(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配置工程において、前記対向電極上に前記処理液のパドルを形成し、前記複数の直接電極、前記複数の間接電極及び前記隔壁は、前記処理液のパドルに浸漬して配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の電解処理方法。
前記配置工程において、前記対向電極の下方で対向する位置に電極保持板を配置し、前記電極保持板と前記対向電極の間に前記処理液のパドルを形成し、前記複数の直接電極、前記複数の間接電極及び前記隔壁は、前記処理液のパドルに浸漬して配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の電解処理方法。
前記配置工程において、前記処理液を2つの領域に区画しかつ当該処理液の流入出孔を開閉する開閉機構が設けられた隔壁を配置すると共に、前記隔壁を挟んで前記処理液に接触するように前記直接電極と前記対向電極を配置し、
前記被処理イオン移動工程において、前記開閉機構によって前記処理液の流入出孔を閉鎖し、
前記被処理イオン処理工程において、前記開閉機構によって前記処理液の流入出孔を開放することを特徴とする、請求項9に記載の電解処理方法。
前記被処理イオン移動工程において、前記間接電極に電圧を印加し、少なくとも当該間接電極の印加電圧又は静電容量を制御して、前記処理液中の複数の被処理イオンを前記対向電極側に移動させ、
その後、電荷配列工程において、少なくとも前記間接電極の印加電圧又は静電容量を制御して、前記被処理イオン移動工程で移動した量以下の被処理イオンに対応するように、前記対向電極において所定の電荷配列位置に電荷を配列させ、
その後、前記被処理イオン処理工程において、前記直接電極に電流を流し、前記対向電極側に移動した前記複数の被処理イオンのうち、前記所定の電荷配列位置に対応する位置の被処理イオンを酸化又は還元し、
前記電荷配列工程と前記被処理イオン処理工程をこの順で繰り返し行うことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の電解処理方法。
前記被処理イオン移動工程において、前記複数の被処理イオンを前記対向電極側に移動させると共に、前記対向電極において当該複数の被処理イオンに対応する位置に電荷を配列させ、
前記電荷配列工程で前記対向電極に配列させた電荷の量に対する、前記被処理イオン移動工程で前記対向電極に配列させた電荷の量の割合である間引き率は、2のべき乗であることを特徴とする、請求項15又は16に記載の電解処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、本実施の形態では、本発明にかかる電解処理としてめっき処理を行う場合について説明する。
【0049】
<1.第1の実施の形態にかかるめっき処理装置>
図1は、第1の実施の形態にかかる電解処理装置としてのめっき処理装置1の構成の概略を示す縦断面図である。なお、以下の説明で用いる図面において、各構成要素の寸法は、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の寸法に対応していない。
【0050】
めっき処理装置1は、内部に処理液としてのめっき液Mを貯留するめっき槽10を有している。めっき槽10には、その内部(めっき液M)を2つの領域T1、T2に区画する隔壁11が設けられている。隔壁11には、2つの領域T1、T2の間でめっき液Mを流すための流入出孔12が形成されている。なお、めっき液Mとしては、例えば硫酸銅を溶解した溶液が用いられる。すなわち、めっき液M中には、被処理イオンとして銅イオンが含まれている。
【0051】
めっき槽10の内部には、直接電極20、間接電極21及び対向電極22がそれぞれめっき液Mに浸漬して設けられている。直接電極20は、領域T1に配置されている。間接電極21及び対向電極22はそれぞれ領域T2に配置され、間接電極21は隔壁11から離間して配置され、対向電極22は隔壁11に近接して配置されている。すなわち、直接電極20は間接電極21に近接して設けられ、対向電極22からは隔壁11を挟んで離間して配置されている。
【0052】
間接電極21には、当該間接電極21を覆うように絶縁材23が設けられている。また、対向電極22は、めっき処理される被処理体である。
【0053】
間接電極21と対向電極22には、直流電源30が接続されている。間接電極21は、直流電源30の正極側に接続されている。対向電極22は、直流電源30の負極側に接続されている。
【0054】
間接電極21には、スイッチ31が設けられている。スイッチ31は、間接電極21と直流電源30の接続と、間接電極21と直接電極20の接続とを切り替える。スイッチ31の切り替えは、制御部40によって制御される。
【0055】
次に、以上のように構成されためっき処理装置1を用いためっき処理について説明する。
【0056】
図2に示すようにスイッチ31によって、間接電極21と直流電源30(対向電極22)を接続する。そして、間接電極21を陽極とし、対向電極22を陰極として直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成する。そうすると、
図3に示すように間接電極21に正の電荷が蓄積され、間接電極21側に負の荷電粒子である陰イオンAが集まる。一方、対向電極22には負の電荷が蓄積され、対向電極22側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動する。なお、以下の説明において、このように電極に電荷が蓄積される状態を「充電」という場合がある。
【0057】
ここで、充電時、直接電極20と間接電極21は接続されていないため、直接電極20の電位は間接電極21と対向電極22によって形成される電界分布によって決まり、この電界は間接電極21と対向電極22の間に生じる電気力線分布によって決まる。そして、直接電極20の配置が電気力線に沿って間接電極21から遠いほど、当該直接電極20の電位は低くなる。本実施の形態では、直接電極20は対向電極22に近接し、間接電極21から離間して配置されているので、直接電極20の電位はゼロに近い。なお、直接電極20の電位は完全にはゼロにならないため、直接電極20には電位相当分の銅イオンCが移動する。そうすると、充電中にも、直接電極20と対向電極22において電荷交換(酸化還元)が進む。
【0058】
また、直接電極20と間接電極21の間には隔壁11が設けられているので、この隔壁11が物理的及び電気的な抵抗になり、直接電極20の電荷量が少なくなる。このため、直接電極20と対向電極22における電荷交換(酸化還元)の電荷量を少なくすることができる。
【0059】
さらに、直接電極20と対向電極22は、充電時に直接電極20と対向電極22の間を流れる電流が限界電流密度以下となるように配置されている。限界電流密度は、めっき処理で単位時間当たりに還元される銅イオンCの量に対して、供給される銅イオンCの量が限界に達する電流密度であり、すなわち限界電流はめっき処理可能な最大電流である。そうすると、充電時に対向電極22の表面には銅イオンCの移動(供給)不足が発生せず、水の電気分解が行われるのを抑制することができる。その結果、気泡の発生を抑制して、後述する銅めっき50中にボイドが発生することも抑制することができる。
【0060】
また、直接電極20が陰極になるのを回避するため、直接電極20をグランドに接続せず、電気的にフローティング状態にしている。
【0061】
そして、スイッチ31による間接電極21と直流電源30の接続は、間接電極21と対向電極22に十分な電荷が蓄積されるまで、すなわち満充電されるまで行われる。この満充電における間接電極21と対向電極22の電荷量は等価である。そして、上述したように充電時には対向電極22における電荷交換が、水の電気分解を抑制しつつ高速に行われるので、対向電極22の表面に銅イオンCが均一に配列される。また、対向電極22の表面で水の電気分解が抑制されるので、間接電極21と対向電極22との間に電圧を印可する際の電界を高くすることができる。この高電界によって銅イオンCの移動を速くできる。さらに、この電界を任意に制御することで、対向電極22表面に配列される銅イオンCも任意に制御される。
【0062】
