特許第6806422号(P6806422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6806422制御装置、車体挙動制御システム、モータサイクル、及び、制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806422
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】制御装置、車体挙動制御システム、モータサイクル、及び、制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20201221BHJP
   B62L 3/08 20060101ALI20201221BHJP
   B62L 5/20 20060101ALI20201221BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20201221BHJP
   B62J 45/42 20200101ALI20201221BHJP
   B62J 45/41 20200101ALI20201221BHJP
   B62J 99/00 20200101ALI20201221BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B60T7/12 C
   B62L3/08
   B62L5/20
   B60T8/171 Z
   B62J45/42
   B62J45/41
   B62J99/00
   G08G1/16 C
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-537422(P2019-537422)
(86)(22)【出願日】2018年7月11日
(86)【国際出願番号】IB2018055100
(87)【国際公開番号】WO2019038609
(87)【国際公開日】20190228
【審査請求日】2020年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2017-149794(P2017-149794)
(32)【優先日】2017年8月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】大高 順
(72)【発明者】
【氏名】篤 浩明
【審査官】 近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102013013232(DE,A1)
【文献】 国際公開第2014/044554(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102013200044(DE,A1)
【文献】 国際公開第2016/124375(WO,A1)
【文献】 特開2015−145165(JP,A)
【文献】 特開2014−190164(JP,A)
【文献】 特開2010−12903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60T 8/171
B62J 45/41
B62J 45/42
B62J 99/00
B62L 3/08
B62L 5/20
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータサイクル(100)の車体挙動を制御する制御装置(60)であって、
前記モータサイクル(100)の周囲環境に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得部(61)と、
前記モータサイクル(100)に自動ブレーキ動作を実行させる制御モードを、前記取得部(61)で取得される前記トリガ情報に応じて開始して、前記モータサイクル(100)にブレーキ力を生じさせる実行部(62)と、
を備えており、
前記取得部(61)は、更に、前記モータサイクル(100)のシート(1a、1b)が受ける荷重の情報であるシート荷重情報を取得し、
前記実行部(62)は、前記取得部(61)で取得される前記シート荷重情報に応じて、前記制御モードにおいて実行される前記自動ブレーキ動作を変化させる、
制御装置。
【請求項2】
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて実行される前記自動ブレーキ動作で前記モータサイクル(100)に生じさせるブレーキ力を、前記取得部(61)で取得される前記シート荷重情報に応じて変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記実行部(62)は、前記制御モードにおいて実行される前記自動ブレーキ動作の開始タイミングを、前記取得部(61)で取得される前記シート荷重情報に応じて変化させる、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記取得部(61)は、前記モータサイクル(100)のシート(1a、1b)に作用する外力を検出する外力検出装置(42)の検出結果に基づいて、前記シート荷重情報を取得する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記外力検出装置(42)は、前記モータサイクル(100)の運転者シート(1a)が受ける荷重を検出するセンサ(42a)を含む、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記外力検出装置(42)は、前記モータサイクル(100)のタンデムシート(1b)が受ける荷重を検出するセンサ(42b)を含む、
