(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この手摺の第一実施形態は、屋内の階段部分に設置されるものであって、
図1及び
図17に示すように、3本の支柱1と、各支柱1間に上下2本ずつ設けた格子材2(下側格子材2a、上側格子材2b)と、支柱1と格子材2を連結する連結具3と、支柱1に設けた格子支持具4(下側格子支持具4a、上側格子支持具4b)を備える。なお、階段の下り側を前側、上り側を後側とし、左右に延びる踏板Pの右後端部に支柱1を立設してあるものとする。また、
図1は、3本の支柱1のうち、前側と中間の支柱1を示し、2本の格子材2のうち、下側格子材2aを示すが、上側格子材2bや、中間と後側の支柱1の間の格子材2についても、同様の構成である。
【0010】
支柱1は、アルミ製の中空形材からなるものであって、
図1に示すように、断面が略八角形であり、前側面と後側面に、上下に延びる溝部11を形成してある。溝部11は、断面略コ字形でそれぞれ前側と後側に向けて開口しており、溝部11の左右の入口縁部には、それぞれ前後方向に延び溝部11の内外に向けて突出する入口片12を設けてある。
【0011】
格子材2(下側格子材2a及び上側格子材2b)は、アルミ製の中空形材からなるものであって、
図1に示すように、断面が略正方形であり、左右幅は溝部11の溝幅(左右の入口片12間の間隔)と略同じである。この格子材2は、階段の勾配に合わせて、傾斜して設けられるものであり、前後の両端面は、傾斜した状態で垂直向きとなるようにしてある。そして、格子材2の両端部の上側面には、中空部に貫通する矩形の孔を設けてあり、これを係合部21としてある。
【0012】
支柱1と格子材2を連結する連結具3は、格子材2の前後で同じものを用いており、
図1及び
図2に示すように、略Z字形の金具からなり、上側に向けて延びる取付片31と、下側に向けて延びる係合片32を有しており、取付片31は係合片32よりも上下に長く形成してある。また、取付片31には、上下に長い長孔状のネジ孔33を形成してあり、さらに係合片32の下端部は、下側に向けて先細りとなるように面取りしてある。なお、この係合片32は、格子材2の係合部21に挿入されるものであって、係合部21の左右幅は、係合片32の左右幅と略同じであり、係合部21の前後幅は、係合片32の厚さよりも広くなっている。
【0013】
格子支持具4(下側格子支持具4a及び上側格子支持具4b)は、アルミ製の形材からなるものであって、
図1に示すように、支柱1の溝部11に取り付けられるものである。断面が略コ字形であり、左右幅は溝部11の溝幅(左右の入口片12間の間隔)と略同じであって、溝部11の底面側に向けて開口する向きであり、左側面と右側面に突起41を設けてあって、左右の突起41が入口片12の溝内側の端部に係止している。また、格子支持具4の露出面(前側の溝部11に取り付けた格子支持具4の前側面、後側の溝部11に取り付けた格子支持具4の後側面)は、入口片12の溝外側の端面と面一になっている。よって、格子支持具4は溝部11を覆う目板として機能するものである。さらに、格子支持具4の上端面は、格子材2の傾斜(すなわち、階段の勾配)に合わせて、水平面に対して前下がりとなるように傾斜した面となっている。
【0014】
そして、支柱1と格子材2の連結部分について、
図1に示すように、支柱1の溝部11に格子支持具4を取り付けてあって、その上から、格子材2の両端部を前後の支柱1の対向する溝部11にそれぞれ挿入するようにして、格子材2の下側面を格子支持具4の上端面に当接させてあり、格子材2が格子支持具4に支持されている。そして、格子材2の前後端部の係合部21に、それぞれ上側から連結具3の係合片32を挿入してあり、連結具3の取付片31を支柱1の溝部11の底面に当接させて、ネジ孔33にネジを通して取り付けてある。ここで、格子材2は、前後の支柱1の対向する溝部11の底面間の間隔よりも僅かに短くしてあり、連結具3を支柱1にネジ止めすることで、格子材2を支柱1に引き寄せている。よって、格子材2は、前後から連結具3により引っ張られた状態となり、張力が掛かった状態で支柱1に連結されている。なお、前側の支柱1と中間の支柱1の間に取り付けた格子材2と、中間の支柱1と後側の支柱1の間に取り付けた格子材2が、一直線上に位置するように、格子支持具4の高さを設定してある。
