特許第6806454号(P6806454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本アルファの特許一覧

<>
  • 特許6806454-排水栓装置 図000002
  • 特許6806454-排水栓装置 図000003
  • 特許6806454-排水栓装置 図000004
  • 特許6806454-排水栓装置 図000005
  • 特許6806454-排水栓装置 図000006
  • 特許6806454-排水栓装置 図000007
  • 特許6806454-排水栓装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806454
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20201221BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20201221BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   E03C1/22 C
   E03C1/23 Z
   A47K1/14 B
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-59437(P2016-59437)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-172211(P2017-172211A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
【審査官】 下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−147964(JP,A)
【文献】 特開2000−027257(JP,A)
【文献】 特開2012−036558(JP,A)
【文献】 特開2013−204264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12〜 1/33、
A47K 1/00〜 1/14、
F16K 31/44〜31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の排水口を開閉するための栓蓋と、
前記排水口からの排水が流れる主管部を有する配管と、
前記主管部内において上下動可能であり、自身の上下動により前記栓蓋を上下動させる上下動部と、
所定の操作部材の変位による駆動力を前記上下動部へと伝達する伝達体とを備えた排水栓装置であって、
前記配管は、前記主管部から枝分かれして延びるとともに、自身の内部空間が前記主管部の内部空間に連通する連通筒部を有し、
前記伝達体は、前記操作部材の変位により、前記連通筒部の内周面又は前記連通筒部の内周に配置された筒状部材の内周面である固定面に沿って回動又は往復移動可能な可動面を具備してなる被挿通部を有し、
前記可動面及び前記固定面の間には、両者に接触する環状の可動シール部材が設けられ、
前記可動シール部材におけるシール部の全体が、常に前記連通筒部における前記主管部側の開口部よりも上方に位置するように構成されており、
前記可動シール部材を用いて、前記連通筒部の内部空間のうち前記主管部とは反対側が水密に閉鎖された状態とされており、
前記可動面は、前記操作部材の変位に伴い自身の中心軸を回動軸として回動するように構成され、
前記連通筒部は、
前記主管部から延びる第一筒部と、
前記第一筒部における前記開口部とは反対側の端部から、前記開口部から遠ざかる側に向けて上方又は斜め上方に延び、前記第一筒部の延びる方向とは異なる向きに延びる第二筒部とを備えることを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
槽体の排水口を開閉するための栓蓋と、
前記排水口からの排水が流れる主管部、及び、当該主管部を通過した排水が流れ込み、封水が貯留される封水部を有する配管と、
前記主管部内において上下動可能であり、自身の上下動により前記栓蓋を上下動させる上下動部と、
所定の操作部材の変位による駆動力を前記上下動部へと伝達する伝達体とを備えた排水栓装置であって、
前記配管は、前記主管部から枝分かれして延びるとともに、自身の内部空間が前記主管部の内部空間に連通する連通筒部を有し、
前記連通筒部は、前記連通筒部の前記主管部側の開口部よりも少なくとも一部が上方に位置し、鉛直方向又は斜め鉛直方向に延びる上向部を具備し、
前記伝達体は、前記操作部材の変位により、前記上向部の内周面又は前記上向部の内周に配置された筒状部材の内周面である固定面に沿って回動又は往復移動可能な可動面を具備してなる被挿通部を有し、
前記可動面及び前記固定面の間には、両者に接触する環状の可動シール部材が設けられ、
前記可動シール部材におけるシール部の全体が、常に前記封水部における封水面及び前記開口部よりも上方に位置するように構成されており、
前記可動シール部材を用いて、前記連通筒部の内部空間のうち前記主管部とは反対側が水密に閉鎖された状態とされており、
前記可動面は、前記操作部材の変位に伴い自身の中心軸を回動軸として回動するように構成され、
前記連通筒部は、
前記主管部から延びる第一筒部と、
前記第一筒部における前記開口部とは反対側の端部から、前記開口部から遠ざかる側に向けて上方又は斜め上方に延び、前記第一筒部の延びる方向とは異なる向きに延びる第二筒部とを備えることを特徴とする排水栓装置。
【請求項3】
前記固定面は、前記開口部側に向けて斜め下方に延びる傾斜面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記被挿通部は、
前記第一筒部の内側に配置された回動可能な第一構成部と、
前記第二筒部の内側に配置された回動可能な第二構成部とを備え、
前記第一構成部及び前記第二構成部は、相互に回動力を伝達可能であるとともに、前記被挿通部の軸方向に沿った相対移動を規制された状態で連結されており、
前記第二筒部の内側に前記第二構成部が配置された状態において、前記第二筒部の軸方向に沿った前記第二構成部の相対移動を規制する規制部を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項5】
前記上下動部は、前記第一構成部における前記主管部側の端面から前記主管部内へと突出する突起状をなすとともに、所定の被支持部を支持し、かつ、前記被挿通部の回動により回動しつつ上下動するように構成され、
前記主管部は、鉛直方向に延びるとともに、
