特許第6806395号(P6806395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6806395板材の結合構造並びにこれを用いた組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6806395
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】板材の結合構造並びにこれを用いた組立体
(51)【国際特許分類】
   A63F 9/08 20060101AFI20201221BHJP
   A63H 33/08 20060101ALI20201221BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20201221BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A63F9/08 502Z
   A63H33/08 C
   F16B5/07 C
   F16B4/00 G
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-72556(P2020-72556)
(22)【出願日】2020年4月14日
【審査請求日】2020年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512123721
【氏名又は名称】株式会社エーゾーン
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】横関 謙治
(72)【発明者】
【氏名】霜田 絵理子
【審査官】 松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/141439(WO,A1)
【文献】 特開2018−061812(JP,A)
【文献】 特開2020−099665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/08
A63H 33/04−33/10
F16B 4/00
F16B 5/00−5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に結合される板材の結合構造であって、
前記板材の一方に突出して設けられた突起部と、
前記板材の他方に設けられ前記突起部を内部に嵌合させる溝部と、を備え、
前記突起部は、
前記板材の一方から突出する本体部と、
前記本体部の突出方向に対する交差方向の少なくとも一側に設けられ、前記交差方向の内側に向けて弾性変形可能な弾性片と、
前記弾性片から前記交差方向の外側に膨出し、前記嵌合時において前記溝部の前記交差方向の内側面に沿って塑性変形し前記内側面に係合する係合部と、を備え
前記弾性片は、前記突出方向の一端が前記本体部と一体に設けられ他端が前記本体部の基端部に向かって伸びる片持ち状であり、前記本体部との間に形成された隙間の範囲で弾性変形可能である、
結合構造。
【請求項2】
請求項1記載の結合構造であって、
前記係合部は、前記突出方向での前記本体部の基端部に向かって漸次前記交差方向の外側に膨出する、
結合構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の結合構造であって、
前記係合部は、前記弾性片と同一材質であり、前記突起部が前記溝部に嵌合していない自由状態において、前記突起部の前記交差方向の寸法を対応する前記溝部の前記交差方向の寸法よりも大きくし、
前記係合部による前記突起部と前記溝部の寸法の差は、前記弾性片の弾性変形量よりも大きい、
結合構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の結合構造であって、
前記弾性片は、前記本体部の前記交差方向の両側にそれぞれ設けられ、
前記係合部は、前記両側の弾性片にそれぞれ設けられる、
結合構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の結合構造であって、
前記交差方向で対向する前記溝部の前記内側面は相互に平行である、
結合構造。
【請求項6】
相互に結合される複数の板材間を、請求項1〜5の何れか一項に記載の結合構造によって結合した組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材の結合構造並びにこれを用いた組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