【0015】
以上が、本発明の手摺の第一実施形態の、支柱1と格子材2の連結部分の構成についての説明であるが、続いて、この第一実施形態の組立手順を示すとともに、その他の部分の構成についても説明する。
【0016】
<手順(1)>
まず、
図3に示すように、各支柱1の下端部に、L字形の金具からなる固定具13を取り付ける。固定具13は、起立片が後側(階段の上り側)の溝部11に挿入され(
図3(a))、溝部11の底面の下端部が切り欠いてあって、この切欠部から固定具13の水平片が前側(階段の下り側)の溝部11内に突出しており、起立片を溝部11の底面にネジ止めして固定してある(
図3(b))。固定具13の水平片の下側面は、支柱1の下端面と面一になっている。
【0017】
<手順(2)>
次に、
図4に示すように、各支柱1に下側目板材5aを取り付ける。下側目板材5aは、格子支持具4と同じ断面形状で、階段の蹴上寸法(一段の高さ)より踏板Pの厚さ分だけ低い高さとなっている。この下側目板材5aを、各支柱1の後側(階段の上り側)の溝部11に上端から挿入し(
図4(a))、下端まで摺動させる(
図4(b))。
【0018】
<手順(3)>
次に、
図5に示すように、階段に支柱支持具6を取り付ける。ここでは、階段の下から1段目、3段目及び6段目に支柱1を取り付けるものであり、それぞれの1つ上段、すなわち2段目、4段目及び7段目の踏板Pの前端面の右端部に、支柱支持具6をネジ止めして固定してある(
図5(a))。支柱支持具6は、左右方向中央部に位置する略直方体形の挿入部61と、挿入部61の左右両側に位置する当接部62を有しており、当接部62は、断面略八角形の支柱1の外形に合わせて傾斜した当接面を有する(
図5(b))。
【0019】
<手順(4)>
次に、
図6に示すように、階段に支柱1を取り付ける。各支柱1を、階段の下から1段目、3段目及び6段目に設置するとともに、それぞれ後側(階段の上り側)の溝部11に、1つ上段に設けた支柱支持具6の挿入部61を挿入し、支柱1の側面を支柱支持具6の当接部62に当接させる。この際、下側目板材5aは、挿入部61の下側部分に納まる。そして、支柱1の下端の固定具13の水平片を踏板Pにネジ止めするとともに、支柱1の前側の溝部11からネジを挿入して支柱支持具6の挿入部61にネジ止めする。これにより、支柱1が階段に対して確実に固定される。
【0020】
<手順(5)>
次に、
図7に示すように、前側の支柱1と後側の支柱1に端部目板材5cを取り付ける。端部目板材5cは、格子支持具4と同じ断面形状で、支柱1と同じ高さとなっており、前側の支柱1の前側の溝部11と、後側の支柱1の後側の溝部11に上端から挿入してある。
【0021】
<手順(6)>
次に、
図8に示すように、各支柱1に下側格子支持具4aを取り付ける。下側格子支持具4aは、前側の支柱1の後側の溝部11、中間の支柱1の前後の溝部11及び後側の支柱1の前側の溝部11に取り付けられるものであり、それぞれ上端から挿入してある。何れの下側格子支持具4aも、下端面は水平向きの面となっており、前側の溝部11に取り付けられる下側格子支持具4aは、下端が踏板Pに当接し、後側の溝部11に取り付けられる下側格子支持具4aは、下端が支柱支持具6の挿入部61に当接する。よって、前側の溝部11に取り付けられる下側格子支持具4aの方が、高さが高くなっている。
【0022】
<手順(7)>
次に、
図9に示すように、各支柱1間に下側格子材2aを取り付ける。前側と中間の支柱1の間隔と、中間と後側の支柱1の間隔は異なるので、それぞれの下側格子材2aもそれに応じた長さになっており、何れも前後の支柱1の対向する溝部11の底面間の間隔よりも僅かに短くしてある。この下側格子材2aの前後の端部を、それぞれ支柱1の溝部11の上端から挿入し、下方へ摺動させて、下側面を下側格子支持具4aの上端面に当接させてある。