前記第一筒部は、前記主管部から水平方向に延び、
前記第二筒部は、前記開口部から遠ざかる側に向けて斜め上方に延びることを特徴とする請求項に記載の排水栓装置。
【請求項6】
前記被挿通部は、前記第二筒部における前記第一筒部とは反対側の開口から前記連通筒部に対し挿入可能に構成されていることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を開閉するための栓蓋を備えた排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水栓装置は、槽体(例えば、浴槽や洗面器など)の排水口に設けられた栓蓋を備えており、栓蓋を上下動させることで排水口を開閉させるものである。
【0003】
排水栓装置としては、栓蓋を支持する支持軸と、当該支持軸を上下動可能な状態で保持する栓蓋側機構部(支持機構)とを備えており、操作部材(例えば、操作ボタンなど)の変位による駆動力が所定の伝達体により前記支持軸へと伝達されることで、栓蓋を上下動させるものが一般に知られている。
【0004】
また近年では、排水栓装置として、伝達体の一部を構成する回動可能な回動伝達部と、当該回動伝達部から突出する支持突起と、環状の外周壁部を有するとともに前記栓蓋を直接又は間接的に支持する通水部材とを備え、支持突起により通水部材を介して栓蓋等を支持するものが提案されている(例えば、特許文献1公報等参照)。当該装置において、支持突起は、配管のうち、鉛直方向に延びるとともに排水の流れる主管部内に向けて突出しており、回動伝達部は、配管のうち、主管部から枝分かれして延びるとともに自身の内部空間が主管部の内部空間と連通した連通筒部(取付管)の内周に配置されている。そして、伝達体の動作(回動伝達部の回動)に伴い支持突起が回動しつつ上下動することで、通水部材ひいては栓蓋が上下動し、排水口が開閉されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−36558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献に記載の装置においては、主管部内を流れる排水が連通筒部内へ流れ込み、連通筒部と伝達体(回動伝達部)との間に水が浸入してしまう可能性がある。そこで、連通筒部の内周面(固定面)と回動伝達部の外周面(可動面)との間に、可動シール部材(可動部分に対応するシール部材)を配置することが考えられる。
【0007】
しかしながら、万が一可動シール部材において漏水に繋がり得る微小な破損などが生じた場合、連通筒部と回動伝達部との間を通って、つまり、可動面の外周を通って水が漏れ出してしまい、十分な水密性を確保できないおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可動面の外周を通った漏水をより確実に防止することができる排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.槽体の排水口を開閉するための栓蓋と、
前記排水口からの排水が流れる主管部を有する配管と、
前記主管部内において上下動可能であり、自身の上下動により前記栓蓋を上下動させる上下動部と、
所定の操作部材の変位による駆動力を前記上下動部へと伝達する伝達体とを備えた排水栓装置であって、
前記配管は、前記主管部から枝分かれして延びるとともに、自身の内部空間が前記主管部の内部空間に連通する連通筒部を有し、
前記伝達体は、前記操作部材の変位により、前記連通筒部の内周面又は前記連通筒部の内周に配置された筒状部材の内周面である固定面に沿って回動又は往復移動可能な可動面を具備してなる被挿通部を有し、
前記可動面及び前記固定面の間には、両者に接触する環状の可動シール部材が設けられ、
前記可動シール部材におけるシール部の全体が、常に前記連通筒部における前記主管部側の開口部よりも上方に位置するように構成されており、
前記可動シール部材を用いて、前記連通筒部の内部空間のうち前記主管部とは反対側が水密に閉鎖された状態とされており、
前記可動面は、前記操作部材の変位に伴い自身の中心軸を回動軸として回動するように構成され、
前記連通筒部は、
前記主管部から延びる第一筒部と、
前記第一筒部における前記開口部とは反対側の端部から、前記開口部から遠ざかる側に向けて上方又は斜め上方に延び、前記第一筒部の延びる方向とは異なる向きに延びる第二筒部とを備えることを特徴とする排水栓装置。
【0011】
尚、「可動シール部材におけるシール部」とは、可動シール部材のうち、漏水防止を図るべく、可動面及び固定面に対して水密に接触している部位をいう。
【0012】
上記手段1によれば、操作部材の変位に伴い移動する被挿通部の可動面と固定面との間には、両者に接触する環状の可動シール部材(可動部分に対応するシール部材)が設けられており、可動シール部材のシール部全体は、常に連通筒部における主管部側の開口部よりも上方に位置している。従って、仮に配管内の水位が上がり可動面と固定面との間に水が入り込んだとしても、水面と可動シール部材との間に空気が残るため、可動面及び固定面間での水位の上昇が抑制され、通常、可動シール部材へと水が至ることはない。また、万が一、使用等に伴い可動シール部材において漏水に繋がり得る微小な破損などが生じたとしても、つまり、空気が抜け得るような微小な破損が可動シール部材に生じたとしても、空気が抜けるのに時間を要するため、直ちに漏水が生じてしまうといったことがない。さらに、万が一可動シール部材へと水が到達したとしても、可動シール部材よりも低い位置にある前記開口部側へと水が引けやすくなり、ひいては可動シール部材の周囲に比較的多量の水が存在し続けるといった事態は生じにくくなる。これらの作用効果が相俟って、可動面の外周を通って水が漏出してしまうことを効果的に抑制でき、優れた水密性を実現することができる。
【0013】
また、上記手段1によれば、可動面は、操作部材の変位に伴い回動するように構成されている。従って、可動面が往復移動する場合と比較して、駆動力を伝達する際における可動シール部材と固定面等との間で生じる摩擦力を小さなものとすることができる。これにより、操作性の向上を図ることができる。
【0014】
ところで、上記手段1の要件(可動シール部材におけるシール部の全体が前記開口部よりも上方に位置すること等)を満たすために、連通筒部の全体をほぼ水平な斜め方向に延びる構成とした場合には、連通筒部を極端に長尺とする必要があり、配管の大型化を招いてしまうおそれがある。
【0015】