立体パズル、模型、装飾品等の組立体には、複数の板材を結合して構成されるものがある。このような立体パズル等の組立体では、容易に組立てができ且つ組立状態を維持できる板材間の結合構造が要求される。かかる結合構造としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1の結合構造は、各板材の辺縁に沿って設けられた複数の凸状の連結片と、連結片間にそれぞれ設けられた連結溝とを備えている。連結片は、辺縁に対して円弧状に突出し、隣接する連結片間には、基端部が最も広くなるように連結溝が区画される。
【0004】
板材を結合する際は、板材の一方の連結片の基端部を板材の他方の連結溝の基端部に嵌合する。これにより、板材を容易に組み立てることができ、且つ板材の組立状態を維持できる。
【0005】
しかし、かかる結合構造では、連結片が連結溝と嵌合する際に撓む必要があり、適用可能な材質に制限があった点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6440044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、容易に組立てができ且つ組立状態を維持できる結合構造の適用可能な材質に制限があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、容易に組立てができ且つ組立状態を維持できながら種々の材質に適用可能とするために、相互に結合される板材の結合構造であって、前記板材の一方に突出して設けられた突起部と、前記板材の他方に設けられ前記突起部を内部に嵌合させる溝部と、を備え、前記突起部は、前記板材の一方から突出する本体部と、前記本体部の突出方向に対する交差方向の少なくとも一側に設けられ、前記交差方向の内側に向けて弾性変形可能な弾性片と、前記弾性片から前記交差方向の外側に膨出し、前記嵌合時において前記溝部の前記交差方向の内側面に沿って塑性変形し前記内側面に係合する係合部と、を備え、前記弾性片は、前記突出方向の一端が前記本体部と一体に設けられ他端が前記本体部の基端部に向かって伸びる片持ち状であり、前記本体部との間に形成された隙間の範囲で弾性変形可能である、結合構造を最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の板材の結合構造によれば、容易に組立てができ且つ組立状態を維持できながら種々の材質に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例1に係る板材の結合構造を採用した組立体を示す斜視図である。
図2図2は、図1の組立体に用いられている板材の結合構造を示す要部斜視図である。
図3図3は、図2の結合構造の分解斜視図である。
図4図4(A)は、図2の結合構造に用いられている板材の一方の要部平面図、図4(B)は、図4(A)の要部拡大平面図である。である。
図5図5は、図2の結合構造に用いられている板材の他方の要部平面図である。
図6図6は、図2の結合構造の突起部と溝部の嵌合直前状態を示す正面図である。
図7図7は、本発明の実施例2に係る結合構造に用いられている板材の一方の要部拡大平面図である。
図8図8は、本発明の実施例3に係る結合構造に用いられている板材の一方の要部拡大平面図である。
図9図9は、本発明の実施例4に係る結合構造に用いられている板材の一方の要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
容易に組立てができ且つ組立状態を維持できながら種々の材質に適用可能とするという目的を、突起部とこの突起部を内部に嵌合させる溝部とにより実現した。
【0012】
突起部は、板材の一方に突出して設けられ、溝部は、板材の他方に設けられ突起部を内部に嵌合させる。突起部は、板材の一方から突出する本体部と、本体部の突出方向に対する交差方向の少なくとも一側に設けられ、交差方向の内側に向けて弾性変形可能な弾性片と、弾性片から交差方向の外側に膨出し、嵌合時において溝部の交差方向の内側面に沿って塑性変形して内側面に係合する係合部と、を備える。
【0013】
係合部は、突出方向での本体部の基端部に向かって漸次交差方向の外側に膨出してもよい。
【0014】