請求項4又は5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記実行部(62)は、前記シート荷重情報として取得される値と閾値との比較結果に応じて、前記制御モードにおいて実行される前記自動ブレーキ動作を変化させる、
請求項1〜6の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記取得部(61)は、更に、前記モータサイクル(100)に生じている倒れ角に関連する車体姿勢情報を取得し、
前記実行部(62)は、前記取得部(61)で取得される前記車体姿勢情報に応じて前記閾値を変化させる、
請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
モータサイクル(100)用の車体挙動制御システム(10)であって、
前記モータサイクル(100)の周囲環境を検出する周囲環境検出装置(41)と、
前記モータサイクル(100)の車体挙動を制御する制御装置(60)と、
を備えており、
更に、前記モータサイクル(100)のシート(1a、1b)に作用する外力を検出する外力検出装置(42)を備えており、
前記制御装置(60)は、
前記周囲環境検出装置(41)の出力に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得部(61)と、
前記モータサイクル(100)に自動ブレーキ動作を実行させる制御モードを、前記取得部(61)で取得される前記トリガ情報に応じて開始して、前記モータサイクル(100)にブレーキ力を生じさせる実行部(62)と、
を備えており、
前記取得部(61)は、更に、前記外力検出装置(42)の検出結果に基づいて、前記モータサイクル(100)のシート(1a、1b)が受ける荷重の情報であるシート荷重情報を取得し、
前記実行部(62)は、前記取得部(61)で取得される前記シート荷重情報に応じて、前記制御モードにおいて実行される前記自動ブレーキ動作を変化させる、
車体挙動制御システム。
【請求項10】
請求項9に記載の車体挙動制御システム(10)を備えている、
モータサイクル。
【請求項11】
モータサイクル(100)の車体挙動を制御する制御方法であって、
前記モータサイクル(100)の周囲環境に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得ステップ(S101、S103、S201、S203)と、
前記モータサイクル(100)に自動ブレーキ動作を実行させる制御モードを、前記取得ステップ(S101、S103、S201、S203)で取得される前記トリガ情報に応じて開始して、前記モータサイクル(100)にブレーキ力を生じさせる実行ステップ(S102、S104〜S106、S202、S204〜S206)と、
を備えており、
前記取得ステップ(S101、S103、S201、S203)では、更に、前記モータサイクル(100)のシート(1a、1b)が受ける荷重の情報であるシート荷重情報が取得され、
前記実行ステップ(S102、S104〜S106、S202、S204〜S206)では、前記取得ステップ(S101、S103、S201、S203)で取得される前記シート荷重情報に応じて、前記制御モードにおいて実行される前記自動ブレーキ動作が変化させられる、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータサイクルの車体挙動を制御する制御装置及び制御方法と、その制御装置を備えている車体挙動制御システムと、その車体挙動制御システムを備えているモータサイクルと、に関する。
【背景技術】
【0002】
モータサイクル(自動二輪車又は自動三輪車)に関連する技術として、搭乗者の安全性を向上させるためのものがある。例えば、特許文献1には、走行中のモータサイクルの周囲環境(例えば、障害物、先行車等)を検出する周囲環境検出装置の検出結果に基づいて、モータサイクルの搭乗者へ警告を発する運転支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−116882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搭乗者の安全性を向上するために、モータサイクルに自動ブレーキ動作が可能な車体挙動制御システムを適用して、その挙動が周囲環境に応じて自動的に制御されるようにすることが有効と考えられる。自動ブレーキ動作は、搭乗者による操作によらずにモータサイクルにブレーキ力を生じさせることで、モータサイクルを自動で減速させる動作である。例えば4輪を有する車両等では、車体重量に占める搭乗者の重量の比率が低いため、自動ブレーキ動作における車体挙動に搭乗者の重量が大きな影響を及ぼすとは想定されない。しかしながら、モータサイクルでは、車体重量に占める搭乗者の重量の比率が高いことに起因して、搭乗者の重量を加味した上で自動ブレーキ動作を実行しないと、搭乗者の安全性、快適性等を確保することが困難になりかねない。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、モータサイクルの安全性を向上させることができる制御装置及び制御方法を得るものである。また、本発明は、そのような制御装置を備えている車体挙動制御システムを得るものである。また、本発明は、そのような車体挙動制御システムを備えているモータサイクルを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、モータサイクルの車体挙動を制御する制御装置であって、前記モータサイクルの周囲環境に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得部と、前記モータサイクルに自動ブレーキ動作を実行させる制御モードを、前記取得部で取得される前記トリガ情報に応じて開始して、前記モータサイクルにブレーキ力を生じさせる実行部と、を備えており、前記取得部は、更に、前記モータサイクルのシートが受ける荷重の情報であるシート荷重情報を取得し、前記実行部は、前記取得部で取得される前記シート荷重情報に応じて、前記制御モードにおいて実行される前記自動ブレーキ動作を変化させる。