この点、上記手段1によれば、第一筒部に続いて上方又は斜め上方に延びる第二筒部が設けられているため、連通筒部を極端に長尺とすることなく、上記要件を満たすことが容易に可能となる。従って、配管の大型化を抑制することができ、設置自由度の向上や製造コストの低減などを図ることができる。
【0016】
手段2.槽体の排水口を開閉するための栓蓋と、
前記排水口からの排水が流れる主管部、及び、当該主管部を通過した排水が流れ込み、封水が貯留される封水部を有する配管と、
前記主管部内において上下動可能であり、自身の上下動により前記栓蓋を上下動させる上下動部と、
所定の操作部材の変位による駆動力を前記上下動部へと伝達する伝達体とを備えた排水栓装置であって、
前記配管は、前記主管部から枝分かれして延びるとともに、自身の内部空間が前記主管部の内部空間に連通する連通筒部を有し、
前記連通筒部は、前記連通筒部の前記主管部側の開口部よりも少なくとも一部が上方に位置し、鉛直方向又は斜め鉛直方向に延びる上向部を具備し、
前記伝達体は、前記操作部材の変位により、前記上向部の内周面又は前記上向部の内周に配置された筒状部材の内周面である固定面に沿って回動又は往復移動可能な可動面を具備してなる被挿通部を有し、
前記可動面及び前記固定面の間には、両者に接触する環状の可動シール部材が設けられ、
前記可動シール部材におけるシール部の全体が、常に前記封水部における封水面及び前記開口部よりも上方に位置するように構成されており、
前記可動シール部材を用いて、前記連通筒部の内部空間のうち前記主管部とは反対側が水密に閉鎖された状態とされており、
前記可動面は、前記操作部材の変位に伴い自身の中心軸を回動軸として回動するように構成され、
前記連通筒部は、
前記主管部から延びる第一筒部と、
前記第一筒部における前記開口部とは反対側の端部から、前記開口部から遠ざかる側に向けて上方又は斜め上方に延び、前記第一筒部の延びる方向とは異なる向きに延びる第二筒部とを備えることを特徴とする排水栓装置。
【0017】
尚、「封水面」とあるのは、封水部にて最大の封水が貯留されたときにおける、封水の主管部側の水面をいう。
【0018】
配管に対し、封水が貯留される封水部を設けることがある。この場合において、例えば、槽体が低床化等のされた浴槽であること等に起因して、封水面が槽体の底面に対し比較的近い位置に設定されると、封水に対し可動シール部材の少なくとも一部が水没する構成となり得る。このような構成になってしまうと、万が一可動シール部材に微小な破損が生じたときに、漏水量が多くなってしまうおそれがある。
【0019】
この点、上記手段2によれば、上向部の内側に可動シール部材が配置され、かつ、可動シール部材のシール部全体が、封水部の封水面よりも上方に位置している。従って、通常、封水が可動シール部材へと至ることはなく、万が一可動シール部材に若干の破損などが生じたとしても、直ちに漏水が生じてしまうことはない。また、仮に可動シール部材へと水が到達したとしても、可動シール部材よりも低い位置にある封水面側へと水が引けやすくなるため、可動シール部材の周囲に多量の水が存在し続けるといった事態は生じにくくなる。これらの作用効果が相俟って、可動面の外周を通って水が漏出してしまうことを効果的に抑制でき、優れた水密性を得ることができる。
【0020】
尚、上記手段2の構成は、例えば、低床化等のなされた浴槽など、封水面が槽体の底面に対し比較的近い位置に設定されやすく、封水面から可動シール部材までの上下方向に沿った距離が小さくなりやすい槽体に適用することで、特に有効に作用する。
【0021】
また、上記手段2によれば、仮に配管内の水位が上がり可動面と固定面との間に水が入り込んだとしても、水面と可動シール部材との間に空気が残るため、可動面及び固定面間での水位の上昇が抑制され、通常、可動シール部材へと排水が至ることはない。また、万が一可動シール部材において漏水に繋がり得る微小な破損などが生じたとしても、つまり、空気が抜け得るような微小な破損が可動シール部材に生じたとしても、空気が抜けるのに時間を要するため、直ちに漏水が生じてしまうといったことがない。その上、上記手段2の構成により、通常封水がシール部材へと至らない等の作用効果が奏される。これらが相俟って、漏水の蓋然性が極めて低くなり、一層良好な水密性を得ることができる。
【0022】
また、上記手段2によれば、可動面は、操作部材の変位に伴い回動するように構成されている。従って、可動面が往復移動する場合と比較して、駆動力を伝達する際における可動シール部材と固定面等との間で生じる摩擦力を小さなものとすることができる。これにより、操作性の向上を図ることができる。
【0023】
ところで、上記手段2の要件(可動シール部材におけるシール部の全体が前記開口部よりも上方に位置すること等)を満たすために、連通筒部の全体をほぼ水平な斜め方向に延びる構成とした場合には、連通筒部を極端に長尺とする必要があり、配管の大型化を招いてしまうおそれがある。
【0024】
この点、上記手段2によれば、第一筒部に続いて上方又は斜め上方に延びる第二筒部が設けられているため、連通筒部を極端に長尺とすることなく、上記要件を満たすことが容易に可能となる。従って、配管の大型化を抑制することができ、設置自由度の向上や製造コストの低減などを図ることができる。
【0025】
手段3.前記固定面は、前記開口部側に向けて斜め下方に延びる傾斜面であることを特徴とする手段1又は2に記載の排水栓装置。
【0026】
上記手段3によれば、固定面は、開口部側に向けて斜め下方に延びる傾斜面とされている。従って、可動シール部材に対し一層水が至りにくくなるとともに、仮に可動シール部材に水が至ったとしても、開口部側へとより水が引けやすく(流れ落ちやすく)なる。その結果、水密性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0027】
手段.前記被挿通部は、
前記第一筒部の内側に配置された回動可能な第一構成部と、
前記第二筒部の内側に配置された回動可能な第二構成部とを備え、
前記第一構成部及び前記第二構成部は、相互に回動力を伝達可能であるとともに、前記被挿通部の軸方向に沿った相対移動を規制された状態で連結されており、
前記第二筒部の内側に前記第二構成部が配置された状態において、前記第二筒部の軸方向に沿った前記第二構成部の相対移動を規制する規制部を具備することを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の排水栓装置。
【0028】
尚、「被挿通部の軸方向に沿った相対移動を規制された状態」とあるのは、被挿通部の軸方向に沿った相対移動が厳密に規制される場合のみならず、被挿通部の軸方向に沿って若干(例えば、両構成部間に設けた若干の遊びの分)だけ相対移動可能となっている場合も含む。
