特許第6806416号(P6806416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6806416
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】BIM制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20201221BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20201221BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20201221BHJP
   B66B 7/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   G06F17/50 680B
   G06F17/50 604G
   G06F17/50 612C
   G06F17/50 604H
   G06F17/50 608G
   G06F17/50 628A
   B66B7/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-136170(P2019-136170)
(22)【出願日】2019年7月24日
【審査請求日】2019年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 由衣
【審査官】 堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−170320(JP,A)
【文献】 特開2014−123229(JP,A)
【文献】 特開2017−111495(JP,A)
【文献】 特開2007−042051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F30/00−30/398
B66B7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を少なくとも備えたBIMシステムにおいて実行される方法であって、
前記BIMシステムは、建築物のBIMモデルを記憶するBIMモデル記憶手段と、前記BIMモデルに組み込み可能な昇降機のBIMパーツを作成するためのパーツ情報を記憶するパーツ情報記憶手段と、建築物周辺の地理を示す地理情報を記憶する地理情報記憶手段と、を備え、
前記制御部において実行される、前記パーツ情報記憶手段に記憶された前記パーツ情報を用いて、前記昇降機のBIMパーツを作成する昇降機モデリングステップと、前記昇降機モデリングステップにおいて作成された前記BIMパーツが、前記BIMモデル記憶手段に記憶された前記BIMモデルに組み込まれた状態の統合BIMモデルを作成する統合モデリングステップと、前記建築物内外の環境を定義する環境情報、前記建築物周辺に生じ得る災害を示す災害情報、及び前記統合BIMモデルの少なくともいずれかを含む建築物情報を取得する取得ステップと、前記地理情報で示された前記建築物の位置に基づき、地域ごとの災害に関する情報が示された防災マップから想定される前記昇降機に関わる前記災害情報を抽出するステップと、前記建築物情報に基づいて、前記昇降機に関わるアラート情報を生成する生成ステップと、前記アラート情報を出力する出力ステップと、を有する、BIM制御方法。
【請求項2】
前記生成ステップでは、さらに、前記アラート情報で示された内容に応じて前記昇降機側および前記建築物側の少なくともいずれかにおける対策を示した対策を示した対策情報を生成し、
前記出力ステップでは、前記アラート情報とともに前記対策情報を出力する、
請求項1に記載のBIM制御方法。
【請求項3】
前記出力ステップでは、さらに、前記アラート情報を、前記アラート情報で示された内容に対応する前記パーツ情報を指し示すよう出力する、
請求項1または請求項2に記載のBIM制御方法。
【請求項4】
前記統合BIMモデルから、前記建築物内の所定の領域と前記昇降機との距離を算出するステップと、前記統合BIMモデルから、前記所定の領域と前記昇降機との距離、前記建築物の壁の種類および構造に基づき、前記昇降機の騒音の基準値を設定するステップと、を、さらに有し、前記生成ステップでは、前記昇降機のBIMパーツに基づく前記昇降機の騒音が前記基準値を超えた場合に前記アラート情報を生成する、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のBIM制御方法。
【請求項5】
前記昇降機の騒音の基準値を設定するステップでは、
前記建築物の壁の種類および構造が決まっていない段階においては、前記壁の種類および構造を仮の値で設定して前記基準値を設定する、
請求項に記載のBIM制御方法。
【請求項6】
前記生成ステップでは、前記昇降機のBIMパーツに基づく前記昇降機の騒音が前記基準値を超えた場合の前記アラート情報で示された内容に応じて、前記建築物側における対策として前記建築物の設計変更を促す対策情報を生成し、
前記出力ステップでは、前記アラート情報とともに前記対策情報を出力する、
請求項または請求項に記載のBIM制御方法。
【請求項7】
前記BIMシステムは、前記昇降機のBIMパーツに、前記昇降機に対する利用者からの要望についての事例を示す要望事例情報を記憶する要望事例情報記憶手段を備え、
前記出力ステップでは、前記BIMパーツに対応付けられた前記要望事例情報から抽出した前記利用者の要望を含む要望情報を出力する、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のBIM制御方法。
【請求項8】
前記昇降機の前記BIMパーツに基づき、前記昇降機についてのコスト見積もりを算出するステップを含み、
前記出力ステップでは、前記コスト見積もりを出力する、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のBIM制御方法。
【請求項9】
前記昇降機モデリングステップは、
所定時間帯で推定されるピーク人数から算出された時間あたりの輸送人数に基づいて、機種仕様または基本仕様を決定するステップと、
決定した前記機種仕様または前記基本仕様に含まれる機器を適用した場合の重量に基づくレールまたは巻き上げ機を含む前記昇降機の用品を選定するステップと、
前記昇降機と前記建築物の躯体との間の干渉をチェックする納まり検討を行うステップと、を含み、
前記コスト見積もりを算出するステップは、
ユーザにより確定された前記昇降機のBIMパーツの仕様について実施され、
前記昇降機モデリングステップにおける結果と、前記コスト見積もりの対象となった前記昇降機の前記BIMパーツの仕様とを比較して、前記昇降機の前記BIMパーツの仕様に不整合および仕様漏れが無いかをチェックして不整合設計の有無を判定するステップを含み、
前記出力ステップでは、前記コスト見積もりと共に、前記不整合設計の有無の判定結果を出力する、
請求項に記載のBIM制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、BIM制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降機メーカの担当者は、昇降機を備える建築物を設計する客先に対して、平面図や断面図等の二次元図面及びカタログや納入実績等の写真を使用して、昇降機の設備計画を提案していた。このため、昇降機の設備計画を提案する際、より分かりやすく提示する技術が求められていた。
【0003】
例えば、特許文献1に、エレベータの乗りかごの意匠の仕様を検討するシステムが開示されている。また例えば、特許文献2には、エレベータの意匠検討を行い、かつ、見積もりを積算するシステムが開示されている。
【0004】
また近年、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を利用することで、建築に関する作業やデータ管理の合理化や効率化が図られている。例えばBIMシステムの利用者は、作成条件を入力することで、作成条件に合致した昇降機等に対応するBIMパーツを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−263537号公報
【特許文献2】特開2003−171069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、昇降機の設計計画を立案する場合には、納まりレイアウトや輸送量の検討の他、建築物内外の環境条件や地理条件等によっても、昇降機特有の検討が必要となる場合がある。これらに関して、個別に検討を行うと、必要な仕様の漏れ等が生じてしまう恐れがある。
【0007】
本実施形態が解決しようとする課題は、昇降機に特有の仕様の漏れを抑制することができるBIM制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のBIM制御方法は、制御部を少なくとも備えたBIMシステムにおいて実行される方法であって、前記BIMシステムは、建築物のBIMモデルを記憶するBIMモデル記憶手段と、前記BIMモデルに組み込み可能な昇降機のBIMパーツを作成するためのパーツ情報を記憶するパーツ情報記憶手段と、建築物周辺の地理を示す地理情報を記憶する地理情報記憶手段と、を備え、前記制御部において実行される、前記パーツ情報記憶手段に記憶された前記パーツ情報を用いて、前記昇降機のBIMパーツを作成する昇降機モデリングステップと、前記昇降機モデリングステップにおいて作成された前記BIMパーツが、前記BIMモデル記憶手段に記憶された前記BIMモデルに組み込まれた状態の統合BIMモデルを作成する統合モデリングステップと、前記建築物内外の環境を定義する環境情報、前記建築物周辺に生じ得る災害を示す災害情報、及び前記統合BIMモデルの少なくともいずれかを含む建築物情報を取得する取得ステップと、前記地理情報で示された前記建築物の位置に基づき、地域ごとの災害に関する情報が示された防災マップから想定される前記昇降機に関わる前記災害情報を抽出するステップと、前記建築物情報に基づいて、前記昇降機に関わるアラート情報を生成する生成ステップと、前記アラート情報を出力する出力ステップと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1にかかるBIMシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態1にかかるサーバ装置が生成するエレベータのBIMパーツの一例を示す図である。
