特許第6806336号(P6806336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6806336-古紙パルプの離解促進方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806336
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】古紙パルプの離解促進方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 5/02 20060101AFI20201221BHJP
   C01B 21/09 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   D21C5/02
   C01B21/09
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-147004(P2017-147004)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-26958(P2019-26958A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年3月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】十河 功治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 寛
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−053054(JP,A)
【文献】 特表2015−525308(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/002945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21C 5/02
C01B 21/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプ製造工程のパルパーにおける離解処理を促進する方法であって、モノクロラミン含む処理液中で、古紙をスラリー状とする離解処理を行うことを含む、離解促進方法。
【請求項2】
前記処理液におけるモノクロラミン濃度が残留塩素量として3mg/L〜15mg/Lとなるように、前記パルパーに、モノクロラミン含む水溶液又はモノクロラミン生成しうる薬剤を添加することを含む、請求項1に記載の離解促進方法。
【請求項3】
前記モノクロラミンを含む処理液を古紙と混合することを含む、請求項1又は2に記載の離解促進方法。
【請求項4】
前記処理液のpHは、8.5以上10未満である、請求項1から3のいずれかに記載の離解促進方法。
【請求項5】
前記処理液におけるモノクロラミン濃度が、残留塩素量として3mg/L〜15mg/Lとなるように維持することを含む、請求項1から4のいずれかに記載の離解促進方法。
【請求項6】
モノクロラミン有効成分とする、古紙の離解処理を促進するための離解促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、古紙パルプの離解促進方法、及びそれに用いる古紙パルプ離解促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、森林資源保護やごみ処理等の環境問題等の立場から、印刷古紙の再利用が重要性を増している。古紙パルプは、回収された古紙をパルパーで離解処理した後、フローテーターで脱墨処理することを含むDIP工程によってパルプ繊維を採取し、それを抄紙すること等により製造される。図1に、古紙パルプの製造工程の一例を示す。図1に示す古紙パルプの製造工程は、パルパー11による離解処理と、クリーナー12及びスクリーン13による除塵処理と、フローテーター14による脱墨処理とを含む。パルパー11においてほぐされた古紙はスラリー状となり、得られたパルプスラリーはクリーナー12及びスクリーン13において異物が除去され、ついでフローテーター14においてパルプに付着したインクが剥離除去される。
【0003】
離解処理は、古紙パルプの製造工程における最初のプロセスであり、離解が十分でないと、最終的に得られる古紙パルプの品質や製造効率等に大きな影響を及ぼしうる重要な工程である。このため、離解処理を促進するための様々な方法が提案されている。離解処理を促進する方法としては、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤や、次亜塩素酸塩及び過酸化水素等の酸化剤、並びにリン酸エステル等の薬剤を使用する方法がある(例えば、特許文献1及び2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−281906号公報
【特許文献2】特開2010−236098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、紙は様々な加工がなされており、古紙パルプの原料となる古紙には様々な物質が含まれている。このため、従来の方法では、十分に離解することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、一態様において、古紙の離解処理効率を向上可能な新たな方法及びそれに用いる薬剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、古紙パルプ製造工程のパルパーにおける離解処理を促進する方法であって、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を含む処理液中で、前記離解処理を行うことを含む、離解促進方法に関する。
【0008】