【0029】
上記手段によれば、規制部によって第二構成部の相対移動が規制された状態になると、両構成部は被挿通部の軸方向に沿った相対移動を規制された状態で連結されているため、第一構成部は、第一筒部の軸方向に沿って必ず一定の位置に配置され、さらに、第一筒部の軸方向に沿って移動できない状態となる。従って、第一構成部が最終的に所定位置(例えば、主管部の内周面に対する上下動部の突出量が適切なものとなる位置)に配置されるように設計しておけば、第一構成部の位置合わせを特段行うことなく、第一構成部が自然と前記所定位置へと配置され、かつ、その位置から第一筒部の軸方向に沿って動くことがなくなる。従って、排水栓装置の設置作業をより迅速に、かつ、より正確に行うことができ、取付や交換などに係る作業性を著しく高めることができる。
【0030】
手段.前記上下動部は、前記第一構成部における前記主管部側の端面から前記主管部内へと突出する突起状をなすとともに、所定の被支持部を支持し、かつ、前記被挿通部の回動により回動しつつ上下動するように構成され、
前記主管部は、鉛直方向に延びるとともに、
前記第一筒部は、前記主管部から水平方向に延び、
前記第二筒部は、前記開口部から遠ざかる側に向けて斜め上方に延びることを特徴とする手段に記載の排水栓装置。
【0031】
尚、「水平方向」とあるのは、厳密な水平方向だけでなく、ほぼ水平方向も含む。
【0032】
上下動部を、第一構成部における主管部側の端面から主管部内へと突出する突起状をなすとともに、被挿通部の回動により回動しつつ上下動するものとした場合において、第一構成部を斜め水平方向に延びる管内に配置し、第一構成部の回動軸が斜め水平方向に延びるように構成すると、被挿通部の回動に伴い、主管部内に対する上下動部の突出量が変動する。そのため、突出量が小さくなった場合でも被支持部をより確実に支持すべく、上下動部を十分に長いものとする必要が生じる。しかしながら、この場合には、突出量が大きくなったときに、上下動部が主管部内に大きく突出した状態となる。そのため、上下動部に異物が付着してしまいやすくなる等の不具合が生じてしまうおそれがある。
【0033】
この点、上記手段によれば、第一構成部は水平方向に延びる第一筒部に配置され、水平方向に延びる回動軸にて回動可能とされている。そのため、第一構成部の回動に伴い上下動部が上下動しても、主管部内に対する上下動部の突出量をほぼ一定に保つことができる。従って、上下動部の長さを特段大きくすることなく、上下動部により被支持部をより確実に支持することができる。その結果、上下動部に対する異物の付着等の不具合をより確実に防止することができる。
【0034】
手段.前記被挿通部は、前記第二筒部における前記第一筒部とは反対側の開口から前記連通筒部に対し挿入可能に構成されていることを特徴とする手段乃至のいずれかに記載の排水栓装置。
【0035】
上記手段によれば、第二筒部における第一筒部とは反対側の開口から、連通筒部に対し、第一構成部及び第二構成部の順に被挿通部を挿入していくことで、連通筒部内に被挿通部を配置することができる。従って、排水栓装置の設置作業を一層迅速に行うことができ、取付や交換などに係る作業性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】排水栓装置の一部破断正面図である。
図2】排水栓装置の一部破断拡大正面図である。
図3】被挿通部等の取付工程を説明するためのユニットの一部破断正面図である。
図4】被挿通部等の取付工程を説明するための配管等の一部破断正面図である。
図5】配管内の水位が上がった状態を示す断面模式図である。
図6】第2実施形態における排水栓装置の一部破断正面図である。
図7】別の実施形態における排水栓装置の一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
図1及び図2に示すように、排水栓装置1は、槽体としての浴槽100に取付けられており、排水口部材2と、配管3と、伝達機構体4と、上下動部5と、排水口装置6とを備えている。尚、浴槽100は、その底面を構成する底壁部101を備えており、当該底壁部101には排水口102が貫通形成されている。
【0038】
排水口部材2は、排水口102の内周に挿設されており、円筒状の本体部21と、当該本体部21の上端部から外周に突出形成された鍔部22とを備えている。本体部21の外周には、浴槽100に対し配管3を取付けるための雄ねじ部23が形成されている。
【0039】
配管3は、浴槽100に接続されており、主に排水口102(排水口部材2の内周)を通過した排水の流路として機能する。配管3は、流入部31、連通筒部32、折返部33及び直交部34を備えている。
【0040】
流入部31は、排水口102からの排水が流れ込む部位であり、鉛直方向に延びる円筒状をなしている。また、流入部31の上端部内周には、前記雄ねじ部23を螺合可能な雌ねじ部31Aが形成されている。そして、雌ねじ部31Aに対し雄ねじ部23を螺合し、鍔部22及び配管3の上端部により底壁部101を挟み込んだ状態とすることで、配管3が浴槽100へと取付けられている。尚、本実施形態では、配管3の上端面及び底壁部101の背面間に環状のシール部材9が配置されており、雌ねじ部31Aに対する雄ねじ部23の螺合に伴い、シール部材9は、配管3及び底壁部101で挟み込まれた状態となっている。これにより、配管3及び底壁部101間からの漏水防止が図られている。
【0041】
連通筒部32は、後述する被挿通部41が配置される部位であり、流入部31から枝分かれして延びるとともに、内部空間が流入部31の内部空間と連通する屈曲筒状をなしている。尚、本実施形態において、連通筒部32は、複数部材が直列的に接続されることで構成されている。
【0042】
連通筒部32は、水平方向に延びるとともに、流入部31に連接し、かつ、流入部31側に開口部32Dを有する水平部32Aと、水平部32Aに連なるとともに、前記開口部32Dから遠ざかる側に向けて斜め上方に延びる傾斜部32Bとを備えている。本実施形態において、水平部32Aは第一筒部に相当する。
【0043】
傾斜部32Bは、少なくとも一部が前記開口部32Dよりも上方に位置しており、その軸方向に沿って一定の内径を有している。本実施形態において、傾斜部32Bは、第二筒部及び上向部に相当する。
【0044】
折返部33は、流入部31の下端部から斜め上方に向けて延びる円筒状をなしている。そして、排水口102を通って流入部31に流れ込んだ排水は、封水として、流入部31及び折返部33からなる屈曲部分の内部にて貯留可能となっている。すなわち、本実施形態では、流入部31によって主管部35が構成され、流入部31及び折返部33によって封水部36が構成されている。
