(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の太陽電池パネルのガラス板回収装置1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明のガラス板回収装置1の処理対象である使用済み太陽電池パネル9の構成について説明する。
太陽電池パネル9は、所定板厚の長板状の部材であり、
図1に示すように、ガラス板91、太陽電池セル92、EVA93、バックシート94が順に積層されており、表側がガラス板91で構成され、裏側がバックシート94で構成されている。
太陽電池パネル9は、ガラス板91に薄膜の太陽電池セル92が直接一体的に積層された積層構造となっている。
このような薄膜の太陽電池セル92は、ガラス板91に対し所定の材料(シリコン,Siなど)を蒸着又はスパッタリングなどの手法により形成される。
太陽電池セル92は、その裏側に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(ethylene−vinylacetate copolymer)からなる封止材(以下、EVA93という)が積層されている。
EVA93は、太陽電池セル92を裏側から封止するとともに、太陽電池セル92とバックシート94と接合する役割を有する。EVA93の融点(軟化点)は、60℃〜90℃であることが知られている。
【0010】
バックシート94は、ポリフッ化ビニル樹脂(Polyvinyl fluoride。以下、PVFという)941,943とアルミ箔942とによって構成されている。
具体的には、アルミ箔942の表側及び裏側にそれぞれPVF941,943が積層されてバックシート94が形成されている。
バックシート94は、PVF941,943を構成に含むことで耐水性や耐湿性を保ち、アルミ箔942を構成に含むことでパネルの強度を高めるようにしている。
また、PVF941,943には、カーボンブラックと称される黒色顔料が含まれており、これにより、アルミ箔942の表裏に黒色の樹脂の塗膜を形成している。
PVF941,943の熱変形温度(軟化点)は、90℃であることが知られている。
なお、本実施形態における処理対象の太陽電池パネル9は、長さ1000mm×幅240mm×厚さ5mm程度のサイズであるが、このサイズに限るものではない。
また、太陽電池パネル9は、フレームや端子ボックスなどの部材も備えるが、これらの部材は予め取り外されているものとする。
また、
図1(b)に示すように、裏側にのみ(又は表側のみ)にPVF943を積層したバックシート94の太陽電池パネル9を処理対象とすることもできる。
【0011】
[ガラス板回収装置]
本発明のガラス板回収装置1について説明する。
図2に示すように、本発明のガラス板回収装置1は、太陽電池パネル9を搬送しながら加温する加温部2(加温工程)と、加温工程を経た太陽電池パネル9を引き続き搬送しながら研削を行う研削部3(研削工程)と、により構成される。
【0012】
[加温部]
加温部2は、太陽電池パネル9を、研削部3(研削工程)における研削の前に予め加温する装置である。
太陽電池パネル9を予め加温することで、バックシート94の構成部材であるPVF941,943(特にPVF943)を軟化させ、後工程(研削工程)においてPVF943及びPVF943に覆われているアルミ箔942の研削を容易にするためである。
加温部2は、処理対象の太陽電池パネル9を、特定の搬送経路22を搬送中に加温するものであり、
図2に示すように、ベルトコンベア21と、加熱器(加熱手段)23と、により構成される。
ベルトコンベア21(第1搬送部)は、太陽電池パネル9の幅よりやや大きいベルト幅の輪状のベルト22を備えており、このベルト22をモータ、ドラム等により回転させることで、ベルト22上に載置された太陽電池パネル9を所定方向(
図2の矢印参照)に向けて一定速度で搬送する。
ベルト22は、太陽電池パネル9の搬送手段であるとともに搬送経路22(本発明の特定の搬送経路)を構成する。
ベルト22は、加熱器23による加熱に対する耐熱や熱通過が求められることから金属製のメッシュ状(金網状)のものを採用している。
加熱器23は、ベルト幅に対応した棒状のバーナーであり、これをベルト22の真下に設けている。