【0007】
本発明に係る車体挙動制御システムは、モータサイクル用の車体挙動制御システムであって、前記モータサイクルの周囲環境を検出する周囲環境検出装置と、前記モータサイクルの車体挙動を制御する制御装置と、を備えており、更に、前記モータサイクルのシートに作用する外力を検出する外力検出装置を備えており、前記制御装置は、前記周囲環境検出装置の出力に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得部と、前記モータサイクルに自動ブレーキ動作を実行させる制御モードを、前記取得部で取得される前記トリガ情報に応じて開始して、前記モータサイクルにブレーキ力を生じさせる実行部と、を備えており、前記取得部は、更に、前記外力検出装置の検出結果に基づいて、前記モータサイクルのシートが受ける荷重の情報であるシート荷重情報を取得し、前記実行部は、前記取得部で取得される前記シート荷重情報に応じて、前記制御モードにおいて実行される前記自動ブレーキ動作を変化させる。
【0008】
本発明に係るモータサイクルは、上述の車体挙動制御システムを備えている。
【0009】
本発明に係る制御方法は、モータサイクルの車体挙動を制御する制御方法であって、前記モータサイクルの周囲環境に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得ステップと、前記モータサイクルに自動ブレーキ動作を実行させる制御モードを、前記取得ステップで取得される前記トリガ情報に応じて開始して、前記モータサイクルにブレーキ力を生じさせる実行ステップと、を備えており、前記取得ステップでは、更に、前記モータサイクルのシートが受ける荷重の情報であるシート荷重情報が取得され、前記実行ステップでは、前記取得ステップで取得される前記シート荷重情報に応じて、前記制御モードにおいて実行される前記自動ブレーキ動作が変化させられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る制御装置、車体挙動制御システム、モータサイクル、及び、制御方法では、モータサイクルに自動ブレーキ動作を実行させる制御モードが、モータサイクルの周囲環境に応じて生成されるトリガ情報に応じて開始される。また、モータサイクルのシートが受ける荷重の情報であるシート荷重情報に応じて、その制御モードにおいて実行される自動ブレーキ動作が変化させられる。そのため、搭乗者の安全性、快適性等を確保することが困難となりかねない状況に対応することが可能となって、自動ブレーキ動作の有用性が向上して、モータサイクルの安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る車体挙動制御システムの、モータサイクルへの搭載状態を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る車体挙動制御システムの、概略構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る車体挙動制御システムの、システム構成を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る車体挙動制御システムの、動作フローを示す図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る車体挙動制御システムの、システム構成を示す図である。
図6】倒れ角の定義を示す図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る車体挙動制御システムの、動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る制御装置、車体挙動制御システム、モータサイクル、及び、制御方法について、図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る制御装置、車体挙動制御システム、モータサイクル、及び、制御方法は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。
【0014】
例えば、以下では、モータサイクルが自動二輪車である場合を説明しているが、モータサイクルが他のモータサイクル(自動三輪車)であってもよい。また、以下では、車輪に生じさせるブレーキ力が液圧制御ユニットを用いて制御される場合を説明しているが、車輪に生じさせるブレーキ力が他の機構を用いて制御されてもよい。また、以下では、制御装置が、車輪に生じさせるブレーキ力を制御することで自動ブレーキ動作を実行する場合を説明しているが、制御装置が、エンジンに生じさせるブレーキ力を制御することで自動ブレーキ動作を実行してもよい。また、以下では、前輪制動機構及び後輪制動機構が、それぞれ1つずつである場合を説明しているが、前輪制動機構及び後輪制動機構の少なくとも一方が複数であってもよい。また、以下では、モータサイクルの前方を検出する周囲環境検出装置が用いられ、モータサイクルの前方に位置する対象(例えば、障害物、先行車等)に関して自動ブレーキ動作が実行される場合を説明しているが、モータサイクルの他の方向(例えば、側方等)を検出する周囲環境検出装置が用いられ、モータサイクルのその方向に位置する対象に関して自動ブレーキ動作が実行されてもよい。