図3図3は、実施形態1にかかる端末装置が作成する建築物のBIMモデルの一例を示す図である。
図4図4は、実施形態1にかかるBIMモデルにBIMパーツを組み込んだ統合BIMモデルを含むレイアウト画面の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態1にかかるBIMモデルにBIMパーツを組み込んだ統合BIMモデルを含むレイアウト画面の他の例を示す図である。
図6図6は、実施形態1にかかるBIMモデルにBIMパーツを組み込んだ統合BIMモデルを含むレイアウト画面の更に他の例を示す図である。
図7図7は、実施形態1にかかるアラート情報生成部302fによって生成されたアラート画面の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態1にかかるBIMシステムにおける統合BIMモデルの作成処理の手順の一例を示すフロー図である。
図9図9は、実施形態1にかかるBIMシステムにおけるエレベータ検討支援処理の手順の一例を示すフロー図である。
図10図10は、実施形態2にかかる端末装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態1]
以下、図面を参照して実施形態1について詳細に説明する。
【0012】
(BIMシステムの構成例)
図1は、実施形態1にかかるBIMシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、BIMシステム1は、昇降機としてのエレベータの3次元モデル等の情報を提供するサーバ装置200、及び、建築物の3次元モデルを生成するBIMアプリケーション等を搭載した端末装置100、を通信可能に接続して構成される。
【0013】
エレベータの3次元モデル等はBIMパーツと呼ばれる。建築物を構成する現実の構成要素に対し、BIMパーツは、BIM上の仮想的な建築物の構成要素である。BIMパーツには、当該構成要素の3次元表現に加え、分類コード、材質、モデル番号、機械的接続、電気的接続、配管接続等の各種接続、サービス情報といった関連データが含まれる。
【0014】
BIMパーツとしては、例えば、エレベータ、空調、電源設備、給排水衛生設備などを構成する各種パーツがある。また、BIMパーツとしては、例えば、エレベータ等そのもののBIMパーツも存在する。例えばエレベータのBIMパーツは、エレベータを構成する各種のBIMパーツを組み合わせて生成される。
【0015】
建築物の3次元モデルは建築物のBIMモデルと呼ばれる。建築物のBIMモデルは、BIM上の仮想的な建築物であって、建築物全体のデータを含む。建築物のBIMモデルには、エレベータのBIMパーツをはじめ、建築物の各種構成要素が組み込み可能である。
【0016】
サーバ装置200と端末装置100との間の通信には、一例として、ネットワーク400を介した有線・無線通信等の遠隔通信等を含む。また、これらBIMシステム1の各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0017】
ネットワーク400は、端末装置100及びサーバ装置200と、外部機器または外部システムとを相互に接続する機能を有し、例えば、インターネット、携帯端末回線網及び一般電話回線網等の電話回線網、イントラネット、または、電力線通信(PLC)等であってもよい。
【0018】
BIMシステム1には、ネットワーク400を介して、各地域の行政機関が管理する行政機関サーバ装置500が1つ以上接続されている。行政機関サーバ装置500は、例えばその地域における防災マップ等を含む防災マップデータベース502を有する。
【0019】
なお、BIMシステム1は、建築物を構成する他の要素の3次元モデル等を提供する他のサーバ装置を1つ以上備えていてもよい。このように、BIMシステムが複数の業者から提供される複数のサーバ装置を備えることにより、BIMによる設計方法では、各業種にて建物全体データである建築物の3次元モデルを共有することができ、1個のデータ上で個々の構成要素の関連性及び整合性の確認を行うことができる。
【0020】
(サーバ装置の構成例)
サーバ装置200は、端末装置100から送信される作成条件に対応する建築物のBIMモデルに組み込み可能なエレベータのBIMパーツを、記憶部206に記憶されたパーツ情報を用いて作成する機能を有する。
【0021】
サーバ装置200は、制御部202、通信制御インターフェース部204、及び記憶部206を備える。
【0022】
記憶部206は、HDD(Hard Disk Drive)等の固定ディスク装置またはSSD(Solid State Drive)等のストレージ手段であり、パーツ情報データベース206a等の各種のデータベースやテーブルを格納する。
【0023】
記憶部206に格納される各種データベースのうち、パーツ情報データベース206aは、建築物のBIMモデルに組み込み可能なエレベータのBIMパーツを作成するためのパーツ情報を記憶する。パーツ情報は、利用者が建築物のBIMモデルに組み込むエレベータのBIMパーツを設計する上で必要となる種々の情報を含む。
【0024】
パーツ情報は、例えば、用途、定員、積載量、動作速度、色、機種等といったエレベータの仕様、エレベータを建築物に設置する際に必要とされるスペース、寸法、各種付属設備、各種配線配管に関する情報などのうちの少なくとも1つを含む。さらに、パーツ情報は、例えば、エレベータを構成する必要部材の部材強度、価格、寸法、質量、色、素材、材料、固有振動数といった情報の他、納期、在庫状況、据付時間、仕上げ材、耐用年数、メーカ情報、品番型番などのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。なお、パーツ情報は、上記に限定されない。
【0025】
より具体的には、パーツ情報は、例えば、後述の制御部102の処理によりBIMパーツをBIMモデルに組み込む際等に用いられるBIMパーツのサイズ情報を含む。ここで、BIMパーツのサイズ情報は、BIMパーツを構成する各ユニット、構成部品のサイズ情報も含む。BIMパーツを構成する各ユニットとしては、例えば、昇降路、乗りかご、カウンタウェイト、メインロープ、巻上機、ガイドレール、乗り場ホール関連品、機械室、制御盤、電源設備、各種配線配管等が挙げられる。
【0026】
また、パーツ情報は、例えば、後述の制御部102の処理によりBIMパーツをBIMモデルに組み込んだ統合BIMモデルの動作を解析する際に用いられるBIMパーツの動作パラメータを含む。ここで、動作パラメータは、エレベータの動作速度、動作パターン等を規定するパラメータである。また、パーツ情報は、例えば、後述の制御部102の処理によりBIMパーツを変更する際に用いられる設定パラメータを含む。ここで、設定パラメータは、BIMパーツを構成する各ユニットのサイズ、色、材質、上記配線配管情報等を規定するパラメータを含む。なお、BIMパーツは、典型的なBIMモデルと同様に、このBIMパーツ自体に対象のエレベータに関連するパーツ情報等の属性情報を含んでいる。
【0027】
制御部202は、OS(Operating System)等の制御プログラムや、各種の処理手順等を規定したプログラム、及び、所要データを格納するための内部メモリを有する。制御部202は、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部202は、機能概念的に、作成条件受信部202a、エレベータモデリング部202b、輸送量計算部202c、機器適用判定部202d、納まり検討部202e、整合性判定部202f、コスト見積もり算出部202g、及び情報提供部202hを備える。
【0028】
作成条件受信部202aは、端末装置100から送信される作成条件を受信する。ここで、作成条件は、利用者が所望するエレベータの仕様を示す条件である。つまり、作成条件は、建築物のBIMモデルに組み込み可能なエレベータのBIMパーツを作成するための条件を指定する。作成条件は、例えば、機種、色、素材、希望の価格、納期、利用者の嗜好性等のうちの少なくとも1つを含んでもよい。また、作成条件は、利用者により端末装置100において入力装置118を介して入力されたものであってもよいし、予め作成条件が記憶された外部記憶装置(不図示)から読み込まれたものであってもよい。
【0029】
エレベータモデリング部202bは、作成条件受信部202aにより受信された作成条件に対応するエレベータのBIMパーツを、パーツ情報データベース206aに記憶されたパーツ情報を用いて作成する。エレベータモデリング部202bは、作成したエレベータのBIMパーツを記憶部206に格納して、BIMパーツデータベース(不図示)を構築してもよい。
【0030】
輸送量計算部202cは、エレベータモデリング部202bがエレベータのBIMパーツを作成する際に輸送量を計算する。輸送量計算は、建物の在監者数から出勤時等のピーク人数を推定し、時間あたりの輸送人数を算出することで行われる。これにより、必要なエレベータの台数、速度、定員、積載量等が求められる。エレベータモデリング部202bは、輸送量計算部202cが計算した輸送量に基づいてエレベータの機種仕様または基本仕様を決定する。
【0031】
機器適用判定部202dは、エレベータモデリング部202bがエレベータの機種仕様または基本仕様を決定すると、決定された仕様に含まれる機器を適用した場合の重量を計算する。エレベータモデリング部202bは、機器適用判定部202dの重量に基づくレールまたは巻き上げ機を含むエレベータ用品を選定する。
【0032】
納まり検討部202eは、エレベータモデリング部202bが、エレベータの機種仕様または基本仕様を決定し、レール及び巻き上げ機を含むエレベータ用品を選定すると、これらを適用したエレベータのBIMパーツと、建物躯体との干渉の有無をチェックする納まり検討を行う。
【0033】
