特許第6806456号(P6806456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6806456ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6806456
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/235 20060101AFI20201221BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20201221BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C03B5/235
   C03B17/06
   G02F1/1333 500
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-70098(P2016-70098)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-178707(P2017-178707A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508271425
【氏名又は名称】安瀚視特股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AvanStrate Taiwan Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】日沖 宣之
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−069992(JP,A)
【文献】 特開2014−069983(JP,A)
【文献】 特開2014−047084(JP,A)
【文献】 特開2002−087826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−5/44
8/00−8/04
19/12−20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料を加熱して熔融ガラスを生成する熔融槽と、前記熔融ガラスからガラス基板を成形する成形装置と、前記熔融槽から前記成形装置へと移送される熔融ガラスが通過する移送管と、を備えるガラス基板の製造装置を用いてガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、
前記移送管は、
白金族金属からなり、前記熔融ガラスの流路を構成する導管と、
前記導管を支持する多孔性を有する第1の支持体と、
前記第1の支持体を支持する断熱性を有する第2の支持体と、
前記導管に電流を流して前記導管の内部を流れる熔融ガラスを加熱する一対の電極と、を有し、
前記導管に流入する熔融ガラスの流入熱量と、前記導管から流出する熔融ガラスの流出熱量と、前記電極から加えられる電極熱量と、に基づいて、前記導管から漏出する熔融ガラスの量によって変化する放熱量を求め、
前記放熱量を補うように前記電極による加熱を制御し、
前記第1の支持体内に、前記導管から流出した前記熔融ガラスが前記導管を流れる前記熔融ガラスの界面位置まで浸透した状態で前記電極から前記導管に加えられるときの前記電極熱量は、前記状態になる前の、前記第1の支持体に前記導管から流出した前記熔融ガラスが浸透している状態で前記電極から前記導管に加えられるときの前記電極熱量に比べて小さい、
ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記一対の電極には、前記一対の電極の周囲に接触するように、冷媒が流れる冷却管が設けられ、
前記電極熱量は、前記一対の電極の電圧値及び電流値と、前記冷却管に流す冷媒量とに基づいて求められる、請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
ガラス原料を加熱して熔融ガラスを生成する熔融槽と、前記熔融ガラスからガラス基板を成形する成形装置と、前記熔融槽から前記成形装置へと移送される熔融ガラスが通過する移送管とを備えるガラス基板の製造装置であって、
前記移送管は、
白金族金属からなり、前記熔融ガラスの流路を構成する導管と、
前記導管を支持する多孔性を有する第1の支持体と、
前記第1の支持体を支持する断熱性を有する第2の支持体と、
前記導管に電流を流して前記導管の内部を流れる熔融ガラスを加熱する一対の電極と、を有し、
さらに、前記ガラス基板の製造装置は、
前記導管に流入する熔融ガラスの流入熱量と、前記導管から流出する熔融ガラスの流出熱量と、前記電極から加えられる電極熱量と、に基づいて、前記導管から漏出する熔融ガラスの量によって変化する放熱量を求め、前記放熱量を補うように前記電極による加熱を制御する制御装置、を備え、
前記第1の支持体内に、前記導管から流出した前記熔融ガラスが前記導管を流れる前記熔融ガラスの界面位置まで浸透した状態で前記電極から前記導管に加えられるときの前記電極熱量は、前記状態になる前の、前記第1の支持体に前記導管から流出した前記熔融ガラスが浸透している状態で前記電極から前記導管に加えられるときの前記電極熱量に比べて小さい、