【0015】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0016】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る車体挙動制御システムについて説明する。
【0017】
<車体挙動制御システムの構成>
実施の形態1に係る車体挙動制御システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る車体挙動制御システムの、モータサイクルへの搭載状態を示す図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る車体挙動制御システムの、概略構成を示す図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る車体挙動制御システムの、システム構成を示す図である。
【0018】
図1及び図2に示されるように、車体挙動制御システム10は、モータサイクル100に搭載される。モータサイクル100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、を備える。
【0019】
車体挙動制御システム10は、例えば、第1ブレーキ操作部11と、少なくとも第1ブレーキ操作部11に連動して前輪3を制動する前輪制動機構12と、第2ブレーキ操作部13と、少なくとも第2ブレーキ操作部13に連動して後輪4を制動する後輪制動機構14と、を備える。
【0020】
第1ブレーキ操作部11は、ハンドル2に設けられており、運転者の手によって操作される。第1ブレーキ操作部11は、例えば、ブレーキレバーである。第2ブレーキ操作部13は、胴体1の下部に設けられており、運転者の足によって操作される。第2ブレーキ操作部13は、例えば、ブレーキペダルである。
【0021】
前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23に設けられているホイールシリンダ24と、マスタシリンダ21のブレーキ液をホイールシリンダ24に流通させる主流路25と、ホイールシリンダ24のブレーキ液を逃がす副流路26と、マスタシリンダ21のブレーキ液を副流路26に供給する供給流路27と、を備える。
【0022】
主流路25には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路26は、主流路25のうちの、込め弁31に対するホイールシリンダ24側とマスタシリンダ21側との間をバイパスする。副流路26には、上流側から順に、弛め弁(AV)32と、アキュムレータ33と、ポンプ34と、が設けられている。主流路25のうちの、マスタシリンダ21側の端部と、副流路26の下流側端部が接続される箇所と、の間には、第1弁(USV)35が設けられている。供給流路27は、マスタシリンダ21と、副流路26のうちのポンプ34の吸込側と、の間を連通させる。供給流路27には、第2弁(HSV)36が設けられている。
【0023】
込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。第1弁35は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。第2弁36は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0024】
込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36等の部材と、それらの部材が設けられ、主流路25、副流路26及び供給流路27を構成するための流路が内部に形成されている基体51と、制御装置(ECU)60と、によって、液圧制御ユニット50が構成される。液圧制御ユニット50は、車体挙動制御システム10において、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧、つまり、前輪制動機構12によって前輪3に付与されるブレーキ力及び後輪制動機構14によって後輪4に付与されるブレーキ力を制御する機能を担うユニットである。
【0025】
各部材が、1つの基体51に纏めて設けられていてもよく、また、複数の基体51に分かれて設けられていてもよい。また、制御装置60は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御装置60は、基体51に取り付けられていてもよく、また、基体51以外の他の部材に取り付けられていてもよい。また、制御装置60の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0026】
通常状態、つまり、後述される自動ブレーキ動作が実行されない状態では、制御装置60によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖される。その状態で、第1ブレーキ操作部11が操作されると、前輪制動機構12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3にブレーキ力が付与される。また、第2ブレーキ操作部13が操作されると、後輪制動機構14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4にブレーキ力が付与される。
【0027】
図1及び図3に示されるように、車体挙動制御システム10は、周囲環境検出装置41及び外力検出装置42を含む各種検出装置と、入力装置46と、警告装置47と、を備える。各種検出装置、入力装置46、及び、警告装置47は、制御装置60と通信可能になっている。
