備えた円筒形状である。あるいは、プラグ203を使用して、ピンを外向きにロータ貫通孔215の中へ、外向きに押し進め得る。ピン213は、ロータ貫通孔215内で摩擦嵌合し得る。あるいは、好ましくは、ひとたびピン213が貫通孔215に完全に挿入されると、プラグ203はクロス部材貫通孔603に挿入され、そのことにより、ピン213が所定の位置にロックされる。これは、積層スタックまたは他の構成要素が既にロータシャフトに取り付けられている場合に、好ましいアセンブリ技術である。
【0028】
差動ロータアセンブリを組み立てる別の手法では、ばね部材211(使用する場合)、ギア209、ベアリング617およびワッシャ611をクロス部材延在部207に取り付けた後、クロス部材601がロータシャフト103内に配置される。アセンブリのこの段階では、ピン213はまだクロス部材に挿入されていない。好ましくは、プラグ203は、クロス部材貫通孔603に挿入されているが、ピンがクロス部材内に適切に配置された後に、貫通孔603に挿入することもできる。延在部貫通孔605が、ロータ貫通孔215と位置合わせされるように、ひとたびクロス部材601がロータ内に適切に配置されると、ピン213が、ロータ貫通孔215を通ってクロス部材延在部207内に押し込まれる。前述したように、プラグ203がクロス部材貫通孔603に予め挿入されていなかった場合、アセンブリプロセスのこの時点で挿入されることが好ましい。ひとたびピンが適切に配置されると、積層スタックまたはその他の構成要素がロータシャフトに取り付けられ、ピンがアセンブリから抜け落ちるのを防ぐ。
【0029】
必須ではないが、本発明の少なくとも1つの実施形態では、各ピン213の端部615は、
図2および
図3に示されるように小さな開口部217を含む。開口部217により、ロータから積層スタックまたは他の構成要素を取り外すことなく、工具を使用してピンをクロス部材601に容易に引き込めることができる。したがって、差動装置アセンブリのメンテナンスが必要な場合、ロータアセンブリを完全に分解せずにロータから取り外すことができる。
【0030】
システムおよび方法は、本発明の詳細を理解する補助として一般的な用語で説明されてきた。いくつかの例では、本発明の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、材料、および/または動作は、具体的に示されていないか、または詳細に説明されていない。他の例では、本発明の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が述べられている。当業者は、本発明が、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、例えば、特定のシステムまたは装置もしくは状況または材料または構成要素に適合するように、他の特定の形態で実施され得ることを認識するであろう。したがって、本明細書の開示および説明は、本発明の範囲を限定するものではなく、例示することを意図したものである。