ことを特徴とするガラス基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板は、工業的には、ガラス原料を熔融して生成させた熔融ガラスを成形して製造される。一般に、ガラス基板の製造装置は、ガラス原料から熔融ガラスを生成させる熔融部(熔融槽)と、熔融ガラスをガラス基板へと成形する成形部(成形装置)と、熔融部と成形部との間を熔融ガラスが移送可能であるように接続する移送部(移送管)とを備え、必要に応じ、熔融ガラスが内包する微小な気泡を除去する清澄槽等から構成される中間部をさらに備えている。中間部を備えた装置では、熔融部と中間部、中間部と成形部、場合によっては中間部を構成する各槽の間、を移送部がそれぞれ連結する。
【0003】
LCD基板用ガラス基板を製造するガラス基板の製造装置の内壁には、通常、熔融ガラスに対する耐食性に優れる白金族金属(典型的には白金)が用いられている。内壁を構成する材料として白金族金属が用いられる移送部(移送管)は、通常、白金族金属により構成されていてその内部を熔融ガラスが通過する導管を備え、さらに、導管を支持する耐火物支持体を備えている。耐火物支持体は、典型的には、耐火レンガにより構成される。高価な白金族金属は薄く引き延ばされて使用されるため、耐火レンガは、強度が不足する導管を補強する支持体として、さらには導管を保温する断熱体としての役割を果たす。白金族金属からなる導管は、高温な熔融ガラスにさらされることにより白金が揮発することにより破損し、また、温度変化により生じた座屈により破損し、破損個所から熔融ガラスが漏出することがある。特許文献1には、導管の破損を低減できる導管により熔融ガラスの漏出を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−87826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、白金が揮発することにより導管が破損して、熔融ガラスが漏出することがある。導管から熔融ガラスが漏出すると、導管内の温度が低下するため、熔融ガラスが内包する微小な気泡を除去する清澄が不十分となり、成形するガラス基板に品質不良が起こる場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、熔融ガラスが漏出した場合であっても、熔融ガラスの温度を維持できるガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ガラス原料を加熱して熔融ガラスを生成する熔融槽と、前記熔融ガラスからガラス基板を成形する成形装置と、前記熔融槽から前記成形装置へと移送される熔融ガラスが通過する移送管と、を備えるガラス基板の製造装置を用いてガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、
前記移送管は、
白金族金属からなり、前記熔融ガラスの流路を構成する導管と、
前記導管を支持する多孔性を有する第1の支持体と、
前記第1の支持体を支持する断熱性を有する第2の支持体と、
前記導管に電流を流して前記導管の内部を流れる熔融ガラスを加熱する一対の電極と、を有し、
前記導管に流入する熔融ガラスの流入熱量と、前記導管から流出する熔融ガラスの流出熱量と、前記電極から加えられる電極熱量と、に基づいて、前記導管から漏出する熔融ガラスの量によって変化する放熱量を求め、
前記放熱量を補うように前記電極による加熱を制御し、
前記第1の支持体内に、前記導管から流出した前記熔融ガラスが前記導管を流れる前記熔融ガラスの界面位置まで浸透した状態で前記電極から前記導管に加えられるときの前記電極熱量は、前記状態になる前の、前記第1の支持体に前記導管から流出した前記熔融ガラスが浸透している状態で前記電極から前記導管に加えられるときの前記電極熱量に比べて小さい、
ことを特徴とする。
【0008】
前記一対の電極には、前記一対の電極の周囲に接触するように、冷媒が流れる冷却管が設けられ、
前記電極熱量は、前記一対の電極の電圧値及び電流値と、前記冷却管に流す冷媒量とに基づいて求められる、ことが好ましい。
【0010】
本発明の他の一態様は、ガラス原料を加熱して熔融ガラスを生成する熔融槽と、前記熔融ガラスからガラス基板を成形する成形装置と、前記熔融槽から前記成形装置へと移送される熔融ガラスが通過する移送管とを備えるガラス基板の製造装置であって、
前記移送管は、
白金族金属からなり、前記熔融ガラスの流路を構成する導管と、
前記導管を支持する多孔性を有する第1の支持体と、
前記第1の支持体を支持する断熱性を有する第2の支持体と、
前記導管に電流を流して前記導管の内部を流れる熔融ガラスを加熱する一対の電極と、を有し、
さらに、前記ガラス基板の製造装置は、
前記導管に流入する熔融ガラスの流入熱量と、前記導管から流出する熔融ガラスの流出熱量と、前記電極から加えられる電極熱量と、に基づいて、前記導管から漏出する熔融ガラスの量によって変化する放熱量を求め、前記放熱量を補うように前記電極による加熱を制御する制御装置、を備え、