【0028】
周囲環境検出装置41は、モータサイクル100の周囲環境を検出する。例えば、周囲環境検出装置41は、周囲環境としてモータサイクル100から前方の障害物(例えば、構造物、横断者、横断車等)までの距離を検出する。周囲環境検出装置41が、前方の障害物までの距離に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。周囲環境検出装置41として、具体的には、モータサイクル100の前方を撮像するカメラ又は前方の障害物までの距離を検出可能な測距センサが用いられる。周囲環境検出装置41は、胴体1の前部に設けられている。
【0029】
また、周囲環境検出装置41は、後述される制御モードの開始の判定に利用されるトリガ情報を周囲環境に応じて生成し、トリガ情報を出力する。さらに、周囲環境検出装置41は、トリガ情報の生成に伴い、制御モードにおいて実行される自動ブレーキ動作によってモータサイクル100の車輪に付与されるブレーキ力である自動ブレーキ力の目標値である目標ブレーキ力を算出し、算出結果を出力する。
【0030】
例えば、周囲環境検出装置41は、前輪3及び後輪4の回転速度に基づいてモータサイクル100の車体速度を算出し、前方の障害物までの距離及び車体速度に基づいてモータサイクル100が前方の障害物に到達するまでにかかる到達時間を予測する。周囲環境検出装置41は、到達時間が基準時間と比較して短い場合に、自動ブレーキ動作として自動緊急制動動作を実行させる制御モードの開始の判定に利用されるトリガ情報を生成する。自動緊急制動動作は、前方の障害物より手前で停止するために実行される自動ブレーキ動作である。基準時間は、モータサイクル100に自動緊急制動動作を実行させた場合にモータサイクル100が停止するまでにかかる時間として見積もられる時間に応じて設定される。
【0031】
この場合、周囲環境検出装置41は、具体的には、自動緊急制動動作によってモータサイクル100を前方の障害物より手前で停止させることを実現し得るブレーキ力を目標ブレーキ力として算出する。このような目標ブレーキ力は、例えば、モータサイクル100から前方の障害物までの距離及び車体速度に基づいて算出される。
【0032】
また、例えば、周囲環境検出装置41は、後述されるオートクルーズ走行モードが運転者により選択されている時に、モータサイクル100から先行車までの距離が距離基準値を下回る場合に、自動ブレーキ動作としてオートクルーズ制動動作を実行させる制御モードの開始の判定に利用されるトリガ情報を生成する。オートクルーズ制動動作は、モータサイクル100から先行車までの距離を距離基準値に近づけるために実行される自動ブレーキ動作である。距離基準値は、モータサイクル100から先行車までの距離として搭乗者の安全性を確保し得る値に設定される。
【0033】
この場合、周囲環境検出装置41は、具体的には、オートクルーズ制動動作によって先行車との衝突を回避しつつモータサイクル100から先行車までの距離を距離基準値に迅速に近づけることを実現し得るブレーキ力を目標ブレーキ力として算出する。このような目標ブレーキ力は、例えば、モータサイクル100から先行車までの距離と距離基準値との差及び車体速度に基づいて算出される。
【0034】
外力検出装置42は、モータサイクル100のシートに作用する外力を検出し、検出結果を出力する。外力検出装置42は、例えば、モータサイクル100の運転者シート1aに作用する外力の大きさを検出する第1センサ42aと、モータサイクル100のタンデムシート1bに作用する外力の大きさを検出する第2センサ42bと、を含む。なお、図1では、モータサイクル100の運転者シート1a及びタンデムシート1bが、一体化されたものである場合を示しているが、モータサイクル100の運転者シート1a及びタンデムシート1bが、別体化されたものであってもよい。
【0035】
第1センサ42aは、例えば、モータサイクル100の運転者シート1aの内部又は外面に取り付けられている歪ゲージである。つまり、第1センサ42aは、運転者シート1aが受ける荷重の情報、つまり、運転者シート1aに着座する搭乗者(運転者)の重量に関連する情報であるシート荷重情報を取得するのに好適な位置に設けられている。なお、第1センサ42aは、モータサイクル100の運転者シート1aに作用する外力の大きさを検出するものであれば、接触式の他のセンサであってもよく、また、非接触式の他のセンサであってもよい。また、第1センサ42aが、外力の大きさに実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。また、第1センサ42aは、1つの検出素子で構成されていてもよく、また、複数の検出素子で構成されていてもよい。つまり、第1センサ42aは、運転者シート1aに作用する総重量を検出可能なものであれば、どのような態様であってもよい。
【0036】
第2センサ42bは、例えば、モータサイクル100のタンデムシート1bの内部又は外面に取り付けられている歪ゲージである。つまり、第2センサ42bは、タンデムシート1bが受ける荷重の情報、つまり、タンデムシート1bに着座する搭乗者の重量に関連する情報であるシート荷重情報を取得するのに好適な位置に設けられている。なお、第2センサ42bは、モータサイクル100のタンデムシート1bに作用する外力の大きさを検出するものであれば、接触式の他のセンサであってもよく、また、非接触式の他のセンサであってもよい。また、第2センサ42bが、外力の大きさに実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。また、第2センサ42bは、1つの検出素子で構成されていてもよく、また、複数の検出素子で構成されていてもよい。つまり、第2センサ42bは、タンデムシート1bに作用する総重量を検出可能なものであれば、どのような態様であってもよい。
