(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筆記用インクを収容した軸筒と、前記軸筒の一端に装着された筆記部とを有する筆記具であって、前記筆記部は、前記軸筒から筆記用インクを誘導して、該筆記用インクを筆記可能な筆記体と、内側の内部通路に挿通させて筆記体を保持すると共に、横断面が概略楕円形状の保持体とを有しており、前記保持体は横断面が先方から見て概略楕円形状の視認性を有する硬質材料で形成し、前記保持体に前記筆記体が設けられ、特定の角度で見た場合にその保持体の表面積中で、前記筆記体の見える部分が50%以下になるものであると共に、前記内部通路が前記横断面六角形又はひし形に形成されることを特徴とする筆記具。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態を説明する。なお、いずれの実施形態においても軸筒の先端には、筆記部を保護するためのキャップ(図示省略)が着脱可能に装着される。
【0013】
〔第1実施形態の筆記具〕
図1〜
図4は、本発明の第1実施形態に係る筆記具であり、
図1(a)−(d)は、本発明の第1実施形態に係る筆記具の説明図である。
図1(b)、(d)に示すように、本第1実施形態の筆記具Aは、筆記具本体となる軸筒10内にインク吸蔵体12が収納され、そのインク吸蔵体12に筆記具用インクが吸蔵されるタイプのものである。軸筒10は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成されるものであり、後端の閉じた筒状を呈している。前記軸筒10の後部の内部には、前記インク吸蔵体12を支持するリブ10aが内向きに突出形成されている。
該筆記具Aは、筆記部14の後端にインク吸蔵体12を接続して、インク吸蔵体12の筆記具用インクを筆記部14に供給する構成となっている。
なお、
図1(a)の符号LDは軸筒10の長手方向(軸方向)を示している。
【0014】
図2は、筆記具Aの斜視図、
図3(a)−(c)は筆記体16、
図4(a)−(h)は筆記体16を装着する保持体18の部品図である。
第1実施形態の筆記部14は、
図2に示すように、保持体18の外周に筆記体16を配設して当該保持体18が筆記体16を保持する構造のものである。前記筆記体16を保持体18で保持した状態の筆記部14は、軸筒10の先端部に筒状の先軸20によって装着されている。
【0015】
装着状態において、前記筆記部14は、当該先軸20の先端部から筆記体16及び保持体18の半分程度を突出して露出させた状態に配設されている。前記先軸20は筒状であって内部にインク吸蔵体12の先部を内装して前記軸筒10に先端部に装着されている。なお、先軸20の先端開口と筆記部14との間は、保持体18の後述するフランジ部18bによって塞がれ、本体部18aが先軸20先端開口に嵌合して筆記部14が抜け止めされている。保持体18の本体部18aの周囲に筆記体16が設置された部分(可視部18c)が透明又は半透明になっており、筆記対象部が視認可能になっている。
【0016】
インク吸蔵体12は、水性インク、油性インクなどの筆記具用インクを含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体を含むものである。このインク吸蔵体12は、軸筒10の本体部内に収容されている。なお、上記軸筒10の後端側は閉じているが、軸筒10と同一素材又は別の合成樹脂製素材等にて成形される尾栓により封止しても良い。
用いる筆記具用インクの組成は、特に限定されず、筆記具の用途等に応じて、好適な配合処方とすることができる。好ましくは、後述する筆記具用インク組成物を用いることが望ましい。
【0017】
また、前記筆記体16は、
図1(b)、
図2に示すように、概略矩形の保持体18を取り囲むように、概略U字形状を呈している。
本第1実施形態では、
図3(a)に示すように、前記筆記体16がインク誘導部16a、16aと曲げ部16b、16bと筆記面部16cとを有する。前記筆記体16が、断面略円形の帯状体を曲げた形状であって、インク誘導性を備えた焼結体で形成されている。
そして、前記筆記体16は、インク誘導部16a、16aの先端側がほぼ45°曲がった曲げ部16b、16b及びその曲げ部16b、16bが合体され、先端がカットされた筆記面部16cとから構成されている。
【0018】
前記第1実施形態に係る保持体18を
図4(a)−(h)の部品図を用いて詳細に説明する。
保持体18は、
図1(b)、(d)に示すように、上記筆記体16を周囲に固定して、軸筒10の先軸20先端開口部に固着されるものである。
図4(a)〜(h)に示すように、保持体18は、概略膨出状の本体部18aと、該本体部18aの先方側に、環状に拡径したフランジ部18bと、フランジ部18bの両側から概略板状先方に延びる構造の、筆記方向を視認することができる平面状の可視部18c、18cと該可視部18c、18cの上下側と先方の内側に傾斜カット面18d、18dを有する。また、前記保持体18は、該本体部18aの後方側に、上記本体部18aに連設される後方保持部18eを備えている。また、これらの各部から構成される保持体18の長手方向外周面全体には、上記U字型状の筆記体16を嵌入保持する保持溝18fが形成されている。
【0019】
