【実施例】
【0029】
[モノクロラミン水溶液の調製]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(残留塩素量:140g/L)を脱イオン水で残留塩素量が2g/Lになるように希釈した後、30%硫酸アンモニウム水溶液(硫酸アンモニウム(キシダ化学(株)製)30gを脱イオン水で溶解し、全量を100gとしたもの)を混合し、残留塩素と窒素とのモル比が1:1.2となるようにモノクロラミン水溶液を調製した。
【0030】
(実施例1)
[ミルクカートンを用いた離解効果確認試験]
現場で採取したミルクカートン古紙を約2〜4cm四方の紙片に裁断して試験紙片を得た。得られた試験紙片6g及び現場で採取した工程水(pH7.9)300mLを市販の家庭用ミキサーに加え、そこに調製したモノクロラミン水溶液を残留塩素量が10mg/Lとなるように添加し、1分間ミキサー処理を行いパルプスラリーを得た。
得られたパルプスラリー中の試験紙片のほぐれ具合を目視で確認し、離解効果を下記の評価基準で評価した。その結果をパルプスラリーのpHとともに下記表1に示す。なお、ブランクとして、モノクロラミン水溶液を添加しない以外は、同様にパルプスラリーを調製して評価を行った。
<評価基準>
3:完全にほぐれている(膨潤した試験紙片が8割以上)
2:ほぼほぐれている(膨潤した試験紙片が5割〜7割)
1:一部ほぐれている(膨潤した試験紙片が2割〜4割)
0:ほとんどほぐれていない(膨潤した試験紙片が1割以下)
【0031】
<pHの測定>
パルプスラリーのpHは、卓上型pHメーター(堀場製作所製F−73)を用いて室温で測定した。
【0032】
<残留塩素量の測定>
残留塩素量は、ラボ用残留塩素計(笠原理化工業製DP−3Z)を用いて残留塩素濃度換算で測定した。
【0033】
(実施例2)
モノクロラミン水溶液を、残留塩素量が15mg/Lとなるように添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0034】
(実施例3)
モノクロラミン水溶液に加えて、水酸化ナトリウム水溶液を対固形分濃度が0.2重量%となるように添加した以外は、実施例2と同様に行った。
【0035】
(比較例1)
モノクロラミン水溶液に代えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を残留塩素量が20mg/Lとなるように添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0036】
(比較例2)
次亜塩素酸ナトリウムに加えて、水酸化ナトリウム水溶液を対固形分濃度が0.2重量%となるように添加した以外は、比較例1と同様に行った。
【0037】
(比較例3)
モノクロラミン水溶液に代えて、水酸化ナトリウム水溶液を下記表1の量となるように添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0038】
【表1】
【0039】
モノクロラミン水溶液を添加した実施例1から3は、いずれもミルクカートン試験紙片を完全にほぐすことができた。
また、実施例1及び2に示すように、水酸化ナトリウム(アルカリ剤)を併用しない場合であっても、モノクロラミン単独でミルクカートン試験紙片を完全にほぐすことができた。
【0040】
(実施例11)
[古紙両面段ボール紙を用いた離解効果確認試験]
某製紙工場で採取した工程水に対し、調製したモノクロラミン水溶液を残留塩素量が3mg/Lとなるように添加し、その後6時間攪拌した。試験用離解機(熊谷理機工業株式会社製)に、約2〜4cm四方に裁断した古紙両面段ボール紙(Aフルート)約45gと、6時間攪拌した工程水1.5Lとを入れた。回転数2,000rpmで5分間離解処理を行い、古紙パルプ濃度が3重量%のパルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーを古紙パルプ濃度が1重量%になるように希釈し、その後、全量を試験用フラットスクリーン(熊谷理機工業株式会社製、スクリーンプレート:6カット(0.15mm))に加え、10分間処理した。スクリーン上の残渣を採取して残渣重量を測定し、下記式から離解率を算出した。その結果を下記表2に示す。パルプスラリーのpHは、実施例1と同様に測定した。
離解率(%)={(A−B)/A}×100
A:工程水と混合した古紙両面段ボール紙の重量(絶乾重量)(g)
B:残渣重量(絶乾重量)(g)
【0041】
(実施例12及び14)