【0037】
入力装置46は、運転者による走行モードの選択操作を受け付け、受け付けた操作に応じた信号を出力する。入力装置46は、走行モードとして、少なくともオートクルーズ走行モードを選択する選択操作を受け付ける。オートクルーズ走行モードは、モータサイクル100をその挙動が少なくとも部分的に自動制御された状態で持続的に走行させる走行モードである。オートクルーズ走行モードでは、モータサイクル100から先行車までの距離が距離基準値に近づくように制御される。入力装置46として、例えば、レバー、ボタン又はタッチパネルが用いられ得る。入力装置46は、例えば、ハンドル2に設けられている。
【0038】
警告装置47は、音によって搭乗者に警告するものであってもよく、また、表示によって搭乗者に警告するものであってもよく、また、振動によって搭乗者に警告するものであってもよく、また、それらの組み合わせによって警告するものであってもよい。具体的には、警告装置47は、スピーカー、ディスプレイ、ランプ、バイブレーター等であり、モータサイクル100に設けられていてもよく、また、ヘルメット等のモータサイクル100に付随する装備に設けられていてもよい。警告装置47は、自動ブレーキ動作の実行を知らせる警告を出力する。
【0039】
制御装置60は、モータサイクル100の車体挙動を制御する。制御装置60は、例えば、取得部61と、実行部62と、を備える。取得部61は、各種検出装置及び入力装置46から出力される情報を取得し、実行部62へ出力する。実行部62は、例えば、トリガ判定部62aと、シート荷重判定部62bと、制御指令設定部62cと、制御部62dと、を備える。
【0040】
実行部62は、トリガ判定部62aによる判定結果に応じて、モータサイクル100に自動ブレーキ動作を実行させる制御モードを開始する。また、実行部62は、シート荷重判定部62bにおいて、外力検出装置42の検出結果に応じて生成されるシート荷重情報が、搭乗者の重量が大きい状態で取得される情報であると判定されると、制御指令設定部62cに、制御モードで出力されることになる制御指令を変更させる。その判定は、シート荷重情報としての値と閾値との比較によって行われる。制御指令設定部62cでは、例えば、自動ブレーキ動作においてモータサイクル100に生じさせるブレーキ力、自動ブレーキ動作の開始タイミング等が設定される。制御部62dは、その設定に応じて、込め弁31、弛め弁32、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36等の動作を司る制御指令を出力することにより、モータサイクル100の車輪にブレーキ力を生じさせて、自動ブレーキ動作を実行する。また、制御部62dは、その設定に応じて、警告装置47の動作を司る制御指令を出力する。
【0041】
自動ブレーキ動作が実行される状態では、制御装置60によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が閉鎖され、第2弁36が開放される。その状態で、ポンプ34が駆動されると、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加して、車輪(前輪3、後輪4)にブレーキ力が付与される。
【0042】
制御装置60が記憶素子を備えており、制御装置60が行う各処理において用いられる閾値等の情報が、その予め記憶素子に記憶されていてもよい。
【0043】
<車体挙動制御システムの動作>
実施の形態1に係る車体挙動制御システムの動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1に係る車体挙動制御システムの、動作フローを示す図である。
【0044】
制御装置60は、モータサイクル100の走行中において、図4に示される動作フローを実行する。
【0045】
(取得ステップ)
ステップS101において、取得部61は、周囲環境検出装置41の検出結果に応じて生成されるトリガ情報を取得する。
【0046】
(実行ステップ)
ステップS102において、実行部62のトリガ判定部62aは、ステップS101で取得されたトリガ情報に基づいて、モータサイクル100に自動ブレーキ動作を実行させるための制御モードを開始するか否かを判定する。Yesである場合には、ステップS103に進み、Noである場合には、ステップS101に戻る。
【0047】
(取得ステップ)
ステップS103において、取得部61は、外力検出装置42の検出結果に応じたシート荷重情報を取得する。
【0048】
(実行ステップ)
ステップS104において、実行部62のシート荷重判定部62bは、ステップS103で取得されたシート荷重情報が、搭乗者の重量が小さい状態で取得される情報であるか否かを判定する。Yesである場合には、ステップS105に進み、Noである場合には、ステップS106に進む。
【0049】
例えば、シート荷重判定部62bは、ステップS103において、モータサイクル100の運転者シート1aに作用する外力の大きさが、シート荷重情報として取得される場合には、外力が閾値以下である場合を搭乗者の重量が小さい状態と判定し、外力が閾値より大きい場合を搭乗者の重量が大きい状態と判定する。
【0050】
例えば、シート荷重判定部62bは、ステップS103において、モータサイクル100のタンデムシート1bに作用する外力の大きさが、シート荷重情報として取得される場合には、外力が閾値以下である場合を搭乗者の重量が小さい状態と判定し、外力が閾値より大きい場合を搭乗者の重量が大きい状態と判定する。
【0051】