また、本体部18aの幅方向外周面には、先軸20の内周に嵌合するための凹状又は凸状の嵌合部18hが形成され、また、長手方向外周面には、フランジ部18bから後方保持部18eに亘って外周面に断面凹状の空気置換のための空気流通溝18i、18jが形成されている。空気流通溝18i、18jを介して軸筒10内の外気と空気流通を行う構造になっている。その構造によって、筆記部14の筆記時にインク吸蔵体12に貯留の筆記具用インクの空気置換が出来るようになっている。
更に、本第1実施形態では、保持体18の本体部18aにおける長手(径方向)方向の中心部に、インク吸蔵体12と同材料から構成される大径部15aと小径部15bとが一体となったインク供給体15が収容される大径部と小径部とが連通したインク供給体収容孔18kが貫通している。
【0020】
本第1実施形態に係る保持体18は、硬質材料から成形されるものであり、好ましくは、筆記方向を視認できる硬質材料、例えば、金属、ガラス、ゴム弾性を有しない樹脂などから構成されるものであり、前方に幅広の平滑面となる可視部18cと後方に本体部18aが形成されている。視認可能となるゴム弾性を有しない樹脂としては、例えば、スチレン−イソプレン樹脂、アイオノマー樹脂、SBR−PPのブレンド樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリメチルペンテン、PC(ポリカーボネート)、透明ABS樹脂などが挙げられる。硬質材料は筆記方向を視認できる可視光線透過率であればよく、好ましくは、50%以上となる材料から構成されることが好ましい。
なお、この可視光線透過率が50%未満の材料を使用した場合は、筆記方向にある対象部を有効に視認できないことがあり、好ましくない。更なる良好な視認機能を発揮できるようにするために、50%以上透過する材料が好ましく、この可視光線透過率が80%以上であれば、更に良好に視認できるものとなる。
【0021】
前記筆記体16は、スポンジなどの高分子発泡体、浸透印等に用いられる多孔質のゴム体、不繊布、フェルト、繊維束を樹脂で固めたもの、又は、金属、セラミック、高分子の焼結体などの多孔質部材から構成されたものであり、これらの多孔質部材(以下においても同様)は、嵌着、又は接着剤による接着、又は熔着などにより保持体18の外周に被覆されている。なお、保持体18の外周面に筆記体16の被覆を更に確実にするため嵌合溝等を施しても良いものである。
【0022】
本第1実施形態の筆記具Aでは、インク吸蔵体12から筆記体16へのインク供給機構は、インク吸蔵体12の先端側に筆記体16のインク誘導部16a、16aとインク供給体15の後方部が嵌入等されており、これによりインク吸蔵体12に含浸された筆記具用インクはインク誘導部16a、16a、並びに、インク供給体15の2ルートを介して筆記面部16cに毛管力により供給される構造となっている。上記インク吸蔵体12、筆記体16、インク供給体15の毛管力を好適に設定することによりインク吸蔵体12から筆記体16の筆記面部16cへの2ルートによるインク供給量を好適に設定することができることとなる。
また、描線を筆記することとなる筆記面部16cは、その幅方向の幅を適宜な長さとすることにより好適な描線幅を設定することができ、好ましくは、描線幅1mm以上、更に好ましくは、描線幅3mm以上の描線幅となることが好ましい。
【0023】
本第1実施形態では、特定の角度で見た場合にその保持体18の表面積中で、前記筆記体16の見える部分を50%以下とするものである。すなわち、保持体18の表面積中で、該筆記体16の見える部分を少なくとも50%以下として、筆記体16の見える部分を極力少なくすることにより、保持体18の視認性から当該筆記具を持って筆記する際に、筆記対象部位を見ながら筆記部分をより鮮明にすることができるという優れた効果を奏するものとなる。
また、前記保持体18において、軸線方向に垂直な断面での肉厚、最厚部を1mm以上、或いは前記筆記体16の外径と前記保持体18の外径の比を1対3以上とすることにより、更に筆記対象部位を見ながら筆記部分をより鮮明にすることができることとなる。
更に、本第1実施形態では、保持体18は、径線方向の中心部及び外周部に、筆記部及びインク供給部が設けられているので、インク吸蔵体12から筆記体16の筆記面部16cへのインク供給は、2方向から供給される機構となるので、インク供給切れを起こすことなく、インク供給量が好適となるものである。
【0024】
〔第2実施形態の筆記具〕
次に、本発明の第2実施形態に係る筆記具を説明する。
図5(a)−(c)は、本発明第2実施形態に係る筆記具を、(a)が斜視図、(b)が正面図、(c)が断面図で示すものである。また、
図5(a)−(c)は、この筆記具の支持部材(「保持体」に相当)18Bを示した部品図である。
【0025】
図5(c)に示すように、筆記具の外側部を構成する軸筒10の後端が閉じられており、その軸筒10の内部空間に、流動体を浸漬した筆記用インク吸蔵体12が収容されている。軸筒10の先端には、先軸20が装着されており、その先軸20は、内部が段状に先細く空間になる筒状体である。先軸20の先端部内に筆状の筆記部14Bがその保持部材18Bの先端から突出している。そして、筆記用インク吸蔵体12に筆記部14Bの後端が差し込まれて連結し、筆記部14Bが支持部材18Bの軸心を貫通している。