【0023】
<手順(8)>
次に、
図10に示すように、下側格子材2aの前端部を連結具3により支柱1と連結する。まず、連結具3の係合片32を、下側格子材2aの前側の係合部21に挿入するとともに、連結具3の取付片31を、支柱1の後側の溝部11の底面に当接させる(
図10(b)の1)。そして、連結具3のネジ孔33にネジを通して、支柱1にネジ止めする(
図10(b)の2)。これにより、下側格子材2aは、前方の支柱1側に引き寄せられて、前端面が前方の支柱1に当接し、後端面が後方の支柱1から僅かに離隔した状態となる。
【0024】
<手順(9)>
次に、
図11に示すように、下側格子材2aの後端部を連結具3により支柱1と連結する。まず、連結具3の係合片32を、下側格子材2aの後側の係合部21に挿入するとともに、連結具3の取付片31を、支柱1の前側の溝部11の底面に当接させる(
図11(b)の1)。そして、連結具3のネジ孔33にネジを通して、支柱1にネジ止めする(
図11(b)の2)。下側格子材2aの後端面は、支柱1から僅かに離隔しているので、連結具3を支柱1にネジ止めすることで、下側格子材2aは、後方の支柱1側に引き寄せられ、結果として、下側格子材2aは、前後から連結具3により引っ張られた状態となり、張力が掛かった状態で支柱1に連結される。
【0025】
<手順(10)>
次に、
図12に示すように、各支柱1に上側格子支持具4bを取り付ける。上側格子支持具4bは、前側の支柱1の後側の溝部11、中間の支柱1の前後の溝部11及び後側の支柱1の前側の溝部11に取り付けられるものであり、何れも同じ高さであって、それぞれ上端から挿入してある。この際、
図1に示すように、連結具3の左右幅は、コ字形の上側格子支持具4bの内側に納まる幅となっており、連結具3と上側格子支持具4bが干渉することはない。また、支柱1の後側(階段の上り側)に取り付けた上側格子支持具4bは、下端面が水平向きの面となっており、露出面(後側面)の下端が下側格子材2aの上側面に当接している。一方、支柱1の前側(階段の下り側)に取り付けた上側格子支持具4bは、下端面を水平向きの面とすると、上側格子支持具4bの後端部の下端が下側格子材2aの上側面に当接して、露出面(前側面)の下端と下側格子材2aの上側面の間に隙間が生じてしまうので、下端面は、格子材2の傾斜(すなわち、階段の勾配)に合わせて、水平面に対して前下がりとなるように傾斜した面となっている。
【0026】
<手順(11)>
次に、
図13に示すように、各支柱1間に上側格子材2bを取り付け、前端部及び後端部をそれぞれ連結具3により支柱1と連結する。連結構造については、下側格子材2aと同じであって、上側格子材2bも、前後から連結具3により引っ張られた状態となり、張力が掛かった状態で支柱1に連結される。
【0027】
<手順(12)>
次に、
図14に示すように、各支柱1に上側目板材5bを取り付ける。上側目板材5bは、前側の支柱1の後側の溝部11、中間の支柱1の前後の溝部11及び後側の支柱1の前側の溝部11に取り付けられるものであり、格子支持具4と同じ断面形状で、上側格子材2bから支柱1の上端までの高さとなっている。この上側目板材5bを、溝部11に上端から挿入し、下端を上側格子材2bの上側面に当接させてある。なお、上側格子支持具4bと同様に、支柱1の後側(階段の上り側)に取り付けた上側目板材5bは、下端面が水平向きの面となっており、支柱1の前側(階段の下り側)に取り付けた上側目板材5bは、下端面が水平面に対して前下がりとなるように傾斜した面となっている。さらに、同様の理由で、支柱1の後側(階段の上り側)に取り付けた上側目板材5bは、上端面が水平面に対して前下がりとなるように傾斜した面となっており、支柱1の前側(階段の下り側)に取り付けた上側目板材5bは、下端面が水平向きの面となっている。