整合性判定部202fは、エレベータのBIMパーツの最終的な仕様が確定されると、かかる仕様に基づき、その設計仕様の整合性を判定する。つまり、整合性判定部202fは、その設計仕様に不整合な仕様が含まれていないか否かを判定する。上述のように、エレベータのBIMパーツのモデリング時には、輸送量計算に基づく機種仕様や基本仕様の算出、仕様に含まれる機器を適用した場合の重量に基づくレールまたは巻き上げ機等の選定、並びに、建物躯体との緩衝チェック等の納まり検討が行われる。整合性判定部202fは、これらの結果と、最終的な仕様とを比較して、不整合な仕様や仕様漏れが無いかをチェックして、不整合設計の有無を判定する。
【0034】
整合性判定部202fは、判定した不整合設計の有無とともに、最終的な仕様に含まれるエレベータの各種パーツのリストを含む最終仕様情報を生成する。
【0035】
コスト見積もり算出部202gは、エレベータのBIMパーツの最終的な仕様が確定されると、かかる仕様に基づき、その設計仕様でのエレベータのコスト見積もりを算出する。コスト見積もりは、例えば、エレベータのBIMパーツを構成する昇降路、乗りかご、カウンタウェイト、メインロープ、巻上機、ガイドレール、乗り場ホール関連品、機械室、制御盤、電源設備、各種配線配管等の個々のBIMパーツの価格を積算することで得られる。
【0036】
情報提供部202hは、エレベータモデリング部202bにより作成されたエレベータのBIMパーツに基づき、エレベータのBIMパーツの情報を生成し、通信制御インターフェース部204を介して端末装置100へ送信する。情報提供部202cは、整合性判定部202fにより生成された最終仕様情報を、通信制御インターフェース部204を介して端末装置100へ送信する。情報提供部202cは、コスト見積もり算出部202gが算出したコスト見積もりの情報を、通信制御インターフェース部204を介して端末装置100へ送信する。
【0037】
通信制御インターフェース部204は、通信回線や電話回線等に接続されるアンテナやルータ等の通信装置(不図示)に接続されるインターフェースであり、サーバ装置200とネットワーク400との間における通信制御を行う機能を有する。すなわち、通信制御インターフェース部204は、端末装置100等と通信回線を介してデータを通信する機能を有している。
【0038】
(端末装置の構成例)
端末装置100は、サーバ装置200から送信されたエレベータのBIMパーツを、記憶部106に記憶された建築物のBIMモデルに組み込んだ統合BIMモデルを作成する機能を有する。端末装置100は、作成された統合BIMモデルを含むレイアウト画面を生成し、生成されたレイアウト画面を表示させる機能を有する。
【0039】
端末装置100は、例えば、一般に市販されるデスクトップ型またはノート型のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置、携帯電話、スマートフォン、PHS、及びPDA等の携帯端末装置等である。端末装置100は、制御部102、通信制御インターフェース部104、記憶部106、及び入出力制御インターフェース部108を備える。
【0040】
ここで、端末装置100は、インターネットブラウザ等を搭載していてもよく、BIMアプリケーション等を搭載していてもよい。また、端末装置100は、表示装置114と音声出力装置116とを少なくとも含む出力装置に接続されていてもよい。また、端末装置100は、データ入力等を行う入力装置118に接続されていてもよい。端末装置100が、これらの入出力装置と一体に構成されていてもよい。
【0041】
表示装置114は、アプリケーション等の表示画面を表示する液晶または有機EL等から構成されるディスプレイ、モニタ、及び、タッチパネル等であってもよい。また、音声出力装置116は、音声情報を音声として出力するスピーカ等であってもよい。また、入力装置118は、例えば、キー入力部、タッチパネル、タッチパッド等のコントロールパッド、マウス、キーボード、及び、マイク等であってもよい。
【0042】
端末装置100の通信制御インターフェース部104は、通信回線や電話回線等に接続されるアンテナやルータ等の通信装置(不図示)に接続されるインターフェースであり、端末装置100とネットワーク400との間における通信制御を行う機能を有する。すなわち、通信制御インターフェース部104は、サーバ装置200等と通信回線を介してデータを通信する機能を有している。
【0043】
入力部および出力部としての入出力制御インターフェース部108は、表示装置114、音声出力装置116、及び、入力装置118等の制御を行う。
【0044】
記憶部106は、HDDやSSD等の大容量のストレージ、SRAM(Static Random Access Memory)等を用いて構成される小容量高速メモリ等のストレージである。記憶部106は、BIMモデルデータベース106a等の各種のデータベースやファイルやテーブルを格納してもよい。ここで、記憶部106は、各種のファイル等を一時的に記憶するものであってもよい。
【0045】
BIMモデルデータベース106aは、建築物のBIMモデルを記憶する。BIMモデルデータベース106aには、予め設計者により設計された建築物のBIMモデルが格納されている。ここで、BIMモデルには、例えば、建物形状、空間関係、地理情報、建物部材の数量や特性、部材強度、固有振動数、耐用年数、各種付属設備、各種配線配管等の情報のうちの少なくとも1つを含む構造情報が含まれるが、これに限定されない。
【0046】
制御部102は、OS等の制御プログラムや、各種の処理手順等を規定したプログラム、及び、所要データを格納するための内部メモリを有する。制御部102は、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102は、機能概念的に、入力受付部102a、統合モデリング部102b、表示制御部102cを備える。
【0047】
入力受付部102aは、入力装置118からのユーザによる各種入力操作を受け付ける。例えば、入力受付部102aは、建築物のBIMモデルを作成するための入力操作を受け付ける。また例えば、入力受付部102aは、エレベータのBIMパーツを作成するための作成条件を設定するための入力操作を受け付ける。
【0048】
統合モデリング部102bは、サーバ装置200から送信されたエレベータのBIMパーツを、BIMモデルデータベース106aに記憶された建築物のBIMモデルに組み込んだ統合BIMモデルを作成する。統合モデリング部102bは、作成した統合BIMモデルを記憶部106に格納して、統合BIMモデルデータベース(不図示)を構築してもよい。
【0049】
表示制御部102cは、統合モデリング部102bにより作成された統合BIMモデルを含むレイアウト画面を生成して表示装置114に表示させる。また、表示制御部102cは、後述のアラート情報生成部302fにより生成されたアラート情報や、コスト見積もり算出部202gにより生成されたコスト見積もり等を、統合BIMモデルを含むレイアウト画面に重ねて表示装置114に表示させる。
【0050】
ところで、端末装置100には、機能拡張プログラムであるエレベータ検討支援ツール300がインストールされている。エレベータ検討支援ツール300をインストールすることで、BIMアプリケーションに付加的な機能が追加されるとともに、記憶部106に、要望事例情報データベース306a、地理情報データベース306b、環境情報データベース306c、及び防災マップデータベース306dが格納される。
【0051】
これにより、端末装置100の制御部102は、機能概念的に、作成条件送信部302x、建築物情報取得部302a、防災マップ取得部302b、環境アラート抽出部302c、災害アラート抽出部302d、建物アラート抽出部302e、アラート情報生成部302f、及び要望情報生成部302gを更に備えることとなる。
【0052】
(支援ツールによる拡張機能の構成例)
引き続き、図1を用いて、エレベータ検討支援ツール300による拡張機能の構成例について説明する。
【0053】
端末装置100の記憶部106には、要望事例情報データベース306a、地理情報データベース306b、環境情報データベース306c、及び防災マップデータベース306dが格納される。
【0054】
要望事例情報データベース306aは、過去にエレベータの利用者から寄せられた要望についての事例を示す要望事例情報を記憶する。個々の要望事例情報は、エレベータを構成する個々のBIMパーツに紐づけられている。例えば、防錆対策のない標準仕様のドアのBIMパーツと、海から所定距離内の建築物でエレベータのドア部分の錆を改善してほしいという要望とが紐づけられている。また例えば、所定の輸送量を有する乗りかごのBIMパーツと、所定の床面積を有するビルにてエレベータの朝夕の混雑を解消してほしいという要望とが紐づけられている。これらの要望はエレベータメーカが策定している設計基準に盛り込まれ、これらの要望を満たす対策パーツがエレベータメーカによって用意されている。エレベータメーカの設計基準は、エレベータを設計する際のノウハウ、設計手順、遵守すべき事項、禁止事項等の少なくともいずれかを含む。
【0055】
地理情報データベース306bは、設計対象の建築物周辺の地理情報を記憶する。具体的には、地理情報は、建築物の建築予定地の住所や緯度経度等、建築物の建築予定地を特定する情報を含む。地理情報が、建築物の建築予定地の海抜や標高等の高度を示す情報や、等高線等で表される建築物周辺の地形等の情報を含んでいてもよい。
【0056】
地理情報は、外部記憶装置(不図示)から読み込まれたものであってもよいし、入力装置118を介して入力されたものであってもよいし、ネットワーク400を介して取得されたものであってもよい。後述の制御部102により統合BIMモデルの動作を解析する際等に、上述の地理情報が参照される。
【0057】
環境情報データベース306cは、建築物の環境に影響を及ぼす各種の環境情報を記憶する。例えば、環境情報は、エレベータが設置される建築物の内外の環境を定義する情報であり、各種静的な環境条件、動的な環境条件等の情報を含む。また、環境情報は、建築物の内外の環境に影響を及ぼす物体の3次元モデルを構築するための形状データ等を含んでもよい。具体的には、環境情報は、例えば、天候条件、気候条件、日照条件、風速条件、湿度条件、塩害条件等の情報のうちの少なくとも1つを含むが、これに限られない。