本実施形態では、加熱器23として、熱量が約4Kwの赤外線バーナーを採用している。
このような加温部2によれば、搬送経路22を搬送中の太陽電池パネル9を下方から加熱(加温)することができる。
【0013】
ところで、加温部2の目的は、バックシート94であるPVF941,943(特に、PVF943)の熱変形(軟化)である。
このため、本来、バックシート94側を下方に向けた状態でベルト22上に載置して搬送経路22を搬送する方が好ましい。
PVF943を加熱器23により直接的に加熱でき、短時間で軟化できるからである。
ところが、この場合、PVF943は、加熱器23との距離が近過ぎて急速に高温化して燃焼することがあり、この燃焼によって人体に有害なガス(例えば、フッ化水素ガスや一酸化炭素ガスなど)が発生することがある。
また、PVF943には黒色顔料が含まれているため、燃焼により作業者の作業性を低下する黒煙が生じる。
このような燃焼・発煙の対策として、例えば、加熱器23を下方に移動してPVF943との距離を長くしてPVF943を高温化しにくくすることが考えられるが、この場合、加熱量が不足して軟化までに時間がかかる(搬送速度を遅くする必要がある)などの問題を生じる。
また、ガスや煙の密閉及び排出などの措置を施すことも考えられるが、コストがかかる。
そこで、加温部2においては、太陽電池パネル9を、ガラス板91を下方に向けた状態(バックシート94を上方に向けた状態)で搬送するようにした。
具体的には、作業者やロボットアーム等により、処理対象の太陽電池パネル9を、ガラス板91を下方に向けた状態(バックシート94を上方に向けた状態)でベルト22上に載置する。
これにより、太陽電池パネル9は、ガラス板91が下方を向き、バックシート94が上方を向いた状態で搬送経路22を搬送しながら、その下方(ガラス板91側)から加熱されることになる。
このため、バックシート94(PVF943)は、加熱器23により直接的に加熱されず、ガラス板91などの他の部材を介して間接的に加熱され、比較的緩やかに温度が上昇するため、上記燃焼・発煙を発生しにくくすることができる。
【0014】
太陽電池パネル9の搬送速度に着目するに、当該搬送速度が遅いほどPVF943を十分に軟化できるが、遅すぎると、加温工程の時間が長くなるデメリットがある。
これとは反対に、搬送速度が速いほど加温工程の時間を短くできるが、速すぎると、PVF943を十分に軟化することが困難になる。
そこで、本発明では、加温部2における太陽電池パネル9の搬送速度を、少なくともPVF943を「熱変形温度」に達することが可能な搬送速度にした。
具体的には、加温部2における太陽電池パネル9の搬送速度を約15mm/秒とすることで、搬送経路22の通過後において、バックシート94(PVF943)の軟化を確認することができた。
また、このときの表面温度が熱変形温度である90℃〜100℃であることを温度センサにより確認できた。
また、これにより、PVF941やEVA93も軟化したものと推定される。
PVF941やEVA93は、PVF943よりも加熱器23(熱源)から近く、熱変形温度(融点)も共通するためである。
【0015】
[研削部]
研削部3は、加温部2(加温工程)において加温された太陽電池パネル9をバックシート94側から研削する装置である。
これにより、太陽電池パネル9からガラス板91以外の部材を除去し、ガラス板91のみを回収する。
研削部3は、処理対象の太陽電池パネル9を、所定の搬送経路32を搬送中に研削するものであり、
図2及び
図3に示すように、ベルトコンベア31と、複数の研削ブラシ4(4a〜4c)と、により構成される。
ベルトコンベア31(第2搬送部)は、太陽電池パネル9の幅よりやや大きいベルト幅の輪状のベルト32を備えており、このベルト32をモータ、ドラム等により所定速度で回転させることで、ベルト32に載置した太陽電池パネル9を所定方向(
図3の矢印参照)に向けて所定速度で搬送することができる。
ベルト32は、太陽電池パネル9の搬送手段であるとともに搬送経路32(本発明の所定の搬送経路)を構成する。
ベルトコンベア31は、加温部2のベルトコンベア21により搬送を終えた太陽電池パネル9が、そのまま当該ベルトコンベア31に受け渡すことができるように配置されている。