【0028】
<手順(13)>
次に、
図15に示すように、支柱1の上端に手摺受具71を取り付ける。手摺受具71は、平板の左右端部と中間部に起立片を形成した前後に延びる形材からなり、3本の支柱1に跨って横架してあって、上側から支柱1のタッピングホールにネジ止めする。
【0029】
<手順(14)>
次に、
図16に示すように、手摺受具71に手摺材7を取り付ける。手摺材7は、木製のものであって、下側面に断面略コ字形の凹部を形成してあり、凹部に手摺受具71が嵌め込まれ、手摺受具71の下側からネジ止めして固定する。また、手摺受具71の前後の端部には、端面を覆い隠す樹脂製の端部キャップ72を取り付け、手摺受具71の下側からネジ止めして固定する。以上により、
図17に示すように、手摺の第一実施形態が完成する。
【0030】
このように構成した本発明の手摺の第一実施形態によれば、連結具3によって格子材2の両端部がそれぞれ支柱1側に引き寄せられており、格子材2に張力が掛かった状態で支柱1に連結されるので、振動によるビビリ音の発生を抑えられる。また、格子材2の係合部21が、連結具3の係合片32の厚さよりも前後に広い孔となっているので、階段の勾配に応じて、格子材2の傾斜角度も自在に変えることができる。さらに、連結具3において、格子材2に係合する係合片32と、支柱1にネジ止めするためのネジを通すネジ孔33は、上下に離隔しており、格子材2から離れた位置で連結具3を支柱1にネジ止めできるので、連結時に格子材2が作業の妨げになりにくい。また、格子材2の前側(階段の下り側)において、支柱1と格子材2の上側面は鋭角となり、特に格子材2の水平面に対する傾斜角度が大きい場合、支柱1と格子材2が接近するため、連結具3を後側から通常のドライバーでネジ止めすることが困難になる。その場合、格子材2の前側においては、ネジの軸の直交方向から作業可能なラチェットなどによって連結具3をネジ止めし、支柱1と格子材2の上側面が鈍角となる格子材2の後側において、連結具3を前側から通常のドライバーでネジ止めして、格子材2を支柱1側に引き寄せ、張力を掛ければよい。さらに、格子材2の前後において、同じ連結具3を用いているので、部品点数が少なく、費用を抑えられる。また、各支柱1において、下側格子支持具4a、下側格子材2a、上側格子支持具4b、上側格子材2bを順次積層する構成となっており、格子支持具4が上側に位置する格子材2を支持し、また上側格子支持具4bが下側格子材2aの上方への移動を規制するとともに、格子支持具4が溝部11を覆い連結具3を隠す目板と兼用されているので、別途部材を必要とせず、部品点数を削減して費用を抑えられる。そして、格子支持具4が格子材2の上下動を規制しているので、連結具3は、格子材2の上下動を規制する機能を有する必要がなく、格子材2を支柱1側に引き寄せるだけのものであればよいので、部品を単純化して設計の自由度を高めるとともに、費用を抑えられる。
【0031】
次に、本発明の手摺の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、第一実施形態と比較して、格子材2の前側(階段の下り側)と支柱1の連結に用いる連結具3aの形状が異なっており、その他の構成については同じである。以下、第一実施形態と異なる部分についてのみ、説明する。
【0032】
第二実施形態の連結具3aは、
図18及び
図19に示すように、一枚の金属平板からなるものであって、第一実施形態の連結具3と同様に、上側に向けて延びる取付片31と、下側に向けて延びる係合片32を有しており、取付片31は係合片32よりも上下に長く形成してある。また、取付片31には、左右方向中央に上下に延び下端から右側縁部に至る切込を形成してあり、切込の右側部分が前側に折り曲げられて、挿入片34となっている(