例えば、シート荷重判定部62bは、ステップS103において、モータサイクル100の運転者シート1aに作用する外力の大きさと、モータサイクル100のタンデムシート1bに作用する外力の大きさと、の両方が、シート荷重情報として取得される場合には、外力の合計値が閾値以下である場合を搭乗者の重量が小さい状態と判定し、外力の合計値が閾値より大きい場合を搭乗者の重量が大きい状態と判定する。
【0052】
(実行ステップ)
ステップS105において、実行部62の制御指令設定部62cは、自動ブレーキ動作においてモータサイクル100に生じさせるブレーキ力を、通常の目標ブレーキ力に設定する。また、実行部62の制御指令設定部62cは、自動ブレーキ動作の開始タイミングを、通常のタイミングに設定する。実行部62の制御部62dは、その設定に応じた制御指令を出力して、液圧制御ユニット50を動作させる。
【0053】
(実行ステップ)
ステップS106において、実行部62の制御指令設定部62cは、自動ブレーキ動作においてモータサイクル100に生じさせるブレーキ力を、通常の目標ブレーキ力よりも大きい値に設定する。また、実行部62の制御指令設定部62cは、自動ブレーキ動作の開始タイミングを、通常のタイミングよりも早く設定する。実行部62の制御部62dは、その設定に応じた制御指令を出力して、液圧制御ユニット50を動作させる。
【0054】
なお、以上では、ステップS103で取得されるシート荷重情報に応じて、モータサイクル100に生じさせるブレーキ力及び自動ブレーキ動作の開始タイミングが、2段階に切り替えられる場合を説明しているが、3段階以上に切り替えられてもよい。また、モータサイクル100に生じさせるブレーキ力の切り替え、及び、自動ブレーキ動作の開始タイミングの切り替えのうちの、一方のみが行われてもよい。
【0055】
また、以上では、ステップS103において、モータサイクル100の運転者シート1aに作用する外力の大きさと、モータサイクル100のタンデムシート1bに作用する外力の大きさと、の両方が、シート荷重情報として取得される場合に、外力の合計値に基づいて自動ブレーキ動作が設定される場合を説明しているが、各外力の値に基づいて自動ブレーキ動作が設定されてもよい。つまり、運転者シート1aに関するシート荷重情報と、タンデムシート1bに関するシート荷重情報と、が取得され、運転者シート1aに関するシート荷重情報と、タンデムシート1bに関するシート荷重情報と、のそれぞれに応じて、自動ブレーキ動作の設定が変化させられてもよい。また、モータサイクル100の運転者シート1aに作用する外力の大きさと、モータサイクル100のタンデムシート1bに作用する外力の大きさと、が重み付けされて合計されてもよい。
【0056】
<車体挙動制御システムの効果>
実施の形態1に係る車体挙動制御システムの効果について説明する。
制御装置60は、モータサイクル100の周囲環境に応じて生成されるトリガ情報を取得する取得部61と、モータサイクル100に自動ブレーキ動作を実行させる制御モードを、取得部61で取得されるトリガ情報に応じて開始して、モータサイクル100にブレーキ力を生じさせる実行部62と、を備える。また、取得部61は、更に、モータサイクル100のシート(運転者シート1a、タンデムシート1b)が受ける荷重の情報であるシート荷重情報を取得し、実行部62は、取得部61で取得されるシート荷重情報に応じて、その制御モードにおいて実行される自動ブレーキ動作を変化させる。そのため、搭乗者の安全性、快適性等を確保することが困難となりかねない状況に対応することが可能となって、自動ブレーキ動作の有用性が向上して、モータサイクル100の安全性が向上する。
【0057】
好ましくは、実行部62は、制御モードにおいて実行される自動ブレーキ動作でモータサイクル100に生じさせるブレーキ力を、取得部61で取得されるシート荷重情報に応じて変化させる。また、好ましくは、実行部62は、制御モードにおいて実行される自動ブレーキ動作の開始タイミングを、取得部61で取得されるシート荷重情報に応じて変化させる。何れの場合であっても、自動ブレーキ動作の安全性、快適性等の確保が確実化される。
【0058】
好ましくは、取得部61は、モータサイクル100のシート(運転者シート1a、タンデムシート1b)に作用する外力を検出する外力検出装置42の検出結果に基づいて、シート荷重情報を取得する。そのため、自動ブレーキ動作の安全性、快適性等の確保が確実化される。
【0059】
特に、外力検出装置42が、モータサイクル100の運転者シート1aに作用する外力の大きさを検出する第1センサ42aを含むとよい。そのような場合には、運転者シート1aに着座する搭乗者の重量に応じて、自動ブレーキ動作を切り替えることが可能となって、自動ブレーキ動作の安全性、快適性等の確保が確実化される。
【0060】
特に、外力検出装置42が、モータサイクル100のタンデムシート1bに作用する外力の大きさを検出する第2センサ42bを含むとよい。そのような場合には、タンデムシート1bに着座する搭乗者の重量に応じて、自動ブレーキ動作を切り替えることが可能となって、自動ブレーキ動作の安全性、快適性等の確保が確実化される。
【0061】
好ましくは、実行部62は、シート荷重情報として取得される値と閾値との比較結果に応じて、制御モードにおいて実行される自動ブレーキ動作を変化させる。そのため、制御装置60の処理を簡素化して、スループットを向上することが可能となって、自動ブレーキ動作の安全性、快適性等を確保することが更に確実化される。
【0062】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係る車体挙動制御システムについて説明する。
なお、実施の形態1に係る車体挙動制御システムと重複又は類似する説明は、適宜簡略化又は省略している。
【0063】
<車体挙動制御システムの構成>
