特許第6806424号(P6806424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士計器の特許一覧

<>
  • 特許6806424-貯水タンク及び貯水タンク群 図000002
  • 特許6806424-貯水タンク及び貯水タンク群 図000003
  • 特許6806424-貯水タンク及び貯水タンク群 図000004
  • 特許6806424-貯水タンク及び貯水タンク群 図000005
  • 特許6806424-貯水タンク及び貯水タンク群 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6806424
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】貯水タンク及び貯水タンク群
(51)【国際特許分類】
   E03B 11/02 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   E03B11/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-3387(P2020-3387)
(22)【出願日】2020年1月14日
【審査請求日】2020年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154233
【氏名又は名称】株式会社富士計器
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正志
【審査官】 田島 拳士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−156259(JP,A)
【文献】 特開2016−217073(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3216637(JP,U)
【文献】 特開2009−236327(JP,A)
【文献】 特開2018−043039(JP,A)
【文献】 特開平11−303156(JP,A)
【文献】 特開2007−125470(JP,A)
【文献】 特開平09−058786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 11/00−11/16
E03B 1/00−1/04
E03B 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水の配管の途中に設けられる貯水タンクであって、この貯水タンクの左右の一端面には気泡水発生機構を備えた給水管が接続され、他端面の上部と下部にはタンク内の水を取り出す取水管が取り付けられ、上部の取水管は流路切換弁を介して分岐し、一方の分岐管は逆止弁を備えるとともに貯水タンク内に圧送用の空気を送り込む圧気源につながり、他方の分岐管は前記下部の取水管と合流して下流側への給水管となり、更に前記貯水タンクの他端面の下部に取り付けられた取水管と前記他方の分岐管とは可撓管にて接続されていることを特徴とする貯水タンク。
【請求項2】
請求項1に記載の貯水タンクは複数個直列に接続された貯水タンク群であって、貯水タンク群を構成する貯水タンクの何れ1つの給水管に気泡水発生機構が組み込まれていることを特徴とする貯水タンク群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時などの際の飲料水・生活水などを確保する貯水タンクとこの貯水タンクを複数個連ねた貯水タンク群に関する。
【背景技術】
【0002】
水道本管から一般家庭に引き込まれる配管の一部をタンクとし、災害時などに飲料水や生活水として利用する提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、上水道管に取付けられた飲料水タンクであって、断水後、必要に応じてタンクの天井部に設けた空気栓を抜き、タンク内に空気を入れる構造が提案されている。
【0004】
特許文献2には、気泡水発生機構が開示され、特許文献3には、貯水タンクに空気を送り込むに際し、手動により圧送用の空気を送り込むことが開示されている。
【0005】
特許文献4には、タンク内の気体溜りを除去するために、気体溜まりの最上部に引き込み管入口を設け、引き込み管を出口側配管に接続してタンクと出口側配管の間で気体搬送力を生成する負圧生成ヘッドを配置した構成が開示されている。
【0006】
特許文献5には、タンク内の気体及び溶存気体(脱気)を排出又は分離する手段として、タンクの内側に通気層を設けさらに内側に分離膜を設け、通気層を真空引きする手段で、気体溜まり防止と脱気の同時排出又は分離及び貯留放出を行う構造が開示されている。
【0007】
特許文献6には、タンク内の気体溜まりを取り除く構造として、気体溜まりの最上部に引き込み管入口を設け、気体を搬送する引き込み管と気体を出口管に放出する負圧生成ヘッドを形成し、タンク又は機器と出口管の間に気体搬送手段を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−191292号公報
【特許文献2】実開昭62−151999号のマイクロフィルム
【特許文献3】特開2010−185272号公報
【特許文献4】特開2015−169333号公報
【特許文献5】特開2018−187615号公報
【特許文献6】特開2019−082251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