図19(b)は背面図なので、右側は図中の左側に相当する)。挿入片34は、上端から前側に折り曲げられており、前側下方に延びる上側部34aと、上側部34aの下端から後側下方に延びる中間部34bと、中間部34bの下端から前側下方に延びる下側部34cからなる。さらに、取付片31の上端には、後側に向けて延びる叩き込み片35を形成してある。
【0033】
そして、支柱1と格子材2の連結部分について、
図18に示すように、支柱1の溝部11に格子支持具4を取り付けてあって、その上から、格子材2の両端部を前後の支柱1の対向する溝部11にそれぞれ挿入するようにして、格子材2の下側面を格子支持具4の上端面に当接させてあり、格子材2が格子支持具4に支持されている。そして、格子材2の前端部の係合部21に、上側から連結具3aの係合片32を挿入してあり、連結具3aの取付片31を支柱1の溝部11の底面に当接させ、かつ挿入片34を溝部11の底面に形成した挿入孔14に挿入してある。ここで、取付片31と挿入片34の中間部34bの下端の間の間隔が溝部11の底面の肉厚よりも狭くなっているので、取付片31と挿入片34で溝部11の底面を挟み込むことで、弾性力が作用して、連結具3aが固定されている。一方、格子材2の後側には、第一実施形態と同じ連結具3を取り付けてあり、この連結具3を支柱1にネジ止めすることで、格子材2を支柱1に引き寄せている。よって、格子材2は、前後から連結具3a,3により引っ張られた状態となり、張力が掛かった状態で支柱1に連結されている。
【0034】
続いて、この第二実施形態の組立手順を説明するが、手順についても、格子材2の前側の連結具3aの取付部分のみが第一実施形態と異なる。すなわち、第二実施形態の組立手順は、まず、第一実施形態の手順(1)〜手順(7)までと同じであり、第一実施形態の手順(8)に替えて、以下の手順(8’)となる。
【0035】
<手順(8’)>
次に、
図20に示すように、下側格子材2aの前端部を連結具3aにより支柱1と連結する。まず、連結具3aの係合片32を、下側格子材2aの前側の係合部21に挿入するとともに、連結具3の取付片31を、支柱1の後側の溝部11の底面に当接させ、かつ挿入片34を溝部11の底面の挿入孔14に挿入する(
図20の1)。この際、挿入片34の下側部34cが前側下方に向けて延びているので、挿入片34を挿入孔14に挿入しやすくなっている。そして、連結具3の叩き込み片35を、ハンマーなどにより上側から叩き込んで、連結具3aを押し下げ、取付片31と挿入片34の間に溝部11の底面を挿入させて、連結具3aを支柱1に固定する(
図20の2)。これにより、下側格子材2aは、挿入片34の弾性力によって前方の支柱1側に引き寄せられて、前端面が前方の支柱1に当接し、後端面が後方の支柱1から僅かに離隔した状態となる。
【0036】
そして、以降の組立手順は、第一実施形態の手順(9)〜手順(14)と同じであり、手摺の第二実施形態が完成する。
【0037】
このように構成した本発明の手摺の第二実施形態によれば、連結具3a,3によって格子材2の両端部がそれぞれ支柱1側に引き寄せられており、格子材2に張力が掛かった状態で支柱1に連結されるので、振動によるビビリ音の発生を抑えられる。また、格子材2の係合部21が、連結具3a,3の係合片32の厚さよりも前後に広い孔となっているので、階段の勾配に応じて、格子材2の傾斜角度も自在に変えることができる。さらに、格子材2の後側の連結具3において、格子材2に係合する係合片32と、支柱1にネジ止めするためのネジを通すネジ孔33は、上下に離隔しており、格子材2から離れた位置で連結具3を支柱1にネジ止めできるので、連結時に格子材2が作業の妨げになりにくい。また、格子材2の前側(階段の下り側)において、支柱1と格子材2の上側面は鋭角となり、特に格子材2の水平面に対する傾斜角度が大きい場合、支柱1と格子材2が接近するが、格子材2の前側の連結具3aは、上側からハンマーなどで叩き込むだけで容易に支柱1に固定できるので、作業に支障はなく、支柱1と格子材2の上側面が鈍角となる格子材2の後側において、連結具3を前側から通常のドライバーでネジ止めして、格子材2を支柱1側に引き寄せ、張力を掛ければよい。