実施の形態2に係る車体挙動制御システムの構成について説明する。
図5は、本発明の実施の形態2に係る車体挙動制御システムの、システム構成を示す図である。図6は、倒れ角の定義を示す図である。
【0064】
図5に示されるように、車体挙動制御システム10は、周囲環境検出装置41、外力検出装置42、及び車体姿勢検出装置43を含む各種検出装置と、入力装置46と、警告装置47と、を備える。各種検出装置、入力装置46、及び、警告装置47は、制御装置60と通信可能になっている。
【0065】
車体姿勢検出装置43は、モータサイクル100の倒れ角に関連する情報を検出し、検出結果を出力する。倒れ角は、図6に示される、モータサイクル100の鉛直上方向に対するロール方向の傾きの角度θに相当する。車体姿勢検出装置43が、モータサイクル100の倒れ角自体を検出するものであってもよく、また、倒れ角に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。また、車体姿勢検出装置43が、モータサイクル100の倒れ角の角速度自体を検出するものであってもよく、また、倒れ角の角速度に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。車体姿勢検出装置43は、胴体1に設けられている。
【0066】
<車体挙動制御システムの動作>
実施の形態2に係る車体挙動制御システムの動作について説明する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る車体挙動制御システムの、動作フローを示す図である。
【0067】
図7に示されるステップS201、ステップS202、ステップS205、ステップS206は、図4に示されるステップS101、ステップS102、ステップS105、ステップS106と同様であるため、ステップS203及びステップS204のみについて説明する。
【0068】
(取得ステップ)
ステップS203において、取得部61は、外力検出装置42の検出結果に応じたシート荷重情報と、車体姿勢検出装置43の検出結果に応じた車体姿勢情報と、を取得する。
【0069】
(実行ステップ)
ステップS204において、実行部62のシート荷重判定部62bは、ステップS203で取得されたシート荷重情報が、搭乗者の重量が小さい状態で取得される情報であるか否かを、閾値との比較に基づいて判定する。閾値は、ステップS203で取得された車体姿勢情報に応じて設定される。Yesである場合には、ステップS205に進み、Noである場合には、ステップS206に進む。
【0070】
例えば、シート荷重判定部62bは、モータサイクル100のシート(運転者シート1a、タンデムシート1b)に作用する外力の大きさを閾値と比較することで、搭乗者の重量が小さい状態で取得される情報であるか否かを判定する場合において、その閾値を、車体姿勢情報として取得されるモータサイクル100の倒れ角に応じて変化させる。具体的には、倒れ角が大きいほど、閾値を小さくする。
【0071】
例えば、シート荷重判定部62bは、モータサイクル100のシート(運転者シート1a、タンデムシート1b)に作用する外力の大きさを閾値と比較することで、搭乗者の重量が小さい状態で取得される情報であるか否かを判定する場合において、その閾値を、車体姿勢情報として取得されるモータサイクル100の倒れ角の角速度に応じて変化させる。具体的には、倒れ角の角速度が大きいほど、閾値を小さくする。
【0072】
<車体挙動制御システムの効果>
実施の形態2に係る車体挙動制御システムの効果について説明する。
【0073】
好ましくは、実行部62は、シート荷重情報として取得される値と閾値との比較結果に応じて、制御モードにおいて実行される自動ブレーキ動作を変化させる。そして、取得部61は、更に、モータサイクル100に生じている倒れ角に関連する車体姿勢情報を取得し、実行部62は、取得部61で取得される車体姿勢情報に応じて閾値を変化させる。そのため、特に、車体挙動に対する搭乗者の重量の影響が大きくなる、モータサイクル100に大きな倒れ角又は大きな倒れ角の角速度が生じている状況においても、モータサイクル100の安全性を向上することが可能となる。
【0074】
以上、実施の形態1及び実施の形態2について説明したが、本発明は各実施の形態の説明に限定されない。例えば、各実施の形態の一部のみが実施されてもよく、また、一方の実施の形態の一部が他方の実施の形態に組み合わされてもよい。また、図4及び図7に示される動作フローにおけるステップの順序が入れ替えられてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 胴体、1a 運転者シート、1b タンデムシート、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、10 車体挙動制御システム、11 第1ブレーキ操作部、12 前輪制動機構、13 第2ブレーキ操作部、14 後輪制動機構、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、26 副流路、27 供給流路、31 込め弁、32 弛め弁、33 アキュムレータ、34 ポンプ、35 第1弁、36 第2弁、41 周囲環境検出装置、42 外力検出装置、42a 第1センサ、42b 第2センサ、43 車体姿勢検出装置、46 入力装置、47 警告装置、50 液圧制御ユニット、51 基体、60 制御装置、61 取得部、62 実行部、62a トリガ判定部、62b シート荷重判定部、62c 制御指令設定部、62d 制御部、100 モータサイクル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7