係合部の材質は、弾性片の材質と同一或いは別であってもよい。係合部の材質を弾性片と同一にする場合、係合部は、突起部が溝部に嵌合していない自由状態において、突起部の交差方向の寸法を対応する溝部の交差方向の寸法よりも大きくし、係合部による突起部と溝部の寸法の差は、弾性片の弾性変形量よりも大きい構成としても良い。また、係合部は、弾性片よりも塑性変形しやすい材質とすることも可能である。
【0015】
弾性片は、本体部の交差方向の両側にそれぞれ設けられ、係合部は、両側の弾性片にそれぞれ設けられる構成としても良い。ただし、係合部は、両側に設けられた弾性片の一方にのみ形成しても良い。
【0016】
弾性片は、突出方向の一端が本体部と一体に設けられ他端が本体部の基端部に向かって伸びる片持ち状であり、本体部との間に形成された隙間の範囲で弾性変形可能である構成としても良い。また、弾性片は、突出方向の両端が本体部に一体に設けられ、本体部との間に隙間を有する構成としても良い。
【0017】
交差方向で対向する溝部の内側面は、突出方向で相互に平行としてもよい。
【0018】
かかる結合構造を採用した組立体は、複数の板材間を結合構造によって結合される。
【実施例1】
【0019】
[組立体]
図1は、本発明の実施例1に係る板材の結合構造を採用した組立体を示す斜視図である。
【0020】
図1図5のように、組立体1は、立体パズル、模型、装飾品等であり、複数の板材3の相互間を結合して構成されている。立体パズル、模型、装飾品等としては、例えば動物、建物、乗物等の各種の形態を有することができる。ただし、本実施例の組立体1は、理解容易のために立方体となっている。
【0021】
組立体1を構成する板材3は、木、竹、紙等からなる平板である。この板材3は、板状の母材(図示せず)からレーザーカットにより切り出される。なお、板材3の材質は、樹脂や金属等とすることも可能である。また、板材3の切り出しは、プレス成形やインジェクション成形等によって行っても良い。このように、板材3の材質は、種々のものであってよく、板材3の成形も、材質に応じて種々のものを採用可能である。
【0022】
かかる板材3の結合には、結合構造5が用いられている。
【0023】
[結合構造]
図2は、図1の組立体に用いられている板材の結合構造を示す要部斜視図、図3は、図2の結合構造の分解斜視図、図4は、図2の結合構造に用いられている板材の一方の要部平面図、図5は、図2の結合構造に用いられている板材の他方の要部平面図である。
【0024】
結合構造5は、突起部7と溝部9とで構成されている。
【0025】
突起部7は、相互に結合される板材3の一方に突出して設けられている。本実施例において、複数の突起部7が板材3の縁部3cに沿って等間隔で配置されている。なお、突起部7の個数は任意である。
【0026】
本実施例の突起部7は、板材3と一体に母材から切り出されて形成されている。これにより、突起部7は、板材3の縁部3cから平面方向に沿って突出している。なお、平面方向とは、突起部7が設けられている板材3が構成する組立体1の面に沿った方向をいう。また、突起部7は、板材3とは別体に形成した後、板材3に固着する構成としても良い。突起部7の突出量は、板材3の板厚と同一になっている。
【0027】
各突起部7は、本体部13と、弾性片15と、係合部17とを備えている。
【0028】
本体部13は、板材3の一方から突出する突起部7の部分である。本実施例において、本体部13は、板材3の縁部3cから平面方向に突出した柱状に形成されている。この本体部13は、突出方向の基端部19よりも中間部21が幅方向に小さく形成されている。これにより、本体部13は、平面視において、幅方向に凹状の段部23を有する段付き状に形成されている。
【0029】
本体部13の基端部19は、突出方向において板材3と隣接すると共に所定範囲を占める部分である。本体部13の中間部21は、突出方向において板材3に対する反対側で基端部19に隣接すると共に所定範囲を占める部分である。
【0030】
なお、本体部13の平面視における形状は特に限定されるものではない。また、突出方向とは、本体部13が突出する方向であり、幅方向とは、突出方向に対する交差方向をいう。
【0031】
本体部13の表面13aは、それぞれ板材3の表面3aに面一になっている。ただし、本体部13の表面13aは、板材3の表面に対して段付き状に形成することも可能である。この本体部13には、弾性片15が設けられている。
【0032】