本開示は、その他の態様において、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を有効成分とする、古紙の離解処理を促進するための離解促進剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、古紙パルプ製造工程のパルパーにおける離解処理の処理効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、古紙パルプの製造工程の一例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、一又は複数の実施形態において、古紙の離解処理を、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方の存在下で行うことによって、従来離解処理剤として使用されている酸化力の高い次亜塩素酸ナトリウムや、強アルカリである水酸化ナトリウムの存在下で行った場合と比較して、古紙を十分にほぐすことができ、離解効率を向上できるという知見に基づく。本開示の離解促進方法は、古紙パルプの製造工程において、古紙の離解処理を促進することを目的として、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を使用することを特徴とする。
【0012】
本開示の方法によって、古紙を十分にほぐすことができ、離解効率を向上できるメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推定される。
モノクロラミン及びモノブロラミンは、次亜塩素酸ナトリウムと比較して酸化力は高くない。しかしながら、モノクロラミン及びモノブロラミンは、古紙への浸透性が高く、それにより古紙がパルパー内の処理液になじみやすくなる。その結果、古紙が離解されやすくなり、離解効率が向上されると考えられる。但し、本開示は、このメカニズムに限定されなくてもよい。
【0013】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、離解処理時に使用するアルカリ剤の量を低減することができ、さらにはアルカリ剤を使用しない場合であっても、古紙を十分に離解することができるという効果を奏しうる。本開示によれば、一又は複数の実施形態において、得られる古紙パルプの白色度を向上できるという効果を奏しうる。
【0014】
本開示において「モノクロラミン」とは、結合塩素(結合型残留塩素)の一種であって、NH2Clで表される化合物(アンモニアの水素原子のうち1つを塩素原子で置き換えた化合物)をいう。本開示において「モノブロラミン」とは、結合臭素の一種であって、NH2Brで表される化合物(アンモニアの水素原子のうち1つを臭素原子で置き換えた化合物)をいう。モノクロラミン及びモノブロラミンは、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸塩とアンモニウム塩とを混合することにより生成できる。
【0015】
本開示において「離解処理を促進する」ことは、一又は複数の実施形態において、本開示の実施例のように、ほぐれ具合を目視で確認してもよいし、離解処理後の残渣の量で確認してもよい。離解処理を促進することとしては、一又は複数の実施形態において、離解率を向上できること、離解処理後の残渣の量を低減できること、離解処理時に要する時間を短縮できること、又は、離解処理時における機械的負荷を低減できること等が挙げられる。
【0016】
[離解促進方法]
本開示は、一態様において、古紙パルプ製造工程のパルパーにおける離解処理を促進する方法(本開示の離解促進方法)に関する。本開示の離解促進方法は、古紙パルプ製造工程のパルパーにおける離解処理を、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方の存在下で行うことを含む。
【0017】
離解処理をモノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方の存在下で行うこととしては、一又は複数の実施形態において、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を含む処理液中で、古紙の離解処理を行うことが挙げられる。モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を含む処理液としては、離解処理効率を向上させる点から、一又は複数の実施形態において、処理液におけるモノクロラミン及びモノブロラミンの合計の濃度が、残留塩素量として0.5mg/L以上、1mg/L以上、3mg/L以上若しくは5mg/L以上であり、又は30mg/L以下、25mg/L以下、20mg/L以下又は15mg/L以下であることが挙げられる。残留塩素量は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0018】
本開示の離解促進方法は、離解処理効率を向上させる点から、一又は複数の実施形態において、処理液におけるモノクロラミン及びモノブロラミンの合計の濃度が、残留塩素量として3mg/L〜15mg/Lとなるように、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を含む水溶液又はモノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を生成しうる薬剤をパルパーに添加することを含む。
【0019】
モノクロラミン及びモノブロラミンは、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸塩とアンモニウム塩とを混合することにより生成できる。モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を生成しうる薬剤としては、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸塩とアンモニウム塩とを含む薬剤等が挙げられる。次亜塩素酸塩としては、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム及び次亜塩素酸カルシウム等が挙げられる。アンモニウム塩としては、一又は複数の実施形態において、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硫酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム等が挙げられる。次亜塩素酸塩とアンモニウム塩とのモル比は、一又は複数の実施形態において、残留塩素と窒素とのモル比として1:1〜1:2、1:1.1〜1:2、1:1.2〜1:2、又は1:1.2〜1:1.6である。
【0020】