さらに、各支柱1において、下側格子支持具4a、下側格子材2a、上側格子支持具4b、上側格子材2bを順次積層する構成となっており、格子支持具4が上側に位置する格子材2を支持し、また上側格子支持具4bが下側格子材2aの上方への移動を規制するとともに、格子支持具4が溝部11を覆い連結具3a,3を隠す目板と兼用されているので、別途部材を必要とせず、部品点数を削減して費用を抑えられる。そして、格子支持具4が格子材2の上下動を規制しているので、連結具3a,3は、格子材2の上下動を規制する機能を有する必要がなく、格子材2を支柱1側に引き寄せるだけのものであればよいので、部品を単純化して設計の自由度を高めるとともに、費用を抑えられる。
【0038】
次に、本発明の手摺の第三実施形態について説明する。第三実施形態は、第一実施形態と比較して、格子材2の前側(階段の下り側)と支柱1の連結に用いる連結具3の取り付ける向き及びこの連結具3が係合する格子材2の係合部21の位置が異なっており、その他の構成については同じである。以下、第一実施形態と異なる部分についてのみ、説明する。
【0039】
第三実施形態の連結具3は、
図21に示すように、第一実施形態のもの(
図2)と同じである。また、格子材2の前端部においては、下側面に、中空部に貫通する矩形の孔からなる係合部21を設けてある。一方、後端部においては、第一実施形態と同様に、上側面に係合部21を設けてある。
【0040】
そして、支柱1と格子材2の連結部分について、
図21に示すように、支柱1の溝部11に格子支持具4を取り付けてあって、その上から、格子材2の両端部を前後の支柱1の対向する溝部11にそれぞれ挿入するようにして、格子材2の下側面を格子支持具4の上端面に当接させてあり、格子材2が格子支持具4に支持されている。そして、格子材2の前側において、連結具3が第一実施形態とは上下逆の向き、すなわち、取付片31が下向きで、係合片32が上向きとなるように取り付けてある。取付片31は、支柱1の溝部11の底面に当接させて、ネジ孔33にネジを通して取り付けてあり、上向きの係合片32を、格子材2の前端部の下側面の係合部21に下側から挿入してある。一方、格子材2の後側には、第一実施形態と同様に、上側から連結具3を取り付けてあり、この連結具3を支柱1にネジ止めすることで、格子材2を支柱1に引き寄せている。よって、格子材2は、前後から連結具3により引っ張られた状態となり、張力が掛かった状態で支柱1に連結されている。
【0041】
続いて、この第三実施形態の組立手順を説明するが、手順についても、格子材2の前端部を支柱1に連結する部分のみが第一実施形態と異なる。すなわち、第三実施形態の組立手順は、まず、第一実施形態の手順(1)〜手順(5)までと同じであり、第一実施形態の手順(6)〜手順(8)に替えて、以下の手順(6’’)〜手順(8’’)となる。
【0042】
<手順(6’’)>
次に、
図22に示すように、下側格子材2aの前方の支柱1に、連結具3を取り付ける。連結具3は、取付片31が下向きで、係合片32が上向きとなる向きにして、取付片31を支柱1の後側の溝部11の底面に当接させ、ネジ孔33にネジを通して支柱1にネジ止めする。
【0043】
<手順(7’’)>
次に、
図23に示すように、各支柱1に下側格子支持具4aを取り付ける。下側格子支持具4aは、前側の支柱1の後側の溝部11、中間の支柱1の前後の溝部11及び後側の支柱1の前側の溝部11に取り付けられるものであり、それぞれ上端から挿入してある。なお、連結具3の左右幅は、コ字形の下側格子支持具4aの内側に納まる幅となっており、連結具3と下側格子支持具4aが干渉することはない。何れの下側格子支持具4aも、下端面は水平向きの面となっており、前側の溝部11に取り付けられる下側格子支持具4aは、下端が踏板Pに当接し、後側の溝部11に取り付けられる下側格子支持具4aは、下端が支柱支持具6の挿入部61に当接する。よって、前側の溝部11に取り付けられる下側格子支持具4aの方が、高さが高くなっている。
【0044】