具体的には、加温部2のベルトコンベア21のベルト22と研削部3のベルトコンベア31のベルト32が同一方向を向くように配置するとともに、ベルト22の下流端部とベルト32の上流端部とが近接する位置で対向するように配置している。
さらに、研削部3における搬送速度と加温部2における搬送速度とを同じにしている。
これにより、加温部2においてPVF943などの樹脂部材が軟化した状態の太陽電池パネル9を、止めることなく、軟化した状態のまま研削工程において研削を進めることができる。
このため、加温工程と研削工程との間のロス(労力・時間など)を抑えることができ、全体の工程を短時間化することができる。
また、複数枚を連続して搬送することができる。
【0016】
研削ブラシ4は、硬鋼線などの金属で構成された毛材(ブラシ)を一定方向に回転させることによって対象物を研削(除去)する研削手段である。
研削ブラシ4としては、
図4(a)に示すカップブラシ(ワイヤカップブラシ)や、
図4(b)に示すベベルブラシ(ノットベベルブラシ)を例示することができる。
カップブラシ等は、市場に多く流通している安価な普及品・汎用品である。
このため、例えば、ブラシが摩耗・破損した場合など、研削ブラシごとすぐに入手して交換(回復)することができ、かつ、ランニングコストを抑えることができる。
また、カップブラシ等は、サイズも様々なバリエーションがあるため、任意のサイズを選択することができる。本実施形態では、直径が約115mmのものを採用している。
研削ブラシ4は、搬送経路32の上部に設けたモータ(以下、回転用モータ41という)の下向きの回転軸の端部に設けられている(
図3参照)。
回転用モータ41は、図示しない支持部材によって支持され、当該支持部材が上下移動用の別のモータ(以下、押圧用モータ42という)によって上下方向に移動できるように構成されている。
このような構成によれば、押圧用モータ42を駆動させて研削ブラシ4を下方に下げることで、当該研削ブラシ4を、搬送経路32上の太陽電池パネル9の上面から押し付けることができ、この状態で回転用モータ41を駆動させることで、太陽電池パネル9の上面を研削ブラシ4により研削することができる。
研削ブラシ4は、搬送経路32の長手方向及び幅方向に沿って複数配置している(
図2等参照)。
幅方向に複数配置したのは、研削ブラシ4のサイズ(直径)が太陽電池パネル9の幅のサイズより小さいためであり、太陽電池パネル9の幅方向の全域を研削ブラシ4の研削領域に含めるためである。
例えば、本実施形態のように、太陽電池パネル9の幅が240mmである場合は、直径115mmの研削ブラシ4を3つ設けることで、太陽電池パネル9の幅の全域を研削領域に含めることができる(3×115>240)。
【0017】
ところで、研削ブラシ4は平面視円形であることから理論上は円形内の領域が研削領域であるが、現実には、設計上や製造上の誤差その他の理由により、太陽電池パネル9の搬送方向と直交する方向の端部付近(
図5のX参照)は研削が十分になされないことがある。
このため、本発明のガラス板回収装置1においては、
図5に示すように、各研削ブラシ4a〜4cを、搬送経路32に対して斜めに並べて配置するとともに、隣接する研削ブラシ4の研削領域の一部が互いに重なる位置に配置した。
すなわち、
図5に示すように、研削ブラシ4aの研削領域と研削ブラシ4bの研削領域との重複領域Z1を設け、研削ブラシ4bの研削領域と研削ブラシ4cの研削領域との重複領域Z2を設けた。
これにより、研削ブラシ4a〜4cによる研削工程を終えたにもかかわらず、研削ブラシ4aにより研削が行われた領域と研削ブラシ4bにより研削が行われた領域との間に研削が不十分な領域が形成されたり、研削ブラシ4bにより研削が行われた領域と研削ブラシ4cにより研削が行われた領域との間に研削が不十分な領域が形成される、といった不具合を防ぎ、太陽電池パネル9の表面を漏れなく研削することができる。
なお、研削ブラシ4a〜4cは、研削領域が重なればよく、例えば、V字状や逆V字状に配置しても同様の効果を得ることができる。
【0018】
研削ブラシ4は、より具体的には、3つの研削ブラシ4a〜4cからなる研削ユニット5を、搬送経路32の長手方向に沿って複数配置した態様で設けている(
図2,8等参照)。
具体的には、側面が透明樹脂板の鉄骨箱型のケースが搬送経路32の長手方向に沿って複数設けられており、このケース内に各研削ユニット5を構成する研削ブラシ4a〜4cが設けられている(