本開示の離解促進方法は、離解処理効率を向上させる点から、一又は複数の実施形態において、処理液におけるモノクロラミンの濃度が、残留塩素量として3mg/L〜15mg/Lとなるように維持することを含む。
【0021】
処理液のpHは、一又は複数の実施形態において、得られる古紙パルプの黄変等の変色や繊維の脆化を低減する観点から、10未満であり、同様の観点及び離解処理効率向上の観点から、8.5以上10未満である。本開示の離解促進方法は、一又は複数の実施形態において、パルパーのpHが8.5以上10未満となるように調整することを含む。
【0022】
パルパーでの離解処理における処理時間は、一又は複数の実施形態において、2分〜20分又は2分〜15分である。
【0023】
処理液は、一又は複数の実施形態において、アルカリ剤を含んでいてもよい。離解処理は、一又は複数の実施形態において、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方と、アルカリ剤との存在下で行ってもよい。本開示の離解促進方法は、一又は複数の実施形態において、パルパーにアルカリ剤を添加することを含んでいてもよい。アルカリ剤としては、一又は複数の実施形態として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0024】
[離解促進剤]
本開示は、その他の態様において、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を有効成分とする、古紙の離解処理を促進するための離解促進剤(本開示の離解促進剤)に関する。本開示の離解促進剤は、一又は複数の実施形態において、本開示の離解処理促進方法に使用することができる。
【0025】
本開示の離解促進剤は、一又は複数の実施形態において、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を含む水溶液、並びにモノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を生成しうる薬剤を含む。
【0026】
本開示の離解促進剤の形態は、一又は複数の実施形態において、水溶液の形態が挙げられる。本開示の離解促進剤の添加濃度等は、上述の通りである。
【0027】
本開示は、以下の一又は複数の実施形態に関しうる;
〔1〕 古紙パルプ製造工程のパルパーにおける離解処理を促進する方法であって、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を含む処理液中で、前記離解処理を行うことを含む、離解促進方法。
〔2〕 前記処理液におけるモノクロラミン及びモノブロラミンの合計の濃度が残留塩素量として3mg/L〜15mg/Lとなるように、前記パルパーに、モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を含む水溶液又はモノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を生成しうる薬剤を添加することを含む、〔1〕に記載の離解促進方法。
〔3〕 前記処理液におけるモノクロラミン及びモノブロラミンの合計の濃度が、残留塩素量として3mg/L〜15mg/Lとなるように維持することを含む、〔1〕又は〔2〕に記載の離解促進方法。
〔4〕 モノクロラミン及びモノブロラミンの少なくとも一方を有効成分とする、古紙の離解処理を促進するための離解促進剤。
【0028】
以下、実施例及び比較例を用いて本開示をさらに説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例】
【0029】
[モノクロラミン水溶液の調製]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(残留塩素量:140g/L)を脱イオン水で残留塩素量が2g/Lになるように希釈した後、30%硫酸アンモニウム水溶液(硫酸アンモニウム(キシダ化学(株)製)30gを脱イオン水で溶解し、全量を100gとしたもの)を混合し、残留塩素と窒素とのモル比が1:1.2となるようにモノクロラミン水溶液を調製した。
【0030】
(実施例1)
[ミルクカートンを用いた離解効果確認試験]
現場で採取したミルクカートン古紙を約2〜4cm四方の紙片に裁断して試験紙片を得た。得られた試験紙片6g及び現場で採取した工程水(pH7.9)300mLを市販の家庭用ミキサーに加え、そこに調製したモノクロラミン水溶液を残留塩素量が10mg/Lとなるように添加し、1分間ミキサー処理を行いパルプスラリーを得た。
得られたパルプスラリー中の試験紙片のほぐれ具合を目視で確認し、離解効果を下記の評価基準で評価した。その結果をパルプスラリーのpHとともに下記表1に示す。なお、ブランクとして、モノクロラミン水溶液を添加しない以外は、同様にパルプスラリーを調製して評価を行った。
<評価基準>
3:完全にほぐれている(膨潤した試験紙片が8割以上)
2:ほぼほぐれている(膨潤した試験紙片が5割〜7割)
1:一部ほぐれている(膨潤した試験紙片が2割〜4割)
0:ほとんどほぐれていない(膨潤した試験紙片が1割以下)
【0031】
<pHの測定>
パルプスラリーのpHは、卓上型pHメーター(堀場製作所製F−73)を用いて室温で測定した。
【0032】
<残留塩素量の測定>
残留塩素量は、ラボ用残留塩素計(笠原理化工業製DP−3Z)を用いて残留塩素濃度換算で測定した。
【0033】
(実施例2)
モノクロラミン水溶液を、残留塩素量が15mg/Lとなるように添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0034】
(実施例3)
モノクロラミン水溶液に加えて、水酸化ナトリウム水溶液を対固形分濃度が0.2重量%となるように添加した以外は、実施例2と同様に行った。
【0035】
(比較例1)
モノクロラミン水溶液に代えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を残留塩素量が20mg/Lとなるように添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0036】
(比較例2)
次亜塩素酸ナトリウムに加えて、水酸化ナトリウム水溶液を対固形分濃度が0.2重量%となるように添加した以外は、比較例1と同様に行った。
【0037】
(比較例3)