前記第1の支持体内に、前記導管から流出した前記熔融ガラスが前記導管を流れる前記熔融ガラスの界面位置まで浸透した状態で前記電極から前記導管に加えられるときの前記電極熱量は、前記状態になる前の、前記第1の支持体に前記導管から流出した前記熔融ガラスが浸透している状態で前記電極から前記導管に加えられるときの前記電極熱量に比べて小さい、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述の態様のガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置によれば、熔融ガラスが漏出した場合であっても、熔融ガラスの温度を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の製造方法のフローを示す図である。
図2】ガラス基板の製造装置の概略図である。
図3】清澄槽の構成を示す概略図である。
図4】清澄槽の断面を示す概略図である。
図5】導管が破損し、導管から熔融ガラスが漏出した例を示す図である。
図6】導管から漏出した熔融ガラスが導管の界面位置まで浸透した例を示す図である。
図7】制御装置のブロック図である。
図8】放熱量の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のガラス基板の製造方法について説明する。
(ガラス基板の製造方法の全体概要)
図1は、本実施形態のガラス基板の製造方法の工程の一例を示す図である。ガラス基板の製造方法は、熔解工程(ST1)、清澄工程(ST2)、均質化工程(ST3)、供給工程(ST4)、成形工程(ST5)、徐冷工程(ST6)、および、切断工程(ST7)を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有してもよい。製造されたガラス基板は、必要に応じて梱包工程で積層され、納入先の業者に搬送される。
【0014】
熔解工程(ST1)では、ガラス原料を加熱することにより熔融ガラスを作る。
清澄工程(ST2)では、熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれる酸素、CO2あるいはSO2を含んだ泡が発生する。この泡が熔融ガラス中に含まれる清澄剤(酸化スズ等)の還元反応により生じた酸素を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上して放出される。その後、清澄工程では、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスの温度を制御することにより行われる。
なお、清澄工程は、熔融ガラスに存在する泡を減圧雰囲気で成長させて脱泡させる減圧脱泡方式を用いることもできる。減圧脱泡方式は、清澄剤を用いない点で有効である。しかし、減圧脱泡方式は装置が複雑化及び大型化する。このため、清澄剤を用い、熔融ガラス温度を上昇させる清澄方法を採用することが好ましい。
【0015】
均質化工程(ST3)では、スターラを用いて熔融ガラスを撹拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、粘性差を抑制し、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。均質化工程は、後述する撹拌槽において行われる。
供給工程(ST4)では、撹拌された熔融ガラスが成形装置に供給される。
【0016】
成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)は、成形装置で行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。成形には、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、徐冷後のシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス基板を得る。切断されたガラス基板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。
【0017】
図2は、本実施形態における熔解工程(ST1)〜切断工程(ST8)を行うガラス基板の製造装置の概略図である。ガラス基板の製造装置は、図2に示すように、主に熔解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔解装置100は、熔解槽101と、清澄管102と、撹拌槽103と、移送管104、105と、ガラス供給管106と、を有する。
図2に示す熔解槽101には、図示されないバーナー等の加熱手段が設けられている。熔解槽には清澄剤が添加されたガラス原料が投入され、熔解工程(ST1)が行われる。熔解槽101で熔融した熔融ガラスは、移送管104を介して清澄管102に供給される。