【0058】
また、環境情報が、建築物のBIMモデル内で移動可能なヒトオブジェクトに関するオブジェクト情報を含んでいてもよい。ヒトオブジェクト情報は、所定条件に従って移動可能なヒトを模した3次元モデルを定義する情報である。所定条件とは、例えば建築物の用途およびレイアウトの少なくともいずれかであり得る。ヒトオブジェクト情報は、ヒトと模した3次元モデルを構築するための形状データの他、例えば、各ヒトオブジェクトについて出発地と目的地と少なくとも含む移動条件等を含む。
【0059】
環境情報は、外部記憶装置(不図示)から読み込まれたものであってもよいし、入力装置118を介して入力されたものであってもよいし、ネットワーク400を介して取得されたものであってもよい。また、環境情報は、上述の地理情報等から導き出される環境シミュレーション情報を含んでいてもよい。後述の制御部102により統合BIMモデルの動作を解析する際等に、上述の環境情報が参照される。
【0060】
防災マップデータベース306dは、建築物の建築予定地を含む地域の防災マップの情報を記憶する。防災マップは、例えば行政機関が発行する各種の防災マップやハザードマップに基づき生成される。行政機関が発行する防災マップ等は、例えば行政機関が管轄する行政機関サーバ装置500から、後述の防災マップ取得部302bが取得する。
【0061】
防災マップデータベース306dが記憶する防災マップは、日本で生じた災害情報に基づいて、地域ごとに生じる恐れのある災害情報を位置と対応付けて記憶している。災害の種類は、特に制限されるものではなく、例えば、台風、地震、雨、浸水など様々な情報が格納される。さらには、防災マップには、地域や位置ごとの災害の発生頻度も格納されている。
【0062】
また、実施形態1の防災マップは、災害ごとに対策の重要度を示す情報を記憶している。これによって、当該地域で複数の災害が生じる可能性がある場合に、災害の重要度、及び当該災害の頻度に応じて、災害ごとに対策すべき優先度を特定可能となる。
【0063】
防災マップは、位置と対応付けた災害情報に限らず、当該位置の地形を考慮して生じる可能性がある災害に関する情報を記憶している。例えば、防災マップには、例えば海から1km以内か否かなどのような海に近いか否かの情報が含まれている。さらには、防災マップは、例えば、住所または緯度経度などの位置ごとに、海の近さ及び海抜に加えて、実際に浸水が生じたか否かの情報を保持している。
【0064】
災害情報は、単なる災害に関する情報だけでなく、当該災害が生じた場合にどのような状況になるのかといったシミュレーション結果等が含まれていてもよい。
【0065】
また、防災マップデータベース306dには、災害情報に限らず、災害情報と対応付けられたアラート情報が格納されている。アラート情報としては、例えば、海から1km以内の場合には、塩害対策が必要な旨が格納されている。
【0066】
さらには、防災マップデータベース306dは、アラート情報と、推奨する設計に関する情報と、を対応付けて記憶している。例えば、アラート情報が「海から1km以内の場合には、塩害対策が必要」という情報に対して、「錆対策」という設計に関する情報が対応付けられている。
【0067】
他の例としては、「台風が来る頻度が高い」旨のアラート情報と、台風対策となる「防振対策」という設計に関する情報が対応付けられている。
【0068】
さらに、防災マップデータベース306dでは、推奨する設計に関する情報と、災害対策すべきBIMパーツを識別する情報と、を対応付けてもよい。例えば、防災マップデータベース306dでは、「錆対策」と、錆対策の対象となる部品を示したBIMパーツを識別する情報と、を対応付けている。
【0069】
他の例としては、防災マップデータベース306dでは、例えば、「防振対策」と、複数の揺れ検知センサを示した複数のBIMパーツを識別する情報と、を対応付けている。これによって、「防振対策」として、複数の揺れ検知センサを設置すればよいことが把握できる。
【0070】
以上のような要望事例情報データベース306a、地理情報データベース306b、環境情報データベース306c、及び防災マップデータベース306dは、端末装置100の拡張機能に基づく機能部により参照される。しかし、要望事例情報データベース306a、地理情報データベース306b、環境情報データベース306c、及び防災マップデータベース306d等は、上述のサーバ装置200の記憶部206に格納されていてもよい。端末装置100の拡張機能に基づく機能部がこれらのデータベースを参照するときは、端末装置100から、例えばネットワーク400を介してサーバ装置200にアクセスし、これらのデータベースから各種情報を取得する。
【0071】
端末装置100の制御部102が備える作成条件送信部302xは、利用者により入力される上述の作成条件をサーバ装置200へ送信する。作成条件は、利用者により入力装置118を介して入力されたものであってもよいし、予め作成条件が記憶された外部記憶装置(不図示)から読み込まれたものであってもよい。
【0072】
建築物情報取得部302aは、記憶部106のBIMモデルデータベースから建築物のBIMモデルを取得する。また、建築物情報取得部302aは、地理情報データベース306bから地理情報を取得する。また、建築物情報取得部302aは、環境情報データベース306cから環境情報を取得する。
【0073】
防災マップ取得部302bは、行政機関サーバ装置500の防災マップデータベース502から防災マップを取得する。このとき、防災マップ取得部302bは、建築物情報取得部302aが取得した地理情報に基づき、建築物の建築予定地を含む地域を管轄する行政機関の行政機関サーバ装置500にアクセスし、建築物の建築予定地を含む防災マップを取得する。防災マップ取得部302bによる行政機関サーバ装置500からの防災マップの取得は、例えば、行政機関サーバ装置500の防災マップデータベース502が更新されたタイミングで、後述の災害アラート抽出部302dが災害アラートを抽出する直前のタイミングで、または、定期もしくは不定期に行われてよい。防災マップ取得部302bは、取得した行政機関サーバ装置500からの最新の防災マップに基づき、上述の記憶部106に格納される防災マップデータベース306dの防災マップの情報を更新する。
【0074】
環境アラート抽出部302cは、建築物情報取得部302aが取得した環境情報に基づき、環境情報から想定されるエレベータに関わる環境アラートを抽出する。
【0075】
例えば、環境情報の天候条件や気象条件から、寒冷や酷暑のためにエレベータの運行に支障が生じ得ると想定される場合には、環境アラート抽出部302cは寒冷アラートや酷暑アラートを環境アラートとして抽出する。例えば、環境情報の風速条件から、強風によりエレベータの運行に支障が生じ得ると想定される場合には、環境アラート抽出部302cは風害アラートを環境アラートとして抽出する。例えば、環境情報の塩害条件から、塩害によりエレベータに障害が生じ得ると想定される場合には、環境アラート抽出部302cは塩害アラートを環境アラートとして抽出する。
【0076】
環境アラート抽出部302cは、これらの環境アラートが複数、抽出されたときには、これらの環境アラートが発生する頻度や、これらの環境アラートによりエレベータに生じる障害の深刻度等に応じて、これらの環境アラートに優先順位を付ける。
【0077】
災害アラート抽出部302dは、防災マップデータベース306dの防災マップに基づき、防災マップの情報から想定されるエレベータに関わる災害アラートを抽出する。
【0078】
例えば、地理条件や防災マップが含む災害情報から、建築物の建築予定地が地震発生予測地域に含まれたり近かったりする場合には、災害アラート抽出部302dは震災アラートを災害アラートとして抽出する。例えば、地理条件や防災マップが含む災害情報から、建築物の建築予定地が浸水被害地域に含まれたり近かったりする場合には、災害アラート抽出部302dは水害アラートを災害アラートとして抽出する。
【0079】
災害アラート抽出部302dは、これらの災害アラートが複数、抽出されたときには、これらの災害アラートが発生する頻度や、これらの災害アラートによりエレベータに生じる障害の深刻度等に応じて、これらの災害アラートに優先順位を付ける。
【0080】
建物アラート抽出部302eは、建築物情報取得部302aが取得した建築物のBIMモデルに基づき、建築物のBIMモデルから想定されるエレベータに関わる建物アラートを抽出する。
【0081】
建物アラート抽出部302eは、例えば、建築物のBIMモデルに人が居住する居室が含まれる場合、居室とエレベータとの距離を算出する。そして、居室とエレベータとの距離が所定の範囲内である場合には、建物アラート抽出部302eは、居室においてエレベータ運行に伴う騒音や振動の弊害が生じ得るとして騒音アラートや振動アラートを建物アラートとして抽出する。居室において騒音や振動の弊害が生じ得るか否かは、居室とエレベータとの距離からだけでなく、居室やエレベータを囲う壁の厚さや材質、エレベータの走行速度等の他の情報を加味して判定してもよい。
【0082】
建物アラート抽出部302eは、例えば、建築物のBIMモデルに含まれる建築物の用途およびレイアウト等の情報の少なくともいずれかに基づき、この建築物に設置されるエレベータとして適正な輸送量を算出する。そして、建物アラート抽出部302eは、算出した適正な輸送量を示す輸送量アラートを建物アラートとして抽出する。
【0083】
より具体的には、例えば、建築物の用途およびレイアウトからは、その建築物の収容人数や時間帯ごとの人の出入り等が予測可能である。つまり、例えば、建築物がアパートやマンション等であれば、朝夕の人の出入りが多いであろうし、商業施設等であれば、営業時間帯の人の出入りが多いであろうことが予測できる。
【0084】
建物アラート抽出部302eは、これらの建物アラートが複数、抽出されたときには、これらの建物アラートが発生する頻度や、これらの建物アラートにより生じるエレベータに関する弊害の深刻度等に応じて、これらの建物アラートに優先順位を付ける。
【0085】
アラート情報生成部302fは、環境アラート抽出部302cが抽出した環境アラート、災害アラート抽出部302dが抽出した災害アラート、建物アラート抽出部302eが抽出した建物アラートに基づき、アラート情報を生成する。