【0045】
直交部34は、折返部33の上端部から流入部31と直交する方向(水平方向)に延びる円筒状をなしている。本実施形態では、封水部36において、折返部33及び直交部34の境界部分と同じ高さの封水面37(図1,2等では、封水面37を二点鎖線で示す)まで封水が貯留可能となっている。また、本実施形態では、封水面37が開口部32Dの全域よりも上方に位置しており、封水が連通筒部32内へと流入し得る構成となっている。
【0046】
伝達機構体4は、所定の操作部材(例えば、操作ボタンや操作ハンドルなど)の変位により往復移動可能な図示しない伝達部材(例えば、ワイヤー等)と、ケース部42と、当該ケース部42内に配置されるとともに、前記伝達部材に接続された往復移動可能な図示しないラックと、ケース部42内からその外へと突出し、この突出部分が連通筒部32内に配置される被挿通部41と、Cリング部43とを備えている。
【0047】
ケース部42は、複数部材が組合わされてなり、例えばねじ止め等により傾斜部32Bに対して取付けられている。また、ケース部42は、後述する第二構成部41Bの他端面と接触又はほぼ接触した状態となっている。さらに、ケース部42のうち、傾斜部32Bの内部空間に連通する部位の内面には、段部42Aが存在している。
【0048】
被挿通部41は、第一構成部41A、第二構成部41B、連結部41C、筒状部材41D、固定シール部41E及び可動シール部材41Fを備えている。
【0049】
第一構成部41Aは、自身の中心軸が水平部32Aの中心軸と同軸となった状態で、水平部32Aの内側に配置されている。また、第一構成部41Aは、水平に延びる回動軸において回動可能に構成されている。さらに、第一構成部41Aは、その一端面が自身の中心軸方向に沿って前記開口部32Dとほぼ同じ位置に設けられており、流入部31内に突出しないようになっている。そして、第一構成部41Aにおける前記一端面の外周側において、上下動部5が突出形成されている。
【0050】
上下動部5は、主管部35内に配置されており、排水口装置6を支持するものである。上下動部5は、第一構成部41Aが回動したときに回動しつつ上下動する。尚、本実施形態において、上下動部5は、主管部35の中心軸に至らない程度の短いものとされている。
【0051】
また、第一構成部41Aは、一端側(上下動部5が突出形成された側)の部位よりも連結部41C側の部位が細くなっている。尚、第一構成部41Aにおける一端側部位の外径は、連通筒部32(水平部32A)の内径とほぼ同一とされている。
【0052】
第二構成部41Bは、ケース部42から突出する部位が傾斜部32Bの内側に配置された状態となっており、自身の中心軸(傾斜部32Bの中心軸と同軸)を回動軸として回動可能に構成されている。本実施形態において、第二構成部41Bは、ケース部42内に配置されている側の端部(他端部)外周に歯車部41Gを備えている。そして、歯車部41Gに対しては、前記ラック部が噛合されており、伝達部材の往復移動に伴い前記ラックが往復移動することで、第二構成部41Bが回動するようになっている。
【0053】
また、第二構成部41Bは、その一端部(第一構成部41A側の端部)外周に鍔状部分を有し、その中央部外周に環状の溝部分を有している。前記溝部分は、可動シール部材41Fの配置空間である。また、前記鍔状部分の外径は、連通筒部32(傾斜部32B)の内径とほぼ同一とされている。
【0054】
さらに、第二構成部41Bの他端側であって前記歯車部41Gよりも一端側に位置する部位の外周に対し、前記Cリング部43が嵌め込まれている。Cリング部43は、前記段部42Aと接触することで、第二構成部41Bのケース部42からの抜けを防止するとともに、傾斜部32Bに対し第二構成部41B等をそれ以上挿入できない状態とするものである。
【0055】
連結部41Cは、両構成部41A,41Bの回動力を相互に伝達可能な状態で、両構成部41A,41Bを連結するものである。連結部41Cは、例えばユニバーサルジョイントなどにより構成されている。また、連結部41Cは、ガタツキのほとんどない状態で両構成部41A,41Bを連結しており、その結果、両構成部41A,41Bは、被挿通部41の軸方向に沿った相対移動が規制された状態となっている。そのため、両構成部41A,41Bの一方において被挿通部41の軸方向に沿った相対移動が規制された場合には、両構成部41A,41Bの他方においても被挿通部41の軸方向に沿った相対移動が規制されることとなる。
【0056】
本実施形態では、前記操作部材の変位に伴い前記伝達部材及び前記ラックが往復移動することで、第一構成部41A、第二構成部41B及び連結部41Cが回動し、その結果、上下動部5が回動しつつ上下動するようになっている。すなわち、本実施形態では、前記伝達部材、前記ラック及び被挿通部41によって、前記操作部材の変位による駆動力を上下動部5へと伝達する伝達体8が構成されている。
【0057】
筒状部材41Dは、円筒状をなしており、傾斜部32Bの内周面及び第二構成部41Bの外周面間に配置されている。筒状部材41Dの外径は、傾斜部32Bの内径とほぼ同一であり、筒状部材41Dの内径は、第二構成部41Bにおける前記鍔状部分や前記溝部分以外の部位の外径とほぼ同一である。筒状部材41Dは、第二構成部41Bの一端部外周に設けられた前記鍔状部分とCリング部43とで挟み込まれた状態となっている。これにより、第二構成部41Bが、筒状部材41Dに対して相対回動可能である一方、その軸方向に沿って相対移動不能な状態となっている。
【0058】
また、筒状部材41Dは、傾斜部32Bと同軸に配置されており、その内周面は、前記開口部32D側に向けて斜め下方に延びる傾斜面となっている。さらに、筒状部材41Dの外周には、固定シール部41Eを配置するための環状の溝部分が形成されている。
【0059】
固定シール部41Eは、筒状部材41Dの前記溝部分に配置されており、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂など)により環状に形成されている。固定シール部41Eは、その全周が、傾斜部32Bの内周面及び筒状部材41Dの外周面に挟み込まれた状態とされている。これにより、傾斜部32B及び筒状部材41D間が水密にシールされるとともに、固定シール部41Eによる摩擦力によって、筒状部材41Dが、基本的には傾斜部32Bに対し相対回動不能となっている。
【0060】