<手順(8’’)>
次に、
図24に示すように、各支柱1間に下側格子材2aを取り付ける。前側と中間の支柱1の間隔と、中間と後側の支柱1の間隔は異なるので、それぞれの下側格子材2aもそれに応じた長さになっており、何れも前後の支柱1の対向する溝部11の底面間の間隔よりも僅かに短くしてある。この下側格子材2aの前後の端部を、それぞれ支柱1の溝部11の上端から挿入し、下方へ摺動させて、下側面を下側格子支持具4aの上端面に当接させるとともに、下側格子材2aの前端部において、下側面の係合部21に、連結具3の係合片32を挿入させる。これにより、下側格子材2aは、前端面が前方の支柱1に当接し、後端面が後方の支柱1から僅かに離隔した状態となる。なお、連結具3の係合片32の前側面にテーパを付けることで、係合片32を格子材2の係合部21に挿入しやすくし、かつ格子材2を確実に前方の支柱1側に引き寄せるようにしてもよい。また、連結具3の係合片32に切り起こし部を形成し、係合片32を格子材2の係合部21に挿入した際に、切り起こし部を係合部21の縁部に係合させることで、格子材2が上側に抜けることを防止してもよい。
【0045】
そして、以降の組立手順は、第一実施形態の手順(9)〜手順(14)と同じであり、手摺の第三実施形態が完成する。
【0046】
このように構成した本発明の手摺の第三実施形態によれば、連結具3によって格子材2の両端部がそれぞれ支柱1側に引き寄せられており、格子材2に張力が掛かった状態で支柱1に連結されるので、振動によるビビリ音の発生を抑えられる。また、格子材2の係合部21が、連結具3の係合片32の厚さよりも前後に広い孔となっているので、階段の勾配に応じて、格子材2の傾斜角度も自在に変えることができる。さらに、連結具3において、格子材2に係合する係合片32と、支柱1にネジ止めするためのネジを通すネジ孔33は、上下に離隔しており、格子材2から離れた位置で連結具3を支柱1にネジ止めできるので、連結時に格子材2が作業の妨げになりにくい。特に、格子材2の前側においては、格子材2を取り付ける前に連結具3を取り付けるので、格子材2が作業の妨げになることはなく、先に取り付けた連結具3の係合片32を、格子材2の下側面の係合部21に容易に挿入することができ、支柱1と格子材2の上側面が鈍角となる格子材2の後側において、連結具3を前側から通常のドライバーでネジ止めして、格子材2を支柱1側に引き寄せ、張力を掛ければよい。さらに、格子材2の前後において、同じ連結具3を用いているので、部品点数が少なく、費用を抑えられる。また、各支柱1において、下側格子支持具4a、下側格子材2a、上側格子支持具4b、上側格子材2bを順次積層する構成となっており、格子支持具4が上側に位置する格子材2を支持し、また上側格子支持具4bが下側格子材2aの上方への移動を規制するとともに、格子支持具4が溝部11を覆い連結具3を隠す目板と兼用されているので、別途部材を必要とせず、部品点数を削減して費用を抑えられる。そして、格子支持具4が格子材2の上下動を規制しているので、連結具3は、格子材2の上下動を規制する機能を有する必要がなく、格子材2を支柱1側に引き寄せるだけのものであればよいので、部品を単純化して設計の自由度を高めるとともに、費用を抑えられる。
【0047】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、支柱の数や、格子材及び格子支持具の数は、階段の長さや意匠上の観点など、種々の条件に応じて設定できる。また、支柱は、直線状に並ぶものに限られず、途中で屈曲するように並んでいてもよい。その場合、支柱が並ぶ方向に応じて、対応する側面に溝部を形成すればよい。さらに、支柱、格子材や格子支持具の断面形状は、上記のものに限られず、自在に設定できる。たとえば、格子支持具は、平板状のものであってもよく、その場合、平板の上端のみが格子材の下側面に当接するので、格子材の角度が異なっても、格子材と格子支持具の間に隙間が生じることがなく、角度に合わせた加工が不要になる。