その後、
図4に示すようにスイッチ31を切り替え、間接電極21と直流電源30の接続を切断し、間接電極21と直接電極20を接続する。そうすると、
図5に示すように間接電極21に蓄積された正の電荷が直接電極20に移動し、直接電極20側に集まった陰イオンAの電荷が交換されて、陰イオンAは酸化される。これに伴い、対向電極22の表面に配列されている銅イオンCの電荷が交換されて、銅イオンCが還元される。そして、
図4に示すように、対向電極22の表面に銅めっき50が析出する。なお、以下の説明において、このように電極間で電荷が移動する状態を「放電」という場合がある。
【0063】
ここで、充電時に直接電極20と対向電極22において電荷交換される電荷量を、電界により移動する全電荷量のN分の1(1/N)とすると、放電時には、充電時の電荷量のN倍の電荷量の交換が可能となる。すなわち、水の電気分解を抑制しつつ、多量の銅イオンCを還元することができる。したがって、めっきレートを向上させて、めっき処理を高速に行うことができる。
【0064】
なお、充電時には間接電極21と対向電極22の電荷量は等価であるので、放電時に電荷交換される量も等価となる。
【0065】
そして、対向電極22の表面に十分な銅イオンCが集積し、均一に配列された状態で還元されるので、対向電極22の表面に銅めっき50を均一に析出させることができる。結果的に、銅めっき50における結晶の密度が高くなり、品質の良い銅めっき50を形成することができる。
【0066】
その後、
図6に示すようにスイッチ31を切り替えて間接電極21と直流電源30を接続し、対向電極22側に銅イオンCを移動させて集積させる。そして、対向電極22の表面に銅イオンCが均一に配列されると、スイッチ31を切り替えて間接電極21と直接電極20を接続し、銅イオンCを還元させる。
【0067】
このように充電時の銅イオンCの移動集積と放電時の銅イオンCの還元が繰り返し行われることで、
図7に示すように銅めっき50が所定の膜厚に成長する。こうして、めっき処理装置1における一連のめっき処理が終了する。
【0068】
以上の実施の形態によれば、充電時に銅イオンCを移動させる際、直接電極20と対向電極22の間を流れる電流が限界電流密度以下となるので、対向電極22の表面で水の電気分解が行われることがなく、その結果、気泡の発生を抑制して、銅めっき50中にボイドが発生することも抑制することができる。したがって、充電時に間接電極21と対向電極22によって形成される電界を高くすることができる。そして、放電時には、充電時に交換される電荷量の数倍の電荷量の交換が可能となり、水の電気分解を抑制しつつ、多量の銅イオンCを還元することができる。したがって、めっき処理のレートを向上させて、めっき処理を高速に行うことができる。
【0069】
また、直接電極20は対向電極22に近接し、間接電極21から離間して配置されているので、直接電極20の電位は低く、ゼロに近くなる。しかも、直接電極20と間接電極21の間の隔壁11が抵抗となる。このため、充電時に直接電極20と対向電極22において電荷交換(酸化還元)が進むものの、その電荷量を少なくすることができる。そうすると、充電時においては、対向電極22の表面に銅イオンCを均一に配列させた状態で、当該銅イオンCが還元される。したがって、めっき処理を均一に行うことができ、銅めっき50の膜厚を均一にすることができる。しかも、銅イオンCが均一に配置されるので、銅めっき50中の結晶を密に配置することができる。したがって、めっき処理後の銅めっき50の品質を向上させることができる。
【0070】
また、間接電極21に十分な電荷が蓄積され、対向電極22の表面に銅イオンCが均一に配列された状態で、スイッチ31により充電から放電に切り替えられるので、対向電極22側に十分な銅イオンCが集積した状態で銅イオンCの還元を行うことができる。このため、陽極と陰極間に水の電気分解に消費される電流を流す必要がなく、銅イオンCを効率よく還元できる。
【0071】
また、充電時に間接電極21に電圧を印可する際の電界を高くすることができ、銅イオンCの移動を速くさせて、めっき処理のレートを向上させることができる。しかも、めっき処理のレートを向上させるために大掛かりな機構が必要なく、装置構成を簡易化することができる。
【0072】
本実施の形態のめっき処理装置1において、直接電極20と間接電極21の間の抵抗を大きくするため、隔壁11を設けていたが、これに代えて細孔質壁又は配管を設けてもよい。
【0073】
図8に示すように、隔壁11に代えて、めっき槽10には、その内部を2つの領域T1、T2に区画する細孔質壁60が設けられている。細孔質壁60には複数の細孔が形成され、当該複数の細孔を介してめっき液Mを流すことができるようになっている。かかる場合でも、細孔質壁60が物理的及び電気的な抵抗になり、直接電極20と対向電極22における電荷交換(酸化還元)の電荷量を少なくすることができる。
【0074】
また、
図9に示すように、めっき槽10はめっき槽10a(領域T1)とめっき槽10b(領域T2)に分割される。めっき槽10a、10b間には、これらめっき槽10a、10bを接続する配管70が設けられている。かかる場合でも、配管70が物理的及び電気的な抵抗になり、直接電極20と対向電極22における電荷交換(酸化還元)の電荷量を少なくすることができる。
【0075】
<2.第2の実施の形態にかかるめっき処理装置>
次に、めっき処理装置の第2の実施の形態について説明する。
図10は、第2の実施の形態にかかるめっき処理装置100の構成の概略を示す縦断面図である。
【0076】
めっき処理装置100は、内部にめっき液Mを貯留するめっき槽110を有している。めっき槽110の内部には、直接電極120、間接電極121及び対向電極122がそれぞれめっき液Mに浸漬して設けられている。直接電極120は、対向電極122に近接して配置されている。間接電極121は、直接電極120及び対向電極122から離間して配置されている。
【0077】
間接電極121には、当該間接電極121を覆うように絶縁材123が設けられている。また、対向電極122は、めっき処理される被処理体である。
【0078】
間接電極121と対向電極122には、直流電源130が接続されている。間接電極121は、直流電源130の正極側に接続されている。対向電極122は、直流電源130の負極側に接続されている。
【0079】
間接電極121には、第1のスイッチ131が設けられている。第1のスイッチ131は、間接電極121と直流電源130の接続と、間接電極121と直接電極120の接続とを切り替える。
【0080】
直接電極120には、第2のスイッチ132が設けられている。第2のスイッチ132は、直接電極120と間接電極121の接続と、直接電極120と対向電極122の接続とを切り替える。
【0081】
次に、以上のように構成されためっき処理装置100を用いためっき処理について説明する。
【0082】
先ず、充電時、
図11に示すように第1のスイッチ131によって間接電極121と直流電源130を接続すると共に、第2のスイッチ132によって直接電極120と対向電極122を接続する。そして、間接電極121を陽極とし、対向電極122を陰極として直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成する。そうすると、
図12に示すように間接電極121に正の電荷が蓄積され、間接電極121側に負の荷電粒子である陰イオンAが集まる。一方、対向電極122及び直接電極120にはそれぞれ負の電荷が蓄積され、対向電極122側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動する。
【0083】
この充電時では、直接電極120と対向電極122が接続されているので、直接電極120と対向電極122は等電位となる。このため、直接電極120と対向電極122における電荷交換(酸化還元)を抑制することができる。
【0084】