図3,9参照)。
このケースによれば、研削ブラシ4a〜4cによる研削状況を、透明樹脂板を通して外部から視認できるとともに、研削屑が研削ブラシ4の回転によって外部に飛散することを防ぐことができる。
なお、最上流の研削ユニット5を1次研削ユニット5aと称し、その次の下流の研削ユニット5を2次研削ユニット5bと称し、さらにその次の下流の研削ユニット5を3次研削ユニット5cと称する。
【0019】
図6は、研削ユニット5aにおける研削ブラシ4a〜4cの制御構成を示すブロック図である。
なお、
図6は、1次研削ユニット5aに関する制御構成を示すブロック図であるが、2次研削ユニット5bや3次研削ユニット5cも同じ制御構成であるため、図示及び詳細な説明は省略する。
図6に示すように、研削ユニット5aは、各研削ブラシ4a〜4cの回転及び回転速度の制御を担う回転用モータ41a〜41c、及び、各研削ブラシ4a〜4cの押圧及び押圧力の制御を担う押圧用モータ42a〜42cを備えている。
回転用モータ41aは、モータ本体である駆動部411aと、プログラムや回転速度の設定値(設定速度)などのデータを記憶する記憶部412aと、コンピュータである制御部413aとを備える。
回転用モータ41は、図示しないコンソール(パーソナルコンピュータ等)と通信ケーブルを介して接続可能であり、当該コンソールによる設定操作によって設定速度を設定(記憶)できるようになっている。
制御部413aは、後記センサ43aからの信号の入力を契機に、記憶部412aに記憶されている設定速度に従って駆動部411aを駆動させることで、研削ブラシ4aを設定速度で回転させることができる。
回転用モータ41b、41cについても、それぞれの制御部(図示省略)が、同様の制御を行うことで、研削ブラシ4b、4cを設定速度で回転させることができる。
【0020】
押圧用モータ42aは、モータ本体である駆動部421aと、プログラムや押圧力の設定値(設定押圧力)などのデータを記憶する記憶部422aと、荷重(圧力)検知センサであるロードセル423aと、コンピュータである制御部424aとを備える。
押圧用モータ42は、図示しないコンソール(パーソナルコンピュータ等)と通信ケーブルを介して接続可能であり、当該コンソールによる設定操作によって設定押圧力を設定(記憶)できるようになっている。
ロードセル423aは、回転用モータ41aの支持部材における荷重(圧力)を計測することで、当該回転用モータ41aに取り付けられた研削ブラシ4aにおける荷重(圧力)を計測する。
制御部424aは、後記センサ43aからの信号の入力を契機に、記憶部422aに記憶されている設定押圧力に従って駆動部421aを駆動させることで、ロードセル423aにより計測される荷重(圧力)が設定押圧力になるまで研削ブラシ4aを下方に移動する。
押圧用モータ42b、42cについても、それぞれの制御部(図示省略)が、同様の制御を行うことで、研削ブラシ4b、4cを設定押圧力になるまで下方に移動することができる。
【0021】
上述した研削ユニット5aにおける回転用モータ41a〜41c及び押圧用モータ42a〜42cによる研削ブラシ4a〜4cの動作制御は、太陽電池パネル9が研削ユニット5aの区間の搬送中に行う。
このため、研削ユニット5aの区間の所定箇所には、太陽電池パネル9が当該区間を搬送中であることを検知可能なセンサ43a(例えば、マイクロスイッチなどの物理センサ)を設け、センサ43aからの検知信号を制御部413a,424aにおいて受信できるようにしている(
図3,6参照)。
制御部413及び制御部424は、センサ43aから検知信号を受信すると、駆動部411に対する前記制御を行うことで研削ブラシ4a〜4cを設定速度で回転させ、駆動部421に対する前記制御を行うことで、荷重(圧力)が設定押圧力になるまで研削ブラシ4a〜4cを下方に移動する。
これにより、研削ユニット5aの区間を搬送中の太陽電池パネル9に対し、設定押圧力で押圧しながら、設定速度で研削ブラシ4a〜4cを回転させることができる。
2次研削ユニット5bも、同様であり、センサ43bから検知信号を受信すると、駆動部411に対する前記制御を行うことで研削ブラシ4a〜4cを設定速度で回転させ、駆動部421に対する前記制御を行うことで、荷重(圧力)が設定押圧力になるまで研削ブラシ4a〜4cを下方に移動する。