清澄管102では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスの清澄工程(ST2)が行われる。具体的には、清澄管102内の熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれる酸素、CO2あるいはSO2を含んだ泡が、清澄剤の還元反応により生じた酸素を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上して気相空間に放出される。その後、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄後の熔融ガラスは、移送管105を介して撹拌槽103に供給される。
撹拌槽103では、撹拌子103aによって熔融ガラスが撹拌されて均質化工程(ST3)が行われる。撹拌槽103で均質化された熔融ガラスは、ガラス供給管106を介して成形装置200に供給される(供給工程ST4)。
成形装置200では、オーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスからシートガラスSGが成形され(成形工程ST5)、徐冷される(徐冷工程ST6)。
切断装置300では、シートガラスSGから切り出された板状のガラス基板が形成される(切断工程ST7)。
【0018】
(熔融ガラスの移送管)
移送管104、105、及び、清澄槽102は、熔融ガラスを上流側から下流側に流すガラス供給管である。脱泡処理を行うために、移送管104、105、及び、清澄槽102には、熔融ガラスMGを高温に加熱するための電極が設けられる。この電極からガラス供給管に電流を流すことにより、ガラス供給管が発熱することにより、ガラス供給管が熔融ガラスMGの加熱源となっている。熔融ガラスMGは、清澄槽102に流れるときには、上記加熱源を用いて例えば1630℃以上に昇温される。ガラス供給管には、例えば、耐熱性及び高温耐食性の高い白金または白金合金が用いられる。図3は、清澄槽102の構成を示す概略図である。ここでは、清澄槽102の構成を用いて、ガラス供給管の構成を示す。清澄槽41は、白金又は白金合金(白金族金属)から構成される筒状の形状の導管102aを有している。ここで、白金族金属は、白金族元素からなる金属を意味し、単一の白金族元素からなる金属のみならず白金族元素の合金を含む用語として使用する。白金族元素とは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の6元素を指す。導管102aの両端の外周面には、一対のフランジ状の電極102bが溶接されている。電極102bには、電源装置102cに接続される延在部が溶接されている。電極102bは、白金、白金合金、白金ロジウムまたは白金ロジウム合金(白金族金属)から構成されている。電源装置102cから電極102bの間に電圧が印加されることにより、電極102bの間の導管102aに電流が流れて、導管102aが通電加熱される。この通電加熱により、導管102aは例えば、1650℃〜1700℃程度に加熱され、移送管104から供給された熔融ガラスMGは、脱泡に適した温度、例えば、1600℃〜1700℃程度に加熱される。また、電極102bの過熱を抑制するために、電極102bの周囲に接触するように冷却管102dが設けられている。冷却管102dは、冷媒供給装置102eが接続され、冷媒供給装置102eから冷却管102dに冷媒が供給される。電極102bは冷却管102dにより冷却されて、電極102bの温度上昇を抑制し、過熱を防いでいる。
【0019】
図4は、清澄槽102の断面を示す概略図である。導管102aの周りには、耐火性、耐熱性、断熱性を有する第1の支持体102fが設けられている。第1の支持体102fは、多孔性の電鋳耐火物材で構成された直方体形状の複数のブロックにより組み立てられた組立体であり、導管102aを外周から支持する。第1の支持体102fは、例えば、高アルミナ質レンガ、電融ムライト質レンガ、高ジルコニア質レンガなどからなる。第1の支持体102fを構成するレンガは、導管102aから熔融ガラスMGが漏出した場合であっても、熔融ガラスMGがレンガ内に浸透(浸漬)するように、レンガ内に空間を有する多孔質の材料からなる。導管102aと第1の支持体102fとの間に、アルミナセメント等の不定形耐火物を充填することもできる。不定形耐火物を充填することにより、導管102aから漏出した熔融ガラスMGが第1の支持体102fに浸透(浸漬)のを抑制できる。第1の支持体102fの周りには、耐火性、耐熱性、断熱性を有する第2の支持体102gが設けられている。第2の支持体102gは、電鋳耐火物材で構成された直方体形状の複数のブロックにより組み立てられた組立体であり、第1の支持体102fを外周から支持する。第2の支持体102gは、第1の支持体102fに浸透した熔融ガラスMGが第2の支持体102gの周囲に漏出しないように、第1の支持体102fを構成するレンガ材質より密度が高く、また、外部への放熱を抑制できる断熱性が高いレンガ材質からなる。図5は、導管102aが破損し、導管102aから熔融ガラスMGが漏出した例を示す図である。白金が揮発することにより導管102aが破損すると、破損個所から熔融ガラスMGが漏出する。漏出した熔融ガラスMGは第1の支持体102fに浸透するが、第1の支持体102fは多孔性のレンガ材料からなるため、熔融ガラスMGは、第1の支持体102f内に蓄えられる。図6は、導管102aから漏出した熔融ガラスMGが導管102aの界面位置まで浸透した例を示す図である。