可動シール部材41Fは、固定シール部41Eと同様に、弾性変形可能な材料により環状に形成されている。また、可動シール部材41Fは、第二構成部41Bの前記溝部分に配置されており、その全周が第二構成部41Bの外周面と筒状部材41Dの内周面とに接触した状態とされている。可動シール部材41Fによって、基本的に移動不能な状態にある筒状部材41Dの内周面と、この内周面に沿って回動する第二構成部41Bの外周面との間が水密にシールされる。本実施形態では、筒状部材41Dの内周面によって固定面FSが構成され、第二構成部41Bの外周面によって可動面MSが構成されている。
【0061】
尚、本実施形態のように、可動シール部材41Fが、連通筒部32ではなく、連通筒部32の内周に設けられた筒状部材41Dと接触するように構成することで、可動シール部材41Fを比較的小径とすることができる。これにより、第二構成部41Bが回動する際の摩擦力を低減することができ、操作性を高めることができる。また、シール安定性を向上させることも可能である。さらに、第二構成部41Bが回動する際に、筒状部材41Dに対し付与される摩擦力が比較的小さなものとなり、筒状部材41Dを傾斜部32Bに対しより確実に相対回動不能な状態で維持できるようになる。尚、第二構成部41Bが回動する際に生じる摩擦力をより低減すべく、可動シール部材41Fを断面X字状のXリングによって構成してもよい。
【0062】
加えて、可動シール部材41Fにおけるシール部(可動シール部材41Fのうち、漏水防止を図るべく、固定面FS及び可動面MSに対して水密に接触している部位)の全体は、前記開口部32Dの最上部を通り、水平方向に延びる仮想面VS(図1,2では仮想面VSを点線で示す)よりも上方に位置している。すなわち、可動シール部材41Fは、そのシール部の全体が前記開口部32Dよりも上方に位置するように構成されている。一方、本実施形態において、可動シール部材41Fにおけるシール部の一部は、封水面37よりも下方に位置するように構成されている。
【0063】
また、本実施形態において、被挿通部41は、傾斜部32Bにおける水平部32Aとは反対側の開口から連通筒部32へと挿入可能に構成されている。但し、連通筒部32に対して被挿通部41を挿入していくと、傾斜部32Bの内側に第二構成部41Bや筒状部材41Dが配置された状態において、ケース部42が傾斜部32Bに接触し、被挿通部41をそれ以上挿入することができなくなる。すなわち、本実施形態では、Cリング部43及びケース部42によって、傾斜部32Bの軸方向(被挿通部41の軸方向)に沿った水平部32A側への第二構成部41Bの相対移動が規制されている。
【0064】
尚、本実施形態では、傾斜部32Bにケース部42を取付けた状態において、第一構成部41Aが水平部32Aの軸方向に沿った所定位置(例えば、主管部35の内周面に対する上下動部5の突出量が適切なものとなる位置)に配置され、かつ、連結部41Cの中心CPが水平部32Aの軸上に配置されるように、第一構成部41Aや第二構成部41Bの長さなどが設計されている。
【0065】
また、上述の通り、ケース部42が第二構成部41Bの他端面と接触又はほぼ接触するため、傾斜部32Bにケース部42を取付けた状態において、傾斜部32Bの軸方向(被挿通部41の軸方向)に沿った水平部32Aとは反対側への第二構成部41Bの相対移動が規制される。従って、本実施形態では、Cリング部43及びケース部42によって、傾斜部32Bの軸方向(被挿通部41の軸方向)に沿った第二構成部41Bの相対移動を規制する規制部が構成されている。
【0066】
排水口装置6は、排水口部材2や主管部35等の内周において上下動可能な状態で配置されており、外周壁部61、支持軸62及び栓蓋63を備えている。外周壁部61及び支持軸62は、栓蓋63及び上下動部5間に介在され、栓蓋63に対し上下動部5の変位による駆動力を伝達する役割などを備えたものである。
【0067】
外周壁部61は、円筒状をなし、その外周面が排水口部材2及び主管部35の内周面に沿うようにして配置されている。本実施形態では、外周壁部61が被支持部に相当する。
【0068】
支持軸62は、棒状をなしており、円筒軸部62A、閉塞部62B、蓋側軸部62C及びアブソーバスプリング62Dを備えている。
【0069】
円筒軸部62Aは、外周壁部61の内側に位置しており、外周壁部61と同軸の円筒状をなしている。円筒軸部62Aの外周面と外周壁部61の内周面とは、図示しない所定のリブなどによって連結されており、本実施形態では、円筒軸部62A及び外周壁部61が一体とされている。また、円筒軸部62Aの上端部内周には、径方向内側に突出する抜け規制部62Eが形成されている。尚、円筒軸部62A及び外周壁部61間に、例えば網目状をなす、異物を捕集するための捕集部を設けてもよい。
【0070】
閉塞部62Bは、円板状をなしており、円筒軸部62Aの下端側開口に嵌合されることで、当該下端側開口を閉塞している。
【0071】
蓋側軸部62Cは、その上端部が栓蓋63に取付けられるとともに、その下端側部分が鍔状をなしている。そして、蓋側軸部62Cは、前記鍔状の部分が円筒軸部62Aの内周に配置されており、円筒軸部62Aに対し自身の軸方向に沿って相対移動可能となっている。但し、蓋側軸部62Cは、抜け規制部62Eの存在により円筒軸部62Aからの抜けが防止された状態となっている。
【0072】
アブソーバスプリング62Dは、円筒軸部62A内において、閉塞部62B及び蓋側軸部62C間に配置されている。
【0073】
上記のように支持軸62が構成されることで、支持軸62はショックアブソーバー手段を備えたものとなり、排水口102が開状態であるときに、栓蓋63に対し下方に向けた力が加えられた場合には、アブソーバスプリング62Dが圧縮変形することで、上下動部5や外周壁部61等に対し過度に大きな力が加わらないようになっている。その結果、排水栓装置1の故障や破損防止が効果的に図られるようになっている。
【0074】
栓蓋63は、排水口102を開閉するためのものであり、樹脂等からなる円板状の蓋部63Aと、当該蓋部63Aの背面外周側に取付けられた、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)からなる環状のパッキン部63Bとを備えている。蓋部63Aは、例えば、その背面中央部分に設けられた筒状の取付部(図示せず)に対し、蓋側軸部62Cの上端部が嵌合されることによって、支持軸62へと取付けられている。
【0075】