弾性片15は、本体部13の幅方向の少なくとも一側に設けられ、幅方向の内側に向けて弾性変形可能に構成されている。本実施例の弾性片15は、本体部13の幅方向の両側にそれぞれ設けられている。各弾性片15は、突出方向の一端15aが本体部13と一体に設けられ、他端15bが本体部13の基端部19に向かって伸びる片持ち状である。
【0033】
本実施例において、弾性片15の一端15aは、本体部13の先端部25と一体に構成されている。これにより、本体部13の先端部25の幅方向の寸法が、本体部13の基端部19の幅方向の寸法と同一になっている。なお、弾性片15の一端15aは、本体部13の先端部25に対する中間部21よりの位置に一体に構成しても良い。
【0034】
本実施例の弾性片15は、本体部13の基端部19に向けて漸次幅方向の外側に膨出する。具体的には、弾性片15が本体部13の基端部19に向けて全体として漸次幅方向の外側に膨出するように傾斜している。この傾斜により、弾性片15は、幅方向の内側で本体部13との間に隙間27を有する。かかる隙間27の範囲で、弾性片15は弾性変形可能となっている。弾性片15には、係合部17がそれぞれ設けられている。
【0035】
係合部17は、両側の弾性片15からそれぞれ幅方向の外側に膨出している。これら係合部17は、突起部7と溝部9との嵌合時において、溝部9の幅方向の内側面9a,9bに沿って塑性変形し当該内側面9a,9bに係合する。本実施例の係合部17は、本体部13の先端部25及び基端部19に対して幅方向に膨出する弾性片15の一部によって構成されている。従って、係合部17は、弾性片15と同一材質である。また、係合部17は、弾性片15に応じ、本体部13の基端部19に向けて漸次幅方向の外側に膨出する。
【0036】
この係合部17は、突起部7が溝部9に嵌合していない自由状態において、突起部7の幅方向の寸法を対応する溝部9の幅方向の寸法よりも大きくしている。溝部9の幅方向の寸法は、本体部13の先端部25及び基端部19の幅方向の寸法と同一であるか僅かに大きい。また、弾性片15の幅方向への膨出量は、隙間27の幅方向の寸法よりも大きくなっている。
【0037】
つまり、係合部17による突起部7と溝部9の寸法の差は、弾性片15の弾性変形量よりも大きい。このため、隙間27の大きさと係合部17の膨出量の設定により、係合部17の塑性変形量を設定することができる。
【0038】
溝部9は、相互に結合される板材3の他方に設けられ突起部7を内部に嵌合させる。本実施例において、複数の溝部9が板材3の縁部3cに沿って突起部7に対応して配置されている。なお、溝部9の個数は、突起部7に応じて適宜設定される。また、溝部9の位置は、板材3の縁部3c以外でもよい。板材3の中央部等に溝部9を設ける場合は、板材3を板厚方向に貫通する穴状に溝部9を形成すればよい。
【0039】
各溝部9は、板材3が母材から切り出される際に形成される。溝部9は、平面方向に沿って凹状に形成されている。また、溝部9は、板材3の板厚方向で両表面3a上に開口する。従って、溝部9には、平面方向及び板厚方向の双方において、突起部7を嵌合させることが可能となっている。
【0040】
溝部9の平面視における凹形状の深さは、突起部7に応じて板厚と同一になっている。これにより、溝部9の突起部7への嵌合は、平面方向及び板厚方向の双方において、溝部9内で行わせることができる。
【0041】
溝部9の幅方向で対向する内側面9a,9bは、溝部9の凹形状の深さ方向において相互に平行である。従って、溝部9は、凹形状の開口部9cから底面9dに至るまで幅方向の寸法が同一となっている。なお、溝部9の内側面9a,9bは、相互に並行でなくても良い。例えば、溝部9の内側面9a,9bは、溝部9の底面9dから開口部9cに向けて漸次幅方向の寸法を大きくするように傾斜しても良い。
【0042】
[組付け]
図6は、図2の結合構造の突起部と溝部の嵌合直前状態を示す正面図である。
【0043】
本実施例の組立体1は、工具や接着剤等を用いずに、板材3の相互間を結合構造5によって結合することで組み立てられる。すなわち、結合構造5による結合は、板材3の一方の突起部7が板材3の他方の溝部9内に収容され嵌合することで行われる。
【0044】
この嵌合の際には、まず突起部7の本体部13の先端部25を溝部9に対して板厚方向で押し当てる。この状態で、突起部7を突出方向で前進させるようにして溝部9内へ進入させる。溝部9内への突起部7の進入は、板材3の他方の板厚方向又は平面方向で行うことができる。本実施例では、板厚方向で突起部7が溝部9内へと進入する。
【0045】