そして、第1のスイッチ131による間接電極121と直流電源130の接続、及び第2のスイッチ132による直接電極120と対向電極122の接続は、間接電極121と対向電極122に十分な電荷が蓄積されるまで、すなわち満充電されるまで行われる。上述したように充電時には対向電極122における電荷交換が抑制されるので、対向電極122の表面に銅イオンCが均一に配列される。また、対向電極122の表面で銅イオンCの電荷交換が行われず、水の電気分解も抑制されるので、間接電極121と対向電極122との間に電圧を印可する際の電界を高くすることができる。この高電界によって銅イオンCの移動を速くできる。さらに、この電界を任意に制御することで、対向電極122表面に配列される銅イオンCも任意に制御される。
【0085】
その後、放電時において、
図13に示すように第1のスイッチ131によって間接電極121との接続を直流電源130から直接電極120に切り替えると共に、第2のスイッチ132によって直接電極120との接続を対向電極122から間接電極121に切り替えて、直接電極120と間接電極121を接続する。そうすると、
図14に示すように間接電極121に蓄積された正の電荷が直接電極120に移動し、直接電極120側に集まった陰イオンAの電荷が交換されて、陰イオンAは酸化される。これに伴い、対向電極122の表面に配列されている銅イオンCの電荷が交換されて、銅イオンCが還元される。そして、
図13に示すように、対向電極122の表面に銅めっき150が析出する。
【0086】
そして、対向電極122の表面に十分な銅イオンCが集積し、均一に配列された状態で還元されるので、対向電極122の表面に銅めっき150を均一に析出させることができる。結果的に、銅めっき150における結晶の密度が高くなり、品質の良い銅めっき150を形成することができる。
【0087】
ここで、充電時には直接電極120と対向電極122が接続されるので、直接電極120の表面積と対向電極122の表面積が等しい場合、直接電極120と対向電極122の電荷量は等価となり、さらに間接電極121の電荷量はこれら直接電極120と対向電極122の電荷量の合計となる。すなわち、直接電極120と対向電極122にはそれぞれ電荷量Qの負の電荷が蓄積され、間接電極121には電荷量2Qの正の電荷が蓄積される。そして、放電時には間接電極121から直接電極120に電荷量2Qの正の電荷が移動し、当該移動した電荷量Qの正の電荷は直接電極120の電荷量Qの負の電荷で中和されて、直接電極120には電荷量Qの正の電荷が残存することになる。さらに、この直接電極120に残存する電荷量Qの正の電荷は、放電時に電荷交換が完了し、直接電極120に電荷は残存しない。そこで、この中和により無駄な電気が消費されるのでこれを低減するため、直接電極120の表面積を小さくしてもよいし、或いは、上述したように隔壁11や細孔質壁60、配管70を設けてもよい。
【0088】
そして、充電時の銅イオンCの移動集積と放電時の銅イオンCの還元が繰り返し行われることで、銅めっき150が所定の膜厚に成長する。こうして、めっき処理装置100における一連のめっき処理が終了する。
【0089】
本実施の形態によれば、充電時に銅イオンCを移動させる際、直接電極120と対向電極122を接続しているので、直接電極120と対向電極122における電荷交換を抑制することができ、銅イオンCの還元を抑制することができる。そうすると、充電時においては、対向電極122の表面に銅イオンCを均一に配列させた状態で、当該銅イオンCが還元される。したがって、めっき処理を均一に行うことができる。
【0090】
なお、直接電極120の表面積は対向電極122の表面積より小さいのが好ましい。かかる場合、直接電極120の静電容量(C)を小さくして、電荷量(Q=CV)を小さくすることができ、放電時の電荷中和による無駄な電力消費を抑制することができる。
【0091】
<3.第3の実施の形態にかかるめっき処理装置>
次に、めっき処理装置の第3の実施の形態について説明する。
図15は、第3の実施の形態にかかるめっき処理装置200の構成の概略を示す縦断面図である。
【0092】
第3の実施の形態のめっき処理装置200は、第1の実施の形態のめっき処理装置1と第2の実施の形態のめっき処理装置100を組み合わせた構成を有している。すなわち、めっき処理装置200は、めっき処理装置1においてスイッチ31の構成を、めっき処理装置100の第1のスイッチ131及び第2のスイッチ132の構成に置き換えたものである。
【0093】
めっき処理装置200において、めっき槽210、隔壁211、流入出孔212、直接電極220、間接電極221、対向電極222、絶縁材223は、それぞれめっき処理装置1におけるめっき槽10、隔壁11、流入出孔12、直接電極20、間接電極21、対向電極22、絶縁材23に対応している。
【0094】
また、めっき処理装置200において、直流電源230、第1のスイッチ231、及び第2のスイッチ232は、それぞれめっき処理装置100における直流電源130、第1のスイッチ131、及び第2のスイッチ132に対応している。
【0095】
なお、めっき処理装置200の各部材の構成は、上記対応する部材の構成と同様であるので説明を省略する。
【0096】
次に、以上のように構成されためっき処理装置200を用いためっき処理について説明する。
【0097】
先ず、充電時、
図16に示すように第1のスイッチ231によって間接電極221と直流電源230を接続すると共に、第2のスイッチ232によって直接電極220と対向電極222を接続する。そして、間接電極221を陽極とし、対向電極222を陰極として直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成する。そうすると、間接電極221に正の電荷が蓄積され、間接電極221側に負の荷電粒子である陰イオンAが集まる。一方、対向電極222及び直接電極220にはそれぞれ負の電荷が蓄積され、対向電極222側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動する。
【0098】
この充電時では、直接電極220と対向電極222が接続されているので、直接電極220と対向電極222は等電位となる。このため、直接電極220と対向電極222における電荷交換(酸化還元)を抑制することができる。しかも、直接電極220と間接電極221の間には隔壁211が設けられているので、この隔壁211が物理的及び電気的な抵抗になり、直接電極220の電荷量が少なくなる。このため、放電時の電荷中和による無駄な電力消費を抑制することができる。なお、第1の実施の形態と同様に、直接電極220と間接電極221の間の抵抗を大きくするため、隔壁211に代えて細孔質壁や配管を設けてもよい。
【0099】
そして、第1のスイッチ231による間接電極221と直流電源230の接続、及び第2のスイッチ232による直接電極220と対向電極222の接続は、間接電極221と対向電極222に十分な電荷が蓄積されるまで、すなわち満充電されるまで行われる。上述したように充電時には対向電極222における電荷交換が抑制されるので、対向電極222の表面に銅イオンCが均一に配列される。また、対向電極222の表面で銅イオンCの電荷交換が行われず、水の電気分解も抑制されるので、間接電極221と対向電極222との間に電圧を印可する際の電界を高くすることができる。この高電界によって銅イオンCの移動を速くできる。さらに、この電界を任意に制御することで、対向電極222表面に配列される銅イオンCも任意に制御される。
【0100】
その後、放電時において、
図17に示すように第1のスイッチ231によって間接電極221との接続を直流電源230から直接電極220に切り替えると共に、第2のスイッチ232によって直接電極220との接続を対向電極222から間接電極221に切り替えて、直接電極220と間接電極221を接続する。そうすると、間接電極221に蓄積された正の電荷が直接電極220に移動し、間接電極221側に集まった陰イオンAの電荷が交換されて、陰イオンAは酸化される。これに伴い、対向電極222の表面に配列されている銅イオンCの電荷が交換されて、銅イオンCが還元される。そして、対向電極222の表面に銅めっき250が析出する。
【0101】
そして、対向電極222の表面に十分な銅イオンCが集積し、均一に配列された状態で還元されるので、対向電極222の表面に銅めっき250を均一に析出させることができる。結果的に、銅めっき250における結晶の密度が高くなり、品質の良い銅めっき250を形成することができる。
【0102】