本実施形態では、上下動部5の上動に伴い外周壁部61及び支持軸62が持ち上げられることで、栓蓋63が上動し、その結果、パッキン部63Bが底壁部101から離間することにより、排水口102が開放されるようになっている。一方、上下動部5の下動に伴い栓蓋63が重力によって下動し、パッキン部63Bの外周全周が底壁部101に接触することによって、排水口102が閉鎖されるようになっている。
【0076】
尚、本実施形態において、上下動部5は、排水口102が開状態とされているときに、外周壁部61の下端面に接触して排水口装置6を支持しているが、排水口102が閉状態とされているときに、外周壁部61の下端面から離間するようになっている。これにより、排水口102が閉状態のときにおいて、栓蓋63(パッキン部63B)を確実に底壁部101へと接触させることができ、良好な水密性を得ることができるようになっている。
【0077】
次いで、浴槽100に対する排水栓装置1の設置工程のうち、特に伝達機構体4及び上下動部5の取付工程について説明する。尚、伝達機構体4や上下動部5の取付に先立って排水口部材2により配管3が浴槽100へと予め取付けられている。
【0078】
図3に示すように、まず、第一構成部41Aや第二構成部41B、筒状部材41D、ケース部42等を組立てることで、伝達機構体4及び上下動部5が一体となったユニット7を予め得ておく。このとき、ケース部42内の前記ラックに対し前記伝達部材を予め接続しておく。
【0079】
その上で、図4に示すように、連通筒部32に対し、傾斜部32Bにおける水平部32Aとは反対側の開口から、ユニット7を上下動部5を先頭として順に挿入していく。そして、上下動部5のその回動方向に沿った位置が所定位置となるように調節しつつ、傾斜部32Bの端部にケース部42が接触するまで、ユニット7を連通筒部32に対し挿入する。ユニット7をこれ以上挿入できない状態となったとき、第一構成部41Aは水平部32Aの軸方向に沿った所定位置に配置されることとなる。
【0080】
尚、本実施形態では、上述のように、先端側の部位よりも連結部41C側の部位が細くなるように第一構成部41Aを構成することで、第一構成部41Aが水平部32Aから傾斜部32Bにかけての屈曲部分を容易に通過できるようになっている。また、上述のように、第二構成部41Bにおける前記鍔状部分や筒状部材41Dの外径が連通筒部32(傾斜部32B)の内径とほぼ同一とされていることで、傾斜部32Bに対し第二構成部41Bがほぼ同軸に配置される。そして、連結部41Cの中心CP(図2参照)が、水平部32Aのほぼ軸上に配置され、ひいては第一構成部41Aが連通筒部32(水平部32A)とほぼ同軸に配置されるようになっている。
【0081】
そして最後に、ケース部42を傾斜部32Bに対し取付けることで、ユニット7の取付が完了する。尚、傾斜部32Bに対するケース部42の取付により、傾斜部32Bの軸方向に沿った第二構成部41Bの移動が規制された状態となり、ひいては被挿通部41の軸方向に沿った第一構成部41Aの移動が規制された状態となる。
【0082】
以上詳述したように、本実施形態によれば、可動シール部材41Fにおけるシール部の全体は、常に開口部32Dよりも上方に位置している。従って、図5に示すように、仮に配管3内の水位が上がり可動面MSと固定面FSとの間に水Wが入り込んだとしても、水面と可動シール部材41Fとの間に空気が残るため、可動面MS及び固定面FS間での水位の上昇が抑制され、通常、可動シール部材41Fへと水が至ることはない。また、万が一、使用等に伴い可動シール部材41Fにおいて漏水に繋がり得る微小な破損などが生じたとしても、つまり、空気が抜け得るような微小な破損が可動シール部材41Fに生じたとしても、空気が抜けるのに時間を要するため、直ちに漏水が生じてしまうといったことがない。さらに、万が一可動シール部材41Fへと水が到達したとしても、可動シール部材41Fよりも低い位置にある前記開口部32D側へと水が引けやすくなり、ひいては可動シール部材41Fの周囲に比較的多量の水が存在し続けるといった事態は生じにくくなる。これらの作用効果が相俟って、可動面MSの外周を通って水が漏出してしまうことを効果的に抑制でき、優れた水密性を実現することができる。
【0083】
また、固定面FSは、開口部32D側に向けて斜め下方に延びる傾斜面となっている。従って、可動シール部材41Fに対し一層水が至りにくくなるとともに、仮に可動シール部材41Fに水が至ったとしても、開口部32D側へとより水が引けやすく(流れ落ちやすく)なる。その結果、水密性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0084】
さらに、可動面MSは、前記操作部材の変位に伴い回動するように構成されている。従って、可動面MSが往復移動する場合と比較して、駆動力を伝達する際における可動シール部材41Fと固定面FS等との間で生じる摩擦力を小さなものとすることができる。これにより、操作性の向上を図ることができる。
【0085】
加えて、第一構成部41Aは水平部32Aに配置され、水平に延びる回動軸にて回動するため、第一構成部41Aの回動により上下動部5が上下動しても、主管部35内に対する上下動部5の突出量をほぼ一定に保つことができる。従って、上下動部5の長さを特段大きくすることなく、上下動部5により外周壁部61をより確実に支持することができる。その結果、上下動部5に対する異物の付着等の不具合をより確実に防止することができる。
【0086】
また、水平部32Aに続いて傾斜部32Bが設けられているため、連通筒部32を極端に長尺とすることなく、可動シール部材41Fにおけるシール部の全体が開口部32Dよりも上方に位置するという構成を満たすことができる。従って、配管3の大型化を抑制することができ、設置自由度の向上や製造コストの低減などを図ることができる。
【0087】
さらに、傾斜部32Bにおける水平部32Aとは反対側の開口から、連通筒部32に対し被挿通部41を挿入していき、Cリング部43やケース部42によって、第二構成部41Bの移動が規制された状態になると、第一構成部41Aは、水平部32Aの軸方向に沿って必ず一定の位置に配置され、さらに、水平部32Aの軸方向に沿って移動できない状態となる。従って、本実施形態のように、第一構成部41Aが最終的に水平部32Aの軸方向に沿った所定位置に配置されるように設計されていれば、第一構成部41Aの位置合わせを特段行うことなく、第一構成部41Aを自然と前記所定位置へと配置することができ、さらに、第一構成部41Aがその位置から水平部32Aの軸方向に沿って動くことがなくなる。従って、排水栓装置1の設置作業をより迅速に、かつ、より正確に行うことができ、取付や交換などに係る作業性を著しく高めることができる。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態において、可動シール部材41Fにおけるシール部の一部は、封水面37よりも下方に位置するように構成されている。