漏出した熔融ガラスMGは、第1の支持体102f内において冷え固まりながら浸透し、導管102aの界面位置と一致する高さまで浸透する。漏出した熔融ガラスMGが、第1の支持体102f内において導管102aの界面位置と一致する高さまで浸透すると、導管102aから漏出する熔融ガラスMGの量が一時的に減少するが、熔融ガラスMGの漏出は続き、第2の支持体102gの外部に漏れだす。熔融ガラスMGが第2の支持体102gの外部に漏れだす、又は、外部に漏れだす直前が、清澄槽102の操業限界である。導管102aの周りを第1の支持体102fで支持することにより、導管102aから漏出した熔融ガラスMGを第1の支持体102fに浸透(浸漬)させて、第1の支持体102f内に熔融ガラスMGを蓄えることができる。第1の支持体102fの周りを第2の支持体102gで支持することにより、第1の支持体102f内に蓄えられた熔融ガラスMGが外部に漏出することを防ぎ、また、外部に放熱することを抑制できる。
【0020】
(熔融ガラスの加熱の制御)
移送管104、105、及び、清澄槽102には、それぞれの導管102aの出入口に、熔融ガラスMGの温度を測定する温度測定装置、熔融ガラスMGの流量を測定する流量測定装置が設けられる。温度測定装置、及び、流量測定装置は、制御装置に接続される。制御装置は、主として、CPU、RAM、ROMおよびハードディスク等から構成されるコンピュータである。図7は、制御装置のブロック図である。制御装置は、熔融ガラスMGの比熱、温度測定装置及び流量測定装置が測定した測定値に基づいて、移送管104、105、及び、清澄槽102に熔融ガラスMGが流入することにより持ち込まれる流入熱量、熔融ガラスMGが流出ことにより持ち出される流出熱量を求める。また、制御装置は、電源装置102cから電極102bに流す電流量、冷媒供給装置102eから冷却管102dに流す冷媒量を制御する。制御装置は、電極102bの抵抗値、電源装置102cの電圧値、電流値、冷媒供給装置102eの冷媒量に基づいて、電極から加えられる電極熱量を求める。そして、制御装置は、流入熱量と電極熱量とを合算した熱量から流出熱量を差し引くことにより、移送管104、105、及び、清澄槽102における放熱量を求める。
【0021】
図8は、放熱量の変化を示した図である。同図において、時間0から時間T1までの領域Aは、導管102aから熔融ガラスMGが漏出していない状況における放熱量であり、時間T1から時間T2までの領域Bは、導管102aから熔融ガラスMGが漏出し第1の支持体102fに熔融ガラスMGが浸透している状況における放熱量であり、時間T2以降の領域Cは、第1の支持体102fに熔融ガラスMGが充填した状況における放熱量である。領域Aにおける第1の放熱量H1は、図4に示した状態における放熱量であり、領域Bにおける第2の放熱量H2は、図5に示した状態における放熱量であり、領域Cにおける第3の放熱量H3は、図6に示した状態における放熱量である。領域Aにおいては、導管102a内の熱が導管102aを伝って外部に向かって流れる自然放熱であるため、第1の放熱量H1は、第2の放熱量H2、第3の放熱量H3と比べて一番小さくなる。領域Bにおいては、自然放熱に加えて、導管102aから熔融ガラスMGが漏出し、熔融ガラスMGが断熱ガラスを侵食することによる放熱も加わるため、第2の放熱量H2は、第1の放熱量H1より大きくなる。熔融ガラスMGの熱伝導率は、第1の支持体102fの熱伝導率より高いため、導管102aから熔融ガラスMGが漏出することにより放熱量は増加する。領域Cにおいては、自然放熱に加えて、導管102aから熔融ガラスMGが漏出することによる放熱も加わるが、熔融ガラスMGが第1の支持体102f内に充填された状態であるため、熔融ガラスMGの漏出量は、領域Bの状態と比べて減少する。導管102aから漏出した熔融ガラスMGは、第1の支持体102f内で冷え固まった熔融ガラスMGを押し広げながら外部に向かって進行するため、熔融ガラスMGの漏出量が減少し、漏出速度が遅くなる。このため、第3の放熱量H3は、第2の放熱量H2より小さく、第1の放熱量H1より大きくなる。つまり、導管102aからの放熱量は、第2の放熱量H2>第3の放熱量H3>第1の放熱量H1の関係を満たす。
【0022】
制御装置は、電源装置102cを制御して、図8に示すように変化する放熱量を補うように、電極102bから加える電極熱量を制御する。領域Aの状態において、制御装置は、自然放熱によって失われる第1の放熱量H1を補うように、電極102bに流す電流量を調節し、熔融ガラスMGの加熱量を制御して、導管102a内を流れる熔融ガラスMGの温度が所定の温度プロファイルになるように制御する。これにより、熔融ガラスMGが内包する微小な気泡を除去する清澄が促進される。制御装置は、温度測定装置及び流量測定装置を制御して定期的に測定値を取得して放熱量を求めることにより、導管102aから熔融ガラスMGが漏出しているか否かを判定することができる。制御装置は、放熱量が増加した(領域Aの状態から領域Bの状態に変化した)ことにより、熔融ガラスMGが漏出を検知し、熔融ガラスMGが漏出することによって失われる放熱量を補うように、電極102bに流す電流量を増やして電極熱量を増加させて、導管102a内を流れる熔融ガラスMGの温度が所定の温度プロファイルを維持できるように制御する。