【0086】
例えば、寒冷アラート、酷暑アラート、風害アラート、塩害アラート等の環境アラートが抽出された場合、アラート情報生成部302fは、寒冷地対策、酷暑対策、風害対策、塩害対策等が必要であることを示すアラート情報を生成する。
【0087】
例えば、震災アラート、水害アラート等の災害アラートが抽出された場合、アラート情報生成部302fは、地震対策、水害対策等が必要であることを示すアラート情報を生成する。
【0088】
例えば、騒音アラート、振動アラート、輸送量アラート等の建物アラートが抽出された場合、アラート情報生成部302fは、騒音対策、振動対策等が必要であることを示すアラート情報や、適正な輸送量を示すアラート情報を生成する。
【0089】
これらの環境アラート、災害アラート、及び建物アラートを複数受信した場合には、アラート情報生成部302fは、環境アラート抽出部302c、災害アラート抽出部302d、及び建物アラート抽出部302eにより付された優先順位にしたがって、これらの環境アラート、災害アラート、及び建物アラートを所定のランクに振り分ける。所定のランクとしては、例えば優先順位の高い警告ランク、優先順位の低い注意ランク等があってよい。ただし、ランクは2ランクとは限らず、例えばレベル1〜3、レベル1〜5までなど、複数段階のランク付けがなされてよい。
【0090】
アラート情報生成部302fは、生成したアラート情報およびランク付け等の情報を制御部102の表示制御部102cへと渡す。このとき、アラート情報生成部302fは、上位ランクのアラート情報のみを表示制御部102cへと渡してもよく、全てのアラート情報を表示制御部102cへと渡してもよい。表示制御部102cは、これらの情報に基づき、入出力制御インターフェース部108を介して表示装置114等に、アラート情報を例えばランクと共に表示させる。
【0091】
アラート情報生成部302fは、複数ランクのアラート情報を表示させる際には、優先順位に従ってアラート情報が表示されるようアラート情報を生成する。例えば、災害に関するアラート情報が複数存在した場合に、レベルが高いものから順に表示されるようアラート情報を生成する。
【0092】
さらに、アラート情報生成部302fは、アラート情報を表示させる際に、当該アラート情報で示した災害対策のために、推奨する設計に関する情報を表示する。例えば、アラート情報が、「台風の頻度が高い」場合には、推奨する設計に関する情報として{防振対策}を示す情報を表示する。さらには、アラート情報生成部302fは、「防振対策」と対応付けられているBIMパーツを指し示してアラート情報を表示するように制御する。
【0093】
このように、アラート情報生成部302fは、アラート情報に対して、推奨する設計に関する情報と、設計変更の対象となるBIMパーツと、を対応付けた表示を、表示制御部102cに行わせる。
【0094】
なお、種々のアラートを、環境情報に基づく環境アラート、災害情報に基づく災害アラート、建築物のBIMモデルに基づく建物アラートに分類したが、かかる分類はあくまで例示的なものである。例えば、環境情報データベース306cが記憶する環境情報がより多くの情報を含むことで、環境情報から震災アラートや水害アラートが抽出されてもよい。また、防災マップデータベース306dが記憶する防災マップに基づいて、寒冷アラート、酷暑アラート、風害アラート、塩害アラート等が抽出されてもよい。また、環境情報データベース306cが記憶する環境情報等から、騒音アラート、振動アラート、輸送量アラート等が抽出されてもよい。例えば、環境情報は、上述のように、ヒトオブジェクト情報を含む。ヒトオブジェクト情報は、例えば建築物における人の移動条件を含んでおり、エレベータの適正な輸送量の算出に利用可能である。
【0095】
要望情報生成部302gは要望情報を生成する。具体的には、要望情報生成部302gは、要望事例情報データベース306aを参照して、エレベータのBIMパーツに含まれる個々のBIMパーツのうち、要望事例情報と紐づけられているものがないか否かを検索する。いずれかのBIMパーツに紐づけられた要望事例がある場合には、要望情報生成部302gは、その要望事例を含む要望情報を生成する。
【0096】
要望情報生成部302gは、生成した要望情報を制御部102の表示制御部102cへと渡す。表示制御部102cは、これらの情報に基づき、入出力制御インターフェース部108を介して表示装置114等に、要望情報を表示させる。
【0097】
(BIMパーツ及びBIMモデルの例)
次に、図2及び図3を用いて、実施形態1のサーバ装置200が作成するエレベータのBIMパーツ、及び実施形態1の端末装置100が作成する建築物のBIMモデルについて説明する。
【0098】
図2は、実施形態1にかかるサーバ装置200が作成するエレベータのBIMパーツの一例を示す図である。上述のように、サーバ装置200のエレベータモデリング部202bは、例えば、図2に示すようなエレベータの3次元のBIMパーツを作成する。図2の左側は、昇降路、乗りかご、ガイドレール等のユニットから構成されるBIMパーツであり、図2の右側は、乗り場ホーム関連品の一例として、乗降口のドアのユニット等から構成されるBIMパーツである。
【0099】
図3は、実施形態1にかかる端末装置100が作成する建築物のBIMモデルの一例を示す図である。上述のように、端末装置100の統合モデリング部102bは、図3に示すようなエレベータのBIMパーツを建築物のBIMモデルに組み込んだ3次元の統合BIMモデルを作成する。図3には、建築物の完成時におけるエレベータの設置状態を示す統合BIMモデルの一部が示されている。
【0100】
(レイアウト画面の表示例)
次に、図4図6を用いて、実施形態1のBIMモデルにBIMパーツを組み込んだ統合BIMモデルを含むレイアウト画面について説明する。図4は、実施形態1にかかるBIMモデルにBIMパーツを組み込んだ統合BIMモデルを含むレイアウト画面の一例を示す図である。
【0101】
図4に示すように、端末装置100の表示制御部102cは、例えば端末装置100の利用者による統合BIMモデルの表示指令にしたがって、統合BIMモデルを含むレイアウト画面を表示装置114に表示させる。
【0102】
統合BIMモデルにエレベータのBIMパーツが組み込まれているときは、表示制御部102cは、端末装置100の拡張機能であるアラート情報生成部302f及び要望情報生成部302gから受信したアラート情報および要望情報を、レイアウト画面に重ねて表示させる。
【0103】
図4の例では、レイアウト画面には、2つのアラート情報と1つの要望情報とが表示されている。2つのアラート情報はランク分けされ、1つはそのアラート情報が警告ランクであることを示す警告アイコンと共に「警告」の文字が付され、もう1つはそのアラート情報が注意ランクであることを示す注意アイコンと共に「注意」の文字が付されている。2つのアラート情報が、それらのアラート情報に関連するエレベータの部位をそれぞれ指していてもよい。
【0104】
警告ランクのアラート情報は、例えば防災マップに基づく災害アラートを含み、建築物の建築予定地が浸水被害地域であるため、エレベータを防水仕様にする等の水害対策が必要である旨を示している。そして、このアラート情報は、例えば浸水被害の生じやすいエレベータの床部分を指している。注意ランクのアラート情報は、例えば環境情報に基づく環境アラートを含み、建築物の建築予定地が海に近いため、エレベータのドア等の外装部分にメッキを施す等の塩害対策が必要である旨を示している。そして、このアラート情報は、例えば塩害の影響を受けやすいエレベータのドア部分を指している。また、これらのアラート情報には、防水仕様パーツやメッキ処理パーツなど、水害対策や塩害対策を行うのに適切なBIMパーツの候補が含まれていてもよい。
【0105】
要望情報は、海に近い地域で、エレベータのドア部分の錆を改善してほしいという要望が過去にあったことを示している。
【0106】
図5は、実施形態1にかかるBIMモデルにBIMパーツを組み込んだ統合BIMモデルを含むレイアウト画面の他の例を示す図である。
【0107】
図5の例では、レイアウト画面には、2つのアラート情報と1つの要望情報とが表示されている。2つのアラート情報はランク分けされ、1つはそのアラート情報が警告ランクであることを示す警告アイコンと共に「警告」の文字が付され、もう1つはそのアラート情報が注意ランクであることを示す注意アイコンと共に「注意」の文字が付されている。2つのアラート情報が、それらのアラート情報に関連するエレベータの部位をそれぞれ指していてもよい。
【0108】
警告ランクのアラート情報は、例えば建築物のBIMモデルに基づく建物アラートを含み、建築物内の居室がエレベータ近くにあるため、エレベータを囲う壁を厚くする等の騒音対策や振動対策が必要である旨を示している。そして、このアラート情報は、例えば防音対策等の対象となるエレベータを囲う壁部分を指している。3次元のBIMモデルで状況が把握しづらいときには、図5(b)に示す平面図で表示させてもよい。この場合、例えば、強調表示された居室と共に、エレベータを囲う壁を指すアラート情報が表示される。注意ランクのアラート情報は、例えば建築物のBIMモデルに基づく建物アラートを含み、当該建築物に設置されるべきエレベータの適正な輸送量を示している。そして、このアラート情報は、輸送量の決定要因となるエレベータの乗りかご部分を指している。また、これらのアラート情報には、防音仕様パーツや大型仕様エレベータなど、防音対策や振動対策を行ったり、適正な輸送量のエレベータを設置したりするのに適切なBIMパーツの候補が含まれていてもよい。
【0109】
要望情報は、所定の床面積を有するビルにてエレベータの朝夕の混雑を解消してほしいという要望が過去にあったことを示している。
【0110】
なお、端末装置100の利用者への注意喚起のため、アラート情報は、例えばエレベータの現行仕様とは無関係に表示される。つまり、既に塩害対策済みのエレベータにおいて、塩害対策についてのアラート情報が表示されることもあり得る。また、適正な輸送量を満たすエレベータにおいて、適正な輸送量を示すアラート情報が表示されることもあり得る。ただし、エレベータの仕様が所定条件を満たすときは、その項目に関するアラート情報は表示されないようにしてもよい。
【0111】