そして、充電時の銅イオンCの移動集積と放電時の銅イオンCの還元が繰り返し行われることで、銅めっき250が所定の膜厚に成長する。こうして、めっき処理装置200における一連のめっき処理が終了する。
【0103】
第3の実施の形態においても、第2の実施の形態と同様の効果を享受できる。すなわち、充電時に銅イオンCを移動させる際、直接電極220と対向電極222を接続しているので、直接電極220と対向電極222における電荷交換を抑制することができ、銅イオンCの還元を抑制することができる。しかも、直接電極220と間接電極221の間には隔壁211が設けられているので、直接電極220の電荷量が少なくなり、放電時の電荷中和による無駄な電力消費を抑制することができる。そうすると、充電時においては、対向電極222の表面に銅イオンCを均一に配列させた状態で、当該銅イオンCが還元される。したがって、めっき処理を均一に行うことができる。
【0104】
<4.第4の実施の形態にかかるめっき処理装置>
次に、めっき処理装置の第4の実施の形態について説明する。
図18は、第4の実施の形態にかかるめっき処理装置300の構成の概略を示す縦断面図である。
【0105】
めっき処理装置300は、内部に処理液としてのめっき液Mを貯留するめっき槽310を有している。めっき槽310には、その内部を2つの領域T1、T2に区画する隔壁311が設けられている。隔壁311には、2つの領域T1、T2の間でめっき液Mを流すための流入出孔312が形成されている。また、隔壁311の下部には、後述する対向電極322が設けられるスペースが形成されている。なお、第1の実施の形態と同様に、直接電極320と間接電極321の間の抵抗を大きくするため、隔壁311に代えて細孔質壁や配管を設けてもよい。
【0106】
めっき槽310の内部には、直接電極320、間接電極321及び対向電極322がそれぞれめっき液Mに浸漬して設けられている。直接電極320は、領域T1に配置されている。間接電極321は、領域T2において隔壁311から離間して配置されている。対向電極322は、隔壁311の下部において、領域T1と領域T2の間に延伸して設けられている。すなわち、直接電極320及び間接電極321はそれぞれ鉛直方向に延伸し、対向電極322は水平方向に延伸している。
【0107】
間接電極321には、当該間接電極321を覆うように絶縁材323が設けられている。また、対向電極322は、めっき処理される被処理体である。
【0108】
間接電極321と対向電極322には、直流電源330が接続されている。間接電極321は、直流電源330の正極側に接続されている。対向電極322は、直流電源330の負極側に接続されている。
【0109】
間接電極321には、スイッチ331が設けられている。スイッチ331は、間接電極321と直流電源330の接続と、間接電極321と直接電極320の接続とを切り替える。
【0110】
次に、以上のように構成されためっき処理装置300を用いためっき処理について説明する。
【0111】
先ず、充電時、
図19に示すようにスイッチ331によって、間接電極321と直流電源330(対向電極322)を接続する。そして、間接電極321を陽極とし、対向電極322を陰極として直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成する。そうすると、間接電極321に正の電荷が蓄積され、間接電極321側に負の荷電粒子である陰イオンAが集まる。一方、対向電極322には負の電荷が蓄積され、対向電極322側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動する。
【0112】
この際、第1の実施の形態と同様に、隔壁311が物理的及び電気的な抵抗になり、直接電極320と対向電極322における電荷交換(酸化還元)の電荷量を少なくすることができる。また、直接電極320と対向電極322は、充電時に直接電極320と対向電極322の間を流れる電流が限界電流密度以下となるように配置されている。したがって、充電時に対向電極322の表面には銅イオンCの移動(供給)不足が発生せず、水の電気分解が行われるのを抑制することができる。その結果、気泡の発生を抑制して、後述する銅めっき350中にボイドが発生することも抑制することができる。
【0113】
そして、スイッチ331による間接電極321と直流電源330の接続は、間接電極321と対向電極322に十分な電荷が蓄積されるまで、すなわち満充電されるまで行われる。この満充電における間接電極321と対向電極322の電荷量は等価である。そして、上述したように充電時には対向電極322における電荷交換が、水の電気分解を抑制しつつ高速に行われるので、対向電極322の表面に銅イオンCが均一に配列される。また、対向電極322の表面で水の電気分解が抑制されるので、間接電極321と対向電極322との間に電圧を印可する際の電界を高くすることができる。この高電界によって銅イオンCの移動を速くできる。さらに、この電界を任意に制御することで、対向電極322表面に配列される銅イオンCも任意に制御される。
【0114】
その後、放電時において、
図20に示すようにスイッチ331を切り替え、間接電極321と直流電源330の接続を切断し、間接電極321と直接電極320を接続する。そうすると、間接電極321に蓄積された正の電荷が直接電極320に移動し、直接電極320側に集まった陰イオンAの電荷が交換されて、陰イオンAは酸化される。これに伴い、対向電極322の表面に配列されている銅イオンCの電荷が交換されて、銅イオンCが還元される。そして、対向電極322の表面に銅めっき350が析出する。
【0115】
この際、第1の実施の形態と同様に、充電時より多い電荷量の交換が可能となり、水の電気分解を抑制しつつ、多量の銅イオンCを還元することができる。したがって、めっきレートを向上させて、めっき処理を高速に行うことができる。
【0116】
そして、対向電極322の表面に十分な銅イオンCが集積し、均一に配列された状態で還元されるので、対向電極322の表面に銅めっき350を均一に析出させることができる。結果的に、銅めっき350における結晶の密度が高くなり、品質の良い銅めっき350を形成することができる。
【0117】
そして、充電時の銅イオンCの移動集積と放電時の銅イオンCの還元が繰り返し行われることで、銅めっき350が所定の膜厚に成長する。こうして、めっき処理装置1における一連のめっき処理が終了する。
【0118】
第4の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を享受できる。
【0119】
本実施の形態のめっき処理装置300において、
図21に示すように直接電極320と間接電極321はそれぞれ複数設けられていてもよい。直接電極320と間接電極321は交互に水平方向に並ぶように配置されている。
【0120】
隔壁311は、直接電極320と間接電極321の間において、直接電極320に接触して設けられている。すなわち、直接電極320の両側面には、一対の隔壁311、311が対向して設けられている。流入出孔312は、これら一対の隔壁311、311の下端部において開口して形成されている。
【0121】
対向電極322は、複数の直接電極320と複数の間接電極321が配置される方向(水平方向)に、これら複数の直接電極320と複数の間接電極321をカバーするように設けられている。すなわち、複数の直接電極320及び複数の間接電極321はそれぞれ鉛直方向に延伸し、対向電極322は水平方向に延伸している。
【0122】
この
図21に示しためっき処理装置300におけるめっき処理は、
図18に示しためっき処理装置300で行われるめっき処理と同様である。すなわち、先ず、充電時、
図22に示すようにスイッチ331によって、複数の間接電極321と直流電源330(対向電極322)を接続する。そして、複数の間接電極321を陽極とし、対向電極322を陰極として直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成する。そうすると、複数の間接電極321に正の電荷が蓄積され、複数の間接電極321側に負の荷電粒子である陰イオンAが集まる。一方、対向電極322には負の電荷が蓄積され、対向電極322側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動する。
【0123】
その後、放電時において、