災害時などの際の飲料水・生活水などを確保するために、配管の一部(途中)に貯水タンクを介在させる場合に、空気が水に接触しても変質するようなことはないが、貯水タンク内に空気溜りが発生すると、その分だけ貯水量が少なくなる。特に、微細気泡を含む水は通常の水に比較して洗浄能力に優れているが、空気溜りが生じやすい。
【0010】
貯水タンク内の空気溜りをなくすために、特許文献4〜6に開示されるような特殊なエア抜き構造は必要ではなく、一般的なエア抜き管で十分である。一般的なエア抜き管はチェック弁を組み込んだ構造で、設置した状態でタンクの最も高くなる位置に取付けられる。
【0011】
しかしながら、貯水タンクにエア抜き管を取付けると、エア抜き管の高さ分だけ貯水タンクの全高が高くなる。通常、貯水タンクは邪魔にならない場所として一般家庭やマンションなどでは床下などの上下方向の寸法が限られた空間が選定されることが多い。
このような場合に、貯水タンク上面にエア抜き管が突出していると、限られたスペースに貯水タンクを設置することができない。また、設置できたとしてもエア抜き管の高さ分だけ、貯水タンクの容量を犠牲にしていることになり、スペースの有効利用ができない。更に上面にエア抜き管が突出していると複数の貯水タンクを積み重ねる際にもエア抜き管が邪魔になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る貯水タンクは、エア抜き管を設けなくともタンク内に空気溜りができない構造とした。
即ち、タンク本体の左右の一端面には気泡水発生機構を備えた給水管が接続され、タンク本体の他端面の上部と下部にはタンク内の水を取り出す取水管が取り付けられ、上部の取水管は三方弁を介して分岐し、一方の分岐管は貯水タンク内に圧送用の空気を送り込む圧気源につながり、他方の分岐管は前記下部の取水管と合流して下流側への給水管となる構造である。
【0013】
災害時などは電気を確保できないことを考慮すると、前記圧気源は手動式又は足踏み式であることが好ましい。
【0014】
また、本発明には上記の貯水タンクを複数個直列に接続した貯水タンク群も含まれる。この場合は、全ての貯水タンクの給水管に気泡水発生機構を備える必要はなく、何れか1つの貯水タンクの給水管に気泡水発生機構を設ければよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る貯水タンクによれば、微細気泡を含んだ水を空気溜まりのない状態で貯水タンク内に貯めることができ、しかもエア抜き管が突出していないため、床下などの上下方向の寸法が限られた場所でも効率よく設置することができる。
【0016】
また、本発明に係る貯水タンクにはエア抜き管が突出していないため、複数個の貯水タンクを積み重ねる際に、邪魔になるものがなく、効率よく重ねることができる。
【0017】
また、数年使用している既存の配管は、配管の内面に赤さびやスケール、水垢が付着している場合がある。このような場合に、微細気泡を含んだ水道水を通水すると、内面に付着したスケールなどの汚れに微細気泡が浸透して洗い流すため、衛生面で好ましいだけでなく、配管の寿命を大幅に延長することができる。
【0018】
また、タンクの形状として上面を平面とすることで、タンク自体をベンチとして利用でき、タンク上面を植木鉢置き場として利用することができる。更に、円筒状のタンクと比較して、設置個所によっては貯水量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る貯水タンクの縦断面図。
図2】同貯水タンクの微細気泡発生機構の拡大断面図
図3】同貯水タンクの後端部の平面図で(a)は貯水タンクから水を取り出している状態、(b)は貯水タンク内にエアを供給している状態を示す。
図4】同貯水タンクを複数個連結した貯水タンク群の例を示す図
図5】本発明に係る貯水タンクの別実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、貯水タンク1の上流側(図において右側)の端面1aの高さ方向の中央部には給水管2が接続され、この給水管2には微細気泡液発生機構3が組み込まれている。
【0021】
貯水タンク1の形状、大きさ、素材は任意であるが、形状としては例えば両端面が膨出した円筒タイプ、大きさとしては長さが約500mm〜2000mm、高さが200mm〜350mm、素材としては、ステンレス(SUS)、硬質ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニール(PVC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS)などが考えられる。また貯水タンク1の容積も任意であり、例えば5〜200リットルのものが考えられる。
【0022】
微細気泡液発生機構3は図2に示すように、貯水タンクの端面1aに溶接されるパイプ4にナット5を介して給水管2が着脱自在に取付けられる構造になっている。ナット5を緩めることで、給水管2を外すことができ、フィルタなどの交換を簡単に行える構造になっている。
【0023】
微細気泡液発生機構3の構造は、給水管2内においてノズル部材6が支持部材7によって支持され、この状態で給水管2内にノズル部材6の外側流路8と内側流路9が形成され、内側流路9には流水に旋回を起こさせるトルネードプレート10が配置される。
【0024】