一方、要望情報は、例えばエレベータの現行仕様に鑑みて表示される。つまり、要望情報は、エレベータの現行仕様に対して過去に何らかの要望があり、これに対する対策パーツが用意されていることを示しており、エレベータに何らかの改善の余地があることが想定される場合に表示される。
【0112】
これらのアラート情報および要望情報が示す、エレベータに生じ得る障害等を未然に防ぐため、端末装置100の利用者は、例えば、レイアウト画面に表示される「パーツの追加・変更」ボタンを押すことで、例えばエレベータのBIMパーツを作成するための作成条件を変更する画面に移行し、BIMパーツの作成条件変更の作業を行うことができる。
【0113】
また、端末装置100の利用者は、例えば、レイアウト画面に表示される「確定」ボタンを押して、そのときレイアウト画面に表示されているエレベータのBIMパーツの仕様を最終仕様として確定することができる。
【0114】
図6は、実施形態1にかかるBIMモデルにBIMパーツを組み込んだ統合BIMモデルを含むレイアウト画面の更に他の例を示す図である。
【0115】
図6に示すように、所定のエレベータのBIMパーツの仕様が最終仕様として確定されると、表示制御部102cは、端末装置100の拡張機能である整合性判定部202fからエレベータの最終仕様の情報を取得し、コスト見積もり算出部202gからエレベータの最終仕様のコスト見積もりの情報を取得し、それらをレイアウト画面にかさねて表示させる。
【0116】
図6の例では、レイアウト画面には、エレベータの最終仕様として、標準パーツの他、オプションとして、防音パーツ、防水パーツ、メッキ処理パーツが追加されていることが示されている。また、整合性判定部202fの判定により、不整合設計は無いことが示されている。また、コスト見積もりには、標準パーツの価格の他、オプションとして、防音パーツ、防水パーツ、メッキ処理パーツの価格が含まれ、これらの合計が示されている。
【0117】
ただし、得られた結果が満足のいくものでなかった場合には、端末装置100の利用者は、図6のレイアウト画面においても、例えば、レイアウト画面に表示される「パーツの追加・変更」ボタンを押すことで、例えばエレベータのBIMパーツを作成するための作成条件を変更する画面に移行し、BIMパーツの作成条件変更の作業を行うことができる。
【0118】
なお、図6の例によらず、エレベータ仕様のいくつかの候補に対して、それぞれ、それらの仕様に含まれる各種パーツ情報、及びコスト見積もりが示されてもよい。また、各種パーツ情報およびコスト見積もりは、最終仕様のみならず、途中段階のエレベータの仕様について示されてもよい。
【0119】
図7は、実施形態1にかかるアラート情報生成部302fによって生成されたアラート画面の一例を示す図である。図7に示すように、利用者は、アラート情報を含むアラート画面を、例えば建築物のBIMモデルにエレベータのBIMパーツが組み込まれた平面図として表示させ、また、アラート画面から推奨パーツの設置や交換を行うこともできる。
【0120】
図7(a)に示す例では、複数のアラート情報が、重要度順に表示されている。さらに、アラート情報に、「警告」311と示すことで、当該アラート情報に対して優先的に対策すべきことを認識させることができる。さらに当該アラート情報に対して、推奨する設計に関する情報として「防振対策」がチェックボックス312に隣接して表示される。そして、当該アラート情報は、防振対策すべきBIMパーツ313、314を指し示している。これにより、利用者は防振対策すべきBIMパーツを認識できる。
【0121】
さらに、アラート情報に「注意」315と示すことで、当該アラート情報が、「警告」311と示されたアラート情報と比べて優先度が低いことを、利用者に認識させることができる。さらに当該アラート情報に対して、推奨する設計に関する情報として「揺れ検知センサ」がチェックボックス316に隣接して表示される。そして、当該アラート情報は、「揺れ検知センサ」を設置すべき個所317を指し示している。これにより防振対策すべき手段を認識できる。
【0122】
図7(b)は、利用者が、BIMパーツを設置し、あるいは交換した場合、またはチェックボックス312、316にチェックしたため、実施形態1のアラート情報生成部302fが、対応するアラート情報を非表示となるようにした後の画面例を示している。当該画面例では、BIMパーツ323、324が防振対策用のパーツに交換されているとともに、揺れ検知センサ327が設けられている。これによって、アラート情報に対応する対策が完了したこととなる。
【0123】
(各種アラートと対策の例)
上述のように、環境アラート抽出部302c、災害アラート抽出部302d、及び建物アラート抽出部302eは、エレベータの設計に関わる各種アラートを抽出する。アラート情報生成部302fは、抽出された各種アラートに基づき、アラート情報を生成するほか、各種アラートに対する対策を提示する。
【0124】
ここで、各種アラートのより詳細な例と、それらのアラートに対する対策のより詳細な例を以下に示す。各種アラート及びその対策は、上記に述べたもの及び上記に述べたもの以外のものを含む。各種アラート及びその対策は以下に示す例に限られない。
【0125】
なお、以下に示すアラートの種類によっては、コストや工期や労力の面からみて、エレベータ側で対策を行う方が良い場合、建物側で対策を行う方が良い場合、及びエレベータと建物との両方の側で対策を行うのが良い場合等の種々のケースが考えられる。アラート情報生成部302fは、適宜、エレベータ側、建物側それぞれの対策を提示してもよい。アラート情報生成部302fは、エレベータ側での対策を図った場合のコストを提示してもよい。
【0126】
各種アラートのうち、環境アラートとしては、例えば、塩害、湿度、雨、風、照度、温度、及び埃・塵・土に関するものがある。
【0127】
建物の建築予定地が海に近い場合には、アラート情報生成部302fは塩害に関するアラートを生成する。塩害に対しては、エレベータ側より建物側で対策を行うことが望ましいものの、エレベータ側で取り得る対策も幾つか考えられる。アラート情報生成部302fは、意匠品等の外観部分に下地処理や塗装等を行う、機器類は金属製ではなく樹脂製とする、種々の制御盤や制御盤と機器類とを接続する外線ケーブルにも同様の塩害対策を施す等の対策を提示する。
【0128】
建物の建築予定地が海に近い場合には多湿となり得る。アラート情報生成部302fは湿度に関するアラートを生成する。アラート情報生成部302fは、湿度対策として、各種エレベータ用品の防錆対策、及び制御盤やモータ等のユニットの防水対策を提示する。
【0129】
エレベータが屋外(準・屋外も含む)に設置される場合には雨の流入が起こり得る。アラート情報生成部302fは雨に関するアラートを生成する。アラート情報生成部302fは、排水対応を図る、ピット部分の制御機器を高い位置に取り付ける等の対策を提示する。
【0130】
エレベータが屋外(準・屋外も含む)に設置される場合であって、特に高階床の場合には、アラート情報生成部302fは風に関するアラートを生成する。風の影響でケーブルやレールが揺れてエレベータの運行が停止してしまうことを抑制するため、アラート情報生成部302fは、エレベータ側の防風対策として、特殊環境対応での工事調整が可能であることを提唱する。この場合、特殊環境対応となるため、アラート情報生成部302fは別途コストが発生する可能性を提示する。
【0131】
エレベータが大型窓等を備える展望用エレベータである場合、乗りかご内が明るくなりすぎ、エレベータ用品のデジタル表示が見えづらくなることがある。アラート情報生成部302fは照度に関するアラートを生成する。エレベータ側の手配用品で該当するものがあれば、アラート情報生成部302fにより提示される。
【0132】
展望用エレベータの場合、エレベータの電気用品の温度が上昇することにより、見込まれた効率が得られない、機器の寿命が低下する等の不具合が生じ得る。アラート情報生成部302fは温度上昇に関するアラートを生成する。エレベータにおいては昇降路内が一定温度以下であることを前提に開発および設計がなされているため、建物側で対策が採られることが好ましい。アラート情報生成部302fは、例えば、昇降路に換気扇やガラリを取り付ける、昇降路の壁を熱伝導性の良いものに変える、躯体構造を変更する等の対策を提示する。
【0133】
環境によっては、エレベータが埃・塵・土の影響を受けることがある。ユニット内の基板に埃・塵・土等が溜まると不良動作の原因となる。アラート情報生成部302fは埃・塵・土に関するアラートを生成し、エレベータ側の手配用品で該当するものがあれば提示する。
【0134】
各種アラートのうち、災害アラートとしては、例えば、地震、火災、及び台風がある。
【0135】
地震が発生すると、原則、エレベータは停止するが、地域ごとの耐震対策、建物免震に合わせた対策等がエレベータにも望まれる。この場合、エレベータ側による免震対応を仕様に盛り込んだ形でエレベータのモデリングがなされる。アラート情報生成部302fは、地震完成運転、高階床物件における長尺物揺れ感知器等の仕様の追加も可能であることを提示する。
【0136】
地域に木造建築が多い場合等には、アラート情報生成部302fは火災に関するアラートを生成する。更に、建物が高階床である場合や老人ホーム等である場合には、災害時のエレベータ使用のニーズを把握したうえで、アラート情報生成部302fは、防火用区画を設け、遮煙設備や耐熱ケーブルを用いたエレベータの設計を提示する。また、アラート情報生成部302fは、災害時でもエレベータを停止させないようなオペレーションとし、復帰後直ちに運行を開始するように変更することを提示する。
【0137】
建物の建築予定地が台風多発地帯であるような場合には、アラート情報生成部302fは台風に関するアラートを生成する。台風に対しては、上述の、風対策、雨対策、及び湿度対策等を適宜合わせた対策が提示される。
【0138】
各種アラートのうち、建物アラートとしては、例えば、騒音・振動、電源ノイズ、温度、及びエレベータの法的対応要求に関するものがある。
【0139】