【0088】
これに対し、本第2実施形態では、図6に示すように、例えば、流入部31をより下方へと延ばすことによって、可動シール部材41Fにおけるシール部の全体が、封水部36における封水面37よりも上方に位置するように構成されている。尚、本第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、可動シール部材41Fにおけるシール部の全体が、開口部32Dよりも上方に位置するように構成されている。
【0089】
以上、本第2実施形態によれば、傾斜部32Bの内側に可動シール部材41Fが配置され、かつ、可動シール部材41Fにおけるシール部の全体が、封水面37よりも上方に位置している。従って、通常、封水が可動シール部材41Fへと至ることはなく、万が一可動シール部材41Fに若干の破損などが生じたとしても、直ちに漏水が生じてしまうことはない。また、仮に可動シール部材41Fへと水が到達したとしても、可動シール部材41Fよりも低い位置にある封水面37側へと水が引けやすくなるため、可動シール部材41Fの周囲に多量の水が存在し続けるといった事態は生じにくくなる。これらの作用効果が相俟って、可動面MSの外周を通って水が漏出してしまうことを効果的に抑制でき、優れた水密性を得ることができる。
【0090】
また、本第2実施形態においても、可動シール部材41Fにおけるシール部の全体が開口部32Dよりも上方に位置するように構成されているため、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる。そのため、可動シール部材41Fにおけるシール部の全体が封水面37よりも上方に位置することによる上記作用効果と相俟って、漏水の蓋然性が極めて低くなり、一層良好な水密性を得ることができる。
【0091】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0092】
(a)上記実施形態では、開口部32Dの少なくとも一部が、封水面37よりも下方に位置するように構成されているが、図7に示すように、開口部32Dの全域が封水面37よりも上方に位置するように構成してもよい。この場合には、通常、封水が連通筒部32内へと入り込まなくなるため、水密性をさらに高めることができる。
【0093】
(b)上記実施形態において、可動面MSが固定面FSに対し回動可能に構成されているが、可動面が固定面に対し往復移動するように構成してもよい。尚、可動面が固定面に対し往復移動する場合には、可動面の移動に伴い連通筒部32の軸方向に沿って可動シール部材が移動し得るため、可動シール部材がどの位置に配置されていても、可動シール部材におけるシール部の全体が常に開口部32Dや封水面37よりも上方に配置されるように、可動シール部材の配置位置などを調節する必要がある。
【0094】
(c)上記実施形態では、第二構成部41Bの外周面(可動面MS)が筒状部材41Dの内周面(固定面FS)に沿って回動するように構成されているが、例えば、第二構成部41Bに対し筒状部材41Dが一体化されることで、第二構成部の外周面(可動面)が連通筒部32(傾斜部32B)の内周面に沿って回動又は往復移動するように構成してもよい。すなわち、連通筒部32の内周面によって固定面を構成してもよい。
【0095】
(d)上記実施形態において、上下動部5は第一構成部41Aにおける一端面の外周側から突出し、第一構成部41Aの回動に伴い、回動しつつ上下動するように構成されているが、上下動部は、主管部35内にて上下動可能であるとともに、自身の上下動により栓蓋63を上下動させるものであればよく、その構成は上記実施形態で挙げたものに限定されない。従って、上下動部は、例えば、主管部35(流入部31)の中心に配置された上下動可能な棒状部材であってもよい。また、上下動部を、先端部が主管部35内に配置される一方、基端部が回動可能に支持された棒状のものとし、前記先端部にて栓蓋63を直接又は間接的に支持するように構成してもよい。この場合、上下動部をその基端部にて回動させることで、上下動部の先端部が上下動し、ひいては栓蓋63が上下動することとなる。
【0096】
(e)上記実施形態では、斜め上方に延びる傾斜部32Bによって上向部や第二筒部が構成されているが、上向部や第二筒部は鉛直上方に延びるものであってもよい。
【0097】
(f)上記実施形態では、槽体として浴槽100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は浴槽に限定されるものではない。従って、例えば、洗面器やキッチンの流し台などに対して本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【0098】
(g)上記実施形態では、栓蓋63(パッキン部63B)が底壁部101(浴槽100)に接触することで排水口102を閉鎖するように構成されているが、栓蓋63(パッキン部63B)が浴槽100に設置された部材(例えば、排水口部材2)に接触することで排水口102を閉鎖するように構成してもよい。
【0099】
(h)上記実施形態では、傾斜部32Bにおける水平部32Aとは反対側の開口から、連通筒部32に対し、第一構成部41A及び第二構成部41Bの順に被挿通部41を挿入していくことで、連通筒部32内に被挿通部41を配置するように構成されている。これに対し、両構成部41A,41Bを分離した上で、水平部32Aの開口部32Dから第一構成部41Aを挿入するとともに、傾斜部32Bにおける前記開口部32Dとは反対側の開口から第二構成部41Bを挿入し、連通筒部32内で両構成部41A,41Bを連結することにより、連通筒部32内に被挿通部41を配置することとしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…排水栓装置、3…配管、5…上下動部、8…伝達体、32…連通筒部、32A…水平部(第一筒部)、32B…傾斜部(第二筒部、上向部)、32D…開口部、35…主管部、36…封水部、37…封水面、41…被挿通部、41A…第一構成部、41B…第二構成部、41D…筒状部材、41F…可動シール部材、42…ケース部(規制部)、43…Cリング部(規制部)、61…外周壁部(被支持部)、63…栓蓋、100…浴槽(槽体)、102…排水口、FS…固定面、MS…可動面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7