図23に示すようにスイッチ331を切り替え、間接電極321と直流電源330の接続を切断し、間接電極321と直接電極320を接続する。そうすると、間接電極321に蓄積された正の電荷が直接電極320に移動し、直接電極320側に集まった陰イオンAの電荷が交換されて、陰イオンAは酸化される。これに伴い、対向電極322の表面に配列されている銅イオンCの電荷が交換されて、銅イオンCが還元される。そして、対向電極322の表面に銅めっき350が析出する。
【0124】
この放電時では、一の対向電極322に対して、直接電極320が水平方向に複数並べて配置されているので、複数の直接電極320における電界が均一になり、電荷交換を均一に行うことができる。このため、より均一性の高い銅めっき350を形成することができる。
【0125】
なお、
図21に示しためっき処理装置300では、めっき槽310内にめっき液Mを貯留していたが、
図24及び
図25に示すようにめっき槽310を省略し、めっき液Mのパドルを形成してもよい。
【0126】
図24に示すめっき処理装置300では、対向電極322上には、めっき液Mのパドルが形成される。めっき液Mのパドルの形成方法は、任意であるが、例えば配管(図示せず)を介して対向電極322上にめっき液Mを供給することでパドルが形成される。その後、このめっき液Mのパドルに複数の直接電極320、複数の間接電極321、及び複数の隔壁311が配置される。
【0127】
また、
図25に示すめっき処理装置300では、対向電極322の下方において、当該対向電極322に対向するように電極保持板360が配置される。その後、電極保持板360と対向電極322の間に、めっき液Mのパドルが形成される。その後、このめっき液Mのパドルに複数の直接電極320、複数の間接電極321、及び複数の隔壁311が配置される。
【0128】
図24及び
図25に示したいずれのめっき処理装置300においても、
図21に示しためっき処理装置300と同様の効果を享受することができる。
【0129】
<5.第5の実施の形態にかかるめっき処理装置>
次に、めっき処理装置の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態のめっき処理装置では、充電時に直接電極とめっき液の電気的な接続を切断し、放電時に直接電極とめっき液を電気的に接続する。かかるめっき処理を実現するめっき処理装置の構成は種々考えられ、以下、
図26〜
図33に基づいて4つのめっき処理装置を例示して説明する。
【0130】
1つ目のめっき処理装置について説明する。
図26及び
図27は、第5の実施の形態にかかる第1のめっき処理装置400の構成の概略を示す縦断面図である。
【0131】
第1のめっき処理装置400は、内部にめっき液Mを貯留するめっき槽410を有している。めっき槽410には、その内部を2つの領域T1、T2に区画する隔壁411が設けられている。隔壁411には、2つの領域T1、T2の間でめっき液Mを流すための流入出孔を開閉する開閉機構412が設けられている。なお、開閉機構412の構成は特に限定されるものではないが、例えば電磁弁が用いられる。
【0132】
めっき槽10の内部には、直接電極420、間接電極421及び対向電極422がそれぞれめっき液Mに浸漬して設けられている。直接電極420は、領域T1に配置されている。間接電極421及び対向電極422はそれぞれ領域T2に配置され、間接電極421は隔壁411から離間して配置され、対向電極422は隔壁411に近接して配置されている。直接電極420は間接電極421に近接して設けられ、対向電極422からは隔壁411を挟んで離間して配置されている。
【0133】
間接電極421には、当該間接電極421を覆うように絶縁材423が設けられている。また、対向電極422は、めっき処理される被処理体である。
【0134】
直接電極420、間接電極421及び対向電極422には、直流電源430が接続されている。直接電極420と間接電極421は、それぞれ直流電源430の正極側に接続されている。対向電極422は、直流電源430の負極側に接続されている。
【0135】
間接電極421には、スイッチ431が設けられている。スイッチ431は、間接電極421と直流電源430の接続と、間接電極421と直接電極420の接続とを切り替える。
【0136】
次に、以上のように構成された第1のめっき処理装置400を用いためっき処理について説明する。
【0137】
先ず、充電時、
図26に示すようにスイッチ431によって、間接電極421と直流電源430(対向電極422)を接続する。そして、間接電極421を陽極とし、対向電極422を陰極として直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成する。そうすると、間接電極421に正の電荷が蓄積され、間接電極421側に負の荷電粒子である陰イオンAが集まる。一方、対向電極422には負の電荷が蓄積され、対向電極422側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動する。
【0138】
この充電時、開閉機構412によって領域T1、T2間のめっき液Mの流入出孔を閉鎖する。すなわち、領域T1、T2を分離する。そうすると、直接電極420と対向電極422の間に電流は流れず、直接電極420と対向電極422における電荷交換(酸化還元)を抑制することができる。
【0139】
そして、対向電極422の表面に銅イオンCが均一に配列される。対向電極422の表面で銅イオンCの電荷交換が行われず、水の電気分解も抑制されるので、間接電極421と対向電極422との間に電圧を印可する際の電界を高くすることができる。この高電界によって銅イオンCの移動を速くできる。さらに、この電界を任意に制御することで、対向電極422表面に配列される銅イオンCも任意に制御される。
【0140】
その後、十分な銅イオンCが対向電極422側に移動して集積すると、放電時、
図27に示すようにスイッチ431を切り替え、間接電極421と直流電源430の接続を切断し、間接電極421と直接電極420を接続する。また、開閉機構412によって領域T1、T2間のめっき液Mの流入出孔を開放する。すなわち、領域T1、T2を接続する。そうすると、間接電極421に蓄積された正の電荷が直接電極420に移動し、間接電極421側に集まった陰イオンAの電荷が交換されて、陰イオンAは酸化される。これに伴い、対向電極422の表面に配列されている銅イオンCの電荷が交換されて、銅イオンCが還元される。そして、対向電極422の表面に銅めっき450が析出する。
【0141】
対向電極422の表面に十分な銅イオンCが集積し、均一に配列された状態で還元されるので、対向電極422表面に銅めっき450を均一に析出させることができる。結果的に、銅めっき450における結晶の密度が高くなり、品質の良い銅めっき450を形成することができる。
【0142】
そして、充電時の銅イオンCの移動集積と放電時の銅イオンCの還元が繰り返し行われることで、銅めっき450が所定の膜厚に成長する。こうして、めっき処理装置1における一連のめっき処理が終了する。
【0143】
次に、2つ目のめっき処理装置について説明する。
図28及び
図29は、第5の実施の形態にかかる第2のめっき処理装置400の構成の概略を示す縦断面図である。
【0144】
第2のめっき処理装置400は、上述した第1のめっき処理装置400において、隔壁411及び開閉機構412を省略し、直接電極420の構成を変更したものである。
【0145】
第2のめっき処理装置400は、めっき液Mに対し直接電極420を進退自在に移動させる移動機構460を有している。すなわち、移動機構460によって直接電極420は昇降してめっき液Mから分離され、或いはめっき液Mに接触するようになっている。なお、第2のめっき処理装置400の他の構成は、第1のめっき処理装置400の他の構成と同じである。
【0146】
そして、充電時、
図28に示すようにスイッチ431によって、間接電極421と直流電源430(対向電極422)を接続し、間接電極421と対向電極422の間に直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成し、対向電極422側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動させる。この充電時、移動機構460によって直接電極420をめっき液Mの外部に上昇させて、当該直接電極420とめっき液Mを分離する。そうすると、直接電極420と対向電極422の間に電流は流れず、直接電極420と対向電極422における電荷交換(酸化還元)を抑制することができる。