これにより、研削ユニット5bの区間を搬送中の太陽電池パネル9に対し、設定押圧力で押圧しながら、設定速度で研削ブラシ4a〜4cを回転させることができる。
3次研削ユニット5cも、同様であり、センサ43cから検知信号を受信すると、駆動部411に対する前記制御を行うことで研削ブラシ4a〜4cを設定速度で回転させ、駆動部421に対する前記制御を行うことで、荷重(圧力)が設定押圧力になるまで研削ブラシ4a〜4cを下方に移動する。
これにより、研削ユニット5cの搬送区間を搬送中の太陽電池パネル9に対し、設定押圧力で押圧しながら、設定速度で研削ブラシ4a〜4cを回転させることができる。
【0022】
以上のように、本発明のガラス板回収装置1では、研削部3において、研削ユニット5を搬送経路32に沿って複数設け、研削ユニット5毎に研削ブラシ4a〜4cの押圧力及び回転速度を制御できるようにしている。
これにより、研削工程を3段階に分けて行うことができ、それぞれ所定の層毎に対応する部材を段階的に除去することができ、3段階の研削工程を経ることで、太陽電池パネル9からガラス板91を回収することができる。
なお、仮に、1回の研削(つまり1つの研削ユニット5における研削)でガラス板91以外の部材をすべて除去しようとすると、例えば、研削ブラシ4の押圧力が大きすぎてガラス板91が破損したり、回転用モータ41が過負荷になって停止又は故障を招く。
本発明のガラス板回収装置1は、研削ユニット5を複数設け、研削を複数段階に分けて行うことで、このような問題が発生しないようにしている。
【0023】
各研削ユニット5においては、制御部413,424が、センサ43からの検知信号に基づき、太陽電池パネル9が当該研削ユニット5の区間を搬送中であることを認識している間は、各研削ユニット5における回転用モータ41及び押圧用モータ42を連続駆動するようにしている。
これにより、複数の太陽電池パネル9をベルト22上に途切れなく載置することで、当該複数の太陽電池パネル9を連続して処理することができるため、多くの太陽電池パネル9を短時間で処理することができる。
例えば、上記搬送速度(約15mm/秒)で、上記サイズ(長さ1000mm×幅240mm×厚さ5mm)の太陽電池パネル9を連続処理した場合、1時間あたり54枚超の太陽電池パネル9を処理することができ、これと同数のガラス板91を回収することができた。
また、制御部413,424は、センサ43からの検知信号に基づき、太陽電池パネル9が当該研削ユニット5の区間を通過したことを認識した場合には、回転用モータ41は駆動を停止し、押圧用モータ42は、研削ブラシ4を元の位置(上方向)に移動する。
これにより、次の太陽電池パネル9の処理待機状態に移行することができ、さらに、ベルトコンベア等を停止することで、ガラス板回収装置1の稼働を停止することができる。
【0024】
次に、研削ユニット5における具体的な設定値(設定押圧力及び設定速度)について説明する。
設定値は、ガラス板91の層から比較的遠い層を研削する研削ユニット5では研削負荷を比較的高め(高速・高圧力)に設定し、ガラス板91の層から比較的近い層を研削する研削ユニット5では研削負荷を比較的低め(低速・低圧力)に設定する。
このため、第1研削ユニット5aにおける設定値よりも第2研削ユニット5bにおける設定値は研削負荷が小さく、第2研削ユニット5bにおける設定値よりも第3研削ユニット5cにおける設定値は研削負荷が小さくなるようにしている。
また、本発明のガラス板回収装置1においては、太陽電池パネル9を、バックシート94側から研削を行う構成上、1次研削ユニット5aにおいてはバックシート94の除去が求められる。
ただし、バックシート94には、相当の強度を有するアルミ箔942が含まれているため、1次研削ユニット5aにおいては、好ましくはアルミ箔942の層まで、より好ましくは、アルミ箔942を含むバックシート94を、さらに好ましくは、EVA92の層までを除去することが求められる。
なお、1次研削ユニット5aにおいて、太陽電池セル92の層、もしくは、太陽電池セル92に隣接する層まで除去しようとすると、当該太陽電池セル92がガラス板91に一体的に積層されていることから、ガラス板91に過度の負荷(押圧力)がかかりガラス板91を破損するおそれがある。