エレベータの速度や積載量に応じて、手配されるトランス用品などの最大加速における騒音および振動は変わる。BIMシステム1では、建物内の居室とエレベータとの距離、壁の種類、及び壁の厚み等の構造などから、騒音の基準値を設定しておき、手配されるエレベータ用品の騒音と比較する。壁の種類や構造が決まっていない場合には、BIMシステム1は、壁の厚みや構造を仮の値で設定して判定を行う。手配品の騒音が基準値を超えた場合、アラート情報生成部302fは、騒音および振動に関するアラートを生成し、建物側での設計変更を提唱する。振動については、アラート情報生成部302fは、エレベータ側での防振対策を含めた設計および見積もりを提示する。
【0140】
電気接続の設計に基づき、建物側との接続や設置状況によって多大の漏れ電流が発生する恐れがある場合には、アラート情報生成部302fは、電源ノイズに関するアラートを生成し、配線を見直すよう建物側に対策を提示する。なお、エレベータ側では、フィルタでの対策が全機種に対して施されることが前提となっており、エレベータ側での高周波等の発生は無い。
【0141】
昇降路の壁の熱伝導性が悪い場合や、その他の周囲環境によって、エレベータの温度上昇が見込まれる場合には、アラート情報生成部302fは温度に関するアラートを生成する。対策は上述の通りである。
【0142】
エレベータには法的対応が要求される場合がある。例えば、乗りかごと昇降路の壁との距離が120mm以上である場合には、エレベータ側で昇降路の入口以外の全てにパネルを設置する義務がある。エレベータのドアが不用意に開いて人が転落するのを防止するためである。この場合、コスト高となるため、アラート情報生成部302fは建築躯体設計を変更する等の提唱を行う。
【0143】
(統合BIMモデルの作成処理例)
次に、図8を用いて、実施形態1のBIMシステム1における統合BIMモデルの作成処理の例について説明する。図8は、実施形態1にかかるBIMシステム1における統合BIMモデルの作成処理の手順の一例を示すフロー図である。統合BIMモデルの作成処理は、BIM制御処理の一環として行われる。
【0144】
図8に示すように、端末装置100の作成条件送信部302xは、利用者により入力装置118等を用いて入力される作成条件をサーバ装置200へ送信する(ステップS101)。
【0145】
サーバ装置200の作成条件受信部202aは、その作成条件を受信する(ステップS201)。
【0146】
エレベータモデリング部202bは、作成条件受信部202aが受信した作成条件に対応するエレベータのBIMパーツを、パーツ情報データベース206aに記憶されたパーツ情報を用いて作成する(ステップS202)。
【0147】
情報提供部202cは、エレベータモデリング部202bが作成したエレベータのBIMパーツの情報を端末装置100へ送信する(ステップS203)。
【0148】
端末装置100の通信制御インターフェース部104は、エレベータのBIMパーツの情報を受信する(ステップS102)。
【0149】
統合モデリング部102bは、通信制御インターフェース部104が受信した単数または複数のエレベータのBIMパーツをBIMモデルデータベース106aに記憶された建築物のBIMモデルに組み込んだ状態の統合BIMモデルを作成する(ステップS103)。
【0150】
以上により、実施形態1のBIMシステム1における統合BIMモデルの作成処理が終了する。
【0151】
(エレベータ検討支援処理の例)
次に、図9を用いて、実施形態1の端末装置100におけるエレベータ検討支援処理の例について説明する。図9は、実施形態1にかかるBIMシステム1におけるエレベータ検討支援処理の手順の一例を示すフロー図である。エレベータ検討支援処理はBIM制御処理の一環として行われ、例えば、上述の統合BIMモデルの作成処理が終了すると実施される。エレベータ検討支援処理は、主に、端末装置100の拡張機能に基づく機能部により実施される。
【0152】
図9に示すように、建築物情報取得部302aは、環境情報、地理情報、及び建築物のBIMモデル等の建物情報を取得する(ステップS301)。環境情報は記憶部106の環境情報データベース306cから取得され、地理情報は記憶部106の地理情報データベース306bから取得され、建築物のBIMモデルは記憶部106のBIMモデルデータベース306aから取得される。
【0153】
環境アラート抽出部302cは、建築物情報取得部302aが取得した環境情報から環境アラートを抽出する(ステップS302)。環境アラート抽出部302cは、抽出した環境アラートが複数あれば(ステップS303:Yes)優先順位付けをし(ステップS304)、抽出した環境アラートが1つであれば(ステップS303:No)そのまま、アラート情報生成部302fへと送信する。
【0154】
防災マップ取得部302bは、例えば、建築物情報取得部302aが取得した地理情報に基づき、該当する行政機関サーバ装置500の防災マップデータベース502から建築物の建築予定地を含む最新の防災マップを取得し、端末装置100の記憶部106に格納される防災マップデータベース306dの防災マップを最新のものに更新する(ステップS305)。ただし、かかる処理は、エレベータ検討支援処理の実施前に、事前に行われていてもよい。災害アラート抽出部302dは、防災マップから災害アラートを抽出する(ステップS306)。災害アラート抽出部302dは、抽出した災害アラートが複数あれば(ステップS307:Yes)優先順位付けをし(ステップS308)、抽出した災害アラートが1つであれば(ステップS307:No)そのまま、アラート情報生成部302fへと送信する。
【0155】
建物アラート抽出部302eは、建築物情報取得部302aが取得した建築物のBIMモデルに基づき各種の演算を行う(ステップS309)。各種演算には、例えば居室とエレベータとの距離を算出する演算や、エレベータの適正な輸送量を算出する演算が含まれる。建物アラート抽出部302eは、演算結果に基づき建物アラートを抽出する(ステップS310)。建物アラート抽出部302eは、抽出した建物アラートが複数あれば(ステップS311:Yes)優先順位付けをし(ステップS312)、抽出した建物アラートが1つであれば(ステップS311:No)そのまま、アラート情報生成部302fへと送信する。
【0156】
環境アラート、災害アラート、及び建物アラート等を受信すると、アラート情報生成部302fは、受信したアラートが複数あれば(ステップS313:Yes)ランク付けをし(ステップS314)、受信したアラートが1つであれば(ステップS313:No)ランクを付することなく、受信したアラートに基づきアラート情報を生成する(ステップS315)。
【0157】
要望情報生成部302gは、要望事例情報データベース306aの要望事例情報を参照し、エレベータを構成する個々のBIMパーツの情報と照らし合わせ、エレベータを構成する個々のBIMパーツの中に、要望事例情報と紐づけられたものがあるか否かを検索する(ステップS316)。
【0158】
要望情報生成部302gは、エレベータを構成するいずれかのBIMパーツに紐づけられた要望事例がある場合には(ステップS316:Yes)、その要望事例を含む要望情報を生成する(ステップS317)。
【0159】
要望情報生成部302gは、いずれのBIMパーツにも紐づけられた要望事例が存在しない場合(ステップS316:No)には、要望情報を生成しない。
【0160】
アラート情報生成部302fが生成したアラート情報および要望情報生成部302gが生成した要望情報は、表示制御部102cにより入出力制御インターフェース部108へと送られる。入出力制御インターフェース部108は、これらのアラート情報および要望情報を例えば表示装置114に出力する(ステップS318)。
【0161】
端末装置100の拡張機能に基づく各機能部は、環境情報、地理情報、及び建築物のBIMモデル等の建物情報に変更があったか否か、つまり、アラート情報および要望情報の生成後において、これらの建物情報が更新されたか否かを判定する(ステップS319)。建物情報の更新とは、例えば、アラート情報または要望情報に対応するための設計変更、換言すればBIMパーツの変更、追加等が含まれている。
【0162】
建物情報が更新されないうちは(ステップS319:No)、端末装置100の拡張機能に基づく各機能部は、例えばレイアウト画面等から利用者により「確定」ボタンが押下されたか否かを判定する(ステップS320)。「確定」ボタンが押下されないうちは(ステップS320:No)、新たな処理は行われない。
【0163】
建物情報が更新された場合には(ステップS319:Yes)、端末装置100の拡張機能に基づく各機能部は、ステップS301〜S318までの処理を繰り返す。これにより、新たな建物情報に基づくアラート情報および要望情報が生成され、表示装置114に表示される。
【0164】
それ以上、建物情報が更新されることなく(ステップS319:No)、「確定」ボタンの押下を受け付けた場合には(ステップS320:Yes)、通信制御インターフェース部104は、確定された最終仕様をサーバ装置200へと送信する。サーバ装置200の整合性判定部202fは、確定された最終仕様の整合性を確認し、最終仕様に含まれるエレベータのパーツリストを含む最終仕様情報を生成する(ステップS421)。コスト見積もり算出部202gは、最終仕様に含まれるエレベータのパーツリストに基づき、最終仕様のコスト見積もりを算出する(ステップS422)。
【0165】
整合性判定部202fが生成した最終仕様情報およびコスト見積もり算出部202gが算出したコスト見積もりは、情報提供部202hから端末装置100へと送信される。送信されたコスト見積もりは、表示制御部102cにより入出力制御インターフェース部108へと送られる。入出力制御インターフェース部108は、これらの最終仕様情報およびコスト見積もりを例えば表示装置114に出力する(ステップS323)。
【0166】
以上により、実施形態1の端末装置100におけるエレベータ検討支援処理が終了する。
【0167】
上述のように、BIMによる設計手法によれば、各業種にて建築物のBIMモデルや統合BIMモデルを共有することができ、1個のデータ上で個々の構成要素の関連性及び整合性の確認を行うことができる。しかしながら、エレベータの設計においては、納まりのレイアウトや輸送量の検討の他、建築物内外の環境や建築予定地の各種条件等に応じて、エレベータ特有の多岐に亘る検討が必要となる。それらの検討を個別に行うと、必要な仕様に漏れが生じたり、設計に不整合が生じたりする恐れがある。