筆記部14Bとしては、筆の場合は、材質としてポリブチレンテレフタレート繊維を束ねた状態で先端を先鋭化するようにまとめたものを使用でき、ペン芯の場合は、材質としてナイロン、ポリエステル、アクリルを使用できる。
また、
図5に示すように軸筒10には、筆記用インク吸蔵体12を充填するための空間内壁の先端側に、支持部材18Bが嵌入している。
【0026】
図6(a)−(h)は、支持部材18Bの説明図である。
支持部材18Bは、透明体又は半透明体からなる。本実施形態の支持部材18Bは、視認性を有する材料、例えば、スチレン−イソプレン樹脂、アイオノマー樹脂、SBR−PPのブレンド樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリメチルペンテン、PC(ポリカーボネート)、透明ABS樹脂等の材料から構成されるものであり、筆記方向が視認できる可視光線透過率であればよく、上記第1実施形態と同様に、好ましくは、50%以上となる材料から構成されることが好ましい。
【0027】
図6(f)に示すように、支持部材18Bの後部の左右側には、それぞれ溝32が形成されている。この支持部材18Bの後半部分を先軸20の先端に圧入することで、この溝32が先軸20の先端内壁との間で空気置換孔を形成することとなっている(
図7(c)参照)。よってこの空気置換孔は筆記具の左右側にそれぞれ開口することとなる。
【0028】
また、支持部材18B先部には、外周面がテーパー状であって周方向に凹凸があり凹凸がリブ状で先後方向(長手方向LD)に沿って形成され(
図5参照)、横断面で星形形状又は花形形状を呈する。もちろん、これは一例であり、種々の形状にすることができる。支持部材18Bは透明であるため、筆記部14Bの色を容易に視認できると共に、支持部材18Bの外周面が凹凸であるため、筆記部14Bがレンズ効果で大きく見え、支持部材18Bとのマッチングを図るなどして外観意匠性が向上する。
【0029】
本第2実施形態に係る筆記具は以下のように機能する。
すなわち、筆記用インク吸蔵体12(
図5(c))に浸漬されている流動体は、筆記部14Bの毛管力で先端方向へ誘導され、筆記部14B先端に至りこれを浸漬することで、目的の箇所へ筆記可能となる。また、溝32の空気置換孔から流入した空気が、筆記用インク吸蔵体12の存在する軸筒10の内部空間へと至る。これにより、流動体の空気交換は支障なく行われることとなる。
【0030】
ここで、筆記具に先端方向の衝撃が急に与えられた場合、流動体の大部分は軸筒10の内段部により阻止されるものの、一部は空気置換孔(溝32)を通ることとなる。しかし、空気置換孔には先端側に90°の曲がり部(32a:
図6(f)参照)があり左右両側へ90°回り込む必要があるので、直接外界へ漏れ出すことはない。そして空気置換孔内の先端側に一時的に保持された流動体はその間に空気置換孔から流入する外界の空気により、再び筆記用インク吸蔵体12の方へ押し戻されることになる。
【0031】
〔筆記用インク組成物の説明〕
次に、上記第1実施形態、第2実施形態、後述する第3実施形態以降で、筆記具に使用する筆記用インク組成物を説明する。
用いることができる筆記具用インク組成物としては、特に限定されるものでないが、インク供給機構を良好とする点、筆記部(ペン先)の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することなどの点から、好ましくは、着色剤と、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールと、10質量%以下の水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含有する筆記具用インク組成物の使用が望ましい。
【0032】
用いることができる着色剤としては、水に溶解もしくは分散する染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、蛍光顔料、白色系プラスチック顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットB00B等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料、蛍光染料などが挙げられる。
【0033】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
蛍光顔料としては、従来公知のものが適宜使用でき、例えば、硫化亜鉛、ケイ酸亜鉛、硫化カドミウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム等の無機蛍光顔料や高分子化合物を染色した有機蛍光顔料が挙げられる。
有機蛍光顔料としては、具体的には、NKWシリーズ(日本蛍光化学社製)、シンロイヒカラーベースSWシリーズ、SFシリーズ(シンロイヒ社製)、ビクトリアイエローG−20などのビクトリアシリーズ(御国色素社製)等が挙げられる。
【0034】
これらの着色剤は、一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
これらの着色剤の含有量は、インク組成物全量に対して、0.1〜60質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)で適宜調整することが可能である。