モノクロラミン水溶液を、残留塩素量が10又は15mg/Lとなるように添加した以外は、実施例11と同様に行った。
【0042】
(実施例13及び15)
モノクロラミン水溶液に加えて、水酸化ナトリウム水溶液を対固形分濃度が0.5又は0.2重量%となるように添加した以外は、実施例12又は14と同様に行った。
【0043】
(比較例11−13)
モノクロラミン水溶液に代えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を下記表2に示す濃度となるように添加した以外は、実施例11と同様に行った。
【0044】
(比較例14)
水酸化ナトリウムに加えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を残留塩素量が20mg/Lとなるように添加した以外は、実施例11と同様に行った。
【0045】
(比較例15−16)
モノクロラミン水溶液に代えて、水酸化ナトリウム水溶液を下記表2に示す濃度となるように添加した以外は、実施例11と同様に行った。
【0046】
【表2】
【0047】
モノクロラミン水溶液を添加した実施例11から15の離解率はいずれも95%以上であり、比較例11から16と比較して高い離解率で離解することができた。実施例11、12及び14に示す通り、水酸化ナトリウム(アルカリ剤)を併用しない場合であっても、モノクロラミン単独で古紙両面段ボール紙を完全にほぐすことができた。実施例11に示す通り、モノクロラミンを使用することで、3mg/Lと低い残留塩素量であっても、95%の高い離解率で離解することができた。
【0048】
(実施例21)
[実機を用いた離解効果確認試験]
図1に示すような、パルパー11、クリーナー(除塵設備)12、スクリーン(除塵設備)13、及びフローテーター14を備える古紙パルプ製造設備を有する製紙工場Aの設備を用いて、本開示の効果確認試験を実施した。当該設備において、パルパー11に供給される処理水(モノクロラミン水溶液添加前の処理水)は、約5重量%のスラリーを含有し、パルパーにおいて対固形分(古紙)重量が2.0kg/tとなるように水酸化ナトリウム水溶液が添加されている(pH9)。
上記処理水に、モノクロラミン水溶液を対固形分(古紙)重量が1.0kg/t(残留塩素量として5mg/L)となるように連続添加しながら、パルパー11で古紙の離解処理を行った。モノクロラミン水溶液添加後のパルパー11におけるpHは9であった。
【0049】
<評価>
離解処理が促進されたかどうかは、パルパー11内のパルプスラリーにおける残渣の量(未離解率)、及びパルパー11後に配置された除塵設備(スクリーン13)を通過したパルプスラリーにおけるチリ(夾雑物)の量で評価した。離解が不十分であれば、パルプスラリーに含まれるチリ(夾雑物)の量が増加するからである。それらの結果を下記表3に示す。
・未離解率
パルパー11から排出されたパルプスラリーの一部を採取し、それを古紙パルプ濃度が1重量%になるように希釈し、全量を試験用フラットスクリーン(熊谷理機工業株式会社製、スクリーンプレート:6カット(0.15mm))に加え、10分間処理した。スクリーン上の残渣を採取して残渣重量を測定した。得られた残渣重量と、採取したパルプスラリー量に相当する古紙の重量(絶換重量)とを用いて、下記式から未離解率を算出した。その結果を下記表2に示す。
未離解率(%)={B/A}×100
A:古紙の重量(絶乾重量)(g)
B:残渣重量(絶乾重量)(g)
・スクリーン後夾雑物
スクリーン13を通過したパルプスラリーをパルプ固形分として100g採取し、それを抄紙した。得られた紙をダートカウンター(王子エンジ社製)で測定して紙中の夾雑物の面積を得た。
【0050】
(実施例22)
水酸化ナトリウム水溶液の添加量を0とした以外は、実施例21と同様に行った。その結果を下記表3に示す。
【0051】
(比較例21)
モノクロラミン水溶液に代えて、対固形分(古紙)重量が6.0kg/tとなるように水酸化ナトリウム水溶液、及び対固形分(古紙)重量が15.0kg/tとなるように珪酸ソーダを添加した以外は実施例21と同様に行った。その結果を下記表3に示す。
なお、比較例21は製紙工場Aにおける通常時の操業条件である。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、モノクロラミン水溶液を添加した実施例21及び22は、通常の操業条件である比較例21と比較して未離解率が低く、スクリーン後のパルプスラリー中のチリ(夾雑物)の量が大幅に減少した。よって、モノクロラミンの存在下で古紙の離解処理を行うことにより、離解を促進できるといえる。