そこで、本発明においては、1次研削ユニット5aにおいて、各研削ブラシ4a〜4cの設定押圧力及び設定速度を、所定の設定値にした。
具体的な設定値は後述するが、これにより、1次研削ユニット5aにおける研削によって、アルミ箔942の層までを除去することができる。
【0025】
なお、研削ブラシ4は、ブラシが金属でできていることから、押圧力が大きすぎたり、回転速度が速すぎると、被研削物との摩擦熱が大きくなる。
特に、アルミ箔942の研削にあたり、研削ブラシ4とアルミ箔942との摩擦熱によりアルミ箔942等が高熱化し易く、これにより、アルミ箔942に積層されている樹脂部材(PVF941,943)が燃焼し易い。
加温部2の説明において述べたように、PVF941,943が燃焼すると、人体に有害なガス(例えば、フッ化水素ガスや一酸化炭素ガスなど)が発生したり、作業者の作業性を低下する黒煙が生じたり、さらに、この場合、研削ブラシ4が破損し易いため、好ましくない。
研削抵抗を下げ、摩擦熱の上昇を抑える方法として、潤滑油、クーラント液等を使用する方法が知られているが、潤滑油等の貯蔵・供給・循環・処理などの各構成が必要になり、コストが増大する。
そこで、本発明においては、1次研削ユニット5aにおける研削ブラシ4a〜4cの設定押圧力及び設定速度を、アルミ箔942における摩擦熱によってPVF941,943が燃焼しない押圧力及び回転速度に設定した。
【0026】
具体的には、1次研削ユニット5aにおいて、各研削ブラシ4a〜4cの設定押圧力を0.4Nに設定し、設定速度を5000rpmに設定した。
そして、太陽電池パネル9を搬送速度15mm/秒で搬送経路32を搬送させながら押圧用モータ42及び回転用モータ41を上記設定値に基づいて駆動させて研削ブラシ4a〜4cにより研削を行ったところ、アルミ箔942の摩擦熱によりPVF941,943が燃焼しないこと、及び、アルミ箔942の層又はPVF943の層までが除去されたことを確認できた(
図7(a)→(b)参照)。
すなわち、1次研削ユニット5aにおける所定の研削制御によって、太陽電池パネル9からPVF943及びアルミ箔942を、バックシート94の樹脂部材を燃焼させることなく除去することができた。
【0027】
2次研削ユニット5bにおける設定速度は、1次研削ユニット5aよりも遅い4000rpmに設定し、3次研削ユニット5cにおける設定速度は、2次研削ユニット5bよりも遅い3000rpmに設定した。
1次研削ユニット5a〜3次研削ユニット5cにおける設定押圧力は、すべて0.4Nに設定した。
先工程ほど研削負荷を高くし、後工程ほど研削負荷を抑えることで、効率よく部材を除去しつつ、ガラス板91の破損を防ぐ趣旨である。
これにより、
図7(b)→(c)に示すように、2次研削ユニット5bにおける研削によって、さらに、PVF941、EVA93及び太陽電池セル92の一部を除去することができ、
図7(c)→(d)に示すように、3次研削ユニット5cにおける研削によって、太陽電池セル92のすべてを除去することができた。
なお、1次研削ユニット5a〜3次研削ユニット5cにおいて設定押圧力は共通(0.4N)にしたが、異ならせることもできる。
例えば、2次研削ユニット5bにおける設定押圧力を1次研削ユニット5aにおけるよりも小さくし、3次研削ユニット5cにおける設定押圧力を2次研削ユニット5bにおけるよりも小さくすることができる。
以上のように、本発明のガラス板回収装置1においては、3つの研削ユニット5a〜5cにおける各研削ブラシ4a〜4cの押圧力及び回転速度を、回転用モータ41a〜41c及び押圧用モータ42a〜42cを制御することで、搬送経路32を所定速度で搬送中の太陽電池パネル9からガラス板91以外の部材を研削により除去することができる。
【0028】
研削ユニット5が2ユニットの場合について説明する。
図8は、研削ユニット5が2ユニットの場合のガラス板回収装置1の概略斜視図である。
図9は、研削ユニット5が2ユニットの場合の研削部3の正面図である。
これらの図に示すように、2ユニットの場合と3ユニットの場合とでは、研削ユニット5の数が異なるだけで、他の構成は共通する。
また、制御に関し、1次研削ユニット5aにおいて、少なくともアルミ箔942の層まで除去するように研削ブラシ4a〜4cの動作を制御する点は共通する。