【0035】
用いるトリメチルグリシン〔別名:グリシンベタイン、(CH
3)
2N
+(CH
3)CH
2COO
−〕は、保湿剤等として作用せしめるために用いるものであり、筆記
具用水性インク組成中に配合してもインキ性能の低下等を招くことがなく、ペン先の耐乾
燥性、描線の乾燥性、インクの低温安定性を発揮せしめるものである。
【0036】
このトリメチルグリシンの含有量は、インク組成物全量に対して、0.5〜50%、好ましくは、1〜15%、より好ましくは、2〜10%とすることが望ましい。
この含有量が0.5%未満であると、ペン先の乾燥抑制効果が充分でなく、一方、50%超過であると、効果はそれほど変わらず、むしろ粘度増加による筆記性能、保存安定性の低下をもたらすこととなる。
【0037】
用いるペンタエリスリトール〔C(CH
2OH)
4〕は、保湿剤等として作用せしめるために用いるものであり、上記トリメチルグリシンとの併用により、各単独使用よりも、相乗的に作用して、ペン先の乾燥を抑えながらも、従来にない描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない優れた性能を発揮せしめるものとなる。
【0038】
このペンタエリスリトールの含有量は、インク組成物全量に対して、0.5〜8%、好ましくは、2〜5%とすることが望ましい。
この含有量の含有量が0.5%未満であると、ペン先の乾燥抑制効果が充分でなく、また、トリメチルグリシンとの相乗作用を発揮することができず、一方、8%超過であると、トリメチルグリシンとの相乗作用の効果はそれほど変わらず、低温下における析出や、保存安定性の低下をもたらすこととなる。
【0039】
用いる水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類、ホルムアミドおよびその誘導体などのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類など、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルなどのエーテル類が挙げられ、これらは一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物全量に対して、10%以下、好ましくは、7%以下、より好ましくは5%以下とすることが望ましい。
これらの水溶性有機溶剤の含有量を10%以下とすることにより、描線乾燥性に優れた機能を発揮せしめるものとなる。
【0040】
本発明の筆記具に用いる筆記具用インク組成物は、上記各成分の他、残部(溶媒)として水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水など)で調製され、上記各成分以外にも、例えば、界面活性剤、防腐剤や防菌剤、pH調整剤、水溶性樹脂、樹脂エマルションなどの任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有せしめることができる。
【0041】
用いることができる界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオ キシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリン・アルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミドなどの非イオン性界面活性剤;、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N‐アシルアミノ酸塩、N‐アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、α‐オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基親水性基含有ウレタン、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルアンモニウム 塩、パーフルオロアルキルアルコキシレート、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。これらの界面活性剤は、一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
また、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア等が挙げられる。
水溶性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、水溶性スチレン −アクリル樹脂、水溶性スチレン・マレイン酸樹脂、水溶性マレイン酸樹脂、水溶性スチレン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコ−ル、水溶性エステル−アクリル樹脂、エチレン−マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性ウレタン樹脂等などが挙げられる。