【0147】
その後、放電時、
図29に示すようにスイッチ431を切り替え、間接電極421と直流電源430の接続を切断し、間接電極421と直接電極420を接続する。また、移動機構460によって直接電極420をめっき液Mの内部に下降させ、当該直接電極420とめっき液Mを接触させる。そうすると、対向電極422の表面に配列されている銅イオンCの電荷が交換されて、銅イオンCが還元される。そして、対向電極422の表面に銅めっき450が析出する。
【0148】
次に、3つ目のめっき処理装置について説明する。
図30及び
図31は、第5の実施の形態にかかる第のめっき処理装置400の構成の概略を示す縦断面図である。
【0149】
第3のめっき処理装置400は、上述した第1のめっき処理装置400において、隔壁411及び開閉機構412を省略し、直接電極420の構成を変更したものである。
【0150】
第3のめっき処理装置400において、直接電極420はめっき液Mの外部に配置されている。また、第3のめっき処理装置400は、クーロン力(静電気力)によってめっき液Mを移動(昇降)させる流路470を有している。クーロン力は、例えばめっき液Mの外部から当該めっき液Mに電界を形成して発生させる。流路470の一端部470aは、めっき液Mに浸漬するように位置している。流路470の他端部470bは、めっき液Mが昇降した際に直接電極420に接触するように位置している。なお、第3のめっき処理装置400の他の構成は、第1のめっき処理装置400の他の構成と同じである。
【0151】
そして、充電時、
図30に示すようにスイッチ431によって、間接電極421と直流電源430(対向電極422)を接続し、間接電極421と対向電極422の間に直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成し、対向電極422側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動させる。この充電時、めっき槽410に貯留されためっき液Mを、流路470を介して上昇させず、直接電極420に接触させない。そして、直接電極420とめっき液Mを分離する。そうすると、直接電極420と対向電極422の間に電流は流れず、直接電極420と対向電極422における電荷交換(酸化還元)を抑制することができる。
【0152】
その後、放電時、
図31に示すようにスイッチ431を切り替え、間接電極421と直流電源430の接続を切断し、間接電極421と直接電極420を接続する。また、めっき槽410に貯留されためっき液Mを、クーロン力により流路470を介して上昇させ、直接電極420に接触させる。そして、直接電極420とめっき液Mを接触させる。そうすると、対向電極422の表面に配列されている銅イオンCの電荷が交換されて、銅イオンCが還元される。そして、対向電極422の表面に銅めっき450が析出する。
【0153】
次に、4つ目のめっき処理装置について説明する。
図32及び
図33は、第5の実施の形態にかかる第4のめっき処理装置400の構成の概略を示す縦断面図である。
【0154】
第4のめっき処理装置400は、上述した第1のめっき処理装置400において、隔壁411及び開閉機構412を省略し、直接電極420の構成を変更したものである。
【0155】
第4のめっき処理装置400において、直接電極420はめっき液Mの外部に配置されている。また、第4のめっき処理装置400は、直接電極420に接触して帯電した液滴Dを供給する液供給機構480を有している。液供給機構480は、例えばノズル(図示せず)を有し、当該ノズルから液滴Dを供給する。この液供給機構480から供給される液滴Dは、めっき液Mと同じ成分を有する。なお、第4のめっき処理装置400の他の構成は、第1のめっき処理装置1の他の構成と同じである。
【0156】
そして、充電時、
図32に示すようにスイッチ431によって、間接電極421と直流電源430(対向電極422)を接続し、間接電極421と対向電極422の間に直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成し、対向電極422側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動させる。この充電時、液供給機構480からの液滴Dの供給を停止する。そして、直接電極420とめっき液Mを分離する。そうすると、直接電極420と対向電極422の間に電流は流れず、直接電極420と対向電極422における電荷交換(酸化還元)を抑制することができる。
【0157】
その後、放電時、
図33に示すようにスイッチ431を切り替え、間接電極421と直流電源430の接続を切断し、間接電極421と直接電極420を接続する。また、液供給機構480から直接電極420に接触して帯電した液滴Dをめっき液Mに供給する。そして、直接電極420とめっき液Mを間接的に接触させる。そうすると、対向電極422の表面に配列されている銅イオンCの電荷が交換されて、銅イオンCが還元される。そして、対向電極422の表面に銅めっき450が析出する。
【0158】
第5の実施の形態の第1のめっき処理装置400〜第4のめっき処理装置400のいずれを用いた場合でも、第1の実施の形態と同様の効果を享受できる。すなわち、充電時に銅イオンCを移動させる際、直接電極420とめっき液Mの電気的な接続を切断しているので、直接電極420と対向電極422における電荷交換を抑制することができ、銅イオンCの還元を抑制することができる。そうすると、充電時においては、対向電極422の表面に銅イオンCを均一に配列させた状態で、当該銅イオンCが還元される。したがって、めっき処理を均一に行うことができる。
【0159】
なお、第5の実施の形態において、めっき処理装置400の構成は上述した4つの例に限定されない。めっき処理装置400は、充電時に直接電極420とめっき液Mの電気的な接続を切断し、放電時に直接電極420とめっき液Mを電気的に接続する構成であれば、任意の構成を取り得る。
【0160】
<6.めっきの下地膜の剥がれ防止>
以上のめっき処理装置において、被処理体としての対向電極に銅めっきを形成する前に、当該対向電極の表面には所定の下地膜が形成されている場合がある。例えば半導体装置において、銅めっきからなる配線を形成する場合、半導体基板(対向電極)の表面には例えばコバルトめっきからなるバリア膜(下地膜)が形成されている。この下地膜の金属のイオン化傾向が、めっき液の銅のイオン化傾向より小さい場合、無電解の置換めっきが行われ、当該下地膜が剥がれる場合がある。
【0161】
一方、この置換めっきを防止するためには適正な電圧を印加する必要があるが、この電圧によって電解めっきが進行し、電解めっき処理が均一に行われない場合がある。すなわち、上述しためっき処理装置において、例えば対向電極をめっき液中に配置する際など、対向電極に集積しためっき液の銅イオンが不均一に分布している状態や、電界が不安定な状態で電解めっきを行うと、めっき金属が不均一に析出し、めっき処理が均一に行われない。したがって、対向電極をめっき液中に配置する際には、無電解の置換めっきを防止しつつ、電解めっきも進行させないようにする必要がある。
【0162】
そこで、例えば第1の実施の形態のめっき処理装置1において、対向電極22をめっき液M中に配置する際、
図2に示したようにスイッチ31によって、間接電極21と直流電源30を接続する。そして、間接電極21を陽極とし、対向電極22を陰極として直流電圧を印加して、めっき液Mに電界を形成する。これにより、例えば対向電極22の表面に下地膜が形成されている場合でも、無電解の置換めっきを防止して下地膜の剥がれを抑制することができ、めっき液Mによる電解めっきも進行しない。その結果、めっき処理を均一に行うことができる。
【0163】
なお、このようにめっき液Mに電界を形成することで、下地膜の剥がれを抑制することは、他の第2の実施の形態〜第5の実施の形態のいずれのめっき処理装置にも適用できる。