前記内側流路9には絞り部12が形成され、この絞り部12を水が通過する際に速度が高まり、キャビテーション作用によって水中に溶解している空気が微細気泡となって水中に引き出される。
【0025】
前記パイプ4の貯水タンク1内に臨む先端の前方には邪魔板13が配置されている。この邪魔板13はパイプ4の中心に向かって凹球面状になっているため、パイプ4から貯水タンク内に供給された微細気泡入り水は邪魔板13にて変転せしめられ、貯水タンク1の端面周縁部まで向かうため、貯水タンク1内に水が滞留することがなく、したがって、タンク内面にカルシウムなどの水道水に含有される成分が付着することを防げる。
【0026】
一方、貯水タンク1の下流側(図において左側)の端面1bの上部(上端部)には上部取水管14が取り付けられ、下部(下端部)には下部取水管15が取り付けられている。上部取水管14は三方弁(流路切換弁)16を介して第1分岐管17と第2分岐管18に分岐し、第1分岐管17は逆止弁17aを備え圧気源19に接続している。
【0027】
圧気源19としては、電動式ポンプなどでもよいが災害時のことを考慮すると足踏み式或いは手動式が好ましい。また、貯水タンク1の胴体の際下端となる位置にはドレーン穴20が形成され、このドレーン穴20は通常時は塞がれている。
【0028】
前記下部取水管15には蛇腹管などの可撓管21の一端が接続され、この可撓管21の他端は前記第2分岐管18に合流して下流側への給水管22となっている。この給水管22は家屋内への給水もしくは下流側に連接した他の貯水タンク1への給水管となる。
【0029】
以上において、三方弁16の位置を図3(a)に示すように、第1分岐管17側(圧気源19への通路)が閉、第2分岐管18側が開の状態として、前記給水管22につながる蛇口などを開とすると、貯水タンク1内の圧は外部よりも高いため、貯水タンク1内の水は上部取水管14及び下部取水管15を流れ合流して給水管22内を介して蛇口から放出される。
【0030】
この時、貯水タンク1内の上部に空気溜まりが仮に生じていたとしても、下部取水管15を介して給水管22に向かって流れる水によって上部取水管14の水は下流側に流れるため、空気溜まりは上部取水管14に引き込まれ、外部に排出される。したがって、貯水タンク1内の水を使用する際に空気溜まりはなくなる。
【0031】
一方、災害時などに水道水の供給が停止した場合には、図3(b)に示すように、三方弁16の位置を第1分岐管15側が開、第2分岐管17側が閉となるようにし、圧気源19からの空気を貯水タンク1内へ送り込む。貯水タンク1内へ送り込まれる空気はメンブランフィルタ11を介して送り込まれるため、空気中の0.45μm以上の粒子は除かれる。送り込まれた空気の圧力により貯水タンク内の水は下部取水管15を介して外部に送り出される。下部取水管15の位置を出来るだけ低い位置に設けることで貯水タンク内の水を余すことなく使用することができる。
【0032】
図4は複数の貯水タンク1を直列に接続してラック23に2列3段の状態で搭載した貯水タンク群を示している。この場合、貯水タンク群を構成する全ての貯水タンク1への給水管2に微細気泡液発生機構3を組み込む必要はなく、どれか1つ、例えば最上流側の貯水タンク1または最下流側の貯水タンク1への給水管2に微細気泡液発生機構3を組み込めばよい。
【0033】
微細気泡を含有した水はそれ自体洗浄効果があるため、最上流側の貯水タンク1の給水管2に微細気泡液発生機構3を組み込んだ場合には、全てのタンク内面にカルシウムなどが付着することを防止できる。
【0034】
図5は貯水タンク1の外形に関する別実施例を示すものであり、この実施例では貯水タンク1の上面をフラットにしている。
このため、庭先に貯水タンク1を設置する際にベンチ或は植木鉢24を置く台として利用することができ、貯水タンクが邪魔になることがない。
【0035】
更にタンクの形状は、上記に限らず、正方形、或いは上下に積み重ねた際に互に係合する凹凸部を備えることで、ラックなしに積み重ねることができるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る貯水タンクは一般家庭用の緊急用水源としてではなく、公共施設に設置する緊急用水源としても利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…貯水タンク、1a、1b…貯水タンクの端面、2…給水管、3…微細気泡液発生機構、4…パイプ、5…ナット、6…ノズル部材、7…支持部材、8…外側流路、9…内側流路、10…トルネードプレート、11…メンブランフィルタ、12…絞り部、13…邪魔板、14…上部取水管、15…下部取水管、16…三方弁、17…第1分岐管、18…第2分岐管、19…圧気源、20…ドレーン穴、21…可撓管、22…給水管、23…ラック、24…植木鉢。
【要約】
【課題】
災害時などの際の飲料水・生活水などを確保する貯水タンクを提供する。
【解決手段】
貯水タンク1の下流側(図において左側)の端面1bの上部には上部取水管14が取り付けられ、下部には下部取水管15が取り付けられている。上部取水管14は三方弁(流路切換弁)16を介して第1分岐管17と第2分岐管18に分岐し、第1分岐管17は圧気源19に接続している。また、前記下部取水管15には蛇腹管などの可撓管21の一端が接続され、この可撓管21の他端は前記第2分岐管18に合流して下流側への給水管22となっている。この給水管22は家屋内への給水もしくは下流側に連接した他の貯水タンク1への給水管となる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5