樹脂エマルションとしては、例えば、アクリル系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、ウレタン系エマルション、スチ レン−ブタジエンエマルション、スチレンアクリロニトリルエマルションなどが挙げられる。
これらの水溶性樹脂および樹脂エマルションは、一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0042】
この筆記具用インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、着色剤と、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールと、10質量%以下の水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含み、水性における各成分などを所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよく、また、脱泡、加熱、冷却しながら作製してもよいものである。
【0043】
このように構成される本発明の筆記具に用いる筆記具用インク組成物が、何故、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現するのかは下記のように推測することができる。
すなわち、本発明の筆記具に用いる筆記具用インク組成物では、着色剤と、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールと、10質量%以下の水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含有することにより、共に、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールとがペン先の耐乾燥性を抑える成分となるものであり、これらの各単独使用よりも、筆記具用水性インク組成中で併用することにより、相乗的に作用していることは明らかである。その理由は必ずしも明らかではないが、相乗効果によりペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない優れた性能を発揮せしめるものと推測される。
本発明に用いる筆記具用インク組成物は、上記効果を発揮せしめる持続効果が極めて優れており、しかも、その効果の発現期間・持続時間も長く、更にトリメチルグリシンとペンタエリスリトールは水溶性であるために経時的な安定性にも優れたものとなる。
従って、本発明の筆記具に上記組成の筆記用インク組成物を用いることにより、保持体の視認性から当該筆記具を持って筆記する際に、筆記対象部位を見ながら筆記部分をより鮮明にすることができるという優れた効果と共に、筆記部(ペン先)の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することができる筆記具が得られることとなる。
【0044】
〔第3実施形態の筆記具〕
次に、本発明の第3実施形態に係る筆記具を説明図である。
図7(a)−(d)は、本発明の第3実施形態に係る筆記具を、(a)が先方から見た図、(b)が斜視図、(c)が正面図、(d)が縦断面図を示すものである。また、
図8(a)−(h)は、この筆記具の支持部材(「保持体」に相当)18Cを示した部品図である。なお、軸筒10、筆記用インク吸蔵体12、先軸20は、前記第2実施形態と同様部分に同一符号を付している。
【0045】
この筆記具では、
図7(a)−(d)に示すように、先軸20の先端部内に筆状の筆記部14Cがその保持部材18Cの先端から突出している。そして、筆記用インク吸蔵体12に筆記部14Cの後端が差し込まれて連結し、筆記部14Cが支持部材18Cの軸心を貫通している。
【0046】
筆記部14Cとしては、第2実施形態と同様、筆の場合は、材質としてポリブチレンテレフタレート繊維を束ねた状態で先端を先鋭化するようにまとめたものを使用でき、ペン芯の場合は、材質としてナイロン、ポリエステル、アクリルを使用できる。
【0047】
保持部材18Cは、
図8(a)−(h)に示すように、透明樹脂製で三角面の多数組み合わさった外面形状を呈している。
図8(a)に示すように、先方から見ると左右対称の楕円形状を呈している。また、保持部材18Cの後部の左右側には、それぞれ溝32が形成されている。この支持部材18Cの後半部分を先軸20の先端に圧入することで、この溝32が先軸20の先端内壁との間で空気置換孔を形成することとなっている(
図7(d)参照)
【0048】
保持部材18Cの材料の樹脂としては、上記第1実施形態と同様の材質であればよく、例えば、スチレン−イソプレン樹脂、アイオノマー樹脂、SBR−PPのブレンド樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリメチルペンテン、PC(ポリカーボネート)、透明ABS樹脂から構成されるものであり、可視光線透過率が50%以上となる材料から構成されることが好ましい。
また、支持部材18Cにおいて、表面反射の印象を強くするためには、角度が変化した際に断続的に光る面が切り替わっていくと良い。
【0049】
支持部材18Cは、特に三角面が多数のダイヤカットなど、小さい角度の変化で多くの面が次々と輝いていくと効果的に輝く印象にすることができる。