また、制御装置は、放熱量が減少した(領域Bの状態から領域Cの状態に変化した)ことにより、熔融ガラスMGが第1の支持体102fに浸透し、漏出した熔融ガラスMGが、導管102a内の熔融ガラスMGの界面位置に達したことを検知できる。制御装置は、領域Bの状態における電流量より減らして電極熱量を減少させて、導管102a内を流れる熔融ガラスMGの温度が所定の温度プロファイルを維持できるように制御する。領域Bの状態から領域Cの状態に変化した後に電流量を減らして電極熱量を減少させないと、熔融ガラスMGの温度が上昇し続けるため、導管102aの損傷が促進するため装置寿命が短くなり、また、所定の温度プロファイルを実現できないため、成形するガラス基板に品質不良が起こる可能性がある。このため、制御装置は、領域Bの状態における電極熱量>領域Cの状態における電極熱量>領域Aの状態における電極熱量の関係を満たすように、電極熱量を制御する。
【0023】
このように、導管102aから漏出する熔融ガラスMGの状態によって、放熱量を補うように電極熱量を制御することにより、所定の温度プロファイルを維持できる。そして、熔融ガラスが内包する微小な気泡を除去する清澄が行われて、成形するガラス基板に品質不良が起こることを抑制できる。また、熔融ガラスMGの漏出状態を検知できるため、装置寿命(操業限界)を予測することができる。
【0024】
本実施形態が適用されるガラス基板は、例えば以下の組成を含む無アルカリガラスからなる。
SiO:55−80質量%
Al:8−20質量%
:0−18質量%
RO 0〜17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)、
R’2O 0〜2モル%(R’2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量)。
【0025】
SiO2は60〜75質量%、さらには、63〜72質量%であることが、熱収縮率を小さくするという観点から好ましい。
ROのうち、MgOが0〜10質量%、CaOが0〜10質量%、SrOが0〜10質量%、BaOが0〜10質量%であることが好ましい。
【0026】
また、SiO2、Al23、B23、及びROを少なくとも含み、モル比((2×SiO2)+Al23)/((2×B23)+RO)は4.5以上であるガラスであってもよい。また、MgO、CaO、SrO、及びBaOの少なくともいずれか含み、モル比(BaO+SrO)/ROは0.1以上であることが好ましい。
【0027】
また、質量%表示のB23の含有率の2倍と質量%表示のROの含有率の合計は、30質量%以下、好ましくは10〜30質量%であることが好ましい。
さらに、熔融ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5質量%含んでいることが好ましい。
AS23、Sb23、PbOを実質的に含まないことが好ましいが、これらを任意に含んでいてもよい。
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5質量%含み、As、Sb及びPbOを実質的に含まないということは必須ではなく任意である。
【0028】
本実施形態で製造されるガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板を含むディスプレイ用ガラス基板に好適である。IGZO(インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素)等の酸化物半導体を使用した酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板及びLTPS(低温度ポリシリコン)半導体を使用したLTPSディスプレイ用ガラス基板に好適である。また、本実施形態で製造されるガラス基板は、アルカリ金属酸化物の含有量が極めて少ないことが求められる液晶ディスプレイ用ガラス基板に好適である。また、有機ELディスプレイ用ガラス基板にも好適である。言い換えると、本実施形態のガラス基板の製造方法は、ディスプレイ用ガラス基板の製造に好適であり、特に、液晶ディスプレイ用ガラス基板の製造に好適である。その他、携帯端末機器などのディスプレイや筐体用のカバーガラス、タッチパネル板、太陽電池のガラス基板やカバーガラスとしても用いることができる。特に、ポリシリコンTFTを用いた液晶ディスプレイ用ガラス基板に好適である。
また、本実施形態で製造されるガラス基板は、カバーガラス、磁気ディスク用ガラス、太陽電池用ガラス基板などにも適用することが可能である。
【0029】
以上、本発明のガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0030】
100 熔解装置
101 熔解槽
102 清澄管
103 撹拌槽
103a 撹拌子
104、105 移送管
106 ガラス供給管
200 成形装置
300 切断装置
MG 熔融ガラス
SG シートガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8