【0164】
<7.結晶構造>
以上のめっき処理装置を用いて形成される銅めっきの結晶について、本発明者は鋭意検討し、その結晶性をさらに向上させる方法を想到するに至った。以下、この方法について説明するにあたり、第1の実施の形態のめっき処理装置1を用いて説明するが、他の第2の実施の形態〜第5の実施の形態のいずれのめっき処理装置にも適用できる。
【0165】
<7−1.結晶粒径制御とめっきレート向上>
図34は、めっき処理の各工程(ステップ)における、間接電極21の電位とスイッチ31の切り替え状態、すなわち間接電極21と直流電源30の接続と、間接電極21と直接電極20の接続を示す説明図である。
【0166】
先ず、ステップS1において、
図35に示すようにスイッチ31によって、間接電極21と直流電源30(対向電極22)を接続し、間接電極21を陽極とし、対向電極22を陰極として直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成する。そうすると、
図36に示すように間接電極21に正の電荷が蓄積され、間接電極21側に負の荷電粒子である陰イオンAが集まる。一方、対向電極22には負の電荷が蓄積され、対向電極22側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動する。
図36は、対向電極22の表面に銅イオンCが配列した様子を示している。銅イオンCは、対向電極22に蓄積された電荷Eに対応して配列される。
【0167】
ステップS1では、対向電極22の表面において銅イオンCの電荷交換が行われず、水の電気分解を抑制することができるので、間接電極21と対向電極22間に高い電圧を印加することができる。このように高電圧を印加することで、多量の銅イオンCの対向電極22側への移動レートを向上させることができ、対向電極22の表面に複数の銅イオンCを密に均一に配列させることができる。
【0168】
対向電極22側に移動する銅イオンCの量は、上述したように間接電極21と対向電極22間の電圧で制御することもできるし、また後述するように間接電極21の静電容量で制御することもできる。あるいは、これら電圧と静電容量の両方で制御してもよい。
【0169】
その後、ステップS2において、間接電極21と対向電極22間に印加される電圧を低くする。例えばステップS1における電圧Vの1/4まで低くする。そうすると、
図37に示すように対向電極22に蓄積される電荷Eも1/4に間引かれ、疎に配列される。換言すれば、対向電極22に残存する電荷Eの量は、ステップS1で移動した銅イオンCの量以下となる。そして、残存する電荷Eの位置が、本発明における所定の電荷配列位置Pとなる。図示の例においては、1つの電荷配列位置Pのみを示しているが、実際には、対向電極22において複数の電荷配列位置Pが等間隔に並んでいる。
【0170】
なお、ステップS2では、対向電極22の表面に配列された銅イオンCは、めっき液Mの存在により残留し、密に配列されたままとなる。
【0171】
以下の説明においては、ステップS2で対向電極22に残存する電荷Eの量に対する、ステップS1で対向電極22に配列させた電荷Eの量の割合を間引き率という。間引き率は、後述するように対向電極22の表面に形成される結晶の粒径に応じて設定される。すなわち、間引き率を大きくすれば、結晶粒径は大きくなり、間引き率を小さくすれば、結晶粒径は小さくなる。
【0172】
また、間引き率は、隣接する電荷配列位置P、P間の距離が、結晶格子の寸法の整数倍になるように設定される。例えば電荷配列位置P、P間の距離の距離を結晶格子の寸法と等しくすれば、単結晶化し、2倍以上の整数倍にすれば、隣接する結晶同士を接合するのに有利となる。かかる場合、結晶性を向上させることができる。また、このように結晶性が向上するので、結晶表面を平坦化することができる。
【0173】
なお、間引き率(対向電極22に残存する電荷Eの量)は、上述したように間接電極21と対向電極22間の電圧で制御することもできるし、後述するように間接電極21の静電容量で制御することもできる。あるいは、これら電圧と静電容量の両方で制御してもよい。
【0174】
その後、ステップS3において、
図38に示すようにスイッチ31を切り替え、間接電極21と直接電極20を接続する。そうすると、
図39に示すように電荷配列位置Pにおいて、銅イオンCは電荷Eと電荷交換されて酸化され、当該銅イオンCの結晶Gが析出する。なお、対向電極22の表面に配列された銅イオンCのうち、電荷配列位置P以外の位置にある銅イオンCは電荷交換されず、イオンとして残留する。また、このとき、間接電極21側において、陰イオンAは酸化される。
【0175】
その後、ステップS4において、スイッチ31を切り替え、間接電極21と直流電源30を接続し、
図40に示すように再び対向電極22の電荷配列位置Pに電荷Eを配置する。このように対向電極22に電荷Eを充電する際、間接電極21と対向電極22間に印加される電圧は、ステップS2における電圧(V/4)と同じである。また、このとき、ステップS3で電荷交換されていない銅イオンCが、電荷配列位置Pに移動する。
【0176】
その後、ステップS5において、スイッチ31を切り替え、間接電極21と直接電極20を接続する。そうすると、
図41に示すように電荷配列位置Pにおいて、銅イオンCは電荷Eと電荷交換されて酸化され、当該銅イオンCの結晶Gが析出する。なお、
図41では説明を容易にするため、結晶Gとして2つ図示しているが、実際には、1つの結晶Gとして成長する。
【0177】
その後、ステップS4、S5と同じ処理をこの順で繰り返す。すなわち、ステップS6における電荷配列位置Pへの電荷Eと銅イオンCの配置、ステップS7における銅イオンCの還元、ステップS8における電荷配列位置Pへの電荷Eと銅イオンCの配置、ステップS9における銅イオンCの還元を順次行う。そうすると、
図42に示すように、電荷配列位置Pに結晶Gが成長する。
【0178】
その後、ステップS1〜S9を繰り返し行い、電荷配列位置Pに結晶Gを成長させる。
図43は、2回目のステップS1を行った様子を示している。そして、一の電荷配列位置Pに形成された結晶Gは、隣接する電荷配列位置Pに形成された結晶Gと接するまで成長する。換言すれば、結晶Gの粒径は、隣接する電荷配列位置P、P間の距離に依存し、上述したようにステップS2における対向電極22の電荷Eの間引き率に依存する。結晶Gの粒径を大きくする場合、間引き率を大きくして、隣接する電荷配列位置P、P間の距離を大きくすればよい。また、結晶Gの粒径を小さくする場合、間引き率を小さくして、隣接する電荷配列位置P、P間の距離を小さくすればよい。
【0179】
こうして、
図44に示すように対向電極22の表面に銅めっき50が所定の膜厚で形成され、めっき処理装置1における一連のめっき処理が終了する。
【0180】
本実施の形態によれば、ステップS2において対向電極22の電荷Eの間引き率を制御することで、銅めっき50中の結晶Gの粒径を制御することができる。そして、例えば結晶Gの粒径を大きくすると、配線形成時のエレクトロマイグレーションを抑制することができ、また電子散乱を抑制して、配線の低抵抗化を実現することができる。
【0181】
ここで、従来、めっき処理を行った後、めっき金属の結晶を成長させ、且つ水の電気分解により発生するボイドなどの不純物を除去するため、めっき処理後に熱アニール処理を行う場合があった。この点、上述したように結晶Gの粒径を制御できるので、従来の熱アニールによる結晶成長処理は不要となる。また、めっき液Mには硫酸銅を溶解した溶液が用いられるので、従来の水素等起因のボイドを除去できる。かかる観点からも熱アニール処理は不要となり、配線形成時のストレスマイグレーションも抑制することができる。
【0182】
また、ステップS1では、銅イオンCはめっき液M中を移動するため、その移動距離が長いのに対し、ステップS4、S6、S8では、対向電極22の表面に配置された銅イオンCが当該対向電極22の表面に沿って電荷配列位置Pまで移動するだけであるため、その移動距離が短い。そうすると、粒径の大きい結晶Gを形成するため、従来のように移動距離の長い、めっき液中での銅イオンの移動を繰り返し行う場合に比べて、本実施の形態によれば銅イオンCの移動距離を短くすることができる。したがって、めっき処理を短時間で行うことができ、めっき処理のレートを向上させることができる。