また、支持部材18C表面反射の印象を強くするためには、エッジ(稜線)がしっかり出ていた方が良い。例えばエッジの半径が0.5mm以下とするのが好適である。
【0050】
また、支持部材18Cは、その透明部品(透明樹脂部品)を肉厚にし、ペン芯を細くすることで表面反射、内部全反射ともに強調することができる。
また、支持部材18Cは、高アッベ数(分散が小さい)素材の方が冷たい光となってダイヤモンドのような高級感のある輝きとなる。この場合、高屈折率材料の方が表面反射、内部全反射ともに発生させやすい。
【0051】
〔第4実施形態の筆記具〕
次に、本発明の第4実施形態に係る筆記具を説明図である。
図9(a)−(d)は、本発明の第4実施形態に係る筆記具を、(a)が先方から見た図、(b)が斜視図、(c)が正面図、(d)が縦断面図で示すものである。また、
図10(a)−(g)は、この筆記具の支持部材(「保持体」に相当)18Dを示した部品図である。
図11(a)−(e)は支持部材18Dの光線の屈折状態の説明図である。
なお、
図9〜
図10において、軸筒10、筆記用インク吸蔵体12、先軸20は、前記第3実施形態と同様部分に同一符号を付している。
【0052】
第4実施形態に係る支持部材18Dは、
図10(b)に示すように、先方から見て概略五角形形状を呈し、上下に非対称な形状である。
このように支持部材18Dを概略五角形の横断面形状としたときに光の屈折に寄与できる点を
図11によって説明する。
【0053】
図11の(a)−(e)は、前記第3実施形態に係る支持部材18Cを示し、その横断面が上下及び左右で対称形状である。この支持部材18Cは、横断面で見て直線が組み合わさった外縁を形成した概略長円形状を呈し、上面と下面など平行な面を形成している。
図11(a)に示すように、一方の上面から入射した平行な光L1は表面から屈折して内部に入り、内部で平行に他方の下面に至り、他の面から屈折して出射する(光L1の進行経路を破線で示す)。光L1は入射しても支持部材18Cから通り抜けてしまうので、きらきらした輝きが出にくい。
【0054】
これに対して、第4実施形態に係る支持部材18Dでは、
図11(b)、(c)、(d)に示すように、その横断面が上下で非対称な五角形であって、平行な面を無くしている。
図11(c)に示すように、横断面五角形の支持部材18Dが、各面18D1〜18D5を有する。一方の上面18D1から入射した平行な光L2は表面18D1から屈折して内部に入り、下面18D3,18D4でさらに反射屈折して上方に散乱し他のいろいろな面18D1〜18D5で反射屈折して出射する(光L2の進行経路を破線で示す)。
【0055】
したがって、支持部材18Dの外形を五角形等とし並行面(平行面)を無くすことで内部全反射の頻度を増やすことができる。よって、支持部材18Dへ入射した光L2が各面で反射し出射するのできらきらした輝きが出る。筆記具を使用時に光源からの光の入射角度が変化に伴って反射光が変化して輝く。
【0056】
また、
図11(b)に示すように、支持部材18Dには筆記部14Dが通る円筒状通路であるが、外形を5角形などとし並行面(平行面)を無くすことができる。そして、並行面をなくすばかりでなく、前記支持部材18D内で上記筆記部14Dを挿通する通路18Dbに、
図11(d)や(e)に示すように、十字コアなどコアに凹の筋(凹部)18Daを形成して、凹の筋18Daによってさらに内部全反射の頻度を増やして一層輝きを増すことができる。
【0057】
また、
図9〜
図11に示すように、前記支持部材18Dは、透明部品を肉厚にし、ペン芯を細くすることで表面反射、内部全反射ともに強調することができる。
また、前記支持部材18Dは、高アッベ数(分散が小さい)素材の方が冷たい光となってダイヤモンドのような高級感のある輝きとなる。この場合、高屈折率材料の方が表面反射、内部全反射ともに発生させやすい。
【0058】
〔第5実施形態の筆記具〕
次に、本発明の第5実施形態に係る筆記具を説明図である。
図12(a)−(d)は、本発明の第5実施形態に係る筆記具を示し、(a)が先方から見た図、(b)が斜視図、(c)が正面図、(d)が縦断面図で示すものである。また、
図13(a)−(j)は、この筆記具の支持部材(「保持体」に相当)18Eを示した部品図である。
図14は支持部材18Dの光線の屈折状態の説明図である。
なお、
図12〜
図14において、軸筒10、筆記用インク吸蔵体12、先軸20は,前記第3実施形態や第4実施形態と同様部分に同一符号を付している。
【0059】
第5実施形態に係る支持部材18Eは、
図12、
図13に示すように、先方から見て概略両側面に凹所の形成された鼓形形状を呈し、支持部材18E内の筆記部14Eのペン芯を、所定の角度からは見えなくする(ステルスクチプラ)ものである。
【0060】
支持部材18Eは、
図13に示すように、筆記部14Eの通る内部通路18Eaのコア形状(つまり、内部通路形状)を断面四角くすることで、当該支持部材18E内で光を内部全反射させることによって筆記部14Eのペン芯を見えなくしたものである。
【0061】
また、支持部材18Eは、外側の弧状に凹んだ凹状側面18Ebとすることによって、当該支持部材18E内に入る光を屈折させ、内部通路18Ea側で内部全反射しやすい形状としたものである。
【0062】
また、