このとき、係合部17が溝部9の幅方向の寸法よりも突起部7の幅方向の寸法を大きくなっているが、係合部17の漸次膨出する形状によって円滑に進入を行わせることができる。
【0046】
また、進入中は、溝部9のエッジ部9eが係合部17に接触しつつ幅方向内側に押圧する。この押圧によって、弾性片15の一端15aでは、係合部17を塑性変形させる。弾性片15の他端15bでは、内側に隙間27があるため、かかる押圧によってまず弾性片15が段部23内へ入り込むように幅方向の内側に弾性変形させる。次いで、隙間27が弾性片15の弾性変形によって無くなると、係合部17が塑性変形する。
【0047】
このとき、係合部17とエッジ部9eとは、平面視において点接触であるため、接触面積が相対的に小さい。従って、エッジ部9eにより円滑に係合部17を押圧して塑性変形させることができる。結果として、より円滑かつ容易に突起部7を溝部9内へと進入させることができる。
【0048】
また、本実施例では、突起部7の幅方向の両側に弾性片15及び係合部17が設けられているため、突起部7の幅方向の両側で溝部9に対する嵌合時の抵抗を等しくする。従って、容易且つ安定して突起部7を溝部9内へと進入させることができる。
【0049】
係合部17の塑性変形は、係合部17が幅方向に圧縮変形することで行われる。この圧縮変形に伴い、溝部9の内側面9a,9bと係合部17との間が平面視における面接触となり、且つ徐々に溝部9の内側面9a,9bと係合部17との接触面積が大きくなる。従って、突起部7の係合部17の溝部9の内側面9a,9bに対する係合力が高められる。
【0050】
突起部7の溝部9への進入が完了した嵌合状態では、溝部9の内側面9a,9bと係合部17とを接触面積が増大した状態で係合させることができる。この係合は、溝部9又は突起部7に相対的に突起部7の引き抜き方向の力が作用しても維持される。
【0051】
すなわち、突起部7に相対的に引き抜き方向の力が作用すると、弾性片15が自身の復元力と溝部9の内側面9a,9b及び係合部17間の摩擦力とにより幅方向外側に開こうとする。この結果、溝部9の内側面9a,9bと係合部17とがより強固に係合し、突起部7の溝部9からの引き抜きが防止さる。
【0052】
このとき、本実施例では、突起部7の幅方向の両側に弾性片15及び係合部17が設けられているので、溝部9に対する嵌合状態の維持力を等しくできる。
【0053】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例の結合構造5は、相互に結合される板材3の一方に突出して設けられた突起部7と、板材3の他方に設けられ突起部7を内部に嵌合させる溝部9とを備える。
【0054】
従って、突起部7と溝部9の嵌合状態では、突起部7を溝部9の内部に位置させることができる。
【0055】
そして、突起部7は、板材3の一方から突出する本体部13と、本体部13の突出方向に対する交差方向である幅方向の少なくとも一側に設けられ、幅方向の内側に向けて弾性変形可能な弾性片15と、弾性片15から幅方向の外側に膨出し、嵌合時において溝部9の幅方向の内側面9a,9bに沿って塑性変形し当該内側面9a,9bに係合する係合部17と、を備える。
【0056】
従って、係合部17の塑性変形前の状態から突起部7を溝部9に容易に嵌合することができる。また、突起部7と溝部9との嵌合状態は、突起部7の係合部17が溝部9の内側面9a,9bに沿って塑性変形した状態でその内側面9a,9bに係合するため、係合力を高めて維持される。さらに、突起部7に相対的な引き抜き方向の力が作用しても、突起部7の弾性片15が幅方向に開こうとすることで、係合部17を溝部9の内側面9a,9bに強固に係合させ、突起部7の溝部9からの引き抜きを防止する。
【0057】
結果として、本実施例の板材3の結合構造5では、容易に板材3の組立てができ且つ板材3の組立状態を維持できる。また、結合構造5は、弾性片15を弾性変形させ係合部17を塑性変形させることが可能な材質であれば適用できるため、撓みやすいか否かにかかわらず種々の材質の板材に適用できる。
【0058】
また、係合部17は、突出方向での本体部13の基端部19に向かって漸次幅方向の外側に膨出する。このため、より容易に突起部7を溝部9に嵌合することができる。
【0059】
係合部17は、弾性片15と同一材質であり、突起部7が溝部9に嵌合していない自由状態において、突起部7の幅方向の寸法を対応する溝部9の幅方向の寸法よりも大きくし、係合部17による突起部7と溝部9の寸法の差は、弾性片15の弾性変形量よりも大きい。