モノクロラミン水溶液に代えて、水酸化ナトリウム水溶液を下記表1の量となるように添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0038】
【表1】
【0039】
モノクロラミン水溶液を添加した実施例1から3は、いずれもミルクカートン試験紙片を完全にほぐすことができた。
また、実施例1及び2に示すように、水酸化ナトリウム(アルカリ剤)を併用しない場合であっても、モノクロラミン単独でミルクカートン試験紙片を完全にほぐすことができた。
【0040】
(実施例11)
[古紙両面段ボール紙を用いた離解効果確認試験]
某製紙工場で採取した工程水に対し、調製したモノクロラミン水溶液を残留塩素量が3mg/Lとなるように添加し、その後6時間攪拌した。試験用離解機(熊谷理機工業株式会社製)に、約2〜4cm四方に裁断した古紙両面段ボール紙(Aフルート)約45gと、6時間攪拌した工程水1.5Lとを入れた。回転数2,000rpmで5分間離解処理を行い、古紙パルプ濃度が3重量%のパルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーを古紙パルプ濃度が1重量%になるように希釈し、その後、全量を試験用フラットスクリーン(熊谷理機工業株式会社製、スクリーンプレート:6カット(0.15mm))に加え、10分間処理した。スクリーン上の残渣を採取して残渣重量を測定し、下記式から離解率を算出した。その結果を下記表2に示す。パルプスラリーのpHは、実施例1と同様に測定した。
離解率(%)={(A−B)/A}×100
A:工程水と混合した古紙両面段ボール紙の重量(絶乾重量)(g)
B:残渣重量(絶乾重量)(g)
【0041】
(実施例12及び14)
モノクロラミン水溶液を、残留塩素量が10又は15mg/Lとなるように添加した以外は、実施例11と同様に行った。
【0042】
(実施例13及び15)
モノクロラミン水溶液に加えて、水酸化ナトリウム水溶液を対固形分濃度が0.5又は0.2重量%となるように添加した以外は、実施例12又は14と同様に行った。
【0043】
(比較例11−13)
モノクロラミン水溶液に代えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を下記表2に示す濃度となるように添加した以外は、実施例11と同様に行った。
【0044】
(比較例14)
水酸化ナトリウムに加えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を残留塩素量が20mg/Lとなるように添加した以外は、実施例11と同様に行った。
【0045】
(比較例15−16)
モノクロラミン水溶液に代えて、水酸化ナトリウム水溶液を下記表2に示す濃度となるように添加した以外は、実施例11と同様に行った。
【0046】
【表2】
【0047】
モノクロラミン水溶液を添加した実施例11から15の離解率はいずれも95%以上であり、比較例11から16と比較して高い離解率で離解することができた。実施例11、12及び14に示す通り、水酸化ナトリウム(アルカリ剤)を併用しない場合であっても、モノクロラミン単独で古紙両面段ボール紙を完全にほぐすことができた。実施例11に示す通り、モノクロラミンを使用することで、3mg/Lと低い残留塩素量であっても、95%の高い離解率で離解することができた。
【0048】
(実施例21)
[実機を用いた離解効果確認試験]
図1に示すような、パルパー11、クリーナー(除塵設備)12、スクリーン(除塵設備)13、及びフローテーター14を備える古紙パルプ製造設備を有する製紙工場Aの設備を用いて、本開示の効果確認試験を実施した。当該設備において、パルパー11に供給される処理水(モノクロラミン水溶液添加前の処理水)は、約5重量%のスラリーを含有し、パルパーにおいて対固形分(古紙)重量が2.0kg/tとなるように水酸化ナトリウム水溶液が添加されている(pH9)。
上記処理水に、モノクロラミン水溶液を対固形分(古紙)重量が1.0kg/t(残留塩素量として5mg/L)となるように連続添加しながら、パルパー11で古紙の離解処理を行った。モノクロラミン水溶液添加後のパルパー11におけるpHは9であった。
【0049】
<評価>
離解処理が促進されたかどうかは、パルパー11内のパルプスラリーにおける残渣の量(未離解率)、及びパルパー11後に配置された除塵設備(スクリーン13)を通過したパルプスラリーにおけるチリ(夾雑物)の量で評価した。離解が不十分であれば、パルプスラリーに含まれるチリ(夾雑物)の量が増加するからである。それらの結果を下記表3に示す。
・未離解率
パルパー11から排出されたパルプスラリーの一部を採取し、それを古紙パルプ濃度が1重量%になるように希釈し、全量を試験用フラットスクリーン(熊谷理機工業株式会社製、スクリーンプレート:6カット(0.15mm))に加え、10分間処理した。スクリーン上の残渣を採取して残渣重量を測定した。得られた残渣重量と、採取したパルプスラリー量に相当する古紙の重量(絶換重量)とを用いて、下記式から未離解率を算出した。その結果を下記表2に示す。
未離解率(%)={B/A}×100
A:古紙の重量(絶乾重量)(g)
B:残渣重量(絶乾重量)(g)
・スクリーン後夾雑物
スクリーン13を通過したパルプスラリーをパルプ固形分として100g採取し、それを抄紙した。得られた紙をダートカウンター(王子エンジ社製)で測定して紙中の夾雑物の面積を得た。
【0050】
(実施例22)
水酸化ナトリウム水溶液の添加量を0とした以外は、実施例21と同様に行った。その結果を下記表3に示す。
【0051】
(比較例21)
モノクロラミン水溶液に代えて、対固形分(古紙)重量が6.0kg/tとなるように水酸化ナトリウム水溶液、及び対固形分(古紙)重量が15.0kg/tとなるように珪酸ソーダを添加した以外は実施例21と同様に行った。その結果を下記表3に示す。
なお、比較例21は製紙工場Aにおける通常時の操業条件である。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、モノクロラミン水溶液を添加した実施例21及び22は、通常の操業条件である比較例21と比較して未離解率が低く、スクリーン後のパルプスラリー中のチリ(夾雑物)の量が大幅に減少した。よって、モノクロラミンの存在下で古紙の離解処理を行うことにより、離解を促進できるといえる。
図1