図14に示すように、支持部材18Eと筆記部14Eの間に金属パイプ34を通すことで、本来筆記部14Eのペン芯が見えてしまう角度でも、当該金属パイプ34の外面の反射機能(全反射や鏡面反射等表面性状による反射機能)によって、内部全反射のような輝きが得られ、360度の方向から、支持部材18E内の筆記部14E(ペン芯)が見えないようにできる。
【0063】
また、支持部材18Eが高屈折率材料の方が、より内部全反射が発生しやすく、筆記部14Eのペン芯の見えない範囲が広くなる。
具体的な支持部材18Eの実施品では、
図14に示すように、凹形状の側面18Ebでは、凹レンズの効果を奏し、断面で示すように入射光L3(二点鎖線L3で示す)の入射方向に対して±12度以内で入射光L3(符号P点で反射する)が内部全反射して筆記部14Eペン芯が見えなくなるステルス性を発現している。つまり、P点で入射角が大きくなり全反射しやすいことによる。
【0064】
この場合、内部通路18Eaに反射性のあるパイプ34を通し、そのパイプ34内に筆記部14Eを通して、パイプ34で筆記部14Eのペン芯を覆う構造を設けることができる。
【0065】
これにより、入射光L3が内部通路18Ea壁面で反射(支持部材18Eで内部反射)すると共に、パイプ34で乱反射して筆記部14Eの全周が見えにくく又は見えなくなる。なお、パイプ34は材質としては金属等反射する材質が好ましく、ステンレスやアルミニウム、ニッケル−クロムメッキ処理品が好ましい。
【0066】
以上のように、第5実施形態の筆記具では、支持部材18E内で入射した光を内部全反射させるので、内部の筆記部14Eが見えなくなり、ステルス性が向上できる。
したがって、使用者は内部の筆記部14Eが目に付かず光の反射光だけ光って見えるので、きらびやかな印象付けができる。また、パイプ34を設けてさらにステルス性を高めることができる。
【0067】
〔第6実施形態の筆記具〕
次に、本発明の第6実施形態に係る筆記具を説明する。
本発明の第6実施形態に係る筆記具では、
図12〜
図14に示した第5実施形態の筆記具と同じ形状・外観構造であり、図示を省略するが、支持部材の材質を異ならせて、より光の散乱を利用して質感を向上させたものである。
【0068】
支持部材は、その材質として、透明樹脂に微細粒子(数10nm程度)を添加することで、レイリー散乱によって青色に発色させることができる。
特定の角度で見た際に、硬質ペン先の透明部材である支持部材の表面積中、内容液導流部(筆記部のペン芯等の筆記体)の見える部分が50%以下となるものが適切である。
また、硬質ペン先つまり、透明部材である支持部材の軸線方向LDに垂直な断面での肉厚最厚部が1mm以上、又は導流部(筆記部ペン芯)14Eの径と支持部材である透明部材の外径の比率が1対3以上であることが好ましい。すなわち、透明部材の外径は、導流部14Eの径の3倍以上であることが好ましい。
【0069】
〔第7実施形態の筆記具〕
次に、本発明の第7実施形態に係る筆記具を説明する。
図15(a)−(c)が本発明の第7実施形態に係る筆記具を示し、(a)が前方からの斜視図、(b)が側面図、(c)が(b)のC−C線に沿う縦断面図である。また、
図16(a)−(d)は、この筆記具の軸筒の部品図である。また、
図17(a)−(f)は、この筆記具の支持部材(「保持体」に相当)18Fの部品図である。また、
図18は、支持部材18Fの透明感の説明図である。なお、
図15〜
図18において、軸筒10、筆記用インク吸蔵体12、先軸20は、
図12〜
図14の前記第5実施形態と同様部分に同一符号を付している。
【0070】
第7実施形態に係る筆記具では、筆記部(ペン芯)14Fを内部に挿通させて支持する支持部材18Fが透明部材で形成されている。そして前記支持部材18Fは、
図15、
図17に示すように、先方から見て概略両側面(使用者から見て正面)を平坦面にカットし、全体の軸横断面が概略楕円として、外面がほぼエメラルドカット形状に形成したものである。また、前記支持部材18Fには、その内側に軸方向に貫通して内部通路18Faを横断面六角形又はひし形に形成して当該内部通路18Faに筆記部14Fを挿通させるようにしたものである。なお内部通路18Faの先端部は円形断面になっており、筆記部14Fの横断面が円形に合わせてある。
【0071】
この場合、支持部材18Fは、上記第1実施形態と同様の材質からなり、外側面18Fbを平坦面に形成してあって横断面が概略楕円形状を呈するものとしており、内部通路18Faに前記筆記部14Fを通した状態でほぼ平坦な外側面18Fb方向からは見えにくくする又は見えなくする(ステルスクチプラ)ものである。
この支持部材18Fが、正面に平坦面が大きく配置された形状であるので、透明感や塊感をアピール・主張できる形状とすることができる。
【0072】
支持部材18Fの構成によって当該支持部材18F内に入る光を屈折させ、内部通路18Fa側で内部全反射しやすい形状としたものである。横断面で概略六角形形状としている。
【0073】
この場合、筆記部14Fを見えにくくしたり見えなくしたりすることを説明する。
図18に示すように、筆記部14Fの通る内部通路18Faのコア形状(内部通路18Faの形状)において、見える外側面18Fbに沿う方向の幅W1を狭くし、角度θを尖らせ(鋭角:角度θ<90°)て、内部全反射しやすくして、実現したものである。なお、前記外側面18Fbに垂直方向の長さをW2として、長さW2は幅W1より長い(W2>W1)。好ましくは、長さの1/2が幅W1より長い((1/2)W2>W1)。