【0060】
従って、弾性片15と同一材質の係合部17を容易に実現できる。
【0061】
弾性片15は、本体部13の幅方向の両側にそれぞれ設けられ、係合部17は、両側の弾性片15にそれぞれ設けられる。
【0062】
従って、突起部7の幅方向の両側において、溝部9に対する嵌合時の抵抗及び嵌合状態の維持力を等しくし、より容易に且つ安定して板材3の組立てができ且つ板材3の組立状態を維持できる。
【0063】
弾性片15は、突出方向の一端15aが本体部13と一体に設けられ、他端15bが本体部13の基端部19に向かって伸びる片持ち状であり、本体部13との間に形成された隙間27の範囲で弾性変形可能である。
【0064】
従って、隙間27の大きさと係合部17の膨出量の設定により、係合部17の塑性変形量並びにそれによる嵌合容易性及び嵌合維持力を容易に設定することができる。
【0065】
また、幅方向で対向する溝部9の内側面9a,9bは相互に平行であるため、溝部9内に突起部7を突出方向で挿入することによって容易に嵌合させることができる。
【0066】
また、本実施例の組立体1は、かかる結合構造5によって相互に結合される複数の板材3間が結合されたため、種々の材質で構成しながら組立状態が確実に維持できる。
【実施例2】
【0067】
図7は、本発明の実施例2に係る結合構造に用いられている板材の一方の要部平面図である。なお、実施例2の基本構成は、上記実施例1と共通するため、実施例2の実施例1と対応する構成を同符号で示し重複した説明を省略する。
【0068】
本実施例の結合構造5では、突起部7の係合部17の形状が実施例1に対して変更されている。
【0069】
すなわち、突起部7は、弾性片15の幅方向外側面15cが突出方向に沿って平坦に構成されている。この弾性片15の外側面15cに、係合部17が突設されている。本実施例の係合部17は、平面視において三角形状を有している。ただし、係合部17は、扇形等の他の径状態であっても良い。また、係合部17の数は、変更することも可能である。
【0070】
かかる実施例においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0071】
図8は、本発明の実施例3に係る結合構造に用いられている板材の一方の要部平面図である。なお、実施例3の基本構成は、上記実施例1と共通するため、実施例3の実施例1と対応する構成を同符号で示し重複した説明を省略する。
【0072】
本実施例の結合構造5では、突起部7の弾性片15が両持ち状に形成されている。すなわち、弾性片15の他端15bを本体部13と一体に構成している。
【0073】
このように構成した本実施例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例4】
【0074】
図9は、本発明の実施例4に係る結合構造に用いられている板材の一方の要部平面図である。なお、実施例4の基本構成は、上記実施例1と共通するため、実施例4の実施例1と対応する構成を同符号で示し重複した説明を省略する。
【0075】
本実施例の結合構造5では、突起部7の弾性片15を本体部13の幅方向の一側にのみ設けている。これに応じて、本実施例の弾性片15は、隙間27及び係合部17の膨出量が実施例1と比較して大きく設定されている。
【0076】
このように構成した本実施例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 組立体
3 板材
5 結合構造
7 突起部
9 溝部
9a,9b 内側面
13 本体部
15 弾性片
15a 一端
15b 他端
17 係合部
19 基端部
【要約】
【課題】容易に組立てができ且つ組立状態を維持できると共に種々の材質に適用可能な板材の結合構造を提供する。
【解決手段】相互に結合される板材3の一方に突出して設けられた突起部7と、板材3の他方に設けられ突起部7を内部に嵌合させる溝部9とを備え、突起部7は、板材3の一方から突出する本体部13と、本体部13の突出方向に対する交差方向である幅方向の少なくとも一側に設けられ、幅方向の内側に向けて弾性変形可能な弾性片15と、弾性片15から幅方向の外側に膨出し、嵌合時において溝部9の幅方向の内側面9a,9bに沿って塑性変形し内側面9a,9bに係合する係合部17と、を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9