しかしながら、2ユニットの場合、2次研削ユニット5bにおいて、ガラス板91を除く、残りの部材をすべて除去するように研削ブラシ4を制御する点で異なる。
具体的には、太陽電池パネル9を搬送速度15mm/秒で搬送経路32を搬送させることを前提に、1次研削ユニット5aにおいて、設定押圧力を0.4Nに設定し、設定速度を5000rpmに設定した。
2次研削ユニット5bにおいては、設定押圧力を0.4Nに設定し、設定速度を4500rpmに設定した。
そうしたところ、1次研削ユニット5aにおいて、樹脂部材(PVF941,943)を燃焼せずにアルミ箔942の層まで除去したことを確認できた(
図10の(a)→(b)参照)。
2次研削ユニット5bにおいては、太陽電池セル92の層まで除去されたことを確認できた(
図10の(b)→(c)参照)。
以上のように、本発明のガラス板回収装置1においては、2つの研削ユニット5a〜5bにおける各研削ブラシ4a〜4cの押圧力及び回転速度を、回転用モータ41a〜41c及び押圧用モータ42a〜42cを制御することで、搬送経路32を所定速度で搬送中の太陽電池パネル9からガラス板91以外の部材を研削により除去することができる。
【0029】
[設定値の自動設定]
上述した実施形態では、回転用モータ41や押圧用モータ42の設定値を、コンソールを操作することで設定する方法について説明したが、当該設定を自動的に行うこともできる。
例えば、1次研削ユニット5aにおいて、バックシート94の表面温度を温度センサにより計測しつつ、回転用モータ41及び押圧用モータ42の回転速度及び押圧力をそれぞれ所定の速度及び押圧力で駆動開始する。
そして、バックシート94の表面温度が基準温度(PVF941,943の燃焼温度未満の所定温度)や時間あたりの温度上昇率が基準率に到達した場合に、速度及び押圧力を一定値下げ、1次研削ユニット5aにおいて摩擦熱によるPVF941,943の燃焼を回避しながら研削処理を行うことができる。
【0030】
以上のように、本発明のガラス板回収装置1によれば、各研削ブラシ4a〜4cの押圧力及び回転速度を、所定の押圧力及び回転速度に制御することによって、所定速度で搬送中の太陽電池パネル9からガラス板91以外の部材を除去してガラス板91を回収することができる。
また、本発明のガラス板回収装置1によれば、短時間で多くのガラス板91を回収することができる。
また、本発明のガラス板回収装置1によれば、樹脂部材の燃焼・発煙を抑えつつ研削を行うことができる。
これに対し、従来のガラス板を回収する技術は、ガラス板にEVAが積層されているタイプの太陽電池パネルを対象にしており、太陽電池パネルを溶液に浸すことよりEVAを剥離し易くしてガラス板を回収するようにしている。
このため、溶液に浸す手間や時間がかかり、特に、相当数の太陽電池パネルを処理する場合には、多大な手間や時間を要していた。
また、薄膜太陽電池パネルのように、ガラス板に太陽電池セルが直接積層されているタイプの太陽電池パネルには有効に機能しなかった。
また、機械的手法によりガラス板以外の部材を除去する技術についても提案されているが、本発明のガラス板回収装置1が備える特徴的な構成及び効果は開示されていない。
【0031】
以上、本発明のガラス板回収装置1について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、2台のベルトコンベアを用いて太陽電池パネル9を一連に搬送するようにしているが、1台のベルトコンベアにおいて一連のベルト(搬送経路)の途中に加温と研削を行うこともできる。
また、研削ブラシ4の数は、1つでも2つでも4つ以上でもよく、研削ブラシ4や太陽電池パネル9やのサイズに応じて適宜変更することができる。
また、研削ブラシ4のサイズ(直径)は、どのようなサイズでもよく、研削ブラシ4の数、太陽電池パネル9のサイズに応じて適宜変更することができる。
また、研削ユニット5の数は、1つでも4つ以上でも良く、太陽電池パネル9や研削ブラシ4のサイズに応じて適宜変更することができる。
また、各研削ブラシ4の動作を、研削ユニット5単位ではなく、それぞれ個々に独立して制御することもできる。
また、本装置は液体を用いない乾式であるため、研削ユニット5の下流側に例えばサイクロン式の吸引手段を設け、太陽電池パネル9の処理を行いながら研削屑を除去することができる。