【0074】
このように具体的な断面六角形状(又は緩やかなひし形形状)の外側面18Fb側の2辺で挟む角度θを鋭角にすることで、当該支持部材18F内で光を内部全反射させることができる。これによって筆記部14Fのペン芯を見えなくできるようにしたものである。具体的には、
図18に示すように、一外側面18Fbへの入射光L1に対して内部通路18Faからの反射光L2が他の外側面18Fbに向かわずに側方向に逸れていかせることができ、筆記部14Fの背面側が見えて逆に筆記部14Fが見えにくく、又は見えなくなるものとなる。
【0075】
図18に示すように、前記内部通路18Faのコア形状を尖らせる(角度θを鋭角)ことで、前記支持部材18Fが内部通路18Faの側面で内部全反射しやすくなり、結局、内部全反射で、その内部通路18Fa内の筆記部14Fが見えにくくなり、透明感が増して意匠性が向上するという副次的効果もある。
【0076】
なお、第7実施形態の筆記具においては、軸筒10内のリブ10aによって筆記用インク吸蔵体12を支持している。当該リブ10aを形成することで、前記軸筒10内を単なる平滑面にする場合に比べて薄肉部及びその表面積が減るのでて、当該軸筒10から水分の透過を低減させることができる。
【0077】
第7実施形態においての変形例として、前記支持部材18Fの周面に干渉縞を形成することができる。特に外側面18Fbは平面になっており、当該外側面18Fbに干渉縞模様を形成して外観意匠を向上させることができる。
この模様は、金型部品への干渉縞模様の付与は高コストである。そこで、NC加工機の送り制御のみの簡易的な加工で安価に干渉縞模様の作製に成功した。金型において、平面部(外側面)用の入れ子として搭載した。また、干渉縞模様の転写性を上げるためにも充填圧のかかりやすい金型構造が必要となる。
【実施例】
【0078】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0079】
〔実施例1〕
下記構成及び
図1〜
図4に準拠する筆記具、インクを使用した。筆記芯、保持体等の寸法等は下記に示す大きさのものを使用した。
【0080】
(インク供給体15の構成)
PET製繊維芯、気孔率65%、小径部:φ2×7mm+大径部:φ4×15mm
(筆記芯16の構成)
PE製焼結芯、気孔率60%、筆記部16cの描線幅:4mm、インク誘導部:直径φ
2mm
(保持体18の構成)
硬質材料:アクリル樹脂製、可視光線透過率80%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC−5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率とした。〕
特定の角度となる保持部材18C側から見た場合に、その保持体の表面積中で、前記筆記体の見える部分は48%であった。
【0081】
(筆記芯16、保持体18以外の筆記具部材の構成)
インク吸蔵体:PET繊維芯、気孔率85%、φ10×85mm
筆記具本体、キャップ:ポリプロピレン(PP)製
【0082】
(インク組成)
インクとして、下記組成のインク(合計100質量%)を使用した。
保湿剤:トリメチルグリシン(グリシンベタイン) 7.5質量%
ペンタエリスリトール 4.5質量%
着色剤:NKW-4805黄(日本蛍光社製) 40.0質量%
防腐剤:バイオエース(ケイアイ化成社製) 0.3質量%
pH調整剤:トリエタノールアミン 1.0質量%
フッ素系界面活性剤:サーフロン8111N(AGCセイミケミカル社製) 0.2質量%
水溶性有機溶剤:エチレングリコール 3.0質量%
水(溶媒):イオン交換水 43.5質量%
【0083】
この実施例1の筆記具では、筆記部は、軸筒から筆記用インクを誘導し、筆記可能な筆記体と、筆記体を保持する保持体からなり、保持体は視認性を有する硬質材料で形成され、さらに筆記体の見える部分を細く視認できるようにしたので、保持体の視認性から当該筆記具を持って筆記する際に、筆記対象部位を見ながら筆記部分をより鮮明にすることができることを確認した。
また、前記保持体において、軸線方向に垂直な断面での肉厚、最厚部を1mm以上としたことにより、或いは前記筆記体の外径と前記保持体の外径の比を1対3としたことにより、更に筆記対象部位を見ながら筆記部分をより鮮明にすることができることが判った。
更に、本第1実施形態では、保持体は、径線方向の中心部及び外周部に、筆記部とインク供給部が設けられているので、インク吸蔵体から筆記体の筆記面部へのインク供給は、2方向から供給される機構となるので、インク供給切れを起こすことなく、インク供給量が好適となるものであった。
更にまた、自動筆記装置にこの筆記具をセットして、JIS S6037に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/s、距離100mで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、上記好ましいインク組成のものを使用しているため、インク流量も良好で、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することがわかった。