【0183】
<7−2.対向電極の電荷量の制御>
以上の実施の形態では、ステップS1における銅イオンCの移動量(対向電極22の電荷E)と、ステップS2における対向電極22の電荷Eの間引き率は、それぞれ間接電極21と対向電極22間の電圧で制御していたが、間接電極21の静電容量で制御してもよい。
【0184】
静電容量Cは、C=εA/d(ε:電極間の誘電体の誘電率、A:電極の面積、d:電極間の距離)で表せる。静電容量Cを制御するには、これら誘電率ε、面積A、距離dのいずれのパラメータを制御してもよいが、実際には誘電率εと距離dを制御するのは困難であるため、本実施の形態では、面積Aを制御する場合について説明する。
【0185】
静電容量を制御するため、例えば間接電極21を複数に分割する。
図45に示すようにめっき処理装置1において、めっき槽10内には2つの間接電極21a、21bが設けられる。また、この間接電極21の分割に伴い、直接電極20も直接電極20a、20bに分割される。
【0186】
間接電極21a、21bには、それぞれスイッチ31a、31bが設けられている。これらスイッチ31a、31bは、それぞれ第1の実施の形態のスイッチ31と同様の機能を果たす。
【0187】
かかる場合、ステップS1において、銅イオンCを対向電極22側に移動させる際には、スイッチ31a、31bによって、それぞれ間接電極21a、21bと直流電源30を接続する。そうすると、静電容量が大きくなるので、銅イオンCの移動量を多くでき、対向電極22に蓄積される電荷Eの量も多くできる。
【0188】
その後、ステップS2において、対向電極22の電荷Eを間引く際には、例えばスイッチ31aを切り替え、スイッチ31bを切り替えない。そうすると、静電容量が小さくなるので、対向電極22に蓄積される電荷Eも少なくなる。なお、間接電極21と直接電極20を分割する数は、本実施の形態に限定されず、間引き率に応じて設定される。例えば間引き率を1/4にするには、間接電極21と直接電極20をそれぞれ4つに分割すればよい。
【0189】
本実施の形態によれば、間接電極21と対向電極22間の電圧を一定にしても、静電容量を制御することで、対向電極22の電荷Eの量を制御することができ、結晶Gの粒径を制御することができる。
【0190】
<7−3.めっきの平坦化>
以上の実施の形態において、ステップS2における対向電極22の電荷Eの間引き率は、銅めっき50の平坦化の観点から、2のべき乗であるのが好ましい。かかる場合、対向電極22に析出する結晶Gの粒径は、原子格子の寸法と析出数(2のべき乗)の積となる。そうすると、
図46に示すように対向電極22から離れる側に向けて、結晶G1とG2を順次形成して積層する際、隣接する結晶G1、G1間に結晶G2が隙間なく充填される。同様に対向電極22から離れる側に向けて、結晶G3〜G5を順次形成することで、これら結晶G1〜G5を隙間なく充填することができる。その結果、結晶G1〜G5からなる銅めっき50の表面を平坦化することができる。
【0191】
なお、
図46では説明を容易にするため、結晶G1〜G5の形状を三角形で図示しているが、例えば半球状であっても同様の方法で銅めっき50の表面を平坦化することができる。
【0192】
また、
図46に示すように対向電極22に結晶G1〜G5を形成する際、対向電極22から離れる側に向けて(対向電極22に近い領域から遠い領域に向けて)、ステップS2の間引き率を大きくする。かかる場合、結晶G2を形成する際の間引き率が、結晶G1を形成する際の間引き率に比べて大きくなるので、結晶G2の粒径は、結晶G1の粒径より大きくなる。そして、結晶G1〜G5の粒径はこの順で大きくなる。
【0193】
かかる場合、結晶G1の粒径を小さくすることにより、当該対向電極22の表面と結晶G1との結合点が多くなる。このため、対向電極22の表面に対する銅めっき50の密着性を向上させることができる。そして、本実施の形態では、対向電極22の近い領域では小粒径の結晶G1を形成して平坦化しつつ、遠い領域では大粒径の結晶G5を形成することができる。
【0194】
ここで、結晶の粒径を大きくした場合、成膜面には粒径に比例した凹凸が発生し、その後の工程で成膜面を平坦にするための研磨負荷が増大する。この点、平坦化しつつ、結晶G5の粒径を大きくできるので、研磨負荷を軽減できるという効果もある。
【0195】
<7−4.ダマシンプロセスへの適用>
次に、
図46に示しためっき処理方法をダマシンプロセスに適用した例について説明する。
図47及び
図48において、ビアホール500と配線溝501にめっき処理を行う。なお、以下の説明においては、結晶G1〜G6を結晶Gと総称する場合がある。
【0196】
ビアホール500では、その底面と側面に上述した結晶G1〜G5を形成する。そして、さらに結晶G5の内側を埋めるように、結晶G5より粒径の大きい結晶G6を形成する。このようにビアホール500にめっき処理が行われ、ビアが形成される。
【0197】
配線溝501においても、その底面と側面に上述した結晶G1〜G5を形成する。そして、さらに結晶G5の内側を埋めるように、結晶G5より粒径の大きい結晶G6を形成する。図示のとおり、結晶G1〜G6は、それぞれ配線方向(長手方向)に並べて配列される。
【0198】
その後、配線溝501の配線方向に電流を流す。そうすると、隣接する結晶G、G間においてエレクトロマイグレーションが起きるため、当該結晶G、G間の粒界の電子散乱と空洞(ボイド)を抑制して補填することができる。また、結晶G、Gは分子間力によっても結合するが、配線方向に電流を流すことによって、結晶G、Gを強固に結合することができる。このように配線溝501にめっき処理が行われ、配線が形成される。
【0199】
なお、配線幅が結晶Gの粒径より小さい場合、
図46に示しためっき処理方法では結晶Gの大粒径化が実現できないおそれがある。かかる場合には、結晶Gを配線方向に結晶長が長い平坦粒とすることで、配線の抵抗率を低減することができる。すなわち、
図46で示した結晶Gの三角形において、底辺に対する高さの比率を小さくすればよい。
【0200】
結晶Gの平坦粒を実現するためには、次の2つの条件が必要である。1つ目の条件は、結晶Gが析出する界面の表面エネルギーを大きくすることである。析出界面の表面エネルギーが小さくなる要因は水素終端である。この点、上述のとおり、めっき液Mには硫酸銅を溶解した溶液が用いられるので、水の電気分解による水素が発生しない。このため、析出界面では水素終端されず、当該析出界面の表面エネルギーを大きくできる。
【0201】
2つ目の条件は、結晶Gが析出する界面を平坦化することである。結晶長が長い平坦粒を隙間なく積層するためには、析出界面が平坦であることが必要となる。この点、
図46に示しためっき処理方法を実行すること、すなわちステップS2における対向電極22の電荷Eの間引き率を2のべき乗とすることにより、析出界面の平坦化を実現できる。
【0202】
以上より、配線溝501の底面と側面から近い領域においては小粒径の結晶Gを形成して、平坦化を実現しつつ、遠い領域においては平坦な結晶成長(沿面成長)が実現でき、結晶Gを平坦粒とすることができる。したがって、低抵抗の配線を形成することができる。
【0203】
<8.他の実施の形態>
以上の実施の形態では、電解処理としてめっき処理を行う場合について説明したが、本発明は例えばエッチング処理等の種々の電解処理に適用することができる。
【0204】
また、以上の実施の形態では対向電極22側において銅イオンCを還元する場合について説明したが、本発明は対向電極22側において被処理イオンを酸化する場合にも適用できる。
【0205】
かかる場合、被処理イオンは陰イオンであり、上記実施の形態において陽極と陰極を反対にして同様の電解処理を行えばよい。すなわち、間接電極と対向電極の間に電圧を印加して電界を形成し、対向電極側に被処理イオンを移動させる。その後、直接電極と間接電極との間に電流を流す。そうすると、対向電極側に移動した被処理イオンの電荷が交換されて、被処理イオンが酸化される。
【0206】
本実施の形態においても、被処理イオンの酸化と還元の違いはあれ、上記実施の形態と同様の効果を享受することができる。
【0207】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。