【0168】
実施形態1のエレベータ検討支援処理によれば、端末装置100が備える建築物に関する各種情報から、交通計算、納まり検討以外にも、環境や災害や建物起因でエレベータに生じ得る支障や弊害をアラート情報として出力させることができる。これにより、端末装置100等の利用者に対して注意喚起したり、また、利用者によるエレベータ設計を支援したりすることができる。よって、エレベータに特有の仕様の漏れを抑制することができる。このことから、後戻り作業を低減し、建築物の設計に関わる利用者の負荷を軽減することができる。
【0169】
実施形態1のエレベータ検討支援処理によれば、アラート情報は、例えば既に対策済みの項目等についても表示される。このようにすることで、利用者は、エレベータの設計段階において留意すべき項目を網羅的に確認することができ、また、エレベータの設計における抜けや漏れを回避することができる。
【0170】
実施形態1のエレベータ検討支援処理によれば、要望情報は、エレベータの個々のパーツについて過去に寄せられた要望に基づいて表示される。そして、これらの要望はエレベータの設計ノウハウ等を含む設計基準に盛り込まれて対策パーツが用意されている。これにより、利用者に、エレベータの現行仕様に何らかの改善の余地があることを素早く伝えることができる。また、専門外の利用者であっても、エレベータメーカにおける専門的な知見に基づくパーツを選定することができ、設計段階から、将来的に弊害が生じるのを回避することができる。
【0171】
実施形態1のエレベータ検討支援処理によれば、エレベータのBIMパーツが更新され、新しいBIMパーツが統合BIMモデルに組み込まれるたびに、上記の処理が行われる。これにより、エレベータの仕様変更があっても、エレベータの設計における抜けや漏れを回避することができる。
【0172】
実施形態1のエレベータ検討支援処理によれば、端末装置100が備える建築物に関する各種情報に変更があるたびに、上記の処理が行われる。これにより、建築物の仕様変更があっても、エレベータの設計における抜けや漏れを回避することができる。
【0173】
実施形態1のエレベータ検討支援処理によれば、エレベータの最終仕様が確定されると、その最終仕様について整合性の確認を行う。これにより、最終段階において、エレベータの設計に不整合部分が含まれていないことを利用者が確認することができる。
【0174】
実施形態1のエレベータ検討支援処理によれば、エレベータの最終仕様が確定されると、その最終仕様についてコスト見積もりが表示される。これにより、利用者は、より多角的にエレベータの仕様を決定することができる。
【0175】
実施形態1のエレベータ検討支援処理によれば、以上のように、エレベータ特有の検討で必要となる多岐に亘る情報を連携させることができる。エレベータや建築物の仕様変更も一括してデータに反映させることができ、反映漏れも抑制される。また、上述の処理は、全てのデータが集約される端末装置100において実施される。これにより、建築物設計の早期の段階から、エレベータ設計の検討を開始することができ、建築物設計全体の効率化を図ることができる。
【0176】
なお、機能拡張プログラムであるエレベータ検討支援ツール300は、インストール可能な形式または実行可能な形式のコンピュータプログラムプロダクトとして提供される。すなわち、エレベータ検討支援ツール300は、CD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVDなどの、非一時的で、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を有するコンピュータプログラムプロダクトに含まれた状態で提供される。
【0177】
また、エレベータ検討支援ツール300は、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータに格納された状態で、ネットワーク経由で提供または配布されてもよい。エレベータ検討支援ツール300は、ROMなどに予め組み込まれた状態で提供されてもよい。
【0178】
ただし、エレベータ検討支援ツール300はクラウドサーバ等に格納されたウェブアプリケーションとして提供されてもよく、この場合、エレベータ検討支援ツール300は上述の端末装置100にインストールされることなく実行される。
【0179】
上述の実施形態1は、昇降機としてのエレベータにおける仕様設計に適用されることとした。しかし、昇降機は例えばエスカレータ等であってもよい。
【0180】
[実施形態2]
上述の実施形態1にかかる処理は、端末装置100及びサーバ装置200を備える機能分離型のBIMシステム1で実行されることとした。しかし、実施形態1で示した構成に制限されず、上述の実施形態1にかかる処理は、例えば端末装置およびサーバ装置の両方の機能を有する機能集中型、すなわち、スタンドアローン型のBIM装置で実行されてもよい。実施形態2では、スタンドアローン型のBIM装置について説明する。
【0181】
以下に、図10を用いて、スタンドアローン型のBIM装置としての端末装置100について説明する。図10は、実施形態2にかかる端末装置100の構成の一例を示す図である。
【0182】
図10に示すように、実施形態2の端末装置100にも、ネットワーク400を介して、各地域の行政機関が管理する行政機関サーバ装置500が1つ以上接続されている。
【0183】
実施形態2の端末装置100には、機能拡張プログラムであるエレベータ検討支援ツール310がインストールされている。エレベータ検討支援ツール310をインストールすることで、BIMアプリケーションに付加的な機能が追加されるとともに、記憶部106に各種データベースが格納される。
【0184】
これにより、端末装置100の記憶部106には、BIMモデルデータベース106aに加え、要望事例情報データベース306a、地理情報データベース306b、環境情報データベース306c、防災マップデータベース306d、及びパーツ情報データベース316aが格納される。
【0185】
パーツ情報データベース316aは、上述の実施形態1のサーバ装置200が備えるパーツ情報データベース206aと同様の情報を保持する。
【0186】
端末装置100の制御部102は、入力受付部102a、統合モデリング部102b、表示制御部102cを備えている。さらに、制御部102は、エレベータ検討支援ツール310のインストールによって、機能概念的に、建築物情報取得部302a、防災マップ取得部302b、環境アラート抽出部302c、災害アラート抽出部302d、建物アラート抽出部302e、アラート情報生成部302f、要望情報生成部302g、エレベータモデリング部312b、輸送量計算部312c、機器適用判定部312d、納まり検討部312e、整合性判定部312f、及びコスト見積もり算出部312gを備える。
【0187】
エレベータモデリング部312b、輸送量計算部312c、機器適用判定部312d、納まり検討部312e、整合性判定部312f、及びコスト見積もり算出部312gは、上述の実施形態1のサーバ装置200が備えるエレベータモデリング部202b、輸送量計算部202c、機器適用判定部202d、納まり検討部202e、整合性判定部202f、コスト見積もり算出部202gと、それぞれ同様の機能を有する。
【0188】
例えば、エレベータモデリング部312bは、入力受付部102が受け付けた操作に従って、パーツ情報データベース316aを参照して、エレベータの3次元のBIMパーツを作成する。そして、アラート情報生成部302fは、作成したBIMパーツ、及び建物について実施形態1で示したようなアラート情報を生成する。
【0189】
これにより、実施形態2の端末装置100は、上述の実施形態1のBIMシステム1と同様の効果を奏する。
【0190】
本実施形態のようなスタンドアローン型のBIM装置や、実施形態1の端末装置100及びサーバ装置200を備える機能分離型のBIMシステム1に制限するものではない。他の例としては、サーバ装置に上述の拡張機能を持たせたサーバ主導の機能分離型BIMシステムで実行される手法も考えられる。
【0191】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0192】
1…BIMシステム、100…端末装置、102…制御部、104…通信制御インターフェース部、106…記憶部、108…入出力制御インターフェース部、200…サーバ装置、202…制御部、204…通信制御インターフェース部、206…記憶部、300,310…エレベータ検討支援ツール、302a…建築物情報取得部、302b…防災マップ取得部、302c…環境アラート抽出部、302d…災害アラート抽出部、302e…建物アラート抽出部、302f…アラート情報生成部、302g…要望情報生成部、306a…腰部御事例情報データベース、306b…地理情報データベース、306c…環境情報データベース、306d…防災マップデータベース、316a…パーツ情報データベース、312b…エレベータモデリング部、312c…輸送量計算部、312d…機能適用判定部、312e…納まり検討部、312f…整合性判定部、312g…コスト見積もり算出部、400…ネットワーク、500…行政機関サーバ装置、502…防災マップデータベース。
【要約】      (修正有)
【課題】昇降機に特有の仕様の漏れを抑制する。
【解決手段】BIMシステムは、建築物のBIMモデルを記憶するBIMモデル記憶手段と、BIMモデルに組み込み可能な昇降機のBIMパーツを作成するためのパーツ情報を記憶するパーツ情報記憶手段と、を備え、パーツ情報記憶手段に記憶されたパーツ情報を用いて、昇降機のBIMパーツを作成する昇降機モデリングステップと、昇降機モデリングステップにおいて作成されたBIMパーツが、BIMモデル記憶手段に記憶されたBIMモデルに組み込まれた状態の統合BIMモデルを作成する統合モデリングステップと、建築物内外の環境を定義する環境情報、建築物周辺に生じ得る災害を示す災害情報、及び統合BIMモデルのいずれかを含む建築物情報を取得する取得ステップと、建築物情報に基づいて、昇降機に関わるアラート情報を生成する生成ステップとアラート情報を出力する出力ステップと、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10